■『高速戦隊ターボレンジャー』感想まとめ8■


“ジグザグ青春ロード
アクセル踏み込めグッと”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『高速戦隊ターボレンジャー』 感想の、まとめ8(45話〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第45話「超マジック少年」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 話題沸騰、Miss.マジックの驚異のハンドパワー! ……放映当時は、1988年にTVデビューしたMr.マリックによる超魔術ブームの真っ只中であり、 このあまりの捻りの無さが、当時のブームの大きさを窺わせます。
 キリカ扮するMiss.マジックに憧れるタツオ少年は、ハンコボーマ(象モチーフなのは、象牙から?) の力で額に暴魔の印を押される事で超魔術を振るえるようになるとそれを使って好き放題に振る舞うようになり、 少年少女たちに次々と超魔術ハンコを押そうとするMiss.マジックを止めるターボレンジャー。
 「子供たちに超魔術なんか与えて、いったいどういうつもりだ!」
 「子供たちを堕落させるのさ! 不思議な力を得た子供たちは、それを悪い事に使う」
 ……あー……つい最近、超能力を使ってテストで満点を取っている女子高生を見た気がしますね……。
 堕落した人間の悪意による、人間社会の自壊を目論むヤミマルの思惑通り、タツオ少年はどんどん悪戯を暴走させていき、 それを止めようとする洋平だがコンプレックスを抱えた少年は説得に耳を貸さず、2話前とだいぶ被り気味。
 一方、闇の底では触手の塊が蠢き、空に浮かんだ巨大な赤い光の竜が何故かタツオに稲妻を落とすと、少年の額のハンコの色が変わり、 より強力になったハンドパワーでヤミマルたちを攻撃する。
 「もう俺には怖いものなんかないんだ!」
 有頂天の少年を追う洋平だが、背後では虚仮にされたヤミマルたちが怒り心頭。
 「許さん! 俺たちより凄い力を持つ者が、この世に存在するなど絶対に許さん!」
 ヤミマルキリカは少年を暴魔コウモリで爆撃し、小さい……! 器、小さい……!
 そろそろ、赤い鎧の呪いが精神を蝕みつつある可能性が危惧されるヤミマルですが、タクシー代わり→トラック代わり→小学生を爆撃、 に駆り出される暴魔コウモリが先に失踪するかもしれません。
 窮地を洋平に救われた少年は、力には力で対抗しようとするが唐突に超魔術の力は消え失せてしまい、話の構造としては、 チャカを手に入れて調子に乗っていたチンピラが洒落にならない相手に手を出して逃げ惑う事になる東映ヤクザ文法なのですが、 チンピラポジションが小学生なので、「しっぺ返しと反省」の要素が生死の境目に直結されると、いまいちスッキリせず。
 「落ち着け! 超魔術なんか無くたって勝てるんだ! 人間死に物狂いになれば勝てる! 勇気を振り絞って、俺と一緒にやってみろ!」
 洋平は少年を叱咤し、「力」よりも肝心なのは、それを正しく用いる「勇気」(に代表される、心の在り方)というのは、 シリーズの一貫したテーマ性といえますが、アクセルの踏み具合を間違えると、 容易に特攻精神と繋がってしまう危うさへの意識もまた命題であるな、と改めて。
 小学生を巻き込んでダイレクトアタックはやり過ぎたと思うわけですが、二人は、ドス、ならぬ木の杭を手に取ると、 迫り来る暴魔コウモリの土手っ腹ならぬ大きく開いた口に往生せいやぁぁぁとそれを突き立て、 藻掻き苦しむ暴魔コウモリはヤミマルとキリカを振り落とす(笑)
 洋平が啖呵を切ったところに仲間達も集合し、
 「「「「「ターボレンジャー!!」」」」」
 今作では意識的に絞っている印象がある名乗りからの主題歌バトルに入ると、それぞれが個別武器を振るって暴魔を蹴散らし、色々、 決戦へ向けたまとめに入っている気配が窺えます。
 青は力任せにハンコボーマを投げつけてからJマシンガンを叩き込み
 「ハンコボーマ、木っ葉微塵に、砕け散れ!」
 でビクトリー。
 巨大戦では、キックオフしたバトルボールを綺麗にピッチャー返しされ、苦戦するかと思われたラガーファイターだが、 反撃からざっくりスクリューラガーキック。
 少年は何よりも大切な勇気――死中に活ありメディテーションの心――を学び、和気藹々で、つづく。
 謎の赤い竜に関しては「もしや……いや、まさかそんな事がある筈がない……」と太宰博士が思わせぶりに呟き、 状況を考えると濁さずに説明していい気がしますが、次回――なんかメルヘン路線……から、凄いの来た。

◆第46話「ラゴーンの逆襲」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ナレーション「流れ暴魔ヤミマルとキリカは、一気に片を付けようと、ターボレンジャーに、最後の戦いを挑んできた。そして、 その死力を振り絞った戦いは、いつ果てるともなく、際限もなく続いていた」
 長石監督らしい荒波をバックに、冒頭から急展開!
 そしてその戦いを見つめる謎の暴魔獣と、闇の底で蠢く肉塊……。
 「この世界を、必ずおまえ達の赤い血で染めてやる! その時こそ地球は、我ら流れ暴魔二人のものとなるのだ!」 (※聞き取りきれず「必ず」はだいぶ怪しいです)
 「まだわからないのか。赤い血を流すのはおまえ達だ! その時になって、我が身に流れる人の血の尊さに気付いても、 もはや手遅れだぞ!」
 “赤い血”を掛けて両者の台詞を対応させるのは面白いのですが、「赤い血を流して人の心を取り戻せ」ではなく 「赤い血を流した時は出血多量で貴様はもう死んでいる!」なのが随分と遠い所まで来てしまいました、炎力。
 両陣営が激しくぶつかり合うと大爆発が起こって7人はそれぞれ吹き飛ばされ、無音となってそれぞれの得物が散らばるのが印象的。
 いつ果てるとも知れない戦いがそのまま素手の殴り合いに移行するのはかなり生々しく、ひとり変身の解除されたはるなは、 戦いの虚しさに気付くとそれを止めようと必死に声を張り上げるが、その時、海岸に出現する謎の門。
 天使の象られた白い門は、解説のシーロンによると妖精の世界へ通じる妖精の門であり、そこには、 この世に愛と平和をもたらすと伝えられる「愛の石」が安置されていると云う。
 「その光を浴びた者は、みんな憎しみを忘れ、愛を取り戻すのです」
 ……それは、例の、家畜化光線なのでは。
 妖精とメルル星人の繋がりが急浮上して大変きな臭くなる中、戦いの終結を望むはるなは門の中に飛び込んでしまい、 それを追うターボレンジャーとヤミマル一味。
 「もっと戦え、命を削れ……」
 謎の肉塊の呪詛の念に導かれるかのように、両陣営の死闘は異空間でも続き、愛の石を探し求めるピンクは、荘厳な城を発見。 ラブラブ合体技もターボレーザーも使えない状況に戸惑いつつ、遂に愛の石を手に入れたはるなは家畜化光線をヤミマルとキリカに浴びせようとするが、 石を掲げると同時に城は大爆発し、海岸へと投げ出された7人の前に姿を見せたのは、 人体標本めいた姿がこれまでになくグロテスクな暴魔大帝ネオラゴーン!
