- ◆第1話「戦士を探せ」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
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199X年――地球は、衛星軌道上にある地球防衛軍スカイフォースのアースシップに24時間見守られる事により、
様々な災害や犯罪から守られていた。
スカイフォースの隊員であり、名コンビにして恋人である天童竜と藍リエの活躍見せから、作戦終了後、いきなりほっぺにちゅー、
というなかなか大胆な恋人演出。
そんなバカップルを、 ハイミス 妙齢の婦人である小田切長官が見ていた。
「僻地任務に飛ばしてやりたい」
「Jプロジェクト要員として、推薦したい」
Jプロジェクト――それは、スカイフォースが開発したバードニックウェーブの力により、人間を超人(鳥人)へと変え、
地球を守る更なる力として特殊チームを編成するという計画。
「人間を超えるって、何か妙なものになっちゃうんですか?」
「一切の心配は無用。我々はただ、君たちの勇気に期待する」
――詳しく説明する気は無い。
服従か退職か、選べるのはどちらかだ。
なおこの後、バードニックウェーブを浴びた竜が激しく藻掻き苦しむのですが、地球を守る為だから、シカタナイ。
だがそのJプロジェクト開始の日、地球に侵略者バイラムの魔手が迫る。
「跪け。我らは、あらゆるものの始まりと終わりを支配するもの。すなわち、神!」
空に偉い人の演説が映るというよくあるアレですが、コーヒーカップの中や洗面所の鏡にも映る他、田舎の家のふすまにも映るけど、
縁側の老人はガン無視、というちょっとしたお遊びあり。
「お前達の俗悪なる文明を破壊し、我がバイラムは、新しい理想郷を築くだろう」
裏次元を支配し、第三次元に辿り着いたバイラムは、手始めにアースシップを破壊。混乱の中でリエは宇宙空間へ吸い出されてしまい、
セットされていた残りのバードニックウェーブは地球へと照射される。錯乱する竜をボディブローでノックダウンした小田切長官は、
竜と共に何とか基地を脱出し、密かに地球上に建設されていたジェットマンの秘密基地・スカイキャンプへと逃げ込む。
「気が付いた? ジェットマンの為に、密かに用意された、秘密基地よ」
目の前で恋人を助けられずに失ったばかりの男に、にこやかに秘密基地の説明を始める長官が、切れ味抜群。
「リエ…………リエを、リエを探しにいかなければ! 行かせて下さいっ、リエを探しに行かせてくださぁい!」
詰め寄る竜に、長官は平手打ち一閃。
「まだ目が覚めていないようね。彼女は、死んだのよ! バイラムに、殺されたの!」
「りえぇぇぇ!!」
「泣きなさい……二度と、泣かない為に」
バードニックウェーブを浴びた以上、もはや貴様は、笑ったり泣いたりする事は許されない、的な。
竜と長官はバイラムと戦う為、バードニックウェーブを浴びた事で鳥人と化した者達を探し、良家のお嬢様・鹿鳴館香と、
農家の青年・大石雷太を見つけ出す。日常からの脱出に憧れる香は二つ返事でジェットマンを引き受けるが、
農業にこだわり争いを嫌う雷太はそれを拒否。ひとまず香に雷太の説得を任せ、残り2人のメンバーを探す事にする竜だが、
バイラムの雑魚兵が雷太の畑に出現し、助けに戻る事に。
飛行メカを見せ、竜が単独で初の変身。紆余曲折あって香と雷太も変身するものの、戦闘経験が無い為、全く役立たず。
竜の変身したレッドホークはなんとかバイラムの次元虫を退けるが、未だメンバーの揃わないジェットマンの前途は、
辛く厳しい予感に包まれるのであった……。
本編16分程度という厳しい時間的制約の中、初回で5人揃えるのを諦める事で、ある程度の余裕を持って展開。旧来のシリーズでは、
