■『光戦隊マスクマン』感想まとめ2■


“気! 気! オーラパワー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『光戦隊マスクマン』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る


◆第7話「爆発!ケンタの愛」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 予告からそんな気配はありましたが、藤井先生が参戦し、ぶれない、本当にぶれない。
 「よーし、俺も可愛い女の子と友達になって、青春しちゃうぞ〜!」
 ここまで生真面目なサブリーダー感のあったケンタが リーダー 道行くカップルに嫉妬の炎を燃やすと、 スーツにグラサンできめて時代を感じる映像の竹下通りで弾け飛び、戦士の心構え、とは(笑)
 鬼教官に率いられた職業軍人チェンジマン、宇宙で研ぎ澄まされた復讐の刃フラッシュマン、 からスカウト式民間人チームに戻った影響もあってか、覚悟完了済みの戦士の顔と、それはそれとして今を生きる若者としての顔と、 どの程度のバランスで見せていくのかが調整しきれていない気配が窺えます。
 道行く女性に声をかけるも連戦連敗のケンタは、とうとう犬をナンパして海に行こうとするが、老人を乱暴に扱うバイクの愚連隊を目撃。 正義の炎を燃やすも、一歩早く飛び出した女性が老人を助け起こすと勇敢にも愚連隊をたしなめ、 気色ばむ男達の不穏な気配を感じたケンタは、これに乱入。
 背後からジャケットを掴んで男二人をバイクから引きずり下ろすと躊躇なく暴力を行使し、 サングラスを外してから顔面に拳を打ち込む流れがスムーズすぎるのですが、元々何していた人なんだ、ケンタ(笑)
 愚連隊は這々の体で逃げ去り、思わぬ偶然から助けた女性と仲良くなる……かと思いきや、 急ぎの用があると女性は足早に立ち去ってしまい、しかしそれを、地底赤影が見ていた。
 店頭のマネキンの中にしれっと混ざっている地底赤影がやたら格好いいのですが、長石監督の、岡本美登さん愛を感じます。
 チューブでは、赤影の報告を受けたハゲ将軍が、ドールドグラーの解凍をゼーバに要請。
 「優しく可愛い女……面白い」
 ゼーバは将軍の作戦にゴーサインを出し、化粧と扮装で顔かたちのわかりにくい悪役サイドに、 徹底して目で芝居させているのが一つの特徴になっています。
 そんなある日の事……どうやら花束常備でバイクを走らせていたらしいケンタ@闇のストーカー候補生は、 先日の女性と再会してミユキという名を知る事に成功するが、果敢にアタックを仕掛けようとした所で無粋に鳴り響くオーラ通信機。
 「何してんだ! トレーニングの集合時間はとっくに過ぎてんだぞ」
 「平気平気。たまーにトレーニングなんか休んだって、大丈夫」
 ドスの利いたタケルからの通信をケンタはにこやかに切断し、戦士の心構え、とは。
 ところが、ケンタが隠れて通信中に赤影にさらわれたミユキはドールドグラーに取り込まれてしまい、 その姿を写し取ったドールヘッドが偽ミユキに変身すると、ケンタに積極アプローチ。
 俺は美緒を失ったのにトレーニングをさぼってナンパとか絶対に許さねぇと怒り心頭でケンタを探すタケルは、バ イクで走り去るケンタ達と行き違いになってチューブの攻撃を受け、海岸ではケンタとドールミユキがきゃっきゃうふふ。 苦戦するタケルの元には仲間が駆け付けてオーラマスクし、ヘッドが入れ替わり作戦を進行している間、ボディがマスクマンと戦う、 という形で怪人の分離機能を活用。
 ブルーマスクがドグラーボディに囚われたミユキの声を聞く一方、犬に噛まれたドールミユキは赤い砂をこぼしながら逃走し、 不審を抱いて追いかけたケンタは、正体を現したドールヘッドの奇襲を受ける。
 「地底獣! ミユキさんはどうした?!」
 「お前を罠にかけるために、腹の中に閉じ込めた」
