■『鳥人戦隊ジェットマン』感想まとめ4■


“誰もじゃまはさせないマイウェイ
それが俺流自由な生き方なのさ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『鳥人戦隊ジェットマン』 感想の、まとめ4(19〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第19話「見えます!」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:荒川稔久)
 まさかの、爺や無双。
 幼い香との思い出回想モードに突入した爺やの、香と良い子の約束、爺やお手製香ちゃん憲法なるものにやたら尺を取るなぁと思ったら、 それが後半の布石になっているという、ビックリ展開です。全然記憶に無かったのに、やたら押されているぞ爺や(笑)
 バイラムの放った占いジゲンの扮装した占い師により、精神的に追い詰められた香は、 次々と的中する占いの結果を突き付けられた挙げ句に、変身した自分が死亡する映像を見せられ、恐怖から戦う事が出来なくなってしまう。
 ホワイトスワンを追い詰める事で、ジェットマンの戦力を欠けさせた占いジゲンは本格的な攻撃を開始し、魔法陣に閉じ込められる4人。 4人は死神のカードが暗示する異空間で攻撃を受け、こすい策謀系かと思いきや、普通に強いぞ占いジゲン。
 引きこもっていた香は通信から響く悲鳴に何とかブレスを装着するが、やはり思い切る事が出来ない。
 「駄目! 戦えない! 戦えない!」
 「何を甘ったれてる!」
 その時、般若の面を被り、木刀を装備した爺やが香に襲いかかる(笑)
 「ジェントルマンを辞めようと辞めまいと、それはそなたの人生!」
 「ジェットマンよ!」
 「だが今そなたは迷っておる。香ちゃん憲法を思い出せ!」
 爺やの猛攻と叱咤を受けた香は、香ちゃん憲法第9条「自分の事は自分でする事!」を思い出すと恐怖を乗り越え、 女剣士の姿で占いジゲンを強襲。4人を救い出すと占いジゲンの威圧を振り切って変身し、 バイラム戦闘員を蹴散らして最後はファイヤーバズーカで占いジゲンを撃滅するのであった。
 香を追い詰めていく流れに尺を取った為か、次元虫は消滅し、巨大化せず。「私の未来は、私が決めます」と高らかに香が宣言して、 一件落着。
 香が立ち直るくだりはかなり強引でしたが、まあ、爺や、面白かったからいいや、みたいな(笑)  そして蝶よ花よと育てられたと思われた香が、存外、爺やに鍛えられていた事が判明したのは、そもそも香には割と戦士の素養があった、 というフォローなのか(笑)
 一方ラディゲは、実況中継を見ながら芋虫を愛でていた。

◆第20話「結婚掃除機」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:荒木憲一)
 20話にして、井上脚本以外では初の凱エピソード。
 人間の愛を吸い取ってしまう掃除機ジゲンが、結婚式に出没。愛を吸い取られた花嫁達が次々と結婚式を取りやめ、 愛を失った事で性格まで変わってしまう。
 優しかった姉が豹変した原因を突き止めようとあちこちで結婚式を張り込んでいた少女ミチルと出会った凱は、 ミチルに協力を頼まれるも一度は逃げ出すが、結局はミチルに振り回される事に。
 「あの女、俺の誘いにピクリとも反応しやがらねえ」
 「凱は自分になびかない女性はみんな異常なんだから。不謹慎だよ、あんな時に」
 「いいか、女ってのはな、人妻だろうと婆さんだろうと、男を見る時の目ってのはちらっとでも輝くものなんだ」
 凱、異性に全く興味を示さないミチル姉の態度に、物凄い自分理論で、バイラムの陰謀の匂いを嗅ぎつける(笑)
 バイラムの狙い、それは、結婚直前の花嫁から愛を奪い取る事で、人間社会の婚姻システムを破滅に導く事にあった。 誰も結婚しなければ人類は子孫を残せず絶滅する! てまたえらく壮大な計画に(^^;
 バイラムの目的は表次元の征服と人類文明の破壊、その過程における権力争いなので、作戦内容といい、トラン、マリア、 グレイが妙に一致団結していたり、今回ちょっとおかしい。
 ……もしかして、先日嫌な上司を倒す為に3人揃ってポーズを取った時に、
 (い、いける……!)
