■『快傑ズバット』感想まとめ6&総括■


“ズバッと参上! ズバッと解決!
人呼んで、さすらいの、ヒーロー!
快傑ズバァァット!!”


 拙ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『快傑ズバット』 感想の、まとめ6(31話&32話&総括)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕


◆第31話「対決! 真犯人首領L?」◆ (監督:広田茂穂 脚本:長坂秀佳)

天才青年科学者
飛鳥五郎
ここに眠る

 飛鳥の墓……というか石碑に、花を手向けるみどりとオサム。
 墓石を監視しているダッカー構成員に「あんな雑魚」扱い。
 ……確かに、雑魚ですけど……!
 もはや、ヒロインのヒの字にも届いていないですけど……!
 こ、これでも昔は、早川をおびき寄せる材料として、さらわれて、縛られて、吊された事もあったのに……!
 「殺しておいても損にはならん」と刺身のツマ扱いで狙撃されそうになるみどりとオサムだったが、その時、 二人の立ち去った墓前に花を手にした新たな人物が現れる。
 彼女の名は、皆川理沙。
 飛鳥五郎の恋人であり、飛鳥の研究を受け継いだ科学者であった。
 「あたしとうとう、シルベールを完成させたんです」
 シルベール――それは、ズバットスーツに使われた素材よりも、更に10倍の強度を持つ特殊繊維であった! それを用いれば、 ズバットは今の10倍の強さになる。恐ろしい事を考える理沙の前に、シルベールを狙ってダッカー構成員が 姿を見せ、逃亡する理沙だが、寺の境内に追い詰められてしまう。
 そこへ現れたのは……仏像の前で座禅を組む早川健(笑)
 そんな登場の仕方でも、とりあえずギター。
 打撃武器じゃないよ、楽器だよ。
 楽器じゃないよ、凶器だよ。
 凶器じゃないよ、狂気だよ。
 早川はあっという間に雑魚を蹴散らすが、そこに山法師姿の男、謎の組織の用心棒にしてマシンガンの名手・竜山丸が現れる。 金剛杖に仕込んだマシンガン対決に勝利する早川。対決に敗北し、
 「さあ、遠慮はいらんぞ、俺のここを狙って撃ってみるがいい!」
 と妙に潔い竜山丸だが、それは罠。いずこからともなく響いてきた「金剛杖を捨てろ」という言葉に早川が仕込みマシンガン杖を 投げ捨てると、それは大爆発。実は竜山丸は、対決に勝って調子に乗った早川が渡した武器で攻撃してくる事を狙って、 罠を仕掛けていたのであった。この罠を回避した早川と理沙は、山門で謎の老人に会い、屋敷という名のぼろ家へと招かれる。 いきなりタロット占いを始め、理沙と早川の素性をピタリと言い当てる、老人。
 「飛鳥に恋人がいたなんて……ちっとも知りませんでした」
 ここで初めて、飛鳥五郎に恋人が居た事を知る早川健。
 妹の存在も知らないし、彼女の存在も知らないし、本当に、親友だったのでしょうか。
 言い方を変えると、親友だと思われていたのでしょうか?
 まあ、妹に早川を近づけたくないというのは、わかりますけど(笑)
 後まあ、彼女に「あの人はどういうお友達なの?」と聞かれた時に、返答には困るかもしれない。
 ……うんわかった、飛鳥、飛鳥は、悪くない。
 老人から話を聞こうとした早川だが、屋敷が構成員に囲まれている事に気付く。更に、事前に仕掛けられていた時限爆弾が爆発。 屋敷を飛び出した3人は、早川のみならず老人の華麗な立ち回りもあり、構成員を撃破。そこへやってきた東条を交え、理沙の逗留する、 ホテル青雲閣へと向かう。
 どういうわけか背広を脱ぎ捨て、中途半端な袖の夏服で出てきた東条は、刑事というより探検家っぽい。
 ホテルの金庫に納めていたシルベールを取り出そうとする理沙……だが果たして、老人はいったい何者なのか?!  早川と東条の疑念の視線を受けた老人は呵々大笑。
 「東条、この声がまだわからんのか」
 カツラと付け髭を外した下から出てきた顔は……、東条の中学からの親友にして、国際秘密警察の刑事、神竜伸介。彼は任務により、 世界征服を企む悪の大組織ダッカーの存在を追っていたのだった。ここで遂に早川は、秘密結社ダッカーと、首領Lの存在を知る!
 「攻撃は最大の防御だ。ダッカーへの攻撃は、こっちから仕掛ける」
 ダッカーの大攻勢近し、という情報に、いつも通り「やられる前にやれ」を実行すべく、ダッカー本部へ威力偵察をかける早川……と東条。
 「これがダッカーの本部か」
 「いよいよ首領Lとの対決だ」
 かねがね疑惑もありましたが、ここに来て早川と一緒にダッカー本部へ乗り込もうとする東条は、結局、 そっち側の人だった。
 ところがそこへ怪我を負った神竜が現れ、「飛鳥殺害犯の目星がついた」と告げる。一旦ホテルへと戻った3人は、 早川が常に持ち歩いている、飛鳥殺害犯の用いた弾丸と、さきほど神竜が首領Lに撃たれたという弾丸を比較し、 それが全く同じである事が判明する。飛鳥五郎殺害の犯人は、首領Lだったのだ!
 早川はたぶん、肉眼で線条痕を見分けられるのです、早川だし。
 国際秘密警察が2年がかりで調べたダッカー本部の見取り図を広げる神竜。鉄壁の防御網を敷くダッカー本部だが、 早川の見立てでは守りの薄い部分が三カ所……3人は、その3カ所の同事攻撃を敢行する。
 早川「たとえ二人の内、どっちが捕虜になっても、俺はあえて見殺しにするぜ」
 東条「そいつは俺が言おうと思っていた台詞だ」
 神竜「俺も異議はない」
 早川「あばよ」
 神竜はともかく、殺る気満々の東条。
 早川健とまともに殴り合える男・東条進吾が、遂に今、野獣の本性を剥き出しにした!!!
 そして、ここまでの流れを見る限り、

