■『超獣戦隊ライブマン』感想まとめ1■


“友よ、君たちは何故、悪魔に魂を売ったのか?!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超獣戦隊ライブマン』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「友よ君達はなぜ?!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ……しかし、こいつら、友達なの……?? が、ちょっと気になる第1話。
 ブルーバックに瞳のアップ、そしてリーゼント(正確にはポンパドール)の強調は、かなり前作からの流れを感じるOP映像で、 主題歌はかなり好き。
 物語は科学者たちの島・アカデミア島から始まり……
 ナレーション「島にある科学アカデミアでは、世界中から集められた優秀な若者達が」
 浜辺をランニングしていた。
 そう、10年後の異能天才集団アルケミースターズ(のごく一部)も言っています。
 物事の基本は、体力……!
 若者達は真理に近づくべく筋肉を鍛えあげ、地球の未来を担う最先端科学を学ぶと共に、国連化学省の巨大プロジェクト、 巨大宇宙衛星・スペースアカデミア号建造計画に若い夢を燃やしていたが、それに反抗的な態度を取るメンバーが約3名……。
 ある日の夜、船内活動強化スーツの実験中だった主人公トリオは大爆発を起こして友人二人を抹殺しかけるが、 強化スーツの性能によって事なきを得たのも束の間、アカデミア号反対派の月形剣史(広瀬匠……!)を中心とした3名が、 謎の輸送機に乗り込もうとする姿を目撃した事で、その二人、卓二と麻里は月形の手にかかって射殺されてしまう。
 月形ら3名は輸送機に乗って宇宙へと消え、降りしきる雨の中に主人公たちの慟哭が響き、それから2年――。
 スペースアカデミア号の乗組員発表式典が行われ、いよいよ宇宙へ向けて発進したその時、 謎の戦闘機部隊が襲来してアカデミア号を攻撃。プロローグで敢えなく射殺され、今また、 アカデミア号に乗せられた写真が無惨な墜落炎上で吹っ飛び、1話で実質2回殺される卓二と麻理の扱いが鬼すぎる……!
 アカデミア島は大爆撃を受け、え、星博士、もう死んだ……?
 爆撃開始までがAパートというスロースタートから一転、逃げ惑う人々と次々と巻き起こる爆発の物量による混乱状況の演出には大変力が入っており、 いきなり爆発爆発そして爆発に巻き込まれる主人公トリオ。
 特に、青が自転車で爆発から逃げているシーンが、見ていて心配になる爆発の近さ。
 なんとか猛火の中を生き延びる赤黄青だが、科学アカデミアは灰燼と化し、そこに降り立ったのは……
 「月形……!」
 「……ほう。下等生物は生命力が強いな」
 2年前、宇宙に消えた月形ら3名が奇抜な衣装で地球に帰還し、ここで主役の名前を呼び返してくれれば印象に残ったのですが 「下等生物」扱いされてしまい、この第1話、主人公の名前が全く印象に残らない、ちょっと困った作劇(笑)
 「黙れ! 貴様等こそそれでも人間か!」
 「あの日から俺達は、人間を捨てたのさ」
 ――2年前、月形ら3人は、宇宙空間に浮かぶヅノーベースで、大教授ビアス(中田譲治……!)に謁見。
 「俺は武装頭脳軍VOLT、Dr.ケンプとなったのだ!」
 「そして私は、Dr.マゼンダ」
 「Dr.オブラー」
 「おまえ達……」
 「地球は真の天才、大教授ビアスを中心とした、天才だけによって支配されねばならん!」
 「その為に、おまえたちのようなクズを掃除しにきたのさ」
 マゼンダは改造した指先から銃弾を放ち、ケンプは美獣ケンプへとダークバーストし、濃いビジュアルでぐいぐいと押してきます。
 「見たか! 大教授ビアスの元で2年間身につけた、この 筋肉 科学力を!」
 「おまえ等に2年の月日があったらな、俺達にも2年の月日があったんだ!」
 ここの返しは格好良く、2年前の出来事から外敵の存在を確信した3人は、殺された卓二と麻理の仇を取る為にも密かな準備を進め、 腕にはめていたブレスで変身。
 「俺達はな、生けとし生きるものを守る戦士! レッドファルコン!」
 「イエローライオン!」
 「ブルードルフィン!」
 「超獣戦隊」
 「「「ライブマン!!!」」」
 「この強化スーツ、2年前のものとは違うぜ!」
 友人達の復讐という極めて“私”の動機付けが、全ての命を守るという“公”の大義に最初からひとっ飛びで繋がってしまうのはこの時代という感じですが、 主人公達のパーソナルな目的をヒーローの戦いに接続した上で、敵幹部との極めつけの因縁を物語の開幕に設置し、 『フラッシュマン』『マスクマン』を踏まえた上での工夫が窺えます。
 ヒーロー自身が独力でバトルスーツを製造するのは恐らく戦隊史上初だと思われますが(アメコミだったりソロヒーロー寄りといえましょうか)、 2年前の因縁のスーツである、というのは上手い設定。また、主役トリオが乗組員どころか発射当日に私服 (発射に関する仕事を割り当てられてさえいない)だったのは、復讐の為にバトルスーツの開発とかばかりしていたからというのは、 成る程納得(笑)
 剣・弓矢・手甲、を身につけてモヒカン兵士に立ち向かうライブマンだが、 研究開発にかまけて筋トレをさぼっていたのかロボット兵士の攻撃に苦戦した上、 全身に重火器を仕込んだサイボーグマゼンダの攻撃を受け、初名乗りからおよそ1分半で壊滅の危機!
 だがその時、大地を揺るがし巨大なライオンメカが姿を現すと、掟破りのダイレクトアタック!
 しばらくメカ特撮シーンでライオンが大暴れするが赤と青は爆撃に追われて逃げ惑い、爆発がまた近い!
