ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『光戦隊マスクマン』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
- ◆第31話「出現! 守護神イガム竜」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
- 新技の特訓に励むタケル達、相変わらず女子のジャージは同色1セットなのが気になって仕方がないのですが、 例しに黄色と桃色のジャージを着せて5人並べたら、『笑点』みたいになってしまったのでしょうか……?(なら仕方ない)
一方、伝説のマジックアイテムの力で強化され地底勇者にクラスチェンジしたバラバにより、 こんなプライドだけ高い役立たずは解雇して全指揮権を、と面罵されたイガムは、 イガム家の守護神たるイガム竜を呼び出す為の儀式を開始。
前回の予告では、バラバにぐりぐりと踏みつけにされていたイガムですが、さすがにどうか、という事になったのか、本編ではカット。 イガムが切り札に手を出す流れとしては屈辱の深さがよりわかりやすいですが、幾ら何でも感じの悪い映像になってしまっていたので、 納得ではあります。
儀式の開始と共に地上では奇妙な地響きがキャッチされ、調査中にフーミンの奇襲を受けたハルカは、 取り出した鉤爪を切断された上に地底忍法・口から火の玉の直撃を受けてプールに落ちるという失態に大ショック。
「……忍びの腕が落ちたでのは」
新必殺技のコンビネーションも上手く行かずに悩んでいたハルカは、翌日改めて震源地の調査に向かった先で影分身にも失敗し、 いつの間にか自分が、安易に仲間の助けを期待する惰弱な手乗りハムスターのごとき魂に成り下がってしまっていた事に気付く。
「わかったの。私の忍びの腕が、落ちたわけが。私たち、いつも五人一緒に戦ってきたわ。心も体も、それに慣れきっていたの。 五人で戦っていれば、誰かが助け、誰かがカバーしてくれる。知らず知らずの内に、私の力は落ちていたのよ」
「ハルカ、よく気付いてくれた」
え(笑)
「一人一人が優れた戦士でこそ、5人の力が活かされるんだ。今こそ、戦士の真価を試されてるんだ」
……てっきり、アスリートとして壁にぶつかった焦燥のあまり、闇の忍道に堕ちようとするハルカに仲間の絆とかが説かれるのかと思いきや、 むしろ長官が全力で背中にドロップキックを叩き込んできて、光戦隊の闇は深い。
勿論、チームである事を否定しているわけではなく、チームのかばい合いに甘んじ、 一人一人がどこかで(このぐらいでいいや……)と考えてしまうとチーム全体の力も落ちてしまうから、 それを避ける為には一人一人が常に高みを目指し続けねばならない、という指導になってはいるのですが……もしかしてこれ、 元より超人度の高いハルカが、知らず知らずの内に他の4人に合わせて本来の実力を抑えてしまっていた、という事なのでは。
そう考えると、ハルカだけが今回の問題に直面している事にも納得がいきます。
イガム竜の門番であるラゴンドグラーに殴り飛ばされたハルカは、更に儀式の影響による地割れに飲み込まれると、 目覚めたイガム竜によって地上に吹き飛ばされ、ここまで全くいいところなし。 キロスの嫌がらせをくぐり抜けたタケル達と合流するハルカだが、そこに覚醒した守護神イガム竜を体に巻き付け、 宙を舞う地底竜王イガムが登場。
バラバに続いて強化を成し遂げたイガムですが、勇者の剣が全力でわかりやすく見せやすかったのと比べると、 操演でふわふわ漂う守護竜は寄生獣と五十歩百歩で、今ひとつパッとせず。前回がゲスト爆死をジャンプ台にしていたのに対して、 地底でうんじゃらもんじゃらやっているだけなのも弱く、出来れば、イガムが黄金のドラゴンアーマーに姿を変える、 ぐらいはやってほしかったところです。
「ハルカ! 君は誰に頼る事もなく、一人で戦い抜いてきた。人に頼る気持ちを吹っ切った君なら、出来る! 今こそ出来る、あの技が」
「――やってみせます」
SHINOBIとは心に刃を隠すもの、光戦隊としてのチームプレイとは別に、闇で磨いた殺意を思い出したハルカは、 新連携技・ファイブアタックを成功させ、弱ったラゴンはジェットカノンで粉砕。巨大ラゴンは、アンカーで放り投げての銃撃から、 鉄拳オーラギャラクシーにより、合掌。
俺達の仕事は何だ?
殺せ! 殺せ! 殺せ!
