■『ジャッカー電撃隊』感想まとめ5■


“どこかに平和があるならば
いつかは花も咲くだろう”



ダイヤジャック    スペードエース    クローバーキング    ハートクイン


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ジャッカー電撃隊』 感想の、まとめ5(25〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ6〕


◆第25話「勝利か?死か?! 鬼将軍と機械化軍団」◆ (監督:田口勝彦 脚本:上原正三)
 「それいけー! 突撃ー! 殺せー!」
 強襲! アリンガム将軍!!
 科学特捜隊の基地がクライムの攻撃を受け、救援に向かったジャッカーだが待ち伏せを受けて巨大な蟻地獄に飲み込まれてしまう。
 君達すっかり、ヒロインみたいだな!
 「卑怯だぞ。小細工するとは」
 脱出不可能な蟻地獄の底でアリンガム将軍とクライムの部隊に銃撃を浴びせられたジャッカーは、各自のマシンに乗り込むと、 座席のスイッチをぽちっとな。
 「スカイジェット!」
 ……え(笑)
 「よく見ろアリンガム将軍。ジャッカーのマシンは普通の車とちょっとばかり性能が違うんだ!」
 …………今まで、飛べれば脱出できた窮地が色々あったので、最近新たに付けた小細工だと思いたい。
 「ははははは、ははははは」
 ジャッカーはアリンガム将軍率いる陸戦部隊と正面から交戦し、何故か馬鹿笑いしながら雑魚を蹴散らすジャック。 アリンガムは再び蟻地獄を作り出すもエースに反撃され、アトム撃ちを右目に受けて退却すると、 シャインからお叱りと処刑宣告が下される。ところがアイアンクローが間に入って処刑を請け負い、社長は帰宅。
 潔く自害しようとする将軍を止めるなど、アイアンクローがこれまでと違う態度を見せ、 前回ラストに鳴り物入りで呼び出した腹心だからなのか、と思ったら……
 「最後の出撃だ、ゆけ!!」
 ……何か、作戦とか与えるわけではないのか。
 ナレーション「アリンガム将軍の最後の出撃。ジャッカーを倒さない限り、生きて、帰れない出撃なのだ」
 前回ラストの引きと予告の煽りから、立場の悪くなってきたアイアンクローが送り込んできた最強の刺客・アリンガム将軍の圧倒的な力に追い詰められるジャッカー!  だがその時、ビッグワンがぴゅーっと飛んできてその窮地を救う! みたいな感じかと想像していたら、やたらにめまぐるしい展開で、 全く思いもかけない方向へ(笑)
 本部を出て、沈む夕陽にスペードエースへの復讐を誓ったアリンガム将軍は、 とりあえず自分のアジトに戻り作戦室にこもって打倒ジャッカーの策を練り始める。
 将軍は割と詳細なジャッカーの調査ファイルをめくり、桜井五郎は子供好き、東の趣味はモダンジャズ、など、 次々と明るみになるジャッカーの追加設定!
 ……先日、桜井はキャラが薄すぎるでの、せめてこういう設定でも付けておけば良かったのになぁ……と書いた途端にこの展開で、 少々動揺を隠せません(笑)
 カレンの「お洒落」は唯一ここまでの描写と繋がりがある所ですが、25話にもなって、物語の都合全開の設定が怪人から言及される、 というのはなかなか厳しい(^^; 東のジャズ好きはキャラクターからはズレていませんが、むしろ東の場合、 野球とかカードとか他に設定があるのに、どうしてそれを使わないのか、という。
 なお、クライム諜報班の興味が薄かったのか、大地の詳細はスキップされました。
 正攻法ではジャッカーに勝てないと判断したアリンガムは、美容院でパーマ中のカレン、レコード屋で試聴中の東を罠にはめ、 次々と身柄を押さえ、ジャッカーを分断していく……と今回この、 力負けを悟った怪人が周到な罠でジャッカーの戦力を削っていくというプロット自体は面白いのですが、全体的にやたらテンポが悪くて、 プロットが上手く物語になっていません。
