■『光戦隊マスクマン』感想まとめ3■


“百発百中千発千中全力集中!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『光戦隊マスクマン』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第13話「アイドルを追え!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 男連中が新人アイドル・島田マリナにやに下がり、男女メンバーの厭味の応酬から始まるという、なんだか井上敏樹らしい導入。
 マリナのサインを貰う為に出待ちに加わっていたケンタは、押しの強い女カメラマン・ヨウコ(なんとなく、 同期作品『超人機メタルダー』のヒロイン・仰木舞を思わせるキャラクター)と知り合いになってバイクでマリナを追いかける事になるが、 よそ見をしている内に自転車と衝突事故を起こしかけて転倒。場面変わるとビリヤードバーで話し合っており、 撮影の場所選定は演出の領分だと思われるのですが、脚本で指定でもしたのだろうかと思いたくなる井上濃度(笑)
 東條監督とのコンビもこの後長いですが(よく触れますが『鳥人戦隊ジェットマン』第12話が、実にこの二人らしい傑作)、 割と井上脚本の求める絵とセンスが合致するところがあったのか、或いは共に仕事をする中で井上敏樹が影響を受けていったのか。
 マリナに謎めいたものを感じる、と執拗にパパラッチに及ぶヨウコは、 控え室でガラガドグラーの体液をサインペンのインクとして補充するマリナの姿を激写。 新人アイドル・島田マリナとは仮の姿……ニューアングラ兵作成計画の為に、愚かな人間どもに地底獣の血のサインをばらまくその正体は、 なんとまさかの地底くノ一フーミン。
 イガム様の為ならこのフーミン、フリルのスカートで歌って踊ってちやほやされてもみせましょう!
 フーミンとドグラーがヨウコを連れ去ろうとするのを目撃したケンタはオーラマスクし、仲間達が合流。軽く戦闘になり、 怪人の溶解ガスを示す為の溶けオブジェが、どうしてモアイなのか(笑)
 ヨウコを救出して一時撤収するマスクマンだが、ガラガドグラーの体液で書かれたサインが変形してヨウコを包み込む繭になってしまう。 その内部で人間の細胞を変形させる事により、地上人の数を減らすと同時にそのままチューブの戦力に変えてしまおうというのが、 恐るべきニューアングラ兵作成計画だったのだ!
 ケンタは、裏社会のヤバい奴ら、もとい、俺の仲間達が狙っている、とマリナを連れて強引に逃走するが、 そこに仲間達が立ちはだかって押し問答から殴り合いに発展する……というのは、あまりにも茶番すぎて盛り上がれず。
 茶番とはいえ、同僚の女子二人を力一杯投げ飛ばし、互いの顔面に飛び蹴りを打ち合うマスクマンの壊れっぷりには震えましたが、 「視聴者はマリナの正体を知っている」が「マスクマンはそれを知らないのでマリナの正体を知ろうとする」という情報のギャップが、 上手く面白さに繋がらず、空転。
 「馬鹿め! マスクマンもやはり人間。自らの愚かしさに倒れたか」
 お陰で、のこのこ出てくるイガム王子も、マスクマン迫真の芝居にまんまと騙されたというよりも、 某残念王子寄りのとてもお馬鹿な感じになってしまい、〔職業:王子〕からジョブチェンジを考えるべきなのか。
 明るめの挿入歌をバックに、爆発とオーラの輝きが加わった揃い踏みから戦闘に突入し、 囚われの人々がガラガドグラーのダークパワーにより後5分でニューアングラ兵になってしまう事に焦るマスクマンだが、 苦戦を強いられる。
 変貌していく人々の特殊メイクはなかなかグロテスクで、話の内容はもうひとつでしたが、天井に沁みるドグラーの体液など、 スリラー系の演出は印象的で面白かったです。
 「見たかフーミン! 俺の怒りを! おまえに騙された多くの人々の、怒りと悲しみの力を!」
 メイン扱いだった黒が、男の純情弄びやがってぇぇ! と私怨をオーラパワーに変えてフーミンを打破し、 怪人の方は赤が瀕死に追い込む、という変則的な割り当てになるのですが、マリナの正体=フーミンと知った際の黒の反応が薄い、 視聴者にとってのインパクトはだいぶ前に終わっている、赤と怪人のバトルを合間に挟む、と悪条件が重なって、 「げげぇっ、フーミン?!」→「許さねぇ、絶対に許さねぇ!」という面白さと劇的な連動性が弱く、 物語上の仕掛けは歯車が噛み合わずに総じて空回り気味になってしまいました。
 マスクマンはガラガドグラーをショットボンバーで爆殺し、巨大戦ではグレートファイブ(ターボランジャー?) のテーマソングが初使用されてバーストバーストファイナルオーラバースト!
