■『鳥人戦隊ジェットマン』感想まとめ6■


“空に憧れ 鳥に憧れ
夢にまで見た 大空へ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『鳥人戦隊ジェットマン』 感想の、まとめ6(31〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕


◆第31話「戦隊解散!」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:井上敏樹)
 ラディゲは道で拾ったラモンとゴーグをバイラム本拠へ連れ帰り、「俺の血で復活したんだから、おまえら俺の為に働けよ」 と勧誘するが、断られ、反撃を受けて帰られ、嘲笑われるという、 安定のコンボを披露。
 「人間を大事にするべきだ!」と言う2人の魔神は街に繰り出し車に轢かれそうになった子供達や落石に巻き込まれそうになった作業員などを次々と助けるが、 その放つ光を浴びた人々は、なんとパイナップルに変わり、魔神の食料になってしまう。
 「我々は人間の天敵なのだ!」
 凱と香が乗馬デートしている頃、迎撃に出た残り3人は魔神に惨敗。
 「公私を混同するなと言っただろう。俺たちは、戦士なんだ」
 遅刻していたたまれない2人に、竜のいつもの、始まる。
 「戦士には、人を愛する事もできないのか」
 「なにぃ?」
 「もうてめぇの説教にはうんざりだぜ! 人の為に自分を犠牲にすりゃそれでいいのか。そんな人生は真っ平だぜ! 俺の夢は、 俺の気持ちはどうなるんだ」
 「自分を犠牲にするのが戦士の仕事だ!」
 ひたすら古典的ヒロイズムを押しつけてくる竜に反発を強めた凱は香の手を引いて基地を出て行くと、 ブレスを外してバイクで走り去ってしまう、と2度目の退職。3人になったジェットマンを襲撃するマリアだが、 そこへ魔神コンビが乱入し、ビーム攻撃でまとめて吹っ飛ぶ4人。その衝撃で、マリアはリエの姿へと変貌する!
 「リエが……なぜリエが……」
 竜はリエをかばって一緒に吹っ飛び、雷太とアコと離ればなれに。目を覚ましたリエは、マリアであった間の記憶を失っており、 2人はしっかりと抱きしめ合う。
 「私……怖い」
 「大丈夫だ! もう……大丈夫だ」
 (戦いが終わったら……リエ、もう一度いちから、おまえとやり直すんだ)
 ここで遂に、リエ=マリアが明確に提示され、2人の演技は迫真。だが恋人達の再会も束の間、そこへ巨大ゴーグが現れ、 竜はジェットイカロスを召喚。黄と青もガルーダで駆けつけるが、5人揃っていないジェットマンはグレートスクラムを発動する事が出来ず、 苦戦。その時、遂に完成した3号ロボ・テトラボーイが飛来する!
 テトラボーイは、自律型のスピードタイプで、ボクシング型のフットワーク。名称からもタイタンボーイ(『超新星フラッシュマン』) は意識されていると思われますが、自律型追加ロボのはしりって、どれなのかしら。
 素早い動きでゴーグを翻弄したテトラボーイは、巨大火砲テトラバスターへと変形し、ジェットイカロスに担がれると巨大ゴーグを撃滅。 魔神の1体は、物凄い踏み台ぶりで死亡するのであった。
 そもそもグレートイカロスが一度も苦戦した事が無いのに、すかさず新戦力を投入してくる所に、小田切長官の鬼畜ぶりが窺えます。 もっとも今回、「5人揃っていないとグレートスクラムが発動できない」という致命的弱点が判明した事を考えると、 それを踏まえて不測の事態に備えたといえ、周到な準備が優秀。
 ゴーグを倒してリエの元へ戻る竜だが、リエはラディゲの光線を浴び、再びマリアの姿になるとリエとしての記憶を失っていた!  竜はマリアの攻撃を一方的に受け、主役が頭をぐりぐり踏まれ、女幹部高笑いというカットで次回につづく(笑)