 と、心の奥に眠っていた熱い何かに目覚めてしまった?
 そんな3人から離れ、俺にはセミマルが居るからいーんだ、と暗い笑みを浮かべるラディゲは、 苛められているのでしょうか。
 マリア「ほほほ、一度は人間になったお前には、床掃除がお似合いよ!」
 トラン「僕に逆らったらこの、人間の女とバドミントンしている写真を世界中にばらまくよ」
 グレイ「裏ミントン伯爵には、最高級ニスをホームセンターで買ってきてもらおうか」
 ラディゲ「ぐぬぬ」
 みたいな感じで。
 結婚式場の張り込みを行っていた凱は遂に掃除機を発見し、竜達も合流。ここでバイラムの関与が認識されるが、 5人は割と強かった掃除機に叩きのめされ逃げられてしまう。
 「あんたなんかより、もっと強い人を探すわ」
 その光景を目撃したミチルは、いきなり凱に罵声を浴びせ、立ち去ってしまう。
 「彼女はね、わざとあなたを怒らせて、事件から遠ざけようとしているのよ」
 「馬鹿言え! なんであいつが?」
 「子供には全然鈍いんだから」
 ミチルの凱への罵詈雑言は子供の身勝手ではなく、好意ゆえに、というのはちょっとひねって面白かった所。
 「愛を食べる、次元獣ねぇ……」
 報告を受けた小田切長官は関東一円の結婚式を全て中止させ、掃除機ジゲンを誘き寄せる餌として、 凱とアコ(謎の組み合わせ)が偽装結婚式を仕掛ける事に。
 定期的にある結婚式中止作戦ですが、小田切長官の指示、というこれ以上ない説得力。公権力って素晴らしい!
 作戦通りに掃除機はまんまとつられるが、凱がアコにキスを迫った所に嫉妬に燃えたミチルが飛び込んできて、囮作戦がバレてしまう。 掃除機はミチルの持つ凱への愛を吸収し、その愛があまりに大きかった為に、意識を失うミチル。怒りの凱は、 空腹のあまりかデートスポットで暴れだした掃除機の前に一人立つ!
 「待て! 力尽くで愛を奪うなんざ、モテねぇ野郎のする事だぜ!」
 テーマソングと共に、スロー歩き変身を行ってしまう凱。
 ……この回に、この演出で、本当に良かったのだろうか(笑)
 やたらな盛り上げで戦闘員を蹴散らしたブラックコンドルは、個人剣技コンドルフィニッシュで掃除機を撃破。と、 かなりの贔屓されぶりですが、この“ヒーローとしてのブラックコンドルの活躍”というのは、 人間的弱さと直面してそこから復活する17−18話があったからこそ、というのはあり、 演出サイドではかなり満を持してのものだったのかもしれません。
 ここで凱が竜に匹敵するような戦いを見せる、というのは意図的に流れを汲んだものだと思われます。
 勢いで巨大掃除機に一人で立ち向かう黒だがさすがに弾き返され、そこにジェットイカロスが駆けつけると、 変身の解けた凱を回収したロボットの中で、5人が揃って変身するという変則パターン。薙刀による攻撃の後、 鉄球をぶつけて電磁ショックを放つイカロスクラッシャーにより、掃除機を爆砕。掃除機が吸い込んでいた愛は地上にばらまかれ、 ミチル姉も元の優しさを取り戻すと、恋人と仲直りして大団円。
 何故かラスト、長官が上着を脱いで肩にかけた格好いいポーズで登場。長官素敵。
 次回、サブタイトルが凄い。

◆第21話「歩くゴミ」◆ (監督:東條昭平 脚本:荒木憲一)
 トランの嫌がらせにより、マリアが使おうとしていた次元虫がゴミ収集場のぬいぐるみなどと融合し、ゴミジゲンが誕生。 壊れた熊のぬいぐるみを中心に、色々なゴミが合体しているというエグいデザインのゴミジゲンは、次元獣らしからぬ穏やかな性格で、 壊れた物を直す光線を目から放つが、その見た目と悪臭により人々から石を投げつけられて追われる事に。