 高速戦隊と流れ暴魔が、死闘を繰り返す事で互いにエネルギーを失う機を窺っていたラゴーン様が新たな姿で完全復活し、 要するに漁夫の利狙いなのが、大変、暴魔百族です。
 変身するだけのエネルギーを失った7人は、妖精世界の幻影を作り出していた一つ目ボーマの攻撃を受けて吹き飛び、 ネオラゴーンは暴魔城へと帰還。……いきなり砂浜に突き立った巨大な柱がなんだったのか謎になりましたが、 海岸にそのまま立たせると、格好つかなかったのでしょうか(笑)
 此度の事は全て我が落ち度、この上は腹かっさばいてお詫び……の代わりに、5人の妖精パワーを集めて変身する事で始末を付ける、 と決死の戦いを志願するはるな軍曹の覚悟のほどを知った男達はそれを受け入れ、どんどん謎になっていく妖精パワーを集める事で、 ピンクターボ復活。
 「小癪だってんだ! 一人で何ができる!」
 ここで女性メンバーをソロ変身させるのは、細かいセオリー崩しを散りばめてきた今作らしい構成ですが、メンバー中、 生身最強のキャラではあります(笑)
 手前でピンクvs怪人をやりつつ、奥で生身の男衆が戦闘員と戦うなかなか無い構図は面白く、果敢に一つ目ボーマに挑む桃だが、 一つ目レーザーの連射に苦戦。
 「こんな時、愛の石があれば……」
 「愛の石は、君の熱いハートなんだ! 君の胸の中にある!」
 思わず超常の奇跡を求めるピンクに対し、世界に愛と平和をもたらすのはなんらかの神秘ではなく個人の心であり、 人は誰しも胸の中に愛の石を持っているんだ! と送られるエールは大変良かったです。
 決戦・流れ暴魔の急展開に、突然出てくる愛の石と露骨すぎる罠がだいぶバタバタしてしまったのは残念でしたが、 その消化と着地点はお見事。
 なんとか一つ目ボーマを倒した桃は、巨大化に対してまさかのソロ召喚からソロ操縦で立ち向かうが、 いい加減パターンを読まれたバトルボールを投げ返されると窮地に陥り、倒れるラガーファイター。 生身の男4人が操縦席に乗り込むとその激励で立ち上がり、反撃のパンチからスクリューキックを打ち込んで辛勝を納めるが、 ターボレンジャーは満身創痍、ヤミマルとキリカも地に伏せ、かつてない規模の死んだフリ戦法により邪魔者を排除したネオラゴーンの高笑いが響き渡る……。
 なんとか大妖精17へ帰還する高速戦隊だが、妖精パワーを完全に失った5人はシーロンの姿が見えず……その事実とショックを、 宙に浮かぶ包帯とその落下で示したのは好演出。
 かつてなく絶望的な状況で、つづく。
 四国編後編あたりから、終盤失速の匂いが漂ってきていた『ターボレンジャー』ですが、 四国編前編を除くとヤミマル政権の作戦にこれといった面白みがないまま決戦に突入してしまい、ヤミマルが王の器では無かったのが、 意図的なのか結果的なのかはわかりませんが、物語のメリハリとしては辛いところ。
 また、暴魔(特に流れ暴魔)に対してターボレンジャーがどう接するのか、完全なる敵なのか、 それとも改悛の余地がある相手とみなすのか、がエピソードの成り行き次第で蛇行しがちだった事で、 物語の芯が一本通らなかったのが、ここに来て大きく響きます。
 そして、ラゴーン様が先に復活してしまいましたが、暴魔博士レーダの「おのれ……! 決してこのまま死ぬ俺ではないぞ……」 を拾える隙間はあるのか?! 次回――ヒロインレースの頂点を目指して、山口先生とシーロンが捨て身の大勝負!

◆第47話「SOS変身不能」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 便利屋扱いに耐えかねて、ドラグラス、本当に転職。
 権力の座を取り戻した暴魔大帝ネオラゴーンは、ドラグラスの内部に封印されていたドラグラボーマを大復活させて自画自賛し、 見た目は物凄いインパクトになりましたが、器の大きさは以前と似たり寄ったりの模様です(笑)
 マスクの都合か口が開きっぱなしなのがグロさに輪を掛けるネオラゴーンですが、『仮面ライダーBLACK』や『機動刑事ジバン』初期など、 生物のディテールを強めたグロテスク系怪人への回帰が、この時期にあったりしたのでしょうか(歪な人体の持つ怪物性への意識というか)。
 「みんな、ごめんなさい! こんな時、何も助けてあげられないなんて……本当にどうしたらいいのか……妖精のくせに、 何もわからないなんて……」
 シーロンが大妖精17で己の無力さにうちひしがれる一方、ターボレンジャーと同様に流れ暴魔パワーを失った流星と小夜子は、 突然の大月ウルフに拾われていた!(まさかの『大鉄人17』繋がり)
 老怪僧、といった見た目の人物が、流れ暴魔・カシムを名乗って二人を落ち着けようとしていた頃、落ち込む力たちは、 山口先生と出会う。
 「君達が何かやっている事は、薄々察しています。でも私はずっと、君達を信じてきました。でもね……そんな暗い顔見てると、 やっぱり心配だわ。もうすぐ卒業……夢と希望に一番満ち溢れてなければいけない時に、いったいどうしたの?」
 炎くんは野球推薦が取れず、山形くんは最後の大会に惨敗し、浜くんは例の一件以来クラスの女子に口を聞いてもらえず、 日野くんは就職活動に失敗し、森川さんは志望校に合格できませんでした!!
 ……なんて事は無いと思いたいですが、なまじ前作が学歴社会と受験戦争の生む歪みをテーマの一つとしていた『ライブマン』だけに、 高速戦隊の卒業後の進路は気になってしまいます(笑)
 高校生戦隊としてはもう少しスポットがあってもという要素ではありますが、主要視聴者層との感覚的同調が難しいので、 イベントから外されたという面はありそうでしょうか。
 言葉に詰まる5人だが、そこにドラグラボーマが強襲し、噛みつかれた山口先生は犬歯が伸びて怪奇吸血人間に。
 逃げ惑う5人には更に流星と小夜子が迫り、久々の生スピンキック。力とカシムは共に無益な戦いを止めようとするが、 流星と小夜子はズルテンの攻撃に吹き飛ばされ、絶体絶命のその時、5人の危機に雄々しく飛び立ったシーロン決死の妖精ダイナマイトが炸裂!
 直撃を受けた暴魔獣の牙が吹き飛ぶと山口先生は正気に戻るが、力を失ったシーロンの羽が山口先生の体に入り込むと、 どういうわけか山口先生が小妖精の姿になってしまう強烈な画(笑) 一方のシーロンは人間の少女の大きさになると、 その姿が妖精パワーを失った力たちの目にも見えるように。
 「博士、いったいこれは」
 「シーロンは、もう、妖精ではなくなったんだ」
 「「「「ええ?!」」」」
 「翼を失った妖精は、人間の姿になる。だが、その姿では、もうこの世には生きていられないんだ」
 瀕死のシーロンが妖精サイズのままだと色々とドラマが作りにくい(のがデビルボーマの回でとことんわかった)ので人間大になってもらいました、 以上のなにものでもない展開なのですが、その状態でシーロンが死ぬと、妖精化した山口先生まで死ぬという謎のトラップカードが発動。
 …………これってつまり、シーロンが死ぬと、羽の憑依した山口先生が「新たなシーロン(地球最後の妖精)」となり、 “人間として死ぬ”という事ですか?!