 リエ=マリアが明示されると同時に、リエをマリアにしたのはラディゲであると判明し、 拾った現地人を記憶改造して同格の女幹部のように扱いつつセクハラを働き、 嫌がられたり嘲笑われたりして快感を覚えるという、ラディゲのレベルの高すぎる変態性癖も発覚。
 それは、バドミントンお嬢様では満足できない筈です。
 時折口にしていた「おまえは俺のもの」発言が裏打ちされる形になったわけですが、面と向かって罵られつつ、 実はおまえは俺に支配されているのだ、という快感に震えているのかと思うと、実に高度です、高度すぎます。戦隊史的に見ても、 恐らくかなりレッドゾーン。

◆第32話「翼よ!再び」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
 「長官、喜んで下さい。リエが生きてたんです。今、呼んできますから」
 マリアにぐりぐり踏まれている内に気を失い、基地で目を覚ました竜は、いきなりの錯乱台詞を口走り、刺激的なつづくから、 刺激的な導入へ。
 「何を言っているの! 彼女はまだマリアなのよ! バイラムの幹部!」
 「……違う。リエは元に戻ったんだぁぁ」
 暴れる竜を取り押さえる雷太の《力持ち》スキルは、作品随所で地味に便利。
 マリアに単独で殺されそうになっていた竜が、基地で目を覚ますまでの経過は完全にカットされているのですが、 いきなり事情を知っていたり、これは、長官が助けに行ったのか(笑)
 一方、テトラバスターで滅殺されたかと思われたゴーグも辛うじて生きていた。ラモンは虫の息のゴーグと融合合体しようとするが、 そこへラディゲが邪魔に入り、ゴーグの体を奪っていく。
 珍しくグレイがラディゲに協力しているのですが、邪魔な第三勢力相手だからか。
 ラディゲはゴーグの体に大量のバイオ次元虫を忍ばせる罠を仕掛け、改めて融合合体したラモンを魔神ジゲンにしてしまう事で、 支配下に置く事に成功。まあ最初から出オチ感満載でしたが、魔神はとうとう、ラディゲの使いっ走りという、 劇中でもとてつもなくヒエラルキーの低い扱いに。
 “愛する者を失った衝撃”から心をガードする為に戦士の虚勢を張っていた所に、“愛する者が生きていたが、殺し合う相手だった” という別角度からの新しい衝撃を受けた竜は、振り幅の大きさに耐えきれずに遂に壊れてしまい、 いちゃいちゃ妄想にふけって心を閉じると、小田切長官の叱咤すら無視する。
 今作がとにかく良く出来ているのは、竜が「死んだ筈の恋人が記憶を失って敵になっていた」から壊れたのではなく、 1話において、
 「リエ…………リエを、リエを探しにいかなければ! 行かせて下さいっ、リエを探しに行かせてくださぁい!」
 「まだ目が覚めていないようね。彼女は、死んだのよ! バイラムに、殺されたの!」
 「りえぇぇぇ!!」
 「泣きなさい……二度と、泣かない為に」
 という経緯で既に狂っており、その狂気によって保っていた精神の平衡に、もう一度衝撃をぶつける事で、 完全に壊しているという二段階の仕掛けになっている事。
 当時の戦隊の尺で、よくぞここまで仕込んで組み上げたものです。すさまじい。
 竜の事情を知ったアコと雷太は、それを香と凱に説明。
 「はっ。竜の奴に言っとけ。公私を混同するなってな。あいつが普段から言ってる台詞だ」
 「……そうなんだよ。いつも偉そうなこと言ってる割には、てんで情けないんだ……」
 雷太の毒づき(表情や口調からは、本気では言っていないニュアンスに見える)に、凱は反射的にその首根っこを掴む。
 「が、凱……」
 「……竜の悪口を言うんじゃねえ。いいか。世界中で奴を……竜をけなしていいのは俺だけだ!」
 雷太の手にしたブレスを手に、その場を去る凱。
 街にはラディゲに操られる魔神ジゲンが出現し、竜を欠き、凱と香も戻らないまま、立ち向かう雷太とアコ。そして、
 「竜、自分に勝つのよ……」
 長官は、どこまでもスパルタであった。