変身した途端にスーツの力で戦えてしまったりする所を、戦士として訓練を受けていない白と黄は変身しても全く戦えない、
というのも面白く、マンネリ打破の為のパターン破りを目指す中で、幾つか大胆なアプローチを行っています。
適性により候補を選抜(ないし拉致)するのではなく、諸事情で戦士になる事を宿命づけられたメンバーを集める事から始めるというのは
『デンジマン』『バイオマン』の系譜ですが、その上で、混成メンバーを引っ張るリーダーである赤(だけは選抜軍人)に、
正義感を超える復讐心を与えているというのが、今見ても今作の面白いところ。
海のものとも山のものともつかないメンバーを集めて、強大な侵略者に5人(+1)で立ち向かうという
狂気の闘争の原動力として、「復讐」という動機付けが非常に効いています。
そしてその復讐の炎を煽りまくる小田切長官が、超怖い。
第1話にして主人公(赤)が、ばっちり狂わされているという、物凄い構造(※小田切長官に、ではなく、劇作として)。
最後はバイラムの幹部が顔見せ登場し、マリアのアップで終わる、というのも面白い引き。
今見てもビックリするほど良く出来ており、戦隊の第1話、というくくりで見てもかなりレベルが高い。
なお先に書いておくと、戦隊シリーズの長官系ポジションの中でも、小田切長官はトップクラスに好きな1人なので、
小田切長官に関する言及は大体、愛だと思って下さい。
- ◆第2話「第三の戦士」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:井上敏樹)
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闇カジノでイカサマを仕掛けつつ、女をナンパする結城凱。
「気易く触るんじゃねえ。俺は納豆と男が大嫌いなんだ」
飛ばしてるなぁ……(笑)
カジノの関係者を殴り飛ばした所、パンチが凄い威力で本人も驚き……逃走。
そしてまた、同じくバードニックウェーブを浴びた女子高生・早坂アコも、自分の中にとてつもない力を感じていた。
走り高跳びでとんでもない記録を出したアコを見つけ、そこへ乗り付ける香の車。
一方、バーでサックスを吹いていた凱は、知らず力を込めてサックスの部品を破壊してしまった自分に動揺する。
(まただ……あの時、あの不思議な光を浴びて以来…………いったいどうなっちまったんだ、俺の体は)
そこへ、
「探したぞ、君は、戦士だ」
キチガイ現る。
第1話に引き続いてのメンバー探しで描かれるのは、知らず超人と化してしまい、力に翻弄される一般人の姿、
と新しい方向性を模索しつつも古典を踏襲しているのは、戦隊シリーズらしいバランス感覚でしょうか。
煙草の煙と酒の匂いのする所にしか登場しない凱は、飛ばしまくりですが(笑)
そんな凱をスカウトする竜と長官だが、アウトローの凱は全身体育会系の優等生・竜とそりが合わない。
「しかしよぉ、いっそのこと人間なんざ滅んだ方がいいんじゃねえのか。公害問題に人種差別。確かに人類って愚かなもんだ」
「おまえ本気で言ってるのか?! 命の尊さをなんだと思ってるんだ!」
「おお、いい子ぶりっこしやがって、おけつがかゆいぜえ」
群れるのが嫌いという凱は、ジェットマンへの参加を明確に拒否。
「おまえには何もわかってない。地球が危ないんだぞ。個人的な感情なんて問題じゃないだろ!」
「ま、勝手にやりな。あばよ」
「このぉ……!」
凱は竜に頭突きを浴びせ、怒りの竜も反撃して掴み合いの取っ組み合いの殴り合いに。
いっけんオーソドックスな正義のヒーローそのものという竜の台詞ですが、実はその竜が、
恋人を失った復讐の為に命がけの戦いに民間人を戦闘要員として巻き込もうと奔走しているという、
凄まじく歪つな構造。
