■『高速戦隊ターボレンジャー』感想まとめ6■


“ファイトで ぶつかれ ターボラガー
タックル アタック ワンツースリー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『高速戦隊ターボレンジャー』 感想の、まとめ6(32話〜37話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第32話「悪魔の大怪鳥!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「流れ暴魔ヤミマル!」
 「流れ暴魔キリカ!」
 「「只今参上!!」」
 大帝ラゴーン、おまえの罪を、数えろ!!
 二人で一人のスーパーパワーを身につけたヤミマルとキリカは、赤い糸ラリアットでズルテンを一蹴すると、大帝の間へと突入。
 大帝様の口から、流れ暴魔=人間と暴魔との間の子、と明言されて流れ暴魔が純血の暴魔から軽んじられる理由が明らかになり、 改めて全身を見ると、猛牛ヤミマルは大変『サムライトルーパー』(1988年放映で時代もドンピシャ)で、 『マスクマン』の地底剣士アキラに続く、「美少年鎧もの」文脈の取り込みといったところでありましょうか…… ヤミマルは美少年では無いけど。
 「流れ暴魔だからこそ出来る事もある」
 配色の関係で白塗りメイクの歌舞伎度が上がったヤミマルは、流れ暴魔の守護神である暴魔コウモリ・ドラグラス (コウモリなのかドラゴンなのか)を甦らせてみせると宣言。大帝様が、 伝説の大怪鳥ドラグラスを復活させられた暁には暴魔百族に加えてやろうと約束したところでサブタイトルが入り……結局、鳥なの?
 一方、冬服にチェンジ(はるなは完全に新衣装に)した力たちは月影家を家捜しし、 2年前に力が小夜子に贈ったサインボールを見つけて凄い勢いで二人の過去が生成されていくのですが、 これは小夜子と人間世界の繋がりとして、前回にあった方が良かったような。
 ちなみに力より背の高い小夜子を演じる森下雅子さんは身長177cmで、前作でマゼンダを演じた来栖明子さん(174cm)より更に長身。
 流れ流れて2万と18歳レッドアーマーズは、鏡ボーマを覚醒させると暴魔コウモリ復活の為に学校を襲撃して生け贄を集め、 もはや貴様はヒロインではない! と桃に思い切りスピンキックを叩き込む猛牛ヤミマルが、残酷すぎるリアル。
 鎧のテカテカ具合が気になるヤミマルは、仮面を装着するバトルモードを発動し、 鏡の中に吸い込まれでしまった高速戦隊が目にしたのは、生け贄の儀式として、ステージで踊り狂うキリカ(笑)
 「踊れ! 踊れ! はははははは! はははははは!」
 キリカはウーラーと集めた生け贄を従えて鏡ボーマ内部の異世界を熱狂のダンスフロアへと変えており、 やたらと尺を使ったダンスシーンに戸惑うのですが……この後、懐からこぼれ落ちたサインボールを手に (月影小夜子は本当はあんな子じゃない……)と説得の意を強くする力の様子を見るに、 俺だけが魅力を知っていた地味なあの子が不良になってしまった! の象徴がディスコだったのでしょうか。
 洗脳呪術に懸命に抵抗する5人だが、手も足も出ないまま生け贄の生命力を吸い取った大怪鳥が遂に復活!
 「若さとは空恐ろしいものだ……ふふ、そうだ、その若さが、欲しかったのだ」
 暴魔百族に新たな活力を求める大帝様の言葉が、かつての太宰博士の「わかってるじゃないか君達は。その若さなんだよ」 と対応するのは、おお、成る程。
 ヤミマルとキリカは大怪鳥の背にまたがり、サインボールを突きつけて人の心を取り戻させようとする力だが、 小夜子は流れ暴魔キリカとして力を攻撃。
 「終わりだな……月影小夜子! 俺たちの青春は終わった! これは、これはおまえへの訣別のボールだ!」
 ハイ炎力さん早かった!!!(笑)
 台詞のテンションそのものは格好良かったのですが、人と魔の狭間で千々に乱れるヒロインと力が積極的に絡んでいくのかと思いきや、 悪いのは暴魔の心だ! が発動して、青春終了(笑)
 まあ、前作と同パターンになるのは避けたかったのでしょうし、また後で拾い直される可能性はありますが、 ひとまず投げつけられた渾身のファイヤー魔球が小夜子に直撃し、野球は地球の伝統武術。
 「やるわね、炎力」
 「流れ暴魔キリカ! ヤミマル! 許さん!」
 デッドボールを受けたキリカが取り落とした剣によって鏡が砕けると、さらわれた人々は鏡の中から解放され、 生け贄を用いて大怪鳥は復活させたいが大量殺戮はやりにくい、といったジレンマが目に見えるところではあり (寿命は減っていそうな気はしてなりませんが……)。
 両陣営は主題歌バトルに突入し、大帝様から公認ライセンスが降りたのか、ヤミマルがウーラーを召喚(ウーラー隊長は、 このまま居なかった事にされないか心配)。キリカが桃を痛め付けるシーンに合わせて「愛を知らない 哀しい暴魔」の部分が流れる事で、 OPの歌詞が前半戦とはまた違った意味を持って聞こえるのは、実に秀逸。
 『ターボレンジャー』名物《さっきまで幹部に苦戦していた筈なのに気がつくと追い詰めていた怪人との戦いに全員が合流》が発動し、 鏡ボーマは連続キックからのGTクラッシュでビクトリーされ、 もう一つの名物《話の流れも爆発の規模も個人必殺技で倒したとしか見えない演出がされるが念入りに合体武器でトドメを刺す》 の方は発動しませんでした。