 チューブのニューアングラ兵作成計画は阻止され、今回の功労者といえるヨウコに食事をご馳走するケンタだが、 心優しい仲間達にもたかられるのであった、でオチ。
 クレジットに役名表記もあるアイドルよりも、むしろカメラマンの方がフィーチャーされていた感があり、 企画回だったのかは微妙なところですが、これで女性ゲストとの絡みが三連発となったケンタは、 すっかり女性に弱い三枚目ポジションに定着。タケルが浮気防止の為に女性ゲストと絡みにくいのでケンタが担当になっているのでしょうが、 さすがに偏っている感は強く、中盤にかけて変化があるのかどうか(『チェンジマン』の疾風的なナンパキャラというわけでもないですし)。
 次回――10話ほど出番のなかったスピンクルーザーが、なんか凄い動きしている?!

◆第14話「青空への大脱出!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「やっぱり思った通りだ! あったんだ! こんな明るい世界が!」
 「君たちは、地上を知らないのか」
 風に飛ばされた南野陽子(!)のブロマイドを追いかけたアキラは、岩の裂け目から広大な地底空間の中に吸い込まれ、 青空を知らない地底生まれの兄妹と出会う。そこはチューブが、誘拐してきた地上人達をキノコ栽培奴隷として使役し、 身も心も地底人にしてしまおうとする、地底人養成都市であった!
 「ゼーバ様が地底王になられる前から進めておられた実験の一つだ」
 (地底王ゼーバ……なんと計り知れぬ恐ろしい御方よ)
 「50年以上もかけて進めてきた計画、絶対マスクマンに気付かれてはならん!」
 ゼーバ様の地上侵攻計画が地道にコツコツ長期的なものであった事がわかり、計画を知るバラバと知らなかったイガムの情報差により、 両者がゼーバに仕えてきた期間の違いを示すというのは、相変わらずの手堅さ。
 地底都市の光景に怒りのアキラは殴り込みを仕掛け、全体的にアキラの生アクション祭を中心にして展開。 人々に隷属からの解放を促すアキラだが、奴隷の境遇に慣れきった人々はそれを拒否し、 青空に憧れる兄妹と3人で脱出を目指すもチューブ勢力の妨害を受けた所に、長官のオーラあやとり占いに導かれたタケル達が合流する。
 ブルーマスクはあやとりのひもでオーラ縄ばしごを作り出し、EDで印象的なあやとりが本編に組み込まれるのですが、 伏線皆無な事もあって、どうも無理矢理な感じに。
 地上に出てからの戦いでは、スピンクルーザーがど派手なウィリーアクションでアングラ兵を薙ぎ払い、こちらもだいぶ唐突なのですが、 映像の迫力は素晴らしく、青がアカメドグラーをトンファーで殴り飛ばした背後に、きゅきゅっと停車する絵も格好いい。
 マスクマンがショットボンバーでアカメを吹き飛ばすと赤影は撤収し、巨大戦はさくっと終了。尺の都合もあるのでしょうが、 今作、地底獣の扱いが雑な時は本当に雑で、これといって個性のない量産型クリーチャーのまま退場してしまうのは、残念な部分。
 地底生まれの兄妹は待望の青空を目にし、体制に従順なだけの飼い慣らされた豚と化した大人達の扱いはどうなるのかと思ったら、 なし崩しで地上に出てきて大喜び。そもそも純然たる被害者ではあるものの、途中で描かれた温度差がこれといって物語で活かされないまま片付けられてしまい、 微妙に釈然としないふんわりした大団円で、つづく。

◆第15話「さらば愛しき花よ」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 モモコとハルカが部屋の前で「じゃ、また明日ねー」と挨拶を交わしており、マスクマンメンバーはどうやら、 光戦隊本部ビルに居室を与えられている模様。モモコの部屋の中には、メンバー5人が一緒に写った写真が飾られており、 実に安定して仲の良い戦隊です。
 部屋に入ったモモコは、大切に育てている花につぼみがついた事に、大喜び。
 「なんだそんなこと。びっくりするなぁ、たかが花じゃないの。ほんっといい年して少女趣味なんだから、もう」
 一方、忍者は超クールだった。
 そんなハルカに、5歳の時に穴に落ちて迷い込んだ洞窟で、この花の声を聞いて命を救われた思い出をモモコは語り、 抜け忍回でのスキル《植物知識》を、同じ藤井脚本回で拾う形に。
 「この花はね、5年に一度、それも三日間だけしか咲かないの」
 花と一緒のモモコの映像にうっすらフィルター(?)かけて、アップを多用しながら今回メインのモモコをなるべく綺麗に撮ろうとするのが、 長石監督らしい見せ方。
 「キャロルラブはいつも私を励まし、力づけてくれた。これからもずっと大切に育てていくわ」
 「モモコ、早くつぼみが開くといいね」
 辛い時や苦しい時、心の支えになってくれたキャロルラブについてのモモコの思い入れを知ると、 当初は真面目に話を聞く素振りのなかったハルカがその気持ちを尊重して一切小馬鹿にせず、 君ら本当にいい奴らだな……!