 情けない怪人をお仕置きに出たマリアだが、ゴミジゲンは通りすがりのアコに助けを求め、更に4人がやってきて撤退。 鞄につけていた鈴に反応するゴミジゲンの姿を見たアコは、それが自分が捨てたぬいぐるみだと気付く。
 「おまえ、もしかして……プータン?」
 「ママ?」
 幼い日のアコの思い出のままに、アコをママと慕ってつきまといを開始するゴミジゲン。逃げるアコだが、 お腹をすかせたゴミジゲンが道に倒れ込んだ事からゴミ収集場で連れて行く事に。
 「こいつぁー、おでれーた! 科学も進歩すると、ゴミも喋るかい」
 ゴミジゲンを受け入れ、アコの売り込みにより時給800円でアルバイトに雇ってしまう収集場のおじさんがおいしい(笑)
 次々とゴミを平らげていくプータンだが、値崩れを避ける為にまだ使える商品を不法投棄していく業者に怒りを燃やし、 ゴミを操って攻撃。しかし、それを逆恨みした業者の男達は、夜になって寝入ったプータンをブルドーザーで襲撃する。
 「ははは、人間の恐ろしさを思い知ったか!」
 社会風刺と絡めつつ、人間の醜さを描くアプローチが直球すぎて凄い(^^;
 「人間が憎いか? 姿が違うというだけで、差別し憎しみ抹殺する。それが人間だ。人間こそ、腐ったゴミなのだ!」
 ブルドーザーに押し潰されてボロボロになり、失意に彷徨うプータンに悪意を吹き込むマリア。 人間への憎悪により顔が凶悪化したゴミジゲンは巨大化し、その目から放つ光線は車をスクラップにするだけではなく、 浴びた人間を一瞬で白骨化させる! というなかなか刺激的な描写。
 おじさんとアコが説得を試みるも、凶悪化したゴミジゲンにもはやその声は届かず、ジェットマシン出撃。 覚悟を決めたアコもマシンに乗り込んでジェットイカロスに合体するが、 思わぬスピードを見せるゴミジゲンはイカロスの攻撃をかわして投げ飛ばし、マシンガンを浴びせるという、 ここまでで最高の強さを見せる。
 逃げ遅れた子供を救いにイカロスを飛び出した青は、子供をかばって瓦礫の下敷きになってしまうが、 ぬいぐるみを抱えた少女の泣き声に、理性を取り戻すプータン。プータンは瓦礫の下から青を救い出すが、直後に、 マリアの攻撃を受けて死亡。怒りの青と戦い、ジェットマンの攻撃を受けたマリアは退くのであった……。
 「あんなに人間らしい奴はいなかったぜ。プータンには、ゴミの中の方がよっぽど住みやすいのかもしれねえな」
 おじさんがゴミ収集場に造った墓標に、アコが思い出の鈴をかけ、ちょっといい話でセンチメンタルに終わるのかと思いきや、 事の元凶といえるプータンをブルドーザー攻撃した業者がトラックから次々とゴミを投げ捨てていき、 アコが「ばかやろおっ!」と叫んで終わり……救いも解決も明確にされず、むしろ苦みを残して閉じるという、 70年代的というか初期『ウルトラ』シリーズを思わせるようなエピソード。
 思えば東條昭平は長く円谷作品に関わっており、あの『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」を監督していたりもするので、 シナリオ時点からなのかわかりませんが、そういった意識があったエピソードなのかもしれません。
 次回、「――そして、果てしなく続く泥まみれの殴り合い」。
 ……身内のな!

◆第22話「爆発する恋」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 3話ほど真面目に地球を守っていたジェットマンですが、またまた井上脚本の季節がやって参りました。
 馴染みのバーでサックスを熱演しながら、香の竜への告白を思い返す凱。何故かそこへやってきて、カウンターでアイスミルクを頼む竜。
 ……嫌がらせ?