 ……あ、あの、赤いアメーバみたいな見た目なのに、なんでそんな格好いい声なのドールヘッド(笑)
 渋い声に動揺している隙を突かれ、地底忍法・砂地獄により生き埋めにされてしまうケンタだが、なんとか本部へと帰還を果たし、 物事を解決するのは、大体、筋肉。
 本部で合流した5人は情報交換し、ミユキを助けるべく激情にかられて飛び出したケンタの生存を知った赤影は、再びケンタを襲撃。 バイクで走るケンタに奇襲を仕掛けると、地底忍法・水走りを披露して、どうしてこんなに忍者押しなのか、『マスクマン』 (翌年の《メタルヒーロー》が異色の快作『世界忍者戦ジライヤ』ですが、この当時、「第○次忍者ブーム」とか来ていたのでしょうか)。
 「ミユキの姿をしている限り、おまえにドールを倒す事はできん」
 「ケンタ、惑わされるな!」
 赤影に誘い込まれたケンタは、偽物とわかっていてもドールミユキの顔面に拳を叩き込めず窮地に追い込まれるが、 そこに駆け付けたタケルが全力で飛び蹴りをぶち込み、物事を解決するのは、大体、筋肉。
 それはそうだではありますが、攪乱による葛藤が当の本人を置き去りにして筋力に瞬殺されるだいぶ身も蓋もない展開で、 それは忍者も再び水の上を走って逃げます。
 戦隊シリーズとしては『電子戦隊デンジマン』から数えても8作目、 既に『仮面ライダー』〜『ストロンガー』までの放映年数は超えており、純粋にアイデア面での消耗もあるのでしょうが (前年『フラッシュマン』では新たな脚本家を探して、井上敏樹が参加する事に)、 シリーズ物にとって不可避なマンネリズムとどう向き合っていくのかが、深刻な課題になっていた時期なのかもしれません。
 同年の《メタルヒーロー》シリーズは、5年続いた広義の宇宙刑事フォーマットから大きく転換した『超人機メタルダー』であり、 今作も主題歌バトルを基本の約束事にしていた『チェンジマン』と比べると固定バトル尺は減っているように思えるのですが、 ではそこからどう見せていくのか、タケルと美緒のロマンスを軸に3話をかけてオーラパワーの覚醒を描く、 というコンセプトが明確だった立ち上がりに比べると、定式のあるキャラ回に入ってから、作劇に迷いが見える気がします。
 赤影を追ったマスクマンはドールドグラーらと激突し、どうもここまで、長石監督が意図的にバトルで主題歌を使っていない節があるのですが、 その辺りも含め、アプローチはだいぶ違いますが、シリーズヒーローを捉え直して再構築する過程の試行錯誤、という点において、 現在見ている『ウルトラマンネクサス』と、時代を超えて通じるものを感じる部分。……逆に言うと今『ネクサス』を見ている事で、 『マスクマン』における時代の中間的作品の部分が気になる、のかもしれませんが。
 ミユキを助け出そうとする黒は、「貴様が、吐き出すまで、殴るのをやめない!」と怒りの連続攻撃を叩き込み、 物事を解決するのは、大体、筋肉。
 愛のソルジャーの猛攻の前に、ミユキを解放したドールドグラーはショットボンバーで弾け飛び、巨大戦はあっさりめでフィニッシュ。
 そしてケンタは、ミユキをチューブとの戦いに巻き込まない為に声をかけない事を選び、 ミユキがキャンバスにケンタの肖像を描いていた事に気付かぬまま、二人は今は、別々の道を歩むのであった……………… EDのいちゃいちゃ回想が、別の意味で突き刺さります(笑)
 ケンタ、闇に囚われるな!(混線)
 タケル×美緒と丸被りになる事を避けてか、悲恋度は薄めで明るい雰囲気が主体も、 ラストで独り去って行くミユキの背中はぐっと切なさを漂わせ、酌み取った演出も含めて、今作でも安定の藤井節が炸裂 (なお藤井邦夫は、同年の『メタルダー』にも参加して、割といい仕事)。
 前回−今回と、ただでさえキャラクターの固まっていない序盤戦において、マンネリを割り切るのか、 新しい見せ方を積極的に組み込むのか、という模索が影響してか、デコボコとした印象のエピソードになりましたが、 早めに色々噛み合ってほしいところ。
 次回――いよいよ、モモコ出撃!