の気概を取り戻したハルカはランニングに勤しみ、地底勇者バラバ、地底竜王イガム、 盗賊騎士キロス……マスクマンの前に立ちはだかる強敵達の姿が改めて示されて、つづく。
……ところで、ラゴンを応援するように飛んでいたイガム竜が、ラゴンが爆死すると山の向こうへ飛んでいってしまい、 王子達が「あ……」みたいな顔していたのですが、大丈夫なのイガム竜?! ちゃんとフレンド登録されたの?!
- ◆第32話「オヨブー必殺走り」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- 勇者の剣とレンズドグラーの特殊能力を組み合わせる事で、太陽光線を強力な消滅光線に変える実証実験が行われ、 その成功を確認して、上司に向けてサムズアップするオヨブー、おいしい(笑)
チューブが着々と強力な破壊兵器を準備しているとは知るよしも無く、今日も今日とてバイクで流していたケンタは、 廃車置き場で見覚えのあるレーシングカーと再会する。それは2年前、 ケンタがチューンナップし、進也というドライバーを乗せてレースで優勝した、思い出深い1台であった。
さらりと語られるこのくだりですが、ケンタ、 闇討ちからの拉致監禁の末に姿レーシングチームに引き抜かれていた前身が明らかになり、姿長官の闇は深い。
進也の弟・直也より、レーシングドライバーとして前途洋々だった筈の進也が、事故でドライバーとして再起不能の診断を下され、 失意の内に東京を離れて場末のバーでうらぶれている現状が語られ、どう見ても飲み屋の用心棒扱いなのですが、 光戦隊は関係者の闇も深い。
かつての友を救う為、直也と共に思い出の車を修理したケンタは進也の元を目指すが、オンボロ車の運転に難儀している内に、 荒野で消滅光線の練習中だったレンズドグラーを轢いてしまう(笑)
その際の衝撃で、光線を増幅するドグラーの大事なレンズが外れて車内に飛び込んでしまい、 そもそも車検を通っていないので公道を走れない為にオフロードの裏道を進んでいるのではないかとちょっぴり不安になる暴走車を、 ひたすら走って追いかけるオヨブー!!!
……えっと、あの、凄く面白いんですけど、面白いんですけど、なんだこの話(笑)
かつての友を救う為、という理由こそあれ「バトル開始前から明らかな危険運転を繰り広げるヒーロー」と、 「それを止めようと全力で疾走する地底忍者」という構図の倒錯が、変則的な面白さを生む事に。
正義の地底忍法サンダーボルトを受けて停車したところに、勇者バラバの一刀両断を受けそうになる暴走車だが、 レッドマスクらが駆け付けて、追いかけっこ再開。
「オヨブー!」
「地底一速い男から逃げられると思っているのか!」
EDにも使われるなど、序盤から「走る」スタイルが印象的でしたが、そこがアイデンティティだったのかオヨブー!
ダイレクト・ドア・アタックにより一度はオヨブーを振り切る暴走車だったが、再びの襲撃を受けて遂にレンズを奪われてしまい、 サブタイトルにも名前の入ったオヨブー、まさかのミッション・コンプリート。
さすが、できる男オヨブー。
ドグラーにレンズがセットされ、刀の錆、ならぬ消滅光線の藻屑にされそうになる暴走車だが、 何者か(姿長官?)から連絡を受けて現場にやってきた進也がその光景を目撃。二人を助けようとして勇を奮った進也は、 松葉杖を捨て斜面を駆け下りて暴走車の元へ辿り着くと、無我夢中でかつてのドライビングテクニックを駆使して消滅光線を次々と回避していき、 肉体的には治っているが精神的に……というよくあるトラウマの払拭を、すかさずカーアクションに繋げる事で、 劇的な飛躍に成功した格好いい流れ。
「やっぱりこの車が好きなんだ。どの車よりも一番、この車が」
そして、“この車”だからこそ進也は立ち直れたのだ、と車の意味づけを補強する事により、 ケンタ達のここまでの無茶を上手くフォロー。
勇者の剣に吹き飛ばされていた仲間達(今回から秋服仕様)も復帰してケンタもオーラマスク。 5人揃ったマスクマンに向けて迫る消滅光線、だが、その時――
