■『快傑ズバット』感想まとめ4■


“あかいゆうひに もえあがる
きみとちかった 地平線”


 拙ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『快傑ズバット』 感想の、まとめ4(19〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第19話「悲恋 破られたラブレター」◆ (監督:広田茂穂 脚本:長坂秀佳)
 テニススクールの憧れの男・石上新也にラブレターを渡そうとして渡せずじまいの少女・八鹿(ようか)いぶき(高校生ぐらい?)は、 その帰路、石上の父がデビル団のボス・セントデビルに殺される現場を目撃してしまい、構成員達から逃げ出す事に。
 真っ暗闇のトンネル?に逃げ込んだ少女をスポットライトが追いかける、というなかなか面白い演出。
 逃亡むなしく構成員に囲まれてしまういぶきだが、そこで暗闇が光に照らされると、何故か場所はナイター照明の野球場。 ギターを奏でながらマウンドの方から近付いてくるのは、早川健!
 というイカれた演出も素敵。
 早川は雑魚をあっさりと撃破。取り囲んだ雑魚を早川が打撃すると硬直し、何かの仕種とともに倒れる、という演出が定番でしたが、 今回は硬直したままの雑魚を背に、少女の元へ歩み寄る早川。
 「気絶してるだけなんですよ。わかりやすくしてあげましょうか。ギターを叩いてみてください」
 ♪
 意外と躊躇なく叩く少女。
 その響きと共に倒れる構成員達。
 「はっはっはっはっはっは」
 呻き倒れる男達を背に、暴力の喜びに笑いだす早川を、ちょっと胡乱げに見る少女(笑)
 デビル団に狙われるいぶきを守ってその場を離れる早川であったが、二人の前にデビル団の用心棒、 魔の鎖鎌使いレッドフォードが姿を現す。
 たぶんロバート・レッドフォードを意識したっぽいカウボーイスタイルなのに、どうして鎖鎌。
 そして今日の用心棒は、予備の武器を持っていた(笑)
 レッドフォードを退ける早川だったが、二人に銃撃が迫る。
 「君には安全な隠れ場所を探そう」
 早川が隠れ場所を探すと、ろくな事がないので気を付けろ。
 だが、両親がデビル団に殺されたという過去を持ついぶきは、どうしても想い人である新也に父親殺しの犯人がセントデビルである事を伝えたくて仕方がない。 しかし彼女は、逃亡中に落とした定期入れの指紋を利用され、偽の真犯人に仕立て上げられてしまう。 早川が東条に連絡をつけるも、その東条によって逮捕されそうになってしまう。
 早川、また東条を殴る。
 早川が東条にすぐ実力行使するのは、東条にあらぬ疑いがかけられないように…… という友情の発露のような気はしないでもないでもないでもないのですが、どちらにせよ不手際てんこ盛り東条さんの評価はがた落ちだと思われるので、もう、どうでもいい気もしないでもないでもないでもありません。
 それでも左遷されない東条はおそらく、代々の警察官僚一族で祖父は政治家、父は天下り先の警備会社を経営、とか、 物凄いコネの持ち主に違いない。
 東条を撃破した早川は、いぶきの願いを聞きいれ、彼女を新也の元へと連れて行く。容疑者だと疑われているのを承知で、 切々と事件の真相を語るいぶきを、表面上は優しく受け入れる新也だったが、お茶を入れに行くふりをして警察に通報。 それに気付いた早川はいぶきを連れ出し、石上家を訪れるパトカーを見せつけて現実の世知辛さを教えるが、恋は盲目、 いぶきは新也の通報という現実を認めようとはしない。再び現れた東条は逮捕状を突きつけ、