 誕生日回の際に2万と9歳について言葉を濁していたシーロンですが、シーロンとしてのパワーと知識が妖精の羽の方に存在しているとなると、 現シーロンは9歳の時に事故にあって妖精の羽に取り憑かれて(それ以上いけない)。
 「……そうか、シーロンは俺たちを信じてくれているんだ。信じてるからこそ、こんな命がけの行為で俺たちを救ってくれたんだ」
 息も絶え絶えのシーロンを励ます力は、パッシブスキル《エースのメンタル》を発動!
 「俺たちはその信頼に応えて、なんとしてもシーロンと山口先生を助けなければならないんだ!」
 ノーアウト満塁を切り抜けてこそエースの証明、と状況を前向きに捉え直す力だが、 そこに大帝パワーで入れ歯をはめたドラボーマが再び襲いかかり、史上希に見る、一時撤退→復帰速度(笑)
 「おまえ達との戦いも、今日で最後かと思うと、感慨深いものがあるぜ、ってんだ」
 暴魔百族のコメディリリーフとして作品に貴重な愛嬌を振りまいてきたズルテンですが、 縦横無尽の風見鶏ぶりが最終局面に至って憎らしさにきっちりと転換され、
 −−−
「しかし、相手が悪い」
「ズルテンだけはどうしても信用できない!」
 −−−
 ……ズルテンに関しては、きっちり始末しておくべきでしたね炎くん!
 懸命に逃げ回る5人とシーロンは、ウーラー軍団の集中砲火を浴び、派手な崖落ち。
 「力……」
 「なんだ?」
 「……力の手……あったかい……」
 力は弱り切ったシーロンの手を握りしめ、ぐいぐいと攻めてくるシーロン、改めて、キャストと衣装デザインは大変良かったと思います。
 「なかなか感動的なラストシーンだぜってんだ。2万年の恨み、華々しく晴らしてやるぜ!」
 変身不能の高速戦隊は更なる集中攻撃を浴び、シーロンを守ろうとして諸共に消し飛ぶ5人……かと思われたその時、 立ちこめる煙が晴れると立っていたのは、シーロンを守り抜いたターボレンジャー!
 ナレーション「シーロンを助けたいという、5人の熱き想いと、ターボレンジャーを信じる、シーロンの想いが通じた!」
 完全に割り切った奇跡となりましたが、そもそも流れ暴魔と戦い続けていたら変身パワーが尽きた、 から強引だった上に、ターボレンジャーがエネルギーを失って後に復活するのも都合3回目なので、 消耗したエネルギーが充電完了した、以上のものにならず。
 そこを劇的にする為にシーロンとの絆を強調してはみたものの、シーロン=必ずしも妖精パワーでは無い為、 力技に物語としての説得力を生じさせるに至りませんでした。
 「シーロン、俺たちはもう、誰にも負けない」
 「「「「ああ!」」」」
 「シーロン、見ていてくれ……ターボレンジャーは不滅だ! 行くぞ!」
 この辺りの勢いと思い切りの良さは、シンプルな作劇への回帰傾向の強い『ターボレンジャー』らしくて嫌いではないのですが、 もう少し説得力が欲しかったところです。
 特に、劇中の筋道の立て方にかなりこだわっていた前作『ライブマン』と、 土壇場に追い詰められればられるほど力が引き出されるのがオーラパワーと劇中の理屈を設定した前々作『マスクマン』の後なので、 悪目立ちしてしまいます(上述したように、今作の設計そのものに、それらへの反動の要素があるので、難しい問題ではあるのですが)。
 ……『マスクマン』は改めてちょっと反則スレスレの設定というか、死中に活ありメディテーションの心意気だと思うと、 死に瀕して妖精パワーが復活するのも筋が通ってしまい、だいたいどんな局面も「オーラパワーを信じるんだ!」で、 理屈が成立してしまうわけですが(それが作劇として面白かったのかどうかはまた別問題として)、 やはり鍛え上げた筋肉は嘘をつかない。
 そんなわけでこれが、体育会系戦隊のスピリットだ! と復活したターボレンジャーは反撃の主題歌バトル。
 (余談ですが、後の高校生戦隊である『電磁戦隊メガレンジャー』が“理系戦隊”だったのは、時代の変遷も含めて面白いところ)
 5人は個人武器を振るってウーラー軍団を薙ぎ払い、ドラグラボーマをジャンピングGTクラッシュで一刀両断すると、 それぞれが個人武器を構えながらのビクトリー!
 巨大戦は、飛び上がったドラボーマに空中でバトルボールを叩き込むと、スクリューパンチで追撃し、 ブーメラン攻撃で反撃されると即座にターボロボを召喚してスーパーシフトし、ちょっと揺れたが、瞬殺。
 ターボレンジャーの復活と共にエネルギーを取り戻したシーロンは、山口妖精に懸命に呼びかける博士の下へ向かうと先生を元の姿に戻すが、 結果として痴漢行為と誤解され、池に叩き落とされる博士であった。
 腰が引けて逃げようとしたのかもしれませんが、山口先生にまくし立てられた博士、物凄くスムーズに柵を乗り越えていて、 なぜ自分から落ちにいきますか(笑)
 「ターボレンジャーは自らパワーを取り戻した。この俺たちに出来ない筈がない!」
 流星と小夜子は捲土重来を期し、それを気遣わしげに見つめる老流れ暴魔の手にするペンダントにはどんな意味が……? で、つづく。

◆第48話「流れ暴魔の秘密」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「貴様たちは、あの極限状態の中で変身した。貴様たちに出来て、俺たちに出来ぬわけがない!」
 大嵐の中、激しい風雨に打たれる流星と小夜子は、試練を、もっと試練を! と天に向けて叫びながら雷に打たれ、 『マスクマン』を通り越して、若干『コンドールマン』ぽくなって参りました。
 老カシムも、風貌としては信頼と実績の東映駄メンターを彷彿とさせますし(笑)
 「流れ暴魔に……必ず、流れ暴魔に! 変身してみせるぞーーー!」
 流星と小夜子は一度は力に落雷の直撃から助けられるも、それを振り払って電撃爆破デスマッチに身を投じるが、 そこへ姿を見せたカシムによって暴風雨が収められる。
 「変身してはならぬ。今のおまえ達の、その姿こそが、真の流れ暴魔なんじゃ」
 永遠の18歳が?!