 ここに来て今作初参加(『秘密戦隊ゴレンジャー』など演出経験あり)の監督という事でリズムが合わなかった可能性もありますが、 そもそもアリンガムがどれだけジャッカーを罠にはめても最後に白い規格外が控えている為に危機感が煽られない、 その番場は何故かジャッカーのピンチを放置気味、などどうにも番場の存在がシナリオの流れから浮いてしまっており、 それこそビッグワン登場前に作っていたプロットに番場を強引に合成したのではないか、と疑いたくなってしまいます(^^;
 前回はまだしも番場の存在が活きる展開になっていたのに比べ、今回は完全に番場の存在が物語を殺すと同時に、 番場もシナリオの中で死んでしまっています。
 東の救援信号でおびき出されてキングも捕まり、スカイエースも損傷。「スカイエースが駄目なら、ジャックタンクがあるじゃないか」 と番場に背中を蹴られた桜井は、強化カプセルをタンクに詰め込んで単身突撃する羽目になるが、 アリンガムの卑劣な策略によって怪我をした少年を病院へ運ぼうとする途中、待ち伏せを受けてしまう。
 病院へ向かう途中の道が倒れた木でふさがっている → 罠かもしれないので後ろの部屋に入って強化カプセルで変身 → 一度運転席に戻って同乗中の親子にスペードエースである事を披露 → 外に出て障害物をどかす → そこへ出てくるアリンガム
 と、変身に関わる今作の問題点はあるにしても、ビックリするほどのテンポの悪さ(^^;
 エースは蟻地獄&トラバサミの罠にはまり、「子供好きのおまえの事だ……」と追加設定を強調するアリンガムだが、 寸前まで足の骨折でうんうん唸っていた筈の少年が、エースの危機を見て脳内麻薬が出まくったのかジャックタンクを動かしてしまい、 エースの指示で押したボタンにより、哀れタンクのマジックハンドで殴り飛ばされるアリンガム。
 少年ゲスト活躍ノルマのシーンなのですが、むしろここは、子供の為にアリンガムに組み付く勇姿を見せていたお父さんが、 ジャックタンクで将軍を轢く、とかやってくれれば、流れも自然な上に面白かったのに。
 ようやくビッグワンが飛んできて親子を回収し、エースは逃げたアリンガムを追って敵アジトへ突入すると囚われの3人を救出。 アリンガムが腹いせに3人をいたぶっているシーンで、無言でぐっとアリンガムをにらみつける東のヤクザモードが格好いい。
 Mゲージが、腹に、溜まってきただろぅぅぅ!
 スペースの都合でカプセルを一つしか積めなかった為、恐らく更衣室待ちみたいな状態で変身したジャッカーは、 Mパワー全開で反撃の揃い踏み。きゅいん・きゅいん・きゅいん、という効果音で5回ぐらいエースにズームアップを繰り返すので、 どんな格好いい台詞で逆襲スタートするのかと思ったら、「覚悟しろ!」だけでした(笑)
 4対1でも善戦するアリンガムであったが、響く合図の声と共に本日も問答無用のビッグボンバーが炸裂し、 無残な燃え滓となるのであった……。
 今回から、〔「ジャッカー必殺武器、ビッグ・ボンバー!」 → 怪人に穴が空く → 怪人が宙に吹っ飛ぶ → ビッグワンを真ん中に逆三角形に並ぶジャッカー → 「ビッグ・ワン!」「「「「ジャッカー!」」」」 → 怪人爆発〕、 とコバックの締めを継承する形で、ビッグボンバーの演出が強化。
 ……まあ、「ビィッッグ・ボンバー!」の叫びが響いた瞬間に、時間がすっ飛ばされる台無し仕様には全く変化は無いんですが(笑)
 そして、
 ナレーション「スペードエースの、絶体絶命のピンチを救ったのは、怪我をした、ヒロシ少年であった。桜井の人間を愛する心が、 鬼将軍を破ったのである」
 何だかいい話だったみたいにまとめられてしまうのだった。
 2クール目の「女性隊員と少年ゲストに役目を与える縛り」と、前々回からの番組乗っ取り「ビッグ・ワン!」 を悪魔合体させたレシピを元に初参加の監督が調理した結果、ところどころ生煮えのスパゲティがそばつゆに入って花瓶で出てきた、 みたいなどこから食べればいいのか(そもそも食べ物なのか……)わからない、という得体の知れない創作料理のような姿に(^^;  もはやレシピが悪いのかシェフが悪いのか、店の経営方針が悪いのかわかりません。
 なお、女性隊員の衣装がちょっとお洒落なてかてか革ジャケットに変更されたのですが、 9号と10号のどちらか1人が超棒読みで辛い。
 次回、敵のデザインにまで押し寄せる路線変更の波。