しかも本人はそれに気付かず、純粋な正義の為に行動していると信じ込んでいると思われるのが、実に恐ろしい。
更に、そんな竜の対局に、正義のヒーローとはかけ離れて見える凱を置く事で、いかにも竜が正しい事を言っているように強調し、
視聴者の目からも竜の狂気を覆い隠すという、念の入れよう。
どだい正義の味方など狂っていなければやっていられないという視点があるのか、正統派ヒーローの竜の方こそ狂っていて、
アンチヒーローの凱の方が明らかに人間としてまとも(安っぽい人類批判を口にさせるのは、むしろ“普通さ”の表現として確信犯的)
に描かれているという、まったくもって邪悪な作品です。
一方、香と雷太の勧誘を受けたアコは、
「で、幾らくれんの?」
時給を交渉していた。
「わかりました」
平然と受け入れた香、小切手にさらっと10,000,000と記入すると、アコの腕にブレスを装着。
「はい、これであなたも、ジェットマンよ」
まさに、悪魔の傭兵契約(笑)
竜と凱は本気バトルに突入し、生身で車を破壊する主人公(笑) ここは2人の本気のぶつかり合いを描くと同時に、
職業戦士である竜の方が上回るものの、一般市民ながら凱がそれなりの腕っ節を見せるという点で、重要なシーン。
そこへ次元虫の襲撃を受けた香達から連絡が入り、凱を蹴り飛ばした竜は救援へ。勝負はまだ終わっていない、
と凱はその後をバイクで追う。飛行メカに乗り込んだ竜は、長官の戦闘機に次元虫が同化して変身した次元獣・ファイタージゲンに襲われ、
特撮ドッグファイト。ファイタージゲンに捕まるも竜に助けられた凱は、空中で半強制的に変身。
香達3人も変身してようやく5人揃ったジェットマンは、成り行きで主題歌をバックに戦うが、まだ揃い踏みの名乗りは無し。
赤がファイタージゲンを単独で倒した後、銃と剣のギミックを見せ、黒が嫌がるなどあったものの、
一斉射撃で次元虫を何とか撃破するのであった。
黒がいちいち、爆発の度に凄い飛び方(笑)
マリア「なかなかやるわね。人間にしては」
トラン「ねえ、最初に奴等をやっつけた者が、僕らのボスになるっていうのは、どうかな」
グレイ「フッ、なるほど、それも一興」
ラディゲ「ふふふふふふ、はははははははは!!」
その光景を見つめていたバイラム4幹部は、ジェットマンを標的としてゲームを開始する……。
戦い終わり、アコは香に小切手を返し、無償で戦う事を宣言。一つになる4人の心だが、凱はブレスを捨てて走り去る。
「俺は諦めないぞ。お前はジェットマンだ。俺たちの仲間なんだ」
その背中を、キチガイが熱いまなざしで見つめるのであった……。
次回予告が無くて、次回予告大好き人間としては不満だけど、何故かしら。
- ◆第3話「五つの力!」◆ (監督:新井清 脚本:井上敏樹)
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トランが蛇口に次元虫を融合させ、水道管を伸ばして動き回る蛇口が人を呑み込むと、水の代わりに赤い血が流れ出る、
となかなかホラーな入り。
未だ4人揃わないジェットマンは、小田切長官が素人3人の戦闘訓練として稽古を付け、ビールビン割りを披露。
そしてバードニックウェーブを受けた鳥人達を、軽々と投げ飛ばす(笑)
その頃、最後の戦士は婦警をナンパしていた。袖にされると故意に信号無視をしてミニパトに追いかけさせると、実に最低(笑)
「やっと口を利いてくれたな、感激もんだ」
喜んで切符を切られようとする凱だが、そこへ割り込んでくる、キチガイ。
「デートなら、俺がしてやるぜ」
のっけから、駄目人間とキチガイの困ったやり取りが展開しましたが、直後のバイクでのチェイスシーンは、
倉庫街の狭いコンテナの間を擦り抜けていくなど、なかなかの迫力。
「滅ぶんなら滅びゃあいいさ。ま、俺としては、それまでに充分人生を楽しみたいね」
