■『ジャッカー電撃隊』感想まとめ1■


“だれもしらない おれたちの
これが これが ひみつの ひみつのきりふださ”



ダイヤジャック    スペードエース    クローバーキング    ハートクイン


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ジャッカー電撃隊』 感想の、まとめ1(1〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕


◆第1話「4カード!!切り札はJAKQ」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 地球防衛軍の第7艦隊に奇襲による壊滅的な大打撃を与えた国籍不明の謎の戦闘機部隊――その正体は、犯罪結社クライム。 世界各地で活動し、今、東京を犯罪都市にしようと目論むクライムは、鯨井大助率いる国際科学特捜隊日本支部の前に苦戦を強いられていた事から、 強力な犯罪ロボットを投入。弾丸すら通用しない犯罪ロボットに対抗するべく、鯨井はかねてから計画していたサイボーグ部隊の設立に動きだす。
 が、候補者の一人、オリンピック近代五種の金メダリスト・桜井五郎には、「僕は親から貰った肉体を大事にしたいんです」と、 いきなり断られてしまう。
 まあ、「僕の力でサイボーグになって悪の秘密結社と戦おう」と言われたら大抵の人は断ると思います。
 変身ものの一つのテーゼとしての、“人ならざるものになる”所に最初のポイントを置いた今作では、 明確に「サイボーグになる」=「人間やめる」としており、長官自らスカウトに赴くが拒否される、 という所は後のシリーズ作品と比べても異彩を放っています。順序としては、今作の反動と反省を踏まえて、 導入を重くしないようにしたのでしょうが。
 続けて鯨井は、ボクシングの元ジュニアウェルター級世界チャンピオンにして、八百長事件に巻き込まれてアメリカの裏社会でくすぶるも、 またも無実の罪で警察で追われる事になって日本に高飛びしてきたアウトロー・東竜をスカウト。 相手の事情を確認した上で流れるように繰り出す、