◆第8話「輝け! 花の剣!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 マスクマン5人の訓練シーンから始まり、長官はパワーレベルをチェック。
 飛来するコンクリートブロックを棒と素手で次々と弾き落とすアキラ・モモコもアレですが、 一切の躊躇なくコンクリートブロックを投げつけるタケル・ケンタ・ハルカもアレで、戦士としての心構えはともかく、 人間としての一線はどんどん越えていきます。
 「イアル、今日はおまえの20回目の誕生日。このめでたき日を、こんな形で祝おうとは」
 地底では、イガム王子が氷漬けのイアル姫に向けて掲げた杯を飲み干すと、空になった酒杯を投げ捨てて憎々しげに妹を睨み付け、 名門のプライド・没落貴族の出世欲・妹へ向ける愛憎に加え、男装の麗人的なデザイン×大仰な台詞回し、 と盛りに盛りまくられたイガムは、引き続き良いキャラの立ち方。
 「イガム家の面汚しめ! 出来るなら我が剣をおまえの胸に突き刺してやりたい」
 そこへ現れたフーミンが、地の底で10年に一度花開き、永久氷結さえ溶かすというマリアローズをイアルの氷にかざし、 慌てて止めに入るイガム。
 「しかし、このままではあまりにイアル様が、哀れ」
 「言うな! 憎むべきはマスクマン! イアルよ、おまえと同じ地獄の夢へマスクマンを突き落とす!」
 フーミンはあくまでイガム家に仕える忍者としてイアル姫も主筋と考えている事が示されると共に、 イガムはイアルへの憎悪ばかりではない複雑な感情を滲ませ、最終的にどう転がるかは別に、展開の幅を持たせた布石の置き方が巧妙。
 縛りの少ない“悪役の特性”ともいえますが、今のところ、タケルよりむしろ、 イガムの方がキャラの芯が通っています(笑)
 マリアローズを手にしたイガムが何やら考えている頃、地上のタケルは、貴様等には 信心 集中力と根性が足りない、 と少しでも集中が乱れれば崖下に真っ逆さまのイニシエーションをアキラとモモコに要求し、拳法と、パワハラは、 切っても切り離せない関係なのか(遠い目)。
 なおここでは、タケルの行動は「美緒を助ける為に仲間を鍛え上げようとする狂気」ではなく「ごく当たり前の訓練の一環」 として描かれているのですが、ヒーロー作品の抱えるそうした飛躍を、「地球を守るという大義名分を掲げながら、 実際は恋人の復讐の為に戦士を養成しようとする一人の男の狂気」として組み立てたのが後の『鳥人戦隊ジェットマン』であり、 同じ井上脚本だけに、比較対象として面白いところです。
 みんなが狂っているならば、それはすなわち正常である、と断崖絶壁の間近でバック転するイニシエーションに軽い調子で挑むアキラとモモコだが、 物の見事に足を滑らせて、まとめて落・ち・た(笑)
 無理な特訓の結果、事故で転落、というまさかの展開に素で慌てる赤黒黄だが、その最悪のタイミングで、 凶悪な面構えのサーベルドグラーの強襲を受ける。
 「ははははははは!」
 「イガムぅ!!」
 「マスクマン! 貴様たちに明日はない!」
 オーラマスクした3人だがサーベルドグラーの特殊能力により氷漬けにされてしまい、 サーベルと凍結攻撃が繋がっていないのが惜しまれますが、造形物先にありきで、 強引に脚本のアイデアに合わせて運用する事になったのでしょうか。
 崖下から復帰したアキラとモモコが目にしたのは、氷柱の中に閉じ込められ身動き一つしない赤黒黄の姿であり、 光戦隊の科学力では解凍不能の大ピンチ。
 「俺達のせいだ……五人揃っていれば、こんな事には……」
 アキラは転落を悔やみ、定番なら、ちょっと間抜けなメンバーのミスから大ピンチに……とミスをしたメンバーに原因が集中するところですが、 今回のこれは、どちらかというとタケルの責任ではないかというのが変化球(笑)
 「イアルよ、おまえが愛したタケルは、今やおまえと同じ冷たい眠りの中に閉じ込められた。イアルよ、奴と夢の中で添い遂げるがよい」
 イガム王子は、解凍手段をちらつかせる事で残るアキラとモモコを誘い出し、長官の制止を振り切った二人はバイクで出撃。
