- ◆第7話「竜の結婚!?」◆ (監督:坂本太郎 脚本:井上敏樹)
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突然上京した強引な祖母により、お見合いをする羽目になる竜。凱は無責任に結婚を煽り、香は落ち着かない……
一方バイラムではマリアが、姿を映した人間を異次元空間へ閉じ込めてしまう、カガミジゲンを街へと放っていた。
お見合いにまつわるドタバタを軸に、怪事件があって、変身して倒してロボットでトドメを刺して、とオーソドックスなエピソード。
香の竜への想いが明確になるのと、その事にお見合い相手が香の表情で気付く、というのが今作らしい所か。
鏡の世界に囚われた人々を人質にされて苦戦するジェットマンだが、鏡ジゲンの鏡光線を竜祖母が手鏡で跳ね返した結果、
マリアが鏡の世界に吸い込まれてしまい、細かい事の出来ない鏡ジゲンが中の全員を解放。そこから逆転勝利となり、
初の作戦指揮にして、マリアがとても間抜けな事になりました(笑)
- ◆第8話「笑うダイヤ」◆ (監督:坂本太郎 脚本:荒木憲一)
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龍見グループで行われる、時価20億円のブラッディ・ダイヤのお披露目パーティに出席する香とアコ。
だがマリアがダイヤに次元虫を融合させ、ダイヤの光を浴びた人々は次々とおかしくなって暴れ出してしまう。それは、
血塗られた逸話に彩られたブラッディ・ダイヤの持つ呪いの力を増幅し、人の欲望を剥き出しにする、ダイヤジゲンの力によるものだった。
ダイヤ光線を浴びたアコが凶暴化してしまい、ジェットマンが一時撤退した隙に、
ダイヤジゲンによって街は欲望と混乱のるつぼと化していく……!
「時給700円で、てめえらに愛想笑いの切り売りが出来っかてんだよ!」
沁みるなぁ(笑)
「みんな欲望を剥き出しにして……これが人間の姿なの?!」
「欲望……そうだわ!」
アコを欠き、男3人がダイヤジゲンに苦戦する中、何かを閃いた香は実家へ戻ると爺やにありったけの宝石を買い集めさせる。
地味に3回目の登場となった爺やが大活躍。
「東京中のダイヤを全部買い占めさせたのよ。さあ、みんなてめえにくれてやっから、とっとと目を覚ましやがれ!」
文字通りに、湯水のようにダイヤを浴びせられ、正気に戻るアコ。
……やっぱり人間、自分より狂っているものを見ると、正気に戻るのだなぁ(笑)
劇中では一応、欲を制すには欲、と言っていますが、えー、ブラッディ・ダイヤ20億円分の欲望を、
時価で上回って上書きしたという事でいいのか(^^; 値段の問題だったのか。
ちなみに最初、ビルの上から町中に札束をばらまくのかと思ったのですが、さすがの香もそこまでしませんでした。
ダイヤに苦戦する男達の元に白と青が駆けつけ、華麗なコンビネーションでダイヤを撃破。巨大化したダイヤは、
「ダイヤは火に弱い」と、イカロスハーケンによるファイヤーバードアタックで撃破、と巨大メカを使い分け。
必ずしもロボ戦にこだわらない、というスタイルを見せました。
ここまで、香を気遣い素直にいい娘ポジションだったアコが欲望バーサーカーとなり、それを香が必死に治そうとする事で、
2人の関係を補強。エピソードそのもは特筆するべき事は無いですが、シンプルに人間関係の組み立てが広がって良かったと思います。
なお、龍見グループ総帥役は、シャドームーンの声にして、この年は『特救司令ソルブレイン』で貴公子(笑)・高岡を演じ、
後のキンタロスな寺杣昌紀。
- ◆第9話「泥んこの恋」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:川崎ヒロユキ)
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トランがミシンと次元虫を融合させてファッションジゲンを誕生させる。ファッションジゲンの作り出した服を着た人間は、
正気を失って服に精神を支配された悪人となってしまうのだった。