 「サイボーグにならんか?」

 は実に痺れる名台詞。
 「サイボーグ?」
 「君は、電気エネルギーを内臓したダイヤジャックだ。そして、クライムを倒すのだ」
 「クライム? 冗談じゃねぇぜ。クライムにたてつくほど馬鹿じゃねぇぜ俺は」
 「……そうか。見込み違いをしていたようだ。残念だ」
 またもスカウトに失敗する長官だが、車で去りかけた所に、男のプライドをくすぐられた東が後から無言で乗り込んできて、 特に言葉を交わさないまま2人で低く笑い合うという演出が渋すぎます。
 ここで犯罪ロボットの加入で調子に乗るクライムの暴虐が挿入され、
 ナレーション「東京を、犯罪都市にしようと企むクライムは、次々と、殺人と、略奪を繰り返していた」
 …………ん? なんだか、約15年後に目的達成されているような。
 《レスキューポリス》シリーズ(『特警ウインスペクター』など)の世界って、 クライムが目的を達成した並行世界の未来なのでは(笑)
 そんなクライムの犯罪ルートの一つを潰した女刑事・カレン水木は、クライムの襲撃を受けて重傷を負う。
 「お願いがあります。私に……腕をください」
 この襲撃により父親と手を失ったカレンは、自らサイボーグ手術を志願。
 そして、海底都市の完成を夢見る研究者・大地文太は、事故による酸欠で、いきなり棺に入って登場すると、 鯨井と旧知だった為に、勝手に改造。
 「これで3人は揃った……あと1人なんだが」
 3人のサイボーグ手術に成功した鯨井が振り返ると、そこに立っていたのは桜井五郎。カレンが襲撃された現場に居合わせ、 燃え上がる車の中からカレンを助け出していた桜井は、クライムの非道に怒りを燃やし、 体よりも次のオリンピックよりも大事な事があると、自らサイボーグ化を決意したのであった!
 かくして揃う4人のサイボーグ。
 「ようこそ、ジャッカー諸君」
 秘密基地に揃った4人の前に、いきなり真っ黄色の軍服にグラサン姿で登場する鯨井長官。これまで、 言動はともかく見た目は背広姿の穏当な中年男性として描かれていたので、このギャップから放出されるキチガイの気配が凄まじい。
 トランプを華麗に操ってそれぞれのコードネームを告げながら
 「ジャックのJ、エースのA、キングのK、クイーンのQ
 ジャッカー(J・A・K・Q)
 ジャッカー電撃隊」
 という演出は凄く洒落ていて格好いいのですが、
 「そして私は、ジョーカー」
 とか付け足す長官が、アクセルべた踏みすぎて誰も追いつけません。
 それは、死んでいるのをいい事に、旧知の青年を勝手に契約書も無しにサイボーグにしてしまうわけです。
 クライムの実行部隊が銀行を襲撃し、さっそく出撃するジャッカー。中性子スコープで地下の隠し通路を発見し、 エレキカッターで壁を切り裂き、マグネチックカウンターにより車輌を追跡、とサイボーグの能力見せ。この際、 サイボーグ化を強調する演出として、皮膚を開いて中の機構が見えたり、指先が伸びたり、などの描写はけっこうエグい。
 金塊を積んだ逃走車輌を発見した4人は、飛行メカの中の強化カプセルで変身すると、犯罪ロボット・デビルキラーの前に登場。 トランプが舞い散る演出が格好いいのですが、スペードのエースに燦然と刻まれた、Nintendoの文字が、無駄に笑えます。
 必殺技のジャッカーコバックは、原子・電気・重力・磁力、の4大エネルギーを一瞬の内に相手の体内に注入して爆発させる恐るべき必殺武器、 と、よくわからないが危険そうな事は伝わってきます。
 ジャッカー電撃隊はデビルキラーを粉砕して初陣を飾り、クライムとの戦いが幕を開けるのであった……。
 集団ヒーロー、の形を『ゴレンジャー』から引き継ぎつつも、この当時は厳密にシリーズ化しているわけではない事もあり、 大胆なハード路線でどちらかといえば特撮ヒーロー版『Gメン’75』みたいな雰囲気を漂わせており、OPのトランプのシャッフルや、 近距離で見つめ合う鯨井と桜井/東など、洒落っ気と男くささの入り交じった演出が特徴的。
 概ね、Aパートは世界観説明とスカウト、Bパートはサイボーグの能力見せとバトルアクション、という構成なのですが、 前半のスカウト部分で、長官と東の会話で裏社会ではそれなりにクライムの存在は知られている事、カレンの抱く復讐の情念、 ヒーローとしての覚悟を決める桜井、というのがメンバー集めと並行して自然に盛り込まれており、大先生の脚本が鮮やか。
 ……大地は……うん、まあ。
 重力だけサイボーグ見せ場が無かったりEDの紹介カットが白黒だったり1人だけ乗り物がバイクだったりそもそも目が覚めたらサイボーグになっていたり、 露骨に扱いが悪いのは、凄く気になります(笑)
 キングなのにヒエラルキーが一番低い、緑の明日はどっちだ!
 ところで、ある種のリアリティ補強としてマシンの中で変身したり、犯罪組織と戦っていたり、 そもそものコンセプトに特撮ヒーロー+刑事物という要素があったりと、 そこはかとなく《レスキューポリス》シリーズの雛形なのかもしれない嗚呼世紀末TOKYOディストピア(多分言い過ぎ)。