 ライオンメカも敵機の反撃を受けて炎に包まれ、ライブマン苦境のまま、勢いよく、つづく。
 Aパートほぼ戦いの前振り、変身してはみたが気持ち良く勝てない、バトルスーツも巨大メカも自家製(優秀な科学者なので)、 苦戦したままつづく、ついでにボスキャラは顔見せだけで一言も喋らない、 と当時のスーパー戦隊のマンネリを避ける為の試行錯誤と生みの苦しみが窺える第1話。
 生まれ故郷の星で親を探す『フラッシュマン』、赤が生き別れの恋人を取り戻そうとする『マスクマン』、 と侵略者との戦いと並行したパーソナルな目標設定とキャラクターの掘り下げが過去2作の流れだったのですが、2年前の死、 海を見下ろす崖に並んだ墓標、写真立ての爆発炎上、と徹底的に強調した友の復讐を、 かつての同輩である筆頭敵幹部と強烈に因縁付けた物語が、うまく転がってほしいです。

◆第2話「命に誓う三つの力」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 第1話を踏まえると、二匹の蝶(魂の象徴)が光線銃で打ち砕かれる導入が、成る程、というOP。
 感想が書きにくいので諦めてクレジットをチェックし、レッドファルコン/勇介・イエローライオン/丈・ブルードルフィン/めぐみ、 がライブマンのメンバー。3人中2人リーゼントという空前のリーゼント率なのは、恐らく時代です。 『チェンジマン』の後『フラッシュマン』(実質制服戦隊)を挟んで、前作『マスクマン』から私服のお洒落度が少し上がったようなそうでもないような。
 戦闘機部隊の逆襲を受けてランドライオンが絶体絶命に陥った時、アクアドルフィンとジェットファルコンが出撃して次々と敵機を撃破し、 先週ラストで爆撃の塵になりそうだった二人がいきなりメカに乗り込んでいて戸惑いますが、今回はそんな展開が目白押し。
 なんとか戦闘機部隊を退けた3人は、廃墟と化した科学アカデミアの瓦礫の下から辛うじて一命を取り留めていた星博士を発見し、 博士が密かに希望岬の沖に秘密基地を作っていた事を教えられる。
 「いいか…………三つの力を合わせるんだ」
 だがその前に姿を見せたケンプが、漆黒のロボット・ガードノイドガッシュを出撃させ (クレジットによると日下秀明さんが声を担当しており、『ジェットマン』のグレイの原型……?)、 その放射したカオスファントムにより、廃墟の中から頭脳獣・バラバラヅノーが誕生。
 熱に浮かされたような表情で頭脳獣について早口で語るケンプの口元や目を大写しにしてその狂気をえぐり出し、 今回もぐいぐいとビジュアルで押してきます。
 「……ま、おまえ達にいくら講義したところで、わかるまいがな」
 から急に醒めた口調になるのも秀逸で、生身でモヒカンに立ち向かう勇介は、今回も筋肉不足で大苦戦。
 追っ手を振り切り廃墟となった病院のベッドに博士を横たえる3人だが、瓦礫の下で産気づいた妊婦を発見。 このままでは全滅するだけだと博士に背中を押され、妊婦を博士に任せて岬へとダッシュ。
 「ここから先は通さん!」
 だがその前にたちはだかる、美獣ケンプ。
 前々作『超新星フラッシュマン』で広瀬さんが演じたレー・ワンダは、 肌は出ていたものの化粧と髪型が派手で顔の造作はほとんどわからないものでしたが、 Dr.ケンプは美獣(凄いネーミング)モードでも役者の顔と表情を活かすデザインとなっており、 それ自体が“人面獣心(身)の怪物”を示す効果も発揮しているのですが(スフィンクスのニュアンスも入っている……?)、 キャストありきだったのかデザイン先行だったのか、ちょっと気になるところです。
 「こういう知性を感じさせない言葉はいいたくないのだが……くたばれ!」
 額に指をあてて首を左右に振る仕草も合わせて、最高でした(笑)
 勇介たちは変身して、仕切り直しの主題歌バトル。モヒカン兵士は蹴散らすもバラバラ頭脳に苦戦する3人だが、 飛び道具で反撃すると必殺バズーカを召喚して撃破に成功し、手製にしては殺意高めの復讐戦隊ライブマン。
 ……歴史を遡っていくと、最新(超)技術と直結しやすい科学者系ヒーローというのは珍しくないのですが、 組織のバックアップを受けたチームヒーローの伝統を持つスーパー戦隊ではやや説得力が弱い面はあるものの (過去作品だと『ダイナマン』が実態の近い例)、回想シーンを見る限り、こっそり星博士@妖精さんが、 あちらこちらに手を加えていそうです(笑)
 「ふふふ、まだまだ甘いな勇介たちめ。このバルブをこちらに繋いで、このエネルギーをこう回してこの回路を取り付けてここの効率を上げれば…… ほぅら、ジャンボジェットだって一撃で蒸発させるぞくっくっく……おっと、いかんいかん、私は正義と良心の徒、星なのだ……さて、 次は、おやおや、動物型の巨大メカとは、面白い。いいぞ勇介くん、この星が、君たちの復讐に、最高のスパイスを加えてあげよう……」
 かくして消し飛ぶバラバラ頭脳だったが、ガードノイドガッシュのギガファントムにより巨大化され、ギガファントムの説明は省かれました!
