■『高速戦隊ターボレンジャー』感想まとめ5■


“High-Jump High-Jump
 心よ しなやかに舞え!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『高速戦隊ターボレンジャー』 感想の、まとめ5(26話〜31話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第26話「力!絶体絶命」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 「力! 好きだぁー! 力! 愛しているんだ! 力ぃー!!」
 力は校内放送で流星から愛の告白を受け、愛と勇気は言葉、感じられれば力……じゃなかった、公開デートの申し込みをされ、 文武両道で爽やかなイケメンで元野球部のエースである俺のイメージをどうしてくれるのぉ?! と、怒りのエクソダス (唐突に脳内で『オーバーマン・キングゲイナー』が踊り始めただけなので、この数行は、あまり気にしないで下さい)。
 「流星、今日こそ決着をつけてやる!」
 「貴様を倒した後、貴様の血をグラスに注いで乾杯してやるぜ」
 流星に対する力の殺意がバイク回の事を完全に忘れ去っている勢いで、学園生活へのダメージが相当大きかった模様です。
 「ヤミマルとレッドターボ、どちらが倒れても、我らにとっては、好都合」
 力と流星は生身バトルに突入し、その戦いをモニターする暴魔百族は、とことん駄目な感じになっていた。
 大地たち4人が物陰から見守る中、夏休み中に山ごもりで身につけたヤミマルの分身剣に追い詰められた赤は、 妖精パワーでカウンターを放つも相討ちが精一杯。手傷を負ったヤミマルは赤を仕留め切れずに撤退するも、 力は命に関わる重傷を負ってしまう。
 勝利の為ならプライドは喜んでドブに捨てる路線に入りつつある大帝様はこの気を逃さずジンバに出撃を命じ、再び市街地を転がる団子。
 「あれは……フジミボーマの卵!」
 力を治療中の太宰博士とアイコンタクトをかわした大地が出撃の音頭を取ってサブリーダーっぽいところを見せ、 4人のターボレンジャーはジンバ&不死身ボーマと激突。プレートアーマーを圧縮したような不死身ボーマは左右非対称な姿も歪さを強調した面白いデザインで、 怪人デザインのアベレージの高さは、今作の光るところ。
 奮戦むなしく4人はドングリのような卵の中に閉じ込められてしまい、それを知った力はなんとか皆の元に向かおうと立ち上がる。
 「力! 今動いたら、命の保証はしないぞ!」
 以前の「大地、あと30秒だけ変身できる。30秒間だけ、なんとしても頑張ってくれ。頑張るんだ」の時もでしたが、 太宰博士は一応心配はしているようだけど、本人の自主性を尊重する名目で微妙に“止めてない”傾向が目立ち、 ダメな運動部の指導者みたいな(笑) まあこれは今日見るとダメに見えるものの、放映当時なら「美談」のロジックであったと思われ、 高速戦隊は果てしなく体育会系。
 未成年戦士を見守る立場としては「人間味が薄い」というよりも、「人間としての箍が外れている」 感が物凄い太宰博士ですが、これを見ると後の『BFカブト』の小山内博士に必要だったのは「薄っぺらい父性もどき」ではなく 「人間味を期待させない狂気」だったのだな、と(笑)
 青春のパワーを信じるんだ!!
 内部で不死身ボーマ化の進むターボレンジャー卵が運搬された洞穴へ乗り込んでいく力だが、 卵を割れるのは不死身ボーマの持つ鎌の刃のみ。鎌の奪取に失敗した力は一時撤退し、 出血多量で朦朧とし始めた脳裏を駆け巡り出す走馬灯……
 「いや死なん! みんなを助けるまでは、俺は決して死ぬもんか!」
 前々作の主人公なら死中に活ありメディテーションでここからゴッドハンドを放つところであり、前作だと小屋ごと暴魔獣に吹き飛ばされそうですが、 小屋の中にあった石油缶に気付いた力は、追跡してきた不死身ボーマに頭からそれを浴びせると青春の火だるまショット。 倒れたボーマから鎌を奪おうとするも「俺は、不死身だぁぁ!!」と逆襲を受けてしまい、再び逃走を余儀なくされる。
 流血表現がかなり痛々しい中、満身創痍の力の前に前に現れたのは、一度はこっそり力を助けた流星光。
 「どうせ死ぬなら、せめて俺の手にかかって死ぬがいい!」
 俺に経験値を寄越せとトドメの一撃をかっさらいに来た流星のスピンキックを受けて力は川に落下するが、 仲間を助ける為に執念で這い上がると、地上ではヤミマルとジンバ&ボーマが激突中。
 「馬鹿な! 貴様生きていたのか?!」
 「……俺こそ、不死身だ!」
 は、格好良くはまり、レッドターボを巡って加熱する経験値争い。
 ヤミマルから不死身ボーマの弱点が口の中にあると教えられた赤は、捨て身の死んだフリ戦法(15話ぶり2回目)により、 勝利の快哉を叫んで大口開けた不死身ボーマに射撃を叩き込んで鎌を奪い、9割ほど不死身ボーマ化していた4人をなんとか救出。 深傷を負いながらもその後を懸命に追いかけた不死身ボーマが洞窟に飛び込むと、怒りのターボレンジャーが勢揃いで、 ちょっと可哀想な勢い(笑)
 5人揃ったターボレンジャーの高速コンビネーションGTアタックが炸裂し、Vターボバズーカでレディ・スパーク・ゴー!