◆第2話「2テンジャック!! 秘密工場を電撃せよ」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 クライムの開発した高性能ライフルによる無差別狙撃事件が発生。捜査に向かったジャッカーの面々が、 ひっくり返った自動車を簡単に動かしてみせる、と人外のサイボーグの力をさらりと見せるのが格好いい。
 弾痕が散弾銃のものだった事から、付近に目撃者が居るかもしれないと4人が走り回るカットに、 新聞の見出し風のテロップが重なるのが、秘密裏に怪事件を追っているのではなく、社会的な犯罪を捜査している、 というジャッカー電撃隊の立ち位置を示しています。
 なかなか手がかりを掴めないジャッカーだが、東の旧知のバーテンダーから、闇ルートで入手した新型銃の情報がもたらされる。 クライムによって消されてしまう売人とバーテンダーだが、瀕死のバーテンダーからロッカーキーを受け取った東は、 売人がクライムから盗んだというライフル銃を入手。分析の結果、狙撃ライフルの弾丸が標的の手前で分裂して散弾になり、 更に被害者を炭化させてしまうという、今回の事件に用いられた恐るべき新兵器である事が判明する。
 バーテンダーは東のボクサー時代のトレーナーだったと判明するのですが、どうして、銃器の売人と普通に繋がりがあるんだ(笑)
 復讐に逸るジャックは残された情報から埠頭の倉庫を荒らし回って輸出されようとしていた銃を発見し、エース、 倉庫を上空からのミサイル攻撃で大雑把に破壊(笑)
 証拠品の確保など眼中にない辺り、東映刑事ヒーローに息づく遺伝子を確かに感じます。
 ここで、背後で工場が大爆発する中、手前の道路を車で逃亡するクライム、の合成カットが格好いい。
 クライムを追ったジャックは秘密アジトに潜入するも、高圧電流を浴びて倒れてしまう。構成員がその脈を測り、「はっは、 死んでいます」と嘲笑うシーンは、今作の特色が巧く出ており、小刻みに挟み込まれる人間で無くなったヒーローの描き方はこだわりが見えます。
 一度は心臓部が停止していたジャックだが、浴びた電流により再起動すると、自分の体内ケーブルを使って外部へモールス信号を送り、 クイーンとキングがジャックタンクで地下へ突入。ジャックを助け出すと密造工場を大破壊し、冒頭の車の連続クラッシュなど、 1話よりも2話が派手な展開。1話前半がドラマパートのウェイトが大きかった分を、2話に回した感じでしょうか。
 「貴様等が噂の……!」
 「スペードエース!」「ダイヤジャック!」「ハートクイーン!」「クローバーキング!」
 「ぬぅ?!」
 「「「「我ら、ジャッカー電撃隊!!」」」」
 最初から最後まで誰も呼ばない為に怪人の名前がわからなかったのですが、「デビルドリル連続撃ち!」 と技を使った所で体の各部からドリルが出てきたので、デビルドリルなのか?(確認したら、デビルドリルでした) 1−2話と、 シンプルなデザインの怪人が、戦闘中にバージョンアップするという形を取っているのは、ちょっと凝った所。
 デビルドリルはジャッカーコバックで粉砕され、失敗の続いた東京ボス(ただのおっさん)は、アイアンクローによって処刑される。 ジャッカー電撃隊とクライムの凄絶な戦いが、いよいよ本格的に始まるのであった――。