 衝撃! ダッカー本部は、伊東温泉にあったのだ!

 早川、6・7話の時点で、真犯人に肉薄していた事が発覚。
 さて、勇躍ダッカー本部へ乗り込んだ3人は次々と警戒網を突破して奥へと進んでいくが、颯爽と罠にはまった早川、 落とし穴に落とされる。ズバットに変身して事なきを経た早川の前に送られてくる首領Lと、囚われた東条・神竜の映像。
 「確かに見極めたぞズバット! 貴様の正体が早川健だという事をな!」
 二人を処刑する、という首領の言葉に、ズバットはムチで壁を破って罠を脱出。刑場において、遂に首領Lと対決する!

悪行の限りを尽くし
数えきれぬほどの人を殺し
あまつさえ
罪もない飛鳥五郎を殺した犯人
許さん!
首領L!

 ズバット・ア・タァァック!!

 首領Lのブーメラン剣をかわし、炸裂するズバット・アタック。にっくき真犯人のマウントポジションを取り、 武器で滅多打ちにするズバット。だが……
 「違う……飛鳥五郎を殺したのは、俺じゃない……」
 虫の息の首領Lは、飛鳥殺害を否定する!
 「飛鳥を殺した真犯人……ダッカーの総統……」
 アリバイを言うどころか、ちょっと痛めつけられた程度で、もの凄くあっさりと真犯人について口を割る首領L(笑)
 戦闘の見せ場も無いも同然でしたし、やはりこの人、役職こそ「首領」と言うものの、事務方のお仕事で、 人事部長的な役割だったぽい。
 ダッカーの総統とは何者なのか……それを口にする寸前、脳天を撃たれて死亡する首領L。首領Lを撃ち殺したのは、 冒頭以来姿を見せていなかった、謎の組織の用心棒、竜山丸。竜山丸は告げる、首領Lが死んだ程度で悪の大組織ダッカーは 揺らぎもしない。なぜなら……
 「真の大ボス、総統D(でー)がおる! そしてダッカーの殺し屋、 三大最高幹部もな!」
 口が軽いと首領Lを処刑した直後に、自ら総統の名前をバラす竜山丸(笑)
 ダッカー上層部も、結構グダグダです。
 時間切れの迫るズバットを、更にマシンガン杖を手にした二人の男が囲む。
 「我らダッカーの最高幹部、天! 海! 山! 三兄弟!」
 タイマーが切れ、ただの重い服になってしまったズバットスーツを着た早川に集中砲火を浴びせる竜山丸、竜海丸、竜天丸。 早川はズバットスーツを脱いで逃亡をはかるが、その前に、構成員達に捕まった東条と神竜が姿を見せる。二人を助けようとする早川。 3人にまとめて浴びせられる弾丸の雨。果たして早川健は、この最大のピンチを乗り切る事が出来るのか?!
 次回、決着!!