 「なにを言うか。これでは戦えぬ」
 「流れ暴魔とは、戦う者にあらず! 本当は、この世に愛と、平和をもたらす者なんじゃ」
 遠い遠い昔――暴魔百族が人と妖精に戦を仕掛けた時代、暴魔の中でも凶悪無比と恐れられたキメンボーマは、 戦いで傷つき倒れたところを美しい人間の娘(森下雅子さん二役)に救われ、恋に落ちる。やがて二人の間には子供が生まれ……
 「それが、流れ暴魔一族の始まりなんじゃ。流れ暴魔とは、人と、暴魔とを繋ぐ者なんじゃ。人と暴魔とが、仲良くする事。 それこそが、キメンボーマと、美しい娘の願いだったんじゃ」
 半人半魔の流れ暴魔とは、二つの世界を支配する者ではなく、二つの世界の架け橋である、 というのは今作これまで登場した数々の裏切り者の存在からも、納得のできる妥当な落としどころ。
 「黙れ……黙れ! 誰がそんな話を信じるものか!」
 だが、迫害の歴史をその身に背負う流星は、踏みにじってきた者たちを踏みにじる為の力に執着し、カモン落雷! スイッチON!
 「俺を……変身させてくれぇぇぇぇ!!」
 「そんなに変身したいか……よおし、変身させてやろう」
 その嘆願を聞き届けたのは天、ならぬ暴魔大帝、なのは大変いやらしい構成で、暴魔城から放たれた赤い海綿状物質に巻き付かれた流星は、 暴魔獣ゴムゴムボーマへと望まぬ変貌。
 見た目としてはサンゴというかフジツボというか、イソダマリボーマとでもいったデザインですが、素体が貼り付く仕様が、 ゴムっぽいといえばゴムっぽいといえない事もないでしょうか。
 流星光としての人格も理性も失い、哀れな獣と化したゴムゴム流星はターボレンジャーばかりか小夜子にも牙を向けるが、 それでも懸命に流星光を取り戻そうとする小夜子をかばったカシムがペンダントから光を放つと元の姿に戻り、 流星は小夜子としかと抱きしめ合う。
 直後、二人を大帝ビームが焼き尽くしたかと思われたが、結果的にそれが死中に活ありメディテーションを発動させ、 ヤミマルとキリカが大復活!
 「……変身してしまったぁ……」
 「あのパワーに耐えるとは」
 −−−
 「みんなどういうつもりなのかしら?!」
 「――特訓だ!」
 「「え?」」
 「これこそ若者達が、自ら己に課したトレーニングなんだ。自ら危険な状況に身をさらして、絶体絶命の中から、 未知の力を引き出そうとしてるんだ!」
(『光戦隊マスクマン』第3話「未知への第一歩!」)
 −−−
 ……完全に、これなのですが(笑)
 戦いを止めようとするカシムはヤミマルに蹴り落とされ、落下ダメージによって変貌したその正体は鬼面ボーマ。年老いた暴魔は、 駆け寄ってきた力たちにペンダントの中身を見せ、小夜子こそが鬼面ボーマと人間の女性との間に生まれた実の娘である事を明かす。
 「小夜子を助けてやってくれ……流れ暴魔の、本当の心を、わからせてやってくれ……頼む」
 鬼面ボーマは消滅し、ペンダントの使用などで消耗していた様子はあったものの、トドメを刺したのがヤミマルになったけど、 それでいいのでしょうか……。
 雪辱に燃えるヤミマルキリカは、ゴムゴムズルテン&ウーラー軍団を蹴散らしており、 受け取ったペンダントを手に二人に真実を突きつける力。
 「キリカ! 俺たちの約束を忘れたのか?! 二人で世界を支配するという約束を!」
 父の言葉か、ヤミマルへの想いか……惑えるキリカの表情と、それを取り巻く世界の姿を美しく切り抜くのは実に長石監督で――
 「げっこうけーん!」
 千々に乱れるキリカは血の宿命を振り払うかのようにスローモーションでターボレンジャーを攻撃。
 こうなったら戦意喪失するまで殴ってから話し合う、とヤミマルキリカに反撃を決める高速戦隊だが、 復帰したゴムゴムズルテンが乱入し、まあゴムゴムのまま死んだらそれはそれだな……と思われたズルテンは、 一斉射撃を受けてゴムゴムが外れるとウーラーを巨大戦の生け贄に捧げて撤収(まだ仕事が残っているのか微妙なので、 無様な死に方としてはここで退場しても良かった気もしますが……)。
 ラガーファイターのキックボールを跳ね返す巨大ゴムゴムウーラーだったが、ラガーは更にそれをトスからアタックで叩き返し、 スクリューラガーキックでビクトリー!
 東映特撮名物:勝手にお墓を砂浜に建てた高速戦隊は、墓標代わりのカシムの杖に、流れ暴魔の心を小夜子に伝える事を誓い、 それを遠くから見つめるキリカの想いや如何に、でつづく。

◆第49話「美しきキリカ」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 東映特撮名物:勝手にお墓! を見つめるキリカがカシムの墓標に手を合わせようとして気配に気付き、 背後を振り向くと砂浜の斜面の影にヤミマル、がストーカーみたいな描写になり、二人の心に生じ始めたズレを象徴。
 黙って立ち去るキリカの背をヤミマルもまた黙って見送り、勝手にお墓に赤文字でサブタイトルがかかる、凝った導入。
 一方、ネオラゴーンは108匹の暴魔勇者が封じられた暴魔界に繋がる大封印を解こうと画策し、 ズルテンと一緒に大封印を探し回る役割で、赤ウーラー、出てきた。
 色違いの指揮官クラス、種族としてのフォーカス、割と面白かったメイン回(第11話)、 と従来の戦闘員ポジションとは違ったアプローチが試みられるも、中盤以降はスポットが当たる事なく企画倒れに終わってしまったのが残念でしたが、 最後の最後で、隊長の存在が拾われて良かったです(笑)
 ラキア親分の星座に異変が生じ、大封印が緩んでいる事に危機感を覚える高速戦隊では、「地球が、一向に綺麗にならないからです」 と妖精からきつい駄目出し。
 すっかり忘れていた環境汚染ネタも再び取り上げられると共に、人の意識は変わってきているが、 これまでの傷が深すぎて修復が間に合っていないのだ……とされ、これまでの戦いを無意味なものとしない意識も含め、 現実を見据えた問題提起をしつつも、寓話としての希望を提示するのは、《スーパー戦隊》らしくて、好きなバランス。
 また、地球が自身の持つ自然のエネルギーを回復する時まで代わりに戦うのがターボレンジャーなのだ (地球に生きる一人一人の意識が変われば、ターボレンジャーは役目を終えられる――つまり、みんながヒーローになる)、 と最終決戦を前に、ターボレンジャーの立ち位置を再構築。
 「世間もだいぶ賑やかになって、最後の戦いらしい雰囲気が出てきたぜ!」
 大封印の解放を阻止しようとズルテンを追うターボレンジャーだが、ヤミマルキリカに横槍を入れられ、 カシムのペンダントを手に説得を試みる力だが、ヤミマルは頑なにそれを否定する。
 「俺は人と暴魔から受けた傷の痛みに耐えながら、2万年を生き延びてきたのだ! 2万年の痛み、もはや血で贖わねば消えんのさ!」
 「違う! 俺たちはみんな、仲良く生きていけるんだ!」
 「ははははは! 俺に人を愛せというのか! 暴魔を愛せというのか!」
 言葉の途中で背中を向ける事で徹底的な拒絶を現しつつ、振り向くと仮面モードになっているのは格好いい見せ方で、 ヤミマルの怨念を最後まで軽く扱わないのは、嬉しいところ。
 ……もっとも、積もりに積もった2万と18年の怨念が重すぎてヤミマルの行く末に光の見せようが無くなってしまってはおり、 このままでは、キリカが、お遍路の旅に出てしまう……!