◆第3話「5フラッシュ!! ほえろパンサー」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
 クライムの新たな幹部、横浜ボス(ただのおっさん)登場!
 いきなり、怪人と言い争う(笑)
 カレンは、友人である天才空手家・夏子(志穂美悦子!)が、空手を辞めようとしている事を知る。夏子は、 父の遺した道場を弟・ハヤト(大葉健二!)に継がせる為に、強すぎる自分が退く事で、弟の自立を促したいと考えていたのだった。 そんな姉の思いが功を奏してか、空手の大会で優勝するハヤト。だがある時、監視カメラに写った映像から、 合宿に行くと言って家を空けていたハヤトが、現金強奪の犯人グループに加わっていた事が判明する……!
 「ハヤトを連れ戻してくるわ。どこなのクライムは?」
 クライム、ちょっと近所のコンビニ扱い。
 実はハヤトは、姉の期待に応えたいと思うあまり空手大会の決勝直前、控え室に現れた謎の男(横浜ボス)に渡された薬を飲んでしまい、 洗脳を受けてクライムのコマンド部隊の一員にされてしまっていたのだった。民間人を洗脳コントローラーによって操り兵隊とする、 クライムのコマンド作戦の事実が判明するが、ハヤトは内臓された爆弾により、口封じの為に爆殺されてしまう。
 第3話にしてブレーキが見当たりません。……まあ、序盤の重い話と言えば、『バトルフィーバーJ』の2話の方が重かったですが(^^;
 〔参考:『バトルフィーバーJ』ピンポイント感想〕
 今回も、姉弟愛がかえって相手を追い詰めて……という要素が盛り込まれていますが、単純に人が死ぬだけではないえぐみを、 子供向け30分番組にさらっと放り込んでくる大先生のこの切れ味。
 ハヤトの言い残したコマンド養成所を探すジャッカー、足を使った聞き込みとは別に、ハヤトの靴についていた土を分析する、 というのは今作らしい所。似た土質の島を発見してスカイエースで乗り込むジャッカーだが、養成中のコマンドを人質に取られ、 やむなく撤退。
 本気を示す為に、せっかく集めてきたコマンド候補生をさくっと銃殺してみせる70年代作品の命の軽さよ(^^;
 ところで最近、地中からにょきにょきっと出てくる砲台って無いですね。……うんまあ、色々と不自然なのですけど、 子供心には夢があった気がします。
 実質的に20数人の人質を取られ、正面からは手出しする事ができない……カレンから話を聞いた夏子は、 封印していたヌンチャクを手に立ち上がる!
 「私が今、ハヤトにしてやれる事、それはハヤトと同じく、酷い目にあってる人達を助けてあげる事よ」
 無言の夏子が、いきなりヌンチャクを凄い勢いで振り回すのを、3方向からのカメラで撮る映像が鬼気迫ります(笑)
 そもそも巨大な戦闘母艦で目立ちすぎるのが良くない、とカレンと夏子はモーターボートで島へ乗り込み、 クライム戦闘員を蹴散らすと洗脳コントローラーを破壊してコマンド候補生達の解放に成功。 ガスの噴出する洞窟に閉じ込められてしまうも、援護に駆けつけたスカイエースによって救出される。
 志保美悦子アクション無双(カレンも磁力エネルギーでちょっとフォロー)に続き、スカイエースのギミック見せと隙がありません。
 洞窟に向けてドリルをぶちこみ、天井を無造作に破壊し、 巨大コンテナを投げつける桜井の操縦が大雑把すぎて、インターナショナルレスキューに後ろから撃たれそうですが。
 国際科学特捜隊は、救出時の事故で身体を損傷した場合、 もれなくサイボーグ手術を行って組織の 鉄砲玉 一員として雇用する上に、手術前には契約書にサインを求める、 極めて人道的な組織です。
 「貴様達が噂の?!」
 今日も律儀な怪人は、今回も最初から最後まで誰も名前を呼んでくれないのですが、 デザインからすると「デビルダイナマイト」とかでしょうか。どうしてこんなに、怪人の扱いが雑なんだ『ジャッカー』(笑)
 今のところ特殊能力をごりごりと押し出してくるわけでもないですし、ハード路線の一貫として、あくまで戦闘員よりも強力な敵、 という程度の扱いなのか。
 ジャッカーは志穂美悦子に負けじと怪人をジャッカーコバックで粉砕。横浜ボスが捨て台詞と共に島を爆破して逃亡するが、 救出した人々と共に、スカイエースで脱出に成功するのであった。
 戦隊の合体必殺技というと、敵が逃げている所を背中から撃つ・敵を弱らせてふらふらした所に使う・面倒くさいので理屈抜きで問答無用、 などありますが、ジャッカーコバックの場合、
 スクラム頭突きで動きを封じる → そのまま飛び上がると回転して方向感覚を失わせる → 蹴り飛ばして反撃を封じる → 何も出来ない所にコバック発動
 と割と手順が合理的。
 順番に敵を崩していく過程には、何やら無慈悲で冷徹な恐怖があり、いい必殺技です。
 志穂美悦子がヌンチャク振り回したり、志穂美悦子が大葉健二と戦ったり(飛び蹴りのジャンプ力が凄い)、 志穂美悦子がクライムを蹴散らしたりと、当時JAC所属の、日本におけるアクション女優の草分け、志穂美悦子無双回。
 ジャッカーが思いっきり内部情報を伝えているのに長官が何も言わない所を見るに、夏子は恐らく、 ハートクインの候補の1人だったのかと思われます。
 「サイボーグにならんか? 君は、磁力エネルギーを内臓した、ハートクイン。そして、クライムを倒すのだ」