ファッションジゲンは頭部がミシンながら、下は洒落た衣装、というのはちょっと面白いデザイン。
その頃、子供時代にちょっといい感じだった幼馴染み・サツキと再会する事になった雷太が、浮かれて頭に大量のムースを乗せていた。
セーラー服姿の幼馴染みの写真を大切に持っていて、「さーっちゃん」とか話しかけるという雷太がなかなか危ない。
だが、久々に再会した幼馴染みは、雷太の思い出にあった純朴な少女ではなく、すっかり けばくなって 垢抜けていた。
かつてと全く雰囲気の変わったサツキとのデートに振り回される雷太だが……実はサツキはサツキで、
雷太の前で背伸びをして都会の女を懸命に演じていた、という、文字通りの意味で不器用なカップルのお話。
雷太が気乗りしないデートで原宿を彷徨っている頃、4人はファッションジゲンの生み出した忍者と戦闘。
更に海賊まで登場して竜が雷太を増援に呼ぼうとするが、凱はそれを止める。
「雷太を呼ぼうってんならやめとけ! あいつの場合、デートなんて一生に3回ぐらいしか無さそうだしな!」
人のモテ期は3回!(なお小学生ぐらいの時に一つ消費している模様)
だがその二人は、昼間からバーに入って飲めないお酒を飲んだサツキを雷太がたしなめた事からとうとう決裂。通り雨の中、
走り去ったサツキがバイラムファッションにより女スナイパーへと変えられてしまう。イエローオウルに変身した雷太は、
サツキの銃弾を浴びながらも、泥の中を突撃し、その必死の姿にサツキはファッション洗脳から解放される。
小学生の頃の、田舎の泥んこレースと、イエローオウルの必死の姿を重ねているのですが、雷太の蛙跳びが凄く謎です(笑)
シーンそのものは悪くない筈なのに、どうしても笑える(^^;
そして洗脳から解放されて倒れたサツキがちょっとした崖の上から転がり落ちるのですが、イエローが受け止めるのかと思ったら、
そのまま地面に落ちました、さっちゃん。
いいのか、それでいいのか。
「よく聞けバイラム! 人間を洋服なんかで変える事など出来はしない! なぜなら――人には心があるからだ!」
トランは帰宅し、ファッションジゲンvsジェットマン。ジェットマンの猛攻を受けたファッションは黄の岩石投げ連打を受けて巨大化するも、
ハンマーで一発殴られ、すかさず必殺剣で瞬殺。
尺が無い(笑)
「ジェットマンに会ったら、イエローオウルに伝えてほしいの。助けてくれて、どうもありがとう。
サツキはあなたに……一目惚れしました、ってね」
「……うん、必ず伝えとくよ!」
雷太にそんな言葉を残して田舎へ帰るサツキだが、見送る雷太に向けてドアが閉まってからそっと、
「またね……イエローオウル」
と呟くのであった。
人間は外見ではなく内面の美しさが大事なんだ、というテーマを怪人の特殊能力と繋げて服と心に絡め、
過去の思い出を現在に活かし、オーソドックスな単発エピソードとしては綺麗な作り。
ただこれ、背伸びを諌めて“自分らしさ”を尊重するのではなく、過去の幻想を押しつける雷太が
「今の君は僕の好みじゃないんだよ! この造花女!!」と女の子の努力を全否定する構造なので、
女性からするとどうなんでしょう、とちょっと思う(笑)
結果的に本人達が丸く収まっているから良いといえば良いのですが。
また、話数的に恐らく設定と序盤のプロットを基に書いていて、まだ本編を見ていない可能性も高いと思うので、
制作進行上やむを得ない摺り合わせの不足があったのかとは思われますが、
あれだけ香に狂気を押しつけていた竜が雷太には異常に優しい為、本作全体の流れからすると連動性に欠け、
少々物足りないエピソードになってしまいました。
正しい『ジェットマン』としては、
戦士が幼馴染みの女の子とイチャイチャするなど許されないぃぃぃ!
何故なら俺はリエを失ったカカカカカカカカカカカカカカカァ!
戦士には甘酸っぱいときめきなどいらないのだつまり貴様は泣いたり笑ったりできなくなるまDE、
営巣の掃除をしているがいい! いいか貴様はそこで、一生ウサギ跳びを続けるのだ!! 復唱しろ!
復唱する前と後に、サーをつけろ、この◎×%##*!!