 「どうしてもやろうってのか、東条」
 「おまえも公務執行妨害でぶちこむぞ」
 と、いぶきは結局逮捕。
 今更ながら、その法律が存在する、という事が衝撃です(笑)
 この顛末に、首領Lは大喜び。
 「はっはっはっはっはっは、さすがは悪の大組織、ダッカーの一員だけの事はあるぞ、セントデビル。 いぶきを警察に捕まえさせるとはな」
 今日の首領は万馬券でも当てたのか、悪の大組織の基準が大甘です(笑)
 更にセントデビルは、指紋付きの拳銃と定期入れを残しただけでは動機や入手ルートなどの問題が生じるであろう事を予期してか、 護送中のいぶきを襲撃・抹殺する計画を立てる。そのいぶきを守る為に、警察署の前で大暴れして意図的に逮捕される早川。
 それを目撃した、みどりさんとオサムくん。
 「俺、なんだか早川さんの助手になるのやめたくなっちゃたよー」
 ……これを最後に出てこなくなったらどうしよう。
 護送車を爆破していぶきを亡き者にしようとするデビル団はマンホールに爆弾を仕掛けて待ち伏せるが、 護送車がなぜかマンホールの手前でぴったり停車。いつまで経っても動き出さない様子にじれて、
 「やむをえん、やれ!」
 と爆弾を爆発させると、その騒ぎに乗じて白兵攻撃を開始。
 「えーい、やれーやれー!」
 と、首領自ら陣頭指揮して突撃するが、護送車に乗り込んだ構成員達は次々と叩き出されてしまう。
 「ええい、どうしたぁっ! おおぁぁぁ!?」
 自ら首を突っ込むと、額に突きつけられるのは機関銃。
 セントデビル(阿藤海)はえらくいい声で、いちいち面白い。しかし阿藤海ってこんないい声だっけ? と思ったら、 何故か声だけ渡部猛が吹き替えてしました。それはいい声。
 護送車に乗り込んでいた早川は奪った機関銃片手にデビル団を追い詰めるが、別働隊のバズーカ砲が護送車を狙い、一転大ピンチに。 囲みを切り開いてバズーカ部隊を撃破するも、マシンガンで撃たれて崖を滑り落ちる早川健。
 実に楽しそうです。
 護送車から引きずり出されたいぶきに銃口が迫るその時、ズバット参上! ズバットは雑魚を蹴散らし、いぶきを救出。 早川の使った技をコピーした用心棒に追い詰められるが、ブーメラン鎌をキックで防ぐと、鞭の超乱打で撃破。
 セントデビルを追い詰めると、高い所に上がって
 「2月2日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か?!」
 「知らん……知らん……」
 「ずばぁっ!!」
 ジャンプして着地。
 「貴様だな!!」
 聞いちゃあいない。
 「俺じゃない。俺はその頃……北海道に……い、居たんだ……ぐうぁっ」
 セントデビルは気絶し、ズバット・アタック無しという変則パターン。
 「飛鳥……やはりこいつでもなかったよ」
 戦いを終え、街を去り際にいぶきの元を訪れた早川は、足下に落ちていたラブレターを拾って手渡す。
 「失恋できる内が、青春さ」
 だがそれをきっぱりと、否定するいぶき。
 「失恋なんかしてません。新也さんは優しい人です。警察に電話したのは、あの人じゃありません」
 早川は彼女の肩をぽんと叩いて去っていき、その後ろ姿を見送ったいぶきは、そこで、手にしたラブレターを破り裂く。