「ぬ?! 太陽が?!」
「正義の光は、お前達の為に輝きはしないのだ!」
空が曇ってきて必殺攻撃使用不能という状況自体は大変間抜けなのですが、 ヒーロー側の台詞の力で上手く誤魔化して改めて主題歌バトルに突入し、今回はこういった、要所要所の台詞が良かったです。
「オヨブー、よくも追い回してくれたな。礼をするぜ!」
画角を広く取り、全身を炎に包んで飛び回りながら電光を放つ地底忍法オヨブーファイヤーvsブラックマスクは大変格好良く 、新登場の盗賊騎士よりも強化バラバよりも強化イガムよりも、 地底忍者の大技の演出が格好いいのが凄く『マスクマン』です(笑) 苦戦する黒だがマスキーロッド手裏剣返しでこれを打破し、 合間に挟まるレンズドグラーは赤青黄桃の一斉攻撃を受けて瀕死になったところに黒を加えてジェットカノンでオケランパ。
グレートファイブは、レンズドグラーのダッシュ体当たりを受け止めると、逆さに抱えて頭部を何度も地面に叩きつけ、 最近のマスクマンロボは投げ掴み技がえぐい路線、からのファイナルオーラバーストでフィニッシュ。
「この車は……俺だったんだな、ケンタ。一度は、レースを捨てたけど、やればまた走る事が出来るんだ」
ケンタと直也の奮闘により自己を再生した進也は思い出の車に乗って東京への帰路につき…… さすがにドアは取り付けられているもののリアガラスが思い切り砕け散ったままで、 官憲の目をかいくぐって無事に東京まで帰り着けるのか大変心配です!
演出的には、見送るケンタ達を振り返る兄弟の姿をわかりやすく映せたのですが、往路でケンタが色々やらかしている事もあり、 進也の運転免許と社会復帰の行方はどっちだ。
予告時点ではどうなる事かと思いましたが、オヨブー回として満足いく扱いに加え、 色々と無茶はしつつもケンタ側のドラマも上手くまとまり、思わぬ秀逸回でした。
次回――ようやくキロスに再フォーカスで、存在感の上昇を期待したい。
- ◆第33話「タケルよ!愛を斬れ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
- 「私は、キロスを愛しています。キロスへの愛を貫く為には、この命惜しくはない」
「しかし……キロスは……キロスは、君を愛してはいない」
「たとえそうでも、私は私の愛を貫く。それでいいのです」
「エリー……」
盗賊騎士キロスの前に現れた地底人の少女エリー。3年前、 地底獣に襲われていたところをキロスに助けられたと思い込む少女は一方的な思慕の念をキロスに向けるが、 エリーの存在など目にも入らず地底獣狩りをしていたに過ぎないキロスは、「俺はおまえを倒し、最強の男だと証明してみせる」 とレッドマスクとの対決にこだわり、一気にバトルジャンキー路線へ突入。
「キロス……あなたの敵は、私の敵」
「やめろ、エリー」
恋に恋する乙女の視野狭窄でタケルにナイフを向けるエリーもエリーですが、タケルはタケルで、 出会ったばかりの女と割とすぐ雰囲気出せる危険なタイプで、風邪でも引いていたのか今回の演技指導だったのか、 普段よりハスキー度2割増しぐらいの声がそれに輪を掛けます。
カウンターのゴッドハンドを食らった上にエリーの介入でプライドを傷付けられたキロスは、 タケルとエリーにまとめてクレセントスクリュー。
「エリー! 女のおまえが、男と男の勝負に、要らぬ手出しをした事を悔やめ!」
「キロス! エリーはおまえを助けようと!」
「黙れ! 俺は女に助けてもらうほど、情けない男ではない!」
二人まとめて吹き飛ばされるも、献身的で盲目的な愛という自己満足に酔い痴れるエリーは、タケルの言葉には耳を貸そうとしない。 キロスの襲撃の余波で崖から落ちそうになったエリーに手を伸ばすタケルだが、キロスはその背を踏みつける。
「はははっ、いいざまだタケル! 俺はおまえの、その優しさが許せん」