◆第32話「さらば斗いの日々、そして」◆ (監督:広田茂穂 脚本:長坂秀佳)
 天海山三兄弟の銃撃を浴びた早川は吊り橋から落ちかけた所を東条に助けられる。だが一方、ノリノリで構成員を蹴り飛ばしていた 神竜が、いつの間にか崖から海に落ちかけていた。神竜を助けようと手を伸ばした早川、よくわからない内に崖から落下。 …………いつもの癖が出た?
 ホテルに戻った東条と神竜は、今後の対策を協議する。
 神竜「まずこのシルベールは、みどりさんに守ってもらいます」
 ど う し て
 みどりさんとオサムくんがいつの間にか理沙と一緒に居るのはもう気にしないとして、なぜ、よりによって、みどりさんに。
 そして神竜はシルベールの科学合成式のメモを半分に切ると、一つを東条、一つを自分が持つ事で、どちらかが倒れてもシルベールは 完成しないようにと策をめぐらす。その上で二人はみどりに理沙の変装をさせ、彼女を囮にする事でダッカーの誘き出しを謀るのであった。
 一方、断崖絶壁に引っかかっていた早川、目を覚ますも、また海に落ちる。
 その頃、オサムはみどりに偽装した理沙とともに、山道を逃げていた、と三者三様の展開。
 しかし、ダッカーの攻撃を受け、蜂の巣にされた神竜が転落死。更に理沙とオサムにもダッカーの魔手が迫る。だがその時、 二人の前に現れたのは、満身創痍の早川健!
 「ああ、天下の私立探偵、早川健だよ。貴様達に散々痛めつけられて、歩けないほどにされた男さ!」
 テンション最高潮の早川は「歩けない」と自称しながらも構成員達をあっさり撃破するが、そこへ天海山三兄弟が登場。
 「勝つことができるか、早川!」
 「貴様ら三兄弟、いくら粋がってみても――しょせん日本じゃあ二番目だ」
 ここは実に格好良く決まりました。
 決めポーズの最中によろけるほどのダメージを受けていながらも、三兄弟と何とか互角の斬り合いを見せる早川。 東条が駆けつけて容赦なく3兄弟を背後から射撃した事により、3兄弟は撤退。ホテルに運び込まれる早川だが、 その身に受けたダメージは深刻であった。
 今回とにかく詰め込んだ内容に対して尺が足りなかったのか、いつも以上に繋ぎのシーンが全く無いので、 適当に補完しながら書いておりますが、実際の本編では、駆けつけた東条が射撃した所でシーンが切り替わり、 戦闘ぶつ切り・3兄弟のリアクションも描かれないまま、ホテルに移動しています(^^; 結局全員でホテルに戻ってきたりとか、 凄く、いっぱいいっぱい感が漂うシナリオ。
 気絶し寝かされていた早川だが、東条が善後策を検討している内に、「許せ これは俺の斗いだ 健」と置き手紙を残して姿を消すと、 「このギターで、奴らはきっと現れる」と、海辺の断崖でギターをかき鳴らし、ダッカーを待ち受ける。
 そこに現れたのは、胸にそれぞれ、天・山・海と書かれた銀ぴかのスーツ に身を包んだ3兄弟。その身に纏うのは、シルベール製の超強化スーツであった!
 「どうしてやつらにシルベールが……」と疑問に思いながら、銃撃を浴びて転落する早川健。
 前回から考えると、何度目だ、という感じですが、それもこれも全ては、被虐エネルギーを最大限まで高める為なので 仕方がない。
 一方、早川を探す東条達の前に、
 覆面!
 全身金ピカ!
 赤い裏地の金色マント!
 という、2013年にわかりやすく例えると、全身金色のBIGマンとしか言いようのない、