 その反動なのか、揃いも揃って何やら殺伐とした雰囲気の出自なのですが、 回想のモモコが拳法着姿で繰り返し男性に叩きのめされており、やはり一子相伝の暗殺拳法の家系だったりするのか。 《植物知識》は勿論、《毒物知識》に繋がるわけですし。
 いよいよピンチの時は……相手の目を狙うのよ!
 その頃、ゲルゲドグラーがばらまいた種子から瞬く間に成長した深紅の花が地上に出現。チューブの侵略兵器である恐怖の地獄花が、 ツタを伸ばし、トゲを突き刺し、ガスを噴き出し、夜の街で次々と人々の命を奪っていく!
 「思い知れ、ゲルゲドグラーの地獄花の恐ろしさを」
 死傷者不明の大雑把な爆発ではなく、地獄花による殺害が明確に語られる事で、モモコサイドの幻想性と、 チューブサイドの非道な侵略行為が互いを引き立てる対比となって展開を引き締めると共に、 双方の釣り合いを取ったのが今回の良かったところの一つ。
 正直、回想シーンでモモコが花の声を聞いた時には、これは藤井先生の幻想ロマン趣味があらぬ方向に転がってしまうパターンでは…… とドキドキしたのですが、長石監督の演出もあって、幻想性はモモコを綺麗に見せる為の素材として主に使用された事により、 幻想要素の飛躍が抑えられたのが良い方向に転がりました。
 被害現場を調査した光戦隊は、怪しく咲き乱れる見た事もない深紅の花を目に留めて持ち帰り、モモコがそれを調査する事に。 太陽が沈み、活動を始めた地獄花の恐怖がモモコに迫るが、開花したキャロルラブから吹き出した花粉が、 地獄花を枯れさせてその窮地を救う。同じ頃、オペレーションルームのハルカが地獄花に襲われていたが、 モモコが持ち込んだキャロルラブがこれを枯らし、謎の連続殺人の真相と対抗策が同時に判明。
 「キャロルラブが、この花を……」
 だが、子供の頃から自分を支え続けてくれたキャロルラブを駆除剤として失わなければならない現実に、 モモコは思わず鉢植えを抱えて自室へと駆け込み、大切な白い花をひとり見つめる。
 「キャロルラブ、子供の時から私を助けてくれた……キャロルラブ……みんなを助けてあげて。お願い」
 一瞬動揺するも、くどくど悩みはせずに公の大義を優先するのはこの時代的なものも感じますが、 とはいえキャロルラブをあっさりと提供して情緒を失う事なく、しかし私情を優先して人命のかかった事の大小を見誤る事もない、 というのは絶妙なバランス。
 モモコのヒーロー度を上昇させつつ、その想いを酌み取って黙って見守るチームとしてのマスクマンの姿も劇的になり、 またその心情を最も知るハルカの表情や言葉で、女性メンバーの友情も補強する、と至れり尽くせりで、 短い尺の中で物語の奥行きを広げる見事なシーンでした。
 「長官……みんなを助けましょう」
 夜が明けて、フーミン&地底獣と戦うタケル達は地獄花攻撃に苦しむが、完成した駆除剤を桃がジャイロにより空中から散布し、 次々と枯死してゆく地獄花。
 「この薬には、キャロルラブの平和を願う魂が込められてる。……ありがとう、キャロルラブ。……さよなら、キャロルラブ」
 「何故だ、何故キャロルラブが地上の人間どもの手に……」
 地底では、地獄花の天敵である事から根絶やしにした筈のキャロルラブが残っていた事に動揺が走り、バラバにはギロリと睨み付けられ、 ゼーバの怒りに何やら考え込んでいたイガムは、喫煙コーナーもとい氷塊の中に眠るイアルの元へ。
 「イアル……絶滅した筈のキャロルラブが地上にあった。……亡くなった王妃たる母上が、 かないもせぬ平和を願って育てたキャロルラブが!」
 ――「イガム、イアル、このキャロルラブは、悪魔の地獄花を枯らす、平和の花。……たとえ、どんな事があっても、 絶滅させてはなりません」――
 回想シーンで母子の語らいが入り、抜け忍回(今回と同じく、長石×藤井コンビ)で語られた地底王妃とキャロルラブが思わぬ接続。 これにより、イガム&イアルというキャラクターの背景として王妃の考え方が存在している事がハッキリとし、 王妃もキャラクターとして物語の中にしっかりと根ざしてくる事に。
 「イアル! 花で平和を築き守るなどと甘いことを言って滅びた我が王家! イアル! なぜキャロルラブが地上にあったのだ!」
 イガムはやりきれない思いを物言わぬイアルへとぶつけ、花と女性メンバー、というわかりやすいキャラ回かとばかり思っていたら、 チューブに根絶やしにされた筈のキャロルラブが残っていた事が、“消える事のない平和への祈り”のシンボルとして機能するのが非常にお見事。
 少女時代のモモコ(地上人)が、花の声(地底王妃の願い)に救われた、というのも一段深い意味を持つ事になり、 全体のオーダーなのか、藤井先生が地底王国関連を積極的に掘り下げていこうとしているのかはわかりませんが、この接続は大変巧い。
 駆除剤散布中のジャイロに迫るチューブの戦闘機部隊との戦いで特撮空戦もぬかりなく差し挟み、合流した5人は、光戦隊・マスクマン!