 「俺の愛するのはただ一人……! 人と暴魔、二つの世界を支配する王国を気付き、黄金の椅子に座らせてやるぜ」
 キリカに向けて告げたヤミマルは、ワイルド時代からの相棒であった蜘蛛を変化させたヤミクモボーマにターボレンジャーを奇襲させ、 戦闘開始。闇蜘蛛ボーマはヤミマルの分身的存在という事でか、銃・弓矢・斧・槍、と多彩な武器を器用に操り、 体の模様が僧形を思わせるのは、大量の武器→武蔵坊弁慶のモチーフでしょうか。
 となるとヤミマルには源義経のイメージが入っていた可能性が出てきましたが、板東の土蜘蛛に始まったヤミマル、 更に都落ちから東北政権に身を寄せた源義経を重ねたと考えると、中央政権(暴魔百族)に対する“まつろわぬ民” としてのイメージソースは一貫しているといえます。
 両陣営の激闘が続くその時、大地を割って暴魔界の妖気が地上に放出され、一同はまとめて吹き飛ばされて水落ち。 力は負傷したキリカを助けて戦場を離脱し、その胸にカシムの想いを届けようと、繰り返し訴えかける。
 「君には人でありながら暴魔を、暴魔でありながら、人を愛した者たちの血が流れているんだ。憎しみを越えて、 互いに愛し合う事の大切さを知った者たちの血が」
 今作はどうも、作品を通して敵対者への対応に腰が据わらない部分が目立つのが短所になっているのですが、融和を求め、 憎しみの再生産を止めようとする者としてのヒーロー像は、80年代後半の曽田さんの中で、 明確なテーマであったのかと思われます。
 「君はこの人たちが送り出した、この世に一番大切な事を伝える、この世で一番美しい存在。君自身が、二万年のメッセージなんだ!」
 「この私が……? この私が二万年のメッセージ?」
 力は、キリカそのものが憎しみの連鎖が断ち切られた象徴なのだ、と力強く告げ……元々キリカ(小夜子)、 人間社会に馴染めずに居たところに「君は前世で俺の恋人だったのだ!」 的に2万年前からの運命の王子を名乗る男に猛烈なアタックを受けて惹き付けられた部分があったので、 「君はそもそも生まれた時から世界で唯一無二の存在だったんだ!」と投げ込まれた魔球《運命上書き!!》が、 はからずもクリティカルヒット。
 だがそこへ、人の赤い糸を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえと飛んでくるヤミマルスピンキック!
 キリカの迷いを断ち切ろうとペンダントごと力を刺し貫こうとするヤミマルだが、身を挺してキリカがそれを食い止め、 予告の映像からぐさっと刺されてキリカ退場!? と思ったら、そのパターンはやらず、素手で受け止めるキリカ(随所で、 “赤い血”を強調)。
 「キリカ……!」
 「ヤミマル…………ごめんなさい、ヤミマル! 私……私……!」
 2万年に渡り愛を与えられなかった男と、2万年前に愛を受け取っていた女に決定的なすれ違いが生じ、同じ流れ暴魔でありながら、 ヤミマルとキリカの間に存在する2万年の隔たりが、届かない亀裂として大きく口を開くのが、互いにとって悲劇的。
 「……流れ暴魔ヤミマル! たとえ一人になろうとも戦うぞ!」
 「ヤミマル!」
 合流したターボレンジャーは、怒濤のGTクラッシュ2連撃で闇蜘蛛ボーマを撃破。 巨大化した蜘蛛に対してキックオフの間もなく蜘蛛糸攻撃を受け、斧、銃、そして鎖鎌による攻撃を受けるが、 掟破りのバトルボールダイレクトスローから鎖鎌を奪い取って反撃し、スクリューラガーキックでビクトリー!
 ヤミマルの挑戦を退け、カシムとの約束を果たしたターボレンジャーだが、大封印解放の危機は依然として続く。そして、 袂を分かったヤミマルとキリカの運命は……。
 「俺は負けん! 流れ暴魔ヤミマル……たとえ一人になろうとも最後まで戦う!」

◆第50話「恐るべき大封印」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 「割れる! 割れる! 大封印が割れていくぜってんだー!」
 大地から巨大な炎が噴き上がり、遂に解ける大封印?! ……だが、そこから現れたのは暴魔108星、ならぬ、 ドラゴン頭に錠前ボディの暴魔獣がただ一体。
 「ここは大封印ではない!」
 結構盛り上げていたのに、力強く断言されたぞ(笑)
 「俺は暴魔獣・フーインボーマ!」
 「なに?! 封印破りの名人として知られている、あのフーインボーマ!」
 ……刑務所に捕まっていた脱獄の名人、みたいな。
 大帝様は力たちに暴魔城からダイレクトアタックを仕掛けると封印ボーマらを回収し、 ヤミマルとキリカを生け贄に大封印を解き放つように命令。
 一方、人の心の優しさを取り戻したキリカは負傷した力たちを気遣うが、その甘酸っぱい雰囲気は断じて許さぬ!  と刃傷沙汰に及ぼうとするヤミマル。
 「離せ! 俺は……俺は……! ターボレンジャーを倒す! ネオラゴーンを倒す! 人と暴魔、二つの世界の王となるのだ!」
 「そうすれば……その心から、憎しみを捨ててくれるの?!」
 「……黙れ……裏切り者!」
 自分を虐げてきた世界への復讐に囚われ続けるヤミマルは顔を歪め、涙をこぼすキリカを殴り飛ばすと高速戦隊に襲いかかろうとするが、 二人まとめて封印ボーマに捕まってしまい、粗雑に扱い続けてきたドラグラスに鷲掴みで運搬される因果応報。
 残された力たちも封印ボーマの鎖封印を受け、動きを封じられる大ピンチ。
 「ターボレンジャー、長い付き合いだったなぁ。これでお別れかと思うと……嬉しくて、涙が出てくるぜってんだ」
「しかし、相手が悪い」
「ズルテンだけはどうしても信用できない!」
 ターボレンジャーを吹き飛ばしたズルテンらは生け贄の儀式を始め、十字架にかけた上で火あぶり、というのが大変『ターボレンジャー』。
 「ヤミマル……なぜ私たちが生け贄にされたかわかる?!」
 「この期に及んで、なにが言いたいんだ」
 「これだけは知っておいてほしい……流れ暴魔は、この世で一番美しい存在だからなのよ!」
 「まだ自惚れる余裕があるのか!」
 「違う! それは心の事よ! 私たち、人と暴魔の垣根を越えて愛し合った人達の心を受け継いでる。それこそが、この世で一番尊く、 一番美しいものなの!」
 流れ暴魔とは、二つの世界の境界を越えた存在であるからこそ、その身に尊い聖性を帯びている(ある意味では、 だからこそ二つの世界のどちらにも属せないし、どちらからも犠牲になる)と告げるキリカだが、 その尊く美しい心を憎悪に反転させる事をヤミマルはやめない。
 「たわけ! 俺たちを支えていたのは憎しみの心! それがあったからこそ、2万年を生き抜き、 不死身のパワーを勝ち取ったのではないか! 何度もこんな目に遭ってきたのだ……負けるものか!」
 「あなたって人は……」
 徐々にその生命力を奪われていく二人だが、爆発に耐えた力たちが雁字搦め状態のまま儀式の場へと辿り着き、 たとえ手足を封じられても、守るべき者の為に地面を這ってでも駆け付けるヒーロー像が鮮烈なものとなりました。
 「キリカ達を……キリカ達を死なせるわけにはいかないんだ!」
 力は縛られたままの飛び蹴りで儀式の封印球を破壊し、そのダメージにより、鎖封印の術が解除。
 「たとえこの身を封印されたとしても、正義に燃える心までは封印できないんだ! ――行くぞ!」
 「「「「おお!」」」」
 「「「「「ターボレンジャー!!」」」」
 「高速戦隊!」
 「「「「「ターボレンジャー!!」」」」」
 勝利のビクトリーポーズを決める一方で、フル名乗りからの揃い踏みは少ないターボレンジャーですが、 迫るクライマックスという事でここはビシッと決めて、主題歌に乗せての猛攻。 久方ぶりの組み体操GTクラッシュからVターボバズーカで、封印ボーマに遙かな眠りの旅をビクトリー!