 パーフェクトな変態が姿を見せる。

 その男こそ……!
 「始めてお目にかかります。ダッカーの総元締め、総統D(でー)!  私が自己紹介する相手は、今すぐ死んでいただく人達だけに限ります」
 構成員に射撃の合図を送る、総統D。だがその時、空に爆音が響き渡る!

ズバッと参上! ズバッと解決!
人呼んで、さすらいの、ヒーロー!

快傑、ズバァァット!!

 全ての痛みを、憎しみと怒りの力に変えて、快傑ズバット、ここに参上!
 東条達を置いて戦場を移動したズバットは、3兄弟の遠距離砲撃を受けながら、ただひたすら前進していく。
 ここは凄まじく格好良く、このままアクションになだれ込むのかと思いきや……何故か場面変わって、ズバットを探す東条達。 海岸線を探す彼等は、吊り橋からぶらさげられた天海山三兄弟を発見する(笑) 演出としてのテンポはともかく、 絵が凄く面白かったです(笑) 満身創痍のギリギリの戦いの筈なのに、しっかりズバットカード用意されているし。
 ズバットは三兄弟を倒した。だが、東条の計算によれば残された時間はあと40秒に過ぎない……果たしてズバットは、早川健は、 友の仇を取れるのか?!

 「俺の親友、飛鳥五郎を殺したのは、貴様だな!」
 「おうとも、奴は儂の正体を見破ったのでな」
 対峙する、真紅と黄金。
 ズバットスーツとシルベールスーツが、今、激突する!!
 「ズバァッ!」
 「ダーーーーカァッ!」
 意表を突く奇声と共に飛び上がり、ズバットの互角の戦いを見せる総統Dは、更に黄金キャノン砲を乱射。烈火のごとき砲撃を受け、 ずたぼろになっていくズバット。
 「ダッカーーーーーーキーーーック!」
 総統Dの跳び蹴りからの連続キックに追い詰められるズバット。だが、友の仇を目の前に、全ての痛みをパワーに変える快傑ズバットは、 倒れない!

 「ズバット・ア・タァァァァァック!!」

 「ダーーーーカァッ!!」

 空中で交錯するズバットと総統D。着地した二人はそれぞれ大きいダメージを受けてもはやまともに立つことも出来ないが、 それでもただひたすらに、仇敵へ拳を振るう。

 「ズバット、てぇい!」

 「ダッカー、つぇい!」

 限界を超え、よろめきながら、全身全霊を振り絞って殴り合う二人。
 そして……離れていくカメラ。
 ここまで31話、途中の色々なあれやこれやを、クライマックス戦闘のカタルシスで吹き飛ばして文字通りに快傑してきた作品が、 その最後の戦いにおいて、戦闘を俯瞰してしまうという、なんだか凄まじい演出。
 そして――ズバットを探していた東条達は、崖の上で、金ピカの死体を発見する。
 息絶えた総統Dの覆面の下の素顔は……神竜伸介! 3兄弟や総統Dがシルベールスーツを入手できたのは、神竜がメモを二つに分ける、 と言って手にした時に、その内容を全て記憶していたからであった。神竜は国際秘密警察の刑事として働きながらダッカーの総統として暗躍し、 前回と今回、一行の行動が妙に迷走気味だったのも神竜の巧みな誘導が原因であると言えた。
 警察関係者(しかも東条の親友)をダッカー総帥に据える事で、例の、東条が早川の実験を見た途端にズバットスーツが 5分のタイムリミットを過ぎると粉々に爆発する情報がダッカーに流れていた件、について、一応、なんとなくの理由はつきました。
 さすがに今回、神竜伸介/総統Dとかクレジットされなくて、本当に良かった(笑)
 しかし神竜は20代で刑事をやりながらダッカーを一代で築き上げたとも考えにくく、とするとダッカーは、 世襲制の悪の秘密結社だったのかもしれません。
 首領Lはたぶん、先代・先々代から組織に仕える、大番頭みたいな存在。
 最後の最後で「世界征服を目指している」という目的が明かされましたが、神竜が表の顔を国際秘密警察の刑事としたのも、 各支部長にやたらに海外出張が多いのも、その為の活動だと考えれば辻褄が合います。
 神竜伸介は、悪のプリンスだったのだ!
 また或いは、真っ当な刑事としての活動中に総統Dを倒した神竜が悪魔の誘惑に負け、覆面姿の総統Dにすり替わった…… 年齢にそぐわぬ喋り方を見ると、そんな可能性もあるかもしれません。
 どちらにせよ、陰でけっこう涙ぐましい努力をしていた事は間違いなさそうです。
 クライマックスの弾け方は、その発露だったのでしょう(涙)
 かくて総統Dは悪行の報いを受け、ここに人誅を受けた。だが、その死体の傍らに残されていたのは、 ずたぼろのズバットスーツの残骸だけ……果たして早川は無事なのか? そしてどこへ消えたのか……?