 「この島には愚か者どもの命の欠片も残してはならん!」
 巨大頭脳獣が大暴れする中、妊婦をベッドに乗せて岬へ運ぼうとする星博士のサスペンスはだいぶ苦しい感じ。
 一方、巨大バラバラを止めようと躍りかかるも敢えなく吹き飛ばされるライブマンだが、 結果として岬までの移動ルートがショートカットされ、海中に隠されていた秘密基地――グラントータスへと辿り着く。 そこに待ち受けていたのは、星博士の造ったちゅうかなぱいぱい、じゃなかった、女性型アンドロイド・コロン。
 そのナビゲートにより博士が3つのメカに組み込んでいた合体システムが明かされ、 「三つの力を合わせる」という博士の言葉の真意を知る3人だが、星博士は倒れ来る鉄骨から妊婦をかばい、死亡。
 「頑張るんですよ……生まれてくる命の為に……」
 命の尊さとそれを守るヒロイズム、それを実行して散っていった先達、を描く事により物語のテーマを補強する狙いはわかるのですが、 ただでさえ荒っぽいライブマンの場所移動を加速させてしまった上、博士自身が重傷の為に諸々の行動にだいぶ無理が出てしまい、 せめて、博士は軽傷→カバーリング→鉄骨の打ち所が悪かった、でも良かったような。
 星博士の死を知らないまま巨大バラバラに挑むライブマンは合体ライブディメンションを発動し、 胸に力強くライオンヘッドが飛び出したライブロボが誕生。戦隊の特性と直結しない兵器モチーフではなく、 ヒーローと紐付けされた生物の意匠を明確に取り込んだ個別メカから、その特徴を残した巨大ロボへの変形合体、は戦隊史上初ででしょうか。
 ……というよりも、秘密・(電撃・バトル・)電子・太陽・大・科学・超電子・電撃・超新星・光……と来て、 超獣=ファルコン・ライオン・ドルフィン、と戦隊の肩書きと具体化されたモチーフが一致しているのがそもそも初……?
 ジャッカー(JAKQ)電撃隊=トランプモチーフ、をどう捉えるのか難しいところですが、敢えて「○○戦隊」の型式にならすなら、 「電撃戦隊ジャッカーマン」でしょうし(笑)
 従来作よりも見た目のアニメ的なスーパーロボット感が強いライブロボが、超獣剣を取り出し振り回す姿は思わぬスピード感で格好良く、 スーパーライブクラッシュで一刀両断。
 (甘いな……ライブマン)
 だが宇宙ではなにやら壁の装置を見つめた大教授ビアスが独白し……やっと喋った!
 焼け野原と化したアカデミア島では新たな命の産声があがり、それを喜ぶ勇介たちは、同時に星博士の死を報される。
 「ありがとう博士。命を守る事がどういう事か、教えて下さったんですね」
 「俺達は地球を守ります。生きとし生けるものの全てを守り抜きます」
 「誓います。この小さな命に……」
 1−2話にして、 友人二人死亡・犯人は裏切り者の同期・アカデミア号墜落・科学アカデミア壊滅・学友大量死亡・アカデミア島全滅・恩師死亡 という大量虐殺の生き残りとなって近しい者から見知らぬ顔まで凄まじい量のカルマを背負う事になりましたが、あまりにも重すぎて、 この後、ギャグとか入れていいのか心配です。
 パイロット版担当は前作に引き続いて長石多可男×曽田博久。『太陽戦隊サンバルカン』以来となる3人戦隊に様々なアレンジを施し、 敵味方の因縁構築を重視した上で、第1話は苦戦のまま終わり第2話で基地と巨大ロボを手に入れる完全な前後編、という構成。
 前作では、第1話でひとまず怪人を撃退するも第2話で巨大ロボがいきなり敗北し、第3話でマスクマンが真の覚醒を果たす構成であり、 長期シリーズゆえの模索と工夫が窺えますが、第1話のライブマンはさすがにあまりに爽快感に欠けましたし、 第2話も色々な要素を入れようとしすぎてとっちらかってしまい、率直にあまりパッとしない立ち上がり。……この辺り、 当時の視点だとインパクトのある要素(例えばライブライオンなど)が、今見るとそうでもない、という部分もあるでしょうが。
 その中で、じっくりと時間をかけた敵味方の因縁構築はOP冒頭にも掲げられている事から作品の顔になりそうなので、 上手く噛み合っていってほしいです。個人的には、ビアスとケンプだけで完走の動力に出来る予定ですが、 「こういう知性を感じさせない言葉はいいたくないのだが……くたばれ!」はホント最高でした(笑)
 次回――パイロット版では口が裂ける程度の描写しかなくおまけ扱いだったDr.ケブラーに焦点が当たり、 友情の存在も確認されるようで、成る程。

◆第3話「オブラー悪魔変身」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「いかがでしょう? 私の実験計画は」
 「そうへりくだりながらも君は自分の計画に酔い痴れ、自惚れている。自信たっぷりだな」
 1−2話では一言しか喋らなかったビアス様が、「へりくだり」「酔い痴れ」「自惚れ」という言葉のチョイスも含め、 冒頭から色気たっぷりの演技で超格好いいぃぃぃぃ!! そして左肩の出っ張りが重そう(笑)
 「良い、いや、そうでなければならん。この計画は、我が武装頭脳軍ボルトの科学力を証明する、素晴らしい計画だ」
 ビアスはオブラーの提案した計画を褒め称え、その背後で早速、爪を噛むような仕草を見せるケンプもおいしく、 黙って銃を磨くガッシュなど、画面の奥行きを使って細かくキャラを肉付け。 また冒頭の言葉でビアスのみならずオブラーの性質も表現されているのが、実に上手い。
 「見納めだな、この顔も」