 ……この戦闘に加わっていたウーラー隊長は、どさくさで死んだ事にされたのか、次回しっかりと殺されるのか……。
 巨大封印ボーマに対してラガーファイターを召喚するターボレンジャーだが、勝負にこだわるヤミマルがレッドを足止めし、 黒がセンターでターボラガーはセットアップ。
 同時戦闘の趣向はなかなか迫力があり、赤とヤミマルは諸共に崖下へ。赤を欠くターボラガーは封印ボーマに追い詰められ、 全てが暴魔百族の利になるかと思われたその時、暴魔城を飛び立ったドラグラスがヤミマルを援護すると、 そのまま暴魔忍法火の鳥を発動して、自爆特攻で封印ボーマを撃破(笑)
 「ドラグラスがー! ドラグラスがーーー!!」
 その最期にヤミマルは絶叫し…………ネオラゴーンに鞍替えから、土壇場でヤミマルの救援に入ったのも唐突なら、 そのままターボラガーを助けて自爆した成り行きは強引極まりないのですが、 もともと流れ暴魔の守護神として鬼面ボーマの影響下にあったとすれば、なんらかのセキュリティシステムが内蔵されていたのでしょうか……。
 悲痛なヤミマルの叫びといい、ドラグラスの始末と、それにまつわる各人の動きは、だいぶ無理矢理に。
 「……ドラグラスさえも助けようとしたその命、なぜ大切にしないんだ!」
 ずっとヤミマルの援護に回る、或いはキリカを助けようとして結果的に封印ボーマを倒す、ならまだわかるのですが、 通りすがりに爆撃したら突然の特攻だったので、赤の説得も頷きにくい事に。
 「ほざくな! 最後の勝負だ!」
 謎の転校生・流星光として登場してより30数話、幾度も拳をぶつけてきた両者の激突は、僅かな差で赤が勝利を収め、 口の端から赤い鮮血を垂らすヤミマル。
 「なぜ……なぜトドメを刺さなかった……!」
 「キリカを悲しませたくない! キリカも、俺も、おまえを信じているんだ! この世で一番大切なものは何か、必ずわかってくれると」
 (……ありがとう、レッド)
 「はははは……ははははは……ははははははは! 馬鹿な奴……後悔するぞ、必ず後悔するぞ!  はははははははは……はははははは! はははははははは、はははは……ヤミマル! 闇隠れ!」
 執念未だ途切れず、狂ったように笑い続けたヤミマルは、唐突に派手な技で瞬間退場。
 「ヤミマル! なんてことを! ヤミマル! 闇隠れまで使うなんて……」
 キリカがえらく深刻なリアクションなのですが、それはいったい(笑)
 そして、封印ボーマが死の間際に己の生命力を生涯最後の脱獄トリックに用いた事で、恐るべき真実が明らかになる。
 「大封印が、ターボビルダーの下にあったとは」
 えええええ(笑)
 灯台下暗し! まさしく驚天動地! 暴魔大帝ネオラゴーンが世界に向けて放つ破滅へのカウントダウンに立ち向かう青春のオデッセイ!!
 太宰博士とシーロンも含めた高速戦隊ターボレンジャー総体が、名実ともに地球を守る最後の砦となるのは想像を超えた展開で、 ヤミマルキリカのコンビ結成後は、やや目立たなくなっていた太宰博士の引きの強さに愕然です(笑)
 ナレーション「遂に、大封印が破れ始めた。しかもそれは、ターボビルダーの下にあった!  果たしてターボレンジャーは、地球を守れるのか。そして、自らの命を削る、ヤミマル闇隠れの術に全てを懸ける、ヤミマルの運命は。 ――最後の、戦いの時が、迫る」
 ナレーションさんから闇隠れの術の重大さにも説明が入り、三つ巴の戦いの行く末はどこに辿り着くのか――次回、最終回!

◆第51話「青春の卒業式」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 太宰博士はターボビルダーの建造にあたって妖精の古い地図に従って建設場所を決めていた事が明らかになり、 つまりは地脈を通じて地球のエネルギーが集まっているスポットと考えれば大封印がそこにあるのも必然といえますが、世が世なら、 太宰博士はアグ○の力に選ばれて筋トレに目覚めていたのかもしれません。
 「ターボビルダーは最後の砦! 命に代えても守り抜くんだ!」
 いざ大封印を解放せん、と暴魔城からは戦闘機が出撃し、意気揚々とそれに乗り込んでビルダーに空中を仕掛けたズルテン、 開始1分強で、迎撃を受けて墜落死(笑)
 暴魔城崩壊のどさくさにでも紛れるかと思ったらまさかの冒頭で実にあっさり処分されましたが、 後代になると実は生きていてVシネマで始末されるパターンでしょうか。
 暴魔幹部陣が怒濤の勢いでリストラを受ける中、貴重なコメディリリーフとして最終回まで生き残りましたが、 強者にへつらい弱者を虐げるプライドなき小物街道の貫徹と、声を務めた梅津秀行さんの好演(特にあの、なんとも形状しがたき笑い声!) もあって、印象深い悪役となりました。
 もはやネオラゴーンを倒すしかない、とターボレンジャーは迫り来る暴魔城へと青春ワープで突入し、 またもいきなり自室に乗り込まれた大帝様、ちょっとビックリ(12話ぶり2度目)。
 ……なお赤ウーラー及びウーラー一族は今回一切登場せず、前回の戦いで全滅したか、 今回この突入時のシーンスキップ中に全滅したと思われます。
 「たわけ! ここまで来た事は誉めてやるが、暴魔大帝ネオラゴーンに勝とうなどとは、虫がよすぎるわ!」
 気を取り直した大帝様は、口からエクトプラズムや懐かしの触手攻撃など多彩な技で5人を圧倒し、勢い余って、自室を破壊(笑)
 「はははははは、大帝の間が墓場とは――」
 いやそこ、笑う所なんですか?!