 キリカが謎の扇風機で鏡ボーマを巨大化して、引き続き幹部クラスは誰でも巨大化可能路線となり、今回はターボロボが出撃。 鏡ボーマの中に収まったドラグラスのミサイル攻撃を受けるとラガーファイターを召喚し、 スーパーシフトによりトーテムポールもといスーパーターボロボが大地に立つと、 完成した次の瞬間、なんの風情もなく秒殺(笑)
 見るからに動けないので仕方がありませんが、もはや合体シークエンスが必殺技のモーションとなっており、 《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》。
 「ターボレンジャー! 戦いはこれからだ!」
 ヤミマルとキリカは暴魔コウモリの背に乗って飛び去り、
 ナレーション「一つの青春は終わり、若さと若さが激突する、新たな青春の戦いが始まったのだ」
 と新展開突入が告げられて、つづく。
 キリカ登場の布石こそあったものの(あった割に、というか)小夜子周りはかなりの急展開でしたが、 本放送時は今回から放映日時が変更になったとの事で、新ロボ登場と派手な退場劇に加えて、なるべく興味を引く形で新展開を!  とこの数話に詰め込む事情などがあったのかもしれません。
 次回――ストレートに妖怪が出てきて、一息のエピソードとしては面白そうなアイデア。

◆第33話「奪え!洋平の顔」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「あなたも浜くんのようになりたい?」
 武蔵野学園高校の学園祭にナンパにやってきた、チェックのジャケット+バンダナ+べっこうメガネのいまいち冴えない男。 次々と女子に声をかけて回るも相手にされず、昔なじみらしい洋平のモテぶりにひがんで座り込んでいると、そこに声をかけてきたのは、 月影小夜子。
 前回までは運命のビッグウェーブに踊らされている感が強かったキリカ/小夜子ですが、 落ち込む男を見下ろし浮かべる怪しい微笑が非常に良いはまり具合で、パンフレットに顔を隠しながらの登場も効果的に。
 小夜子にそそのかされた男――クワタは洋平を誘き出し、ノッペラボーマの能力により、洋平とクワタの顔が交換されてしまう!
 「へへー、これからはな〜、この俺がモテるんだよ。見てろよー。モテてモテてモテまくってやるからなーだ! ひゃっっほー!」
 洋平の顔にクワタの声、クワタの顔に洋平の声をアテた入れ替わりとなり、駆け付けた仲間達は困惑しながらも変身するが、 黄と桃がのっぺらボーマの顔交換ハンドに捕まり、あわや性別転換、と思われましたが……
 「おのれー。強化ヘルメットには効かぬか!」
 このあっさりとした駄目具合が、大変、暴魔百族です(笑)
 キリカは月光剣、飛んできたヤミマルは流星剣を用い、ちょっと『聖戦の系譜』を感じつつ(発想としては珍しくないものですが、 『ファイアーエムブレム〜聖戦の系譜〜』というゲームに、「流星剣」と「月光剣」という攻撃スキルがあり、 後でズルテンが「太陽剣」を使えば、三つ揃う事に(笑))、ここで使われる戦闘BGMが格好良く、 前回−前々回と少々バタバタしましたが、今回一気に、悪の女幹部としてのキリカの格好良さがアップ
 「洋平! おまえと同じ苦しみを、人間どもみんなに味合わせてやるぜ!」
 人間社会の攪乱目的としては有効ではありますが、公認幹部になっての作戦第1弾としてはせせこましいような……
 「くだらん! なんてくだらん作戦だ!」
 赤い糸ラリアットの直撃を受け、頸椎骨折でリタイアが心配されていたズルテンが全視聴者に変わって即座にツッコむが、 そこへキリカとヤミマルが帰還。
 今回の作戦はただのイケメンへの嫌がらせ……ではなく、 すり替えられた顔はやがて完全なのっぺらぼうとなり、そうなった人間は暴魔百族の奴隷と化す二段構えの作戦である事が明かされる。
 「素晴らしい! 暴魔百族よりも、暴魔百族らしい作戦といえよう」
 大帝様は、この数ヶ月に色々ありすぎて、ハードルが下がっております。
 その頃、のっぺらぼうの真相を知らないクワタは洋平の顔でナンパを始めるが、のっぺらボーマの姿にへっぴり腰で逃げ出し、 襲われる女生徒を救ったのは、クワタ顔の洋平。クワタが持っていた怪しげな軟膏にのっぺらボーマの能力を無効化する作用がある事が判明し、 かなり強引なマジックアイテムの挿入ではある一方、暴魔百族の妖怪ぶりに加速がついて一定の納得は出来ます(笑)
 ……多分、クワタの先祖が落とし穴にはまった妖精を助けたりして教えて貰ったのです。
 かくして軟膏争奪戦が始まり、いきなり撃墜される暴魔コウモリ。
 それでこそ暴魔百族! と不安が怒濤の如く押し寄せますが、《スーパー戦隊》名物・大事なアイテムパス合戦に突入し、 前回の逆襲とばかり、あんたなんかこっちこそお断りよ! とヤミマルにステッキブーメランを炸裂させる桃。 吹き飛んだ軟膏を全員が見失って右往左往する少々コミカルな一幕を挟んで、 膏薬を確保した洋平がのっぺらボーマに直接軟膏を擦り込むと、術が解除されて元の顔に。
 「暴魔獣、よくも俺の顔を玩具にしてくれたな!」
 今回ちょっと謎なのは、クワタ顔の洋平はブルーターボに変身できない(しない)事なのですが、 変身したら身も蓋もないとはいえ、顔認証システムだったのかターボブレス。
 セキュリティを乗り越えて変身した 怒りの青は容赦ない連続攻撃でのっぺらボーマの顔にへのへのもへじを刻み込むと、 JマシンガンからVターボバズーカでレディ・スパーク・ゴー!