◆第4話「1ジョーカー!! 完全犯罪の死角」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
 パトロール中、いきなり車に轢かれる大地。
 でもサイボーグだから大丈夫☆
 車に乗っていた少女に妹の面影を重ねる大地だが、少女を乗せて空港を飛び立った飛行機は、クライムがプレゼンする新兵器、 超長距離を狙撃可能なクライムレーザー砲の犠牲となって墜落してしまう。
 相手が幼女でも、全く容赦なし!
 この直後、撃墜した飛行機には160名が乗っており、その内の30名にはクライムが保険金を掛けているので、 事故として処理されれば儲けは数十億、と喜色満面で命を数字と金に換算してみせるクライムの姿が、非常に悪辣。
 事故を知り、墜落物の漂着現場へ走った大地は、少女が大事にしていた人形を発見し、男泣きにくれる。実は大地は、 飛行機事故で両親と妹を亡くしていたのだった。
 「飛行機はエンジンの不調を訴えながら消息を絶った。今でも、海中に沈んだままだそうだ……」
 単なる悲劇的な設定だけではなく、シチュエーションで更なるえぐみを上乗せしてきて、手を緩めません。
 墜落をただの事故とは思えない大地は、人形の背中に開いた丸い穴と内部の炭化を発見し、 レーザーの反応が確認された事からジャッカーは飛行機の残骸を再調査する。寝ずの調査を続けた大地は、 少女の人形に導かれたかのように、遂にレーザー光線による射撃跡を発見。ジャッカーは、 クライムのレーザー基地を発見する為に動きだす。
 スカイエースの機影に対し、丁度いいからレーザーで撃墜しようとする横浜ボスだが、 商談がまとまりかけてるのにレーザー外すと恥ずかしいから迎撃に使うな、と割って入るアイアンクロー。
 「では、いかがいたします?」
 「それは横浜ボス、君が考える事だ!」
 丸投げした(笑)
 横浜ボスは仕方なく陽動作戦を命じ、ジャッカーを基地から引き離そうと動くデビルガン(今回は名前を呼ばれました!)。 怪人の総称は1話では「犯罪ロボット」だったのですが、3話−4話と「機械怪物」と呼ばれているので、その名称で行くのか。
 追跡中、思いっきり地雷を踏む大地。
 でもサイボーグだから大丈夫☆
 地上部隊を囮にして結局レーザーを撃つ横浜ボスだが、スカイエースの翼をかすめたに終わり、逆に基地を発見されてしまうと、 スカイロケットによる反撃で基地が吹っ飛び、横浜ボス・リタイア。
 70年代作品を久々に見るのであくまでイメージですが、今作、 この前後の作品としては結構ミニチュア特撮に金と力がかかっているような気がします。 『ゴレンジャー』とか『バトルフィーバーJ』の空戦などは正直もっと退屈だった記憶があるのですけど。同時期に、 巨大メカ戦に力を入れた『大鉄人17』を放映しているので、その影響もあったりするのか。
 レーザー基地の破壊に成功したジャッカーは強化カプセルで変身するとマシンに乗り込んでデビルガン&構成員を取り囲み、
 「十字攻撃!」
 容赦なく文字通りの十字砲火を浴びせると、クライムジープは何故かミニチュアでど派手に大爆発(笑)
 その後の戦闘シーンでは、キングがキング重力プレスを使用し、初めて重力技を使ったよーな(メガトンパンチは違う気がする)。 また、キングを助ける為にエースが加速スイッチを披露。ジャッカーはコバックでデビルガンを粉砕し、また一つ、 クライムの陰謀を打ち破るのであった。
 なおいつの間にか、EDの大地が白黒でなくなっていた。