 「おまえ達までやられてしまったら、地球の平和は誰が守るんだ」
 「地球は私たち5人で守ります! これからもずっと、ずっと……私たち5人で!」
 ここまで、これといった個性の無かったモモコ、チームとしての台詞なのでキャラの個性としてはまだ弱いのですが、 マスクマンの結束力を示す、良い台詞になりました。
 「俺達はみんなを助ける為に行くんだもんね。指一本、髪の毛一本になっても必ず帰ってきます。根性で」
 モモコがアキラ寄りのコミカル要員として描かれたのは意外でしたが、それによってハルカとの差異が明確になり、 コンビを作る事でチームを2−3に分けてキャラクターを色づけする、というのは井上敏樹のさすがのセンスの良さを感じます (ちなみに、仲間の為に戦場に赴く女性コンビ、というのは井上敏樹の好きなシチュエーションの筈ですが、 キャラローテ的にもハルカ×モモコのエピソードにならなかったのは、何か事情があったのか)。
 「ねえモモコ……」
 「え?」
 「あの世って、本当にあんのかなぁ?」
 「なんで?」
 「俺、死んだら地獄行きかもな。子供の頃、女の子の靴に、毛虫入れた事があるんだ」
 「私も、猫のヒゲ切った事がある」
 「やったね。二人一緒なら、地獄に行っても寂しくないぜ」
 「冗談。私は逆立ちしたって天国に行くわ」
 軽妙なやり取り、というには役者さんの演技力がまだついていけませんでしたが、実に井上敏樹らしい会話の妙味で、 曽田先生とは別種のスキルが、アクセントとして光ります。
 決死の覚悟で呼び出しの場所に向かった二人は、赤く輝くマリアローズを発見するが、そこには当然、イガムの姿が。
 「私は地底王子イガム。嘘は言わぬぞ」
 だが、罠は仕掛ける!
 フーミンや地底獣の待ち伏せを受けたアキラとモモコはオーラマスクし、ピンクの個人武器・マスキーリボンが初登場。 『ゴーグルV』から継承したと思われる新体操アクションにより、オーラリボンで拘束した戦闘員を、 オーラファイヤでまとめて爆殺し、結構エグい(笑)
 イエローの個人武器(独楽)は、完全に『必殺!』ノリで戦闘員の大脳を破壊していましたし、姿長官は、 日本全国の闇社会と繋がっているのではないか。
 「オーラ戦士にならんか?」
 戦闘員を蹴散らしてローズに手を伸ばす青だが、それは偽物で大爆発。しかし、 律儀に本物を持ってきて見せつけたイガムの手元にリボンが一閃するとローズを絡め取り、「あっ?!」というイガムの表情が、 本当に悲痛(笑)
 ブルーは空中でそれをキャッチするがイガムの攻撃を受けて崖から落ち、残ったピンクには地底獣らの攻撃が迫る。 その間に傷だらけのアキラは本部へと辿り着き、尺の都合やCMのタイミングで仕方なかったのでしょうが、 映像的には〔落下即本部〕になってしまったのは惜しく、もう少しが間が欲しかったところです。
 この後の尺の配分を見ると、持ち帰ったマリアローズで赤黒黄が復活するかのサスペンスと、怪しげな解凍マシンを操る姿長官、 にスポットが当たるので、この辺りはメカニカルな要素の押し出し、という当時の作劇上の要請もあったのかもしれません。 ……考えてみると近年あまり、こういった機械操作シーンに尺を割く印象が無いので、時代性を感じるところです。
 孤軍奮闘するピンクが絶体絶命のその時、復活マスクマンが合流して揃い踏みから主題歌バトルに突入し、 もしかしたら長石監督と東條監督が、意識的に戦闘シーンの見せ方を変えているのかも。
 ピンクマスクの活躍が描かれてサーベルドグラーは爆死し、今回は王子がオケラを召喚して巨大戦に突入。 巨大十字手裏剣ことジャイロカッターが、マスキージャイロのローター部分である事に、今回ようやく気がつきました。
 多彩な飛び道具を操るサーベルドグラーに対し、グレートファイブは銃撃からゴッドハンドを叩き込み、 トドメはファイナルオーラバースト。地底獣に不覚を取ったタケルら3人は、 筋肉への信仰を鍛え直すべくアキラとモモコからスパルタ訓練を受ける羽目に陥り、 疲れ果てて倒れ込むも最後は手を取り合って和気藹々……と思いきや、階段に向けて蹴り落とし、 拳法と、パワハラは、切っても切り離せない関係なのか(遠い目)。