みたいな感じだと思われます。
次回、「カップめん」……やっぱり昔見た時も、ここから次回予告が入ったのか?(^^;
- ◆第10話「カップめん」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:荒川稔久)
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この後、20年以上に渡り、戦隊シリーズを支える事になる荒川稔久の記念すべき戦隊デビュー回。
「一緒に幻の、カップめん食べない? 1983年ものの、名古屋地区限定版、オリンピックラーメン」
いきなり名古屋ネタ来ました。 (※荒川稔久は、出身地である名古屋がらみのネタを入れたがる)
アコの中学の先輩・龍田三夫は現在二浪中のカップめんマニアで、部屋の中にはカップめんコレクションとアコの写真。
印刷ずれのカップめんの蓋をアコちゃんと一緒に見たいなーという、筋金入りの駄目な人だった。
「僕はやっぱり暗いのかな……」
「そんな事はナイジェリア」
その部屋にいきなり現れる、巨大なカップめん。
それはチャルメラの響きと共に降臨する、全てのラーメンの始まりと終わりを司るカップめんの神・ゴッドラーメンであった!
一応、ラディゲの最初の台詞をなぞっている(笑)
「ミーと一緒に、究極のカップラーメンを作ってくれるかな?」
「いいとも!」
こうしてせこいギャグを連発してくる神様に乗せられた先輩は、新たなカップめんを開発。バイラムの後援により完成した新次元ラーメン
「陽気なアコちゃん」は派手な電波ジャックによるCM効果もあり、大ヒットを飛ばすのであった。
トラン「売れてるよ。1分で出来る、カップめん」
ラディゲ「ふん、愚かな。それほどまでに人間どもは、時間と手間が惜しいのか」
うん、裏次元伯爵様は、半日かけてスープとか仕込みそう(笑)
ただどう考えても売れている理由は、「10円だから」だと思います!
勿論、ゴッドラーメンの正体は、バイラムの怪人ヌードルジゲン。
「後は、このチャルメラを吹くだけデストラーデ」
オレステス・デストラーデ
1989−1992年、西武ライオンズで活躍したキューバ出身の元プロ野球選手。
『ジェットマン』放映の前年にあたる1990年シーズンには、〔打率.263 本塁打42 打点106〕という成績を残し、
本塁打と打点の二冠に輝いた。1990−1992年まで、3年連続のパリーグ本塁打王であり、日本プロ野球史上初の、
スイッチヒッターによる本塁打王でもある。秋山幸二・清原和博と共に凶悪クリーンナップを形成し、
森西武黄金時代後期の打線を牽引した。
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アコちゃんラーメンを食べたものは、ヌードルジゲンの吹くチャルメラの響きを聞くと、
ほんのわずかな時間も待てなくなり凶暴化してしまうのだ! と、ちょっぴり風刺的な展開。
街で突然多くの人々が暴れだし、凱が取り押さえた女子大生の胃の中からヌードル状の生命体――生きたラーメンが発見される。
更に基地でアコちゃんラーメンを食べていた雷太が暴れだし、原因がアコちゃんラーメンと判明。
先輩の元へ向かったアコは先輩を始末しようとしていたヌードルジゲンと遭遇し、戦闘に。
なるとブーメランやコーン爆弾など、間抜けな見た目からは予想外の多彩な攻撃を見せるヌードルに苦戦するアコだが、
男を見せた先輩がアコを助け、そうこうしている内にヌードルはお湯切れで苦しみ出す(前半に伏線あり)。
最終的にはお湯を奪われてしまうものの、先輩の奮闘が功を奏し、助けに来る黄色。
……黄色は未だアコちゃんヌードルの影響下でひたすら巻きを要求し、助けに来たというよりも、抜けだして突撃してきたっぽい(笑)
お湯が不足していたヌードルジゲンは自滅して巨大化し、ジェットマシンがカップめんの中に閉じ込められてしまうなどあったものの、
今日もざっくりバードニックセイバーで瞬殺。
かくてトランによる日本ラーメン化計画は失敗に終わり、アコは先輩を少し見直し、先輩は男としてちょっぴり成長するのであった。
