■『高速戦隊ターボレンジャー』感想まとめ1■


“生まれたとき 与えられた
力強い勇気を わかちあおう”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『高速戦隊ターボレンジャー』 感想の、まとめ1(1話〜7話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「頼むぞ!ターボレンジャー −10大戦隊集合−」◆ (演出:東條昭平 構成:鈴木武幸/小村芳弘)
 「覚えているか? 戦士達の熱い魂を。生きているか? 君の、胸の中に。10大戦隊集合! 頼むぞ、ターボレンジャー!」
 田中信夫さんのナレーションに乗せ、新戦隊ターボレンジャー登場と、地球を守ってきた10大戦隊を映像で振り返る特別編。
 新たな悪の組織・暴魔百族の登場からスタートし、一団を率いるアンモナイト頭の博士は石橋雅史!  敗れ去った歴代悪の組織の無念を感じ取り、我々が地球の征服を成し遂げてやろう、と息巻く暴魔百族だが、そこに現れる5人の戦士。
 「俺たちの名は、高速戦隊!」
 でカット切り替わると、いきなり5人で直立ピラミッド組んでいるのは、衝撃的な初登場(笑)
 「ターボレンジャー!」
 「この地球、おまえら5人に守り通せると思っておるのか!」
 「それは違うぞ。見ろ!」
 「「「「「「「「おーーーーー!!」」」」」」」」
 沢山、出てきた。
 バトルフィーバーJからライブマンに、ターボレンジャーの5人を加えた総勢53人が特別編時空に大集合し、ここが特別編時空でなければ、 開始前に暴魔百族が壊滅するところでした。
 ここから主題歌をバックにナレーションで随時説明されながら各戦隊の本編映像が流れていき、10年分の映像が次々と見られる、 大変豪華な特別編。
 ナレーション「ここに、無敵の、巨大ロボと、変身スーツの、五人の戦士。巨大スーパー戦隊が、このバトルフィーバーJなのだ!」
 当時のシリーズ史に基づき『バトルフィーバーJ』が初代戦隊として紹介されるのですが、 このナレーション「巨大ロボと変身スーツがセットで巨大スーパー戦隊」が公式の基準だったのか、 今回の便宜上の定義付けだったのかは不明。
 1戦隊あたり1分以上の時間があるので、ヒーローのバトルシーンのみならず敵組織からサポートキャラまでフォローされるのが嬉しく、 以下、印象に残った点を幾つか。
 ・アイシー怖いよアイシー。
 ・やはり爆発を強調されるダイナマン(笑)
 ・メギド王子からダークナイトに繋いでくれたのが素晴らしい。
 ・何故か出てこない夢野博士。
 ・バイオロボ怖いよバイオロボ。
 ・伊吹長官が大暴れし、第1話のヘリコプターからサブマシンガン掃射はまだともかく、どうしてわざわざ第36話から、 身内に光線銃をぶっ放すシーンを選びましたか(笑)
 ・「伊吹長官と、電撃戦隊のメンバーと共に、彼らの、燃え上がる情熱は、やがて、大宇宙をも、正義の祈りで震わせる」は沁みるナレーションでした。
 ・ダイジェストで紹介される『マスクマン』の言い訳の効かないヤバさ。光戦隊の闇は深い。
 「今こそ青春を燃やす時が来た! 暴魔百族、この世界は渡しはしない!」
 暴魔百族は俺たちに任せて下さい、と先輩たちに誓ったターボレンジャーがエールを受けて突撃し、EDは抜きで次回、 というか初回予告となり、つづく。

◆第2話「君達は妖精を見たか!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 人類を滅ぼし、世界を支配しようとする暴魔百族が長い眠りから復活!