 「「「「「ビクトリー!!」」」」」
 巨大戦では不死身ボーマの装甲の前にターボパンチもカノンも跳ね返されるが、弱点の口の中を狙ったカウンターからターボクラッシュで大勝利。
 「勘違いするなよ、炎力、いや、貴様等5人は、この俺が倒さなければならんのだ。それまでは、せいぜい命を大切にしろ」
 アドバイスについて自己弁護する流星は口笛を吹きながら去って行き、常時登場ではない事でへたれ化の進行は適度に抑えているものの、 「ターボレンジャーを狙う背景」すなわち「キャラクターの核となる情念」が描かれていないので、 2万年間レベル上げマニアのバトルジャンキー以上の存在にならないのがヤミマルの苦しい部分で、 第三勢力に徹するなど今のところ盗賊騎士キロスの二の舞になる事は避けているだけに、もう一つ跳ねきれないのが惜しまれます。
 次回――今度こそ出るか新たな離反者?!

◆第27話「少女暴魔リン」◆ (監督:東條昭平 脚本:渡辺麻実)
 「洋平、鈴なんか付けちゃって。また女の子からもらったんでしょ?」
 「そ。でも女の子じゃないぜ。年上の人」
 どうやら洋平はメンバー内部のモテキャラと認識されているらしく、カバンに鈴を付けて歩いているのをからかう4人だが、 思わぬボールが返ってくると、開いてはいけない扉を開いてしまったの?! と揃って固まるのが妙なリアル(笑)
 ジャーミンに追われていた少女を助けて太宰邸に保護する5人だが、それはターボレンジャーの懐に潜り込もうとする暴魔の作戦で、 少女リンの姿に化けた鈴鳴一族の姫・スズナリボーマによる、ターボレンジャー洗脳計画が始動。
 「ふん、これしきの三文芝居で、奴らが乗ると思うのか?!」
 「なにぃ?!」
 ホント暴魔百族の幹部陣は、突然せせこましく揉め始めますね……。
 首尾良く太宰邸に乗り込んだリンだが、シーロンにあっさり思惑を見破られるとシーロンを攻撃して逃走。 それを知らない洋平を騙して海へと向かい、すっかりデート気分の洋平は、鈴に関する思い出をリンへと語って聞かせる。
 「大好きだった人が、くれたんだ」
 それは子供時代の洋平が、結婚する憧れの先生から貰った鈴であり、だいぶ引きずっている洋平の優しさに触れたリンは術をかける事を躊躇うが、 気の短いジャーミンが姿を見せると術をけしかけ、潜入工作 → マッハでバレる! 考えなしに妖精に直接攻撃! → マッハで逃げ出して作戦破綻! 運良く洋平をひっかける → マッハで上がる二人の友好度! 術をかけられない → マッハでネタをバラすジャーミン! と、色々マッハでぐだぐだ。
 「鈴」をキーアイテムにするにしてもリンが洋平にほだされるくだりがあまりにも強引ですし、 洋平と鈴の挿話自体がだいぶ無理がある(小学生時代に貰ったのに今回いきなりカバンに付けているのに仲間達が気付くのは、 気分の問題で済ませるには納得しにくい)ので諸々の説得力が低く、加えて折角新規の脚本家なのに、 悲恋物マイスター藤井先生と方向性が丸被りになってしまったのもマイナス。
 「馬鹿野郎! なぜリンを逃がした!」
 「あの子はボーマだぜ! わかってんのかよ?!」
 いや君ら、相撲とか、氷魔とか、色々あったよね……?
 まあ、リンの攻撃でシーロンが負傷している事実はあるわけですが、物語の大きな背景となっている2万年前の大戦において、 ラキアの大親分に心動かされた暴魔獣が存在した――話の通じる暴魔も存在する――のは既に今作の基本的な事項となっているので、 裏切りに憤っているなど理由はつけられるものの、物語全体の流れからはスムーズに受け止めにくい展開になってしまいました。
 責任を取る、と一人で走る洋平だが、再び現れたリンは洋平に術をかけると仲間達を襲わせ、 一族を人質に取られてジャーミンの策に従っていた鈴鳴ボーマが、見せしめに一族を殺されると改めて術をかけに出撃するのもどうもわかりにくく (映像上は、一族が全滅したように見えるので……)、カットシーンの選択にも問題があったのかもですが、 とにかく全体的に右にフラフラ左にフラフラ、かと思えば背後からワープ! みたいな形で登場人物心の動きが不規則。
 特にここまでの今作が、話の要点を絞り、物語の軸線を真っ直ぐシンプルに描くのが持ち味だっただけに、デコボコ加減が悪目立ちします。
 赤が青を食い止めている間に、黒黄桃がリンを捜索し、黄黒の攻撃によって鈴が落ちると術は解け、 逃げようとしたリンはジャーミンの攻撃を受け、爆死。暴魔獣としての正体(声もデザインも老婆寄り) を見ても必死に駆けよってジャーミンに怒りを燃やす青は格好良かったのですが、暴魔百族の設定的空白を上手く広げられず、 逆にヒーローと怪人ポジションの交流の軸を終始ふわふわしたものにしてしまって残念。
 巨大鈴鳴ボーマの、全身の鈴を鳴らす音波攻撃に苦しめられるターボロボだが、ターボカノンで反撃を入れると、 高速剣バッテン斬りでビクトリー。
 苦い勝利を経験したターボレンジャーは、卑劣な暴魔百族に怒りを新たにするのであった……。
 『超新星フラッシュマン』(1986)第25話の照井啓司以来となる、曽田博久・藤井邦夫・井上敏樹、以外の脚本家の参戦 (厳密には、『フラッシュマン』第40話の脚本が長石多可男)となりましたが、経験値不足なのか演出との相性が悪かったのか、 定番の内容なのに、アレンジを凝らすべき要点が軒並み雑で、パッとしない出来。
 次回――予告の勢いが『80』ぽいのですが、どこまで語られてしまったのか(笑)

◆第28話「ロボ合体不能」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ヤミマルを襲う謎の襲撃者――その正体は、真紅の鎧に身を包んだ女(カラーリング的にはコロンさん)。
 「男の顔は履歴書。俺の顔に傷付けた奴は、許さないぜ。ふん!」
 キザを気取る不良番長、という2万年の間にキャラ作りをこじらせすぎた気がする流星は女にナイフを投げ返すと、 それは木の幹に突き刺さる。
 「……ふっ、安心しな。女の顔を切るほど、俺は下衆な男じゃないぜ」
 殴り飛ばしたり、バイクで体当たりはするけどな!