 東条達が海に転落したかもしれないズバットを探している頃、早川健は、花束を手に飛鳥五郎の墓前に立っていた。
 流れ出すエンディングテーマ(歌入り)。
 「飛鳥、おまえの仇………………とうとう、取ったぜ!」
 そして……
 飛鳥の墓へやってきた東条は、墓石に手向けられた花束とズバットカードを目にして、早川の勝利と無事を知る。

「悪の大組織、ダッカー全滅」

 東条「とうとう、やったな、早川!」
 みどり「え?」
 オサム「ズバットは、早川さんだったの?」
 最後の最後まで、ヒロイン?、壮絶に蚊帳の外。
 ラスト2話も、むしろゲストの理沙が正ヒロイン扱いでしたし!
 今、斗いの日々は終わった。友の復讐を終えた早川は、さすらいの私立探偵として、いずこへともなく去って行く。どこかで悪が嗤い、 弱者が泣く時、彼はまた、風のように現れるだろう、友の形見の、ギターの響きと共に。
 男はひとり道をゆく 男はひとりゆくものさ
 かたい誓いに命をかけた 波の彼方に何がある
 そのまま、2番の歌詞でエンディングに突入。
 ……
 突然現れる飛鳥五郎の恋人と、超繊維シルベール
 突然存在を明かす悪の大組織ダッカー
 突然乗り込めるダッカー本部
 突然特攻野郎と化す東条進吾
 突然前線に出てくる首領L
 突然判明する真犯人と真の大ボス
 突然明かされる飛鳥殺害の理由
 ストーリー上の重要な要素が、すべからく取って付けたように解明される困った最終2話ですが、さすがに、 玩具の売り上げ不振による思いっきり打ち切りだったそうです(企画当初は1年予定だったらしい)。まあ確かに、この番組を見て、 ズバッカー欲しい!……とは思いません(^^;
 今なら、フィギュアーツとかでズバット出たら、ちょっと悩みますけど。
 とはいえ、今作に物語的な辻褄を期待していたかというと正直そうでもないわけでありまして、どちらかといえば、 忙しくて一つのエピソードとして構成がぐちゃぐちゃになってしまったのが残念。また、打ち切りではあるものの、 作品のテンションとしてはこのぐらいの話数が限界だったのでは、とは思わないでもありません。予定通りの話数だったら クライマックスはしっかりと伏線を敷いていって盛り上がったかもしれませんが、一方で、ぐだぐだなエピソードも増えた気はするので、 良し悪しというか。
 まあ、首領Lなんかは面白いレギュラーだったのに、ぞんざいな最期になってしまって可哀想でしたが。
 みどりさんは……あと20話増えても正ヒロインに昇格できる気がしない。
 で、最終的に、