 巨大戦ではターボラガーがセットアップし、バトルボール(と今回から呼称)をキックオフするも暴魔獣にはたき返されるが、 頭突き→飛び蹴り→パンチング、の応酬でボールを叩き込む事に成功すると、ビッグラガーガン、 そしてスクリューラガーキックでビクトリー。
 必殺攻撃がキック、という戦隊ロボでも珍しいターボラガーですが、どうして、宿敵(ヤミマル)の得意技と被っているのか謎(笑)
 後々、ヤミマルの母親は妖精流武術の継承者であった事が明らかになる悲しい真実の前振りとかなのでしょうか!
 最後は、クワタ顔の洋平が活躍した事により、クワタが女子高生に囲まれて逆に洋平が駄目男の烙印を押されるのですが…… クワタは洋平に申し訳なさそうな顔をするものの、完全に誤解でモテたままの退場で、それでいいのか……。
 ……まあ洋平は洋平で、女子に囲まれてチヤホヤされるのは楽しいけど、小学生時代の年上の女性への恋をずっと引きずっている業の深いタイプなので、 なんだかんだ、丈がいいのではないでしょうか(1年戻る)。
 EDは相変わらず旧幹部陣で、前作と比べるとこの辺りのマイナーチェンジが遅いのはちょっと不満。
 顔交換という形の人格チェンジ回でしたが、洋平とクワタの落差がそこまで面白くならず (いっけんお調子者だけど芯の熱い洋平像は序盤から一貫していますし)、 これなら仲間同士だったり太宰博士を巻き込んだりした方が面白くなったのでは、 とアイデアから芝居の広がりに関してはやや期待外れだった一方、小夜子モードでの悪い顔を見せる事により、 キリカの人間への悪意がより鮮明になったのは、良かったです。
 ところで今回、鈴鳴回でほのめかされた洋平のモテっぷりが明確になって高速戦隊の二枚目ポジションを確定するのですが、 コメディリリーフ兼任の剽軽者が実際にモテる二枚目ポジションなのは、シリーズ歴代でもかなり珍しいでしょうか。
 系譜としては、島/ダイナブルー → 勇馬/チェンジペガサス → ブン/ブルーフラッシュ → アキラ/ブルーマスク の、 アイドル系ブルーといえそうですが、高校生戦隊なので差別化がしにくい事もあってか「少年(らしさ)」の要素が削ぎ落とされた上で、 積極的に笑いを取りにいく性格が女の子受けがいい、というのは時代の流行が反映されていたのかもしれません。
 一方、これも高校生戦隊という要因もあったでしょうが、赤の方はレッドマスク→レッドファルコンと続いた、 ちょっとキザ(&少し影のあるアウトロー風味)路線を離れて文武両道の正統派二枚目路線に回帰しており、 キザ&アウトロー要素が次の次の『鳥人戦隊ジェットマン』で結城凱に回収されていくのも流れとしては面白いところです。
 次回――またも離反者?!

◆第34話「ズルテンの裏技」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「シーロン、人々を助ける方法は無いのか?!」
 「わかりません! こんなに下品で酷い作戦があるなんて、私も初めて知ったんです!」
 シゴキボーマのスパルタ指導を受けたズルテンが街中に催眠おならガスを撒き散らしながら走り回り、妖精族からのリアクションが、 厳しい。
 「流れ暴魔の癖によくぞズルテンの裏技に気付いた。それにしても面白い。あいつも少しはしごかれた方が良いわ」
 一方の大帝様は、この数ヶ月に色々ありすぎて、ハードルが下がっております。
 人々を昏睡状態に陥らせていくズルテンは踏み切り事故であわや電車に轢かれそうになって倒れた所をターボレンジャーに囲まれるが、 そこに炸裂するスクリューラガーキック……じゃなかった、スピンヤミマルキック!