 「……さすがは流星。いや、流れ暴魔ヤミマル。おまえこそ暴魔百族を背負って立つ男」
 「なんだと?!」
 「そういう宿命になっているの」
 「宿命……」
 思わせぶりな言葉と共に宙に舞い上がった女は流星に謎の光を注ぎ込み……闇の中で目を覚ます流星。
 果たして全ては夢の中の出来事だったのか? またまた番組挿入歌以外が流れる演出で、「夢の中へ」(女性カバー。 今作放映の1989年4月に、斉藤由貴によるカバーがリリースされたようで、それでしょうか。 ちなみに同年の映画『ゴジラvsビオランテ』劇中でも使われているとか)をバックに埠頭に佇む流星と、 暗闇の中を出航していくフェリーとの対比がやたらダイナミックな映像になっており、レベルを上げ続けて二万年、 とうとうクラスチェンジの可能性が見えてきた流星の、闇の中をひたすら進む新たな旅の始まりの暗示でありましょうか。
 ――「……さすがは流星。いや、流れ暴魔ヤミマル。おまえこそ暴魔百族を背負って立つ男」
 「それが俺の宿命だという。感じるぜ……新しい俺の時代の到来を!」
 啓示を受けた流星がすっかりその気になっている頃……
 「いったいお前達は、いつになったらターボレンジャーを倒すのだ!」
 ここしばらく、ポリネシアンショーとか女子高生のストーキングとかで満足していた大帝様が、 9話ぶりの大噴火で幹部たちに連続ビンタを浴びせ、暴魔城にはただならぬ緊張感が走っていた。
 「拙者が! 今度こそ、このジンバが必ず」
 「聞き飽きたわいその言葉。もはや言葉はいらぬ! 身をもって示せ! ターボレンジャーを倒さぬ限り、生きて戻ってくる事は許さん!」
 「もはや、覚悟の上でござる」
 青白い光に照らされたラゴーン様は相変わらず迫力たっぷりで、鞘に付けていた鈴(どういうわけか前回と被る……) を一刀の元に切断すると闇の中で残心を取るジンバ、正攻法の剣士系で、立ち回りはホント格好いいんですがジンバ……。
 「ターボレンジャーを真っ二つに」
 シーロンと博士のちょっとおどけた一幕が入り、挿入歌に乗せて和気藹々と夜の街をパトロールするターボレンジャーの姿で緩急の緩を入れた後、 先頭を走っていた力を切り裂き姿を現したのは、暗闇魔人剣・二刀流を解放したジンバの急襲。
 「命いただく!」
 「いつものジンバとは違う!」
 凄まじい剣技で5人を追い詰めていくジンバだが、そこにターボレンジャーの経験値を狙うヤミマルが乱入。 ジンバの攻撃を防いだヤミマルの体から謎の光が放たれると、それはジンバとターボレンジャーを吹き飛ばしたばかりか太宰邸のシーロンにまで影響を与え、 床に倒れたシーロンは瞳孔が開いて重体に陥ってしまう。
 「なぜあの光がヤミマル如きに出たのだ。という事は、ヤミマルこそが」
 大帝ラゴーンは何やらその光に覚えがある様子を見せ、謎の女との出会いがただの夢ではないと感じたヤミマルは、 レベルを上げ続けて2万年、遂にこの果てしなく長い男坂のてっぺんが見えてきたぜ……! と目を爛々と輝かせていた。
 一方、光を浴びたターボレンジャーは激しく消耗して治療中。
 「……悪魔のオーラ。妖精のパワーを一瞬にして打ち消してしまう、恐ろしい光だ」
 恐らくターボブレスを通して間接的にその影響を受けたシーロンが倒れた事で妖精パワーが消滅し、ターボレンジャーは変身不能に。 急転直下の非常事態に動揺するメンバーだが、突如として治療装置が火を噴くと、 ジンバからの挑戦状がモニタージャックにより届き…………ええと、勢いで噛み合ってますが、 互いの因果関係はゼロですよね?(笑)
 と油断していたら、モニターに映るジンバの放った斬撃が、太宰邸の内部を切り裂く!
 「なんて奴だ! モニターを通して攻撃してくるなんて!」
 『怪奇大作戦』みたいな事をしてきた暗闇魔人剣・電波斬りによって大事なベースをズタズタに破壊され、怒りに燃える力。
 「おのれジンバぁ!」
 「待て! 君達は悪魔のオーラを浴びた! 変身も出来ないんだぞ!」
 「博士! 俺たちはこれまで、妖精の力に頼りすぎていたんです! でも今、自分の力で戦う時が来たんです」
 台詞そのものは格好いいのですが内容は根本からターボレンジャーの変身システムを否定しており…… 青春のパワーを信じるんだ!!