エリーには改めて3年前の真実を冷酷に告げ、タケルにとどめの刃を振り下ろすキロスだが、 タケルの瞳に炎が宿るとオーラバリアが発動して逆に蹴落とされ……ようやく掘り下げられた結果、ハカ、 もといただの喧嘩好きのチンピラに。
仲間達と合流したタケルは改めてオーラマスクするも、強力な念動力を操るゴーラドグラーの重圧攻撃に苦戦するが、 テーマ挿入歌をバックにジェットカノン。キロスが撤退するとオケランパされ、 ギャラクシーロボがダッシュパンチからバズーカで念動攻撃に打ち勝ち、スパートそして合掌。
なにぶん藤井先生なので、エリーはいつキロスの攻撃からタケルをかばって惨死を遂げるのだろう とドキドキしていたら奇跡の生存を勝ち取ったのですが、勘違いからの強烈な思い込みで空回りを続けるエリーに対してタケルの説得が成功するわけでもなく、 エリーが最初から「眼中にない」キロスは、無関心な残酷さこそ見せるもののエリーを積極的に利用するほどの邪悪さも描かれずで、 エリーと絡んだタケルとキロスの魅力がこれといって増す事が無いまま、平板に終わってしまったのは大変残念。
どうせなら、乙女の純真を徹底的に利用し踏みにじるキロス……ぐらいまでやってくれれば印象が違ったかと思うのですが、 キロスの最強へのこだわりと、キロスにとってのエリーの存在、が物語の中で上手く両立できず、 結論:「心底どうでもいい」ので囮としての機能性すら邪魔、という正面衝突を引き起こしてしまい、 キロス回の筈なのに用意された要素がキロスの性質と合っていない、という奇妙な事になったのは、 ゲストの扱い的になにかアイドル企画回的な事情だったりしたのでしょうか。
「タケル……美しく尊い愛も、一歩間違うと悲しく恐ろしいものになる事を忘れるな」
今回やたら遠隔オーラ通信で介入してくる姿長官がそれらしくまとめるのですが、 タケル×美緒と関連づけるならもっと明確に踏み込んで欲しかったですし、地底人と地上人の交流要素が特に掘り下げられるわけでもなく、 全方位に中途半端な作りになってしまいました。
- ◆第34話「愛と殺意のブルース」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
- Gロボ登場編の前に、15(藤井邦夫)−16(井上敏樹)−17・18(藤井邦夫)、と4話連続サブライターがあったので、 さすがに曽田先生も今作ではペースを落としてくるのかと思いきや、19〜25(7連)−26(藤井邦夫)−27〜32(6連)、 といつもの生産量に戻っていたのですが、ここで久しぶりの2回連続サブライター投入となり、第16話以来の井上敏樹。
自ら300年の眠りを解き、マスクマンとの戦いを志願するグロンドグラーがバイクを練習中のアキラとモモコを襲撃し、 モトクロスバイクによるアクションが掴みで迫力のあるアクセント。モモコのバイクに思い切り轢かれたグロンドグラーは、 かつて自分を助けた女の面影をモモコに見出すと姿を消し、残ったフーミンとアングラ兵に囲まれるアキラとモモコだが、その時、 フルートを吹きながら現れる謎の男が!(笑)
「何者?!」
気障な仕草でサングラスを外した男はフーミンにいきなりの飛び蹴りを浴びせるとフルート格闘術でアングラ兵を蹴散らす凄まじい戦闘力を見せつけ、 それを木陰から見つめるイガム…………えーとこれは、
〔「ようよう姉ちゃん俺らに付き合えよ」(ちんぴら) → 「待てい!」(通りすがりの謎の男) → 「やんのかこら!」 → どかばきぐしゃ → 「畜生! 覚えてろー!」(茶番) → 「お嬢さん、お怪我はありませんか」 → 「まあ素敵」〕
というやつなんですかゼーバ様ーーー?!
前回は、不良に助けられたと誤解したお嬢様が不良に片思いするが不良は本当に最低な奴だったオチでしたが、 今回は不良が仲間に協力してもらって憧れの女性にアプローチするネタで、今見るとサブライター回の変な被り方に首を捻りますが、 当時としては、流行を意識した内容だったのでしょうか……?