◆第26話「インベーダーか!? 謎の宇宙海賊船」◆ (監督:田口勝彦 脚本:上原正三)
 見所は、輸送していた核弾頭を奪われる科学特捜隊。

 日本国内で何をしているのだ貴方たち。

 ……まあ、メンバーの1人は歩く原子炉ですが!
 ある夜、巨大な海賊船が街の上空に出現して話題となり、スカイエースでそれを捜索する桜井とカレン。
 「どこに消えたたんだ、宇宙海賊船め」
 「本当にUFOだったのかしら。何かの間違いじゃない」
 今回に限らず様々な作品でままある展開なのですが、空飛ぶ海賊船なる奇天烈な物が出てきて、 どうして真っ先にクライムを疑わないのか(^^;
 宇宙人と誤認して混乱が起こるという筋書きなら、宇宙人と誤解するに足る説得力をしっかり描いてほしい所です。
 更にこの後、最新型のロケットエンジンを宇宙海賊を名乗るキャプテンゴーストに奪われ、「ロケットエンジンを奪ったのは、 宇宙船のエンジンに使う為では」と、海賊船で宇宙を航行してくる技術を持った種族が最新型とはいえ地球人のロケットエンジンを奪うという発想がおかしすぎる追い打ち。
 まあこれはホント、色々な形でままある展開(本来明らかに疑うべき対象が特に理由もなく他の対象に取って代わられ、 知力の下がった登場人物達がそのまま明後日の方向に走っていってしまい余計な問題が発生する)で、 油断していると00年代以降の作品でもやらかしますが。
 ところで、2年前にはアクマ族が地上の人間をさらうのに用い(『アクマイザ−3』)、 翌年には本当に宇宙を飛ぶ事になりますが(『銀河大戦』)、東映の中で流行っていたのか、空飛ぶ帆船。
 その頃、天体観測が趣味で、たまたま望遠鏡で宇宙海賊船を撮影していたの玉三郎の甥っ子の身辺に、怪しい影がちらついていた。
 少年ゲストを玉三郎の親戚にする事で、玉三郎の出番増量キャンペーンなのですが、 「甥っ子の頼みを聞いてジャッカーに話を持ち込む」なら良かったのに、「甥っ子の発言に全く取り合わない」という役目の為、 ただただ鬱陶しさだけが増し、ひたすらぐだぐだに。徹頭徹尾コメディリリーフとして事件解決の役に立ててはいけないというこだわりがあったのかもしれませんが、 出番を増やしたのに出てくる度に好感度が下がるという、大暴投。
 少年ゲストの方は、友達と3人で学校に忍び込み、人体標本ホラー演出と、ここに来て一段とわかりやすい方向へシフト。
 一方、何を考えていたのかロケットエンジンと同じルートで輸送していた核弾頭がまたもキャプテンゴーストに奪われ、 「これってクライムの仕業のような」とようやく気付くジャッカー。
 甥っ子達の失踪事件について聞いたジャッカーは、桜井とカレンが学校近くの工事現場の地下に秘密基地を発見し、 クライムと自称宇宙海賊の繋がりが判明。クライムは立体映像による宇宙海賊船でジャッカーの目を逸らし(甥っ子が狙われたのは、 撮影した写真の解析からそれを悟られないようにする為)、その間に最新型ロケットエンジン+核弾頭で作り出した、 核搭載・地底ロケッターをジャッカー基地に地下から直接打ち込もうという、恐るべき計画を進行させていたのだった!
 「つまり、立体映像を仕組み、我々の目を宇宙に向けさせた!」
 ここにもう少し説得力があれば話の筋は通ったのですが、そもそも「向くな(笑)」という展開だったのが残念(^^;
 「さあ、キャプテンゴーストぉ! ジャッカーと子供達をロケッターにセットして、基地にぶち込んでやれぇ……!!」
 特に反応は無いのですが、モニターに現れたアイアンクローとジャッカーは初顔合わせ? ……特に反応は無いのですが。
 桜井・カレン・小学生3人、は鉄鎖でまとめてロケットの後尾に繋がれ、発射した途端に小学生達は原子の塵、 桜井がいつまで保つかわからないけど途中で核が誘爆するのではないか、という凶悪な絵面で、 いよいよジャッカー基地に向けて発射されようとする地底核ミサイル。
 ――だがその時、クライム戦闘員の1人が突如として、周囲の戦闘員達を叩きのめす!
 「何者?!」
 「ははははは」
 覆面を取って姿を見せたのは誰あろう、ジャッカー電撃隊行動隊長・番場壮吉!  桜井達が鉄の鎖に繋がれた姿にMゲージが充填された番場は正体を現すと、ステッキで鎖を切断して部下と小学生を助け、 元主人公を背景に真相の種明かしという好き放題。
 なお番場は、何らかの超人的な作用により、痛めつけられる部下と同調してMゲージを溜められる仕様と思われます。あくまでも、 嗜虐ではなく、被虐趣味。
 工事現場でのバトルで構成員を蹴散らすジャッカーだが、キャプテンゴースト分身の術に苦戦し、 連続アトム撃ちでも分身を撃破する事が出来ない。
 「いったいどれが本物だ……!?」
 ――「ビィッッグ・ボンバー!」
 「ビッグボンバーだ」

 切り替え早くて、酷すぎる(笑)

 呼ばれて飛び出たビッグワンは登場しただけで分身を撃破し、ビッグ・ボンバー。こうして事件は解決し、 ジャッカーは救出した子供達と固い握手をかわすのであった。
 秘密を知ってしまった小学生に悪の組織の魔手が迫り、怪しい用務員など学校ホラー風味の演出、という、 ビッグワン登場以前/以後に関わらず、これまでの『ジャッカー』で最もスタンダードに子供向けに寄せた作りで、 半年経過して全くの新番組を見せられている感覚が更に加速。方向性が明確になった分、前回ほどの混沌や困惑はありませんでしたが、 心の整理が追いつきません(笑)
 良かった探しをすると、途中で流れる、ジャズアレンジ風味の主題歌インストは格好良かったです。
 次回、またも囚われるジャッカー。
 そして、クロコダイル総統登場。既に肩書きがアイアンクローより偉そうなのですが、 すっかり統一感の無くなってきたクライムの明日はどっちだ?!