序章にあたる1〜6話まで+7話をメインライター井上敏樹が書いて作品の方向性を示した上で、この8・9・10話は、
いわゆるオーソドックスな“戦隊もの”の文法を意識して書いてほしい、というオーダーだったのかと思われますが、その中でも、
ギャグ満載の中にちょっぴり風刺を混ぜるという、古典の雰囲気の強いエピソード
(荒川稔久はもともと上原正三の影響を大きく受けているそうなので、その色が出たのかもしれない)。テンポ良く進んで、
面白かったです。
にしても、お見合い→あわよくば香とお付き合いしたい御曹司→雷太と満更でも無い幼馴染み→アコに片思いの先輩、
と7話以降も色恋が必ず絡んでくるのはさすがに被りすぎた感じですが、これもオーダーあったのだろうか(^^;
ここまで参加した4人の脚本家ですが、
●井上敏樹(当時32歳/1981年『Dr.スランプ』で脚本家デビュー。東映特撮には1984年『どきんちょ!ネムリン』
で初参加し、86年の『超新星フラッシュマン』から連続して戦隊シリーズに参加)
●荒木憲一(1987年『仮面ライダーBLACK』で脚本家デビュー。以後、東映特撮には『同RX』『機動刑事ジバン』
『特警ウインスペクター』に各1〜3話参加)
●川崎ヒロユキ(当時26歳/1988年『魔神英雄伝ワタル』で脚本家デビュー。東映特撮初参加)
●荒川稔久(当時27歳/1986年『ドテラマン』で脚本家デビュー。
東映特撮には『仮面ライダーBLACK』に1話だけ参加して以来)
と、井上敏樹以外の3人はいずれも当時デビュー3〜5年程度の若手であり、
プロデューサー陣が今作にかけた意気込みと覚悟のほどが窺えます(荒木憲一は杉村升の弟子筋なので、
いざという時のフォローも考えた起用だとも思われます)。
次回……何故か予告が無くなった。
- ◆第11話「危険な遊び」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
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バイラムの真打ち登場、ジェットマンの戦いを分析するグレイは、トランから「遊びが足りない」と言われ、
自動販売機に次元虫を融合させ、ジハンキジゲンを誕生させる。トレーニングの休憩中、
そうとは知らずに自販機ジゲンの化けた自販機からジュースを買って飲んでしまったジェットマン達は、突然、性格が豹変。
怠惰な竜、一匹狼の雷太、気弱で寂しがりの凱、ケチで金にいやらしい香、乙女チックなアコ、
と5人がいつもと違う性格に変貌した事で、ジェットマンのチームワークはバラバラに。
立ち上がりのキャラクター造形がしっかりした作品なので、第11話にして性格変化ネタというのがしっかり成立し、
この描写は実に面白くなりました。仲間意識の強いブラックコンドルが怠けるレッドホークを殴り飛ばす、
というのは言ってしまえばセルフパロディなのですが、それがこの段階で成立する、というのは今作の特色がよく出ています。
また、トレーニング中に
凱「困ったもんだぜ、石頭の働きもんは」
アコ「でも、キザな見栄っ張りよりいじゃん?」
凱「うるせえんだよ、脳天気な男女!」
という会話があり、やや他と比べてキャラの薄かった(というかフォロー役として他動的だった)
アコのキャラクターが逆にしっかりするという効果も発生。単純に竜と凱が逆転するのではなく、雷太がまるっきり凱っぽくなる
(不良に憧れる地味キャラポジション)というのも頷ける所。
小田切長官は5人を精密検査し、心の奥底に隠れたごくわずかな性格の一部が、異常にデフォルメされて表に出てきている、
という事を突き止める。ジェットマンを役立たずにした自販機ジゲンは、満を持して街を攻撃。……なぜ、
自販機を次々と爆発させるのか(笑) と思ったら、その後高層ビルも攻撃しましたが。
次元獣が暴れているというのに、肝心の竜は飛行場で昼寝中。小田切長官は竜を立ち直らせようと叱咤し、遂には平手打ち。
「なまけさせて……たまるもんですか」
そして銃を向け……引き金を引く(笑)
あははははははははは!
凄い、凄いよさすが小田切長官!