 その頃、竜はブランコを揺らしながら、緩みきった表情でストロベリー妄想にふけっていた。
 「竜……」
 「……凱……香。紹介するよ。俺の恋人、リエだ」
 現れた凱と香に、満面の笑みで、空のブランコを示す竜。
 「竜……どうしちゃったのよ、竜!」
 「なんだよ2人とも。挨拶ぐらいしてやってくれよ。なぁ」
 「てめぇぇ……! おまえは戦士だ! 根っからの戦士の筈だ! こんなおまえなんか、見たかねえぜ!」
 凱は竜に組み付き、雷太達から助けを求める通信が届くが、竜はそれでも、妄想の過去の中に閉じこもる。
 「嫌だぁぁ! 俺はここに居るんだ! リエと一緒に、ここに居るんだぁ!」
 「竜ぅぅ!!」
 竜を殴り飛ばそうとするが、空のブランコをすがるように見つめるその視線に気付く凱。
 「この野郎がぁ!」
 拳を振り下ろす代わりに、竜を抱き留める凱の、泣きたいのか泣きたくないのかわからないという表情が、とにかく素晴らしい。 序盤から組み上げてきた物語の一つの山の頂に、確かに登り詰めました。
 「……好きにしろ。だが俺は待ってる。俺たちはおまえを待ってるぞ!!」
 結城凱というのは、格好いい所も格好悪い所も、身勝手な所もちょっと安っぽい所も全て含めて、 “とにかく人間”のシンボルとして描かれていて、だからこそ、時に非人間的ともいえる竜のヒロイズムに対して本能的な嫌悪を抱いていたのですけれども、 その竜の欠落の正体を知った時に、今度は誰よりもその理由を理解できてしまう。
 同時に凱は、“人間”として自分の命が大事であるが、実は“人間”であるからこそ他者の命も大事にしている。だからこそ、 最優先する自分の命よりも香の命を大事にした時に、そこに真実が生まれる。だからこそ、 他者の命を守る為に自分を犠牲にする事をいとわない戦士としての竜に、実は少なからず敬意を抱いてもいる。
 敬意と嫌悪と、そして共感。
 それはつまり、“人間”から見た、ヒーローへのどうにもできない愛憎なのかもしれません。
 そしてこれだけの事をやり、竜の欠落について知った上でしかし、“人間”結城凱を持ってしても、 「それでも竜にはヒーローでいてもらわなくてはならい」という、ヒーローを必要とする世界の残酷さが織り込まれているのがまた、痛切。
 「香……俺も馬鹿だな。どうしようもねえぜっ」
 凱と香は戦いの場へとバイクを走らせ、1人になった竜の元にはマリアが襲いかかる。ブランコを漕ぐ妄想のリエと、 鞭を振るうマリアの姿が被さる狂気映像の中、竜の腕からブレスが外れ、中に収めていたエリの写真が目に入る。
 「は?! おまえは。……俺は今までいったい、何をやってたんだ」
 それが最後の一押しとなり、正気を取り戻した竜はマリアを説得しようとするが、鞭でしばかれる。
 (リエ、もっと打て。俺の弱い心を打ち砕いてくれ)
 ……たまに、実はMなのではないか、という気がしていたのですが、やっぱりそうだったのか。……まあ、 Mは戦士としては目覚めておくと非常に便利なスキルです。必殺技ゲージがぎゅんぎゅん上昇するようになるので。
 脳内リエ(戦って、竜。戦士として、私の為に)
 「リエぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 ゲージが限界を突破し、新たな領域へ突き抜けた竜は、マリアを抱きしめる。
 「リエ、俺が必ず元に戻してやる。だが今は、やらなければならない事がある。ジェットマンのリーダーとして」
 結局この、竜は1人で戦士として立ち直らなくてはならない、というのは、『ジェットマン』の根底にある残酷さを感じる所です。 その過程で、竜が自分の弱さを見つめ直して認める、という成長は描かれているのですが。
 魔神ジゲンに苦戦する4人は遂に変身が解けるが、そこへ、弱い心をMゲージへ転換してクラスチェンジを果たした竜が駆けつけ、 バルカン攻撃に向けて生身で直進すると、大爆発の中で、変身。