◆第27話「独裁者の野望!! 砕け!死の収容所」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 庭でバドミントンを楽しむ幸せそうな家族に、突如襲いかかるクライム。実は彼らは科学特捜隊技術庁の藤田長官とその家族であり、 バドミントンのラケットを振り回す長官の奮闘むなしく、4人は一家まとめて誘拐されてしまう。
 小太り・口髭・黒縁眼鏡で、如何にものんびりとした中年男性の藤田長官がラケットを武器に抵抗するのが、 科学特捜隊の魂を感じさせてなかなか格好いい。
 ナレーション「だが、この日の誘拐は、ほんの始まりにすぎなかった」
 クロコダグル総統(見た目ワニで、公式配信のあらすじ紹介(※誤字脱字多し)も「クロコダイル」となっていますが、劇中の台詞及び、 戦隊怪人デザイン大鑑『百化繚乱』を見る限り、これが正確な模様)の指揮の下、次々と誘拐されていく科学特捜隊の関係者達。 それを追う東・大地・カレンも、逆に捕まってしまう…………のは、さすがに囚われた人々の居場所を突き止める作戦であった。
 クライムの施設に運ばれていくと、なぜか肉体労働にかり出されている偉い人たち。
 「まるで強制収容所だ……」
 ……いや、他に色々と使い道があると思うのですが、どうしてクライムは、捕らえた人間を働かせるのが好きなんだ(笑)
 「ハイル・クロコダグル!」
 「余は、総統閣下の生まれ変わりである」
 いきなり危ない発言を剛速球で放り込んでくるクロコダグル総統。兜に刻まれているのはハーケンクロイツで言い訳きかない…… と思ったら、よく見ると「卍」で、仏教関係者なのか。
 何か一応配慮があったのだろうか、と思ったら、この後に出てくる司令室の背後には、 思いっきりハーケンクロイツの旗が飾られており、何をしたいのかよくわかりません(笑)
 むしろ、お寺関係から怒られそうな勢い。
 ワニ総統はアウシュビッツになぞらえた収容所を造って科学特捜隊関係者を皆殺しにしようとし、 潜入組からの通信によりスカイエースで出撃する桜井だが、超長距離砲に行く手を阻まれ、あっさり退却してしまう。
 「よし、作戦の練り直しだ」
 って、相手を無駄に刺激だけして、何も考えてなさすぎて辛い(涙)
 桜井が全く役に立たなかった為、内部のメンバーは地下道を掘って大脱走作戦を開始。 一部メンバーは塀の突破をはかるが高圧電流と銃撃で無残に死亡してしまう。
 脱獄ネタのお約束に、ショッキングシーンで残酷さを強調しているのですが、科学特捜隊の実働メンバーがお馬鹿すぎて辛い(涙)
 せめてガス室を破壊する事で処刑の延期をもくろんだ桜井は、単身潜入するとガス室に爆弾を仕掛ける事に成功するが、 外側から閉じ込められてしまう。
 「うわーはっははは、君が引っかかるのを待っていたんだよ、桜井五郎くん」
 地下トンネルを掘り進んでいた東と大地も総統に先回りされて捕まってしまい、 4人まとめて処刑されそうになるジャッカー(ここ5話で3度目)。
 「失敗した、すまん」
 「へっ、こっちも失敗したよ」
 こんな所だけ微妙にハードボイルドの香りを残す桜井と東だったが、その時、高らかな軍楽の響きと共にジープに乗ってやってくる、 ちょび髭の男(に扮したご存じ番場壮吉)。
 「おおお! 夢にまで見た総統閣下!」
 アウシュビッツという単語まで出した上で、遂に変装で登場してしまいましたが、さすがに、 ワニと構成員の唱和する「ハイル・○○」の所が音声入っていないのは、最初から伏せたのか、後で消されたのか。
 ……まあ、宮内洋の変装が、コスプレとしても物真似としても全く成立していないので(一応、甲高い早口ですが)、 平行世界の全然別の人、という言い訳は通用しない事もないのかもしれません。
 特撮のナチスネタというと『仮面ライダーX』(1974)のヒトデヒットラーが有名ですが、この1977年は他にも、 『快傑ズバット』16−17話にナチスジャガー率いるナチス連合会、 『大鉄人17』にナチスドイツの幻の超兵器であるグスタフ砲を搭載した大砲ロボット(ブレイン党そのものも、 ナチスモチーフだったり)が登場しており、悪役のモチーフやパロディのネタとしては、むしろ気軽に使いやすい時代だったのかな、 とは。探すと前後の作品で、他にも色々ありそうですし。
 そういう点で、パロディとしての鮮度が落ちて露出が減る事で、タブー感が増していく、という時間の流れはあるのかなと思ってみたり (パロディ内容の妥当性はともかく)。
 ガス室では生ぬるい、と超長距離砲(これも元ネタは80cm列車砲でしょうか)の標的にされる4人だが、 番場総統が持ち込んできた特殊弾を詰めると、超長距離砲が、大爆発。
 「あなたはいったい何者?!」
 「ふふはははは、ジャッカー電撃隊行動隊長・番場壮吉。――よろしく」
 と、ジャッカーの奮闘は全て水泡に帰し、番場がおいしい所を全部さらっていくという、今回もスーパー好き放題。
 (この構成自体は、多羅尾伴内シリーズを踏まえているのかとは思われますが)
 これまで必殺コンボの前振りだった電撃キックを跳ね返すクロコダグル総統だが、 事象を改変して標的を死にいたらしめるビッグ・ボンバーの前には敵ではなく、あえなく爆死。勝利を喜ぶジャッカー達の前に、 紅い輝きと共に怒りのシャインが姿を見せる。
 「クライムの総支配者、シャインだ。地球はまもなく、我がクライムのものとなる」
 「なんだと?」
 「ジャッカー諸君、健闘を祈る」
 巨大なシルエットを浮かび上がらせ、姿を消すシャイン。
 「クライムの支配者は、宇宙人だったのね」
 「ああ。さっそく宇宙に警戒の目を向けねば」
 「来るなら来い。我々がいつでも相手になってやる!」
 …………え? あれ?
 前回、宇宙に目を逸らされてまんまと騙されたぜ! という話だった直後に、 「敵は宇宙人だったんだ!」って2話続けて騙されている気しかしないのですが、大丈夫かジャッカー。 そしてカレンは何を根拠にシャインを宇宙人と断言したのか(^^;
 別にシャインが宇宙人でも良いのですが、「宇宙人だと思ったらクライムでした」というエピソードの直後に 「そもそもクライムは宇宙人の組織でした」を明かさなくても良かったような……(笑)
 ところで、前回高笑いしていたアイアンクローが今回お休みなのですが、 週と週の間にリストラされてしまったのではいかと不安になってきます。突如現れ、全てを台無しにしていく白い異次元・ビッグワン!  果たしてクライムは、この最強の敵を前に底力を見せる事が出来るのか?!