 ビアスはオブラーの両頬に手を添えて甘く囁き、オブラーはオブラーで陶酔した表情で瞳を輝かせ……これあれだ! 今だと多分、 森川智之さんが声アテるやつだ! と約30年前の中田譲治さんの美貌と美声が全力で炸裂し、アバンタイトルから凄まじい濃さ(笑)
 なお、中田譲治さんご本人のツイートによると、ビアスのイメージ造りには『ラビリンス』のデヴィッド・ボウイと『魔界転生』の沢田研二を参考にしたとの事で、 成る程納得。
 考えてみると、シリーズでスタート時点のボスキャラが人間大&完全顔出しなのは、 『超電子バイオマン』のドクターマン以来かと思われますが、悪の組織を率いるカリスマ性をどうやって見せるのか、 においてスタンダードであった“異形の脅威感”を離れ、“生身の醸し出す妖しさ”を軸に据える、面白い方向性が打ち出される事に。
 街にはオブラーの指揮の下に現れたウィルスヅノーが市民達に謎の薬物を打ち込み、 動物ヘッドの付いた格好いいバイクでパトロール中だったライブマンはこれと遭遇。 動物ヘッドの口がぱかっと開くとライトが出てくるギミックが素敵なバイクなのですが、勇介たちの手製なのか、 星博士がこっそり改造していたのか、少々気になります(笑)
 現場に落ちていた薬品を基地で分析したライブマンは、その中身が特殊なウィルスである事を知り、勇介は2年前、 まだケンプ達が科学アカデミアに在籍していた頃の事を思い出す。
 その時、勇介は、アカデミア内部のアスレチックジムで筋肉と対話していた。
 科学アカデミアも若き科学者達に筋トレを推奨していた事が明らかになり、やはり、筋肉こそが真理への扉なのです。
 ケンプ役の広瀬さんがアクションも出来る方である事を考えると月形も相応に鍛えた肉体の持ち主である可能性は高く、 勇介と月形の友情は、教室ではなくアスレチックジムで育まれていたのかもしれません。
 「よお月形、また会ったな! 今日はベンチプレスで勝負しようぜ!」
 「ふっ、愚かな男だ天宮勇介。俺の筋トレ理論はおまえの100年先を行っている。筋トレとは――ただ数をやればいいものではない」
 「なにぉぉ?! 俺の根性、見せてやるぜ!」
 (端から見ると)ふたりはなかよし。
 そして勇介は、さして仲良くない相手にも軽い調子で話しかけて、相手の性格によっては余計に距離を取られるタイプだった(笑)
 「いつの日か必ず証明してみせる。人間はもっともっと凄い生命体になれるんだ! これまでの人間なんてくだらない存在さ。 ……そんな体、くだらないね。実にくだらない!」
 勇介からの筋友の誘いを撥ね付けたオブラーこと尾村豪は執拗に筋肉を否定し、勇介はオブラーが唱えるウィルス進化論の証明の為に、 人体実験を行っているのではと推測。
 オブラーを探す3人は、アジトでウィルス注入中のオブラーを発見し、 第1話から美獣とサイボーグの姿で「人間をやめた」事を見せつけてきたケンプ&マゼンダに続き、 オブラーが「人間をやめようとする」姿を克明に描く事で、勇介たちとの断絶がより強調されるのは、上手い構成。
 モヒカン兵士が迎撃に飛び出してきて乱戦となり、アジトの外まで殴り飛ばされた丈は、 ウィルスの影響か弱り切って地面に倒れていたオブラーを発見。
 「助けてくれ……苦しい……助けてくれ……」
 その姿にオブラーを助けようとする丈だが、復讐に逸る勇介は「トドメを刺す」を推奨し、 主人公たちの強烈な動機付けである復讐の一念を改めて強調。
 2年前の出来事のみならず、アカデミア島攻撃による大量虐殺に関わっている事でその正当性を補強しつつ、 弱り切ったオブラーの姿を見ても果断を下そうとする勇介&めぐみと、そうは言っても同輩への情に揺れる丈を対比する事で、 強い復讐心と割り切れない思い(3人の抱える人間性)の双方を同時に描き出しているのが鮮やか。
 勇介に2年前の事を、めぐみにアカデミア島&星博士の事を言わせる事で、どちらにも相応の重みを持たせるのも上手く、 正味17分の中で如何に人物の心情を的確に掴みだし、劇的な展開に持っていくのかという80年代中期戦隊作劇における、 曽田脚本を中心としたスタッフの技術が光ります。
 1−2話はさすがに詰め込みが過ぎた感がありましたが、今回は演出面にも余裕が出ていて、 表情の切り取り方や画面の構成など随所に長石監督らしい芝居の見せ方となり、 各キャラクターの抱える情念の部分がグッと深まったのもお見事。
 「待ってくれ! こいつだって、始めっからこうじゃなかったんだ!」
 隙あらば眉間にライブラスターを撃ち込みかねない勇介達に対し、アカデミア入学当時、 豪が溺れた子犬を助けに海へ飛び込んだ出来事を語る丈。
 「自分が泳げない事も忘れて、子犬を助けようとしたやつなんだ。あの時の豪が、本当の豪なんだ。俺は、子犬を助けようとした時の、 尾村豪に戻ってほしいんだよ」
 「甘いぞ丈。こいつはもう悪に魂を売ったんだ!」
 「でも……」
 そこに怪人と戦闘員の追撃が迫り、丈はオブラーを背負って走り出し、勇介とめぐみは結果的に足止めを担う事に…… 苦笑して受け入れる勇介とめぐみですが、落ち着いて考えると、だいぶ酷いな、丈(笑)
 逃走途中、オブラーに頼まれて近くの川に水を汲みに行く丈だが、その間にオブラーの体には変異が始まり、顔には狂気の笑みが浮かぶ。 そして戻ってきた丈を待ち受けていたのは、異形の牙と爪を剥き出しにした尾村豪……ならぬ、Dr.オブラー!
