■『ジャッカー電撃隊』感想まとめ2■


“なくな なげくな くるしみは
敵の墓標と 土の下”



ダイヤジャック    スペードエース    クローバーキング    ハートクイン


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ジャッカー電撃隊』 感想の、まとめ2(7〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕


◆第7話「8スーパーカー!! 超速300キロ」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
 日本政府の財産保管金庫……というまた豪快なものを狙うクライムは、金庫の壁を破る為に国際科学特捜隊 (それにしても気軽に略しにくい名称である)が開発した新型高性能爆弾ジャッカーXを強奪。
 爆破試験に参加していた東がクライム戦闘員の銃撃を受け、流血する事と痛覚が残っている事が判明…… まあ双方ともカモフラージュ機能でしょうが、痛覚遮断機能がついていないのは、長官の慈悲なのか科学力の限界なのか。
 検問を破り、爆弾を手に逃走するクライムライダー(なおこれはジャッカー側からの呼称で、 アイアンクローは「クライムボス」と呼んでいるので、やたらアクティブですが立派にボスらしい)の追跡に参加しようと、 負傷を押して起きてきた東に対し、
 「ジャックぅ……寝てなきゃ駄目だ」
 という長官が、サイボーグだから大丈夫とにこやかに送り出すよりもむしろ、この人、 自分が非道な人体改造に手を染めているという事を綺麗さっぱり忘れて普段生きているのではないかという、 真性キチガイぶりが出ていて面白い(笑)
 クライムライダーは力の入ったバイクアクションで次々と検問を突破し、それを空から追跡するスカイエース。 そして自らの不始末を取り返そうと、追走するマッハダイヤ号。
 ここで、通りすがりのスーパーカー軍団に次々と入るテロップ(笑)
 その方面に興味ないので特に嬉しくないのですが、今作放映の1977年当時は日本におけるスーパーカーブームの過熱期であり、 スーパーカーというのは少年層にもかなり訴求力の強い題材であった模様。
 まあどう見ても、一番凄いのはマッハダイヤ号なのですが……センス的に。
 マッハダイヤ号を振り切りきれないクライムライダーは、逃走用にそのスーパーカーを奪おうとオーナーを脅すが、 オーナーのおじさん、まさかの