 うむ、秀逸回。
 ゲルゲドグラーの攻撃に苦しむピンクだが、マスキーリボンで拘束するとオーラ爆殺し、前回メインが青とのコンビ回だったので、 初の単独メイン回で戦闘面での見せ場もきっちり。
 「キャロルラブ……助けるつもりが、また助けてもらってしまったわね。…………ありがとう、キャロルラブ」
 巨大戦はざっくり終了し、可憐な白い花に想いを馳せるモモコの姿を仲間達が見つめ、しんみりとしながらも前向きなオチで、つづく。
 全体的にバランスの巧く取れたエピソードでしたが、キャロルラブが現在進行形の時間軸で直接喋る事はなく、 モモコが聞いた声はあくまで子供時代の幻想であったのかもしれない、という形でファンタジー要素の飛躍を抑えつつ、 王妃の願いが回想シーンの綺麗事ばかりではなく、具体例として落とし込まれたのは秀逸でした。
 モモコ回としてもしっかりまとまっていた上でイガム関係の要素も巧く掘り下げ、良エピソード。

◆第16話「必殺!炎のバラバ」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 山中でケンタを次々と襲う、トゲ付きのバネ仕掛けや迫り来る矢の殺意を込めたブービートラップ!
 「久しぶりだな、ケンタ」
 それは、ケンタの師匠・車翔吾が、久しぶりに来訪する弟子への歓迎として用意していた……のか、 日常的に命を狙われているので常に設置してあるのか、もしかしたら借金取り対策の可能性もあり、 光戦隊の闇は深い。
 「先生……もっと、もっと稽古をつけて下さい。僕は、僕は強くなりたいんです」
 軽やかに罠を回避したケンタが、暗い洞穴の中で師匠と激しくぶつかり合っていた少年時代を懐旧していると、 バラバ率いる部隊と地底獣ガマロドグラーが奇襲を仕掛けてきて、オーラマスクして戦闘に。……なお師匠は、え、 あいつ今なにやってるの? という顔になりました。
 戦闘員を叩き伏せるマスクマンだったが、蝦蟇口ドグラーの放った特殊な虫により赤黒青桃が生命エネルギーを奪われ、 それを我が物としたバラバは、マスキーロッドを一撃で両断するファイヤーバラバへと超進化。
 飛び道具からの地形攻撃でバラバを足止めして辛くも本部へ撤退するが、師匠に助けられたケンタ以外の4人は、 気力と筋力を失って変身不能になってしまう。
 「変身しなくても、戦う事はできる」
 鍛えれば鍛えるほど無限大・秘められた力は生身の体から・筋トレこそが解脱への道のモットーを掲げる光戦隊は、 姿コンツェルンの私有する地図にない特訓施設・風雲地獄島へと再上陸し、もっと岩をーーー! と、 ジブラルタル海峡を越えよとばかりに放たれる砲撃の嵐を生身で受け止めようとするが……ちょっと無理そうだった。
 「みんな! どうしたんだ?! 立つんだ!」
 「駄目だ……全然力が出ない……」
 「お前達それでも選ばれた戦士か。エネルギーを奪われたのなら、何故もう一度エネルギーを引き出そうとしないんだ。やり直すんだ、 初めから。オーラーエネルギーは無限だ。何度でも引き出す事が出来る」
 オカルト寄りの指導者@恰幅のいい中年男性が強すぎる信念を持ってスーパーパワーに若者達を導いていく、 という構図は2年前の『チェンジマン』と同様の今作ですが、『チェンジマン』のアースフォースが“外的な”力であったのに対し、 “内的な”力であるオーラパワーの特色を改めて打ち出し、海岸で瞑想に入る4人を遠隔オーラパワーでサポートする長官。
 (焦るな……恐れるな。無だ。無の境地から、オーラエネルギーは生み出される)
 年齢的にスタミナに不安があるのか、他に何か理由があるのか、前線に立つことはない姿長官ですが、 考えてみると長官ポジションと戦隊メンバーが“同様のスーパーパワー”を有している、というのは割と珍しいでしょうか。
 勿論、うまくやらないと「ではどうして長官は自ら戦わないのか?」という疑問が発生してしまうので気軽に持ち込むと地雷、 というのはありますが、この辺り翌年の《メタルヒーロー》シリーズ『世界忍者戦ジライヤ』 (主人公の父親が師匠的存在のマスターニンジャ)が非常に巧く処理していたのも、 今作と『ジライヤ』の間にある繋がりを感じないでもなく。
 照りつける太陽の下、タケル達が必死に精神を研ぎ澄ます(モモコとアキラが途中で一度倒れる事で、 オーラパワー再獲得に厳しい「試練」性が与えられているのが後半にかけて効く事に)一方、ケンタもまた、 少年時代の修業の地で己を磨き直そうとしていた。