 勝利の哄笑をあげる大帝様だがその時、頂点への妄執に燃えるヤミマルが姿を現すと、その体は何故かラゴーンの攻撃をすり抜け、 神出鬼没。
 「見たか! ヤミマル闇隠れの術!」
 ここで説明せねばなるまい。ヤミマル雲隠れの術とは、己の存在を限りなく森羅万象に溶け込ませる事で世界そのものに身を隠し、 思うがままに空間を移動し障害物をすり抜け、他者から干渉される事なく一方的に力を振るう事を可能とする流れ暴魔の秘術である。 だがその代償として、術者は一定時間の内に解除の儀式を行わないと、己の存在を保てなくなって完全に世界と一体化してしまうのだ!(嘘解説)
 秘術の効果によりネオラゴーンを一方的に攻め立てるヤミマルだが、 キリカのペンダントには闇の中で苦しみ藻掻きキリカの名を呼ぶヤミマルの姿が移り、キリカの存在意義を確保しつつ、 最終章のキーアイテムとなったペンダントにも意味を持たせるのは良い使い方。
 心の底で救いを求めるヤミマルに手を伸ばすべくキリカが暴魔城へと走っていたその頃、ターボビルダーに現れる侵入者。
 「や、やや、山口先生!?」
 「太宰博士!」
 動揺する太宰博士の下がった顎に、渾身の右アッパーカットが炸裂!
 「何をするんですか?!」
 「貴方こそなんですか! まともな大人なら止めるのが本当でしょ?!」
 ……じゃなかった、
 「明日は卒業式よ! みんなに卒業式に出てもらいたくて、ずっと探していたの! 卒業式に一緒に出ましょう」
 ……時は少し遡り、暴魔城ではネオラゴーンから消火器の粉を浴びせられて闇隠れの術をあっさり破られたヤミマルが、 大帝エクトプラズムの直撃を受け無惨に倒れていた。
 変身の解けた力たちは瓦礫の中から身を起こすも、ヤミマルを片付けた大帝の前にもはや風前の灯火、 組織運営に関しては歴代でも最低クラスの手腕ながら、戦闘力に関してはいいもの見せた暴魔大帝の逆転サヨナラホームランがスタンドに吸い込まれるかと思われたその時、 突撃教師の本領を存分に発揮した山口先生の声がターボビルダーから響き渡り、5人の魂に再び正義の炎を灯らせる。
 「……みんな! 博士も言っていたじゃないか! 18歳の時こそ、人生の中で一番美しく、最高の力が発揮できると!  俺たち18歳! 最後のパワーを今こそ見せてやるんだ!」
 青春、とはつまり、乗せられやすさと乗りやすさ。
 二度とは戻れぬその時間を高速で駆け抜けろ! と復活したターボレンジャーは猛攻を仕掛け、 青春の煌めきを込めたGTソードが大帝の喉を貫く映像がえぐい。
 続けざまのGTクラッシュにより、全身から灼光を噴き上げたネオラゴーンは爆発に沈み、一度も合体武器を使ってもらえないまま、 敗北。
 「おのれ……死なば諸共、みんな地獄へ墜ちろ!」
 暴魔城から叩き落とされた5人は空中でターボラガーに回収されるが、最後のパワーでネオラゴーンは巨大化。 力尽くで大封印を破ろうとターボビルダーに迫り、要塞メカとして最終回で大妖精17の砲撃シーンが入ったのは嬉しかったです。
 空中の5人は迷わずスーパーターボロボになると巨大ラゴーンの前に降り立ち、先手必勝のスーパーミラージュビーム!
 「ぐわぁおぁぁぁ! ぐぅぅ、ぼうまじょーぉぉ!!」
 ……
 …………
 ………………力強く前進してくるし、以前にスーパーミラージュビームを弾き返した実績もあったので、 ここは暴魔大帝ネオラゴーンの底力を見せてくれるだろうとワクワクしていたら、一撃で、死んだ(笑)
 亡き主の断末魔に応えて暴魔城はターボビルダーへ向けて特攻体勢に入り、要塞には要塞だ! とラスボスがスライド。
 ラゴーンと重ねたのでしょうが、もともと暴魔城、巨大な邪神象めいたデザインではあるので、場合によっては人型に変形して、 暴魔城ロボがラスボスになる想定もあったのでしょうか(その場合パイロットはヤミマルか、蘇り損ねたレーダか)。
 ターボレンジャーはスーパーターボビルダーを発動して暴魔城を消し飛ばそうとするが、 ペンダントからの声でヤミマルの生存を知ったキリカが必死にそれを制止し、地球かヤミマルか、ギリギリの選択を迫られる。
 ターボレンジャーはヤミマル――いや、流星光へと懸命に呼びかけ、その声に目を覚ましたヤミマルの脳裏に甦る、 流星光として過ごした仮初めの青春。
 「みんな…………ほっといてくれ! ……俺なんかもはや、生きる価値のない男! はははははは……心配するな……暴魔城は、 俺が破壊してやる!」
 力を求め、力に溺れ、力に敗れた男は、立ち上がると笑いながら銃を連射し始め、崩壊爆死パターンかと思われたその時、 レッドターボの叫びがヤミマルの胸に突き刺さる。
 「流星! 月影さんを一人にする気か!」
 流れ流れて2万と18年……旅路の果てに手に入れた本当に大切なものは、力ではなく、誰かを愛する心であったと、 今遂にヤミマルの目が開かれる。
 「……キリカ、キリカーーー!」
 「ヤミマルー!」
 二人の叫びと心が再び一つになった時、ま、まさかの赤い糸エスケープ!
 ズルテンの墜落死に始まり、何かとサプライズの多い最終回です(笑)
 ヤミマルはキリカとの間に結ばれた赤い糸の奇跡により暴魔城からの脱出に成功し、それを最後に流れ暴魔の力を失いながらも (ハッキリとは言われませんが、鎧が消滅)しっかりと手を握り合う二人。
 残る暴魔城にはスーパーターボービルダービーム(15文字)が直撃して塵に変え、ここに人と妖精と暴魔、 2万年の永きに渡る戦いは終結を迎えるのであった!