 「人間なんて奴らはな、ズルテンのおならを吸ってくたばるのがお似合いなのさ!」
 2万と18年前――魁偉な風貌と不思議な力を持つ事から鬼っ子として忌み嫌われ、人間から迫害を受け続けたヤミマルの過去が語られ、 無銭飲食の罰とはいえ、木に吊されて全身に矢を射かけられるのは、ショッキングな映像。
 「俺は決して忘れておらん! 二万年間、この世を流離いながらひたすら腕を磨き、復讐の時を待っていたのだ!」
 「ヤミマル、逆恨みをするな!」
 初登場から約20話、とうとうヤミマルを突き動かす情念の核が明かされ、対する力は極めて正道ながら、 ヤミマルが背負う時間の重みに比べるとどうしても言葉が軽くなってしまう部分がありますが(勿論、 重ければ正しいわけではないのですが)、そこのバランスを物語として納得できるラインまで引き上げられるかが、 今後の一つのポイントになりそうでしょうか。
 へっぴり作戦を強要されて逃亡したズルテンは、力たちに取り囲まれると泣き落としを図り、揉めている間にヤミマル登場。今度は、 助けを求めて辿り着いた暴魔百族からも残酷な仕打ちを受けた過去が語られ、燃える松明を押しつけられ、槍で手を貫かれ、かなり凄惨。
 全体のバランスを取る意図かヤミマルの回想以外はかなりコミカル寄りで展開する為、敵幹部がおならをしながら走り回るエピソードで、 ライバルの悲劇的な過去と人間の持つ排他性が炙り出される事になり、一気にヤミマルに注ぎ込まれる、憎悪と怨念のガソリン。
 「これが流れ暴魔の歴史なのだ。……よもやズルテン、忘れちゃぁいまいな」
 ヤミマルの語る過去に辛そうに表情を歪めるキリカには、他者を思いやる気持ちが残っている事が示されるとともに、 それだからこそ、“ヤミマルの哀しみを受け止めようとしてしまう”事が悲劇性を加速させ、 ヤミマルはズルテンに対して人間社会崩壊の為に捨て駒になればいいと高笑い。
 (ヤミマル……奴は憎しみだけで生きているのか)
 力は隙を突いてズルテンバイクにまたがって逃走するが頭上からコウモリミサイルの爆撃が迫り、 バイクモードがこんな格好いい使われ方をするとは(笑)
 「りきぃ! そんなやつ助ける事はない!」
 「それが出来ないのが力なのよ……」
 「しかし、相手が悪い」
 「ズルテンだけはどうしても信用できない!」
 敵味方の垣根を越えて手を伸ばすヒーロー、として力が描かれ、相撲や氷炎兄弟を踏まえた上でなお、 「顔が信用できない」扱いを受けるズルテンだが、爆撃を受けて吹っ飛ばされてもなお、力は一緒に逃げようとズルテンへ手を伸ばす。
 「炎力、君は本当に優しい奴なんだな……」
 だが、ヤミマルの追っ手に囲まれると、ズルテンは力を蹴り飛ばして吹き矢を撃ち込み、節操なく鞍替え? と思いきや、 敵味方をかまわずおならを撒き散らすと、その混乱の中で吹き矢の中に解毒剤が仕込まれていた事が判明。
 「ヤミマル! 憎しみからは、何も生まれない事を教えてやるぜ!」
 ズルテンからのメッセージに気付いた力たちはその成分を太宰博士に転送し、ヤミマル一派と主題歌バトルに突入。 鞭でしごかれる青黒だが、5人が合流するとコンビネーションキックからジャンピングGTクラッシュ、 そしてVターボバズーカでビクトリー。
 今回はヤミマルが角から巨大化ビームを放ち、大妖精17からの出撃シーンが入ってターボマシンが若さにターボ! 未来にターボ!
 開幕のダッシュ斬りを放つも鞭に阻まれるターボロボだが、鞭を掴んで投げ飛ばすと、土手っ腹に風穴を開けて大勝利。
 「見ているがよい! その内必ず、ラゴーンさえも倒してみせる」
 「そう言うだろうと思っていたわ」
 「人間と暴魔百族の血を引く我らこそ、人間界と暴魔界、二つの世界の王者のなるのにふさわしいのだ」
 ヤミマルとキリカは暴魔コウモリにまたがって飛び去り、膨れあがっていくその野心。 2万年間レベルを上げ続けてきた男の強烈な動機付けが明らかになり、それは同族を見つけたら盛り上がって熱烈に口説く筈だと納得です。 ヤミマルの栄光は“泡沫の夢に過ぎない”事は既に仄めかされてはいますが、果たして野望の階段の行き着く世界はどこなのか。
 ……指揮権を握って2回目にして、幹部クラスから裏切り者を出す離れ業はまさに、「暴魔百族よりも、 暴魔百族らしい」作戦として、大帝様も大喜びの筈です!
 便利なコメディリリーフとして活躍してきたズルテンは、クライマックスバトルの前に逃亡したまま消息不明となりましたが、 次回しれっと暴魔城に復帰していたらどうしよう(笑) 暴魔百族サイドに笑いの要素がゼロだと、それはそれできつそうですが…… 新任の上司が過去の残虐行為に復讐する気満々なら逐電は納得いきますし、 これまでしてきた悪行の数々を考えると因果として許しにくくはあるものの、コロッと人間に与してしまう事自体は、実に暴魔百族(笑)
 こういったカードを伏せておいて後で開くのは曽田さんの得意の手法とはいえますし、巧く活用されてほしいところです。
 そして、ヤミマルの境遇に自らも重ねるキリカは、その“孤独”に寄り添い続ける事が出来るのか――力との関係性も含めてキリカ周り (ひいてはヤミマル周り)の厚みが増してきて、過去に囚われた男と未来を見つめる若者たち、 の構図が浮かび上がってきたのも期待したい好材料。
 次回――予告の映像がだいぶトンデモ(笑)

◆第35話「愛を呼ぶ魔神剣」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 そこはかとなく見覚えのある小屋の中で刑事にはめられた手錠を外そうとしている女スリ・ゆかりが物音に気付いて外を窺うと…… 森の中に、三つのモアイ像が(笑)
 第20話の時も書きましたが、東映の美術倉庫に余っていたのでしょうか、モアイ。
 ……なおこれで、『マスクマン』第13話→今作第20話→そして今回、といずれも(監督:東條昭平 脚本:井上敏樹) 回でモアイが出てくるのですが、誰が好きなんですかモアイ!