 「このチャンスを待っていたんだ」
 「騙したのか?!」
 「あの時、子犬を助けようとした事……俺はどうかしてたのさ。あれは俺にとって唯一の恥ずべき過去の汚点。……それを見たおまえは、 絶対に殺さねばならぬ!」
 一方から見た篤い友情の記憶が、一方にとっては忘れたい過去の汚点だった、 と同じ出来事に対して全く逆の意味づけが行われるのは断絶のクライマックスとして鮮烈ですが、香村純子さんが今作を好き、 と聞いた上で見ると、『ジュウオウジャー』『ルパパト』で香村さんが要所で用いていた作劇パターンの一つなのは、興味深い点。
 オブラーは悪魔変身により完全な着ぐるみ怪人の姿へと変貌し、驚愕した丈は合流した勇介とめぐみにやるせない表情を向け、 その肩を黙って叩く勇介。
 「Dr.ケンプは美獣に変身した。Dr.マゼンダも自己改造した。しかし君たちは人の姿を残している。愚かな人間を否定する者が、 人間の姿を残すなんて恥ずかしいと思わんのかね。人間を乗り越え、人間以上の存在になるとは、完全に人間を捨て去り、 私のようになることだ」
 オブラーは様子を見に来たケンプとマゼンダに向けて高らかに告げ、言葉の途中で川面に異形と化した自らの姿を写すのが秀逸。
 「今、Dr.オブラーは最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体に進化したのだ」
 ……あ、なんか、それ、駄目なパターンでは(笑) (ハカイダーとかハカイダーとかハカイダーを思い浮かべつつ)
 「このやろぉぉ!! おめぇってやつは! おめぇってやつは! 豪!」
 それでも胸ぐら掴んでオブラーの中の豪の存在に一片の望みを賭ける丈だが、無造作に殴り飛ばされてしまう。
 「おめぇってやつはよ……もう、尾村豪じゃねぇ……もう、友達でもなんでもねぇ! ――イエロー・ライオン!!」
 第1話から紛糾していた「どの辺りが友達……?」問題ですが、とりあえず勇介と丈は「一度でも一緒に食事したら友達」 ノリ風と順当に収まり、友情は半ば一方的にせよ、丈と豪に関しては生死の狭間を共にくぐり抜けた仲といえますが、 それ自体がオブラーの持つ恐らくは肉体的なコンプレックスを刺激して報復に駆り立てている、というのは納得。
 ライブマンは変身して戦闘になり、今回も、爆発が、近い! イエローはオブラーに崖の上から蹴り飛ばされて結構な高さを転落し、 頭脳獣と挟み撃ちを受けるが、オブラー光線が頭脳獣に誤爆。その隙を突いて飛び道具からバイモーションバスターを召喚し、 ライブマンはウィルスヅノーを撃破。
 ギガファントムで巨大化するとコロンが基地を浮上させて大型輸送機が発進し、合体メカはモチーフ強調路線になったものの、 空中戦艦ポジションの存在は継続。輸送機はミサイル攻撃で牽制してから各種メカを出撃させ、合体ライブディメンションすると、 大変ざっくりスーパーライブクラッシュ。
 丈(ライブマンサイド)と豪(ボルトサイド)の対比の掘り下げに尺を採った関係で登場2回目にして短めの巨大戦となりましたが、 ライブロボのデザインそのものにシリーズこれまでに無かった新鮮みがあるので、戦闘そのものは見栄えがします。 わかりやすい格好良さというか。
 「……すまん。俺が甘かった」
 「いや、誰も防げやしなかったさ。……悔しいけど、あいつらの科学は想像を絶している」
 「……でもいったいなにが……なにがあの人達を変えてしまったのかしら」
 ライブマンの復讐に懸ける想いと人として割り切れない気持ち、相反する二つの感情を描いた上で、 そもそも月形たちはなぜ悪魔に魂を売って人間を辞めたのか? という点を口にするのは、良い目配り。
 ナレーション「彼らの青春に、何があったのかはわからない。ライブマンにわかっている事はただひとつ。 彼らとは戦わねばならぬ事。青春の全てを燃やし尽くして、悪魔の野望を打ち倒すのだ!」
 沈思黙考する3人を、ナレーションさんが超あおって、つづく。
 終わってみると、ナレーションさんが一番、鬼だ。

◆第4話「暴け!ダミーマン」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「Dr.オブラー……見事な自己改造だった。これで、我が武装頭脳軍ボルトの陣容は、名実ともに揃ったというわけだ」
 「ライブマンという思わぬ邪魔が入りましたが、必ずや愚かな人間共を滅ぼし、地球を、我ら真の天才だけの王国にしてみせましょう」
 そういえば語られていなかったボルトの当面の目的が明かされ、右手首(腕時計の位置)に真紅の薔薇を身につけているケンプの服装が凄い(笑)  マゼンダはマゼンダで孔雀の羽のような飾りを背負っており、この人達に、地球を支配させてはいけない……!
 大教授の肩書きを持つビアス様、最初から宇宙基地付きで現れたので、地球人なのか地球外生命体なのか現段階では判然としないのですが、 2年前にスカウトしたメンバーが前線指揮官を担っているところを見るに、人材不足なのか、それとも募集要項が厳しすぎたのか。
 衣装か? 衣装の感性が合わないと駄目なのか……?!