◆第28話「ぼくの秘密! ポケットの中の宇宙怪物」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 「クライムの総支配者は、シャインと名乗る、宇宙人であった!」
 ナレーション、断定。
 ジャッカーは宇宙からの侵略に対抗する為、映像を分析するだけで対象の正体を判別できるベムチェイサー計画を推進。 だがそれを阻止しようと、シャインの送り込んだ怪人が宇宙研究所へと潜入、開発チームが皆殺しにされてしまう。
 「宇宙の刺客・テンタクルス入道だ」
 敵も完全に宇宙怪物というカテゴリに変更され、戦隊に続いて、敵組織も再編されてしまうという、阿鼻叫喚。なお、 アリンガム将軍以降、怪人が胸部に変なプレートを付けているのは共通しているのですが……アリンガムも実は宇宙怪物だったのか。
 桜井に追われるタコ入道は、飼い犬を探す少年イサムを脅すと、少年に持たせた水晶玉に小型化して身を隠す。
 「どうやら君とは、いい友達になれそうだ」
 タコは運動音痴の少年に並外れた身体能力を与える事で、隠れ場所でもあるエネルギーカプセルを持っているように丸め込むのですが、 最初に思いっきり「話したら殺すぞ」と脅かしている為、怪人に騙された子供が巻き込まれるパターンが、成立していません(^^;
 タコの足跡が少年を見た場所で突然消えていた事から少年を尾行していた桜井達は、 少年が突然運動神経抜群になったのを目撃してますます疑いを強めると、ごく軽やかに家宅侵入。
 小学生相手でも全く躊躇なく疑惑の目を向け、侵入した室内で、飼い犬と一緒に写った写真を見て「本当に犬が大好きなんだなー」 と朗らかに笑う配線のキレ具合が、実にジャッカー(笑)
 居なくなった犬がタコに殺された事を知った少年は逃げ出して桜井に真相を伝え、「イサムくんに、 一役買ってもらわねば」と小学生をあっさり囮に使う番場壮吉。ベムチェイサー完成、の偽の報道で研究所におびき出されたタコは、 番場に撃退されると、自分の得意フィールドで雌雄を決そうと戦場を移動。
 「海は俺のふるさとだ! ここまで来れば俺のものだ! さあ来い!」
 の先にはジャッカーが待ち構えており、進退窮まったタコは突然、えらいやっちゃ・えらいやっちゃ・よいよいよい、 とタコ踊りならぬ宇宙タコ勝利の舞を踊り始め、「正義の力を受けてみろ!」と面倒くさいので殴りかかるジャッカー。
 台詞も成り行きもギャグもひたすら意味不明で、前半だったら、スタッフの頭がおかしくなったのかと心配になる展開(^^;
 今作における解体と迷走と墜落が、悲しいほどに凝縮されています。
 「よし、たこつぼ作戦だ!」
 「お、たこつぼだ、一休みだ!」
 ジャッカーが用意したたこつぼに、何故か小さくなって入り込む構成員(その後、力強く踏みつぶされました)。……構成員も、 宇宙人に変わったのか。
 タコの墨をかけられて異常に苦しむジャッカーは更に触手攻撃で追い詰められるが、例のヤツが発動。 飛んできたビッグワンは触手を切り裂くとエネルギーカプセルを破壊し、ビィッグ・ボンバー。
 「セット1!」「セット2!」「セット3!」「行くぞコンバイン――セェット・オン!」
 砲台組み上げ時の台詞が増えましたが、事象をねじ曲げる問答無用な破壊兵器である事には特に変わりありません。 タコ入道はビッグ爆殺され、ジャッカーは宇宙からの脅威を退けるのであった……が、実はベムチェイサー計画は頓挫してしまったので、 一応シャインは今回の目的を果たしていたりするのだった。
 ここ数話で急速に消滅しつつあった悪の組織クライムの特色がとうとう木っ端微塵に粉砕されるという非常事態。 クライムが真の姿を現した! で強烈なインパクトや特徴があればいいのですが、 これといって大きな変化がないまま怪人が宇宙怪物に変わった事になっているだけなので、物語の面白さに全く繋がっておらず、 何もかもがどろどろに溶け去っていきつつあります(^^;
 ――次回、最後の希望アイアンクローは、クライム崩壊を食い止める事が出来るのか?!

