■『高速戦隊ターボレンジャー』感想まとめ7■


“夢を汚した 哀しい暴魔
時代のパワーで
優しい心を思い出させよう”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『高速戦隊ターボレンジャー』 感想の、まとめ7(38話〜44話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第38話「人を喰う地獄絵」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 この後、『ジェットマン』『ジャンパーソン』でインパクトの強いエピソードの演出がある蓑輪監督が、戦隊監督デビュー (前年は『仮面ライダーBLACK RX』に参加しており、東映ヒーロー諸作で長く助監督を務めていたそう)。
 美術室を逆立ちで走り回っていた俊介は、デッサン用の彫像を破壊した事から美術準備室の掃除を命じられ、 その最中に不気味な絵に閉じ込められていた地獄絵ボーマを甦らせてしまう、高速戦隊にあるまじき大失態。
 レーサーボーマ回に続き、封印の絵が雰囲気出ていてなかなか格好良く、 思い切り山羊の悪魔ながら大ぶりの角が見映えする地獄絵ボーマも、悪くないデザイン。
 地獄絵ボーマはキリカによって大帝の元へと連れて行かれ、地獄絵中心の時は、 画面周囲にエフェクトが入って従来とは違った味付けがされているのですが、正直……見づらい。
 俊介の罰は掃除から美術鑑賞の感想文提出に切り替わり、美術館に向かう5人だが、先回りして美術館に潜り込んでいた地獄絵の中に、 はるな、大地、洋平が次々と取り込まれてしまう!
 「人間は皆、俺の芸術の中で、地獄色に染まって、死ぬのだ……!」
 辛うじて地獄絵フィニッシュを逃れる力と俊介だが、自らの傷を完全に修復する暴魔獣の前に一時撤退を余儀なくされ、 その間に地獄絵ボーマは人々を次々と絵の中に閉じ込めていく。
 地獄絵ボーマの本体は絵そのものだが、絵を破壊すると囚われの人々の命はない……責任を感じる俊介は捨て身で地獄絵の内部に入り込もうと覚悟を決め、 その肩を力強く叩いて後押しする太宰博士、じゃなかった、何かに気付く太宰博士。
 「待てよ! ……奴は絵の中で、人間の持ってる色を吸収するんだったな……」
 太宰博士のアドバイスを受けた力と俊介は、敢えてエネルギーを放出すると、真っ白なスーツで地獄絵の中に閉じ込められ、
 「博士の言った通りだ。これなら動きが取れる!」
 ……?!
 今作の特徴の一つといえる漂泊スーツを暴魔攻略のアイデアに持ってきた事そのものは悪くなかったのですが、 「人間の生命力を“色”として認識している」→「スーツのエネルギーを放出して白色になってしまえばエネルギーを吸収されない」→ 「地獄絵の中でも自由に動けるぞ!」 ……いや、本人の生命力は吸われる上に、まともに戦闘できないのでは」と、 頓知を通りこして意味不明になってしまい、完全にコースアウト。
 解放された仲間たちの私服が脱色されて真っ白になっている表現などは面白かったのですが、 「生命力を吸い取る」事を「色を吸い取る」事で表現するのと「真っ白になったから吸い取るものが何もないぜ! 」は繋がっているようで繋がっていませんし、その理屈だと吸い取るものが何も無いと死ぬのでは……と、滅茶苦茶な事に。
 「いいか、白というのは全ての色の基本だ。だから奴の、白い部分を見つけるんだ。そこはきっと、無防備だ」
 太宰博士に、博士らしく助言させたい、といった狙いもあったのかもですが……白も色なら吸い取れるのでは…… と更なるロジックの迷走を生んでしまい、もはや単純に、苦手:白、みたいな事に。
 額の弱点にボウガンを撃ち込むと地獄絵世界が大崩壊し、皆の色も戻ってターボレンジャー大復活から、 コンビネーションボウガンが炸裂してあっさりビクトリー。
 首が残った地獄絵ボーマはどういうわけか自力で巨大化し、ターボラガー発進。 バトルボールを正面から命中させるとパンチの連打を叩き込み、スクリューラガーキックで決着がつくのでありました。
 「ラゴーン配下の暴魔なぞ、こんなものさ」
 反論の余地が全くありません!
 一件落着して、石膏像代わりに半裸の俊介が美術のモデルを務める事になり、これは描かされる方が罰ゲームなのでは……で、つづく。
 次回――直球サブタイトルシリーズ。

◆第39話「ラゴーンの最後」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 悪巧みは部下に任せて自室でアイドルを育成していたら、突然目の前に降ってくる戦隊ヒーロー!!
 「おまえは?! 炎力!」
 大帝ラゴーンと力が、夏休みの慰安旅行から本部へ戻ってきたら戸締まりの不注意によりヒーローの侵入を許して割と深刻な危機に陥った某ネロス帝国ばりの衝撃の初顔合わせとなり、 そこにサプライズパーティを企画したヤミマルとキリカが姿を見せる。
 「さてラゴーン様、お手並みを拝見いたしますか」
 「ヤミマル、なにをたくらんでおる」
 ヤミマルキリカは、赤い糸バリアを張り巡らせて力と大帝に強制デスマッチを要求し、 まんまと閉じ込められた2人は敵味方を超えて共闘……するわけなく、 ヤミマルの目論み通りに一対一の勝負に突入。
 その間にヤミマルとキリカは暴魔城の宝物庫へ侵入すると、暴魔城と暴魔百族の命の源である命石(いのちいし)を強奪し、 ヤミマルキリカの明確な反乱行為が、なし崩しではなく狙いあっての作戦になったのはよかったところ。
 「もしやヤミマルめ……暴魔城の命石を。そうか……そういうことか」
 置物系ラスボスとして身動き取れないラゴーンが、口からのブレス攻撃に加え、 手の中に生み出した剣を伸縮自在の触手で振り回しターボレッドに猛攻を浴びせていた一方、ヤミマルとキリカは地上に降り立つと、 命石を用いて暴魔城と大妖精17を激突させ、邪魔者をまとめて葬り去ろうとする恐るべき計画を開始していた!