 マゼンダはモヒカン兵士を人間に偽装するダミーマンを生み出すと、 電送ヅノーによりガス会社の施設に送り込んだダミーマンが笑気ガスを発生させるバイオテロを決行。
 「これはマゼンダの仕業よ」
 「あの……幾ら科学アカデミア時代優等生だったとはいえ、その推理は、ちょっと突飛すぎるんじゃありません?」
 現場を立ち去るダミーマンにつけられた、マゼンダお手製の香水の残り香からボルトの陰謀を文字通りに嗅ぎ取るめぐみだが、 マゼンダの攻撃を受け、電送ヅノーの能力によって囚われの身となってしまう。
 「科学アカデミアでは、私と張り合ってたつもりかもしれないけれど……今じゃ私の足下にも及ばぬ事、思い知ったでしょ?」
 めぐみを探す赤黄には次々と電送爆弾が送り込まれるが、それによりコロンが電送信号の発信源を特定し、 コロンと基地の設備が超優秀なのは、星博士が造ったからで突破する力技(笑) 従来作なら、 瀕死の博士から基地を託された3人がそこでバトルスーツを発見してライブマン! となりそうなところを、 スーツとメカは自家製という点で独自性を打ち出した今作ですが、ヒーロー達の独力と先達の協力が重なり合っている、 というのは今後の物語の中でも活きていってほしい部分。
 そして、めぐみの頭脳を信じなかった赤黄がめぐみ救出の為に体を張る姿で、ライブマンというチームの基本的な関係性が成立し、 立ち上がりの4話でしっかりと基礎を組み立ててきます。
 「電送ヅノーは電気椅子にもなれるのだ」
 赤黄が爆発に飲み込まれる姿を見せつけられためぐみには処刑が迫り、どうして付けたんですかその機能(笑)
 だがそこに、いかにも怪しすぎるモヒカンにサングラスの2人組が入り込み、グレートタイタンばりに空気の重かった今作に、 山田監督がコミカルな味付け。
 「俺たちのめぐみちゃんをだっこすんじゃねぇ!」
 なんだか、台詞が迫真のリアリティです(笑)
 「めぐみのおつむと俺たちのパワーがあればおまえ達には負けはしないぜ!」
 どうやら、ライブマンの各種装備はめぐみが設計、勇介と丈が製造、を担当していたようで、 鍛えた筋肉はこの日の為に……力こそパワーだ!
 第4話にして、“若く優秀な科学者(の卵)”の筈だった勇介が「俺の頭脳はそこまで優秀じゃないぜ!」と力強く宣言し、 言い回し自体はユーモアをともなっているのですが、前回オブラーが「最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体」 になる事で人間以上の存在を自負し同輩を嘲っていた姿の対比として、手を取り合い力を合わせる事で高みを目指すライブマン(人間) の姿勢を明確に示しているとも取れます。
 そこから「ライブマン!」のちょっと気障な言い回しは格好良く、海をバックに3人並んで変身、個別名乗りからの爆発!  は山田監督っぽい演出。
 電送爆弾攻撃に苦戦するライブマンだが、ドルフィンアローからトリプルライブラスターで電送能力を封じ、青春爆発バスター。 今回の一番凄い科学は明らかに電送ヅノーだったので、惜しい頭脳獣を喪いました。
 巨大頭脳獣の攻撃で吹き飛ばされたドルフィンが海に落ち、マシンバッファロー(輸送機)からアクアドルフィンが出撃。 水中で青を回収してボルト戦闘機と海中戦を挟んでの合体ライブディメンションで変化が付けられ、 獅子の口からライブロボビームを放ったロボは、超獣剣でスーパーライブクラッシュ。
 一件落着の後、めぐみとコロン作のビーフシチューが振る舞われ、才媛めぐみも料理は苦手だった……でオチになるのかとおもいきや、 料理もお手の物だった、と無類のアイドル力が発揮されて、つづく。
 ビアスの失策はめぐみをスカウトしなかった事になりそうですが……ファッションか、ファッションのセンスが合わなかったのか。
 3人戦隊という事で順当にめぐみ回となってマゼンダと絡み、友達かどうかは微妙だけどアカデミア時代は同室であった事が判明。 どちらかといえばマゼンダがめぐみを意識して一方的にライバル心を燃やしていたような描写になっていますが、手堅く掘り下げが進み、 次回――筋友、ドライブ対決?!

◆第5話「暴走エンジン怪獣」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 パトロール中、亡き卓二の弟・武志と出会った勇介たちは、卓二が遺した自動車の設計図を見せられる。
 「作ってほしいんだ、兄ちゃんの代わりに」
 少年の真っ直ぐな願いに乗り気になる勇介に気付くや、腕を引っ張って外に連れ出し、囁くめぐみ。
 「気持ちはわからないんでもないんだけど、あたし達そういう事している暇ないでしょ」
 親友たちの復讐が3人の強烈な動機付けになっている事を考えると、もう少し揺らいでも良さそうなところではありますが、 強大なボルトを打ち砕いて復讐を果たす為には戦いに集中するべき、という考え方に筋は通りますし、 「復讐」という“私”から「全ての命を守る」“公”へと第1話時点で接続済みなので、 後者に相応のウェイトが置かれるのが劇中の正論として扱われ…… 後に『鳥人戦隊ジェットマン』が後者への偽装で“復讐の狂気”を覆い隠したのは、本当に邪悪な作劇。
 (……女の子の言う事は、いつも尤もなんだけど……)
 少々コミック的な手法というか、画面右下に四角で囲まれていそうな勇介のモノローグが挟み込まれ、 この時の勇介の(でもなぁ……)といった具合の表情に独特の愛嬌があるのが、アイドル力を感じさせます。
 (友達が残した設計図を見たら、形にしてやりたいって思うのが男なんだよ。出来上がっていくにつれて、 卓二が生き返ってくるような気がする)
 結局、勇介は武志と共に車作りに取りかかり、引くほど重かった立ち上がりに対して、 前回−今回と山田監督がコミカルな味付けを大幅に加えているのですが、ゲスト少年をそこに関わらせる事によりコミカル描写の自然さが増した上で、 私情に基づく行為が少年の心に寄り添う事でヒーロー性に繋がっていくのは、上手い構成。
 一方、ケンプはカオスファントムによりエンジンヅノーを製造。車のエンジンと一体化する能力を持った頭脳獣が、 偶然にも完成間近の卓二の車に取り憑いてしまい、翌日――
 「全くもうひでぇよなぁ。俺たちにばっかしパトロールさせてさぁ」
 「今日という今日こそは、首に縄をつけてでも連れ戻しますからね」
 めぐみと丈は車作りにのめり込む勇介の元へと向かい、めぐみの自転車の後部に手を置いて、 しゃがみながらスケボーに乗って引っ張って貰っている丈、が凄く面白い映像(笑)
 見た目そのものも面白いのですが、移動しながらの会話シーンを自然に成立させた上で、二人が無理なく一つの画面に収まっている、 のも非常に面白い会心の構図……副作用として、やはり少々重いのかペダルを漕ぐめぐみが少し辛そうで、 丈の人間としてのレベルが下がりました!