◆第29話「行くぞ七変化! 鉄の爪対ビッグワン」◆ (監督:山田稔 脚本:上原正三)
 3話ぶりに登場するや、南無三道宿敵無念強力生命復活(多分)、 という謎の呪文を唱え続けるアイアンクロー。すると、儀式の祭壇から、新たな怪人が起き上がる。
 「われ生命を得たり……」
 「カマキリ大酋長は、私の念力波、だけで戦う事が出来るのだぁ! 動力回路をセッティングしろぉ!」
 アリンガム将軍の従兄弟みたいな見た目のカマキリ大酋長は、復活怪人のような描写で立ち上がりましたが、 いきなり動力回路を内蔵され、しかしアイアンクローの念力だけで動くと主張されており、宇宙怪物なのかロボットなのか、 はたまたアイアンクローの傀儡なのか、いきなりもう、よくわからない導入(笑)
 バイクにまたがったカマキリ大酋長は、部下のアパッチ軍団と共に国際科学特捜隊の港湾部の基地を襲撃し、 たまたま警護に来て居合わせた桜井とカレンは、隊員に突き刺さる槍を目にする。
 「槍だ……! それもアパッチが、宣戦布告に使っていた槍だ」
 デザイン上、全く酋長の要素の無いカマキリ、強引に理由をねじこまれる。
 派手なバイクアクションで基地へ突入してきたアパッチ軍団(見た目はいつものクライム戦闘員)は基地を爆破。 その退路にジャッカーが立ちふさがり、名乗りまではしないが、高いところでの揃い踏みはする、という変則パターン。
 いつもより3割増しでアクロバットに跳ね回るアパッチ軍団に蹴り飛ばされるなどあったものの、 連続攻撃をカマキリに浴びせるジャッカーだったが、倒れたカマキリは復活して逃亡。敵は、不死身の怪人なのか……?
 続けてバイク部隊を率いて国際科学特捜隊の輸送部隊を襲撃するカマキリだが、それは、番場の用意した囮作戦だった。 特に説明もなく敵を囮に引っかけて、マシンで四方を囲んで十字砲火とか、 どんなにギャグが増えてもジャッカーは魂がクール。
 戦闘員を火力で殲滅したジャッカーは、残ったカマキリにいきなりビッグ・ボンバー!
 だが、カマキリは事象兵器であるビッグ・ボンバーを受けてもなお立ち上がる……! と今回ここまで、 変則かつスピーディーな展開で、なかなか面白い。
 アイアンクローが放つ念力に気付いた番場はその後を追い、沼で蛇を捕っていた男に「石川五右衛門のような頭の男を見なかったか」 と問うが(あれはやはり、髪だったのか)、その男はアイアンクローの変装であり、不意打ちを受けてしまう。しばらく、 ただの小言上司では無かった格闘技の冴えを見せるアイアンクローと番場が激闘を見せ、 ジャッカーそっちのけで、面白いゾ(笑)
 戦いの末、番場は跳び蹴りで崖から落とされるが……まあ、ゲージ蓄積の為の手段です。
 番場を退けたアイアンクローは、ホテルの一室で作戦会議。
 …………2話ほど姿を見なかったのは、本部、追い出されたのか。
 ここでカマキリの動力回路を修理するというシーンが挟まり、要するに、念力波の受信装置のようなものなのでしょうか。
 だがホテルの近辺に、いつの間にかアイアンクローに取り付けていた発信器の電波を追い、 何のタメもなく平然と復活した番場が姿を見せ、アイアンクローは完璧な変装術で唐突に女装(さすがに、女優さんを起用)すると、 ホテルのボーイに扮してやってきた番場をまんまとやり過ごす。
 女に目をつけた番場はいつもの格好でわざとらしく女をナンパするがフられ、今度はタクシー運転手に扮して女を山寺へと運ぶ。 寺の門をくぐる時、何故か運転手にウインクを飛ばすアイアンクロー(の化けた女)、という好敵手同士の変に通じ合ったやり取りが展開し、 ジャッカー4人の存在価値が光速でアンドロメダ星雲の彼方に置き去りにされていきます。
 特に突っ込んだ言及は無いのですが、番場がアイアンクローを見て「鉄の爪……」と反応しており、 有名な犯罪者であるアイアンクローについて知っていた(或いは過去にぶつかり合った事がある)という所でしょうか。
 一方、カマキリ大酋長は手はず通りに国際科学特捜隊の本部を急襲し、さっくり暗殺されてしまう長官。 急ぎ救援へ向かったジャッカーは、テルミンぽい妙に盛り上がらないBGMで再びカマキリと激突。 そんなカマキリに山伏姿で念力を送るアイアンクローに近づく、虚無僧姿の番場壮吉……打って変わって、 軽やかな三味線の合方に乗せて、突然始まる、時代劇な立ち回り。