 時同じくして、都立武蔵野学園高校3年A組に在籍する5人は、助けを求める何者かの声を耳にする。
 (あなた達こそ、暴魔百族と戦う戦士なんです)
 自分たちにしか聞こえない声に困惑する5人は、問答無用の妖精パワーにより教室を叩き出されると、 人権無視の妖精ワープで荒れ地に放り出され、いち早く復活したイワガミボーマが封印の石を破壊し、 上級暴魔たちが大復活する姿を目撃。
 「人間ども、かくも長き間、よくも封印の中に閉じ込めてくれたな。暴魔百族の恨み、思い知れ」
 匂いを嗅ぎ取られた5人は姫暴魔の鞭攻撃を受けるが、そこに飛んできた謎の光(妖精)が変身ブレスを強制的に装着させ、 二つ一組で両手首に装備するデザインが、控え目に言って
 手錠
 にしか見えず、歴代でもかなりキてるなこの妖精!
 「なんなんだこれは?!」
 「戦士・ターボーレンジャーの印です」
 「戦士、ターボレンジャー?」
 「さあ、早くスイッチを入れて」
 どさくまぎれに変身させようとする妖精だが装置は作動せず、5人はそこにジープで乗りつけてきた男性に拾われて辛くも逃亡し、 今回も爆発が近い!
 「良かった……助かって。探していたんだよ。ずーっとずーっと、君達のような若者を探していたんだ」
 救いの手かと思いきや、こちらも危ない人だった。
 「……いったいあなたは?」
 「太宰と呼んでくれ。一応、博士だけどね、妖精シーロンと一緒に、そのブレスレットを作ったものだ」
 完全に、回し者だった。
 退路を断たれた5人はそのまま太宰邸に連れ込まれ、約2万年前、人間と妖精が暴魔百族と戦った記録の一部(と称するもの) を見せられる。地上の支配を目論む暴魔百族は、人と妖精に多くの犠牲を出しながらもなんとか封印され、それ以来、 かつて人と共生していた妖精たちは、封印の守り手となったのだった……だが、
 「人間は空を汚し、海を汚した。その為に、妖精たちは生きていけなくなってしまったんだよ」
 いつしか妖精の存在を忘れてしまった人類文明の発展の結果、自然環境の悪化により姿を減らした妖精は封印を保持できなくなってしまい ……科学文明のネガとしての環境破壊がそのまま悪の出現に繋がるという基本設定が、実に1989年。
 「君たちが聞いた声……あれはね、この世に生き残った、たった一人、最後の妖精、シーロンの叫びなんだよ」
 妖精には妖精で切羽詰まった苦しい事情があったのだとフォローが入り、 初対面の高校生に向けて無茶苦茶なボールを全力投球してくるのですが、鋭い眼光で力強く言い切る事で謎の説得力を持たせるのが、 実に戦隊博士キャラ(笑)
 暴魔博士らは、暴魔城を探し出すべく甲虫っぽい飛行メカを召喚して街を攻撃し、太宰博士に煽られた勢いで外に飛び出していった5人は、 第1話らしく景気良く吹き飛んでいく街の爆発に巻き込まれてしまう。
 瓦礫の中に倒れる5人は、妖精の声で目を覚ますと、どういうわけかテトラポットに引っかかっていた妖精シーロンを発見。
 手の平サイズのシーロンは、「会話する時は拡大しています」と衣装と銀髪カツラの子役で表現され、 雰囲気はなかなか“らしい”のですが、人間と一緒に画面に映る際は凄く雑な感じのぬいぐるみ状態となり、やや苦しい。
 妖精の存在を信じ、懸命に助ける姿で5人のヒーロー性を補強し、 分類するなら宿命でも職業でも選抜でもなく“素養系”とでもいった導入ですが、現代人には聞こえない妖精の声が5人には聞こえた!  よりも、妖精を助けた事で戦士として選ばれる、方が劇的だった気はするものの(《ウルトラ》に近い導入といえますが)、 新たな一歩を踏み出す11作目の戦隊として、ぐっと平均年齢を下げた史上初の高校生戦隊を明示する為に学園生活を最初に見せる事にこだわった部分はありそうでしょうか。
 結果的に、事情を把握していない未成年を死地に放り込み、死にたくなければ変身しようよボンボン! と契約を持ちかけ、 動作不良を起こしたところに助けに来た人はグルだったという、実に戦隊的な狂気と鬼畜ぶりになりました。
 妖精(この後の台詞からも、今作においては、自然そのものの象徴)の美しさに心打たれる5人に、 ノクトビジョンめいた妖精グラスを装着した博士が合流し、時村博士(『超新星フラッシュマン』)の親戚だなこの人……!