 OP映像では、勇介−オープンカー・丈−スケボー・めぐみ−スポーツサイクル、と紐付けられており、 前回は予告で煽ったほど活躍しなかったスポーツサイクルが、第1話の「近すぎる爆発」に続いて、強烈なインパクトを刻む事に(笑)
 ところがその頃、エンジンヅノーの取り憑いた卓二の車が暴走を始め、 勇介の元へ向かっていた丈とめぐみはあわや轢き殺されそうになるも、からくもこれを回避。
 「誰も俺を止められん。ふふふはははは」
 「貴様等ごときに運転できるものか」
 ……なんか、変な、頭脳獣、生まれた(笑)
 ケンプは薔薇の香りを嗅ぎながらその光景を見つめ……もしかして造花ではなく、毎朝新しいのを付け替えているのか。
 ヅノーベースでは、悪魔の車により車社会をずたずたに引き裂く作戦に皆でご満悦。
 「見事な作戦だ。……Dr.ケンプよ、大いにアクセルをふかしたまえ」
 一言だけながら、くるりと回って芝居がかったビアス様が超格好いいのですが、今回ところどころの台詞回しが洒落ていて秀逸。
 地上では、勢いあまってとんでもない殺人メカを造ってしまったのではないか、と勇介がめぐみに説教されていたが、 武志少年が勇介をかばう。
 「勇介さんのせいじゃないよ! お兄ちゃんは勇介さんの事をドジな人だと言ってた」
 「うんうんうん」「うん」
 「でも、最後には頼りになる人だって……兄ちゃんが一番信じてる人だって」
 「卓二が俺の事を……ありがとう、武志くん」
 友の言葉に力を得た勇介はめぐみに言い返してここも少々コミカルな味付けがされ、第3話までで強烈に刻み込まれた因縁を前提としつつも、 シリアス一辺倒ではない見せ方に。山田監督による意図的なバランス調整だったのか、 パイロット版の出来上がりを見ていない関係だったのかはタイミング的にはなんともいえませんが、 結果としては役者さんと物語の引き出しが広がって、良い判断だったと思います。特に役者さんは現状、前回−今回のようなタッチの方が、 持ち味を出せている印象。
 またここで、友への想いや仇敵との因縁を軽く扱ってしまうと物語の根本が台無しになりかねないのですが、 あくまでコメディの種にするのは勇介たち3人の関係性に絞った事で、コミカル要素が飲み込みやすい部分に収まったのも良かった点。
 「これで燃えなきゃ男じゃない……兄ちゃんの車、必ず取り戻すからな」
 暴走車を止めに向かったレッドファルコンは、エンジンの異常に気付くとボンネットを開き、 中に直接ブラスターを打ち込む荒療治(笑) ……ま、まあ、自分で造った物なので、 扱いもちょっと雑になろうというものです。
 たまらず飛び出すエンジンヅノーだが、ケンプによって回収されると他の車に乗り移って暴走エンジン大作戦を継続し、 勇介はこれに対抗する為に改造を提案。
 「卓二の設計した車は、素晴らしいものだ。だから、これを原型にして、もっとパワーアップするんだ」
 兄ちゃんの車がぁぁぁぁぁ!!
 ……予告から想定できたパターンではありましたが、2作続けて、序盤で夢の車を切り刻んで兵器にする事に。
 そして卓二の車は、ライブマン印に改造され、ルーフの上になにやら物騒な火器までつけられてしまう事になり…… ええとつまりこれはあれだ、そう! 卓二! おまえの魂と一緒に、ボルトに復讐してやるぞ!!
 『超新星フラッシュマン』のフラッシュタイタン、前作『マスクマン』のスピンクルーザー・ランドギャラクシー、 に続く車輌メカ推しは当時の販売戦略なのかと思われ、特に今回はタイミング的にも『マスクマン』第4話「燃やせ! F1魂!」を彷彿とさせる構造になりましたが、 〔物語の発端となった友人の存在を改めて取り上げる・少年との交流を重視しキャラクターの幅を広げる・卓二というキャラクターを物語の中に取り込み直す〕と、 前作エピソードを雛形に置きつつ今作として抑えておきたいポイントがしっかり抑えられている上に、 一見寄り道の行為がチームの強化に繋がっているのも好印象。
 また、“姿形は変わっても魂は受け継がれる”というのは東映ヒロイズムな面があり、 改造手術を肯定的に受け止める説得力を強めているような、いないような……。
 時を超えた復讐車が我が身に迫っているとも知らず、作戦が順調に進行中のケンプは高いところから車の荷台に飛び降りる筋トレ系天才の姿を見せつけ、 走行する車の荷台に得意満面で立っているだけで面白くてズルい……。
 ところが、洞穴の中を進んでいくと目の前に煌めくヘッドライト。
 「なんだあれは?」
 そして飛び出すライブマン。
 「ライブマン! なんだ、その車は?!」
 「ライブクーガー!」
 「ライブクーガー?」
 「おまえに殺された矢野卓二の設計した車を元に、俺たちが改造、パワーアップした車だ!」
 殺る気満々だぜぇ!!