 流れ暴魔キリカはそのモアイの中から、伝説の魔神剣の在処を示すと伝わる宝石を見つけ出すが、 事情をよくわからないまま宝石に目がくらんだゆかりに奪い取られ、追われるゆかりは大地と遭遇。
 キリカの呼び出したシニガミボーマの攻撃を受けた拍子に手錠で繋がれてしまった二人は、 キリカの攻撃をかわしながらの逃走を余儀なくされ、戦闘経験を積んできた大地はともかく、 女スリのゆかりがいきなりキレキレの動きを見せるのが面白い事に(笑)
 仲間達が駆け付けると死神ボーマが死神再生暴魔獣軍団を召喚し、選抜メンバーにダルマ落としボーマが居て嬉しい。
 5人+1はなんとか大妖精17まで撤収するが、ゆかりは自分は刑事だと嘘をつくと宝石を手に逃げ出し、それを追いかけた大地と、 再び手錠で繋がれてしまう。宝石を巡って揉めている内に、突如として宝石がまばゆい光を放つと山腹の一点を示し、 宝石の謎を明かす為に、二人はひとまずその場所を目指す事に。
 「スリなんか、どうして?」
 「信じられるものが何もないからよ。あたしが信じているのは、お金だけ!」
 「……そんなのばかげているよ! 俺は信じている。人間を、愛を、友情を信じてる!」
 「ぷっ、きゃはははははは! あなたよく、そんなくっさい台詞言えるわねー」
 大地がゆかりを背負って移動中のやり取りは実に井上敏樹ですが、大地の発言がいきなり気味ではあるものの、 ヤミマル&キリカに対する、ターボレンジャーの基本スタンスを示しているとも取れます。
 所有者に天下取りの力を与えるという魔神剣を求めるキリカは、 これまで巨大化に用いてきた扇風機をチャクラムのような飛び道具として使う新アクションを見せると、 身を挺してゆかりをかばった大地を見下ろして踏みつけ、いい感じに暖まって参りました。
 そこに仲間達が追いついて再び再生暴魔獣軍団と激突し、再生怪人を操る死神アンテナに気付く赤だが、 その表皮はターボレーザーを跳ね返す!
 キリカの魔神剣入手を阻む為、4人が暴魔の足止めをしている間に大地(とゆかり)が先行し、 山腹の洞穴に飛び込んでいった宝石が鍾乳石を破壊すると、出現した魔神剣が天井に突き刺さっているのは、格好いい絵。
 だがそこに、何故か学ラン姿の流星が口笛を吹きながら現れ、大地めがけてスピンキック!
 「あらゆるものを断ち切るという、魔神剣。俺か貴様か、生き残った方が魔神剣を手にするのだ!」
 もう少し特定のライバル関係に執着する方かと思っていましたが、どちらかというと、 誰が相手でも瞬間的に燃え上がれるタイプなのか(笑)
 「祈れ、大地」
 昔の芸風に戻った流星は大地に向けて十字を切り……流れ流れて2万年、なりきりコスプレによる自己暗示の影響が深刻です。正直、 今回どうして急に学生服に出てきたのかは謎なのですが、何か撮影の都合もであったのか(この後、 猛牛ヤミマルに変身すると仮面つけっぱなしになりますし)。
 ヤミマルの斬撃を利用して手錠の鎖を切断した大地は、ゆかりを逃がしてヤミマルと激突。
 「――俺は人間を信じてる。俺は信じるものの為に戦ってるんだ!」
 一度は脇目も振らずに逃げ出すゆかりだったが、身を挺して自分をかばい続けてくれた大地の言葉を思い出すと足を止め、 洞穴の中へと駆け込むと、魔神剣を回収。
 「あたしは、あたしは人間を信じたいのよ! あたしだって、信じるもののために戦いたい!」
 魔神剣を手にしたゆかりは追い詰められた大地の元に駆け戻ると剣を振り上げ、ヤミマルの銃撃をものともせずに突撃すると、 縦一閃!
 更に、返す刀でもう一撃!!(笑)
 猛牛ヤミマル初のクリーンダメージが一般人、という凄い事になりましたが(これは予告では隠してほしかった……) 三撃目はさすがにヤミマルにかわされるも、地面に刃が叩きつけられると巨大な地割れが発生(笑)
 その引き起こした爆発に巻き込まれて、華麗に宙を舞うヤミマル(笑)
 ヤミマルの空中スピンは、今見ても迫力十分の物凄い回転をしているのですが、 そういえば『ジェットマン』のブラックコンドルもよくスピン回転していたな……と思って確認したら、 スーツアクターが同じ大藤直樹さん(前作『ライブマン』ではガッシュ担当)だそうで、大藤さんの得意技だったりしたのでしょうか。
 「最高だぜ! ゆかりさん!」
 物量に押されて苦戦する仲間たちのところに戻った大地は、ゆかりから受け取った魔神剣を振るって死神ボーマのアンテナを見事に切断。 再生暴魔獣軍団は消滅し、魔神剣を投げつけられた死神ボーマが大爆発して、5人はその場の勢いで決めポーズ(笑)
 …………あれ? 魔神剣、溶けた…………?(笑)
 まあ、素人が振り回しても地球を割ってしまうレベルのヤバい魔剣なので、これで良かったとは思うのですが、 造形物がかなり凝っていたので(何かの流用だったのかもですが)、この潔い使い捨てぶりには少し驚きました。
 扇風機で巨大化された死神ボーマはスーパーターボロボに立ち向かい、 今回も瞬殺……されずに鎌で切りつけてみるも全く通用しない余計に酷い描写となり、 口から怪光線を放つも微動だにしないスーパーターボロボの三角ビームを受けて、大霊界。
 ゆかりは人生のやり直しを決意して警察に出頭し、大地が軽くモテて、つづく。
 ……「コケティッシュで殊更に人間不信を強調する女スリとか出てきたら、 過去に色々あったけど本心では人間を信じたがっている」という刑事ドラマの文脈が持ち込まれた上で、 当然の前提として完全に省略されるという力技が発動した一方、 『ターボレンジャー』名物《突然明かされるメインキャラクターの悲しい過去》が生じなかった点はスッキリしていて、 軽快なテンポで進行するアクション回としては見所があって面白かったです。大地回としては“走る”繋がりといえるでしょうか。
 そして、ズルテン、普通に、暴魔城に居た(笑)

◆第36話「運命の想い出…」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 部活をサボった俊介が向かったのは、10年前の想い出がある海岸……?