 「もうここも駄目か……急がねば」
 5人が闇雲に飛び出していった後、床の帽子とジャケットを見つめた博士は怪しげな事を呟き、生身の5人はジンバに立ち向かっていく。
 「必ず、俺たち自身の力で変身できる!」
 電池は無いけど精神力で自家発電できる! みたいな事を言い出した力がジンバの刃に倒れたかと思われたその時、 死中に活ありメディテーションで赤へと変身し、とうとうオーラパワーに覚醒(笑)
 夏休み終了後の新展開が幕を開けるや否や、もはや別の戦隊へと新生を遂げつつあるターボレンジャー、この数分間、 完全に勢いだけで進行していくのですが、それを成立させる為に幹部を退場させる事で釣り合いを取ろう、 というウルトラCの力技。
 苦戦する赤を助けようと飛び出した残り4人も変身に成功し、明るいBGMでターボレンジャーのターンとなって連続攻撃が炸裂。 ジンバは無惨に砕け散ると、博士と姫がなんだかんだとその死を悼む中、 機会を窺っていたヤミマルによって巨大化させられ富士をバックに巨大ジンバが誕生する。
 抜けるような青空と、ヤミマル、巨大ジンバの対比が鮮やかで非常に良かっただけに、 巨大戦が始まると(仕方ありませんが)屋内セットに切り替わってしまうのが残念でしたが、 ターボロボと巨大ジンバは凄絶なチャンバラに突入。最強武器ターボカノンをしのいだジンバの攻撃がロボを切り裂くと、 闇蜘蛛の力により放たれた蜘蛛糸がロボに絡みつき、合体システムに異常をきたしたターボロボは分離を余儀なくされ、 ここでサブタイトルが回収。
 「ジンバが倒したのではないぞ。ジンバの体を借りて、このヤミマルがターボロボを倒したのだ!」
 すかさずヤミマルはマイクアピールで権利を主張し、なんとか個々のマシンに乗り込んだターボレンジャーだが、 黒のマシンが完全に行動不能に。
 4人は、突然トラックに思い入れを発揮した大地をもぎ離すと、 たぶん去年はライブマンがナパームの中を駆け抜けていた辺りを必死に逃走するが、いよいよ巨大ジンバに追い詰められたその時――!
 おぅおおー おぅおおー あーれこそはー
 大地が鳴動すると地面が盛り上がり、地中から姿を現したのは……
 おぅおおー おぅおおー だーいようせーーい わーんせぶん!!
 謎の巨大要塞ワンセブン(並べて比較するとだいぶ違うかもですが、 登場した瞬間の印象が完全に『大鉄人17』の主役ロボット・ワンセブンのフォートレスモードすぎて) が出現すると巨大ジンバに砲撃を浴びせ、ひるむジンバに対して上半身を起こした形態で更なる砲火の特盛りを注ぎ込むと、ジンバ、大爆発(笑)
 戦力的には単独でターボレンジャーを追い詰め、ヤミマルパワーを注ぎ込まれてターボロボを合体不能に追い込み、 最初からもっと本気を出しておけば(リスクのある必殺剣だったのかと推測されますが)……といった活躍ではあったのですが、 相手が新兵器とはいえ、まさかの自動操縦(ないし博士の操縦)にやられて退場、となってしまいました。
 明らかに存在を持て余されていたので、その状況下ではせめて爪痕を残す退場劇とはなったものの、今更ですが、 やはり同期の《メタルヒーロー》の主人公(ジバン)と名前が被りすぎていたのがいけなかったのか……。
 ナレーション「果たして、この巨城の正体はなにか」
 一号ロボが車メカという事でか、トレーラー系を離れた超重量級の要塞メカ・大妖精ワンセブンは造形も格好良くインパクトがあり、 『戦闘メカ ザブングル』のアイアンギアーも思わせますが、系譜としては『宇宙刑事シャリバン』のグランドバースとか、 『宇宙刑事シャイダー』の超次元戦闘母艦バビロスの流れでありましょうか。
 次回――
 「博士! シーロンは、シーロンは無事なんですか?!」
 「ああ、無事だ。ちょっと姿形は変わってしまったが、なんの問題もなく元気だよ」
 「……今どこに?!」
 「ここさ」
 「ははは、博士、こんな時に冗談言わないで下さいよ。だってそこは、このマシンのどうりょ……く……ろ……」
 (博士が覗き窓を開けると、複雑にパイプの繋がった装置の中に、シーロンの杖と羽の欠片が浮かんでいるのが見える)
 「シーロンはね、最後まで、君達と一緒に戦う事を選んだんだよ。君達は、そんなシーロンの想いに、応えなくてはならないんだ!」
 ……妖精パワー無しで変身できるようになったし……今回わざとらしくほのぼのシーンが挿入されたり…… 妙に杖が強調されていたり…………果たして、シーロンはこの退場フラグの嵐を乗りきる事ができるのか?!
 そして、暴魔百族には更なるリストラの暴風雨が吹き荒れて、ええええっ?!
 なお、前回の次回予告は、全部喋っていると見せかけて、最重要のポイント(謎の女と謎の巨城)を二つ隠す、という手法でした。

◆第29話「急げ新型ロボ」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 冒頭から、土煙の中に立つ大妖精17の姿が描かれ、巨大要塞メカ、素敵。
 変形機構と細かいディテールをじっくりと見せていき、力の入れ方が窺えます。
 そして要塞は5人の前に扉を開き、中に入った力たちは、変わり果てた姿になったシーロン……じゃなかった、つなぎ姿の博士と再会。
 「君達、急ぐんだ! 詳しい事は後で話す。あれに乗り込むんだ!」
 妙にサスペンスな演出で描かれるのですが、無駄に高校生を驚かさないで、普通に出てきて下さい、博士(笑)
 「博士、あれは?!」
 「巨大戦闘機、ラガーファイターだ」
 大妖精の中に格納されていたスペースシャトル系の戦闘メカは、ターボロボと同時期に開発していたが、未完成の新兵器。 5人を助手に博士がその完成を急ぐ一方、ジャーミンはターボロボの経験値をかっさらわれて怒りの大帝様に吊されており、 ターボレンジャー撃破の為に命を懸けて出撃。
 「お前達も地獄へ送ってやる。今こそこの肉体の秘密を見せてやる」
 ひとりトラックに乗り込もうとしていた大地を襲ったジャーミンは、自らの命を用いて、肉体に封印していた暴魔獣を大復活。
 「我が分身にて最後の暴魔獣、クロコボーマ!」
 ジャーミンの姿に蛇身が重なるのでジャーミン自身が蛇の暴魔獣になるのかと思ったら……く、黒子……? と困惑していたら、 背中に! 黒子が! 付いた!!