(今作放映の1987年には、東映により『スケバン刑事』『ビー・バップ・ハイスクール』『湘南爆走族』の実写映画が 「ツッパリ三連打」として公開)
地底獣の行方を追う光戦隊はフルートの男と再び出会い、男はいきなり飛び上がってタケルを投げ飛ばすと、カージャック。
「デートさ。車借りるぞ」
そのままモモコを助手席に乗せて盗んだ車で走り出し、大変、井上敏樹です(笑)
「どういうつもり」
「俺は君を助けた。貸しを返してもらいたいだけだ」
「え?」
「俺を愛してくれればそれでいい」
「呆れた。強引な人ね」
身勝手だがどこか魅力的な濃いめの男が物語を振り回す、というザ・井上ワールドですが、こと東映ヒーロー作品の流れで見ると、 悲恋ロマンス物を多投する藤井邦夫の存在が、同じ色恋絡みでもエキセントリックな掛け合いを中心に据えていく井上脚本の芸風確立にどの程度の影響があったのかは、 気になってきます(笑)
井上敏樹の脚本デビューは1981年に遡り、東映特撮作品への参加が1984年、戦隊初参加が前年の『フラッシュマン』なので、 雑な憶測以上のものにはなりませんが(そうでなくとも基本的に、色々なものを吸収して出力しているわけで)、藤井、井上、 そして後の荒川稔久、という恋愛要素の盛り込みに積極的な面々の中での、脚本家としての個々の差別化や、 役割分担の発生みたいなものはあったのだろうな、というのは想像すると面白いところ。
その点、この三人が一同に介した『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)では、ひたすら我が道を行く藤井邦夫、 男と男の濃く激しいぶつかり合いから気がつくとライバルが真ヒロインになる井上敏樹、 誰もやらないので私がリンを可愛くしますとアイドル回を放つ荒川稔久、と見事な色彩が生まれていたり(笑)
ちなみに曽田先生は、ヒーロー作品としてのチューニングという部分も含めて、割としっとりした純愛好みなのかな……? というのは諸作を見ての印象。藤井−井上ラインへの推論含め、これから80年代後半の戦隊を見ていくとまた、 印象が変わってくるかもですが。
そして恐らく、長石監督はモモコを綺麗に撮る事に大変こだわっており、 ヒカル――と名乗ったフルートの男とのデートシーンがしばし描かれて、多分これ、この時代のノリだったのだろうな…… というポップな演出がたまに飛び出す『マスクマン』(笑)
二人は高級レストランでのディナー後、窓からダイブして豪快に食い逃げし、後で光戦隊情報処理班が、 「任務上の必要事項でした」と弁償して口止め料を払います!
そして、そんな犯罪行為を
「今日は楽しかった」
で済ませるモモコ、光戦隊の闇はどす黒く深い。
「でも、ヒカルはぜんぜん、自分のこと話してくれないのね」
「俺のことか? 俺は君の事をずっと探し続けてきた。もう、何百年も前からずっと」
勢いでモモコに迫るヒカルだが、地上忍法フーセンガムの術に阻まれ、はしゃぐモモコの姿を追う内に、「おまえうちの妹みたいに、 任務忘れて地上人といちゃいちゃしてないか?」とイガム王子が姿を見せる。
ヒカルの正体は、ゼーバにより三日間限定の人間変身能力を与えられたグロンドグラーであり、 グロンの目的は人間として面影の君といちゃいちゃする事、そして後にマスクマンを全滅させる事にあった!
「モモコ、俺は、俺はおまえが欲しいんだ!」
モモコにマスクマンからの脱退を求めるも拒否されたヒカルは、翌日タケル達を襲撃するが、 モモコの姿に動揺した事を裏切りとみなされ、炸裂するゼーバ様からのお仕置きビーム。
「モモコ……殺してくれ。俺を、殺してくれモモコ」
「そんな……ヒカル、何故なの?!」
「俺は……愛と、光の世界で、生きたかった……。……モモコ……俺の本当の姿は……俺の、本当の姿は……!」
ゼーバのお仕置き光線により人間の心を破壊されたヒカルは、闘争本能に支配されたグロンドグラーの姿に戻るとモモコにさえ牙を向け、 タケルに諭されたモモコがオーラマスクすると、割とざっくりジェットカノン。
2話連続登場のGロボがダブルバルカンで蜂の巣にして鉄拳でトドメを刺し、 モモコは夕暮れの中でフルートを吹いてその死を悼むのであった……。
ケンタ夏の蜻蛉回と比べると、モモコが地底獣グロンドグラーの姿を見た上で説得を試みる点は良いのですが、 それに対してタケルが「もうあれは人間ではない」と止める事で結局は人と獣の境界線は突破できず、 なまじグロンドグラーに人語を喋る知性を与えてしまった事で、グロンドグラーの獣性がわかりづらくなってしまったように思えます。