 「行くぞ!」
 「「「「おう! クロス・チェンジャー!」」」」
 「レッドホーク!」「ブラックコンドル!」「イエローオウル!」「ホワイトスワン!」「ブルースワロー!」
 「「「「「鳥人戦隊ジェットマン!」」」」」
 5人揃ったジェットマンは主題歌から怒濤の連続攻撃というスーパーヒーロータイムを発動して魔神ジゲンを撃破。 巨大化した魔神ジゲンに対しては、イカロスハーケンとバードガルーダが合体して巨大飛行戦艦になるという離れ業から、 ハイパーGアタックで抹殺。古代の3魔神は、ここに敢えなく最期を遂げるのであった。
 「おまえに受けた屈辱。忘れんぞレッドホーク。この次会った時こそ、貴様をこの手で!」
 そしてマリアは、セクハラに激怒していた。
 マリアは、Sっぽくて不幸系でセクハラされるけどお姫様抱っこもされるという、八面六臂の凄まじいヒロインぶりで、 狂人と変態とヒロインのハイレベルぶりだけでも、改めて『ジェットマン』は凄い(笑)
 ラストは、皆でリエの墓を訪れ、ここでようやく、竜の背景が皆の共有する所となり、新たな絆が生まれるジェットマン。
 「リエ……おまえの墓は、このままにしておく。おまえが元に戻るまでは」
 「これから始まるのかもしれねえな。俺たち5人、ジェットマンとしての本当の日々が」
 竜と凱は、沈む夕陽を背にがっちりと握手をかわすのであった。
 中盤一つの山という事で、『ジェットマン』分盛りだくさん、カロリーの高いエピソードでした。ここでようやく、 竜と凱の関係が一定の収まりを見せるのですが、一方で、前向きな目標は増えたのだけど、「戦士」から解放されない限り、 竜の宿す狂気はつきまとわざるを得ない、という構造はまだまだエグい。
 次回、伝説の「カップめん」を思い出す酷いサブタイトル(笑) 今回のサブタイトルが格好いいだけに、落差が(^^;

◆第33話「ゴキブリだ」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:荒木憲一)
 あらゆるものをくっつけてしまう粘着ゴキブリが街に出現。
 「ゴキブリの苦痛を思い知らせてやるのだ」
 って、マリアさん割と突然、変な作戦立てるなぁ(笑) というか最近、トランが全然仕事していない(^^;
 「凱…………あ、いや……俺たちの未来に、乾杯」
 前回を受け、酒を酌み交わそうとする竜と凱だが、そこへ通信が入り、中断。うなずき合って、 上着を同時に肩にかけて立ち上がるのが実に格好いい。
 ……のですが、急に男2人でわかり合ってしまい(いや前回、そういう話だったのですが)、この、 香置いてけぼり感(笑)
 ジェットマンは素早い怪人に苦戦した上にバギーを粘着されてファイヤーバズーカが使えず、逃げられてしまう。 小田切長官は新武装のビークスマッシャーを持ち出すが、それは最初のバイラム襲撃の折に設計者の相沢博士が死んでしまった為、 未完成の武器であった。
 完成のヒントを求めて博士の娘・美加と接触した長官と竜は、美加が夢の中に出てくる奇妙な図や記号に悩まされている事を知る…… ビークスマッシャーの悪用を恐れて設計を極秘にしていた相沢博士は、万が一の場合に備え、娘の潜在意識に回路図を隠していたのである。
 「科学者としては立派でも、父親としては失格だわ」
 父は仕事一筋で、自分は愛されていなかったと思っている美加、その嫌悪感が意識下の苦痛を生んでいるのではないか、 と推察する小田切長官。
 「美加ちゃんの父親への誤解が歯止めとなって、今の彼女を苦しめてるんだわ」
 ……娘の潜在意識に秘密兵器の設計図を刷り込む父親とか、全く誤解ではないような(笑)
 長官は強引にでも美加の潜在意識から回路図を引き出そうと考えるが、竜は美加の父親への感情をケアする事で、 自然に思い出す事が出来る筈だ、と主張し、粘り強く美加にアプローチ。