 ……なんでしょうかこの、背中に黒子が貼り付いているのを怪人だと主張する姿勢と映像は面白いけれど、 なにも幹部退場編でそれを繰り出さなくても感。
 黒子ボーマはジャーミンが攻撃を受けると自動的にカバーリングしてカウンターを発動する能力を見せ、前に出る黒子、 に哲学的問題が発生する中、やんやと喝采を送る賑やかしのズルテン。
 「大霊界へ行けターボレンジャー!」
 今作放映の1989年は映画『丹波哲郎の大霊界』(松竹)が公開され、同期の『機動刑事ジバン』には第24話 「ようこそ!!大霊界へ」という正気を超越したエピソードがあり、ちょっとしたブーム便乗ぽい台詞(アドリブかも)。
 苦戦するターボレンジャーだが、その間にターボトラックに乗り込んでいた大地がトラックを発進させてジャーミンの目を引きつけ、 ラガーファイター完成までの時間を稼ごうと孤軍奮闘。まんまと餌にかかったジャーミンは戦闘機部隊を率いてトラックを攻撃し、 黒子、どこ行った……。
 「さあ、俺の心臓はここだ!」
 今回、ジャーミンと仲間4人の動きがだいぶ雑なのが惜しまれるのですが(特に黒子ボーマは実質一発ネタ)、 新ロボ登場の前振りで行動不能になった1号ロボをメカ単位で活躍させて見せ場を作るのは面白いアイデアで、 地対空の特撮も迫力たっぷり。
 「ターボトラック、こんな事でへこたれるんじゃないぞ! なんだこれぐらい……頑張れ、頑張るんだ!」
 お互い傷だらけになりながら、囮になって爆走する大地とターボトラックも格好良く、 メカに対しても発動する体育会系根性論!!
 奮闘するターボトラックであったがいよいよ走行不能になって大地もコックピットに倒れ、迫り来るジャーミン機の爆撃だが、 ギリギリで駆け付けた太宰博士が対空砲を撃ち込んで打ち込んで撃墜し……え? 2話連続、 博士が幹部を倒した?!(笑)
 「ありがとう。君のおかげで、ラガーファイターは完成した!」
 「……良かった」
 「君とターボトラックのお陰と言うべきだね。辛かったろう、ターボトラックを、こんな目に遭わせて」
 「……いいえ」
 「わかってるんだよ。君がどれだけ、このターボトラックを愛しているか」
 大地のトラックへの愛は完全に捏造ですが、「父親が長距離トラックの運転手で、 そんな父のトラックが大好きでよく磨いていた大地少年の回想」とか突然出てくるのが『ターボレンジャー』の作風なので、 きっとそんなような事情があったに違いありません。
 大地と博士は自動車愛で熱く見つめ合い、博士はそれを、山口先生に発動した方がいいのではないですかね……。
 トラックの修理は博士が請け負い、ラガーファイターの元へ向かおうとする大地の前には満身創痍のジャーミンが立ちはだかり、 力たちと合流すると黒をセンターにターボレンジャー!
 …………途中で大地が囮になろうとしている事に気付くも、博士の下に戻ってラガーファイターの完成を手伝うでもなく、 ここまで完全に存在の消えていた4人は、いったい今まで何をしていたのか。
 シナリオの流れからすると、大地の覚悟を汲み取って博士の下に戻るのが自然なので、作業シーンを組み込みにくかったのか、 ジャーミンとの決着に巧く繋がらなかったのか、トラックの方がそれなりに盛り上がっただけに、 4人が浮いた駒の扱いになってしまったのは残念でした。
 「湧け! ……ウーラァ!」 
 頭飾りを失い、髪も乱れて傷だらけのジャーミンは鬼気迫る表情から蛇身へと変身。
 ハイテンポで格好いいブラスアレンジのOPインストでの決戦となり、トラックへの愛で加速する黒が、 蛇ジャーミンと蛇黒子を同時に撃破してビクトリー! ジャーミンは最後の力で黒子ボーマを巨大化すると爆死し、 序盤に触れられた「家族」への情念が全く拾われず、ジンバともども掘り下げきれないままの退場が惜しまれますが、 最後の死闘は良い迫力でありました。
 ターボレンジャーは完成したラガーファイターへと乗り込み、大妖精ワンセブン(ラガーファイターの存在を強調する為でしょうが、 誰一人としてこの要塞に触れないし、太宰博士もなんの説明もしない(笑))を発進基地に、飛び立つ蒼い戦闘機!!
 挿入歌に乗せての暴魔戦闘機との空中戦を挟み、変形シフト・ターボラガー。
 大地に降り立った新型ロボ・ターボラガー(今見ると、後の『メガレンジャー』のギャラクシーメガは、 この青銀の配色を継承していたのでしょうか)は、その名の通りにラグビーボールを地面に置くと暴魔獣に蹴り込んでキックオフ!
 ラグビーボールがどこから出てきたのかは大変謎ですが、「工学系の学部で学びつつラグビー部に籍を置き、 宇宙開発研究所からスカウトを受けるほどの逸材であったが、外車でぶいぶい言わせながら女の子ではなく妖精を探していた学生時代」 は太宰博士の過去として納得がいくので、きっとそんな感じ。
 メタ的には、初期戦隊要素のような気はしますが、この当時、建前上『秘密戦隊ゴレンジャー』は《戦隊》のカテゴリ外だったそうなので、 ちょっと複雑ではあります。
 ターボラガーは黒子ボーマを肩キャノンで痛め付けると、ヤミマル直伝スピンキックで木っ葉微塵に吹き飛ばし、 デザインやアクションに関しては、今のところターボロボの方が好み。
 ところが、ひとりトラックを修理していた太宰博士の下にヤミマルが現れて博士を拉致する衝撃の展開!!