 (鍛え直すんだ……! 俺も一から、もっと強く……もっと強く!)
 怪人の特殊能力による状態異常、のプロットを持ち込みつつ、「怪人を倒したら状態異常が回復」のセオリーは採らない事により、 力を奪われた4人と力を奪われなかった1人の双方の特訓にそれぞれの意義を与え、マスクマンとは何か、を改めて描く真っ当な修行編。
 (勝てるかバラバに……あの、バラバに……。……俺一人で)
 敗北の記憶に思い悩むケンタが、固く握りしめた両手のアップの後ろにボディアーマーを伝い落ちる汗を描き、 流血描写をせずに、流血的な心情を表現してているのが素晴らしい演出。
 ところがそこに突然、漆黒の鎧武者が現れ抜き身の日本刀でケンタに襲いかかる! この凄まじい東映感(笑)
 (このままではやられる……!)
 タケル達が瞑想を続ける中、謎の鎧武者の執拗な追跡に追い詰められるケンタは、必死の寸前、 振り下ろされる日本刀を受け止める真剣白刃取りに開眼。渾身の反撃を鎧武者に叩き込むと頬面が現れ、その正体は、もちろん師匠。
 「ケンタ、今の呼吸だ」
 「先生、僕の為に……」
 「おまえが、正義の為に、戦ってるのはわかる。だが……心に、恐れがあっては、勝つ事はできん。行け。そして、勝つのだ」
 抱き起こした師匠が瀕死状態のごとく呻いていますが、お互い、殺意には殺意を向けなくては、真の力は引き出せないのです。 瞑想中の姿長官も、そうだそうだと言っています。
 マスクマン不在の地上がチューブの大空襲を受ける中、ブラックマスクは一人敢然とバラバに勝負を挑み、 一方で灼熱していくタケル達4人と姿長官のオーラパワー。
 「バラバ、許さん!」
 「貴様死ぬ気か……?!」
 バラバの必殺剣を開眼した奥義で打ち破った黒が相討ち覚悟で組み合う一方、 無念無想の境地に到達した4人は遂にオーラパワーを回復し、アップで次々カッと目を見開いていくのがリズミカルで格好良く、また、 一方的に黒に助けられる役回りではなく、4人の再起は再起でヒロイックに描かれるのが、良いバランスでした。
 「……みんな!」
 「腑抜けどもに用は無いわ!」
 「オーラマスク!」
 バラバの口臭高周波を受けて追い詰められた黒を助けた4人は再変身。
 「みんな、元に戻ったんだな」
 「貴様達ぃ……!」
 「へっ、オーラエネルギーは無限なんだ! 幾らでも引き出す事が出来るんだ」
 ここだけ抜き出すと無限エネルギー自家発電システムなのですが、オーラパワーを再び引き出す為の苦闘が入念に描かれる事で “奇跡の否定”が成されており、あくまでもそれは自らの心身を鍛える事で成し遂げられるもの、というのは、 『チェンジマン』における追いアースフォース否定からの流れも感じるところ。
 「なにぃッ?!」
 「光戦隊!」
 「「「「「マスクマン!!」」」」」
 今回も絶妙に決まって、2話続けて気持ちいい揃い踏み。
 つくづく、ここが美しくはまるのが醍醐味であるな、と。
 再び5人揃ったマスクマン(黒一人では結局バラバに勝っていないのも良い目配り)は、 鮮やかなコンビネーション攻撃でバラバを退かせると、次々と剣を投げつけてからのレーザーマグナムで地底獣の虫攻撃を阻止してからショットボンバー。 巨大戦ではジャイアントスイングからの銃撃、そしてファイナルオーラバストにより蝦蟇口ドグラーを葬り去るのであった。
 大きな危機を乗り越えた5人は、ケンタの師匠も交えて川原で焼き魚を楽しみ、 真剣白刃取りを会得したと豪語するケンタの頭をアキラが竹刀で叩いて一騒動、のほのぼのエンドで、つづく。
 なおアキラがケンタの背後から竹刀を振り下ろす為の隙をモモコが誘導しており、二人のコンビ要素が強められると共に、常在戦場、 光戦隊の闇は深い。

◆第17話「破れ!地獄の迷宮」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 朝食はみんな一緒にマスクマン。
 戦隊メンバー一同揃っての食事風景というと、前々作『チェンジマン』では戦士団が周囲にずらりと並び上座に親分を据えての固めの盃、 前作『フラッシュマン』では宇宙船の中でわびしい宇宙料理(「フラッシュ星、本当に酷い星だった……」)、だったので、 だいぶ清々しくなりました!