 恐らく、「妖精は絶対に居るんです!」と主張して学会を追放されたり警察に通報された過去があるに違いありません。
 「シーロン、俺たちはやるぜ」
 この職務質問待った無しの装備を身につけないと私には妖精が見えないし意思疎通できないのだ、 と妖精おじさんから高い妖精眼の素質を買われた5人は再び、暴魔百族へと挑んでいく。
 「おまえら、ただの人間じゃないな」
 「そうさ。俺たちはこの世で一番美しいものを見たんだ。そして誓ったんだ!」
 「貴様たちと戦う事をな!」
 初回はレッドに続いて、ブラックが割とスポット多め。
 暴魔関取が現れてホラ貝を吹き鳴らしたのに対し、5人は今度こそブレスを起動し、 妖精を心から信じて見る事が出来たからこそ変身できた、という流れなのでしょうが、「妖精を心から信じる」くだりが非常に弱いので、 劇的に噛み合い切らなかったのは残念。
 「「「「「ターボレンジャー!!」」」」」
 大地を走る車のイメージカットが挟まってスーツを身につけ(白で抜いたTの意匠がお洒落)、横並びではなく、 四分の一回転してカメラに視線を向ける斜め並びの独特のポーズから、やはりインパクトの強い直立ピラミッド。
 主題歌をバックに暴魔幹部達と戦闘を開始するも当然のように苦戦するが、怪人相手にいきなりのコンビネーションアタックを炸裂させ、 黒青の上に黄桃が立ち、その真ん中に火の輪くぐりの要領で赤が飛び込んでいくサプライズアタックから、 ターボレーザーのエネルギーを集めて落とすプラズマシュートで撃破。
 爆発をバックに、西部劇よろしくクルクル回した銃をホルスターに収めると、 またも斜め並びでカメラに向けてVサインを決めるのが独特で、フレッシュ感をあれこれと押し出してきます。
 暴魔博士は戦闘機にターボレンジャーを攻撃させ、妖精おじさんの指示でレッドターボは巨大マシン・ターボGTを召喚。 スマートなデザインの巨大スポーツカーが激走、と思いきや、タイヤを畳んで飛翔すると車そのもののデザインで華麗な空中戦を展開して暴魔戦闘機を撃墜。 その震動が大地を揺らした時、響き渡った獣の吠え声は聖獣ラキア……? で、つづく。
 初回という事でまだ海のものとも山のものともつかない感じですが、80年代中盤から模索の見えた、 戦隊ヒーローにおける「公」と「私」の問題は一旦脇に置かれて、「地球を守る」目的意識が非常に明解なニューヒーローとして誕生。
 明解ゆえに、「ヒーローとして立つ」部分の動機付け――話の組み立て方――が劇的さを欠いたのは初回として残念な部分で、 デンジ犬アイシーと伊吹長官が手を組んだ、みたいなノリでシーロンと太宰博士が概ね持っていってしまいましたが、次回、 敵味方の陣容が揃いそうで、どんな風に転がっていくのか期待したいと思います。

◆第3話「暴魔城!二万年の呪い」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ターボレンジャーの誕生に呼応するかのように目を覚ました聖獣ラキアこそが、暴魔城封印の要であった!