 「ヤミマル……なかなかやるではないか。あれほどの優れ者、欲しいものじゃ……むぅ……欲しい……」
 主力が立て続けに離脱してリーグ制覇が遠のく大帝様は、即戦力としてヤミマルに目を付け、 独立リーグからドラフト3位入団で暴魔百族優勝や! と、スカウト調査を始めて、つづく。
 次回予告でジャーミンの敗死を見せつつ、ヤミマルの暗躍を隠し球に持ってくる構成により、 新型ロボ登場でめでたしめでたしとはならず(前回あれだけやったヤミマルがさっぱり姿を見せないのはむしろ不自然だったので、 納得度の高い登場でした)、そして次回――更なる怒濤の展開!!
 シリーズ歴代4機目の2号ロボとなったターボラガーですが、『超新星フラッシュマン』以降の2号ロボ編としては、 第18話→第21話→第29話→第29話、となり、前作同様、夏の観光回などの後の新展開合わせに登場する形に。
 前作『ライブマン』は前半戦の集大成的なエピソードの後、第22話でトリプルバズーカを唐突に投入したのに対し、 今作は新たなるライバルキャラの登場から第16話で合体兵器Vターボバズーカを投入。 前々作『マスクマン』は第27−29話でライバル登場から新必殺武器投入が描かれる今作とギミック登場順が逆の構成になっており、 複数の事情が絡む要素でもありますが、シリーズとしての蓄積と変遷・工夫が窺えます。
 今作は更に、2号ロボと同時に巨大要塞メカが投入されており、もうワンギミックあるのか、楽しみなところ。
 ……それにしても『ライブマン』、話数的には2号ロボ登場はもっと後の印象だったのですが、 物語の密度が本当に濃かったと改めて。
 ところで:シーロンが影も形も登場しなかったのですが、やはり、要塞の動力炉に…………。

◆第30話「レーダの最後」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ヤミマルは拉致した太宰博士とターボラガーの交換を要求し、あ、シーロン、普通に生きていた。
 「いかーん! ターボラガーを渡してはならんぞ! そいつを渡したらおしまいだ!」
 「黙れ!」
 「……地球を、守る為なら……私の命など、どう……」
 巨大ジンバを木っ葉微塵に粉砕した戦績からすると、大妖精17さえあれば暴魔城をグラヴィトンできそうな気はしなくもないのですが、 燃費に問題があるのでしょうか。
 取引を飲んだターボレンジャーは、赤が単独操縦するターボラガーを渡すと見せかけて、別働隊の4人が博士を救出……どころか、 ヤミマルの背中に思い切り飛び蹴りをぶちこんだ(笑)
 「おのれ、謀ったな!」
 「おとなしくターボラガーを渡す俺たちと思ったのか!」
 格好良く啖呵を切っているけど、力強く卑劣!!
 ところが形勢逆転も束の間、巨大な刃が飛来すると大地に突き刺さり、暴魔百族の守り神・超魔神ボーマが出現。
 「ヤミマル! ご苦労だったな! 前座はここまでだ! 晴れ舞台は、暴魔博士レーダと、暴魔百族の守り神、 超魔神ボーマが相務めよう!」
 芝居がかった台詞と共に姿を見せたレーダは、とうっと崖から飛び降りつつマントを脱ぎ捨て、鍛え抜いた筋肉を解き放つ。
 「遂にレーダにも、後の無いことがわかったようだ。たとえ暴魔博士レーダといえども、生きて帰ってくることは許さぬ!  これがおまえの最後の戦いだ!」
 こいつら全員、追い込まないと本気出さない……! と悟った大帝様にボーナス全額カットを宣告されたレーダは、 2万年間鍛え続けてきた筋肉で黒青黄桃を圧倒し、ヤミマルは一時撤収。 超魔神のジャイアントスイングによって赤もコックピットから投げ出され、地に伏すターボラガーに懸命に乗り込んだのは、 手錠をかけられたままの太宰博士。
 「大地……君はターボトラックと囮になって、ターボラガーを完成させてくれた。今度は、私とターボラガーが君達の為に戦う番だ。 任せてくれ……ターボラガーは決して負けん!」
 ラガーを立て直した博士は、地上に「TURBO ROBO」の信号弾を撃ち込んで5人へのメッセージを送り、一連の2号ロボ登場編を、 「装備の強化」のみならず「高速戦隊の繋がりの形」として描いて博士にスポットを当ててくれたのは、嬉しい展開。
 博士の意志を汲んだ5人はターボロボの修理に急ぎ、中年のパワーで超魔神ボーマに立ち向かおうとする博士だが、 レーダの作り出した巨大砂地獄にラガーが飲み込まれてしまい、2号ロボ、登場二回目にして大ピンチ。
 残ったターボレンジャーには超魔神が襲いかかるが、ここで火を噴くワンセブン!
 「みんな! ターボビルダーに急ぐんだ!」
 ようやく大妖精17の正式名称が判明し、要塞に辿り着いた5人はトラックの修理を開始。砲撃をものともしない超魔神に対して、 操縦桿を操るシーロンは大妖精をビルドアップし、前作のコロンさんがぶっ飛びすぎだったのでインパクトは弱いものの、 巨大要塞ロボを操って戦う可憐な小妖精の図にアクセル全開で辿り着き、妖精パワーを信じるんだ!!