◆第5話「3スナップ!! 裏切りのバラード」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
 地名に限界があると判断されたのか、今回からクライムのおっさん指揮官の名称がただの「クライムボス」に。 小田原ボスとか宇都宮ボスとか、もっと見たかった……!
 特捜隊員・小山純子に熱血テニス指導を行っていた桜井だが、いきなり純子がクライムの狙撃を受けてしまう。実は純子は、 クライムに誘拐された父・小山博士(鯨井の師匠!)の為にスパイ活動を行い、桜井のサイボーグカルテをクライムに渡した後、 口封じに始末されそうになったのだった。
 一方、クライムに囚われの小山博士はそんな事情は全く知らず、娘を人質にされ、 桜井の動力源であり弱点でもある小型原子炉の内臓箇所をカルテから突き止めるように脅迫を受ける。
 娘のテニスシーンと、配置したスナイパーの録画映像を見せて博士を脅迫するなど、人質の二重構造の見せ方が悪辣で秀逸。
 病院から逃げ出した純子をクライムから守ろうとする桜井だが、機械怪物デビルレスラーに小型原子炉を狙われて危機に陥り、 仲間の助けで何とか逃亡。
 「や、ジャッカーが逃げた! ジャッカーが逃げたぞ!」
 「そのようで」
 「はははははは!!」
 クライムボスと怪人が、超・嬉しそう(笑) ジャッカーを撃退したと調子づくクライムは、大胆な略奪行為を開始。一方、 基地に担ぎ込まれた桜井は修理&チャージを受ける。
 「どうだ、気分は」
 「ええ、原子炉が過熱した時、爆発するかと思いました」
 日常会話のナチュラルな狂気が凄まじい。
 クライムは再び純子に接触すると、スカイエースの設計図を入手すれば博士と交換してやる、と持ちかける。苦悩の末、 取引現場へ向かう純子だが、クライムに渡したマイクロフィルムは偽物、しかし交換された博士も偽物で、 あえなくクライムの銃撃に倒れる純子……て、ゲストヒロインがあっさり蜂の巣にされて死にました。
 駆けつけた桜井は、純子が身に付けていたペンダントの中に、 テニスコートで撮影した二人の写真が入っているのを目にして純子の秘めた想いに気付くと、憤怒の形相で立ち上がる。
 「許せん! 絶対に許せん! 逃がさん、加速スイッチ!」
 純子が少し変わった趣味だったのかもしれませんが、サイボーグでも、体内に原子炉が内臓されていても、 変なポーズで急に加速しても、恋愛対象としてOK、という辺りに、国際科学特捜隊の深い狂気が覗けます。
 「轢き殺せ!」
 「とう!」
 何故か一応現場に連れてきていた、本物の博士を乗せて逃げるクライムの車の前に立ちはだかった桜井は、 突っ込んでくる車のフロントガラスに向けて、思いっきり飛び蹴りで突入。
 屋根の上に飛び乗るとか、腕力で止める、はよく見ますが、突っ込んでくる車に向けて突っ込んでいくというのは初めて見たかもしれません(笑)  やや強引な合成が、妙にスピード感溢れる映像になっており、今回の必見ポイント。正直Aパートは展開が緩くていまいちだったのですが、 この前後だけ凄く面白かったです(笑)
 桜井は博士の救出に成功し、桜井突入の余波でハンドル操作を誤ったクライム車はガードレールを突き破って転落炎上。 卑怯卑劣なクライムボスは炎の中に消えるのであった……映像的には、 桜井突入時の「邪魔だ」チョップで首が折れているっぽい感じもありますが。
 純子の仇を討つ桜井だったが、そこへジャッカーコバック対策として体内に原子爆弾を内臓されたデビルレスラーが姿を現す。 ジャック達が駆けつけ、桜井は強化カプセルでエースへと変身……と、この段取りがテンポとしてはやはり難しい所です。
 ヒーロー物にままある「どうして早く変身しないのか」への回答としては、これ以上ない設定なのですが(^^;
 「まだ生きていたのか!」
 その配慮として、トランプの舞い→怪人の台詞→ジャッカー揃い踏み、という様式を組み込む事で、変身の後で完全に仕切り直してから、 クライマックス戦闘にテンポを切り替えるという手法を採っているのですが、今回は怪人の台詞が変更。
 顔が球体から三角錐に変化して変態性の増したデビルレスラーだったが、4人同時キックから、ジャッカーコバック。 背中に謎のロケットを取り付けられ、宇宙に飛ばされた上で爆死するのだった(笑)
 前作『秘密戦隊ゴレンジャー』にも、イーグル(善玉組織)所有の原発が黒十字党に連続爆破されるというエピソードがありましたが、 割とこの時代の方が、原爆も原発もアメリカ映画並の扱いの軽さ(^^;
 かくしてクライムの非情なスパイ計画を打ち破ったジャッカー電撃隊。誰も居ないテニスコートを見つめ、桜井は走る、 走り続けるのだった……。