 「話があってきた。……香の事だ」
 香が本気で好きなのか、竜は“ジェットマンのリーダー”として、凱に問う。
 「はん、ジェットマンか。おまえの頭の中はそればっかりだ。だが俺は地球の平和よりも、惚れた女の方が大切だ。香の方がずっとな!  これで満足か? 帰んな、ジャズはおまえには似合わねぇ」
 「ジャズはおまえには似合わねぇ」は格好いい台詞。
 いつかどこかで使いたい。
 ――なおバイラムでは、ラディゲがセミマルの変態したサナギを撫でさすってうはうはしていた。
 その頃、香は竜を夕食に招いてあははうふふする妄想にふけっていた。
 …………なんか皆、地球の為に戦っている間にストレスが溜まるんだろうなぁ……。
 凱は電話で香を強引にデートに誘うが、直後に竜からの誘いとバッティング。香は当然のように竜を優先し、 凱との待ち合わせにはアコが代打で参戦。強引に凱をレストランに引っ張り込むと、大量のパフェを次々と平らげていく。
 ストレスが……溜まるお仕事です。
 一方、竜は車に香を乗せてある所へ向かい、はしゃぐ香。
 「今日は、どこに連れてってくれますの?」
 「会わせたい人がいるんだ」
 まさか竜の両親?! と都合良く早合点し、盛り上がりまくる香。
 地球を守る、ストレスです。
 そんな2人が辿り着いたのは、海辺の墓地。
 RIE AOI
 と刻まれた墓石。
 「リエ……俺が愛した、たった1人の女性だった」
 香を前に、かつての最愛の女性の存在を語る竜。
 「今でも俺は忘れられない。リエの声、ちょっとした仕草。……初めてのデートの時、どんな服を、着ていたのか」
 竜はリエとの回想シーンが始まると、古い少女マンガの登場人物のようになります。
 仕様です。
 ストレス……ではなくて、狂気です。
 「リエが死んでも、俺たちはずっと一緒だった。ずっと一緒に――戦ってきた」
 竜はブレスの中に収めたリエの写真を香に見せつけ、走り去る香。
 「凱を、凱を見てやってくれ! あいつは本気でおまえの事を!」
 失意の香は自宅の前で、アコが口を滑らせた事で竜と香のデートを知った凱と鉢合わせ、思わず泣き出してしまう。
 「香……泣くな」
 場面は夜の公園で2人でブランコを漕ぐシーンに変わり、心の隙間にすぐさまつけこもうとしない辺りに、 凱が香に本気になっているという様子が窺えます。
 「ありがとう凱、優しくしてくれて。……私、あなたの事を好きになれば良かったのに。……ごめんなさい」
 「……なるさ……きっと」
 数日後、俺はお前を愛せない何故なら俺とリエの愛は永遠だからそうFOREVERRRRRRRフォーリンラブ!いつだって初恋!! と竜から突き付けられるも、香はジャズコンサートのチケットを手にアタックを続行する。
 「私……決めたんです。リエさんと、戦おうって」
 いつか竜を亡きリエの思い出から解き放ってみせる……強い、 というよりは強烈に面倒くさい女にメガシンカした香、転属不能の職場だけに、 地獄が修羅場すぎます。
 泣き笑いの表情で香は立ち去り、困り果てた竜は、たまたま入ってきた凱に、そのチケットを渡してしまう。コンサート当日、 竜は雷太とアコに稽古をつけ、会場で香と出会った凱は、竜が何をしたかに気付く。
 ――なおバイラムでは、ラディゲがセミマルの変態したサナギにエネルギーを注ぎ込んではぁはぁしていた。
 怒りの凱はチケットを破り捨てると竜の元へ走り、躍りかかる。
 「誰がてめえに仲人なんか頼んだ!? 香を、俺の気持ちを考えた事があんのか! この馬鹿野郎!!」
 一撃食らうも、冷静に回し蹴りを避け、
 「よせ凱、落ち着け!」
 と言いながら、襟を掴んで(衝撃が抜けないようにして)顔面にパンチを浴びせる竜(……癖?)。
 ……居ますね、こういう人(笑)
 竜と凱の喧嘩はヒートアップしていき、泥沼の掴み合いにもつれこむと、竜も途中から本気で反撃。
 竜の立場からすると本当は香を遠ざけたいけれども、地球を守るという建前の為にも個人的な復讐という閉じ込めた本音の為にも、 ジェットマンの維持は竜の至上命題であり、竜自身が、愛の狂気の生み出した自らの信念(と表向き信じている) 「ジェットマンとしてバイラムと戦う」を守る為に香を突き放す事が出来ないという、因果の巡りが凄まじい。