 回転からの空中二段蹴り。

 思わず巻き戻して三度見してしまいました(笑)
 拳銃持ったクライムライダーと普通に互角の戦いを演じるおじさんだったが、スーパーカーマニアの少年を人質に取られ、結局、 逃走車の運転をする事に。ライダーを乗せて走るフェラーリを追うジャック、更にその後を追うスーパーカー軍団の仲間達。 ライダーの銃撃によりマッハダイヤ号が故障・停車してしまい、これは東がスーパーカーの1台を借りるのかと思ったら、 その横をかっ飛ばして通り過ぎていくスーパーカー軍団。
 ……凄く、カオスな事になってきました。
 一方、ジャッカーX入手に成功したクライムでは、デビルエレキが一足先に財産保管金庫を占拠し、爆薬の到着を待ち受ける……が、 とりあえず金庫に自分の電撃を試してみるエレキ。
 「開けろ」
 「……駄目です。ジャッカーXの到着を待った方が」
 ……駄目だった。
 その頃、頑張って損傷したバッテリーを修理していた東は、これもしかして俺のエネルギーで行けるんじゃね、と気付くと追跡に復帰。 あの横幅で山道を突っ走るマッハダイヤ号、というのはなかなか凄い映像。スーパーカー軍団の仲間達は振り切られてしまうが、 スカイエースのサポートで追いついた東は、フェラーリと激しいデッドヒートを繰り広げる。
 途中、東がフェラーリを見失っている間に、再びフェラーリおじさんが格闘戦でライダーを追い詰めるなどあったものの、 爆薬で脅しをかけられた隙に結局主導権を奪い返されてしまう。そして東は、傷の痛みと車に供給しているエネルギー消費で、 ふらふらに追い詰められていた。
 最初、腕の負傷を強調する描写が入るのですが、そもそもサイボーグというコンセプトと微妙に噛み合わず、 エネルギー切れのみに焦点を合わせた方が、今作のオリジナリティが出て盛り上がった気がします。 負傷した左腕は生身部分なのかもしれませんが。
 ボクサー時代の辛い減量を思い出して限界状況を乗り越えた東は、フェラーリを追って財産保管金庫に辿り着くが、 エレキ責めを受けて倒れてしまう。金庫の蓋ごと爆弾で吹き飛ばされそうになる東、少年、フェラーリおじさんだが、 すんでの所でジャックタンクが突入して爆破を阻止して人質を救出。
 そろそろコストの問題が出てきたのかデビルエレキは第二形態の無いままジャッカーコバックの塵となり、 残りのジャッカーXを持って逃げようとしたライダーボスは、ダイヤソードに貫かれて死亡。ジャッカーは何とか、 クライムの犯罪計画を阻止するのであった。
 ラストは、フェラーリをずっと追いかけていたおじさんの奥さんが到着し、数分前に爆殺されそうになった事など完全に忘却する勢いで、 夫妻がにこやかにジャッカーに挟まれるシーンを少年が写真に撮って大団円。ジャッカー電撃隊は特務部隊だが、 市民からの写真撮影には気軽に応じる、フレンドリーな組織なのだ! そして少年は、スーパーカーにしか興味が無いのであった!
 市井に空手の達人の多い今作ですが、体育会系の学生を洗脳してコマンドーに育成しようとしていたぐらいですし、 銃火器を所持している事を除くと、クライムの通常戦力の質はそれほど高くないのかもしれません(^^;
 全編に、スカイエース何とかしろ感が漂いますが、カオスすぎてちょっと面白くなってくる系のエピソードでした。
 次回、
 「ドレスが爆発した。またしてもクライムか」
 「カレンの友人、クミコの、悲惨な最期」
 「桜井の体が放射能反応を示す!」
 予告の破壊力が高すぎる……。