 「お父さんの仕事はあまりに大きすぎた。君だけじゃなく、もっと多くの人を助ける、大切な使命があったんだ」
 が、どだい竜に傷ついた少女の心を癒す説得スキルなどある筈もなく、 大上段からの大人の理屈をど真ん中にぶち込んでみせる。
 それをわかった上で、父親が自分の方を向いてくれない事が寂しかった、と美加は言っているわけですが、 竜の朴念仁ぶりが悪い方向に炸裂。
 更に、自分が苦しむ事がわかっていて何故回路図を隠したのか、と問う美加に、相沢博士は美加を信じていたからこそ、 本当に地球を愛する者に秘密を託したんだ、といい話にすり替える竜(笑)
 どう理由をつけようと、相沢博士の行為は鬼畜の所業以外のなにものでもないのですが、竜の場合、 本気でいい話だと思っているから、物凄くタチが悪い(笑)
 約束を破って帰れなかった娘の誕生日に、せめてプレゼントとして届けた博士作のオルゴールを親子の愛情のキーアイテムとして竜が修理するのですが、 美加の夢の中にもイメージが浮かび上がるし、それ、どう見ても、潜在意識に影響を及ぼす催眠装置です。
 はからずも竜が一山越えた次の回で、“地球を守る戦士として当然だと思っている行為が、 外から見ると狂気を孕んでいる”という『ジェットマン』の基本構造が客観的に炙り出されてしまいました。
 狙ってやったのか、いい話のつもりがズレてしまったのかは、何とも言えませんが(^^;
 再びゴキブリが出現し、戦いに向かった竜を追いかけた美加は、戦闘に巻き込まれて気を失ってしまう。
 「美加ちゃん、頑張るんだよ」と、突然竜が美加をスカイキャンプに運び込むのですが、いつの間にやら頭にケーブルが繋げられており、 気絶したのをこれ幸いと同意無く強引に記憶を吸い出そうとしているようにしか見えないのですが、 手段を選んでいる時間が無くなったので地球の為にやむを得ません(笑)
 今作の欠点として、尺の短い中に出来る限りドラマを充実させ、必ずしも巨大戦にこだわりすぎず、 とはいえ戦闘はそれなりに入れようとした結果、戦闘の前後が唐突にぶった切られて、 戦っていたと思ったらいきなり基地に戻っていたり……という展開がしばしばあるのですが、 その悪い所が重要なタイミングで思い切り出てしまいました(^^;
 気を失った美加は夢の中で回路図の最後の部分を思い出し、遂にビークスマッシャーは完成。危機に陥ったジェットマンを救ったのは、 新装備を普通に片手撃ちで怪人に炸裂させる小田切長官かっこいーーーーーー。
 ジェットマンはビークスマッシャーとバードブラスターを合体させ、新武装による一斉射撃で怪人を撃破。 追加玩具のお披露目回という事で許されたのか、巨大戦は無し。……華々しく登場した後、2回連続でテトラボーイの出番がありません(笑)  そして、ファイヤーバズーカはこのまま用済みなのか。というか、倉庫街に粘着したままなのか。
 「パパ、私、パパの事を誇りに思います」
 かくしてジェットマンは新たな力を得、その影で、いたいけな少女まで、地球を守る戦士思想に洗脳されてしまうのであった……。

◆第34話「裏切りの竜」◆ (監督:東條昭平 脚本:荒川稔久)
 テトラボーイの機密図を手にスカイキャンプを脱走した竜を追う凱のバイクを、容赦なく襲う爆発!  逃走する竜は立ちふさがる香達にも容赦なく爆薬を投げつけ、爆発!
 と、冒頭から火薬祭で、何だかみんな、振り切れて楽しそう。
 「ふん、また仲間割れか」
 だが、平常運行すぎて、バイラムの反応は冷たかった(笑)
 竜は「テトラボーイとリエを交換だ」とバイラムに交渉を持ちかけ、グレイと接触。グレイは交渉の場に現れた竜を射殺すると、 テトラボーイだけを奪い去るが、射殺された竜は精巧なアンドロイドであり、 密かにテトラボーイに乗り込んでいた本物の竜はバイラム本拠地への潜入に成功する!