 そして竜は、意識してか無意識にか、その怒りを凱にぶつけている。
 どちらかというと、竜の狂気と凱の身勝手に巻き込まれる側だった香が、ここで竜自身を蝕む毒になる(そしてそれは、 香を戦場に引きずり込んだ竜の因果応報でもある)、という凶悪な展開。
 惚れた腫れたという要素一つを「戦隊としての戦い」と融合する事でよくぞここまで組み上げられるものです。 本当に凄い。
 香が走ってきて2人を止めようとし、それに応えた雷太が割って入るが、凱は雷太も殴り飛ばす。
 「引っ込んでろ! てめえには関係ねえ! 香に惚れていながら、はなっから諦めちまうような腑抜け野郎にはなぁ!」
 「僕の気持ちがわかるもんかぁ!」
 雷太は凱を投げ飛ばし、倒れた凱を殴りつける竜(凱だけ、余分に殴られている気がする)。修羅場はますます泥沼と化していき、 というかこの喧嘩、本当に泥沼(浅い池)の中でやっている、という演出がちょっと狂気。
 「やめて! みんなやめてぇ!」
 アコちゃん(或いは長官)そろそろ、その女、後ろから撃っていいんじゃないかな(笑)
 という視聴者の心の声が届いたのかどうか、背後から5人を強襲するマリア(なお、 喧嘩から一番離れた位置に立っていたアコが最も被害を受けるという、可哀想な扱い)。トランとグレイも参戦し、 目の前の敵には一致団結するジェットマンは揃って変身。
 ……良かった、バイラムと戦闘シーンあったよ。
 グレイは黒を圧倒し、トランも赤と黄を翻弄。最近やられ役が板に付いてきたマリアも今日は絶好調で青と白を叩きのめし、 働きたくない人達の本気に追い詰められるジェットマン。
 「ジェットマン、お前達の最後だ!」
 だがその時、ラディゲがバイラム本拠からマリア達3人を攻撃し、ジェットマンはその隙に撤退する。
 「ジェットマンは俺の物! セミマルの獲物だ! 生まれる! セミマルが! 破壊の――魔王がぁっっ!!」
 裏ミントン伯爵の歓喜の絶叫と共に、サナギを破るセミマルの手……で、つづく。
 次回、内輪揉めが多すぎるので戦隊まるごとリストラ?!

◆第23話「新戦隊登場」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
 「バードガルーダ、発進!」
 荒廃した世界を飛び立つ謎のメカ、という面白い入り。
 その頃スカイキャンプでは、竜だけしかトレーニングに来ず、長官、おかんむり。
 黙々とベンチプレスを続ける竜は、
 (なんか、面倒くさい女に絡まれてるぞ俺……)
 と考え込んでいた。
 凱は女2人をはべらせてデートしていたが、香の事を考えてばかりで袖にされてしまう。
 「つまんない男になったわね、凱」
 「つまらない男か……そうかもしれねえな」
 ウィスキーをぐっと一杯あおる、というまたまたアダルトなシーン。割と空回りの目立つ凱ですが、 香と竜が絡まない所ではモテる描写があって、安心します(笑) 一歩間違えると本当に口だけにしか見えなくなってしまうので、これ、 重要。
 雷太は香の事を振り切ろうとやけ食いし、アコはそれに付き合っていた。
 そして――
 「跪け! 今こそ、魔王誕生の聖なる刻。セミマルの前に跪くのだ!」
 遂にサナギを割り、誕生する魔獣セミマル…………………………………………びみょう(笑)
 数話かけて引っ張り、ラディゲが大袈裟に騒ぐ割には、デザインがいまひとつ格好良さに欠けるセミマルですが、これはまあ、 オーダーとデザイナーの野口竜さんの傾向が合わなかった、と言わざるを得ないか。
 その頃、バイオリンを奏でながら悲劇のヒロインにひたっていた香の元を竜が訪れる。
 「ごめんなさい。トレーニングをさぼってしまって。でも……辛いんです。私のせいで、みんながバラバラに」
 「香……これだけは忘れないでくれ。公私を、混同するな。俺たちは戦士だ。それが全てに優先するんだ」
 この局面で言いに来たのそれかーーー(笑)
 わざわざ香の所に来たので、少しは皆をまとめる努力をするのかと思ったら、脇目も振らずに突き抜けた!