説得を拒否して走り去る凱を、熱いまなざしで見つめる竜。
その頃スカイキャンプにて、シャワー上がりでバスローブ姿の小田切長官がシャワーヘッドの攻撃を受けてカミソリで撃退するという、
謎のボーナスイベントが発生していた。
単体としてあまり意味のないシーンなので、これをきっかけに長官がバイラムの新たな攻撃に気付くというくだりが尺の都合でカットされた結果、
サービスシーンだけ残ったとしか思えません(笑)
タイヤを引っ張って土手を登る、という古典的なスポ根特訓を行っていた香達だが、
香とアコは途中で自分のタイヤをこっそり雷太のタイヤに結びつけるというズル。アコが率先してやりそうなズルを、
香から行っている、というのはちょっと面白いところ。その3人も蛇口に襲われ、ジャグチジゲンが姿を現す。
一方、ハードボイルドにビリヤードをたしなんでいた凱を追う、赤いキチガイ。
「牛乳、あつーいのください」
カウンターに座って大人のバーの雰囲気を台無しにする竜に、背後からボールを次々と打ち込む凱だが、
竜はそれを軽々と受け止めてみせ、雌雄を決するべく2人はオフロードコースでバイクレースを開始。
だがレースの最中に観戦していた子供達が蛇口に襲われ、竜はそれを助けに向かう。
「たく、救いようのねえ野郎だ」
勝負の勝ちを宣言して走り去ろうとする凱だが蛇口ジゲンに襲われ、そこを竜に助けられる。
凱は他人の為に戦う竜を嘲って今度こそ走り去り、蛇口ジゲンと戦闘員の攻撃に窮地に陥る竜を助けに来る、香達3人。
ジープに乗ってやってくる戦隊を見るのも随分と久々で、懐かしい。
だが、5人揃う事で真価を発揮するジェットマンは4人では能力を発揮しきれず、バイラムの攻撃に押されていく。その時、
戻ってきた凱がバイクで蛇口ジゲンにダイレクトアタック。ヘルメットを外す時に、頭をばさっとやって、にやっと笑うのが格好いい。
「必ず、必ず、来てくれると思ってたんだ」
凱からすると、自分と全くタイプの違う男に二度も命を助けられ、それをこのまま見殺しにしてはただの負け犬、人生楽しむ為にも、
ここが男のプライドの瀬戸際だったという所でしょうか。そういう本音の部分は表に出さず、表向きはキチガイに根負けした形で、
再びブレスをはめる凱。
「変身するんだ! 俺たちは、鳥人戦隊、ジェットマンだ!」
「「「「「クロス・チェンジャー!」」」」
ここで5人が揃い踏み、まずは5人揃ったジェットマンの力見せという事で、5人は連続攻撃で蛇口ジゲンを叩きのめすと、
最後は一斉射撃・バードボンバーで撃破。戦いは終わり、凱は竜の握手を無視して、香とアコに挨拶(笑)
香はともかくアコが凱の守備範囲とも思えないので、これは照れ隠しの要素もありそうです。そこへ、4幹部が幻影で顔見せに現れる。
「おめでとう諸君、我らバイラム4幹部、心よりお祝い申し上げる」
ラディゲはイメージ映像ながらも、突っかかる凱に攻撃を浴びせ、高笑い。
「これからも諸君らの健闘に期待する。諸君らが強ければ強いほど、我々のゲームは楽しくなるのだ」
かくして、地球(第三次元)を巡り、ジェットマンとバイラムの死闘が始まるのであった――。
バイラムは初動で地球防衛の要を破壊すると、余裕を見せてジェットマンを倒す事を目標とした余興に走る、
と強大な敵組織が大規模な侵攻をしてこない事の理由付けはかなり鮮やか。
80年代中盤からの戦隊の特徴ですが、とにかく尺が短いのでポンポン話が進む中に、井上敏樹がテクニカルにキャラクター描写を詰め込み、
00年代以降的なドラマ性と、80年代的なペース配分が奇妙な融合を果たしており、独特のリズムを生み出すに至っているのが、今見ても面白い。
- ◆第4話「戦う花嫁」◆ (監督:新井清 脚本:井上敏樹)