 全ての罪を着せて、早川が快傑ズバットの死を完全偽装しているのが恐ろしい。

 伝説の快作、堪能させていただきました。


☆総括☆
 正直なところ、総括って言ってもなぁ、という作品ですが、感想を読み直しながら思いついた事でもだらだらと書いてみようかと思います。

 とりあえず、最終盤があんなになった事でハッキリしたのは、
 やはりナチスジャガー/大月春彦は、ズバットの正体を目にしてしまった為に、念入りに抹殺して埋められた事。
 唯一、ズバットの素顔を目撃→崖から転落→死亡扱い、という支部長で、死体も見つかっていないみたいな描写でしたので、 おそらくは終盤が落ち着いていれば、生きていたナチスジャガーが快傑ズバットの正体を本部に連絡して……という展開になったのではないか と思われるのですが、結局、最後までダッカーはズバットの正体に気付いていなかったので、ナチスジャガーは崖から転落後、 念入りに、早川健により、口封じされたと考えて間違いありません。
 ……もっとも、ズバット=早川健をダッカーが掴んだところで、今更何がどうなるとも思えなかったりもしますが。
 現に、31話ではどうもズバットの正体を確かめる為に敢えて本部に早川達を(神竜が)誘い込んだような流れに見受けられるのに、 わかってもどうにもなりませんでした(笑)
 神竜がつまり何をやりたかったのかというと、

 ストレスが溜まっていた

 という理解で良いようですが(おぃ)

 「ダーーーーカァッ!」

 あの奇声は、斜め上で凄かった。
 ただ、総統Dの衣装自体は、インパクトはあったものの、正直、お金も時間も無かった感が満載でしたが(^^;

☆印象的な支部長・ベスト3
  • 大月春彦/ナチスジャガー (16・17話)
  • ウルフガイ (15話)
  • 鉄の爪 (9話)
  •  1位は、OPによるテロップテロで視聴者の度肝を抜いたナチスジャガー。あれは、振り返って評価すると、 ズルいの領域。支部長としても、偽早川健を用いて早川を社会的に抹殺しようとするなど、前後編にふさわしい仕事ぶり。 偽早川vsズバットの戦い、という絵面も楽しい回でした。そして、ズバットの素顔を見てしまったばかりに……。
     ウルフガイは、「あと1分で爆発する」時限爆弾を、早川の前で握りしめて見せつけてから、 街を焼き討ちに出撃。「この街は、灰になった方がいい!」と言い出すなど、 最初から最後まで何をしたかったのかわからない支部長でした。基本、経済か暴力による地域支配を旨とするダッカー下部組織の中では、 異色の存在。
     鉄の爪は、新薬を手に入れる為に「無関係の子供の殺害を開発者に予告する」という、劇中でも屈指の非道な作戦を展開。 中盤で自ら早川と対峙した所も印象深い。あと、組織名TTTが何の略か結局わからないところ。

    ☆印象的な用心棒・ベスト3
  • 殺し屋カーペンター甚十郎 (14話)
  • バーテン左京次 (16・17話)
  • テニスの名人・陣太郎 (29話)
  •  大工。大工対決は本当に衝撃的でした(笑) その上で、対決そのものも面白かった。
     バーテンは劇中唯一、時間切れ判定勝ちとはいえ、ズバットに押し勝った用心棒。真の力(二刀流)を発揮する前に倒された ダルタニアン、早川健を追い詰めたガラバー、辺りも候補として良さそうですが、おそらく劇中最強の用心棒。
     陣太郎は、台詞回しと、武器が面白かったです(笑)

    ☆印象的なエピソード・ベスト3
  • 第1話「さすらいは爆破のあとで」
  • 第19話「悲恋 破られたラブレター」
  • 第9話「涙の河を振り返れ」
  •  初見のあまりにも凄まじいインパクトという要素が大きいですが、第1話はやはり傑作。これぞ70年代、これぞ狂気、 これぞ『ズバット』! また、展開の凄まじい早さと説明の無さで視聴者を一気に振り落としてはいくものの、 70年代の作品で今日見てもこれだけ視聴に耐えうるという時点で、この当時の作品としてはレベルは高いといえます。実は、 この時期の作品というのは今日的な目で見ると“尺をダラダラと使っている作品”が多いので、むしろこの暴走と疾走ゆえに、 今日でもある程度見られる構造になっている、と言う面があるのは面白いところ(これは、シリーズ全体に言えますが)。
     19話は、ラストでここまでのシリーズになかった独特の味わいを出した名作。ラストシーンの演出が絶品でした。
     9話は、人質の少女が大爆死、という冒頭2分で限界突破の衝撃回。みどりを人質にされた早川健が至近距離から銃弾の雨を浴びたり、 反撃に出たズバットによって用心棒もド派手に吹っ飛んだり、敵支部長が史上最長クラスのお仕置を受けたり、と全編見所たっぷり。
     良くも悪くも、“印象的な部分”は多い作品ではありますが。