 その封印を解こうとする暴魔幹部陣に向けてレッドターボは車からいきなり砲撃をぶちかまし、 青春の殺意が高い。
 暴魔博士(第1話のテロップでは「レーダ」だったのですが、3−4話のクレジットには「レーダー」と表記されており、 どちらか悩ましかったのですが、「レーダー」が語表記で、「レーダ」が正しいとの事。 なお、感想書きとしては太宰博士と肩書きが被っているのが厄介なので、どちらかの転職を希望します) は再び戦闘機を召喚して爆撃を仕掛け、封印の象が破壊された事により、妖精の守り神・星獣ラキアが復活。
 聖獣のもふもふ感と妖精が背中にひっつく感じは劇場版『ネバーエンディング・ストーリー』から……? と思いましたが、 日本公開が1985年なので、あまり関係はない、でしょうか。
 目覚めた聖獣だが、数多の妖精と同様に人類の自然破壊によりその力は弱体化しており、辛うじてバリアを張り巡らせると、 空へ向けて青い光を放つ。
 「何をしようとしているんだろう?」
 ……地球汚染源・消滅?(笑)
 「暴魔城を封印しようとしているに違いない」
 青春とは、前向きな解釈だ!(眩しい)
 ターボレンジャーはラキアにトドメを刺そうとする暴魔幹部陣と激突するが、封印を解いて乱入したネジクレボーマによりエネルギーを吸われ、 変身不能に。そうこうしている間に遂に封印が解かれ、甦る暴魔城。
 超巨大な不動明王像のような物体が宇宙に出現するのは大迫力で、置物系ボスの暴魔大帝ラゴーンも、 悪鬼羅刹の群がる巨大な曼荼羅を背負った獣面の魔神といったデザインが、かなり気合の入った造形。
 「二万年にも渡る長き封印の恨み、今、晴らす時が来た。我が暴魔百族を次々と甦らせ、今度こそ地球を征服するのだ。 人間どもを打ち倒せ。総攻撃を開始しろ!」
 どこかのアカデミア島がまた吹き飛ばされているような気もしつつ、暴魔戦闘機が次々と爆撃を仕掛け、前作がど派手だった事もあり、 ちょっと戦力が少なめに見えます(笑)
 「若さでぶつかっていくのが、3年A組の、俺達5人じゃなかったのかい」
 変身エネルギーを失い絶望したかに思われた5人だが、リーダー格の炎力(ほのお・りき)の言葉に立ち上がると、 暴魔の暴虐を止めるべく、再び走り出す。
 「わかってるじゃないか君達は。その若さなんだよ。――信じろ、その若さを。18歳。人生で一番美しい時。そのパワーは、 最高の力を発揮するんだ」
 妖精おじさんはその背を見送って力強く頷き、完全に、アースフォースおじさん(※独自の研究です)、 オーラパワーおじさん(※独自の研究です)と同じカテゴリ。
 作劇としても、そういった固有名詞の代わりに“若さ”を用いているのですが、どうにも説教がましいわざとらしさが出てしまうのと、 力の由来としての説得力が弱いのは厳しい点。
 ヒーローが高校生戦士であるのに合わせて、等身大の誰もが持つ(持っていた)エネルギー、に寄せたのかとは思われますが、 希望や親近感よりもナチュラルな狂気の方が目立ってしまっている感じ。
 「良かった……地球にもまだ、あんな若者たちが居てくれて」
 5人は、変身しても白いままの変化球から信じる力は超能力で、青春のエネルギーを取り戻しターボレンジャー!
 ……アイデア自体は面白かったのですが、どちらかというと、 尺に余裕があって人間ドラマにリソースをより振り分けられる近年の終盤戦などの方が活きそうで時代が早すぎた感あり。
 岩石のようなボディに、横に乗せたムカデモチーフが長い両腕を示す、 という大変秀逸なデザインだったネジクレボーマをコンビネーションアタックからプラズマシュートで葬り去ると、 暴魔博士の笛の音により、魔力が注入されてボーマは巨大化。
 ターボレンジャーは、GT・トラック・ジープ・バギー・ワゴンの5大のターボマシンを召喚し、 ターボマシンvs暴魔戦闘機がしばらく展開し、一応、空を飛んだりミサイルを撃ったりはしますが、なにぶんデザインが車そのままなので、 車趣味が無い身としては、盛り上がりはいまいち(笑)
 前回登場した太宰邸にクラシックカーの玩具コレクションが見えたので妖精おじさんの趣味丸出しのようですが、もう少し、 スーパーマシン感が欲しかったです!