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5人揃ったジェットマンは、飛行メカ・ジェットマシンの訓練中。
“新しいヒーロー”を目指しながらも。ただ奇をてらうのではなく、この辺りのツボを押さえて構成されているのが、
今作の優れた点の一つです。
機械が嫌いで飛行メカを巧く扱えない香は、特訓どころかジェットマシンを扱う事すら拒否し、しかも全く悪びれないという、
お嬢様の我が儘ぶりを発揮。
「わかっていただけるかしら。私、嫌な物は嫌なんですの」
せっかく凱を加えたと思ったら新たに生じたメンバーの問題に、怒髪天を突く短気なキチガイ。
「いつまでもお嬢様気分じゃ駄目なんだよ!」
だがその一言が、香の逆鱗に触れてしまう。
「お嬢様でわるうございました。私、帰らせていただきます。ごきげんよう」
「香さん!」
「ほっとけ! 香も戦士ならいずれわかる筈だ」
つい最近までごく普通の一般市民だった相手に対して、戦士にクラスチェンジした以上は、
パッシブスキル《全てを捨てて戦う覚悟》を習得しないと許さないと迫る、激しすぎるキチガイのパワーーーーーーーッ。
本人は「信頼」と言っていますが、“信”は“信”でも、それは「狂信」です。
実家に戻った香は、許嫁の北大路総一郎から結婚を申し込まれる。スカイキャンプを飛び出してはきたものの心はジェットマンにある香は、
正義のヒーロー中なので結婚できないと断るが、痛い冗談だと思われ、スルーを受ける。だがそんな2人の前に、
ラディゲが次元虫と信号を融合させたロードジゲンが現れ、連絡を受けた4人が助けに。
「おまえは戦士なんだぞ香!」
自分が業務時間内に彼女とイチャイチャしていた事は棚の一番奥の方に埋め、
幼い頃から許嫁が居たという香の育ちに対して理不尽に文句をつける竜なぜなら俺はリエを失ったからぁぁぁぁぁぁぁ、
戦士に婚約者が居るなんて許されなァァァァァァァァァァァァァ▲◎×$#□!
バードニックウェーブを浴びた事の方がつい最近の事故なのですが、そんな理屈が通じるようでは、正義の戦士は務まりません。
「なんとか言え香! バイラムと戦う為には、個人的な感情は捨てなければならないんだっ。
いつまでもお嬢様気分じゃ戦士とはいえない!」
お約束の『フルメタル・ジャケット』ネタを引用する隙もなく、
泣いたり笑ったりしなくなる事を要求する竜なぜなら俺はリエを失ったからぁぁぁァぁぁぁッ、
戦士に好き嫌いなんて許されなァァァゥゥィィィィィ■#□%%¥!!
「どうせ私はお嬢様です。我が儘で、戦士失格です」
発言の主旨よりも、再びの「お嬢様」呼ばわりに、こじれる香。ここは香が1人の時に、
ジェットマンとして戦う気持ちがある事を見せているのが巧い所。
「そうだ、今のままでは失格だ」
香の引っかかりなど気にせず、ごく普通に返すキチガイがとにかく怖い。
「私、決めましたわ。総一郎様と、結婚します」
こじれた香は結婚を宣言するが、そこにバイラム出現の報が入り、4人はそちらへ。
「香、俺たちは信じてる。おまえを信じて、待っている」
自分の戦士としての信念を他人に強要し、信頼を押しつけるキチガイ。とにかく今回、竜のキチガイぶりがフィーバー大回転。
バイラムが街で暴れる中、あれよあれよと結婚式となるのですが、勢いでそのまま教会向かったのか(笑) 誓いの言葉と、
竜達の戦闘シーンが交互に映され、決断を悩む香をせかす許嫁は、ついつい力強く、庶民を虫けら扱いしてしまう。
自分が生まれ育った世界の虚構と婚約者の醜さを知った香は笑いだし、誰かの命を守る為に戦う戦士となる事を誓う。
「じゃっかあしい! きったねえ手でさわるんじゃねえよこのスカタン!」
選民思想にまみれたお坊ちゃんと、いきなりのヤンキー言葉と、なんだか物凄く、井上敏樹を感じる所です(笑)
花嫁衣装で戦いの場に急ぐ香は、通りすがりのバイクを奪って疾走し、4人の危機に駆けつける。