その為、「人間の姿では愛せても、獣の姿では愛せない」というマスクマン側の判定が、必要以上にドライに見えてしまう事に。
また今回も、地底の住人と地上人の関わりを描きながら、それをタケルと美緒の関係には太く関連づけない (タケルがこれといって特殊なリアクションを取る事もない)為、物足りなさを感じてしまう内容に。戦隊シリーズも10年近くを数え、 作劇に関する試行錯誤は窺えるものの、当時の尺の都合もあってか、色々やろうとしたけど時間が来たのでハイこれまで、 みたいになってしまいがちなのは今作の残念なところ。
- ◆第35話「ゼーバの謎!禁断の墓」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
- 「キロス、いい天気だな!」
なにやら観測中のキロスが自身を呼びかける声に振り向くと、そこに居たのはアキラ。
「いい天気だけど、地上には血の雨が降るかもな」
アキラは物凄くいい笑顔でキロスに告げ、光戦隊の闇は深い。
「一度おまえと勝負してみたかったんだ!」
表情を引き締めたアキラはキロスに躍りかかり、相手は極悪非道の盗賊騎士ではあるのですが、 生身で段平振り回すアキラの人狩り度合いが高すぎて、光戦隊の闇はこの上なく深い(笑)
両者は互いの得物を打ち合わせて激しくぶつかり合い、2年の間、Wi-FiどころかISDNも通っていない地底の風地獄で娯楽に飢え、 執念で編み出した必殺技への執着はわからないでもないですが、すっかり大技頼りになってしまったキロスは、 クレセントスクリューを回避されると身軽に飛び回るアキラの連続攻撃を受けて足を滑らせて崖から無様に転落し キロスーーーーー!
「やった……勝ったぞ! キロスに勝ったぞ!」
小躍りして光戦隊本部に戻ったアキラは武勇伝を仲間達に語るが、話を聞いていた姿長官にたしなめられる。
「アキラ、君は浮かれすぎて、戦士として大切な事を忘れてしまったようだな」
「え?」
「死体の確認とトドメだ」
……じゃなかった
「キロスは何をしようとしていたのか。どうして調べてこなかった」
姿長官は時々、凄く真っ当な事を言うので評価に困ります(笑)
「気になる……キロスはいったい何をしようとしていたのか」
冒頭に置いたキロスの観測作業が似合わない感じなのを含めて印象的だった事で、 見ているこちらの疑問と姿長官の疑問が綺麗に重なるスムーズな流れで、出動する光戦隊。
一方、あいつアキラにやられて必死に崖登ってるぜププ、とキロスの醜態を実況生中継するチューブでは、 アナグマスが地底ピラミッドの存在に思い至る。
……わかりやすいといえばこの上なくわかりやすいですし、どちらかといえば好きなノリですが、 数年後の曽田脚本における「スペース標準語!・スペース通信波!・スペース通信機!」の事例を思い出すスタイル(笑)
地底ピラミッド――そこには、あまりにも凶暴凶悪な為に厄災として封じられた最強にして最悪の地底獣リサールドグラーが眠っていたが、 300年に一度、地底ピラミッドに太陽の光が当たる日にリサールドグラーは甦る、と伝説に語り伝えられていた……。
「リサールドグラーを復活させてはならん!」
キロスの狙いに気付いたゼーバ様はいつになく慌てて阻止を命令し、その様子に違和感を抱くアナグマ。
(おかしい……あのゼーバ様の反応は異常だ。一体どうしたことなのであろうか)
腹心アナグマさえ知らないゼーバの焦りの正体は何か……観測を続けるキロスの元にタケル達とチューブの軍勢が集うが、 一足遅く伝説の時に至り、キロスの仕掛けていた爆弾によって崖崩れが起きると、地底ピラミッドに射し込む太陽の光。何故か、 それに呼応するかのように地底城内部にも眩い光が輝き、突如として苦悶しながら浮上したゼーバは、謎の粘液にまみれて玉座でプルプル。
その様子をいぶかしんだアナグマは、秘密の地底図書館でリサールドグラーの記録について調べようとするが、 肝心のページが破り取られており、その姿をオヨブーが怪しく見つめる中、地上ではキロスの目論み通りにリサールドグラーが復活。