 これは凄い。

 恋に恋する少女の頑なさと一抹の愚かしさで落とすのかと思いきや、そこから一転、流れ者の前では想い人を悪く言うことなく、 自分の恋も間違っていないと言い切りながら、現実を現実として受け入れる、少女ながらも女の意地。
 それをラストシーンに集約する事で、全くこれまでにないエンディングを描き出しました。
 新也サイドから見れば、割と常識的な反応しかしていないのもミソ。
 素晴らしい演出でした。

◆第20話「女ドラゴン涙の誓い」◆ (監督:広田茂穂 脚本:長坂秀佳)
 青十字軍のボス・十文字青兵衛の豪邸に忍び込んで取り囲まれた女を助けた早川健。ところがどっこい、 助けた筈の彼女に銃を向けられてしまう。彼女の正体は青十字軍の新しい用心棒、中国八卦掌の使い手・レッドドラゴンであった。
 服、青いけど
 お約束の決闘シーンでレッドドラゴンに敗れる早川だったが、何か様子が妙。実は女はレッドドラゴンの偽者で、 警察の潜入捜査官「加村令香」であり、それを見切った早川は故意に敗北して逃亡したのであった。
 「東条、あんまり小細工すると、彼女の命取りになるぜ」
 早川は東条に忠告し、青兵衛は偽ドラゴンに早川の抹殺を指示。
 一方その頃、本物のレッドドラゴン(赤い)が来日。
 ……本物の足止めをしているわけでもなんでもなく、東条の作戦は相変わらず杜撰すぎ。
 再び偽ドラゴンと対決する早川は、青兵衛が加村令香の弟の仇であると知る。 彼女は車で轢き殺された弟の敵討ちの為に自らこの危険な潜入捜査に志願、あわよくば直接的な復讐の機会を狙っているのであった。
 「私はあなたを倒します。弟のような犠牲者を出さないためにも、私がやるしかないんです」
 令香は早川の制止を拒否。彼女に同じ復讐者としての想いを見た早川は、本物のレッドドラゴンに前に立ちふさがる。 自分が勝てば何も言わずにこの街を去れ、という早川の申し出を、武道家として受けた本物レッドドラゴンは飛び蹴りで狛犬の目をくり抜き、 それで早川を攻撃する、という荒技を見せる。
 (女にしては、確かに凄腕だ……いってぇ……)
 と、ガードした早川、珍しい独白(笑)
 対して早川は、目玉を戻すとともに狛犬の顔を半壊させる。
 「石の狛犬を笑わす技を持っているのは、世界で何人いるかなぁ……」
 神社でそんな技、練習するな。
 本物レッドドラゴンを打ち破った早川は青十字軍の本拠地に乗り込み、青兵衛と対峙。
 「貴様が今まで、車で何人の人を殺したのか、聞きたくなってね」
 「さぁ……数えてみたことはありませんが……趣味なのです」
 青兵衛は不気味な仕種と喋り方で、ここまでの支部長と雰囲気を変えてきていて、面白いキャラクター。
 再び偽ドラゴンと戦う事になった早川はわざと敗れて彼女の脱出の機会を造ろうとするが、早川にとどめを、 と青兵衛に拳銃を渡された偽ドラゴンは、その銃で青兵衛を撃とうとする……だがその弾倉は、空。
 「とうとう尻尾を出しましたね、女刑事さん」
 「なぜ……」

 服が、青いから

 「親切に報せてくれた人が居るのですよ」
 そこに姿を見せたのは、早川に敗れて街を去った筈の、レッドドラゴン!
 「汚ねえぞレッドドラゴン。約束を破ったのか!」
 青兵衛に撃たれまくって逃げる早川は、屋上から転落。
 今日も楽しい死んだフリ。
 というか明らかに、
 拷問に代わる新しいゲージのチャージ手段。
 本物と偽物の戦いが始まり、偽者が追い詰められたところで、ズバット参上。
 レッドドラゴンは格闘戦でズバット相手に善戦するも、
 「ズバット、行くよーーー!!」
 と高い所から必殺技を放とうとしたところを、

 “飛び道具”で倒される(笑)

 初の女性用心棒であった駒太夫とは戦闘というほどの戦闘にならなかった為、実質的な女性用心棒との初戦闘になりましたが、 武器(鞭の握りの部分)で顔面殴ったり、相手が女でも一切ぶれないのが素晴らしい。
 逃亡した青兵衛はさくっと仕留められ、残されたズバットカードを見つめる刑事達。
 令香「早川さんが弟のかたきを……」
 東条「いや、早川じゃない。これをやったのはズバットという男だ」
 東条、揉み消しに必死。
 はさておき、なんか、いいやり取りではあります。
 ここでは「快傑ズバット」が“仮面のヒーロー”として、不条理な世の中への怒りの代弁者へと昇華していて、 それは古典的なヒーローの作用であります。とかく早川が色々とやりすぎるので、そういう要素を感じる余裕が無かったズバットが、 復讐者のゲストを用意する事で、ヒーロー物のそういった一面を意図的に取り上げて描いてみせた、というのは面白い。
 前回から初参加の広田茂穂監督ですが、映像としては前回ほど面白い演出は無かったものの、 ラストシーンでは前回に続いてこれまでの今作とは一味違う雰囲気を出す事に成功。こういう事があると嬉しい。
 なお今回の個人面談では、首領Lに
 「最近、警察の動きが活発だから気を付けろ」
 という台詞があり、なんとなく物語の進展を表現しているっぽい。
 本日のみどりさんとオサムくん:レッドドラゴンにタクシー待ちを横入りされて抗議するも、結局譲る。
 良かった、出番があった。