 リエ恋しさに仲間を裏切ったと見せかけた竜の本当の目的……それは、バイラム本拠に存在を推測される次元転移装置の破壊であった。 本拠の番人・ジゴクメドゥーサに襲われながらも次元転移装置に辿り着いた竜は4幹部に囲まれて絶体絶命の危機に陥るが、その時、 竜の作戦を知った4人がグレートイカロスで駆けつける…………て、あれ? 4人なのに、グレートスクラム出来たの?(^^;
 定番の展開ながらアクションたっぷりでここまでは悪くなかったのですが、先日、「5人揃わないとグレートイカロスになれない」 みたいな事を言っていた直後に4人でグレートイカロスに乗ってきてしまったせいで、色々と台無しに。
 或いは、スクラムする所だけ小田切長官が参加したのか。
 長官なら、出来そう。
 グレートイカロスは巨大化した強敵ジゴクメドゥーサに敗れそうになるが、戒めを脱したテトラボーイが駆けつけて窮地を脱すると、 バードメーザーで逆転勝利。次元転移装置に迫る両ロボだったが、グレイが転移装置を緊急起動させ、 バイラム本拠から放り出されて突入作戦は失敗してしまうのだった。
 と、ラストはドタバタ。
 少し物語を動かすなら良いのですが、単身突入、新戦力のテトラボーイを餌に、 などリスクの大きい事をした割には大山鳴動して鼠一匹も出てこない、という良くないパターン。 そろそろ後半戦という布石の意味はあったのでしょうが、本拠地中枢を狙われてバタバタしたバイラムの株だけが一方的に下がりました(^^;
 一つポイントとしては、ラストで凱が「よろしく頼むぜ、相棒」と、改めて竜と意気投合。30−31−32話を乗り越えて、 ジェットマンがしっかりと信頼で結ばれた、という姿は補強されました。それを強調する為の裏切りネタではあったのでしょうが、 後半エピソードとしてうまくまとまりきらず。
 次回――ミントン伯爵、鳩と戦う。

◆第35話「鳩がくれた戦う勇気」◆ (監督:東條昭平 脚本:荒木憲一)
 サブタイトルが――伸びた……!
 産廃の不法投棄をする男達。それを鳩と、バイラムが見ていた。
 「貴様達人類に、地球に住む資格はない」
 地球の環境を守れ、バイラム!
 産業廃棄物から誕生したバイオ次元獣・毒ガスネズミが街に現れるが、それに襲いかかる白い鳩。 アコは鳩と心を通い合わせる少女・恵理と知り合いになり、その母親から、 恵理が生まれついての心臓の病気でずっと入院生活を送っている事を聞く。 手術を怖がる恵理に勇気を与えようとハイキングに連れ出すアコだったがそこにネズミが現れ、 アコはブレスを落とした上に毒ガスによる目潰しを受けてしまう。
 「2人仲良く、あの世へ行け!」
 視力を失いながらも少女を守って必死に逃げるアコに向けて高笑いしながら襲いかかるラディゲ……凄く、駄目な人です。
 だがその時、鳩の軍団が少女を守る為にラディゲに襲いかかり、鳩の猛攻を受けたラディゲ、池に落下(笑)
 ……凄く、駄目な人です。
 池に落ちたラディゲは捨て置き、合流したジェットマンはネズミと戦闘。相変わらず視力を失った青が苦戦するが、 ビークスマッシャーの反射ビームで適当にダメージを与え、一斉射撃で撃破。
 巨大化したネズミに対してジェットマシンに乗り込もうとする5人だが、ここで物陰で戦闘を見ていた少女が 「お願い! 私も戦わせて!」と宣い、青のマシンに乗り込む事に。
 恐らく、バードニックウェーブを媒介に、狂気が空気感染したものと思われます。
 この前の戦闘シーンで、5人で戦っていたと思ったらまとめて吹き飛んだ後、何故か青とネズミが一騎打ち (青が目が見えない事をわかっている筈なのに、他の4人がちっとも助けに来ない)もかなり無理があったのですが (その上で反撃方法も全く面白くない)、ここでも少女の指示を受けて、目の見えない青がマシンで単独攻撃を仕掛ける、 という無茶苦茶な展開(^^; ジェットマシンで戦う理由付けがあれば良いのですが全く無い為、ひたすらガタガタ。