 昔の芸風を思い出したヤミマルは、立ちはだかる黒青黄桃を、槍・斧・銃と次々と武器を切り替えて叩きのめし、4人は崖から転落。
 キリカは命石によってその本体といえる暴魔城を地球に召喚し、ラゴーン様は激闘中。
 「愚かなヤミマルめ。この儂がレッドごときを持て余すとでも思っているのか」
 初めての横からカットで顎がだいぶしゃくれている事がわかったラゴーン(こう見ると、顔のモチーフはアントニオ猪木だったのでしょうか) は赤にトドメを刺そうとするが、ターボレーザーで反撃を受けると腕を切り落とされてしまい悶絶。
 「おのれぇぇぇぇ」
 腕の傷跡から飛び散る火花で赤を迎撃して勝ち誇る大帝様だが暴魔城はいよいよ地表に近付き、 組織運営能力はともかく造形の優れたラゴーン様と赤の一騎打ちはなんだかんだ盛り上がり、 ヤミマルと他4人のバトルも入れて全体の危機感を上乗せした上で、 個人単位の共倒れと本拠地同士の共倒れを重ねた作戦の構成もインパクトがあり、迫り来る両者壊滅の危機はなかなかのスペクタクル。
 後は、巨大ジンバを葬り去った実績を持つターボビルダーが、駄目で元々でも暴魔城に迎撃行動を取ればより緊迫感が上がったのが惜しまれますが、 一切何も手を打たないのは、そろそろ太宰博士の活動資金が尽きてきてしまったのか……。
 「生き残るのは俺とおまえ。二人で世界を支配するのだ!」
 ヤミマルは快哉を叫び、行為としては「世界征服」ですが、それが私利私欲である以上に自分たちを虐げてきた世界への復讐 ――その象徴としての「二人の世界」の創出に強く結びつけられているのは、ヤミマルの面白い切り口。
 だが迫り来る激突の寸前、なんだかもう、高笑いしているのか痛がっているのかよくわからないラゴーン様にレッド渾身の一撃が炸裂すると、 派手な火花をあげ苦悶したラゴーンが煙のように消滅。赤い糸デスマッチが解除されると同時に何故か暴魔城も空中で静止すると、 ヤミマルキリカの手にしていた命石が暴魔城の中に吸い込まれていき、その力を取り込んだラゴーンが二足歩行の姿で復活する!
 「暴魔城は誰にも渡さん。暴魔城と暴魔百族を守る為に生き返らん」
 会社乗っ取り断固拒否、と雄々しく立ち上がったラゴーンリバイブは、インパクトのある獣面は基本そのまま、髪が激しく逆立ち、 全身がトゲっぽくなり、サブタイトルにさえ目を瞑れば、このままラスボスを務められそうな迫力。
 「暴魔大帝ラゴーンを侮るな!」
 地上へと自ら降臨した巨大ラゴーンのファイヤーブレスでヤミマルとキリカは吹き飛び、暗雲の中に姿を消す暴魔城。 もののついでにターボビルダーに迫るラゴーンの前に立ちはだかるターボロボだが、巨大ラゴーンは、 ターボロボのパンチ・カノン・ソードの全てを跳ね返す、圧倒的大胸筋を見せつける!
 やはりここでもビルダーからの支援砲撃が無いのが惜しまれますが、現在、個人輸入した弾薬類が税関でストップをかけられています。
 大妖精17絶体絶命のその時、暴魔戦闘機に乗り込んで暴魔城を脱出した赤が戦線に復帰し、 ラガーファイターに乗り込んでラゴーンを攻撃すると、その隙にスーパーシフト!
 挿入歌にのせてバンクで完全変形を見せ、悠々と近付いてくる大帝様に突き刺さるスーパーミラージュビーム!
 で瞬殺されたらどうしようかと思いましたが、ラゴーンはスーパーミラージュビームさえものともしない規格外の強さを見せつけ、 追い詰められるまで本気を出さないのが、暴魔百族の社風です。
 「よーし、こうなったら、最後の大合体だ!」
 その脅威に対し太宰博士がなにやら不穏な事を言い出し……
 「「「「「合体! スーパーターボビルダー!!」」」」」
 何かもうワンギミックあったら嬉しいな、と思ってはいましたが、 バトルモードとなった大妖精17にスーパーターボロボがそのまま収納される驚愕の展開で、今必殺のグラヴィトーーーン!!  ……じゃなかった、スーパーターボビルダービームが放たれ、T字型エネルギーの直撃を受けたラゴーン様、 末期の台詞さえ許されずに、消し飛んだ!