◆第21話「さらば瞼の母」◆ (監督:広田茂穂 脚本:長坂秀佳)
 夜桜組(いつもの雑魚衣装の背中に桜のワッペン!)の構成員が妙齢の婦人をさらおうとした所に居合わせた早川健は彼女を助け出すが、 その顔を見て驚愕する。彼女……地元の有力者、鶴間家当主の妻である千代は、22年前に生き別れた早川健の母親その人に間違いなかった!
 スーパーヒーロー・早川健の過去に迫る、これまでにない切り口のエピソード。
 正直、試験管で培養されたのだと思っていました。
 雑魚を蹴散らした早川の前に姿を見せた用心棒は、地獄のコック伊魔兵。
 「料理は勝負だ! カカカカカ!」
 とかなるのかと思ってドキドキしましたがそんな事はなく、包丁と皿投げの名人で、皿投げ対決に早川があっさり勝利。 今回、母子の物語がメインテーマな為か、用心棒の扱いはかなり適当。
 後日、妙にハイテンションな早川は通りすがった東条を巻き込むと、千代に「22年前に別れたあなたの息子……健です!」と告白。 最初はそれを受け入れそうに見えた千代だっが、娘の冴子が部屋に入ってきた事で、態度が硬化。食い下がる早川に対して、 母親である事を頑なに否定する。
 ……まあいきなり、22年前に捨てた息子が、新しい家庭に乗り込んできて、しかもそこに年頃の娘が現れたとなれば、 とりあえず否定するのもやむを得ないでしょう。
 「あなたが家出した時、まだ4つだった健です!」
 とか、デリケートな年頃の娘さんの前で、大声で母のたぶん語りたくない過去を暴露するな早川。
 もちろん、捨てられた子の立場にしてみれば、そんな事情に構っていられないというのが人の情というものではありましょうが、 早川の場合は激情家の割に普段から人間心理に鈍感な所が多く見受けられるので、ただの周囲に配慮できない人に見えてしまうのは、 演出の意図がうまく出ずに残念。
 というか東条、黙って壁と一体化していないで、なんとか間をまとめなさい。
 千代の強硬な拒絶を受け入れた早川は、「俺のおふくろはあんな人じゃない!」と叫びながら鶴間家を飛び出していき、 千代はひとり部屋で「許して……健……」と呟くのであった。
 22年ぶりの母子の再会を認められなかった早川であったが、夜桜組に狙われる鶴間家を守る為に、孤独に屋敷を警護する。

 ……一晩中、ギターを弾きながら。

 それは多分、悪質な嫌がらせ。

 ところが、そんな早川に手作りのおにぎりを届けようとした心優しい冴子が、夜桜組にさらわれてしまう。その車を追いかけ、 夜桜組の本部に乗り込む早川健!
 「おーっとっと、逆らおうなんて思わねえほうがいいぜ。俺は特別機嫌が悪いんだ!」
 あっさりと構成員を蹴散らすが、冴子を人質にとられてしまう。
 「早川! 機嫌が悪くてかーっとしている時は、誰でもちっとは抜けてるもんだぜ」
 いつも、抜けてるけどな!
 袋叩きにあった早川は、ダムから落下。冴子を人質にした夜桜組のボス夜叉丸(スーツの背中に桜のワッペン!)は、 身代金として鶴間家から30億をせしめる事に成功すると冴子を始末しようとするが、そこにズバット参上!  フルパワーのズバットはハイスピードで夜桜会を壊滅させ、冴子は無事に解放される。
 冴子の「お兄さま!」という言葉に早川は「人違いでしょう」と肩をすくめ、独り去っていく。 駆け付けた千代は冴子の前で健が息子である事を認め、二人はいずこかの空の下に旅立っていった早川の名を叫ぶのであった……。
 本日のみどりさんとオサムくん:千代に拒絶されて泣きながら歌う早川を見て近付こうとするも、東条に止められる。
 みどりさん的には、心の隙間に忍び込むチャンスだったのに!