◆第9話「合体!命のオーラ」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 「私はロロ。君のオーラを、察知したんだよ」
 タケルは瞑想によるトランス状態で謎の少女の声を聞き、炎の黙示録が今やめなさい。
 一方その頃、ハゲ将軍は地上の電気を奪う作戦を立案し、雨宮作品に出てきそうな正統派クリーチャー造形のマグネドグラーと共に出撃すると、 地上に大破壊を巻き起こす。
 「マスクマン! この街は死んだ! 我々が支配する!」
 「そうはさせるか!」
 チェンジマンは被害地域の調査中にアングラ兵と戦闘になり、見所は、ハイヒールで壁蹴り反転する忍者 (映像は足下のみのアップですが)。
 ドグラーボディとヘッドが協力して放つエレクトロエリア攻撃に追い詰められるレッドマスクだが、 その危機を感じ取ったロロに救われ、ロロは本当に居たんだ! そして、オーラの力は、全宇宙共通です。
 『チェンジマン』『フラッシュマン』(共に敵が侵略異星人組織であり、怪人やゲストなどで頻繁に異星人が登場する) からの流れとしては、そこまで違和感が無かったのかもしれませんが、ここまで地球(地上/地底)単位だった今作に突如出現した宇宙人により、 オーラパワーが宇宙共通のものであると示されるのはいささか飛躍しすぎた感があり、ノリにくいエピソードに。
 タケル達がロロと触れ合い、異星人の視点から地球の美しさを讃える、というのは定番ですが、物見遊山の旅の途中とか、 トラブルで不時着とかではなく、かなり積極的にタケルを助けに飛び込んできたという流れと、ほのぼの観光タイムも、 今ひとつ噛み合わず。
 挙げ句、チューブが発電所を攻撃しているとの連絡があるや否や、少し前に襲撃を受けていた事など無かったかのように、 恩人たる子供を一人放置して迎撃に向かってしまい、いくらなんでもどうかと思うよマスクマン!
 取り残されたロロは赤影に囚われてしまい、太陽が沈むまでの命、と宣告されたロロを救うべく、 戦場を一時離脱したタケルはオーラパワーを高める為に瞑想を始める……というのもスムーズな流れにならず、 「オーラパワー」をどう印象づけ、どう物語に取り込むのか、スタッフの苦戦が窺えます。
 オーラパワーを高めたい → 深い集中状態に入る → 座り込んで座禅、と絵が止まってしまうのも、難しそうな点。
 (……そうだ。戦いの中で、もっと強いオーラを)
 タケルはオーラマスクすると戦場に舞い戻り、ロロ救出の為には増幅したオーラパワーの調整が必要だという話だったのに、 死地に飛び込む事でとにかく強い出力を! と剣を振るってオーラパワーを放出すると、地中でロロを閉じ込めたカプセルが砕け散り、 だいぶ困惑。
 オーラを纏ったレッドマスクがマグネドグラーに真っ向唐竹割りを浴びせる映像自体は格好いいのですが、 ロロのオーラスパークならエレクトロエリアを打ち破れるという要素も途中にどこかで吹き飛んでしまい、 ロロ救出のタイムリミットサスペンスとしての盛り上がりも弱く、劇中に散りばめた要素があちこちでショートしてしまっています。
 オーラパワーで地面を割った赤がロロを救出し、マグネドグラーをショットボンバーで撃破。 巨大マグネは滞りなくオーラバーストの錆となり、ロロは地球で何よりも美しい友情を手に入れた、 とざっくり母星へ帰っていくのであった……。
 立ち上がり、美緒との関係性に重点を置かれたタケルは、敵前逃亡の印象を弱めたい意識もあってか、 トンネル回・ゴッドハンド回・今回、といずれも子供ゲストと密接に関わるエピソードを投入して正統派のヒーロー性を補強されているのですが、 タケルというキャラクターの芯が「美緒」にある為に、 それを省くと表層で紋切り型のヒーロー像に当てはめている感が強くなってしまい、なかなか、 キャラ回が上手く噛み合ってきません。
 ゴッドハンド回では美緒を失ったトラウマと絡めていましたが、鉱脈を見出すならやはりそこになるのか……?