「鳥人戦隊・ジェットマン!」
4話にして初の、揃い名乗りが入り、5人は戦闘員を蹴散らすが、追い詰めたロードジゲンが巨大化。
ジェットマシンで次々と攻撃を仕掛けていくがやはり白はうまくマシンを使えず、墜落。
赤と黒が連係攻撃で助けに入ってロードジゲンは撤退するが、コックピットで白は気絶したままなのであった……で続く。
いっけん、未熟な戦士未満が決意を得て戦士として目覚めていく、という流れなのですが、
その実態はキチガイによる汚染の拡大(笑)
いかにも旧来のスタンダードなヒーロー然として描かれ、作品中において“正しい事を言っている”筈の竜ですが、
明らかに第1話において竜の気が狂っているので、その後の全てが、狂気による感染拡大、という恐ろしい構造。
第1話前半の竜とリエの描写が、恋人同士の悲劇を強調するだけでなく、
愛する者を失っておかしくなっている竜の変化を克明に炙り出す為に置かれている、というのが実に計算された構成です。
そして戦いの動力源となっている復讐を、“地球と人々の命を守る為の正義の戦い”に置き換える事で、
竜は自分の抱える悲しみと憎悪から自己防衛を行っているので、その戦場の狂気が天堂竜という人間を保つ為に欠かせなくなっている。
酷い(誉めてます)。
なお小田切長官はどうなのか、という話になりますと、戦隊の長官/博士ポジションが狂気を孕んでいるというのはごく一般的なので、
当然、最初から向こう側の人なのです。
死して屍拾う者なし!
- ◆第5話「俺に惚れろ」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
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そういえば今作は、東條昭平がローテ3番目に出てきて、豪華なのでした。
ジェットマシン墜落時の精神的ショックで、体は何ともないのに脚が動かなくなってしまう香。
「バカみたい。こんな事になったのも、私が弱虫で、お嬢様で……竜の言う通り、戦士として、失格ですわね」
連鎖していく狂気……!
そんな香を慰め励まし、細かく描写している時間が無いのもありますが、アコと雷太は素直にいい人ポジションに。
「脚が動かなくても、腕は使えます。お願い竜! 私だって、私だって、本当の戦士になりたいんです!」
そしていい人達を巻き込みながら、狂気は加速度的に拡大していくのであった。
その頃バイラムでは、ロードジゲンが体力回復した暁にはバイラムの支配権は私の物、とラディゲがほくそ笑んでいた。
「ジェットマン倒れし時、お前達は私の足下に跪くのだ」
器が小さくていいなぁ(笑)
「わからんのかマリア。私に従うがいい。それがおまえの、運命なのだ」
そして、職場内ナンパ。
それを横目に黙って葉巻に火をつけるグレイ、渋い。
古めかしいレコードプレーヤーでクラシックを聴きながら銃を磨くグレイ、渋い……!
ジェットマンはジェットマシンで、イカロスハーケン形態への合体訓練を継続するが、やはり脱落してしまう香。
必死に脚を動かせるようになろうとする香、それを物陰から見守る仲間達だが、見ていられないと手を差し伸べた凱が、
竜と揉める事に。
第5話にして、車椅子へ向かって地面を這うヒロイン、というなかなか強烈な絵面。
「おまえが本当の戦士なら、歩ける筈だ!」
そしてキチガイは段々、宗教みたいになっていた。
そこへラディゲに跪くのは真っ平御免、とジェットマンを急襲するグレイ。凱は車椅子の香を連れて逃げ、
残り3人も何とかグレイを振り切るが、今度は念動力で煉瓦を操るトランの襲撃を受ける。と、次々と幹部が登場し、
スピーディに能力見せが展開。3人は変身するもトランの多彩な超能力に翻弄され、凱と香にはグレイが迫っていた……!