キロスは勇躍、俺が最強である事を証明してやる! とリサールドグラーに襲いかかる、 ような事はなくリサールドグラーをマスクマンへとけしかけ、直前の掘り下げ回で描かれた、 最強にこだわるバトルジャンキー・キロス像は、早くも整合性を欠いてしまう事に。今回の、 手段を選ばずイアル姫を獲得しようとするキロスの方が“らしい”のですが、重要なライバルキャラ(と思われる)だけに、 脚本家の間で行動原理の統一が図れなかったのは、残念なところです。
「万物は滅びて土に還る……まさに究極の地底獣、リサールドグラーらしい技だ。マスクマンも土にしてしまえ!」
リサールドグラーの吹き出すガスはアングラ兵を一瞬で砂に変え、オーラマスクした5人を襲う埴輪結界攻撃。 おいしくトドメをいただこうとするキロスのクレセントスクリューにより5人は激しく川落ちし、なんとか岸まで這い上がるも、 アキラ(回避力高)以外の4人はダメージで気を失ってしまう。
「ごめん……俺が浅はかだった。あんなに浮かれてなければ、キロスの企みを防ぐ事が出来たかもしれないのに」
唯一意識のあったアキラは自分の軽挙を反省。一流の戦士として死体の確認と念入りなトドメの為に崖を下りてきたキロスの姿を認めると、 派手な身振りでキロスの注意を引きつけて仲間達から引き離し、自らの失策を反省して仲間の為に命がけの行動を取るに至る姿が、 アキラの子供っぽいキャラクター性を土台にして面白い流れに。
本部からの通信によりタケル達が目を覚ましてアキラを追いかける一方、地底勇者と忍者は禁断の地である地底ピラミッドの残骸を調査。 地上では、キロスとリサールドグラーを同時に相手取っていたブルーマスクが、 キロスのクレセントスクリューを参考に編み出したトンファースクリューでリサールガスを跳ね返す戦闘の天才ぶりを見せつけて割と一人で困難を乗り越えてしまい、 5人揃ったマスクマンはコンビネーション攻撃でリサール追い詰める。
バラバとオヨブーは巨大な棺桶を発見するが、何故かそれには外側から鎖がかけられており、 中から見つかったのは呪いのメッセージカード。呪いの埴輪ビームを受けた勇者と忍者は、カードの文面から、 そもそもリサールドグラーは封印されていなかったという隠された真実を知る!
「あいつはリサールドグラーではない! 墓守地底獣、ハニワドグラーだったのだ!」
てっきり、美術班の勢いかと思われた埴輪攻撃は伏線だったのだ!
「こんな筈ではない……奴はリサールドグラーではない!」
キロスもマスクマンにこてんぱんにされるドグラーの姿から真相に思い至り……今回面白かったのですが、 〔せせこましく測量 → アキラに顔面を連続ではたかれ滑落 → 打倒マスクマンに助っ人頼り → 「まさに究極の地底獣」と大絶賛 → おいしいところだけいただこうとする → アキラに必殺技を応用される → 「こんな筈ではない」と手の平返し〕 するキロスの株価は手の打ちようのないレベルまで下落して、盗賊騎士は色々なものの犠牲になりました。
まあ、小悪党ムーヴは小悪党ムーヴで極めると面白くなるので、もはやキロスにはそちらの道で期待したい。
リサール改め埴輪ドグラーはジェットカノンで木っ葉微塵となり、オケランパ。3話連続の出撃となったGロボは、 開幕のダッシュパンチをかわされて埴輪トライアングルに囲まれるも、慌てず騒がず飛び道具で埴輪を破壊し、 包囲を破るとスパートから鉄拳で合掌。……マスクマンは最近すっかり巨大戦に慣れてきて、敵への対応が冷静すぎます(笑)
タケル達はアキラの奮闘をたたえると共に、あまり調子に乗らせないようにしないとな、とにこやかに帰路に就くが、 埴輪ドグラーの手応えから、伝説の地底獣では無かったに違いない、とあたりをつける。
「しかし……本当にリサールドグラーは居るんだろうか」
……前々回が顕著でしたが、タケルは考えながらゆっくり喋ると、「誰か口説いている」みたいな口調と声音になって、とても危険(笑)
「もしそいつが居たとなると、本当に恐ろしい敵だろうね」
そしてチューブでは……リサールドグラーはどこに消えたのか? ゼーバは何を慌てていたのか? 消された史料には何が書かれていたのか? 地底ピラミッドの伝説を巡り「一つの疑惑」が生じたまま、 平静を取り戻したゼーバ様の瞳のアップで、つづく。
前回−前々回は、大きな物語の軸となる「タケルと美緒」に非常に接近した要素を盛り込みながら、 表層をなぞっただけで終わってしまう物足りない内容で落胆したものの、ゼーバ様に焦点を合わせた今回は、 地底王の謎を軸にチューブ陣営の様々な思惑も織り交ぜながら、アキラの成長譚としても綺麗に着地。 地底ピラミッドから出土した埴輪に隠された古代地底人のメッセージがゼーバの秘密を語ろうとするも中途半端なところで埴輪が爆破される! みたいなエピソードではなくてホッとしました(笑)