◆第10話「イガムVSタケル」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 イアルの眠る氷塊に足をかけたハゲ将軍が、裏切り行為についてイガムを散々に罵るシーンから始まり、 ちょっとした休憩所(喫煙コーナー)みたいになっているな、イアル姫の間。
 割と唐突な導入なので、イガムがイアル氷を見つめながら物思いにふけっていたら、 後からやってきた将軍が「何ひたっちゃってんのイガムくーん」と厭味を言いに来たのだろうかなどと想像されますが、 氷漬けのイアルの上に足を乗せているというのが、性格の悪さが出ていてポイント高い。
 プライドを傷付けられたイガムは激昂のあまりハゲ将軍の顔面を殴り飛ばすが、 その一撃に全く応えてない様子で平然と視線を向け直す将軍が、武闘派幹部として思わぬ形で株価上昇。
 アナグマが「殿中でござる」と割って入るも怒りの収まらないイガムは、レッドマスクと決着を付ける、と宣言。
 「我がイガム家に伝わる、必殺の技、デスリングがあります」
 フーミンの制止を振り切り、地上へ出撃したイガムはレッドマスクに一対一の勝負を呼びかけ、 それに応えたタケルとまずは戦闘機による空中戦で一当たり。パイロットとしての技量は赤に軍配が上がり、 あわや顔も合わせず墜落死しかけるイガムだが、なんとか生き延びるとレッドマスクと激突する。
 「貴様を義弟と認める気はない!」と未来のお義兄さんの怒濤の攻撃を受けて変身解除に追い込まれる赤だが、 必死の反撃を浴びせると精神的に余裕のないイガムはデスリングを発動し……それは、いわゆるひとつの、金網電流デスマッチだった。
 「一度入ったからには、二度と出られぬ、死のバリアだ」
 王子、明らかに余計なエネルギーを消費しているのですが、王子。
 戦いを観戦するチューブではハゲ将軍の求めに応じて帝王ゼーバがバギルドグラーを解凍し、かたや光戦隊本部では、 正義の味方が決闘の申し出を無視して袋だたきにするわけにはいかないと、仲間達が固唾を呑んでこの戦いを見つめていた。
 「タケルは負けない」
 「どうして言い切れるんですか」
 タケルの危機にいてもたってもいられない4人を押しとどめる姿長官は、日本全国スカウトの旅において、 タケルを見出した夜の事を思い出す。
 (タケルは決して負けない)
 一人で納得して頷いているのですが、メンバーに全く、伝わっていないぞ(笑)
 光戦隊におけるケンタ等から姿長官への心証が音を立ててぎゅんぎゅん降下していく中、デスリングでの死闘は続き、 流血表現ありでボロボロになりながら立ち上がるタケルもまた、その夜の事を思い出していた。
 (俺は負けない……俺はあの、壮絶な戦いを、戦い抜いたんだ。――1年前、赤ん坊を助けた後の事だった。俺は、 謎の男につけられている事に気付いた)
 夜の街で、いきなり背後から飛び蹴りを決めてくる、謎の男(笑)
 この時点で正体は丸わかりなわけですが、いきなり物凄い角度から、ザ・80年代な狂気が叩きつけられて、ワクワクが止まりません。
 それまで敗北を知らず怖いもの知らずだったと独白する当時22歳のタケルは、謎の男に滅多打ちにされ、 冷酷な殺意への恐怖のあまり逃走するも、執拗な追跡を受ける。
 (その男から逃げられないと覚った時、俺は戦い抜くしかないと覚悟した。想像を絶する戦いは、いつ果てるともなく続いた)
 この夜を生き延びる為、大都会の片隅での死闘は深夜にまで及び、何度も崩れ落ちるタケルだが、 迫り来る死の恐怖を振り払って放った起死回生の飛び蹴りが男のサングラスを砕く――
 (それが、姿長官だった)
 それきり気を失ったタケルが目を覚ましたのは、光戦隊本部。
 「君のような男を捜していた」
 「え?」
 「この俺と、あそこまで戦い抜いた男は居ない。地底帝国チューブと戦うにふさわしい戦士、君こそ、レッドマスクとなる男だ」
 姿はタケルに向けてわかりあった感満載の満足げな笑みを浮かべ、 夜の街で候補者を探して背後から闇討ち・暴力と死の恐怖で徹底的に追い詰める・ 相手の精根尽き果てるまで戦って資質を確認すると拉致・密室における混乱状況で契約書へのサインを迫る地獄の悪魔も裸足で逃げ出すコンボを決め、デンジ犬アイシー先輩も感嘆する、 非常に濃度の高いキチガイっぷりを見せつける。
 ……わたくし、以前の感想で、姿長官が美緒の首飾りをタケルに返却した事に関連して、「某小田切長官よりは、だいぶいい人だな……。」 と述べたのですが、謹んでお詫びと共に訂正させていただきます。
 ばっちり似た者同士でしたよ!!