     脚本の担当回数は、〔長坂秀佳:30 滝沢真理:1(7話) 田口成光:1(12話)〕
     どうも、当初放映が1年予定だったので、長坂氏が1年間全部はさすがに無理と他の脚本家にも書いてもらったものの気に入らず、 結局自分で全部書いたら32話で終わってしまったのでこれなら最初から一人で書けば良かった、という事だったそうですが、 しかしまあ中盤はちょっとだれた回もあったので、適当に他の方が参加しても良かったかとは思います。スポット参加というのは、 なかなか難しいようですが。今作で言えば長坂脚本ではない2話、特別悪かったというわけでもないですし。
     演出の担当回数は、〔田中秀夫:17 広田茂穂:8 奥中惇夫:4 小西通雄:3〕
     田中監督がシリーズ通してメインを務め、前半に奥中監督、中盤に小西監督、後半に広田監督、がそれぞれ間に入ったような形。 広田監督はそれまでと少し違った味わいを作中に見事に持ち込み、最終2話も担当する形となりました。
     なお、担当回はこんな感じで、
     〔田中・田中・奥中・奥中・田中・田中・田中・奥中・田中・奥中・田中・田中・小西・小西・小西・田中・田中・田中・広田・広田・ 広田・田中・田中・田中・広田・広田・広田・田中・田中・田中・広田・広田〕
     田中監督が疲れると他の人が入る、みたいな不思議なローテ(笑)
     だれたといえば演出面でも、中盤以降にちょっと残念だったのは、用心棒との対決があまり面白くなくなってしまった事。
     基本、用心棒が何かを壊す→早川がそれを直した上でもう一つ付け加えるというパターンになってしまい、 たまには早川、先に何かしてみろよ、みたいな(笑)
     要するに、「そういうおまえをわしゃ食った」なのですが、まあ、「日本じゃあ……二番目だ」に始まって、 用心棒のプライドに揺さぶりをかける事で戦いの前から有利な状況を作り出す、高度な心理戦、と言えるのかもしれませんが。
     あと演出といえば、途中からズバットアタックがただの跳び蹴りになってしまったのも、残念でした。あれに関しては、 そもそも最初どうして股間ダイブだったのかという深い謎もありますが、 謎必殺技としての股間ダイブを貫き通して欲しかった(笑)

     作品通して、早川健を別格とすると、最も印象深い人物は、とんだキチガイ刑事だった東条進吾。
     早川健/快傑ズバットによる数々の殺人事件を見逃し、様々な隠蔽工作を行い、自分に都合の良いように情報操作を続けてきた、 トンデモない男です。
     ラストでぽろっとズバットの正体を口にしてしまったので、あの場の3人とも、口封じの為に抹殺したのではないか、 という疑惑がぬぐえません。
     早川と東条が決裂する時が、この作品の真の決着、という気がしないでもない。
     「おまえはよくやってくれたよ、早川」
     「なんだと?!」
     「国際警察の捜査の手が伸びていたダッカーはもはや切り捨てるべき存在だった……そして今こそ、真の悪の大組織がその姿を現す!  そして俺の本当の名は、大総統X!」
     とか(おぃ)

     楽しくて、酷くて、狂っていて、終わってしばらく経ってみると、何もかも面白かったような気がする、そんな作品でした。
     こーいうタイプの作品は、危険だなぁ、と思う(笑)
     勿論、面白かった事は面白かったのですが、良くも悪くも70年代の混沌と狂気を見せつけてくれる作品でありました。


    「このもの、極悪殺人犯人」


     お粗末。
    (2013年3月11日,2013年3月17日)
    (2017年3月27日 改訂)
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