 「兄を慕う少年の想いと、友情が作り上げた車の、挑戦を受けてみろ!」
 搭載火力の差と待ち伏せ作戦により圧倒的な優位を取ったライブマンは反転する暴走車を後方から追いかけ、 砲台代わりに変身した美獣ケンプの攻撃と群がるモヒカン兵を蹴散らすと、 怨念の化身として生まれ変わったライブクーガーから2年前の復讐とばかりにクーバーバルカンを背後から叩き込み、消し飛ぶ車、 吹き飛ぶケンプ。
 「エンジンヅノー、暴走の青春は終わったぜ」
 ケンプは撤収し、車を失い弱ったエンジンはさっくり始末され、ギガファントム。巨大戦はライブロボの二丁拳銃が披露され、 弱った所にライオンビームから超獣剣でスーパーライブクラッシュ。
 そして魔改造された車は……弟に受け入れられて良かった(笑)
 ナレーション「ライブマンは、ライブクーガーと共に戦う事を誓って、少年に別れを告げた。そのエンジンは、兄弟の愛と、 勇介たちとの友情を燃やして、唸るのだ。走れ、ライブクーガー!」
 クーガーだけに「唸る」のだ、と引っかけたのは格好良く、 「兄弟の愛と、勇介たちとの友情」の象徴とする事で物語の中に綺麗に収める事にも成功。 前作のスピンクルーザーはウィリーアクションこそ格好良かったものの存在を持て余して自然消滅してしまいましたが、 今作では継続的に使われるのを期待したいです……というか綺麗に収めただけに逆に、 忘れ去られた場合のダメージも大きくなってしまうので(ジープスタイルなので3人で乗れるのは使い勝手が良さそうであり)。

◆第6話「襲来!生きた恐竜」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ナレーション「若き天才達は、頭脳核の開発に、全力をあげていた。より優れた頭脳獣を作り出し、地球を征服してみせることが、 大教授ビアスに、おのが天才を証明する事になるのだ」
 一瞬、主人公サイドと勘違いしそうになる雰囲気で研究に励むケンプ達の姿が描かれるのが今作の特質を感じさせる導入で、 悪魔に魂を売った3人の自尊心を、ビアスが巧妙にあおり立てる姿が印象的。
 時間と空間を操る頭脳獣タイムズノーを誕生させたオブラー@鎧着用は、 タイムスリップ能力を持つ頭脳獣によって7000年前の世界から連れ帰った恐竜をアバレさせる恐竜復活大作戦を開始し、 時間移動……タイムマシン……時村博士……東京オリンピック……うう……頭が……。
 それから数日後、三日月山に恐竜が出る、という噂を聞いて調査にやってきた勇介たちは、 10日前に山で拾った恐竜の傷の手当てをした事から懐かれ、ゴンと名付けて一緒に暮らしている少年と祖父に接触。少年の両親は、 恐竜生存説を支持する恐竜学者だったが調査中に遭難……それもあって少年は「生きていた恐竜」に強い親愛の情を示し、 恐竜好きだった勇介もその浪漫に同意。
 なにぶん前作の主人公が「ゴッドハンドなんてありえない」の人だったので、 見た目ツッパリだけど「恐竜いいよね」と子供に共感する主人公にホッとしました(笑)
 ところがそこにタイムヅノーとオブラーが現れて恐竜の所有権を主張し……こいつ、子供の恐竜を連れてくるので精一杯だったな。
 頭脳獣の時間操作能力に翻弄されるライブマンだが、ドルフィンアローで時計の針を縫い止める事で一時撤退に追い込み、 勇介はタイムヅノーの能力を利用してゴンを生まれた時代に返す事を提案。
 「罪も無い恐竜の子供の命を弄ぶのは、絶対に許さない」
 何よりも恐竜の為に怒る姿で、生けとし生きるものを守る戦士であるライブマンの姿が描き出されたのは秀逸。
 だがゴンを「生きていた恐竜」と信じたい少年は提案を拒絶して走り去ったところをオブラーらに囲まれ、それを助けるライブマン。 更にライブクーガーが乱入し、いきなりの自動操縦?! と思ったら、まさかのコロンちゃんが運転してオブラーらを次々と轢いていき…… ええとつまりこれはあれだ、そう! 星博士の無念を思い知ったか!
 「何者だ?」
 「俺たちの仲間だ!」
 「私コロン、よろしくね」
 しっかり問い質してきっちり名乗るやり取りがおいしく、まさかのコロンちゃん前線投入からネットを被せてタイムヅノーを捕獲したファルコンは、 そのまま走って地面を引きずり回す鬼畜プレイ。
 「止めてくれぇー、助けてくれぇーー」
 そして、銃を突きつけ、脅迫(笑)
 ゴンを過去に返す為なら拷問も辞さない勢いの赤に恐れをなして素直に言う事を聞いたのかと思いきや、 コロンちゃん来襲の前まで都合よく時間を巻き戻されてしまうが、少年の命を救う為にゴンが突撃を仕掛け、車に轢かれるのに続き、 恐竜に殴り飛ばされる、最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体。
 ゴンはタイムヅノーの攻撃から少年をかばって倒れ、ライブマンは怒りの連続攻撃からバイモーションバスター。 巨大戦では開幕から格好いいジャンプパンチを決めると、今回も胸からビーム、そして、背後に逆巻く波濤の映像が入る新演出で、 スーパーライブロボクラッシュ。
 タイムヅノーをやむなく倒した事によりゴンが7000万年前に帰る手段は失われてしまい、ゴンを守ろうとする少年は、 ゴンを連れて山奥へと姿を消してしまう……懸命に少年を探す勇介たち、そしてゴンを追うオブラーとガッシュ。 てっきり少年をかばって討ち死にしたかと思われたゴンが生存していて問題の種が残り、予想外の前後編で、つづく。
 パイロット版の印象はいまひとつだった今作ですが、3−4−5−6と作品の特徴を活かしつつ勇介達の掛け合いによる軽妙さも良い具合に機能してきて、 波に乗り始めた印象。特に、ライブマン内部のやり取りが面白くなってきたのは大きいですが、 3人戦隊という事で距離感の近さを表現しやすいのに加え、“等身大の若者像”的な表現には、前作の経験が活かされているのを感じます。
 ところで、ビアス様が背中から左肩にかけて付けているパーツが巨大な手の意匠である事に今回ようやく気付いたのですが、何故、 手……? ……もしかしてこの世には、光のビアス様(左手)と、闇のビアス様(右手)が居るのだろうか……。

(2023年10月5日)

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