 ……結局、酷い(笑)
 「ターボビルダーとレッドを倒せなかったのは残念だが、ラゴーンは死んだ」
 当初の目論見が失敗に終わったことをおくびにもださず、このドサクサに紛れてヤミマル&キリカは暴魔百族の全権を掌握。
 「これから暴魔を指揮するのは私たち二人」
 「流れ暴魔こそが、人間と暴魔、二つの世界の支配者となるのだ!」
 存在を忘れられ加減だったウーラー隊長が画面に映ったのは嬉しく、早速ズルテンは二人に取り入ってぺこぺこと頭を下げ…… もはや節操の無さが固い信念レベルになっていますが、なるべく酷い死に様を期待したいところです(笑)
 ナレーション「留まるところを知らぬ、若き流れ暴魔二人の野望! 未来を賭けて、若者たちの、新たなる戦いが始まる。果たして、 微笑むのは、女神か、悪魔か」
 もしかしたら『ダイナマン』への意識はあったのかもですが、「若者たちの戦い」が強調されるのは曽田さんらしい味付け。
 だが……
 「暴魔大帝ラゴーンは死せず。ふふふふははははははは……」
 再び宝物庫の中に安置された命石には、死んだ筈のラゴーンの姿が映るのであった、で、つづく。
 幹部退場ラッシュから遅れること9話、放映当時の年末を目前に控えて敢えなく退場となったラゴーン様ですが、 ヤミマル&キリカに出し抜かれて一方的に無様な敗死を遂げる形ではなく、 予想外の戦闘力を見せてターボレンジャーに切り札を使わせるにふさわしい存在感を発揮してくれたのは、良かったところ。
 これなら復活フラグにも納得できますが、既にレーダにも復活フラグを立てているので、終盤に残したピースが溢れてしまわないかは、 少々心配です。
 次回――四国伊予三島は今、嵐の真っ只中!

◆第40話「歩け!四国の子」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「流れ流れて二万年、流れ暴魔が暴魔百族の実権を握った今、記念すべき、最初の作戦を行う!」
 瀬戸大橋を越えて!
 シリーズ初参加の蓑輪監督がラゴーン一時退場回の監督を務めたのは、 てっきり東條監督が『特警ウインスペクター』パイロット版に回る関係でローテ再編があったのかと思ったら、 東條監督は四国ロケを担当していました!
 以前、その『ウインスペクター』に四国ロケ編があった際に何事かと思って調べたところ、 1988年4月10日の瀬戸大橋開業に合わせて(?)東映ヒーロー作品で続けて四国ロケ回が投入されたようで……
 〔88年4月10日・瀬戸大橋開業 → 89年6月18日「瀬戸大橋の大決戦」 → 6月25日「四国空母化計画!!」 (『仮面ライダーBLACK RX』) → 同年12月1日「(今回)」 → 12月8日「(次回)」(今作) → 90年11月11日 「瀬戸大橋の怪人1」 → 11月18日「瀬戸大橋の怪人2」(『特警ウインスペクター』)〕
 と立て続けに悪の手が伸びており(他作品でもあるかもしれません)、くしくも『RX』四国編は蓑輪監督回なのですが、 「四国空母化計画」が大変気になります(笑)
 その計画は幸い太陽の子に阻止されたようで、空母の一部にならずに済んだ愛媛県は伊予三島市に済む少年トシオの元に、 東京に住んでいた頃にスイミング教室の先生だった洋平から一冊の本が届く。
 だがそれは、「あるけ あるけ どこまでも」の一文が大きく書かれたどこか不気味な雰囲気の本で、 それを読んだ途端に少年は催眠術にでもかかったかのようにただ黙々と歩き出す。
 靴が割け、破れた靴下に血が滲むのも痛々しい描写で歩き続ける少年は、柵を乗り越えて転落寸前、少年の母(演じるのは恐らく、 『超新星フラッシュマン』ウルクなどを演じた長門美由樹さん)から連絡を受けてマッハで四国へ駆け付けた洋平によりキャッチ。
 引っ越していく少年に約束した、水泳の絵本を描いて送った筈が、なぜ人々を狂気の行進に駆り立てる悪魔の本に変わってしまったのか…… 太宰博士から「私の友人がそちらの製紙工場の研究員をしているんだが」と連絡を受けた高速戦隊は、 紙の原料が大量に消えている不可解な事件に関連性を感じ、協力:大王製紙株式会社三島工場。
 製紙工場に向かった5人は、紙の原料であるユーカリの木のチップの山の中から出現するエホンボーマ(開いた本を甲羅に見立てて亀顔) と遭遇し……タイアップ回に付き物ではありますが、地元を代表する企業(三島は大王製紙創業の地であり、現在も四国本社が存在) が知らぬ事とはいえ悪の組織に利用される内容で良いのでしょうか(笑)
 大王製紙から紙の原料を掠め取り、手にした人々をただひたすら歩かせ続ける呪いの本を大量生産するヤミマルが目論むのは、 2万年の間、地獄の荒野を彷徨い続けた流れ暴魔の怨恨を込めた、地獄の絵本作戦!