 5台のマシンは合体シフト・ターボロボを発動し、両足が自動車そのまま(黒がボディ、桃が脛、赤が胸〜頭となり、青と黄は靴に) のターボロボがスタンドアップ。二丁拳銃でボーマを痛め付けると、逆手持ちの高速剣で成敗!
 まずはデビュー戦を軽やかに飾ったターボロボですが、シリーズ従来作に比べて比較的スリムなデザインなのは、スーパー合体前提、 でしょうか?(するのかは知りませんが前作からの流れ的に)。
 力を失ったラキアは地球を見守る星座となり、ジョーカーとして星空に存在をキープ。
 「これまではラキアが地球を守っていてくれた、これからは俺たちが、ラキアに変わって地球を守るんだ」
 「そしていつの日か、ラキアが地球へ戻ってこれるように、この星を、美しく穢れない星にするんだ」
 つまり、地球汚染源、消滅。
 果たして、人類は地球のガン細胞なのか? 5人の高校生たちの、青春を燃やす戦いが今、始まるのだった――!
 シリーズ11作目(当時基準)、色恋沙汰や復讐といった私情を挟まず、妖精の存在――地球の美しさ――に気付く心を持った若者達が、 若い真っ直ぐさで迷わず体当たりでぶつかっていくぜ! と思い切りよくシンプルな立ち上がりになりましたが、 『チェンジマン』以降に試みてきた作劇からの揺り戻しの影響が大きかったのか、劇中に散りばめた要素がいまいち噛み合わず、 バタバタとした出来。
 とはいえ、前作『ライブマン』も要素を詰め込みすぎてかなり忙しない1−2話から第3話で跳ねたので、 今作もここからの上昇に期待したいです。
 ……ところで、シーロンとコンタクトしようとする度に怪しい眼鏡を装着する事で、 妖精おじさんのヤバい感じが当社比2倍になっているのですが、このまま押し通すのか、途中でなんか見えるようになった事にするのどうなのか……。

◆第4話「ゴロゴロ人間ダンゴ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「駄目だ! 人間ダンゴは撃てない!」
 道路に梵字めいた文様が浮かぶと地面を割ってダンゴボーマが出現し、前回に続いて、鎖を引きちぎりながら (弱った封印を自ら破りながら)の登場がボーマの特徴に。前回のボーマの能力はいきなり強すぎましたが、 ボーマの復活は上層部からするとランダムガチャ、という事で納得。
 2万年前、暴魔大帝に美食を捧げる事を誓ったダンゴボーマは人間を丸めてダンゴに変え、 球体の表面に押し潰したような人間の姿が浮き上がる人間ダンゴが、滑稽ながらグロテスク。
 「みんな、学校に行く前に、人間ダンゴを何とかするんだ」
 力たちは手分けしてダンゴを追い、言霊パワーで面白くなっていくパターン(笑)
 ところが、ターボレンジャー活動の影響か、所属する野球部ではスランプに陥り、成績も急降下した力は、 3年A組の担任(?)で野球部顧問でもある山口先生から、強めの幻覚でも見ているのではないかと目をつけられており、 車両基地で一悶着。太宰博士が割って入って力はダンゴの追跡を続けるが、山口先生の矛先は、不審な妖精おじさんに。
 「あなたですね、学校近くに住んでる変な博士って」
 やはり、そういう目で見られていた。
 「え? 変な博士?」
 勿論、自覚は無かった。
 「炎くん達を変な事に引きずり込もうとしてるのは、あなたなんでしょう?!」
 官憲の手を煩わせるまでもない、とジャッジメントを下して太宰博士を絞首刑にしようとする山口先生だが、 そこにダンゴが転がってきて二人とも取り込まれ、映像的にその方が面白いという判断だったのでしょうが、 転がるダンゴの中で人間の意識があるのが、地獄。
 力たちは洞窟の奥に隠された秘密基地からバギーとバイクに乗り込んでダンゴを追い、 かっとび暴魔が変身したバギーに姫暴魔が乗り込んで追いかけるのは、なかなか面白い展開。
 更に戦闘員隊長とバギー対決を見せて特色を押し出し、人間ダンゴの串刺し寸前、間に合うターボレンジャー。
 「俺が野球部のエースだって事を、忘れてもらっちゃ困るぜ!」
 赤は渾身の魔球ターボフォークで、ダンゴの陰に隠れた暴魔たちを次々と攻撃し、野球は地球人の生んだ総合格闘技!