 青のジェットマシンで一撃与えた後にようやく合体したイカロスは剣を溶かされて苦戦するが、テトラボーイが走ってきて援護攻撃。
 「恵理ちゃん、このレバーを、思いっきり押すのよ」
 青はテトラバスターを少女と共に撃ち、ネズミを倒すのであった……て、なんか、『科学忍者隊ガッチャマン』を思い出します(笑)
 プロットは全然違うのですが、『ガッチャマン』に、敵組織の巨大ロボに父を殺されて復讐を求める少女を戦闘母艦に乗せて、 「復讐したいんなら、バードミサイルを撃たせてやる! ほら撃て、撃ってみろ!」と主人公が迫るというエピソードがありまして (うろ覚え)、今作のキャラクターデザインに『ガッチャマン』の影響があるとすると、割と素直にオマージュだったりしたのか。
 『ガッチャマン』は、名作。
 でまあ、戦う勇気を持った少女は自分を助けてくれた鳩の為にも手術を受ける決意をするのであった……って、うーん……。
 第21話「歩くゴミ」と同じ監督×脚本コンビで、冒頭から環境汚染テーマに触れ、 メインも同じくアコという事で多少は関連付けもするのかと思ったら全くそんな事は無し。 環境汚染テーマ自体が掴みにそれらしく言及してみただけで(荒木憲一の師匠筋の杉村升の影響を感じる)、 後半の軸になった難病の少女と手術の勇気という王道エピソードとも特に絡まず、 ファンタジーな鳩と少女のシンクロは純粋にファンタジーで、詰め込んだ要素が空中分解。
 鳩に襲われて池に落ちるラディゲだけは凄く面白かったですが……!
 次回、まさかの慰安旅行。
 エンディングの最後の、私服姿でオープンカフェに座る長官のカットと、次回予告の最初のカットが繋がる、という小技が楽しい。

◆第36話「歩く食欲!アリ人間」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
 長野県に慰安旅行へ向かうジェットマン一行。
 「長官が旅行に連れてってくれるなんて……なんかあったんすか?」
 「天堂くん」
 「ハイ」
 「私になんか文句ある?」
 「え?」
 「あ、そっかー。なんだったらこのまま、帰ってもいいのよ?」
 いっけんジェットマンの特別休暇っぽいけど、当然のように同行している長官が遊びに行きたかったものと思われます(笑)  多分なんか、私生活で嫌な事があった。
 自然豊かな山里で、束の間の休息を楽しむジェットマン。一応凱と付き合っている筈なのに、 香がアコとべったりで心配していたのですが、仲間達から少し離れて「今度は2人で来ましょう」というシーンがあって、 ホッとしました(笑) 凱もいつもと違う高原コーディネートで、爽やか!
 そこへアコが「不純異性交遊禁止!」と茶化してボールをぶつけ、追いかける香、その様子を笑う竜、雷太、 長官……前半のギスギスぶりとは打って変わって、隊内の恋愛関係があった上でも和やかなジェットマンのメンバー。 少し離れた位置に腰掛けたまま、旅先ではしゃぐ5人を見つめる凱……の姿は、脚本・演出の方では既に意識されているのかと思われ、 ぐっと来るカット。
 一方バイラムでは、蓄音機から流れる音楽をマリアと聴きながらグレイが渋くグラスを傾けていた。 そこへトランが変な笛でぴーひょろぺ〜と不協和音を被せ、くつろぎタイムを邪魔されたグレイは思い切りグラスを投げつける。
 「邪魔だ失せろ!」
 「グレイまあ、そう怒るな。トランは子供なのだ。まだ芸術を理解できる歳ではない」
 「…………くっ!」
 「笛や太鼓が欲しい年頃というわけか、ふふ」
 隅っこで体育座りしながら待機していたのか、ラディゲも登場し、次元戦団バイラムは、 地球に優しく身内に厳しい夢いっぱいの職場です。
 「――見ていろ、今に見ていろ! 僕だって、僕だって、子供のままじゃないんだ!」