◆第6話「9ポーカー!! 美女の罠」◆ (監督:竹本弘一 脚本:押川国秋)
 前回から、アイアンクローが、まぶしい。
 謎の地震と異常な船の遭難が続く房総半島にクライムの不穏な動きあり、と調査に向かうジャッカー。それはクライムの鴨川ボス(仮名)による、 地底秘密基地建造の影響であった。
 鴨川ボスは海底基地に海からの水を引き込む事で水力発電を行い、クライムのエネルギー問題を解決しようとしていたのである!
 ボスがナンパした謎の美女とポーカーに興じている所に接触をはかった東は、賭けを持ちかける。
 「賭け? あなたは何を」
 「愛車マッハダイヤ号を」
 おいジャァック(笑)
 透視能力でインチキをしたジャックはポーカーに勝利すると、謎の美女とのデートをゲット。握手の際に電気エネルギーを注入する事で、 美女の動きを遠隔で監視する。
 この美女の正体が、実は鴨川ボスの監視の為にアイアンクローが送り込んだ機械怪物デビルアマゾン……という展開の為に、 前半は怪人も登場せず、ひたすら背広姿の小太りのおっさんの身辺を探る、というあまりに渋すぎる展開。
 せめてポーカーのシーンが面白かったり、謎の美女の行動がもう少し意味ありげで興味を引く作りになっていれば良かったのですが、 これといって面白くない為、前半全く見所がありません(^^;
 後半になると更にぐだぐだで、
 鴨川ボスはジャッカーをなめくさっているので自滅は時間の問題、しかもアイアンクロー様に叛意を持っているようです、 と報告するデビルアマゾン → アクアラング姿になって海底基地へ潜る鴨川ボス → 裏切り者はさっさと抹殺してやる、 と後を追って海に潜るアマゾン → 電波反応で東がそれを感知し、更にその後を追って海に潜るカレンと大地 → 海底基地でアマゾンに迫られた鴨川ボス、実は全てお見通しで余裕綽々 → むしろおまえが後をつけられたのでジャッカーがここにやってくる、 と指摘を受けてショックを受けるアマゾン → ジャッカーは待ち伏せて仕留めてやる、と余裕を見せる鴨川ボス、 ついでにアマゾンに反逆への協力を持ちかける → 裏切り者は死ね!とアマゾンさくっと鴨川ボスを抹殺
 出し抜き合戦の要素を入れているのにも関わらず、そこから全く心理戦などに繋がらないという、極めて雑な展開。 自分の失策を指摘されて狼狽したアマゾンがボスをさっくり銃殺してしまうので、個人的な口封じにしか見えません(笑)
 まあ、クライムの機械怪物には、それまでの成り行きとは別に、「裏切り者は死ね!」機能がついていてもおかしくありませんが。
 鴨川ボスを始末したアマゾンはカレンと大地を待ち伏せするが、後から東がやってきて、ジャッカーは一時撤退。 「地上からの別の出入り口を探す」と言って別行動を取った筈の東が結局潜水ルートで助けに来たり、もう、ぐちゃぐちゃ。
 もしかしなくても:見つからなかった
 本当は前後編の予定だった脚本を撮影段階で無理矢理1話に圧縮したのではなかろうか、というぐらい、 何かプロット段階と完成品が違った姿になっているのではないかという疑惑が募ります(^^;
 待機していた桜井の援護で変身した4人は、合体回転攻撃ジャッカーハリケーンで戦闘員を蹴散らすと、 ジャッカーコバックでデビルアマゾンを爆殺。なお、今回の戦闘でジャックも加速スイッチを使える事が判明しました。
 「むぅぅ……デビルアマゾン、おまえも敗れたのか」
 珍しくアイアンクローがコメントを付けるのですが、子飼いの密偵か何かだったのか。かくして鴨川シーワールドの平和は保たれたのであった!

→〔その2へ続く〕

(2015年11月17日)
(2017年3月19日 改訂)
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