 打って出てきたボーマのダンゴ攻撃を凌いだターボレンジャーは連続攻撃を浴びせ、 直立ピラミッドを組んで「ターボレンジャー!」と叫ぶ5人と、 火花をあげて苦しむボーマが一つの画面に収められるのはなんか凄いカット(笑)
 プラズマシュートの藻屑となったダンゴボーマは、姫暴魔の口から魔力で巨大化し、巨大化要員は固定しない方向で行くのでしょうか……?
 ターボロボは、高速剣を伸縮して攻撃すると、バッテン斬りでトドメを刺す多彩な剣技を見せ、 あわや秩父鉄道に轢き殺されそうになっていた博士&先生入りのダンゴは、なんとかそれを回避するのであった。
 元に戻った先生は、博士にしがみついていた事を指摘されると慌てて居住まいをただして力たちを追い立て、 博士がだいぶ危険人物なので、もう少し常識寄りの保護者ポジションとしての山口先生と早々に絡んでくれたのは、 双方のキャラを広げる面でも、面白い対比になってくれるのを期待したいポイント。
 ……まあ、先生のキャラ付けから過剰なドタバタになる危惧はありますし、先生は先生で、 教育熱心のあまり初対面の男の首を絞める人なので、「常識」の二文字に暗雲が漂ってはおりますが(笑)
 初動を終えて、キャラ回一巡目&定型エピソードとなり、作品の勢いと滑稽なグロテスクさが上手く噛み合って、なかなか面白かったです。
 学生なら部活、と個性を一つ付けてくれたのも良かった点。スタッフも当然意識していると思いますが、 実写チームヒーローにおいて「全員学生服」はかなり不利なスタートなので、スムーズに特徴を付けていってほしいです (この点、後の『メガレンジャー』は身長含めてぱっと見で区別がつきやすいキャスティングを考慮していたのかな、と改めて)。
 次回――いきなりカオス。

◆第5話「脱出だ!サムライの町」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 郷土博物館に封印されていたミノカサボーマを姫暴魔が復活させ、ランダムガチャ方式は早くも終了。 ボーマ怪人の傘を被せられた人間は、ミノカサ変化・昔帰しの術により大江戸時代劇の世界の住人になってしまい、ここまでで、 1話分の元が取れる面白さでした(笑)
 高速戦隊の5人で体力作りのランニング中、仲間を置いて先行した大地(得意分野との言及があり、陸上部?)は逃げ惑う少年を発見。 少年を追って真剣を振り回すチョンマゲの三人組に襲われる羽目になり、早くも物凄いカオスから、 チョンマゲヅノーが生まれそうな勢い。
 見かけたパトカーに助けを求めるが、中から顔を出したのは岡っ引き。問答無用の十手攻撃に続き、 前回に続いて戦闘員がダンゴ攻撃を使い、姫暴魔も出てきてピンチに陥る大地はパトカーを奪って逃げ出し、多分、 無免許。
 ……前回乗っていたバイクは年齢的に揃って免許を持っていてもおかしくはないですが、全員未成年戦隊だと、 この辺りはちょっと際どくなるところで(法的にどうこうというより、スキル的な説得力で)、 車輌系ギミックにこだわる時代ではなくなっていたとはいえ、後の『メガレンジャー』はこの辺りも意識してのスライダーだったのかな、 と改めて。
 「こんな時、仲間が居てくれれば……」
 足に怪我した少年を抱え、ノコギリを振り回す医者や捕り物方に追われる大地は独りよがりの行動を悔やみ、昼食中の仲間が、 大地と連絡を取れない事を訝しみ始める一方、姫暴魔は大帝に今回の作戦をプレゼン中。
 2万年の恨みを抱えているのに、たかだか300年ぐらい巻き戻して人間社会は大混乱ですぞ!  と喜んでいる姿に根本的な疑念はわき起こりますが、文明の利器を扱えずに広がる混乱の描き方を見るに、 本当は猿人レベルも考えたけれど映像的な面白さからチョンマゲパニックにした、みたいな判断はありそうでしょうか。
 「憎い人間どもに恨みを晴らすにふさわしい、面白い作戦じゃのう」
 そして、大帝様は、早くも面白ポイントを取り入れていた。
 太宰博士が妖精グラスを装備しないとシーロンを認識できない小ネタを挟み、大地が落としたブレスをシーロンが拾った事で判明する危機。 チョンマゲ集団に追われながらも少年を見捨てない姿でヒーロー性をプラスし、大地は三度笠コスプレの仲間達と合流。 反撃に出るとプラズマシュートでVサインし、高速剣で成敗!