◆第22話「少年ボクサー涙の父」◆ (監督:田中秀夫 脚本:長坂秀佳)
 (※初回配信時にAパートが見られなかった分を、再配信で視聴してBパート分と合わせて改稿)

 世界タイトル戦を控えたボクシングジムで、挑戦者・矢川元の元に金をせびりにやってくる、酔いどれの駄目親父・丈二。 息子にすげなくされて公園で黄昏れていた丈二は、突然いつのものチンピラ達に袋叩きにされ、 割って入ろうとした息子を「プロボクサーのパンチは凶器になるから手を出すな」と押しとどめる。
 そこへやってきたのは毎度お馴染み、全身凶器のあの男。
 「なんだ貴様は?!」
 「プロボクサーじゃない男さ。おまえさん達をいくらぶん殴っても、俺の拳骨なら、凶器にはならねぇ」
 チンピラ達の正体は、丈二にわざと喧嘩をさせて問題にしようとした、ゼット団。早川は華麗にチンピラ達を叩きのめすが、 そこへ丈二の明日の対戦相手である世界ライト級チャンピオンにして、ゼット団の用心棒、カネアスドレイが姿を現す。
 問題が、物凄い勢いで発生している。
 用心棒対決でピストルの弾丸を撃ち落とすカネアスドレイ、けっこう凄い。
 対する早川は、グローブで弾丸をつかみ取る妙技を披露。
 どちらが凄いのかやや微妙ですが、相手が勝手に負けを認めました(笑) 単純に弾丸にカウンターを決めるより、 完全に衝撃を殺して受け止める方が高等技術という事なのか。
 「こんな事で驚いているようじゃ、日本じゃ3番目以下かもしれんぜ」
 解放された父親は結局息子に酒代をたかって去って行き、早川も思わず苦笑。
 「昔は、あんな親父じゃなかったんです」
 仕事一筋で家にはほとんど居なかった父親……4歳の元が高熱を出してさえ、大事な仕事があると出て行こうとした父だったが、 「仕事なんて死んでしまえ」という元の言葉に足を止めて看病を続け、だかそれから、父の様子は少しずつおかしくなり、 今ではただの駄目人間になってしまったのだった。
 そんな駄目人間はゼット団のボス・ミスターZにさらわれ、特製の時限爆弾、地獄ベルトを取り付けられる。 ミスターZの目的は、元とカネアスドレイの試合で八百長を仕掛けて大金を儲ける事。死にたくなかったら息子を負けさせろ、 と脅されて煩悶する丈二は早川と出会うが、逃走。早川は、眼鏡を外した丈二の顔を見てその過去に気付くと、 試合会場に急いで元に丈二の真実を明かす。丈二は元の看病の為にタイトル戦をすっぽかし、ボクシング界から永久追放を受けた、 元プロボクサーだったのである。
 そこへかかってくる、八百長を強要するミスターZからの脅迫電話。ミスターZ、 首領Lの部屋で電話を借りているのですが、何者?!
 名前がアルファベットなのは、上級支部長とかなのでしょうか。
 「元、父ちゃんはな、一足先に母ちゃんの所に行ってるからな。今まで言えなかったが、 父ちゃんは他の誰よりもおまえが好きだった。もっといい父ちゃんで死にたかったが…………ごめんな」
 父を探そうとする元を試合に向かわせた早川は、父子の思い出の公園で息子の為に死を覚悟する丈二を見つけ、 地獄ベルトを取り外そうとするが簡単にはいかず、そこへ現れたミスターZと配下に囲まれ、 今日も楽しくマシンガンを浴びて池に落下。
 悪漢達が父親を囲んでいる所に、ズバット参上。
 ミスターZ「あと30秒でこいつは死ぬ。今更間に合わんわ」
 丈二を取り囲んで高笑いするミスターZと構成員達。
 位置的にあと30秒で一緒にお亡くなりになるのに、凄く、豪快です。
 だが!