 「歩け……! 歩け! どこまでも!」
 洗脳書物パターンとしても変な画の作戦だな……と思っていたら、積もり積もった流れ暴魔の情念としっかり接続されるのは実に曽田さんで、 血に汚れた足の描写が死角から強烈な右フックとしてこめかみに突き刺さり、「記念すべき、最初の作戦」としても納得の内容。
 木くずの山と巨大な工場を背景に戦う80年代前半感のある集団バトル中、 パルプを食べて悪魔の本を吐き出す絵本ボーマに攻撃を与えると本の文字が消える事が明らかになり、「おいらの中のデータによると、 敵の起こした異常事態は、敵を倒すとだいたい解決するっチュ」が見事に映像に落とし込まれました(笑)
 ナレーション「ターボレンジャーは、工場内に隠れたエホンボーマを探す為に、 中央制御室の、モニターを利用する事を、思いついた」
 一度は身柄を抑えるも、本の呪いに支配されままのトシオ少年はコスモスの花咲く翠波高原を彷徨っており、 外部の監視モニターでそれをキャッチできる大王製紙が伊予三島市のユグドラシルみたいな事になっていますが、 5人は再生紙エリアで廃棄された書籍を悪魔の本に変えていく絵本ボーマを発見。
 「俺の作った絵本も、こんな風に悪魔の本に変えてたというわけか!」
 洋平の絵本は、偶然郵便物を見つけたズルテンによってすり替えられていた事が明らかになり、 ズルテンが余計な事をしなければ高速戦隊まとめて四国に来なかったのでは……そして、暴魔百族に住所バレしたぞ、洋平(笑)
 悪魔の本の出荷を阻止しようとするターボレンジャーだがヤミマルの妨害を受け、 東京へ向かうトラックを止めようと工場の外に飛び出した洋平は、へい、タクシー! ならぬ、へい、ヘリコプター!
 「すいません! 止まってください! あの車を追って下さい!」
 一瞬、操縦席に太宰博士が乗っているのではないかとドキドキしたのですがそんな事はなく、 タクシー気分でヘリコプターに乗り込む洋平。スタッフも開き直ったのか、 台詞がタクシーに前の車を追ってもらう時のお約束そのままです(笑)
 「キリカ! ここから先は車を一歩たりとも通さん!」
 操縦席から身を乗り出して格好良く啖呵を切る洋平だが、キリカの攻撃を受けてヘリから落ちると部外者のヘリコプターはお役御免となり ……なんでここにヘリを投入したの?! というストーリー上の必然性の薄さが豪華さに繋がっているのですが、 大王製紙さんが社用ヘリとか持っていたのでしょうか……。
 数年前に猛威を振るった高所転落の匠ではないので転落ダメージで重傷を負った洋平だが、 トシオ少年を必死に止めようとする少年母の声に目を覚ますと立ち上がり、トラックからコウモリに載せ替えられていた悪魔の本の運搬阻止に成功。
 「悪魔の本はこの世には一冊たりとも残さん!」
 序盤からプッシュ傾向はありましたは、悪魔の本を一人で焼却する大活躍を見せ、そのまま絵本ボーマとの一騎打ちにもつれこむと、 「俺の怒りを喰らえ!」とマシンガンモードで銃弾を叩き込み、ようやく駆け付けた4人とVターボバズーカでビクトリー!
 巨大化した絵本ボーマはバトルボールを口で咥えて受け止める荒技を見せるが、 調子に乗ってボールを蹴りつけるとパンチングで弾き返され、ラガーガンからスクリューダガーキックの定番コンボに敗北。
 正気に戻った少年は、悪魔の本から元に戻った洋平の絵本(なお、竹本昇監督作との事)を手に取り、 楽しい時間を過ごす母子と高速戦隊だが……夜の埠頭でギターをかき鳴らす、謎の影。
 「ふふふふふふふ……ターボレンジャー、伊予三島最後の夜を楽しむがよい。明日こそが、おまえ達の最後の日だ」
 ナレーション「果たして、この謎の挑戦者は何者? 新たなる、敵の出現か」
 で、つづく。
 伊予三島、の四文字が繰り返しテロップで強調されるタイアップ回(なお現在は、市町村合併により四国中央市との事)、 子供に優しく絵本を自作までする洋平がまたも随分とおいしい役回りとなりましたが、 次回――なんか気がつくとギャグっぽいエピソード担当が多い気がする大地の運命や如何に。

◆第41話「スターは俺だ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 折角だからと大王製紙の工場を見学していた高速戦隊だが、そこに響き渡る、謎のギターの音色。
 「今日は東、明日は西、風の吹くまま気の向くまま、ねぐら定めぬ渡り鳥、いわば俺も流れ者、流れ流れて暴魔の為に、この身を捧げん!」
 ギターは勿論、打撃武器!
 高笑いと共に現れた、文字通りのワタリドリボーマが5人に襲いかかり、七つ道具の一つと称して鎖鎌を振り回すが、 途中でドジっ子属性を発動して、自爆。
 「ヤミマル様が流星剣(5回攻撃)、キリカ様が月光剣(防御無視)なら、この俺様は、天に輝く太陽剣(HP回復)!」
 ならばと今度は剣を取り出すもターボレンジャーに軽々とあしらわれ、登場当初の日本一感はどこへやら、メッキの剥がれた渡り鳥は、 観戦していたヤミマル一味にも見捨てられると、這々の体で逃走。
 手分けして暴魔獣を追う高速戦隊だが、不意打ちをしのいだ大地は、這いつくばって足の怪我を痛がるあまりにも情けないその姿に、 思わずかばってしまう。
 「消えちまいな」
 「なんですと?!」
 「どこか遠くへ行ってしまえと言ってるのさ。もう二度とこの世へは出てくるんじゃないぞ」
 それはそれで結構酷い事を言いつつ、ひとまずステーキハウス・ブライトン(カジュアルレストラン・ウエストウッド) で昼食を摂る5人だが、またも鳴り響くギターの音色。
 機械仕掛けのギターをトラップにまたも大地を襲う渡り鳥だったが、奇襲に失敗すると土下座をし、 全てはヤミマルに脅されての事だと命乞い。「俺を封印してくれ」という渡り鳥の申し出に対し、力は疑うが大地は受け入れ、 暴魔百族が定期的に離反者を生むあまり、高速戦隊側の「信じる/信じない」対応が不安定なのは、 今作の残念なところ。
 その頃、大妖精17ではシーロンが暴魔図鑑を調べていたが渡り鳥ボーマの記述はなく、四国に封印されているのは、 芝居好きの暴魔獣……?