 「みんなと走るのもいいもんだなと思ってさ!」
 少年の怪我も順調に回復し、独りよがりだった自分を反省した大地の変化もスムーズに収まり、 カオスな事態とオーソドックスな交流・成長要素のバランス良く収まった一本でした。
 ……ところで、赤・黒・青・水色・水色、のジャージは、光戦隊からの横流し?

◆第6話「ヌルルッ!暴魔ゾンビ」◆ (監督:新井清 脚本:曽田博久)
 やっと! 監督が! 増えました!
 ……そして、放尿。
 …………そこまで外せないシーンであったのでしょう、か。
 川の汚染によって引退した元漁師の老人が、死ぬ前にもう一度だけでも漁がしたい……と川に桟橋を自作したのがきっかけで、 ペロペロボーマが復活。ボーマは汚れた川の水を吸収すると、その汚濁を凝縮して体内から暴魔ゾンビを作り出す。
 「見よ、この汚れた川を、海を、空を!」
 環境破壊テーマがストレートに盛り込まれ、人間が生み出した汚染源が暴魔の戦力となる一方、 その過程において水質が改善した川には魚が戻り、人類は地球のガン細胞なんだよ我夢ぅ!
 ……げほごほ、この先も時折、感想中に藤宮(『ウルトラマンガイア』)が乱入してくるかもしれませんが、 生暖かい目でスルーして下さい。
 やはり、90年代の終わりに、時代の一つの象徴として環境テロリストを宿敵に位置づけたのは、 『ガイア』の慧眼であったと思うところです。
 「もっともっと暴魔ゾンビを生み出せ。人間共を自ら作り出した汚濁の淵へ沈めてしまえ」
 前回は面白ポイントに流されてしまった大帝ですが今回は台詞回しが格好良く、次々と生み出される暴魔ゾンビは、 粘液質のヌルヌルとした質感が大変嫌な感じのクリーチャーデザイン。「ゾンビ」となっていますが、腕が伸びる辺りも含め、 「河童」のイメージも入っていそう。
 ゾンビの吐き出す毒ガスに苦戦するターボレンジャーは、川が綺麗になっている事からペロペロボーマの潜伏場所に気付き、 祖父が漁を再開できるのを喜ぶあまりに怪人の目撃を黙っていた姉弟の嘘が炙り出されるのが、少々えげつない構成。
 「お爺ちゃん、漁に出られるわ。お爺ちゃんの夢がかなうのね!」
 そして、ゲスト少女の演技がなんだか、橋田壽賀子ドラマというか、昭和のホームドラマっぽい(イメージです)のが異彩を放つのですが、 いそいそと漁に出ようとした祖父が乗り込んだ船にこそボーマが潜んでおり、人質に取られるお爺ちゃん。
 「こいつがどうなってもいいのか!」
 わざわざ最前線に出てきて安い台詞で老人の身柄を抑える暴魔博士レーダの株価が滅茶苦茶下がったのですが、 そんな調子で大丈夫なのか暴魔百族。
 通常装備が通用しないゾンビに苦しむターボレンジャーだが、真っ白なオープンカーで太宰博士が駆け付け、新開発の個人武器をパス。
 「太宰博士がパワーアップした威力を見せてやるぜ!」
 5人はそれぞれ、GTソード・Tハンマー・Jガン・Bボウガン・Wステッキ、と各々のターボマシンに対応した武器を構え、 完全に人質そっちのけ(笑)
 暴力の誘惑に呑み込まれてしまうターボレンジャーだが、姉弟と最初に出会って一応メイン扱いだった桃の活躍で人質が救出されて、 ホッとしました(笑) その煽りで、Wステッキブーメランを食らってのけぞる暴魔博士レーダの株価がストップ安になりましたが、 本当に大丈夫なのか暴魔百族。