 (負けるものか……俺は、姿長官と、あの想像を絶した戦いを、戦い抜いたんだ。負けるものか……!)
 凄絶な戦いの中でタケルは屈する事なく立ち上がり続け、スポ根物の文脈とヒーローバトルを重ねた結果、 悪のライバルとの決闘(エリート校のライバルとの決勝戦)というリアル死線において、思い返して奮起するのが上官から向けられた殺意 (鬼コーチとの特訓)という、とんでもない化合物が誕生(笑)
 姿長官、まず間違いなく、若い頃は社会悪を闇で抹殺するお仕事とかしていた。
 王子のドラゴンブローを受けて満身創痍のタケルは、心頭滅却すれば火事場の馬鹿力で浮かぶ瀬もあり剣禅一如と、 ノーガード瞑想からオーラを放って対抗するが、そこへ乱入してきたバギルドグラーの攻撃により、外部から破壊されるデスリング。
 ゼーバとハゲ将軍は、最初からイガム一人でレッドマスクを始末できるとは考えていなかったのだ…… と序盤からの生暖かい眼差しがチューブの卑劣な作戦に繋がるのですが、ハゲ将軍が言うほどイガムの戦績が悪い印象が無いので (ハゲ将軍も同じ程度に悪いですし)、話の都合で劇中の積み重ね以上にイガムが軽んじられているようになってしまったのは、 残念だった部分。
 この辺りが没落貴族の哀しさでもあるのでしょうが、シチュエーション的にはもう10話ぐらい後の方がピタッとはまっただろうなと思いつつ、 早い段階での決闘が今後の展開に活きてくるのを期待したいです。
 弱ったタケルの抹殺を目論むチューブだが、手出しをしない理由が無くなった四人が駆け付け、一同揃うマスクマン。
 「チューブめ! マスクマンの戦いぶりをみせてやるぞ!」
 タケルが改めてオーラマスクし、1.5倍速ぐらいにアレンジされたOPインストがバトルBGMとして格好良く、 レッドが前回修得したオーラ飛び道具、マスキーブレード(射撃)でバギルドグラーを貫くと、ショットボンバーでフィニッシュ。
 巨大戦では槍を振り回すバギルだが、ジャイアントスイングによる叩き付けからグレートガンで弱らせ、 ファイナルオーラバーストで両断し、序盤は苦戦の目立ったグレートファイブも、徐々に余裕の立ち回りを見せるようになるのであった。
 傷だらけながら本部へと帰還したタケルは、長官とハードボイルドに目と目でわかりあい、長官の態度が冷たい、 と一斉に不満を口にする仲間達(ホントいい人達……)をたしなめる。
 「おい、みんな。俺と長官には、言葉なんていらないんだよ」
 「「「「え?」」」」
 なんか本当に、アウトローの魂が響き合う「サイボーグにならんか?」案件に突入しているのですが、 いったいぜんたい、どんな殺伐とした世界を拳一つで生き抜いてきたんだタケル!(笑)
 1年前のモノローグも、常勝のスポーツマンというより、ストリートで鳴らした喧嘩屋風であり、 踏み切りに取り残された赤ん坊を助ける(だいぶ無理矢理なシチュエーションであり、そもそも最初から全ては、 姿長官の仕掛けた罠だったのではないか……)事でヒーロー性と正義感を示してはいるものの、 スカウトメンバーの背景に底知れぬ暗がりが覗く、光戦隊の闇は深い。
 ……ちょうど前回の感想で、タケルのキャラクターが落ち着かない問題点について触れましたが、姿長官との出会いが語られた事により、 全く予想外の方向にキャラが立ちました(笑) 裏社会の喧嘩屋だったタケルが、 殺伐とした人生に舞い降りた初めての彼女に入れ込んだ末のバカップルそして敵前逃亡、だったのかと思うと色々と納得できるものがあり、 いいかいノリオくん、ゴッドハンドよりも、飛び道具の方がだいたい早く片付くんだ。
 「マスキーブレード(射撃)!」
 タケルが一皮剥けてくれたのは、今後に向けて大変ありがたいです。
 次回――大変ナチュラルに忍者が盛られているのですが、映像の限りではハルカ回ではなさそうで、 そろそろハルカさんが何者かに触れていただかないと、気になって仕方が無いのですが。

◆第11話「地底からの亡命者」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 筑波遺跡で発見された、地底帝国に関係すると思われる謎の髪飾り――それは行方知れずになっていたイガム母の髪飾りであり、 そこにはチューブの秘密が……?!