 渡り鳥ボーマの命乞いはヤミマルの計略である事がズルテンによって示され、遠く東京でそれが裏付けられるのですが、 この要素は終盤ちょっとしたどんでん返しに用いられる事に。
 「俺はもう、深く静かに眠りたい」
 翠波高原でヤミマル一味の攻撃を受けたターボレンジャーだが、赤青黄桃が足止めをしている間に大地と渡り鳥は富郷渓谷へと向かい、 暴魔封印の為に身を清める事に。パンツ一丁で川へ入ると言われるままにブレスも外す大地だが、ヤミマル一味、 そして本性を現した渡り鳥に牙を剥かれ、東映ヒーロー史上に残る大ピンチ。
 「暴魔百族の千両役者、暴魔獣、オヤクシャボーマたぁ、あ、俺のことだ〜!」
 ヤミマル一味さえたばかっていた役者ボーマは、鳥頭マスクをはぐと歌舞伎メイクの素顔を露わにして六方を踏み、 パンツ一丁の大地に向けて番傘マシンガンをぶっ放すと、四国の清流に派手に噴き上がる水柱!
 「ああ……鮎の塩焼き食いてえなぁ。体中がカッカするぜ。暴魔の野郎、今度会ったら承知しねえぞ。今度会ったら……」
 山形大地、東映ヒーロー史上に名を刻むパンツ一丁での戦死……かと思われたその時、水柱の収まった川の中から飛び出したのは、 黒を含めた5人のターボレンジャー!
 太宰博士から(たぶん)連絡を受け、偽のターボブレスを用意して暴魔の芝居を暴いたターボレンジャーは、 本気を出した役者ボーマの番傘花吹雪、更に手鏡ソーラービームの攻撃を受けるが、桃の殺人バトン投法が炸裂し (男達が景気良く爆発で吹き飛んでいる中、一人だけ華麗に反撃を決める軍曹)、 手鏡を砕くとコンビネーションアタックから四国遠征Vターボバズーカだ!
 しかしヤミマルは役者ボーマを巨大化するのか……? と思ったら、 いずこともしれぬ場所で蠢く触手の塊から放たれた光によって巨大化し、全員が「今の光は?!」「いったい誰が? どこから?!」 と困惑するのは、上手い形で布石を打ってきました。
 なにはともあれターボロボが出撃するも鎖鎌と番傘攻撃に苦しめられるが、高速剣の連続攻撃で強引に反撃すると、 ターボスラッシュを一閃し、お役者ボーマは自らの生み出した花吹雪に埋もれるように、四国の地で遙かな眠りの千秋楽を飾るのであった。
 謎の巨大化への疑問を残したまま、高速ボートに乗ってターボレンジャーは東京に帰還し、 闇の中に浮かび上がるラゴーンの首……で、つづく。
 前回に続き、四国は伊予三島での戦いとなり、記念すべき第2回目の作戦にして暴魔獣に虚仮にされた上、 大帝ラゴーンが復活の兆しを見せるヤミマル一味の明日はどっちだ?!
 爆発力はないものの、コツコツと単打を重ねる的な面白さのある『ターボレンジャー』としては今ひとつの内容でしたが、 暴魔百族名物の離反かと見せて実はヤミマルの作戦でした、からの流れ暴魔政権への実質離反者でした、の一ひねりと、 巨大化によってラゴーン生存を匂わせる見せ方は面白かったです。
 そして多分、ラゴーン様による初の巨大化光線により、暴魔百族は幹部以上のキャラクターは全て巨大化させる能力持ちとなり、 戦隊史上でもこれはかなり珍しいでしょうか。
 次回――ヒロインレースの大逆転に向けて、妖精シーロン、命がけのアタック!!

◆第42話「コワイ誕生日!」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 見所は、野球場の外野グラウンドに俯せで転がっているレッドターボ。
 そして、外野スタンドに仰向けに転がっているデビルボーマ。
 筆舌に尽くしがたい味わいのあるシーンでした。
 ストレートなデザインのデビルボーマが大復活し、妖精シーロンをさらうべく分身小悪魔を放っていた頃、 大妖精17ではシーロンの誕生パーティが行われており、妖精グラスをつけっぱなしでパーティに参加している博士、不審者すぎます(笑)
 アイドルなのでずっと2万と9歳を主張するシーロンが、大要塞17に侵入したデビル小悪魔にさらわれてしまい、 デビルボーマの目的は、妖精のオーラを吸収し、不死身の存在となる事!