敵前逃亡は士道不覚悟で銃殺刑です。
戦士の常識です。
長官は被害に遭った街の惨状を見せつける事で戦士の心を取り戻させようと、竜をヘリコプターに押し込み、強制発進。だがそこへ、
自販機ジゲンが突如現れ、残った4人が襲われる。変身した凱が立ち向かうが、雷太はクールを気取り、香は宝石が大事、
アコは心配はするけど自分から動かず、と1人で戦う羽目になったブラックコンドルは追い詰められていく。
引き返してきたヘリコプターから、一時的に正気を取り戻した竜が長官の銃を借りて援護射撃するのですが、
次元獣に結構ダメージを与えています。なお、ヘリを運転中の人は、先程それを、
人間に向けて撃ちました。
「怠ける心を捨てるのよ、竜! 早く行きなさい、さ、早く!」
再びへたれモードになってしまった竜を、長官、ヘリから突き落とす。
命の危機 > 怠けたい
で空中変身した竜は勢いで自販機に空中攻撃を浴びせ、そのダメージにより次元ジュースの効果が切れ、5人は正気に。
ようやく普段の調子を取り戻したジェットマンは戦闘員達を片付けると、自販機を撃破。巨大化した自販機とジェットイカロスの戦闘に。
ジェットイカロスはシールドを初披露するのですが……特に使わず、自販機の吐き出した缶ジュース爆弾をハンマーで打ち返すと、
バードニックセイバーで今回も瞬殺。多分、缶ジュース爆弾でダメージ→シールドで防ぐ→ハンマーで打ち返す→必殺剣、
という流れだったのが、尺の都合でカットされたのかと思います(^^; ホント、時間無い。
「人間の性格って、一つだけじゃなく、色々あるんだよな」
「ま、いいじゃねえか。パターン通りの性格だけじゃなくてよ」
ちょっとメタな事を言いつつ、今回の事件はマウンテンサイクルに埋めてしまい、いい話だった事にしようとする5人(笑)
「長官にも、意外と冷酷で、執念深い所があるみたいだし」
「そうよ、本当の私は、怖いのよー」
いや、隠れてません。
若手の連投が続いた今作ですが、ここで藤井邦夫が登板。
藤井先生は例の如く例のように戦隊の尺では真価を発揮できないので強引かつ滅茶苦茶かつ適当に話を畳むのですが、
今回は結果的に突き抜けて、駄目な方向で面白くなってしまいました(笑)
要するに小田切長官が何故長官かというと、一番狂っているから長官なのである。
キャラクターの性格をデフォルメする事で、作品そのものをデフォルメしてみせるという作りなのですが、その結果として、
一番危ない人が炙り出されました(笑)
で、バイラム一味がジェットマンのトレーニング風景を盗撮している上に喉元に次元虫を放ったりしてしまって、
その気になればすぐに仕留められそうなのですが、「くだらぬ遊びに翻弄されるとは、愚かな奴等だ」と、あくまで“遊び”である、
というバイラムの現状の立ち位置も改めてすっきり。
そんな“遊び”の作戦が割とジェットマンを追い詰めてしまった為、「おまえそろそろ働けよー」とグレイを囲んでいた3人も、
嫌味も言えずにハイかいさーんと、サブタイトルからしっかり繋がっている辺りは藤井邦夫の良い所。
藤井邦夫の良し悪しというか落差がわかりやすく出たエピソードでした。
- ◆第12話「地獄行バス」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
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ゴールデンウィーク――戦士に休息は無いが、たまには飴を与えて士気の保持をはかろう、という事で特別休暇が出されたのか、
「田舎へ行きたい」と言い出した香を、実家へ案内する雷太。隣の香は、竜とハイキングを妄想(笑)
ところが路線バスがトンネルに入ると突如車内の電気が消え、「やめてくれぇ!」という男の悲鳴が響き渡る。
トンネルを出てバスが停車すると、なんと乗客の1人が泡になって溶けていた! とても人間業とは思えない手口の殺人は――
「この中にバイラムの手先が?!」
緊張する車内の様子を、バイラムは今日も盗撮中。
バイラムに、GWは無いのだ!(或いは毎日が日曜日)
「ホワイトスワンにイエローオウル、君たちにたっぷり恐怖を味わわせてあげるよ。君たちの頭で果たして犯人がわかるかな?」
たまたま乗客に居たハンチング帽の老刑事が場の主導権を握り、一行はそのまま警察へ向かう事に。しかし果たして、
刑事は本物なのか? チンピラ風の男、派手めな女、目の泳いでいるサラリーマン風の男、
サングラスにマスクというバス運転手……どことなく乗客達は挙動不審。
「最後の大仕事を片付ける為にこのバスに乗ったんだが、まさかこんな事件に巻き込まれるとはなぁ」
いきなり運ちゃんと渋い会話を始める明日定年という老刑事だが、その時、
チンピラ風の男が派手目の女にナイフを突き付けてバスを降りようとする。香と雷太が鮮やかに男を叩きのめすが、
再びトンネルで車内の電気が消え、トンネルを抜けた時にはチンピラ風の男は泡になって溶けていた――!