◆第8話「6ターゲット!! 爆発する花」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:押川国秋)
 クライムの攻撃を受け、いきなりスローモーションでど派手に倒れるジャッカーの4人。
 「このようにジャッカーを倒すには、一人一人を分断し、確実に消していく事です」
 ……全部、ボスの妄想プレゼンだった。
 「いかにジャッカーといえども、根気よく狙えば、それくらいの隙はある筈です」
 打倒ジャッカーに必要なのは、根気!
 今回の作戦を立案したボスの真の狙いは、山陰の原子力発電所から輸送される核物質の強奪にあった。
 「それはいつだ?」
 「明後日です。目的を完遂する為には、その前にどうしても、ジャッカーを倒しておかなければなりません」
 …………根気?
 開始数分でコンセプトが崩壊している気がしますが、今回、終始アイアンクローがボスに対して不審げなので、 あまり査定がよろしくないボスなのかもしれません。
 そんなボスがまず標的にしたのは、カレン。友人が勤めるブティックにドレスを頼んでいたカレンだがクライムはそれに爆弾を仕掛け、 仕立ての仕上げをする際に試着した友人、爆死。
 悲しみにくれるカレンに告別式の連絡が入り、まっピンクのブラウスと真っ赤なホットパンツ姿で向かうカレンだが、 今度は花屋に扮したボスに爆殺されそうになるも回避。
 当初は怪人と戦闘員に指示を下す作戦指揮官めいていたクライムボスですが、老人に扮装して女スパイを自ら脅迫した第5話辺りから、 どんどん現場工作員と化していきます(^^;
 逃げた花屋ボスを追うカレンは東と大地と合流し、それを待ち受けるクライムの戦闘員部隊。
 「ジャックとクイーンが来た。これで3人一緒に始末が出来るぞ」
 ……一人一人を分断、とは。
 その頃、カレンが狙われた寺を調査していた桜井は、放射線の反応を感知し、ゴミ捨て場で焼却されていたクライム戦闘員の服を発見。 クライムの狙いが、原子力関連施設にあるのではないか、という推測を立てる。
 この辺り、悪玉が堂々と今回の作戦を発表するのでなく、善玉サイドで徐々に真相に迫っていくという段取りが意識的に行われてはいるのですが、 個々の段取りそのものが杜撰な為、面白みとリアリティを創出するには至っていません(^^;
 前回も後半までジャッカーはクライムの真の目的がわからないまま進行しており、同じ戦隊シリーズというくくりでも、 80年代以降の作品とは、プロットの基本構造自体が違う事が見えるのは面白い。……あまり上手く行ってはいませんが。
 集合した4人は、赤と青の入ったこれまでにない派手な配色の怪人デビルフラワー(なお、 クライム内部では「戦闘ロボ」と呼称)のバズーカ攻撃を受け消し飛んだかに見えたか、サイボーグジャンプでこれを回避。 邪魔者は消した、と輸送される核物質を狙うクライムの前に立ちはだかる。
 ジャッカーの妨害を受けた花屋ボス、勢い余って核物質を積載したトラックを撃とうとして、東に本気で止められる。
 デビルフラワーは毒ガス攻撃でジャッカーを苦しめるも、 ジャッカーハリケーンで毒ガスを跳ね返されつつ連続パンチを浴びて崖を転がり落ちた所に追撃のジャッカーコバック。 逃走をはかっていた花屋ボスは、墜落してきたフラワーの下敷きになり、共に壮絶な爆死を遂げる。
 かつてなく惨い死に様のボスでしたが、間接的にカレンの友人を殺害した報いを強調したと思われます。
 なお、最初のシーンでアイアンクローが花屋ボスから「最強の戦闘ロボを派遣してください」と言われ、 「どうしようかな〜」と答えているのですが、多分、派遣していない。
 信用しないで正解でしたね、アイアンクロー!
 次回……『燃えよドラゴン』?

◆第9話「7ストレート!! 地獄の必殺拳」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 カレン、大胆にショートカットにして登場。と思ったら、大地も五分刈りで登場。……夏なのか、暑いのか。しかし、 桜井はそのままだった。そして、東はもともと角刈りだった。
 ゲストに、翌年『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』で主演を務める、宇宙忍者まぼろしこと、真田広之(当時:弘之)。
 若者の間に麻薬ドリームフラワーが蔓延し、その購入資金目当ての犯罪が続発。潜入捜査を行ったカレンは売人と接触するが、 そこには旧知の青年・勝也(真田広之)の姿があった。麻薬Gメンであった兄をクライムに殺された勝也は、 ドリームフラワー販売を牛耳っているのがクライムであると突き止め、兄の復讐の為にクライムの懐に潜り込もうとしていたのだった。
 回想シーンで殺害されるお兄さんは、アクションともみあげの感じからすると、高橋利通さんか……?
 勝也は麻薬ボスに近づく為に、クライム親衛隊の選抜試験である武術大会、クライムカンフーに出場しようとしていた。
 「ねえカレンさん、僕をサイボーグにしてくれ。どうしても優勝したいんだ」
 「サイボーグなんて……そんなに簡単になれるもんじゃないわ!」
 平手打ちして拒否するカレンは、心と覚悟の事を言っているのでしょうが、志願者が肉体能力の要件さえ満たしていれば、 鯨井長官は簡単にしてくれそうです。
 まあ、クライム相手に大きな戦果をあげているサイボーグ部隊を増員しない所を見ると、 来年度の申請が通らないと予算が足りないのかと思われますが。
 麻薬の密売ルートを追うジャッカーだが、協力関係にあった捜査官を殺害されるなど後手後手に回り、捜査は進まない。 その間にも麻薬の蔓延と若者達の犯罪は増加の一途を辿り、ジョーカーはやむなく、 勝也はどうせ勝手にクライムカンフーに出場してしまうのだから、カレンがちょっと鍛えて優勝させちゃえよ、 と民間人を潜入捜査に利用する非情の作戦を命令する。
 「強くなるのよ……サイボーグ手術よりは、遙かに楽よ」
 いきなり、勝也の拳に自然石を叩きつけるカレン。
 「やめる?」
 ワケが、わかりませんよ……!
 Aパート、クライムに始末された売人達の死体を大写しにしたり、捜査官が高濃度の麻薬を打ち込まれて「私は鳥」 とか言いながらビルから飛び降りたり、必要以上に惨い描写の目立つ犯罪サスペンスのトーンだったのが、 何故かここからスポ根パロディのような展開に。
 しばらく跳んだり跳ねたりの特訓フェーズが続き、遂に舞台はクライムカンフー当日。 カレンの猛特訓で鋼の拳を手に入れた勝也は順調に勝ち進み、いよいよ決勝戦で、黒人ファイター・ビッグサターンと激突する。
 勝也が心配で気が気でないカレンは落ち着かずに歩き回り、それを励ます男達、そしてトランプ占いしているジョーカー(笑)  ジョーカーは、「リアリスト」とか「外道」とか「冷酷非情」というよりも、天然のマッドサイエンティストなので、 常人と同じ感性を期待してはいけません。
 この世には2種類の人間が居る。実験する側と、される側だ!
 大柄なビッグサターンに組み付かれ、苦境に追い込まれる勝也。いつになく乙女ゲージを高め、スペードのエースを手に、 勝也の無事と勝利を祈るカレン――。
 「いよいよピンチの時は……相手の目を狙うのよ」