 「俊介10年前の秋、その想い出の海辺で、さよちゃん、って女の子に会ったんだって」
 「初恋は秋の浜辺かぁ……」
 「まあまあ、俊介の奴ったらお洒落じゃない。よし! みんなでその海に行こうよ!」
 「異議なし!」
 酷いぞ(笑)
 「そんな! 人の思い出をからかうなんて趣味悪いわよ! ……でもちょっと興味あるわよねー、待って! 私も行く!」
 ……酷いぞ(笑)
 頬を膨らませた直後に笑顔を見せるはるな軍曹が、番組史上に最高に可愛く撮れている(※個人の感想です)のは、 実に長石監督という感じ。
 80年代の諸作を見ていると、女性メンバーを可愛く綺麗に映そう、という意識は長石回が一番強く感じるのですが、 これは戦隊史において90年代以降〜現在まで繋がっていく見逃せない要素ではないかな、と思うところです。
 一方、大帝様は暴魔百族の幹部になりたいならターボレンジャーを倒してみせろ、とヤミマル&キリカに新たなノルマを要求しており、 想い出のハンカチを手に秋の浜辺で感傷に浸っていた俊介に迫る暴魔コウモリの爆撃、そしてキノコならぬキオクボーマ。
 物陰から様子を窺っていた悪趣味な4人が合流するもヤミマルショットガンで変身を妨害され、 子供たちをかばって記憶ボーマの攻撃を受けた俊介は、記憶を奪われてしまう。
 「おまえは日野俊介。イエローターボだ。思い出せ!」
 ちょっとハードル高い記憶だな……。
 さすがのシーロンも奪われた記憶の回復手段は知らず、とりあえず記憶ボーマを殴り殺そう、と逸る洋平を先頭に飛び出す仲間達。 博士が床に落ちていたハンカチに気付いて俊介に渡すと、俊介はその刺繍から、微かに海の記憶を思い出す……のは、綺麗な流れ。
 「返してもらうぜ! 俊介の記憶!」
 4人は記憶ボーマ&ヤミマルと激突し、のっぺら攻撃に続き、記憶吸収光線も無効化する強化スーツ、凄い。
 一方、僅かな記憶を辿り想い出の海に辿り着いた俊介は。海岸で波音に耳を澄ませていた。
 (この音……この波音だけが……俺に残された微かな記憶)
 砂浜に耳をつけ、自分が何者かを求めて海を見つめる俊介の見せ方が、いつもと違うタッチで良い雰囲気を出し、 その背後に迫るキリカは、幼い日にその海岸で受けた理不尽な暴力の記憶を思い出す……。
 「俊介、あの時のいじめっ子に代わり、おまえがその償いをするがいい!」
 海岸で美しい貝殻を拾ったのをきっかけに地元の少年たちに追い回された小夜子と、 勇気を出してそれを助けた俊介……幼き日の記憶の朧気なピースとして俊介が貝殻を手にしていた事で、 貝殻を握る俊介とそれを襲うキリカの姿が10年前の光景といびつに交錯。
 幼い頃の出会いにお互いが気付かない悲劇的な運命のすれ違いはオーソドックスな要素ですが、過去と現在、人間と流れ暴魔、 キリカの立場の逆転と、一つの出来事の前半と後半、それぞれの視点による想い出の違い、が幾重にも絡まり合う見せ方が、 非常に巧妙かつドラマチック。
 特に、流れ暴魔として人間への憎悪を募らせる余り、虐げる側に回る歓びで誰かに救われた事を忘れ去っているキリカの姿は実に皮肉です。
 (貝殻……さよちゃんの、貝殻……)
 「そこまでだ、俊介!」
 「やられてたまるか……俺は、記憶を取り戻す!」
 投げた!!(笑)
 形見のギターとかレトロウィルスとかプレシャスとか、大事な物を放り投げがちのは東映ヒーローのお約束とはいえますが、 投げつけられた貝殻が無惨に砕け散った光景は、キリカの忌まわしい記憶をフラッシュバックさせる一方で、失われた俊介の記憶を甦らせる。
 「俺は日野俊介! イエローターボだ!!」
 俊介が黄に変身したところで敵味方が全員合流してのバトルとなり、新技のイエロー床運動アタックが炸裂。 さすまた振り回して割と強い記憶ボーマは、コンビネーションBボウガンからVターボバズーカでビクトリー!