追い詰められた凱はバイクに乗り込むと、グレイへ向けて突っ込み、バイクだけを体当たりして爆発させるという攻撃を敢行。
vsトランでは赤がカースタントを行い、『ジェットマン』序盤、割と見応えのある生アクションが続きます。
「凱、どうしていつも竜に突っかかるの?」
「奴のいいこぶりっこが気に食わねぇ。ただそんだけの事だ。だが、あんたは違う」
グレイの追撃から身を潜める凱、香の手をすりすりして、思いっきり平手打ちを受ける(笑)
「あんた……まさか竜の奴を。惚れるんなら俺に惚れろ! お似合いだぜ、俺たちなら」
昔から、凱は香のどこが良かったのかというのがピンと来ていなかったのですが、改めて見るとこの段階では、
竜に対する対抗意識、というのがまずありきか。一応、一連の特訓〜車椅子のシーンで、ただのお嬢様ではない香の強さ気高さ、
みたいなものは見せていますが。後まあ、竜や香っていうのは、凱にとっての“キラキラ”なのだろうなぁ。
ロードジゲンが充電完了して暴れだし、その混乱に乗じてそれぞれの窮地を脱した5人は合流。だがその前に、
バイラム4幹部最後の1人マリアが姿を見せる。マリアの電磁鞭攻撃を受けた竜は、
至近距離でその顔を見て死んだ筈のリエと瓜二つだと気付いて困惑。
巨大ロードジゲン出現で発生した地割れに呑み込まれそうになった香の手を掴むも、背後からマリアに首を絞められる竜。
先の人間関係を知った上で見ると、凄いシーン(笑)
竜を助けなければ、という強い思いでトラウマを乗り越えた香は、崖を蹴って飛び上がると昔の女に見事な上段蹴りを炸裂させ、
5人は変身。
「レッドホーク!」「ブラックコンドル!」「イエローオウル!」「ホワイトスワン!」「ブルースワロー!」
「「「「「鳥人戦隊・ジェットマン!」」」」」
とここで初の、完全名乗り。ジェットマンはマリアの呼び出した雑魚戦闘員を蹴散らすと、ジェットマシンを召喚。
戦闘になると即座に気の合う赤と黒は巨大ロードジゲンに連携攻撃を浴びせ、戦士として一つの壁を乗り越えた白も遂に変形シークエンスに成功。
5体のジェットマシンは大型戦闘機イカロスハーケンに合体すると、凄くストレートに科学忍法火の鳥な「ジェットフェニックス」
でロードジゲンを撃破する。
イカロスハーケンへの合体から必殺技は、内部のG表現など、スピード感あって秀逸な演出。
「おめでとう香。どうやら君も、本当の戦士になれたようだな」
ハッピーバースデー とぅーゆー♪ うぇるかむ とぅー まっどねす!
朗らかに通じ合う竜と香の様子になにか面白くなさそうながらも、ちゃんと綺麗に畳んだハンカチを返す凱(笑)
「ジェっっっトマン……あまり私を、本気にさせるな」
そしてバイラムでは、怒りに口元を歪めるラディゲの真の姿?が、回転するレコードプレイヤーの盤面に映るのだった――。
- ◆第6話「怒れロボ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
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生徒会長(竜)とクラス委員長(香)のカップルにイライラとする不良(凱)の図。
前回イカロスハーケンへの合体を成功させたジェットマンは、今回はロボット形態への合体訓練、と順を追って展開。
本編の尺は短いものの、近年の作品ほど見せなくてはいけないギミックのノルマが厳しくないので、のんびりといえばのんびりです。
「いいか。これだけは言っておく。あんたはいずれ俺を愛するようになる。絶対にな。そん時が来るまで、デートはお預けだ」
香委員長の「もー、結城くんは本当にしょうがないんだから。体育祭の為にみんなで頑張ってるのよ? そうだ、
気分転換にちょっと映画にでも行こう?」的な誘いを断った凱は、恋の宣戦布告をしつつ、手近のウェイトレスをナンパ(笑)
デートに行くなら家に帰って着替えたいと言うウェイトレスを送っていくが、女の住むマンションは、
次元虫の融合したハウスジゲンと化していた!