 巨大ジンバの耐久力に疑問符が付く事になってはしまいましたが、大妖精を戦力として起動してくれたのは目配りが利いて、 迫る超魔神、埋まるターボラガー、気を失う博士、危機また危機の中、なんとかトラックの修理が完成し、 挿入歌に乗せてビルダーから出撃したターボマシンは、合体シフト(出撃シーンが玩具で再現可能だったとしたら、 物凄く大きそうなビルダー)。

勇気にターボ! 怒りにターボ! チャージアップ! チャージアップ! ターボロボ!
若さにターボ! 未来にターボ! クラッシュ! クラッシュ! ターボクラッシュ!
明日にアクセル!


 好きな挿入歌という事もあって盛り上がる展開で、ラガーを助け出そうとするロボだがレーダの砂地獄と超魔神の攻撃を受け、 4人に操縦を任せた赤は、地上へ降りてレーダに一騎打ちを挑む!
 レーダはマントによって生み出した異空間でウーラーや触手を呼び出し、更にジンバとジャーミンの怨霊も赤に襲いかかるサービスで、 あっちでもこっちでも絶体絶命の高速戦隊だが、超魔神の攻撃で大地に倒れたターボロボと砂地獄に飲み込まれたターボラガーの手が偶然重なると、 謎の妖精パワーがバロムクロス。
 その光にレーダが苦しんだ隙に幻術を生み出すマントを切り裂いた赤は、通常空間に戻ると主題歌に乗せて反撃開始。 力強い勇気の剣に土手っ腹を貫かれるも最後の力を振り絞るレーダであったが、若さ全開GTクラッシュで一刀両断され、 空中に浮かび上がると大爆発!
 ……爆発!
 もひとつ爆発!
 画面右側で爆発!
 画面左側で爆発!
 画面真っ正面で爆発!
 まさかの5段階爆発で、素晴らしかったです(笑)
 「おのれ……! 決してこのまま死ぬ俺ではないぞ……」
 レーダは木っ葉微塵に吹き飛ぶも怨念が浮かび上がって自ら復活フラグを立て……その光景を見つめる、 いつの間にか学ランに着替えた流星光。……ここまで危機また危機の緊迫した状況が続いていたので、 いきなり学ランモードの流星が出てきたのは、正直ちょっと変な感じに(笑)
 「みんな居なくなった……まさに夢の通りだ。……俺の時代だ。……いよいよ俺の時代が来るのだ! ははははははは!」
 2万年のレベル上げの果て、野望の階段に足を乗せたさすらい転校生が高笑いを上げる中、 謎の発光現象を起こしたターボラガーが砂地獄から浮上すると、赤が戻ってきたターボロボと共に空中に舞い上がり、 発動するスーパーシフト!
 片方に気絶した太宰博士を乗せたまま変形合体が行われてスーパーターボロボが完成し、 腕+腕・下駄・胸部装甲・メットON、と純粋なボリューム増量により、か、肩の位置が…… そして、強引すぎる下駄が……無理矢理感強めのスーパー合体。
 超魔神の1.5倍はあろうかという巨体を誇り、どう見てもほとんど動けそうにないスーパーターボロボは、 三角形の「スーパーリア充ビーム」(絶対間違っていると思うのですが、そう聞こえる……正しくは、 「スーパーミラージュビーム」との事)を放ち、超魔神を一撃で消し飛ばすデビュー戦を飾るのであった。
 「ぬぅぅ、おのれターボレンジャー! 勝ったと思うなよ! 暴魔百族の底知れぬ恐ろしさ、思い知るのはこれからだ」
 コメディリリーフのズルテンを除き、子飼いの幹部を軒並み失った大帝ラゴーンは猛り狂い、 果てしなく説得力の薄い遠吠えが虚しく木霊する暴魔百族の明日はどっちだ!!
 「博士、やりましたよ、スーパーターボロボで」
 「なに?」
 「もう駄目かと思った時、ロボット同士の、奇跡が起きたんです」
 「本当にあれはなんだったのかしら?」
 「君達が私を助けようとした気持ち、私が君達を助けようとした気持ち、それがお互いのロボットに乗り移ったのさ」
 「合体するって事は、お互いに助け合うって事だったんですね」
 「……これからも、頑張ろうぜ!」
 そして地上では、スーパー合体はシステム上の想定にない奇跡だった事が明らかになり、 妖精パワーを信じるんだ!!
 自家発電変身に始まり、ほぼほぼ勢いだけで突っ走りきったこの3話ですが、 運命の女神との出会いから男坂を上り始めるヤミマルの暗躍! 立て続けに本気を出す暴魔幹部陣! 巨大要塞! 2号ロボ! 博士とシーロンの活躍!  奇跡のスーパー合体! と怒濤の幹部退場劇を踏み台にして3話に分けて繰り出されたターボレンジャーの新戦力ラッシュには、妙な満足感(笑)
 何かと使い勝手のいいズルテンを除いての暴魔幹部総取っ替えは驚きましたが、デザインやポジションはそれぞれ悪くなかった一方、 ヤミマルの登場後は完全に頭数を持て余していた面はあったので、数を減らしてヤミマルに焦点を絞っていくのが巧く転がってほしいところ。
 さすがに、重鎮・石橋雅史を起用したレーダは復活フラグを残しましたし、布石としてはこちらも楽しみで……ラゴーン様にはもう、 あまり期待しない方向で(笑)
 前作のスーパーライブロボが、二体のロボを合体させつつ最低限の移動と格闘は可能なフォルムを保っていたので、 スーパーターボロボがグレートタイタン2世になっているのは少々残念ですが、次回――真ヒロイン飛翔?!