 記憶ボーマはヤミマルビームで巨大化し、ラガーファイターのキックオフが今回は正面から炸裂し、裏拳に始まるパンチの連打、 そして一方的な銃撃からスクリューキックで完封勝ちを納めるのであった(今回から必殺技後の勝利のポーズが追加)。
 (会いたいな、君と……きっと、素敵な女の子になってるだろうな)
 仲間達が遠巻きに見守る中、俊介は海を見つめてさよちゃんとの想い出を振り返り……また、矢沢?
 「捨て去った筈の月影小夜子で居た頃の、忌まわしい想い出め……なぜ俊介を葬る邪魔をした! 何故だ!」
 そしてキリカは、貝殻に秘められた優しさの記憶を取り戻さないまま、絶壁で独り歯噛みするのであった。
 ナレーション「俊介とキリカは、お互いが、10年前に、一瞬の出会いをした相手だと気がつかなかった。そして、その想い出は、 俊介には懐かしく、キリカには、忌まわしい――。永遠に、交わり合う事のない、二人の想い出だった」
 身内の酷い発言に始まって、ナレーションさんの酷い発言で締められて、つづく。
 同じ出来事でも立場が違うと見方も記憶も変わる、という部分をドライに描いているのが非常に渋く、 少年時代の善行が俊介を救うと共に、キリカにとっては小夜子であった過去が人間を助ける事となるも、結局、 二人が10年前の出会いに気付かないままなのは美しい着地。
 第23話以来1クールぶりの登板も全くぶれない藤井先生と、喜び勇んで(?)海を撮りに行った長石監督が固くスクラムを組み、 長石×藤井×海×悲恋と来ればどちらかが爆死しかねない勢いでしたが、 二人ともレギュラーだったので回避されました!
 難を言えば、キリカ(小夜子)と絡む男性キャラがこれで3人目となってしまい、キリカのヒロイン力が増大する一方で、 ますます「俺たちの青春は終わった!」感が強くなってしまった事ですが、炎さんはもう少し粘ってくれてもいいんですよ……?
 ただ、ここまでいまいちパッとしたエピソードの無かった俊介に、いいキャラ回が来てくれたのは、良かったです。
 次回――ナレーションは、はるな軍曹vsカンフー少女を煽っているのに、映像は完全にメカ山口無双で、 主題はどっちだ?!

◆第37話「カンフー謎少女」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 肘を左脇の下から離さぬ心構えでやや内角を狙い抉り込むように振り抜くべし!
 「随分変わったバトンの練習ね」
 近所の公園で殺人バトン投法の特訓に励んでいたはるなは警官……じゃなかった、拳法着姿の少女に声を掛けられ、 金属製の鈍器で標的の頭をかち割る練習ですとは大きな声では言えません!
 「なんの為にこんな事やってるの? あなた、普通の高校生じゃないわね。なにか秘密を持っているの?」
 「秘密だなんて……いきなりそんなこと聞かれて、答える義務は無いとう思うけど」
 一目会ったその日から無性に気に入らない時もある、はるな軍曹は思いの外、攻撃的なリアクションを見せてバチバチと飛び散る火花。
 「じゃあ、腕尽くで聞くしかなさそうね」
 少女は少女で、私たちがわかり合えるのは拳だけ! と肉体言語による対話に移行し、戦意喪失するまで叩きのめしてから、 静かなところでじっくりと友好的に話し合いをします!!
 はるなと少女が、力vsヤミマルばりの激しい肉弾戦に突入していた頃、 ズルテンが自身の細胞を元に造り出したロボット生命体・ズルテンメタルタイプが街に出現。 メタルズルテンは裏技ツーにより人々を奇怪な鋼鉄ロボ人間に変えてしまい……青ざめた肌でぎこちなく動く人々の映像が、 凄く、《レスキューポリス》ぽい(笑)
 「ズルテン!」
 「なんだおまえお色直しでもしたのか!」
 「そういえばスマートになったようだな!」
 「違う……あいつズルテンじゃないぞ!」
 ヤミマルも(こいつにこれほどの科学力があったとは……)と驚くメタルズルテンですが、そろそろ、 暴魔博士レーダの怨霊が乗り移っていたりするのかもしれません……暴魔百族のそれが、「科学」なのかはさておき。
 なお、おなら回の力との交流は無いも同然の扱いなのですが、まあズルテンだしな……で納得できるので、ズルテン強い。
 「ぬふふふ、鋼鉄ロボ人間は、体だけでなく心も失い、ただの機械になるのだ」
 メタルズルテンは、鋼鉄の肉体でボウガンもレーザーもGTソードさえも跳ね返し、普通に強い。
 更にズルテンと手を合わせると暴魔ラブラブ天驚拳を放ち、凄く強い。
 ストリートファイトを継続中のはるな軍曹は、銃器禁止のルールで徐々に追い詰められるが、 そこに控え目に言って尻尾を巻いて逃げ出したらしい男衆が駆け付け(4人だと戦力ダウンなので、 連絡の取れないはるなを探してやってきたと思われますが)、軍曹に迫る打撃を見て地面に落ちていたバトンを拾った炎力くん、 振りかぶって思い切り投げたーーーーー!!