 丁々発止の斬り合いの末、アイアンクローは身を翻して姿を消すが、番場の目に止まったのは、墓に手を合わせる和服の老婦人。
 (来たな……)
 (間違いない。鉄の爪だ。だが……この幼子の墓も、花も、線香も、全て本物だ。……ここを戦いの場にするわけにはいかん)
 番場は段平を収めて立ち去り、三味線が止まって拍子木が一つ鳴らされると、 立ち上がった老婦人の姿が打ち鳴らされる太鼓に合わせてアイアンクローに早変わり。
 「番場め……この花を散らすのを恐れたな。ふふふふはははははっ」
 ジャッカーそっちのけで、無駄に格好いい(笑)
 その頃、逃げたカマキリを追うジャッカーは、カレーの配達に来た玉三郎と正面衝突し、コメディ空間に居た。
 「ええいもう玉三郎、松山へ帰れっ」
 全くその通りです(笑)
 番場を撒いたアイアンクローは今度は保母に変装し、園児とお遊戯しながらカマキリに念力を送るが、 そこへやってくる怪しい紙芝居屋……どうして、番場の変装はどれもこれも不審者なのか。 しかしまたまたアイアンクローを追い詰め損ねてしまい、最後は、銅像に扮して念力を送っていたアイアンクローに、 掃除夫に扮した番場がバケツの水をぶっかけるという、ハナ肇ネタ。
 「何者だ貴様は?!」
 「そういうあんたこそ、何者だ!」
 「ある時は銅像、ある時は墓参りの女、ある時は山伏、ある時は美女、ある時は蛇取りの男、ある時は保母さん、 そしてその正体は――鉄の爪、アイアンクロぉぉぉー! そしておまえは?」
 「ある時は掃除夫、ある時は片目の運転手、ある時は紙芝居屋、そしてまたある時は虚無僧、ある時はホテルのボーイ、 そしてその正体は……ふふふははははは、ジャッカー電撃隊行動隊長・番場壮吉。そしてその実態は! ――ビッグ・ワぁン!」
 番場がとうとう一瞬で変身してしまいますが、その瞬間に目つぶしを放って変身シーンそのものは見せないので、 そもそもビッグワンも、ただのコスチュームの一つ疑惑。
 この勢いで遂にビッグワンが直接戦闘するのかと思いきや、アイアンクローがあっさり退却してしまったのは盛り上げておいて残念でしたが、 個々の変装の意味と尺はともかく、サブタイトル倒れにせずに、双方ともに七変化させたというのは、なかなか凄い。 話の要素が詰まっている事で展開もスピーディになり、物語の印象も締まりました。また、番場にとっては、 番場壮吉も仮の姿かもしれない、というのはこの超次元生命体に関して、なかなか意味深です。
 念力切れでへろへろのカマキリに迫り、今度こそ並んで名乗るジャッカーだが、 ビッグワンとの対決を避けたアイアンクローがまたも念力を送り込み、回復したカマキリといよいよクライマックスバトル。 アパッチ軍団はジャッカーに殲滅され、再び発動するビッグ・ボンバー。
 「ジャッカー必殺武器――蜘蛛の巣責め。ビッグ・ボンバー!」
 ボンバーから飛び出した網がカマキリに絡まると、突然カマキリ大爆死。
 ナレーション「鉄の爪の執念の猛攻撃も、ジャッカーと、ビッグワンの鉄壁の守りの前に敗れ去った」
 即座にナレーションが入り、なぜ念力で再生できなかったのかについては追求する余裕を与えずに、強引に処理して一件落着(笑)
 前後の時空をねじ曲げて強引に対象を破壊する事象兵器ビッグ・ボンバーに、 標的の弱点(?)に変形するゴレンジャーストーム要素が加わったのは更なるテコ入れなのでしょうが、一応、 アイアンクローの念力波に一度破られてからのパワーアップ展開……なのか?
 科学のようで凄くオカルトバトルですが、ビッグ・ボンバーは多分スタンド能力なので、必然も感じます。
 演出に、数多くの東映ヒーロー作品に参加し、この後80年代戦隊で中軸を担う1人となる山田稔が初参戦。 番場とアイアンクローが共に七変化を見せるという事で、脚本時点で見せるべき要素が多かったのかと思われますが、 個々の要素にこだわりすぎず、説明を削ぎ落として突き進む演出がストーリーと巧くはまりました。また、 遊具をカメラ手前に置き大胆に逆光を入れてシルエットで戦う番場とアイアン保母、 カメラ手前の画面中央にアパッチの槍を突き立てた状態から始まるカマキリvsジャッカーのクライマックスバトルなど、 これまでとややタッチを変えた演出が、良いアクセントになりました。
 次回予告から、これで面白くなかったら厳しい、というエピソードでしたが、大雑把さが上手く娯楽活劇に繋がり秀逸回でした。