 ところが朝刊に載った連続ひったくり犯の似顔絵と情報があまりにもタケルそっくりだった事から、ついつい不審の眼差しを向けてしまう仲間達。
 「みんな……この泥棒、俺だと思ってんのか?!」
 気まずい空気が流れる中、頭に血が上るタケルだが、夜間の外出について触れられると、
 「冗談じゃない! 腹減ったから屋台のラーメン食いに行っただけだ! 俺は泥棒なんかしちゃいない!」
 と弁明し、悪い奴はみんなそう言うんだ(笑) と、 なんだか後の<レスキューポリス>シリーズを彷彿とさせる展開に(笑)
 「仲間に疑われて、落ち着いていられるか!」
 怒れるタケルの言い分はもっともであり、普段仲が良いだけに反動の大きさもわかるのですが、なだめるアキラも振り払い、 口を歪めて4人に凄むタケルの口調と表情からは、アウトローだったあの頃の気配が濃厚に噴出しており、光戦隊の闇は深い。
 仲違いを深刻に見せすぎない意図もあってか一連のシーンがだいぶコミカルに描かれた後、真犯人を捜そうと街へ飛び出していくタケル。 だがそれこそがイガムとフーミンの仕掛けた罠であり、タケルはギーバドグラーの能力により作り出された、地獄の迷宮次元ラビリンスの中に誘い込まれてしまう。
 「タケル、まんまと罠にかかったな」
 むしろ、有能すぎるフーミン変わり身の術を駆使してタケルの社会的抹殺を図った方が光戦隊へのダメージは深刻だったような気はしますが、 地上人の官憲の手を借りるなどチューブのプライドが許さないのです!(それはそれで、光コンツェルンの政治力が発動しそうではあり)
 「地底獣ギーバドグラーの異次元ラビリンス、 その恐ろしさをたっぷり味わい苦しみのたうち回れ!」
 「味わえ!」でも「味わって苦しめ!」でもなく、「味わい苦しみのたうち回れ!」なのが憎しみの深さを感じさせ、 素晴らしすぎますイガム(笑)
 画面全周をエフェクトでぼかした異次元空間でタケルは次々と攻撃を受け、定例の魔空空間ネタの中で、割と派手な爆発を連発。
 一方、仲間達はタケルのブレスの反応から、タケルを内部に閉じ込めたビルに辿り着くが、異次元ラビリンスはタケル以外の侵入を拒み、 地底獣と激突するレッドマスクの姿は、ドアの向こうに消えてしまう。
 「あ、あのドア……」
 愕然と佇む4人だがその時、内側から開くドア!
 何事かと思ったら自分からドアを開けたイガムが4人に宣戦布告してまたドアを閉め、面白い、面白すぎるぞイガム……!
 「いいか、よく聞け。罠にはまったのはタケル一人じゃない。タケルを疑ったお前達4人も罠にはまったんだ。 バラバラになったお前達の心が」
 長官に事態を報告した4人は叱責を受け、折に触れ、“チームの意味”を押さえてくれるのは、今作のいいところ。 ケンタ達は手を重ね合わせてタケル救出を誓い、前回今回と、1・4にキャラを分けつつ、チームとしてのマスクマンの結束を描いていきます。
 迷宮の中で絶体絶命のタケルは遂に変身が解除され、トドメを刺そうと姿を見せるイガムとフーミン。
 (やられてたまるか……ここでやられたら、俺はなんの為に……)
 イガムの猛攻を辛うじて凌ぐタケルは、数々の特訓と死闘を思い返すと力を振り絞り、身を捨ててこそ死中に活あり南無八幡オーラパワー!