デート前の着替えを待っている筈なのに、部屋の中に入り込んでいる凱、ナンパ力高い(笑)
体内の住人を次々と消化していくハウスジゲンの触手に襲われた凱は仲間を呼び、またも竜に助けられる羽目に。
「我ながら情けねえぜ。おまえに助けられるとはね」
「何度でも助けてやるさ。おまえは俺たちの仲間だ」
だがその竜が、脱出中にラディゲによって壁の中の異空間に連れ去られてしまう。ハウスジゲンはその正体を現して暴れだし、
やむなく4人はジェットマシンを召喚。
「大丈夫、オートコントロールでも合体は出来るわ」
あれ?
冒頭の訓練は何だったのか……という話になりますが、
いざとなればオートでも出来る合体を敢えて訓練させる事で5人のコンビネーションを高めようという、小田切長官の深謀遠慮です。
竜不在のまま、オートコントロールのサポートで変形合体して誕生する巨大ロボット・ジェットイカロスだが、
ハウスジゲンに一方的に叩きのめされる。凱がどてっぱらにミサイルを撃ち込もうとして、中に竜が居るからと止められるのは、
『ガッチャマン』ネタでしょうか(笑)
(※今作のコンセプトデザインにおいて参考にされたとおぼしい『科学忍者隊ガッチャマン』では、
事あるごとにコンドルのジョーが「バードミサイルをぶち込んでやる!」とスイッチを押そうとしては、大鷲のケンに止められる)
凱は合体を一旦解除するとブラックコンドルに変身し、ハウスジゲンの中へ。
怪物の本性を現したラディゲとの一騎打ちで苦戦していたレッドホークを助け出し、今度こそ、全員が変身しての変形合体。
5人揃って本領を発揮したジェットイカロスはかなり機敏な動きでの格闘戦から、薙刀による攻撃。後先わかりませんが、
ロボットの武装に薙刀というのは長官が女性という事のイメージもあるのでしょうか。基本モーションは、長官が組んでいそうですし。
追い打ちのロケットパンチでハウスジゲンを弱らせると、最後は必殺剣・バードニックセイバーにより、
見事に巨大な敵を撃破するのであった。
最後は、ジェットイカロスに乾杯、で大団円。シャンパングラスの中身が白いのは、ミルク飲んでるのか、竜……。
一方バイラムでは、赤と黒のWガントレットビームを受けてよろよろ帰って来たラディゲが、他の3人に馬鹿にされるのであった(笑)
基本、1話完結の形を取りつつも、バイラム侵攻〜5人のジェットマンが揃うまでの1−3話、
ジェットイカロスと三角関係が完成するまでの4−6話、の2編からなる連続ものという構造。
アコと雷太は若干割を食っていますが、尺の都合もあり、まずは竜−凱−香の関係をメインに描く、というばっさりとした手法が潔く、
綺麗にはまりました。
ただこの6話単独で言うと、「竜とラディゲの一騎打ちによる因縁作り」、「色々あるけど凱が竜を助ける」
という要素はしっかり入っているのですが、「巨大ロボの初運用が変身前の4人」というのは、ちょっと奇をてらいすぎた感じ。
起動しても一方的にやられるばかりでしたし、そこは素直に、クライマックス大活躍だけでも良かったような。
全体的にバタバタとした作りになってしまいました。
ここまでが第1章、という事で次回――予告がないからわかりません(^^; 長らく個人的に謎だった事の一つに、
私の脳内で『ジェットマン』=「カップめん」(確かそういうサブタイトルの回がある)という式が成立している、
というのがあったのですが、もしかして、「カップめん」の辺りから予告が入るのかなー。いや、
単に衝撃的なサブタイトルなだけだったかもですけど。
→〔その2へ続く〕
(2015年4月22日)
(2019年12月16日 改訂)
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