 助けた老人を待機していた博士の車に乗せた話運びは秀逸で、弱らせた怪人とゾンビはプラズマシュートでまとめて爆殺。 巨大戦でもゾンビが繰り出されるが、ターボクラッシュの高速横移動を活かして、暴魔とゾンビを連続成敗するのは、 格好いいフィニッシュでした。
 「この川を綺麗にするのは、私たちとヒロシくん、そしてミサちゃんの努めなのよ」
 「頑張ろうよ。いつの日か、必ず綺麗にしてみせるんだ」
 人類の環境破壊を天敵が浄化する事を喜んでしまうえげつない構図から、祖父の漁を優先して口をつぐみ続ける姉弟への説得が、 祖父が怪人に襲われたのでそれどころではない! で投げ飛ばされてしまったのは残念でしたが、穏当なところにまとめて、 夕焼け青春ダッシュで、つづく。

◆第7話「恋人を食べる暴魔獣!」◆ (監督:新井清 脚本:藤井邦夫)
 「桜の香りに酔っているのかアギトボーマ。人間共が愚かに信じているくだらぬ愛を食べ、その姿を現すが良い」
 「人間共の愛する心のエネルギーこそ俺の力。言われるまでもない」
 侍ボーマ・ジンバが、自らの分身ともいえるアギトボーマを大復活させ、夜の公園でいちゃつくカップルを襲撃!
 抑えめの声音にやや気取った台詞回しで、ひとまず今作の二枚目悪役ポジションに任命された感のあるジンバは実は元人間。 戦士として愛する姫の為に戦い続けるも利用し尽くされた挙げ句に「おまえなんか本気で相手にするわけないじゃん」と手ひどくフられ、 死後にその怨念が暴魔と化した大変哀しい過去の持ち主であり、今年も二番手で登板した藤井先生が、 さすがに高校生カップルを衰弱死させられなかった流れ弾が、暴魔幹部に直撃!
 そしてアギトボーマは、あらゆるカップルを許さない! と愛し合う人間に恨みを向けるジンバにより、 非モテの怨念を養分に育てられた暴魔獣(という名称が今回から登場)であり、力たちの同級生カップルがその被害に遭ってしまう。
 体内で消化中のカップルたちを人質にされて手も足も出ないターボレンジャーだが、シーロン情報により、 桜の香りがアギトボーマの弱点と判明。故意にアギトボーマに呑み込まれ、 体内で桜の花びらをばらまく捨て身の作戦により人々を吐き出させる事に成功し、プラズマシュートでVサイン。
 個人としての因縁が特に生じていないので、ライバル関係に発展するかは微妙ですが、二刀流の赤とジンバの激突は、 なかなか格好いい殺陣でした。
 ジンバも巨大化妖術を使ってアギトボーマは巨大化し、ジャンプからの回転パンチ、そして高速剣で成敗!
 「おのれターボレンジャー! おまえ達のくだらぬ愛、この世から必ず抹殺してやる!」
 ジンバは世界にジェラシーファイヤーを燃やし、暴魔(の一部)が生前の恨みから現世に祟りをなす一種の怨霊なのだとすると、 主題歌の処刑宣告「遙かな眠りの旅を捧げよう」も、文字通りに、「鎮魂による安らかな眠り」を意味していると捉えられるのかもしれません。

→〔その2へ続く〕

(2022年7月8日)

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