 「博士、オーラを吸い取られた妖精はどうなるんですか?」
 「勿論――死ぬ」
 毎度デリカシーの足りない博士は重々しく断言し、シーロン救出の為に出撃する5人だが、 デビルボーマの元に連れ去られたシーロンは妖精オーラ吸収の為に生きながら丸呑みにされ、小妖精の躍り食いが、 鮮烈の映像。
 「みんな……助けて……みんな……」
 デビルボーマの体内で七転八倒するシーロンの弱々しい声をキャッチして洞穴に乗り込む高速戦隊は、 デビルボーマをビクトリーしたら腹の中の妖精も死ぬぞと脅されて、このパターンはちょっと使いすぎな印象です。
 ヤミマルらも含めた集団バトルに突入し、勢いでズルテンまで混ざっているのに赤ウーラーの姿が見えないのですが、残り話数で、 出番はあるのか赤ウーラー……。
 シーロンの吸収による強化まで時間を稼ごうとするデビルボーマは、暴魔コウモリをタクシー代わりに召喚して逃走を図り、 それに食らい付いた赤だが溶解ガスを受けて墜落してしまう。力はシーロンの声を必死に辿る内に東京ドームシティに辿り着くと、 ビルの屋上にデビルボーマを発見。
 シーロン消化まで残り20分……ビルを駆け上がるレッドターボはキリカの妨害を切り抜けてデビルボーマへと剣を振るい、 基本はタイムリミットサスペンスなのですが、一般暴魔獣の足にされる暴魔コウモリ、何故か屋上で待ち受けるデビルボーマ、 一向に合流できない仲間4人、と個々の事象への説明(ないし納得度を上げる為の描写)が脱落しすぎていて、どうにも展開が雑。
 また、デビルボーマの胃袋の中で苦しむシーロンの姿は見ていて楽しくはない、随時挟まれる博士は「頼むぞレッド」ばかり、 死にもの狂いの赤の苦闘が描かれるほど仲間達がどこで何をしているのか気になる、と、総じてサスペンスが盛り上がるというよりは、 同じ描写の繰り返しが物語の劇的な進行を妨げてしまっており、長石監督回としては残念な出来。
 (シーロン……もう一度……もう一度、君の笑顔が見たい)
 シーロン消化まで残り5分、シーロンの誕生日にプレゼントとしてあげたトルマリンの特性を思い出した力は、 赤に変身するとターボ電磁波を放射しながらデビルボーマを剣で貫き、それにトルマリンが反応して大爆発。
 トルマリンが激しく放出した静電気により、デビルボーマの腹に開いた穴からシーロンは脱出し、 不死身になり損ねたデビルボーマには赤の飛び蹴りから二刀流のGTクラッシュでビクトリー!
 今回はヤミマルが巨大化し、ラガーファイター発進、デビルボーマの斬撃を受け止めて殴り飛ばしてからキックオフの変則パターンで、 よろけたデビルボーマにスクリューラガーキックが炸裂し、ターボレンジャーは妖精の天敵を始末するのであった。
 夜の東京ドームを背景に、挿入歌に乗せてシーロンは舞い踊り、5人のシーロン愛を確認して、つづく。
 終盤戦を前にシーロンを取り上げた事そのものは良かったのですが、撮影の手間もあってか、 便利なアドバイザー扱いになっていたシーロンと5人の関係掘り下げが長い間これといってなく、 それらを一気にカバーするほどの劇的な積み上げにもならず、そのくせ5人がシーロン大好きを力強くアピールするので (それ自体への違和感は無いにせよ)、今ひとつ冴えない出来に。
 力回としてもこれといって面白くならず(敢えていえば、不死身ボーマ回と繋がっているとはいえますが)、 キャラクター同士の化学反応が上手く引き出せなかったエピソードといった感。
 次回――一歩間違えると、これまでの諸々の描写との整合性が取れなくなりそうで不安ですが、果たして、自爆装置はどうなる?!

◆第43話「6人目の戦士!」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 「どうして僕はこんなに弱いんだろう……。一度でいいから強くなって、みんなを見返してやりたい……」
 運動音痴のガリ勉野郎、として体育会系気質の強い『ターボレンジャー』世界では肩身が狭く、 クラスメートから馬鹿にされる3−Aの学生・ケンイチ(跳び箱を失敗した際、 皆が笑う中で高速戦隊のメンバーは心配して駆け寄るのがしっかり手堅い)は、校庭の裏庭で射撃訓練中のガンマンボーマを目撃。
 ガンベルトをかけ、両肩にショットガンを装備したガンマンボーマは、頭部にリボルバー拳銃の意匠がほどこされており、 横から見ると顔の側面が木製グリップのイメージになっているのが、格好いいデザイン。
 ズルテンに襲われたケンイチを横っ飛びで助けた洋平は、 その場でブルーターボになってウーラーたちを蹴散らした事で実力者としてガンマンボーマに目を付けられ、そういえば、 射撃寄りのキャラでした。
 早撃ち対決に敗れた青は駆け付けた仲間達に助けられ、マシンガンの斉射を浴びた高速戦隊はケンイチを連れて撤収するが、 事情を説明したケンイチから、高速戦隊に入りたいんだ、と頼み込まれる事に。
 「頼むよ。もっと強くなりたいんだ。強くなって、みんなを見返してやりたいんだ」
 「無理だよケンイチ、おまえには」
 明らかに心根に問題があるのですが、ズバッと言いにくかったのか厳しい訓練が必要と説得するも、 身近にある強さを目にしてしまったケンイチは諦めない。