アキラ、そしてマスクマンというチームを描く回としてもしっかりした出来で面白く、噛み合った時の曽田×長石は、 情報の盛り込みとそれをテンポ良く見せていく手際がさすがの一言。
一方、物語全体は、面白くないわけではないが、もう一つ盛り上がらない状況が続くまま、気がつけば残すところ約1クール強。
今作を覆う停滞感の大きな要因は、キロスによる美緒の正体判明も全体に波及せずスプリングボードになりえないなど、 本来なら物語をぐいぐい引っ張っていってほしいタケルが「現状維持で保留」状態が続いている点にありますが、次回、 「双子の姉妹」という要素が起爆剤になってくれる事を、ちょっぴり期待したい。
- ◆第36話「消滅! 双子の破壊少女」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- 「エリコとマリコ……世界で一番仲のいい双子の姉妹を見つけました」
「おまえ達には恐るべき力が秘められている。今にそれを思い知らせてやるぞ」
イガムによって奇妙な空間に誘い込まれた双子の姉妹は、ニメンドグラーの仮面を取り付けられ、 互いを求めて呼び合う事で凄まじい破壊エネルギーを発生させる体質に。
この爆発にたまたま巻き込まれたタケルは少女に呼びかけるが、少女はタケルの声がまるで聞こえない様子で姿を消し……
「女の子にやられただって?!」
本部に戻ったタケルは4人に笑い物にされるが、街では謎の爆破エネルギーによる大混乱が発生。 オーラモニターに映った少女を追いかけて出動したマスクマンは双子を発見するが、イガム一派が邪魔に入り、双子でボン! 作戦の詳細を知る事に。
年端もいかない二人の少女がグロテスクな仮面を身につけ、互いの名を呼びながら歩き回ると謎の破壊エネルギーが発生する! という作戦はビジュアル的に割とチューブが情けないのですが、 被害規模としてはパイロット版以来のような気がする大成功だ!
イガムは無事に相互フォローになっていたイガム竜を召喚し、その攻撃を受けながらも赤がマリコに飛びつくと、 美緒のペンダントが光を放って外れる仮面。タケルはマリコに対し、どんなに仲の良い双子でも、 一緒に居すぎて互いを頼りすぎてはいけない、と諭してエリコの元へと向かい、こちらもペンダントの力により仮面を引きはがす事に成功。
「そのペンダントは……!」
「このペンダントは、冷たい氷に閉じ込められていても、美緒の優しい心を伝えてくれたんだ。……同じ双子として、 仲のいい姉妹を引き裂くような事を、美緒の心は、許さなかったんだ!」
ペンダントの力に関してはタケルのメルヘンでひとまず処理され、光戦隊マスクマン!
健闘を見せる二面ドグラーだが、ペンダントの力で弱体化するとマスキークラッシュで大ダメージを受け、 ジェットカノンでオケランパ。巨大戦はグレートファイブが担当し、本日も冷静に飛び道具で仮面を破壊すると、 ファイナルオーラバーストでフィニッシュ!
双子の姉妹はそれぞれの道を歩み出す決意をタケルに語り、拡大解釈でモテちゃって困ってるなぁ感を出すタケル、 やはりちょっと、駄目なイケメン感……(笑)
お義兄様、お義兄様、今こそ、心置きなく成敗の時……!
イガムが双子を利用する回、という事で一応、「美緒のペンダント」がキーアイテムにはなったのですが、 それに対するイガムのリアクションがこれといって面白くもなく掘り下げられもせず、 「タケルと美緒の物語」の進行度としては相変わらず物足りない内容。
前作『フラッシュマン』においても、「メスとの戦い」と並行したもう一つの動機付けである「家族探し」 のエピソードが全体の流れの中にスムーズに組み込めなかった、という問題が発生しており、 また今作と同期の《メタルヒーロー》シリーズ『超人機メタルダー』も「ゴッドネロスの正体を突き止める為に古賀博士の足跡を追う」 という主人公の行動目的の処理に難儀していて、ストーリーラインの模索による、時代的な生みの苦しみ、 という面はあるのかもしれません。
(2026年1月7日)
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