◆第31話「女戦士キリカ」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「ふふふ、若いなヤミマル……お前はまだ若い」
 いつまで経っても土下座しながらスカウトが札束を積みに来ない事に焦れるヤミマルに対し、大帝様は老獪な余裕を見せて大物ぶるのですが、 率直に、地球征服計画は頓挫寸前です!
 その頃、3年A組では学園祭のシンデレラ役を決める投票が行われており、圧倒的な支持を獲得するはるな軍曹、 明らかに女子票を固めていてえぐい(笑)
 投票総数と光景を見るに、どうやら王子(力が準備万端)は男子の票、シンデレラは女子の票で選出する、 戦争を回避する為に別の憎しみを生む手段が執られているようですが、そんなはるなに嫉妬の炎を燃やすクラスメイト――月影小夜子は、 バレー部で、突然の! 殺人スパイク!!
 それを目撃して小夜子を気にかける力は、成り行きで誕生パーティに正体されるも何故か小夜子の両親から拒絶を受けるが、 なんとその正体は妖怪人間。
 更に小夜子の体内からオマモリボーマが飛び出すと、夢で見た赤い鎧の女に似ている…… と小夜子をストーキングしていた流星が窓から飛び込んできて、気を失った小夜子をさらっていく急展開。
 「2万年の間、君はこのオマモリボーマ達に守られていた」
 「そして、おまえが必要とされる時が近付いてきたのよ。私たち二人がこの18年間、おまえを、人間界で育ていた、というわけさ」
 小夜子は人間ではなく、2万と18歳の流れ暴魔だったのだ!!
 「俺こそが、君と赤い糸で結ばれた男なんだよ」
 「え? 君が?!」
 「俺たちはね……この世でたった二人きりの流れ暴魔なんだよ」
 暴魔百族に加われず、妖精の封印からもお目こぼしされた半端なはぐれ者(どうやら人間との混血……?)であった「流れ暴魔」が、 希少な血統なごとくスライドし、なにやら貴種流離譚めいてきましたが、そこへ割って入る力たち。
 「月影さん駄目だ! そいつの言う事を聞いてはいけない!」
 「俺と君が世界を支配するんだ! 俺と君は、そういう宿命に結ばれているんだ! いいか、俺たちは人間を遙かに超えた、 特別な存在なんだ!」
 一方、野望の階段に足をかけるヤミマルはパッションの趣くままに運命を熱く語り、「赤い糸」「たった二人きり」「世界を支配する」 「そういう宿命」「特別な存在」と初対面の女子に力いっぱい世界征服を持ちかける前傾姿勢で…… 直接は知らないので推察になりますが、この辺り、80年代オカルトブームにおける「前世ブーム」や「戦士症候群」が下敷きになっていたりしそうでしょうか。
 「違う! 君は人間だ!! 暖かい、赤い血の流れた人間だ!」
 力は2年前に小夜子を見知った際の話を持ち出して、小夜子は本当は優しい心の持ち主であるとフォローされるのですが、  〔暴魔は悪、人間は善なので、そちら側に居るべきだと主張する力〕
 〔そもそも流れ暴魔とは何かがまだわかっていない小夜子〕
 〔どちらかといえば暴魔百族に対して対抗意識を抱いていた筈が、人間に軸足を置く小夜子の説得の為に、 人間以上の存在である事を主張し始める流星〕
 の3人が噛み合っていないので心を揺らす綱引きが効果的に成立しておらず、こういう時こそ、 謎の説得力を持った妖精おじさんによる解説が必要なのでは!
 「見せてやるんだ。君がどれだけ美しく、どれだけ凄い存在か!」
 学校に馴染めずに居た小夜子に対して、人間は愚かな存在だとかき口説く流星ですが、 小夜子の私生活を知っているわけではない筈なので完全にその場の勢いな上(実体験に基づくのかも、とは推測できますが)、 小夜子が“人間でありたい”要素が劇中で特に描かれていないので力が掴む取っかかりは無いしで、 小夜子を両側からそれぞれの世界に引っ張る二人の男、という構図がどうも巧く成立してくれません。
 お守り夫婦はターボレンジャーの一斉射撃を受けて非業の爆死を遂げ、やたらと流れ暴魔サイドに肩入れさせる演出の中、 流星と小夜子は運命の逃避行に突入。
 Vターボバズーカで消し飛んだお守りボーマが、お守り夫婦の怨念を吸収して巨大化し、ラガーファイター発進。 巨大戦の煽りで小夜子が崖から落ちそうになった時(ターボレンジャー側は小夜子を取り戻そうと行動している筈なのに、 全く配慮せずに戦闘に巻き込んでしまうのは不可抗力とはいえちょっと残念な展開)、運命の赤い糸が流星と小夜子を結びつける!
 巨大お守りボーマはターボラガーに蹴り殺されるが、空中に投げ飛ばされたヤミマルと小夜子の流れ暴魔パワーが生死の狭間でバロムクロスし、 どういうわけかスーパターボロボ誕生のくだりと被り気味ですが、どちらかというと今回のこれありきで前回の演出だったと考える方がしっくり来そうでしょうか。
 小夜子が真紅の鎧を纏った流れ暴魔キリカとして覚醒すると共に、ヤミマルもまた真紅の鎧を身につけた新たな姿へと変貌し…… 2021年現在に見ると、凄く、猛牛大王(『侍戦隊シンケンジャー』)。
 蜘蛛から牛へとクラスチェンジしたヤミマル、東映の伝統として赤い鎧は不吉なフラグですが、大丈夫か……?!  デザイン的には野性味を押し出した初期バージョンの方が好きですが、今後、格好良く見えてくる事に期待。
 ヤミマルとキリカは手に手を取ったまま飛翔するとそのまま暴魔城へと突入していき、果たしてラゴーン様の運命や如何に?! で、 つづく。

→〔その6へ続く〕

(2023年4月12日)

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