 「このブレスレットがあれば、変身できるんだろ?!」
 「駄目なんだケンイチ。おまえはターボレンジャーには変身できない」
 「なぜ?!」
 「妖精パワーを浴びた人間じゃなきゃ、駄目なんだ」
 「妖精?」
 バイオ粒子やアースフォースと同系統といえば同系統なのですが、物語途中で説明した結果、今明かされる真実、というよりも、 身も蓋もない前提条件めいてしまったのは、改めて劇作があまり上手く行かなかった部分。
 暴魔城へ赴いたガンマンがターボレンジャー撃破を宣言する一方、ケンイチは、昨日のお礼と称して手作り弁当を洋平に渡し…… それを喜んで受け取る洋平、君は、あれだな……女子の弁当とか当たり前に貰いすぎて、色々マヒしてるな……(笑)  ところがそこには睡眠薬が混ぜられており、眠り込んだ洋平からブレスを奪って逃走したケンイチは、 少年期に妖精の光を浴びていた事が判明。
 たまたま強盗事件に行き合ったケンイチは、変身に成功するとブルーターボとして強盗を叩きのめし、一歩間違えると、 爆発四散したケンイチとそれに巻き込まれた強盗の二つの焼け焦げた死体が路上に転がるところだったので、 妖精の光が思い違いではなくて太宰博士が法的に助かりました。
 「僕にもターボレンジャーの資格があるんだ。もう誰も僕を馬鹿に出来ない。みんなを見返してやるんだ」
 「おまえに戦士の資格は無い! ブレスレットを返すんだ!」
 地面に倒れた強盗を、力を誇示するように踏みつけるケンイチターボの姿を目にした洋平は、ブレスの返却を要求。
 「なに?!」
 「ケンイチ……おまえには戦士に本当に必要なものがわかってない」
 力を過信し、強さの意味を履き違えるケンイチ(物語の因果としては、たとえ妖精パワーを浴びていても、 そういう人間の元には力は訪れない、という事であり)を重ねて説得しようとする洋平だが、ガンマンボーマがそこに出現。 一度は立ち向かうも、反撃を受けるとケンイチボーマはへたり込み、生身でそれをかばった洋平、割と思い切り撃たれる。
 「ケンイチ、逃げろ、逃げるんだぁ!」
 それでもケンイチを守ろうとする洋平を人質に取ったガンマンは、ケンイチをメッセンジャーとして三日月ヶ原に高速戦隊を呼び出し、 力たちにそれを伝えるもブレスを返す踏ん切りをつけられなかったケンイチは、理科室で思い悩む。
 (変身した僕より、生身の洋平くんの方が勇気があったなんて……)
 本当に必要なもの、自分を変えられる力とはなにか――
 「洋平くん、僕に出来ることは……そうだ!」
 得意の化学知識で何やら細工を施したライフル弾を作ったケンイチは、ガンマンに追い詰められていた高速戦隊の元に駆け付けると、 再びブルーターボに変身。へっぴり腰ながらも果敢に突撃すると、銃弾を浴びながらの決死のダイブにより銃弾のすり替えに成功し、 ケンイチは《狂気》がLV1に上がった!
 「洋平くん……やっぱり……ブルーターボは、君の方がふさわしい」
 倒れたケンイチは洋平にターボブレスを返し、激しい銃撃戦となるも追い詰められる青だが、 ケンイチのすり替えた弾丸が暴発した隙にJガンで反撃すると、Vターボバズーカでビクトリー。
 今回も謎の肉塊がガンマンを巨大化させ、ターボロボ発進。 距離を取っての撃ち合いは相手の土俵と見たターボロボは地面を撃って目くらましをすると高速剣で斬り掛かってターボクラッシュで勝利を納め、 巨大戦における殺陣の工夫は今作の特色であり長所です。
 「みんなを見返してやろうなんて馬鹿だった。戦士に必要なのは勇気。勇気は、みんなを守ってやりたいという、愛から生まれるんだね」
 反省したケンイチは洋平たちに謝罪すると、自分に自信を持って胸を張って生きていく勇気を身につけ、跳び箱にチャレンジ。
 目的を果たす為なら弁当に睡眠薬を仕込める精神性と行動力、火薬調合の知識のみならず擬装用の弾丸を所持、 トドメに銃弾の嵐の中に突っ込んでいく覚悟と狂気を身につけてしまったケンイチ、完全にテロリスト予備軍であり、 一歩間違えると数年後の同窓会がデスゲームの会場になっていた可能性もあるので、人を守る愛と勇気に目覚めてくれて本当に良かったですね……。
 同級生の葛藤を通し、ヒーローに必要な「力」ばかりではない本当の「強さ」とは、 主題歌にも歌われている普遍的な「愛と勇気」なんだ、とまとめたのは『ターボレンジャー』らしく、同時に、 たとえ悪と戦う戦士にはなれなくても、「勇気」を持って自分を変える事は出来るんだ、としたのは綺麗なフィードバックでした。
 ただ、薬を盛ってブレス強奪をしたケンイチの精算として相応の活躍をさせる必要があった結果、 ブレスを返して5人でも苦戦する高速戦隊を助けるのではなく、ブレスを返さずに調合している間に4人が苦戦の形になってしまった為、 素直にブレスを返せば良かったのでは……となってしまったのは残念。
 かといって先にブレスを返すと高速戦隊の元へ向かう推進剤が不足してしまいますし、ブレスを返すに返せなかった事情か、 火薬調合以外で5人を助けるか、もう一段階の工夫を仕込めなかったのが惜しまれます。
 次回――え、ええええええっ?!