 乙女、どこ行ったーーーーーーー!?

 (そうだ……目だ!)
 カレンの必死の祈りが届いたのか、勝也はビッグサターンの目に躊躇無く指を突き込むと、ひるんだ所に回し蹴りから、 必殺の空中回転蹴りで勝利を掴む。見事に親衛隊に選ばれた勝也は麻薬密造工場の場所をジャッカーに連絡するも、 素性がバレてデビルスパイダーに追い詰められるが、間一髪、そこに駆けつけるジャッカー電撃隊。
 今回はいつもの名乗りに加え、アクションの掴みに、それぞれの口上が追加。
 「ジャンプ一閃・赤い風! うなって踊る、核の鞭!」
 「スピード一番・青い星! ぎらりぎらぎら、電気剣」
 「チョップ一撃・緑の火! 目から火の出る、重力パンチ」
 「ヒラリ一転・桃の花! 咲かせて散らす磁力だて!」
 クイーンの「だて」は、「盾」と「伊達」をかけているものと思われます。
 デビルスパイダーはジャッカーコバックで粉砕し、逃げ出したボスはアイアンクローのぽちっとなで、基地ごと大爆死。 勝也は兄の復讐を遂げ、5人は清々しく夕陽を見つめる。
 桜井「明日も……晴れるな! さあ、行くか!」
 ……全く意味はわかりませんが、恐らく、スポ根もののお約束的な何かなのかと思われます(^^;
 予告から『燃えよドラゴン』かと思ったら、むしろ『柔道一直線』だった、真田広之祭り。 話そのものはさして面白くなかったのですが、上原脚本はいきなり飛び道具が後頭部に叩きつけられてくるので油断なりません。