 「ズバットの鞭に、できぬことはない!」

 ズバットの鞭が地獄ベルトに一閃すると一瞬でベルトは外れてしまう(笑) ズバットがそれを放り投げた所で爆発。
 今までも散々踏み越えてきましたが、更にまた一歩、踏み越えた感。
 ズバットはミスターZ以下を軽く叩きのめし、父を連れて試合会場へ戻ると、そこでは元が見事に世界チャンプの栄冠を手にしていた。 長年のわだかまわりが消え、打ち解け合う父子の姿を目に焼き付け、早川は何も言わずに会場を後にするのであった……。

◆第23話「大神家一族の三姉妹と天一坊」◆ (監督:田中秀夫 脚本:長坂秀佳)
 50億の遺産を残して死んだ大神家の当主は、「3歳の時に誘拐された行方不明の長男・天一に遺産を与える」という遺言を残す。 ただし、「1年経っても天一の行方が判明しない時は、3人の娘に10億ずつを与えて、残りの20億は施設に寄付をする」と。 この遺言をきっかけに、欲望を剥き出しにして亀裂が走る3姉妹。長女の霧子は紅狐党に二人の妹の暗殺を依頼、そして焼香に現れる、 顔を包帯で隠した謎の男……。
 と、もちろん激しく換骨奪胎されていますが、タイトルも全体のイメージも『犬神家の一族』のパロディ。また「天一坊」は、 時代劇の有名ネタとなっている、徳川吉宗のご落胤を語る男の騒動「天一坊事件」からと思われます。 何がどうして+渡り鳥のハイブリッドになったのやら。ちょっと調べたら、『ズバット』前年の1976年に、 市川崑監督・石坂浩二主演の『犬神家の一族』が公開されており、まあ、流行り物、という事だったのかもしれません。
 ただし、早川健が大暴れしたり、暗殺を依頼された紅狐党が物凄く直接的だったりで、当然、 ミステリーにはならないわけですが(笑)
 今回の用心棒は、死の手品師・ダンディハリー(演じるは、変身忍者嵐の南城竜也!)
 早川は紅狐党に命を狙われた次女・嵐子を助けるが、今度は三女の小雪も襲われる。それを救ったのは早川と、謎めいた包帯の男。 心優しい小雪は相続争いで姉妹の仲が険悪になる事に耐えられず、思いあまって包帯の男に天一の身代わりを頼み込む。 小雪から借りた親族の証のお守り、そして、たまたま天一と全く同じところについていた特徴的な3つの黒子で、 二人の姉に天一だと認めさせる包帯男。 だがその正体は……紅狐党のボス・紅フォックスが大神家の50億の遺産を奪い取る為に潜入させたダンディ・ハリーであった!
 ……ところで前々回、誘拐された娘の為にぽんと30億円払った人が居た為、 大神家の遺産の額に今ひとつインパクトがありません(^^; 明らかに前々回が、やりすぎなのですけど。
 そんな時、障子を破って霧子が死亡。そして偽天一も負傷するが、早川はその正体がダンディハリーであると喝破。 Bパート早々に正体のばれてしまったハリーは犬神家を去るが、包帯の男に惹かれていた小雪は、 ハリーからの電話での呼び出しに応じてしまう。
 一方、早川は東条から驚くべき事実を聞いていた。小雪がハリーに貸したお守りの指紋を警察で調べたところ、 誘拐事件の際に採取・保管されていた本物の天一の指紋と一致したのだ!
 偶然にしてはあまりにもそっくりな三つの黒子……3歳の時に誘拐された為に本人も全く覚えていなかったが、ダンディハリーこそ、 本物の大神天一だったのである。電話で呼び出した小雪を始末しようとしたハリーだが、駆け付けた早川の語る真相に困惑して逃走。 だがそこへ、話を聞いていた紅フォックスが一味と現れ、銃弾の雨を浴びて倒れ足る早川健(秒速チャージ!)。 小雪が追い詰められた所でズバット参上、逃げ出す紅フォックスを追い詰めるズバットだが、そこへダンディハリーが立ちふさがる。
 魔力・シルクハット手榴弾!
 帽子の中から手榴弾を取りだして投げまくるハリーは更にマシンガンを取り出すと銃口をズバットに向ける。
 対決もこんな感じで、帽子から何を取り出せるか対決の方が面白かったような。
 だがその時、小雪の「お兄さま、やめてー!」という叫びにハリーは動揺し、ズバットに組み付かれてマシンガンを取り落とす。 もつれあうズバットとハリー、そして駆け寄る小雪。マシンガンを拾った紅フォックスは小雪に向けて引き金を引き、 咄嗟に彼女をかばったハリーは銃弾を浴びて死亡。
 怒りのズバットはマシンガンの弾丸をはじき飛ばすと、フォックスを鞭で捕獲。寸前まで怒っていたけど、 実際の所まあハリーの事とか割とどうでもいいので、とりあえず飛鳥の事を聞く。
 「俺はその頃、シシリー島でスパゲティーを食べていたんだー」
 えらく細かいアリバイを口にし、気絶する紅フォックス。
 ……名前といい服装といい、ブラックジャガー(『大鉄人17』)の親戚か何かだったのでしょうか。
 かくて紅狐党は壊滅。残された二人の姉妹は、遺産全てを施設に寄付すると、父と姉、そして兄の菩提を弔う為に仏門に入るのであった……。
 最初と最後が早川健のナレーションに始まってナレーションで終わる、というのも珍しいのですが…… この感想を書いている途中でようやく思い出したのですけど、そういえば、早川健は探偵だった!
 故に、探偵小説のパロディを描く一定の(?)理由はあったのですね。最初からそれを意識して見るか見ないかで、 少し印象の変わる話だったかもしれません(^^;