◆第44話「流れ暴魔伝説」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 キリカの枕元にお守りボーマが立つと「真の暴魔になる時が来た」と流れ暴魔伝説の存在を告げ、 月影家を訪れたキリカは謎の儀式に没頭。
 再び姿を見せたお守りボーマの霊魂から、宇宙より飛来する鎧ボーマと一体化する事により人間の血が消え、 真の暴魔となった時に史上最高の力を得られる事を教えられ、一歩間違えると『カーレンジャー』が始まりそうでドキドキします(笑)
 「これでヤミマルと二人で、地球をこの手に」
 運命の男の為にその力を得ようとするキリカだが、流れ暴魔として二つの世界を支配する事にアイデンティティがあったのに完全な暴魔になったらそれを失う上、 キリカの方が史上最強になったら、ヤミマルさん、地味に傷つくのでは……。あの人多分、男の沽券に関わる、とか言いながら旅に出るタイプですよ……。
 妙な噂を聞いて月影家に不法侵入した力は、この儀式を目撃。スモークを焚きしめた妖しい儀式の間でキリカと一当たりするも敗北し、 シーロンの口から流れ暴魔伝説を確認。
 「よせキリカ! 合体したら、もう人間ではいられなくなるんだぞ!」
 数万年周期で地球に接近する小型彗星の正体がヨロイボーマで、それと合体する事で真の暴魔に新生する、 というのは改めて伝奇浪漫テイストですが、ヤミマルがターボレンジャーを足止めしている間にキリカは合体を果たし、 予告映像が衝撃的だった重装甲キリカが誕生。
 「我が名は、ヨロイキリカ」
 凄く重そうですが、動けるんですかね、これ……。
 「苦しめ! 苦しんでのたうち回りながら死ぬがいい!」
 剣を振り回すと燃え盛る岩石が飛び回り、その斬撃は大地を断ち割り、魔神剣なんていらなかったんや!
 圧倒的なパワーで5人を地割れに叩き落としたキリカは、Bパートでは暴魔城の広間を高笑いしながら歩き回り、思ったより動けました。
 「この力は永遠で、しかも無限だ!」
 「ならば何故、連中にトドメを刺さなかった!」
 「私の力をもってすれば、いつだって奴らを倒せる!」
 「どんな力でも、過信すると痛い目に遭うぞ!」
 ところがヤミマルとは何やらすれ違いが発生し、
 「この力、私一人のものではないのだ。きっと、ヤミマルの力になると思って……」
 肩を落とすキリカの、この心情をきちっと描いてくれたのは良かったところ。
 一方、ヨロイキリカに完敗したターボレンジャーは、周囲の惨状に愕然となり……実際の映像は、 火を噴きながら砕けた岩石が周辺に散らばっているというものなのですが、5人のやり取りの内容からすると、 本来は街を破壊して廃墟の中にでも立たせたかった雰囲気でしょうか。
 前作ならほぼ確実に廃墟を出してくるだろうところを舞台が何もない荒れ地になったのは、キリカ救済の余地を残す為なのか、 バトルや予算の都合だったのかはわかりませんが、間接的ながら、瓦礫と破壊の炎――ヤミマル&キリカの支配する世界の象徴、 のニュアンスを示す意図は感じられ、蓑輪監督が巧い見せ方。
 「どうすりゃいいんだよ?!」
 「でも、戦うしかない……」
 「勝ち目がないってわかっていてもか?!」
 「じゃあ黙って奴らの思うままにさせるのか?!」
 「でも……」
 「俺は嫌だ! ……人間を自ら捨てるような奴に、この地球をめちゃめちゃにされてたまるか!」
 「……力」
 「俺たちの他に、誰が地球を守るんだよ!」
 そしてその炎と瓦礫の中から、諦めずにヒーローは立ち上がり、作風もあってあまりリーダーとしての押し出しは強くない力ですが、 力強く格好いい宣言でした(角度的な無理は承知で、炎を背負う――炎の意味が転換される――カットも秀逸)。
 「この地球は、おまえの好きにはさせん!」
 「その台詞、私に勝てたら言ってごらん!」
 大変、気合乗りのいいキリカは氷の吐息で5人を吹き飛ばすが、ひるまず突撃から赤が一騎打ちに持ち込み、それを見つめるヤミマル。 追い詰められた赤だが、投げつけられた剣を受け止めるとそれをヨロイの中央部、呪符の部分に投げ返すと、 思い切りよく吹き飛んでキリカとヨロイボーマは分離。
 ヤミマルはキリカを助けに現れ、左右非対称のデザインが割と面白かったヨロイボーマはターボレーザーからVターボバズーカでビクトリー!
 巨大戦は高速剣での立ち回りとなり、剣を失ったターボロボはラガーファイターを呼び出すとスーパーシフトし、 ヨロイ光線を不動の構えで受け止めると、スーパーミラージュビームで消し飛ばし、無慈悲。
 「私が真の暴魔になれば、ヤミマルにも力を分けられると思って」
 「もういい……もういいんだ! ……流れ暴魔でいいさ! 二人なら。それでも必ず、地球を手に入れてみせる!」
 元の鞘に収まる二人、星空を見上げるターボレンジャー、ナレーションさんが煽る“新たな脅威”とは……でつづく。
 なにはなくとも、重装甲キリカが常態化しなくて良かったですが、これまで見た渡辺脚本回では一番面白かったです。 ヤミマルとキリカの微妙なすれ違いを掘り下げて引っ張る……までは行かなそうですが、終盤戦を前に、 力のヒーロー性を押し出せたのは特に良かったなと。
 そして、しばらく気にしていたけどちっとも変わらないので諦めていたED映像が、いつの間にかヤミマルキリカバージョンになっていた!
 次回――新たなる脅威・超魔術!

→〔まとめ8へ続く〕

(2024年4月5日)

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