◆第10話「11コレクション!! 幸福への招待」◆ (監督:竹本弘一 脚本:曽田博久)
 曽田さんが初参戦。なかなか面白かったです。
 港に佇む白い服の女……定期パトロール中だった東は、不審な男から女を助け、夏のお洒落で巻いていたスカーフ (開襟シャツ+スカーフという服装の為、そこはかとなく全裸スカーフ的な怪しさ満載)が縁で、 女・美紀と親しくなる。
 続けて美紀が車に轢かれそうになった事から、東はカレンと2人で美紀の身辺を警護するが、 次々と美紀の命を狙って暗殺者が姿を見せる。
 写真を撮ろうとした男、乗用車、運送屋の男、客のふりをしていた女性2人組、と畳みかけるように殺し屋が現れ、 更に失敗した殺し屋を丁寧に始末していくクライム、と暗殺を1回や2回で終わらせずに繰り返す展開に、 派手な銃撃も挟む事でテンポが良くなり、雰囲気が面白くなりました。
 美紀の部屋にあった浮世絵から、孤児院で育ったという美紀が、高名な美術商、ヘンリー・大田の娘であった事が判明。 美紀の母が遺した「18歳の誕生日に赤いスカーフが幸せを運んでくる」というのは、ヘンリーが美紀を迎えにやってくるという意味だったのだ。 だがヘンリーは一ヶ月前に急死しており、美紀は知らぬ間に、時価800億円の美術品の相続人となっていた。 ヘンリーの遺産を入手した暁にはクライムから大量の武器を買う契約を取り付けているヨーロッパ独裁国の為に美紀の命を狙うクライム (国際的犯罪組織のしがらみも大変である)の浮世絵ボスは、ヘンリー・大田の顧問弁護士を殺害して成り変わると、 幼い頃の美紀を知るその秘書を脅迫し、美紀の元へ近づく。
 一方ジャッカーでは、美紀の命を守るべくカレンが美紀に変装して2人を迎え、虚々実々の駆け引きが行われる。 父親の真実を知らされ(た美紀になりきって)、泣きじゃくるカレン美紀。
 大地(うぇぇ……よくまあ、泣けるもんだね……)
 桜井(女は先天的嘘つきなんだなぁ)
 君たちどんな深い心の傷があるんだよ?!
 替え玉の可能性を探るクライムは散歩中のカレン美紀に背後からナイフを投げつけ、 咄嗟に連続回転でナイフを華麗に回避した事で疑われてしまう……のかと思ったら、 そのままの勢いで木の上に飛び乗って、にっこり「平気よ」が平然と流されたのですが、 亡きヘンリー・大田は、ニンジャの血筋か何かだったのか。
 上手く行くかと思われた作戦だったが、着替え中に背中のほくろが無かった事から替え玉が見破られてしまい、 クライムは本物の美紀を探す為に組織を動員。
 クライムが人員を用いて情報収集をする、という普段と逆のパターンに加え、 組織の指示に従って動くごく普通の身なりのクライム構成員達の姿が次々と描かれ、社会のどこにでも、 クライムは潜んでいるという描写が秀逸。
 またここがコミック的に描かれない事で、ごく普通の日常の風俗の中に、 恐らく拳銃も握った事がないであろうクライムの末端構成員が紛れ込んで、組織の一声で一斉に動きだすのだ、 という不気味さが上手く出ました。この辺り、世相を反映した部分もあるのかもしれません。
 「よぅし、ジャッカーは、必ず娘と接触する筈だ」
 「ジャッカー、クライムが動きだしたとの情報あり」
 「尾行するんだ」「尾行に気を付けろ」
 ジョーカーとアイアンクローを対比させ、組織戦の形で見せているのも、ここまで無かった形で面白い。 今回のジョーカーはマイクの前に陣取って、事あるごとに力強く連絡を入れてくるのですが、 それに対抗する形でアイアンクローの出番も増やし……という構造が、非常に効果的になりました。
 遂にクライムに美紀が潜伏するホテルを掴まれてしまい、東が襲撃者を撃退するも、 スナイパーに狙われた美紀は恐怖のあまり錯乱状態で部屋を飛び出してしまう。東はなんとか、初めて出会った港で美紀を発見するが、 そこへ迫るクライム。その頃、本物の弁護士の死体が発見されたという情報が入り、スカイエースが駆けつけてジャッカー変身。
 ……ところで、当初脅されていた筈の弁護士秘書がすっかり悪役と化しているような気がするのですが、 金に目がくらんでクライムに協力するシーンがカットされたりとかあったのか。
 七五調が格好いいジャッカーの口上は今回も使用し、ようやく出番のあった怪人を交えて戦闘に。