◆第24話「涙の健 見知らぬ街の恋人」◆ (監督:田中秀夫 脚本:長坂秀佳)
 山で助けた女性・白鷺れい子に一目惚れした早川は、天山会に支配される無法都市で危機に陥った彼女を何度も助ける。 れい子が早川の忠告を無視して繰り返し街へ入るのは、どうしても会いたい男性がそこに居る為であった。
 「私、どうしても彼の気持ちを確かめたいんです。今でも私を愛しているのか。今でも結婚する気持ちに変わりがないかどうかを」
 「幸せな男だ。あなたのような人に、命がけで愛されるとは」
 動揺しつつもぐっとこらえて男気を見せた早川は、れい子の婚約者捜しに協力する事を約束する。
 「その方の名前はなんて言うんです?」
 「その必要はない」
 「東条!」

 東条ぉぉぉぉぉぉ?!

 紫色のジャケット青緑色の開襟ガラシャツ の東条ぉぉぉぉぉぉッ!!
 ……70年代ではお洒落だったのでしょうか?
 「俺はこの1年、ある悪の大組織を追っている。付き合ってる暇はないと言った筈だ」
 東条の態度は冷たく、部下二人を付けてれい子を市外へと送り出すが、天山会によって部下は殺され、れい子はさらわれてしまう。 逗留先のホテルに駆け込んできた東条の激しく狼狽した様子に、東条が本心ではれい子を大事に思っている事を確信した早川は、 悲しみを心のダメージとしてチャージし、快傑ズバットとしてれい子の救出に向かう!
 「天山会の仕業に間違いないが証拠がない!」と言いつつ早川の元へやってくる東条が凄くファール(笑)
 まあ、ズバット=早川健の度重なる犯行を黙認している時点で充分に真っ黒なのですが、とうとう、遠回しですがハッキリと、 “仕事を依頼”してしまいました。言質が取られないようには気をつけているけど。
 廃工場から吊されるれい子のもとに、ズバット参上!
 廃工場の三角屋根の頂点(しかも骨組みが見えている)とか、凄いところに立っています。
 ぜいちく爆弾使いのウリ・ケラー(別に超能力者ではない)を撃破し、天山会のボス、ドン・天山を鞭で痛めつけて成敗。 一応、飛鳥殺害について聞いてみたところ、メキシコに出張中でした。
 ……ダッカーの支部長のアリバイに海外出張が多いのは、後でパスポートで確認できるから?
 こうして、早川はれい子を助け出すと東条を呼び出し、二人を引き合わせると、格好つけながら去って行くのであった……。
 注目は、東条に「ある悪の大組織」という台詞がある事。
 いよいよそろそろ、ダッカーの存在が表に出るのか?
 今回のみどりさんとオサムくん:基本的にゲストヒロインが強調される回では出てきません。
 ……しかし今回、一番悲惨だったのは、上司の婚約者の護衛、というプライベートすぎて意味不明な任務を受けた上で台詞だけで 殺されてしまった東条の部下AとB。上司が無能だと部下は無駄死にするという典型的な事例となりました。

→〔まとめ5、へ続く〕

(2013年3月11日)
(2014年10月16日,2017年3月27日 改訂)
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