 そして、力たちは無事に卒業式を終え――
 (みんな……卒業おめでとう。俺はね、小夜子の赤い糸に救われた。でもその時、赤い糸だけじゃない。みんなの、 多くの見えない糸にこそ、結ばれている事に気付いたんだ)
 人の世の中に居場所と可能性を見出したヤミマル――流星光は、被り物を捨ててジーンズファッションに身を包み、 ヤミマルについてはかなり甘めの裁定となりましたが、ヤミマルが歪んだ原因として人間からの迫害も明確に描かれているので (集団と差別という普遍的なテーマでもあり)、融和の象徴としてヤミマルの命を救い、 憎しみの連鎖を断ち切る事をヒーローの在り方として優先した着地点に。
 映像があまりにストレートだった“赤い糸”が、人間の血の色と共に、人と人の繋がりそのものを示し、 そこに未来への希望を見出すのは巧く消化されましたが、(構成として宿敵の崩壊爆死というセオリー破りも意識にあったかと思われるものの) 残念だったのは、“流れ暴魔を救う”という落としどころの選択があまりに遅かった事。
 その為に、ヤミマル(及びキリカ)に対するターボレンジャーの対応が、“人の心が通じると信じる相手”なのか“倒すべき邪悪”なのかが 物語を通してずっと不安定になってしまい、その「変化」を劇的に積み重ねて行く事も出来ませんでした。
 最終的に大月ウルフ(カシム)を起爆剤として流れ暴魔の真実を知り、救わねばと決意を固めるのですが、 流れ暴魔の真実を知った時に、ターボレンジャー側の反省やフィードバックがない(例えば、 キリカの育ての親らは容赦なく爆殺しているわけで)ので、過去を知っての改悛が一方的になってしまったのは、 もう一押しが欲しい部分でした。
 (どんなに遠く離れていても、あなた達との間に結ばれた糸は、決して切れる事はないわ。ありがとう、ターボレンジャー)
 2万年の情念を背負い続けたヤミマルに、薄幸のヒロイン枠としてのキリカ、 悲劇的な宿命を背負った悪の幹部カップルとしてどちらも存在感を保ち、キリカが刺されて退場も、 ヤミマルが爆死してキリカが巡礼の旅路へ、も回避したのは面白い試みだっただけに、 そこに至る道を整備しきれなかったのが惜しまれます。
 「流星……」
 「月影さん」
 「――さよなら」
 力たちに見送られて二人はいずこともなく姿を消し、そしてもう一人……
 「私、ラキアの側へ行きます。みんなと、この星をいつまでも見守ってます」
 「……さよなら、シーロン」
 「決して忘れないわ」
 「「「「「さよなら」」」」」
 「みなさんも、お元気で」
 最後の妖精シーロンは、5人+博士&先生に見送られて地球を離れ、この先もし、人類が著しく地球環境を悪化させるような事があれば、 「人類はやはり滅ぼさねばならぬ」と、衛星軌道上から妖精ビームが地表に降り注ぎます。
 太宰博士は山口先生に妖精グラスを貸すなど怒濤の追い込みを決め、最終回のこの二人は、なんとなく同じフレームに入る形に。
 高速戦隊を挟んで右(狂気)と左(日常)の両極に存在するこの二人、 数年に渡ってサブライターとして名アシストを見せてきた藤井先生からのパスを、曽田先生が完全に見送ったのは予想外の流れでしたが、 それもまた、80年代戦隊の終焉を告げる要素の一つであったのかもしれません。
 ナレーション「妖精の姿を見、声を聞く事の出来た五人の若者たちは、18歳の青春を、燃やし尽くした。そして今、新たなる、 未来へ旅立つ。若者たちが守った、この大自然。星や、空や、太陽、花や鳥。いきとしいけるもの全てに、祝福されて」
 今回限りのEDテーマに乗せてスタッフロールが流れ、力たち5人は以前にもやっていた馬跳びで(何故か)青春を示し、 みんな揃ってジャンプで、おわり。
 ……個人的な総合評価としては前々作である『光戦隊マスクマン』の感想に近く、「飛び抜けて面白というほどではないものの、 なんだかんだ全体の4分の3ぐらいは平均して嫌いではないが、終盤にとっちらかって完成度を高められないまま失速」といったところ。
 2作の違いとしては、要点は見えていたがまとめ切れなかった『マスクマン』に対して、 物語を貫く背骨を設定しきれないまま何をまとめれば良いのか見失ったのが『ターボレンジャー』、といった印象。
 背骨不在になってしまった主な要点を三つ挙げると、まず一つは上述した、流れ暴魔に対するターボレンジャー側の不安定さ。勿論、 「悪」とみなしていたものが「救うべき存在」として認識を途中で変えても良いのですが、その「変化」を劇的かつ説得力を持って描く事が出来なかった為に、 最終盤の盛り上がりを乗せきれませんでした。
 次に、パワーの根源の曖昧さ。
 当初は「自然を愛し妖精を見る事のできる美しい心の持ち主」という選抜型だったのが、 どういうわけか「幼少期の神秘体験」を前提条件とした宿命型にスライドし、更にそこから、 「必ず、俺たち自身の力で変身できる!」と自家発電に到達して実質的にオーラーパワーと化すのですが、 外的なパワーからそれを自らのものとした内的なパワーへ、という段階変化の意図はわからないでもないものの、 それが終盤になっても出たり消えたりを行ってしまった事で、なぜ戦えるのか? がむしろ曖昧になってしまい、 物語を貫く一本の線にならず。
 ヤミマルキリカはヤミマルキリカで、「流れ暴魔パワーを失って変身できない」事にされるのですが、そもそもあの鎧姿は変身だったの?!  はまあさておき、それをターボレンジャーのパワーと対比させるなどの関連付けがこれといって無かったので物語的な広がりも生まれず、 「科学の悪用」という要素を切り離した時に、“ターボレンジャーのネガ”とは何かを巧く設定できませんでした。
 ……まあこれ、突き詰めていくと「地球を汚す人類」なのでは? という話になりゴセイナイトが出撃して断罪!  許さない 鉄槌! ナイトダイナミック! 始めそうな案件なので、設計のミスもあったかなーと(それもあってか、 環境破壊ネタは途中から完全に消滅)。
 そして3つ目が、「青春」の限界。
 東映としてシリーズがそういう位置づけだったのか、鈴木Pの方針だったのか、曽田さんのこだわりだったのかはわかりませんが、 この時期の《スーパー戦隊》は、「青春」を根幹的なメインテーマに掲げているのですが……なんでもかんでも「青春」にまとめるのに、 さすがに無理が目立ちすぎたな、と。
 特に前作『ライブマン』が、鈴木−曽田体制における「青春」テーマの集大成として過去−現在−未来を美しく結び上げた内容だった事もあり、 今作ではぐっと平均年齢を若返らせた高校生戦隊とする事により強制的に「青春」を持ち込んだともいえるのですが、 ではそれが立ち向かうものは何か? をテーマと結合できなかった上、結局そこに2万年の怨念が侵食してくると若さだけでは受け止めきれず、 かといって流星光に「青春「を背負わせるには話が進む程に無理が生じ、物語――そしてターボレンジャーの揺らぎを招く一因となってしまいました。
 第1話の特別編に象徴されるように、11代目(当時)のスーパー戦隊として、ある種の仕切り直しを行う意識はあったと思われ、 新しいアプローチを随所に盛り込みつつ、比較的シンプルな構成と明るい作風に、 熟成された戦隊圧縮作劇が絡み合っての単発エピソードの出来は割と面白いのですが、その面白さが、 “1年間の物語の面白さ”に巧く繋がらなかった――『ターボレンジャー』とは何か、を細部と全体として構築しきれなかった――のが、 惜しまれます。
 スタッフ面では、『フラッシュマン』第25話以来となる新規脚本家(渡辺麻実)、『チェンジマン』第9話以来となる新規演出家 (松井昇、蓑輪雅夫)が参加。
 特に蓑輪監督は、『特警ウインスペクター』パイロット版(共に傑作!)に参加する関係で離脱した東條監督に代わってシリーズ初参戦ながらラスト3話を担当し、 勿論、この先を知っているから、というのはありますが、様々な面で“80年代戦隊”の終わりに向けた、節目を感じる一作でありました。
 キャラクターについてなど、何か思いついた事があれば別項で追補しようかと思いますが……最後に一つ、 これだけは書いておきたい事……「炎・力」は、これまででもトップクラスに扱いにくい名前でした!(笑) (時に、ひらがな名前を越える難度)
 青春のパワーを信じるんだ!!

(2024年4月8日)

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