 J・Q  ボス・秘書     <構成員
 ↓(ボス・秘書、J・Qの背後に回り込む)
 ボス・秘書  J・Q     <構成員
 ボス「撃てーーー!」
 ↓(J・Q、ボスと秘書を飛び越えて背後に回る)
 J・Q  ボス・秘書     <構成員
 ボス「撃つなーーー!」

 というギャグアクションがひとしきり繰り返された後、結局構成員に撃たれて、ボスと秘書は無残に死亡。……秘書は、 勢いで悪い人だったという扱いになりました(^^;
 ごつい造形だった怪人(デビルナイト?)は、名乗る暇さえ与えられずにジャッカーコバックで大爆死。なお前回より、 着地してから声を合わせてのエネルギー注入「「「「ジャッカー・コバック!」」」」が無くなり、 怪人の爆発後に揃って「「「「ジャッカー!」」」」と叫ぶ形に変更。
 受け継いだ遺産を全て寄付する事にした美紀は、その手続きの為にヨーロッパへと飛ぶ。
 「赤いスカーフはもう終わりよ」
 18歳の日に訪れる幸せを待っていた生活から、自立へ――ほのかに想いを抱いた男のスカーフを手に、 少女は旅立っていくのだった……と渋いオチ。
 色々と説明がかっ飛ばされるので疑問点は山ほどありますが、アクションとサスペンスのバランスも良く、テンポのいい秀逸回でした。 また、ハードボイルドタッチの犯罪ドラマ+変身ヒーロー、というコンセプトを押さえつつ、 ここまでの今作に無かった虚々実々の駆け引きや組織戦の要素を入れてきたのが良かったです。

◆第11話「13ジャックポット!! 燃えよ!友情の炎」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:高久進/新井光)
 命中した人間を跡形も無く溶かしてしまうという、恐るべき酸化蒸発弾によるライフルを用いてクライムが現金輸送車を襲撃。 その効果から、かつて近代五種のオリンピック候補生としてライバル関係にあり、その後、ゴミ問題の解決の為にゴミを溶かす研究の道に進んでいた親友、 若宮の事を思い出す桜井。
 2人の青春の回想シーンが、河川敷でギター弾いて「若者たち」を歌う、というのが時代を感じさせます(笑)
 若宮が研究を途中で放り投げて研究所を辞めた、と知った桜井は、街中で不審な動きを見せる若宮を目にする。
 「おまえは蒸発剤の研究に成功した。違うか? その研究結果が今、クライムの手で恐ろしい犯罪に使われているんだ。 本当の事を言ってくれ」
 「俺をそんな目で見ていたのか」
 桜井、目を逸らす(笑)
 「変わったのは桜井の方らしいな。昔は俺を疑ったりしなかった」
 理想に燃えていた親友が犯罪に荷担しているのでないかと苦悩する……という展開なのですが、 7:3ぐらいで黒だと思っているのが、ドライで凄くジャッカー(笑)
 だがその若宮が、クライムの狙撃を受ける。実は若宮は開発した蒸発剤の研究成果を所長に取り上げられ、 その所長が研究をクライムに売り込む事で、クライムボスの地位を手に入れていたのである。 自分の研究が犯罪に使われているのを見過ごす事は出来ない、と単身でその責任を取ろうとうする若宮はアジトに潜入し、 その後を追う桜井とカレン。乱戦の中で公害ボスはデビルマシンガンに射殺され、ジャッカーと若宮は研究施設の破壊に成功し、 クライマックスの戦闘へ。
 ここで、マンションの非常階段に縦に並ぶという変化球の名乗りが、非常に格好いい。
 マスク部分が半分透明で中の配線が見えている、というなかなか面白いデザインだったデビルマシンガンは、 いつもより余計に回されたコバックで大爆死。……顔デザインは面白かったのですが、さしたる活躍の場はありませんでした(^^;
 桜井と若宮は、夕陽に照らされた屋上でがっしりと握手をかわし、何故か走り出す、という今回も青春路線エンド。