 走り去ったトランは長野県へと向かい、露天風呂サービスシーンを挟んで、トランの吹く笛の音に操られたアリに噛まれた人間が、 次々と食欲ゾンビ化していく。ロッジ前の牧場に大量の牛の白骨が転がっているのを目にして異常を知ったジェットマンだが、 アリに噛まれていた香がアリ人間と化してしまう。
 「てめぇ、ガキだと思っていたがもう手加減はしねえ! 罪を償え! 香を玩具にした罪をな!」
 姿を見せたトランに怒りを向けるブラックコンドルはドラム缶をカウンターパンチ。更に剣で斬りかかろうとするが、 レッドホークに制止される。
 「よせ、凱! バイラムといえども相手は子供だ」
 「子供? 僕を、僕を馬鹿にするのか」
 身内の罵倒を思い出して怒りに震えるトランはアリを合体させ、バイオ次元獣・アリバズーカが出現。
 「ジェットマン、罪を償え。僕を、僕を馬鹿にした罪だ!」
 アリバズーカは巨大化し、アリが離れた事で正気を取り戻した香が復帰したジェットマンはガルーダ召喚。
 「よくも乙女に恥をかかせてくれたわね!」
 映像的には、アリ人間と化した村人と一緒に深夜の牧場を徘徊していた香が、牛をバラしてたいらげる、 という一線を越えてしまったのか、気になります(笑)
 アリバズーカはガルーダに瞬殺され、屈辱に震えるトランを馬鹿にしに、長野県まで出張してくる同僚達(笑)
 ラディゲ「敵に情けをかけて貰った上、このザマとはな」
 マリア「まさにアリのように踏みつぶされたというわけか」
 グレイ「ふ……しょせん子供」
 次元戦団バイラムは、みんな気が合う和気藹々とした職場です。
 「ははははははは」
 高笑いする、先日、レッドホークにセクハラを受けて戦闘をスルーされたマリア。
 「ハハハハハハハハ」
 哄笑する、先週、鳩に崖から落とされたラディゲ。
 「ふふふふふ」
 嘲笑う、この間、囮作戦に引っかかって本拠を危機に陥れたグレイ。

 次元戦団バイラムは、笑い声に溢れた素敵な職場です。

 「…………くっ……うぉぉぉぉぉぉっ! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 敵味方の双方から憐れみと蔑みを向けられてメンタルの限界に達したトランはまたもその場を走り去る……。 同僚からの深刻な苛めに耐えかね、このままトランは退職してしまうのか? だが、くさってもバイラムの幹部。 子供といえども屈辱を受けたまま膝を屈するものではなかった!
 「見ていろ……今に見ていろ! 僕の、僕の怒りが成長を早める!!」
 トランは怒りのエネルギーを全身に行き渡らせ、その爆発的な感情が、トランの持つ超能力と合わさって急速に肉体を成長させる!
 「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 肉体が急成長を遂げ、身の丈に合わなくなったマントを脱ぎ捨てたトラン、なんと、

 全裸の、美青年(広瀬匠)に!!

 こまっしゃくれた少年が、いきなり、バタ臭い美形(全裸)になる、という物凄いインパクト(笑)
 そして広瀬さんの放つ、圧倒的な悪の美形オーラ!
 地方ロケ編でどうして井上敏樹なのかと思ったら、まさかの急展開で、戦いの行方は果たしてどうなる?!
 今回で退場となったトランは、前半はそれなりに仕事をしていたのに中盤ぐっと露出が減るのですが、 子供幹部で見た目に変化をつけたのはいいものの、スケジュールだったり絵的な問題が生じたのか (悪の幹部とはいえ子供を5人で袋叩きするのはまずい、みたいな)。そんなわけでキャラとしては活ききらなかったものの、 超能力による攻撃の演出や、ホルスタイン模様のマントなど、デザイン面は好きでした。
 余談:旅行先にも関わらず鞄に入れてきていたのか、異常事態が発生するや否や、びしっといつものスーツを着用している長官、素敵。

→〔その7へ続く〕

(2016年6月16日)
(2019年12月16日 改訂)
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