 「俺はレッドマスク! 地球は渡さん!」
 姿長官による闇討ち体験に比べればぬるま湯同然だとばかり、すっかり死地に慣れてきたタケルの瞳に炎が宿ると、 甦ったオーラパワーでイガムドラゴンを弾き返し、その波動を感じ取ったケンタ達はラビリンスへ繋がる異次元の扉を発見。 オーラマスクした4人が異次元の境目に突入すると内部のタケルのオーラと呼応してラビリンスを打ち破り、5人は合流に成功する。
 「イガム! 異次元ラビリンス、破ったぞ!」
 “若者達の成長物語”としての意識の強さからか割と苦戦傾向のあるマスクマンですが、 オーラパワー=「火事場の馬鹿力」に限りなく近い事に加え、今作と親和性の高いスポーツ物になぞらえると、 「積み重ねてきた練習(鍛錬)こそが土壇場にミラクルを起こす」という“物語の力”そのものを体現するスーパーパワー(同時に、 「積み重ねてきた練習の成果は決してミラクルではない」という理屈も成立させるのがとても厄介)である為、 追い詰めれば追い詰めるほど大逆転のエネルギーに変換してしまう、敵に回すと大変面倒な体質。
 野球はツーアウトからだ!
 揃い踏みから今回はボーカル入りの主題歌バトルとなり、赤がオーラを込めたマスキーブレード(射撃)を画面右手から放つと、 画面左手から突撃してきた戦闘員3+地底獣が次々と貫かれていく、というのはスピード感と迫力があって格好いい映像。
 「ま、とにかく今回は、全員で反省するしかないわね」
 ギーバドグラーを、ショットボンバー → 巨大化 → ジャイロカッター → ファイナルオーラバーストのコースで打ち破り、 仲直りした5人は揃って「反省」ポーズを取り、時事ネタ……? (※猿の次郎の「反省」ポーズかと思ったら、 一世を風靡したのは翌1988年らしく、ポーズもそれとは違い、他に何か流行りのネタがあったのか)
 ナレーション「地底帝国との戦いは、ラビリンスなのか。だが、信じ合い、助け合う仲間が居る限り、その迷宮は、必ず、 打ち破れるのだ。5人の力を集めて、戦え、光戦隊マスクマン!」
 ナレーションが綺麗にまとめて、つづく。

◆第18話「愛しの吸血人形!」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 モモコとウィンドウショッピング中、骨董店で見た人形に目を奪われるハルカ……それは、幼い日のハルカが大切にしていた、 思い出の人形だった。
 忍者装束で西洋人形をあやす少女という回想映像も凄いのですが、 忍者の道に人形遊びなど必要ない! と娘の大切な人形を無慈悲に投げ捨てるハルカ父がそれを軽々とぶっちぎっていき、黙々と修羅の道を歩む事になった少女ハルカの姿に、 光戦隊の闇は深いが段々冗談にならなくなってきました。
 大事なモノを失って、人は更に強くなるのですね……!
 お値段5万円の人形に手が届かなかったハルカとモモコは、取り置きしてもらった上で男達にカンパを募り、 夏らしくセーラー衣装になったアキラ、なんと5000円を供出。ハルカと人形の組み合わせを笑い飛ばしていたタケルとケンタも、 仕方ねぇなぁといった様子でお札を取り出しており、君達ホント、いい奴らだな……!(涙)
 失ってきたモノが多いだけに、人の情が身に染みます。
 その頃、街に新たな地底獣&寄生獣が出現し、最近捨て設定になっていた、二体ワンセットを久々に活用。 物質に潜む能力を持った寄生獣がハルカが購入予定の人形に身を隠し、バラバとオヨブーはハルカ暗殺を目論むが……
 「この人形……もう少し、笑ってた筈だけど」
 (ば・れ・た?!)