◆第30話「死を呼ぶ暗号! 猛毒コブラツイスト」◆ (監督:山田稔 脚本:上原正三)
 開始早々、前回のお返しとばかりにクライムの兵器工場へカチコミをかけるジャッカー。だがそれは、 クライムの殺し屋・コブラ大神官の罠だった。
 「ふん、身の程知らずなヤツだ。我ら4人に勝てると思っているのか!」
 「勝てる! だから呼んだ」
 ……アトミック魔女以来、基本的に連戦連敗だからなジャッカー!
 コブラ大神官は、顔はよくあるキングコブラの意匠ながら、赤地に白い十字のラインが入った袖無しの長衣が色彩的に全体をすっきりスマートに見せて、 今作の怪人にしてはなかなか格好いいデザイン。
 大見得切って戦闘員を蹴散らすも、案の定あっさりと毒針に倒れるジャッカーだったが、 突然のスペアエネルギー発動で体内の毒素を分解すると、電撃キック。かつてなく派手に吹っ飛んでいったコブラはすごすごと本部に帰って潔く切腹しようとするが、 前回、長官抹殺に成功した功績を認められてか、本拠に帰ってきたアイアンクローに止められる。
 アリンガム将軍には何も策を与えずに放り出したアイアンクローですが、今回はネタがあったらしく、 猛毒ハマドXを入手して毒を強化せよ、とコブラに助言。
 とある会社の専務が暗躍を始めたコブラによって殺害され、死亡時に握りしめられていた懐中時計がジャッカーの元へと送られてくる…… その蓋に刻まれた数字は何かの暗号なのか? と前半戦の雰囲気が再来。実は専務は旧日本陸軍の特殊部隊・ハマド部隊に所属していた過去を持っていた。 ハマド部隊は終戦前に日本軍の財宝を秩父山中に隠したという噂があり、クライムの狙いはその財宝なのか……?
 「しかし、世界征服を目的とするクライムがだ、今更財宝など狙うかな」
 ここで、クライムの目的が前半とは変わっている、というのが台詞で示唆されたのは、 ないがしろにされがちな物語の大きな流れが組み込まれて地味に良かったところ。
 ハマド部隊の生き残りの元に向かうジャッカーだが、1人はまたも殺害され、元隊長のハマドは孫と共に行方不明になってしまう。 またも現場に落ちていた懐中時計と、その蓋に刻まれた謎の数字……ジャッカーはそれを色々な暗号表と見比べ、ハムスターの助言で、 ポリュビオスの暗号表(実在の暗号表)に辿り着く。
 数字に隠された秘密、それは、戦時中に日本軍のハマド部隊が開発した猛毒・ハマドXの存在を示すものだった。 秩父山中に隠されていたのは、財宝ではなく化学兵器だったのだ!
 と、クライム側で既に提示されている目的に、ジャッカーが少しずつ迫っていくというのも、前半の形式です。 まあ最後に番場がさらりと解説して全部持って行ってしまうので、ジャッカーにはどうも徒労感がありますが(^^;
 ハマド元隊長と孫は秩父山中に連れて行かれたに違いない、とジャッカーは捜索部隊を編成し、 珍しく一般隊員が同行すると思ったら次々とコブラの餌食にされるという可哀想な展開。 それでも何とかハマドXが隠された鍾乳洞へ辿り着くジャッカーだが、ハマドと孫を人質にされ手も足も出ない……だがその時、 秩父山中に響く、ターザンの叫び声!
 またまた番場壮吉か、と思ったらターザンは番場ではなく玉三郎というひねりが入り、かつてなく役に立つ玉三郎。どちらにせよ、 何故かここで急に世界がギャグに浸食され、コブラがターザンに魅惑されている内に、女性隊員に救出される人質。 ところが今度は孫娘まで捕まっており、またも毒ガス噴射5秒前に追い詰められるジャッカーだが、そこで真打ち登場。 蛇遣いに扮した番場の笛の音にコブラが操られている内に孫娘は救出され、ハマドXもいつの間にやら番場が投入した解毒剤によって無効化されるのであった!
 解毒剤は受けた毒を治療するもので、元の毒を無害にするのとは少し違うような気もするのですが、 時空間をすっ飛ばし事象を操る番場壮吉の前に細かい疑問は言いっこなしだ!!
 コブラに謎の金縛りを受けて苦戦するジャッカー。そろそろいつものコースが発動か、 と思ったら突然エースがその場で急速回転して反撃を決めてからのビッグ・ボンバー! と、今更ながらわずかに救済。
 「ジャッカー必殺武器――アフリカ象! ビィッグ・ボンバー!」
 「アフリカ象……嫌いぃぃぃ!」
 ボンバーの弾頭が迫り来るアフリカ象のイラストに変化したと思ったら、更に虚ろな瞳の象の着ぐるみに変わり、 飛びついてきた象の着ぐるみに押し倒されて爆死するコブラという呆然とする演出(笑)
 しかしそんなボンバーなのに、けっこう派手な火薬の量で更に呆然(笑)
 前回から謎の強化を遂げたビッグ・ボンバーですが、これまでは前後の時間をねじ曲げて“破壊” という結果を問答無用で標的に与えていたのに対し、それを念力で防がれた為、対象の持つ“死”のイメージを直接精神に叩き込む事で、 標的を強制的に運命に屈服させているものと思われます。
 どうしてコブラがアフリカ象を嫌がったのかはよくわかりませんが、あくまでコブラ大神官による死のイメージの投影なので、 何かトラウマがあったのでしょう。
 ゲストがあっさり死亡するハードさとスパイ物の雰囲気が強い1クール目
 +
 子供ゲストが物語に絡み女性隊員の登場が縛りになった2クール目
 +
 玉三郎を始めコメディ要素が増量されおいしい所は全て番場(ビッグワン)が持って行ってしまう3クール目
 が全て詰め込まれ、『ジャッカー電撃隊』の変遷を濃縮したようなエピソード。途中まで割と面白かったのですが、 いきなり怪人がギャグに乗っかってぐだぐだになるという辺りは、世の不条理さえ感じさせます。一方で捜査パートが終始シリアスに進んだのは、 そろそろ打ち切りが決定して、あまり気を遣う必要が無くなってきたのか(^^;
 ――と思ったら、
 「山本くんちへ、クライムのスパイが現れた!」
 次回、どうなる。

→〔その6へ続く〕

(2016年2月21日)
(2017年3月19日 改訂)
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