 ……さすがにそれは、どうかと思う。
 危うくファイヤー魔球で顎を砕かれるところだった少女が落としたロケットの中には、山口先生と一緒に写った写真が入っており、 その正体は先生の妹・ミカと判明。
 「先生の妹が、なぜ私を襲ったりするの?」
 山口先生は突如として姿を消した光と小夜子、そして力たち5人の不自然な態度の数々に真剣に悩み教師としての自信を失っており、 いきなりの香港はどうしようかと思ったのですが、高校生戦隊の秘匿性が起こすさざ波を、 確かに担任からするとショック……と関係者視点で捉え直すのは山口先生の掘り下げにもなって、上手い流れ。
 当時の見せ方及び戦隊の作劇から、そこまで秘密に気を配っていたとは言いがたいのは難ですが、一応ここまで、 山口先生の前では変身していなかった筈ですし。
 「生徒が心を開いてくれない先生なんて、もう先生とは言えないわ。わたし……先生をやっていく自身を失ったの」
 道場破りばりの妹の行動は姉を心配するゆえと収まり……まあそれで香港から日本までやってきて、 殺人バトン投法の特訓を見せられたら、殴り合いも始まりますね!
 「いったいお姉ちゃんに隠して何をやってるの?!」
 (……ターボレンジャーの事は絶対に言えない……)
 (命がけで戦ってるなんて事がわかったら、先生はますます心配するだけだわ)
 気まずげに視線を彷徨わせる5人の背後に、バトン殺法の的がぶら下がっているのが、大変シュール。
 香港仕込みの地獄カンフーで絶対に口を割らせてやる、と宣戦布告を受けた5人だが、 事の元凶の一人といえる妖精おじさんからの連絡を受けて市街へ戻ると、人間離れした怪力のロボ人間が大暴れの真っ最中。
 後を追ってきたミカの視線に変身を躊躇する5人だが、タイミング悪く姿を見せた山口先生がメカ首輪をはめられてしまい、 間に合いこそしなかったものの、先生を助けようとダッシュするや5人が一切の躊躇をせずに変身するのは、気持ちの良い流れ。
 駆け寄ったミカとターボレンジャーはロボ山口に叩き伏せられ、メタルズルテンに猛攻を浴びせるミカだがその攻撃は全く通用せず、 気力が足りない!
 「お嬢ちゃん、元気がいいな。にゃっ」
 ミカをかばった桃は二人まとめて高々と吹き飛ばされ、変身解除。
 思いあまったミカは、ダメージの残る軍曹から変身ブレスを強奪すると、その力で姉の復讐を遂げようとするが……
 「待って! それを使っちゃ駄目!!」
 スイッチを押すと全身に電流が走って爆発が起こり、 えぐいセキュリティが付いていた(期待に応える太宰博士)。
 衝撃で吹き飛んだブレスを拾ってシーロンが現れると、一瞬だがミカの目にもその姿が映り、妖精を見られる人間しか変身できないし、 世間体があるので大っぴらには語れないのだと秘密の理由がスムーズに説明され、仮にミカに妖精適応力が0だった場合、今頃、 骨も残さず消し飛んでいたに違いありません。
 「私たちは、妖精の姿を見、声を聞いた時から戦士になったの。この世の美しいもの全てを守るために。この美しい世界、 美しい人の心を」
 キリカ誕生編以降、流れ暴魔サイドに心情描写が寄っていましたが、 最終クールを前に高速戦隊ターボレンジャーとは如何なるヒーローなのか、を再確認するのは実に手堅く、 カンフー少女強襲のぶっ飛んだ冒頭からここに辿り着くのが、実に熟練の手並みです。
 一方、残された男4人は、ロボ山口を先頭としたズルテンコンビに大苦戦し、景気良く生活指導を受けていた。
 そこへ桃とミカが復帰すると、ロケットの中の写真を見たロボ山口の人の心が戻り、振り向きざまにゴッドハンド!  メタルズルテンに渾身の一撃を叩き込むと自力で人間に戻り、生徒との絆はこれといって関わらずに姉妹愛オンリーで復活してしまったのは、 正体キープの事情があったとはいえ、惜しかった部分。
 この一撃がきっかけとなり、メタルズルテンの弱点がヘソと見切ったターボレンジャーは、 磨き抜いた殺人スポーツで集中攻撃を仕掛けるとコンビネーションGTクラッシュからVターボバズーカでビクトリー!
 すっかり前座扱いが板に付いてきたターボロボは、メタルズルテンの飛び道具に苦戦して今回も噛ませ犬扱いを危ぶまれるが、 ターボカノンで反撃すると久々の気がする「高速剣だ!」で見事な逆転勝利を収めるのであった。
 先生の問題は、ミカが説得してくれて丸く収まり、香港への飛行機を見送るはるな達。
 ナレーション「一瞬でも、妖精シーロンを見ることが出来た若者が居たという事は、はるな達5人を、とても勇気づけた。 はるな達と同じように、自然を愛し、人を愛し、青春を力一杯生きている、仲間が居ると、いう事なのだ」
 ヒーローの戦いは、決してヒーローだけの戦いではなく、その広がりの可能性を示すナレーションが綺麗に締めて、つづく。
 ……それにしても、第13話で藤井邦夫が放り込んだ山口先生→太宰博士を、 曽田さんが一切拾おうとしないのですが、そこまで、え……? そこ……? というネタだったのでしょうか(笑)
 この二人が最後に出会ったの、第22話の平手打ち案件が最後のような気がするのですが……その後、太宰邸が大爆発し、 大妖精17に居を移した博士は失踪した認識のような……。

→〔その7へ続く〕

(2023年8月9日)

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