 筋金入りのキチガイ戦士・天堂竜、まあ、よく考えてみると、竜は職業戦士ではあるものの前線の兵隊であり、 決して部隊を率いていたというわけではありません。経験値の差からジェットマンを引っ張っている竜ですが、 実は《リーダーシップ》や《説得》スキルをこれといって持っているわけではなかった、という、思わぬ弱点が浮き彫りに。
 「わかっています! けど」
 「わかってない! 凱も雷太も、一番大切な事を忘れてる! 俺たちは地球の未来を背負っているんだぞ!」
 「何度も同じ事を言わないでください! あなたは強い人、いつも正しい人。でも……でも私達は、機械じゃないんです」
 「香……」
 (違うぞ香! 戦士というのは、“敵を屠る為の機械”になってこそ一人前なんだぁぁぁぁぁぁぁ)
 キチガイっぷりが先に立って私も眩惑されていましたが、竜って、隊長属性ではなくなくむしろ完成された兵隊属性で、 ジェットマンのまとまりが悪い理由の一つが今更ながら見えました。竜は、リーダースキルが足りない。
 長官は長官で、兵士は歯車だと思っている節があるし(笑)
 珍しく香に反論を受ける竜だが、その時、都市上空に出現するバイラムの要塞。
 「行け、セミマル! 全てのものを破壊しろぉ!」
 そして巨大化したセミマルが地上に出現し、暴れ出す。
 セミマルに挑むジェットイカロスだが、クラッシャー(ハンマー)を破壊され、ショットパンチャーは鷲掴みにされて投げ返され、 バードニックセイバーを指の間で受け止められる、という大苦戦。これまでの次元獣とは桁違いの強さを見せるセミマルは、 手刀でバードニックセイバーを叩き折ると、ジェットイカロスの両腕を切断。折ったセイバーの剣先を、イカロスに突き立てようとする!
 「最期だな、ジェットマン!」
 だがその時、突然現れた巨大戦闘機バードガルーダがセミマルを強襲。3人の乗組員が「裏次元からの戦士、 バイラムを憎む者」を名乗ると、冷凍光線ダイヤブリザードによりセミマルを凍結させる。
 て、セミマルーーー?!
 セミマルがこれまでほぼ瞬殺ロボだったジェットイカロスを完封→そのセミマルを無傷で撃破、と、バードガルーダが衝撃の登場。 謎の戦士達はジェットマンに合流し、ガルーダがスカイキャンプの上に止まっているカットが格好いい。
 「共に戦いましょう、バイラムを倒す為に」
 ガルーダを操る3人の戦士の正体は、かつてバイラムに滅ぼされた裏次元の世界の一つからやってきた裏次元戦士、 レイ・ダン・カンナ。戦士としてまた復讐者として、波長が合うのを感じたのか竜とダンはがしっと握手をかわして歓迎ムードになるが、 周囲が和気藹々としていると混ぜっ返したくなるひねくれた男が1人。
 「こいつは全くめでたいぜ。しかしよ、こんだけ戦士が居りゃあ、1人2人居なくなったって、なんて事はねえよな。――俺は降りるぜ」
 凱のリタイア宣言に、
 (なんか、変なとこ来ちゃった……?)
 という顔になる裏次元戦士。……大丈夫、こんなのはまだ、ほんの序の口だから!
 それはともかく、ダイヤブリザードに閉じ込めたセミマルは脱出不可能だから、 その間にジェットイカロスを修理して対バイラム戦線を再構築しようという事になるが、そのセミマルが、氷を割って復活。
 再び出撃した3人は、バードガルーダをロボット形態・ジェットガルーダに変形させて立ち向かうが、 正面からの戦いではセミマルはガルーダを上回る。危機に陥ったガルーダは必殺ガルーダバーストを浴びせてなんとかセミマルを退かせるが、 それにより全エネルギーを失ってしまうのであった。
 鳴り物入りの助っ人兵器はエネルギーを失い、ジェットイカロスは半壊。果たしてジェットマン達は、 魔獣セミマルを倒す事が出来るのか!