◆第12話「10ピラミッド!! 黄金仮面の迷路」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
 注目は、サイボーグには、催眠ガスと自白剤が効く。
 ファラオの黄金マスクがクライムに狙われているという情報から、3手に分かれて輸送任務を行うジャッカー。だが、 依頼者であるカーメン文化長官がクライムに盗聴器を仕掛けられていた事で秘密が漏れてしまう。 本物を輸送していた桜井はクライムの襲撃を受け、マスクを隠して逃走するも、敢えなく捕虜となり、拷問を受ける事に。
 「ファラオの黄金マスクは、ヨーロッパのコレクターから、是非手に入れてくれと、せがまれておる」
 相変わらず大変だな、クライム。
 電気椅子にかけられ、またも原子炉大爆発の危機(なおこの場合、桜井どころかクライムボスも消し飛ぶ凄絶なチキンレースである) に桜井はフルパワーで逃走するも、背後から撃たれて川に転落。
 「殺ったぞ! 引き揚げろ」
 意気揚々と帰還していくクライム戦闘員達……いや、帰ったら駄目だと思うのですが(笑)
 仲間に発見される桜井だが、拷問による肉体的ショックと自白剤に対する抵抗の影響か、 死んだ魚のような目で記憶を失っていた。カーメン文化長官の見守る中、 ショック療法で記憶を取り戻させようとするも功を奏さず、道端の花を愛でる死んだ魚のような目の桜井。
 文化長官「うぅぅ……クレイジー……!」

 大直球

 一方クライムは、黄金マスクは手に入らなかったが、ジャッカーの戦力が減った今がチャンス、と大喜びで大規模な略奪を繰り返し、 当初の目的をすっかり見失っていた。
 怪人の出番が少なくなりがちな今作ですが、今回の怪人・デビルエジプト(仮名)は、この襲撃シーンなどで割と活躍。 スフィンクス顔に鋼のボディ、白いジャケットと裏地が紫の白マントを身につけ、先がマシンガンになっているステッキを振り回す、 とデザイン的にもなかなか面白い。
 ジャッカーでは、カレンが第1話で桜井に助けられた時を再現する、という大胆なショック療法により、炎の記憶と共に、 心の中の正義の炎を取り戻した桜井が復活。合わせて、当たり前といえば当たり前ですが、 カレンが桜井に命を助けられた事を深く恩義に感じている事が判明。そういえば、「命を助ける」イベントを消化済みでした。
 記憶を取り戻した桜井は隠し場所からマスクを回収すると同時に、カーメン文化長官の正体を暴く。 やたらに桜井の記憶の回復をせっついていた文化長官は、クライムボス(演:黒部進)の変装だったのだ!  ――当初の目的を忘れていなかった!
 本物の文化長官は大使館に監禁されていた所を救出され、正体を現したボスはマスクを持って逃走。 ジャッカーは立ちふさがるデビルエジプトをコバックで撃破するも、マスクを奪われてしまう……かと思われたが、 ウルトラボスが手にした黄金マスクは真っ赤な偽物で、ボスはアイアンクローによって「死刑!」。 本物のマスクはエース車の燃料タンクの中に隠されており、無事に文化長官に返還されるのであった……。
 マスクの本当の隠し場所は、宝石密輸トリックなどからのアイデアと思われますが、 本来ならクライムはエースが山中に放置していったエース車(ジャッカーの戦力)を破壊か回収するべきだったと思われ、 危うく深刻な国際問題になる所でした(^^;
 正直そろそろ、早くビッグ1出てこないかなぁという気分になってきましたが、次回、 サブタイトルが微妙に『ゴレンジャー』風味でどうなってしまうのか。

→〔その3へ続く〕

(2015年11月17日)
(2017年3月19日 改訂)
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