 作戦の推移を見守るべく、骨董品屋に飾ってあった鎧の中で身を潜めていたオヨブーは目を見開き、隠れている場所、 焦った表情、まさかの『キカイダー01』に被る、と二重三重に面白かったです(笑)
 ところが、思い出の人形マリーを取り戻したハルカは、それをずっと欲しくてお小遣いを貯めていたが、 父の死により北海道に引っ越す事になった少女ユカリと知り合うと、かつての自分の面影をそこに見出し、少女に人形を譲る事に (貯めたお小遣いと交換、という形にしていたのが地味に良かったところ)。
 「なに?! 人形が女の子の手に?!」
 「慌てるなバラバ。ハルカの喉は噛み裂けなくても、心はズタズタに切り裂ける」
 このところ台詞の少なかったゼーバ様ですが、これは格好いい。
 ゼーバの助言により、ハルカを精神的に抹殺する方針に転換したバラバは、人形に身を潜めた寄生獣が午後6時に目覚めた時、 人形を抱いた少女は無惨な死を迎えるだろう、と少女の身に迫る危機をハルカとモモコに告げると、追跡を妨害。
 「ハルカ! おまえの身代わりにあの子は死ぬ。せいぜい苦しむがいい。ふっふっふ」
 寄生獣が目覚めるまであと2時間、走るハルカ、追うドグラー、というタイムリミットサスペンスに突入し、 少女が札幌行きの飛行機に乗る事を知ったマスクマンは、一路、羽田空港へ。
 「私の、私のせいよ……タケル、私はどうすればいいの?!」
 「探そう、探すしかないんだ」
 「もう無理よ! ……あの子ひとり救う事が出来ないで、死に追い込んだ私に、マスクマンの資格なんてないのよ……」
 「ハルカ! しっかりしろハルカ。最後の最後まで希望を捨てるな!」
 「タケル……」
 「おまえがユカリちゃんを助けなくて、誰が助ける! このまだと、おまえの人形は、哀しい思い出だけの人形で、 終わってしまうんだぞ」
 タイムリミットまであと5分、弱気を見せるハルカをタケルが叱咤し、じわじわと成長してきているという事か、 戦闘面以外でタケルがリーダーシップを発揮する、今作では珍しいシーン。序盤、キャラ描写(というか造形の方向性) に迷いの見えたタケルが良くも悪くも従来的な正統派リーダーらしい発言をするのは違和感もあるのですが、 いきなりの平手打ちにより今作の根底に流れるスポ根文脈を持ち込んだ勢いで突っ切る形に。
 キャプテン……! と顔を上げたハルカは少女を発見すると人形を預かり、 オヨブーらの妨害を受けながらも空港から離れて人気のない河川敷まで辿り着くと、 やおら手にした人形を……投げたーーー!!
 かつての父親のように、人形を哀しい思い出にしてしまわないようにと少女に譲ったハルカが、 かつての父親のように豪快なスローイングを決めるのが見事に重なってしまい、果たしてそれで良かったのでしょうか(笑)
 いや、同じ行動をしても、その意味するところは正反対、という解釈も出来はするのですが、根本的なところで、人形を投げるの、 どうかと思う。
 「バラバ! 人の心を踏みにじる卑劣な攻撃、絶対に許さない!」
 マスクマンとバラバ班が激突し、怒りのイエローマスクは影分身からダブル独楽でドグラーをオーラ爆殺。 トドメのショットボンバーが放たれ、巨大戦では久々の分裂攻撃が繰り出されるが、さすがに慣れてきたマスクマン、 慌てず騒がず射撃で寄生獣を撃破して、ファイナルオーラバーストで勝負を決めるのであった。
 人形は無事に少女の手に戻り、札幌へと飛び立っていく少女を見送る5人。
 「さよなら、ユカリちゃん。さよなら、マリーちゃん」
 「……ハルカ」
 「ふふ、やっぱり私は、人形ってガラじゃないのね?」
 おどけてみせるハルカに対し、一斉に首を縦に振る野郎達(笑)
 「「「うんうんうんうんうんうんうん」」」
 「ちょっと?! やに気があってんじゃないのよ?!」
 「……逃げろー!」
 ナレーション「みんなは知っていた。ハルカの本当の気持ちを。そしてハルカは願った。哀しい思い出の人形を、ユカリが、楽しく、 素敵な思い出の人形にしてくれる事を」
 今回もナレーションが綺麗にまとめ、女性陣が野郎共を追いかけ回すドタバタで、つづく。
 どちらかという曽田さんぽいシナリオというか、藤井先生が2本続けてそつなくまとめてきましたが、 とにかく冒頭のハルカ回想が強烈でした(笑)
 映像的には空港ロケと、空港に向かうモノレールを追いかけて並走するシーンが、新味もあって面白かったところ。
 この時期、山田稔監督が病気療養中だったそうで、長石監督が1−3話を担当後、 長石&東條の二人で2話ずつのローテを繰り返してきたのですが、ここで東條監督が3話持ちし、話数的にもそろそろ次回、 メイン監督で新展開? ……とは言い切れない感じの微妙な予告でしたが、アナグマス、本気出す……?

(2023年11月10日)

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