乗客同士の疑心暗鬼が募る中、派手めの女がサラリーマン風の男を犯人と名指しするなど、ますます空気の悪くなっていく車内。
……それにしてもみんな、バスの中でぷかぷかと煙草を吹かし、物理的にも空気が悪くなっています(笑)
弱気になって愚痴りだす雷太を励ます香だが、そこへ絡んできた派手めの女、いきなり暗い人生を語り出す。
と、田舎の路線バス(降りたが最後、人里までの移動手段が徒歩しかない)を巧みに閉鎖空間として利用しつつ、
戦隊というよりは2時間ドラマノリのボールを投げ込んでくる間合いが絶妙(笑)
「生きる事に疲れちゃったの……くたくたに疲れちゃったの。でももう自殺する必要なんてないわ。この中の誰かが、
きっと私を殺してくれる。はははは、ははははは……」
「くさい芝居しやがって。自分が犯人のくせによぉ!」
ところが今度は、運転手が突然バスを止めて逃走。その正体は、6年前から老刑事の追っていた強盗殺人犯だったのだ。
「こいつはバイラムに魂を売ったんだ!」
「ち、違う。俺はバイラムじゃない」
堂々宣戦布告している事を受けて、一般人が普通にバイラムの名前を口にして警戒しているのは世界観のリアリティの肉付けとして面白い所。
一応ジェットマンの正体は隠しているようで、その辺りのバランスは厳密に考えるとややこしい事になりそうではありますが(^^;
刑事は運転手を逮捕するが、前方には再びトンネルが見えていた……。
「トンネルだわ! これで私も死ねるわ!」
運転手はハンドルに手錠で繋がれ、仕方なく運転を再開。乗客はそれぞれ手を繋いでトンネルに入るが、
次に消失したのは……なんと運転手。運転手、犯罪者だからって、手繋ぎの枠に入れなくて可哀想……。
ところが運転手が居ないのに、ハンドルやシフトレバーが勝手に動いて走るバス……そう、
犯人はバスジゲン。香達は最初から、犯人の体内に居たのである!
バス内部に無数の触手が湧き出し、バスの暴走に巻き込まれそうになって文句を言いにきた対向車の運転手が無残に溶かされてしまうという、
なかなか酷い展開。
「ようやく犯人がわかったようだね! やれ! バスジゲン! みんな消せ!」
うんまあほとんど、自分からバラしましたけどね(笑)
バスジゲンは巨大化し、思い切り爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ一般市民達。
「死にたくない……死にたくない!」
落石からホワイトスワンにかばわれながら、死の恐怖に直面して怯える派手目の女。
イエローが生き残りの民間人3人を避難させている間、バスの攻撃でピンチに陥るホワイトだったが、
連絡を受けた残りのメンバーが救援に駆けつけ、ジェットイカロスに合体(ここで、初の挿入歌仕様)。
スケーターのように機敏に動くバスは触手攻撃でイカロスにダメージを与えるが、イカロスはジェットダガーを投げつけて反撃すると、
怯んだ所をバードニックセイバーで斬殺。
今作にしては、長い戦闘でした。
「香さん、私もう一度、やりなおしてみるわ!」
……ここで気付いたけど、この派手めの女、ルー(『超新星フラッシュマン』)か?
ルーの本編での扱いを思い出すと、ちょっと顔が引きつるなぁ(^^;
「その意気ですわ。人生、七転び八起きですもの」
「ありがとう、バイバイ、ばいばーい」
なお鹿鳴館香は、かつて東京中のダイヤを買い占めた経験を持つ資産家の令嬢であり、一転びの基準が、
「朝飲んだ紅茶が好みでなかった」レベルだと思われるので、人の善意を簡単に鵜呑みにしてはいけません(多分これ、意図的)。
レギュラーメンバーの出番を大胆にカットし、竜・凱・アコをほとんど出さない代わりにゲストキャラを大幅に動員。
それぞれの不審さを繰り返し描く事で視聴者を困惑させつつ、巧みな台詞で人間関係を描写(女が自殺志願を告白した後の、
サラリーマン男の反応とか、実にいい)、ちょっとした飛び道具で小さなドラマを肉付けし、その上でヒーロー物と融合させる、
というザ・井上敏樹とでもいったエピソードで、こういうシナリオを書かせると本当に巧い。
また、一歩間違えると滑りかねない内容を、要点を押さえた演出でしっかりとサスペンスの空気を出す東條監督は、さすがお見事。
脚本、演出の巧さが光る1本でした。
→〔その3へ続く〕
(2015年4月22日)
(2019年12月16日 改訂)
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