 ジェットガルーダは、鳥頭という非常に珍しいロボット。一度見ると忘れられないインパクトがあり、 なかなか面白いデザインです。2号ロボが助っ人と一緒にやってくる、というのは、後の追加戦士→追加ロボ、 という恒例の展開の雛形とも思え、90年前後の戦隊シリーズの試行錯誤が窺えます。

◆第24話「出撃超(スーパー)ロボ」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
 表記上5文字縛りを守る為に、色々やってくるなぁ(笑)
 ジェットマンと裏次元戦士達は、二体の巨大ロボットの修理を急ぐが、いまいち真剣味の足りないダン、そして和を乱す凱。
 「奴には、奴には勝てねぇっ!!」
 直後に喧嘩腰でたしなめる竜に対し、裏次元戦士達のリーダー・レンは、確かにもっともだと、 二体のロボを合わせて新しいパワーを生み出せないか、と新たな提案をする。前回からの流れを考えると、 2人のリーダー格の対比も入っていると見え、なかなか面白いシーン。
 「新しい、パワー……」
 長官が凄く楽しそうなのですが、確かに、好きそうな単語です(笑)
 打倒セミマルの為の改造プロジェクトが盛り上がる中、ダンは怪我したフリをすると、 アコを基地の外へ連れ出してレストランで食事という、凱以上のやる気の無さを見せる。前回、 「自分達の世界の挨拶」と称してアコのスカートめくりを行っていたダンですが、まあ、滅びつつある世界から来たので、 若いメスは貴重です。
 「青い空か……僕たちの裏次元ディメンシアも、こんな風に青かった。バイラムが来る前まではね」
 「ダン……」
 「あっという間だった……あっという間に」
 お気楽な調子から一転、悲しみを漂わせてアコの気を引くダンだが、その時、セミマルが再び出現する。 改造修理を完成したジェットイカロスはセミマルに立ち向かい、遅れてプログラムの入力を完成させたガルーダがその元へ向かおうとするが、 ラディゲの強襲を受け、レイとカンナが次々と殺害されてしまう。
 「ジェットマン! 仲間が待ってるぞ! 地獄でな!」
 うきうきしながらガルーダに乗り込んだラディゲは、ジェットイカロスを攻撃。 セミマルとガルーダに挟まれ大ピンチに陥るジェットイカロスだが、ラディゲの攻撃を受けるも一命を取り留めていたダンが、 青い鳥人に変身。ガルーダに乗り込むと、腹部を貫かれながらも至近距離から火炎放射を浴びせ、ラディゲを退ける事に成功する。
 浮かれる→調子に乗ってしゃしゃり出る→むしろ邪魔、というこの天才的なコンボに、 ラディゲの芸人としての凄まじい才能を見る思いです。
 「みんな、合体……合体を!」
 命がけでガルーダを取り戻したダンの叫びに応え、今、表次元と裏次元、二つの力が一つになる――!
 「「「「「合体、グレートスクラム!!」」」」」
 イカロスとガルーダが右手をクロスさせる、という合体の前振りは、戦隊ロボ史上屈指の格好良さ。
 二つのロボが合わさって誕生したグレートイカロスは、セミマルの体当たりを受け止めると投げ飛ばし、 必殺のバードメーザーでセミマルを打ち破るのであった。
 「馬鹿な……セミマルが……セミマルぅぅぅ」
 ラディゲ、がっくり(笑) そして、笑いものにされる。
 「へへっ……最後は、格好良かった、だろ?」
 「うん、格好良かったよ」
 瀕死のダンの指に、アコはディメンシアでの愛のメッセージだという野の花を巻いてやり、
 「へへ、やったね」
 裏次元の戦士は、その若い生涯を終えるのであった。
 バイラムへの怒りを強くする5人のジェットマン、そして、夕陽を浴びて佇む、シルエットになった二体のロボの姿が、 非常に格好いい名シーン。
 ナレーション――「ジェットイカロスとガルーダが合体した時、無敵のロボ、グレートイカロスが誕生する。それは、 裏次元戦士達の魂が宿る場所、平和の願いの結晶なのだ」
 そして凄い重くされた!(^^;
 ここ数話をかけて引っ張ってきた強敵セミマルを用いての新ロボ登場編。同時に、恋愛していたり、 いっけんお気楽だったりするけれど、打倒バイラムの為に命を賭けているもう一組の戦士達を置く事で、 ジェットマン全体の精神的ステップアップのスプリングボードになっている、というのが巧い。次回――更なる新戦隊登場?!

→〔その5へ続く〕

(2015年7月21日)
(2019年12月16日 改訂)
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