 密かに警備に派遣されるケンタだが、ロボットガードマンに気を取られている隙に黒装束の女忍者に髪飾りを奪われてしまい、 前回はいきなり宇宙人を投入してきた藤井先生ですが、今回は開幕から忍者が大暴れして『マスクマン』 の世界観を縦横無尽にかきみだ……いや、東映でナチュラルに忍者が出てくるのは、ふつー、ふつーの事でしたね、ハイ。
 謎の女忍者・フーミン・ケンタ・ゾーラドグラーが入り乱れる争奪戦の末にケンタは髪飾りを取り戻し、 敵(チューブ)の敵は味方理論で女忍者をかばうが、女忍者は忍法花吹雪を放って姿を消してしまう。
 「やはりこの髪飾りは、チューブのものだったのか。奴らが動き出したという事は、この髪飾りに何か重要な秘密が隠されているんだ」
 あ、この人、博物館の関係者を囮にしたぞ。
 手に取った髪飾りから桃色の花びらがはらりと落ち、それを目に留めたモモコが「この花は確か、ゆうもあ村付近に多く見られます」 と《植物知識》の技能判定に成功。ご存知の通り、ゆうもあ村といえば戸隠流忍者の勢力圏であり、 すっかりプレ『世界忍者戦ジライヤ』(翌年の《メタルヒーロー》シリーズ作品。藤井邦夫も脚本参加)になっています(笑)
 手がかりを求め、ゆうもあ村に送り込まれたケンタは女忍者のカミソリの術で攻撃されるも、 敵(チューブ)の敵は味方理論により《説得》の技能判定に成功。女忍者からユウという名前を聞き出すが(なお、 ユウ役の小原靖子さんは、「相原優」の芸名で活躍)、髪飾りに隠された秘密をマスクマンが知れば地底帝国の一大危機、 と慌てたゼーバの動きが一手早く、ユウの父イジンが地底に囚われの身となってしまう。
 「王家の忍者は、貴様等の鞭などに負けぬぞ!」
 イジンとユウは、かつての地底王家に仕えていたフウ一族の抜け忍であり、イガムの立場など、これまでやや曖昧でしたが、 地底には地底の勢力争いがあった事が明確に。ゼーバの秘密が隠された首飾りのロック解除法を知るイジンは、 ハゲ将軍らから鞭による拷問を受けるが、そこにイガムが姿を見せる。
 「……久しぶりだなイジン」
 「イガム様!」
 「地底一と言われた忍者も、哀れな姿になったものよ」
 抜け忍・王家の忍者・地底一の忍者、という語句が自然に飛び交っていて、 全く予想外の角度からツボに突き刺さってきます『マスクマン』(笑) 忍者は、地上と地底の共通語!
 「イガム様、我らと一緒に、ゼーバを倒し、王家を再興して、王子様の願った、平和な地底を!」
 「……黙れ! そんな事より残り少ない命、惜しむがいい」
 イガムはイジンを振りほどき、とりあえず、ただでさえ色々と難しい立場なのに、背後にハゲ将軍と赤影が立っている状況で、 叛乱をそそのかすとかやめてあげて下さい。
 「……イガム様、あなたは、恐ろしい方に変わられてしまった(私の知っている、子供の時のイガム様は……)」
 イジンは幼き日のイガムの事を思い出し……完全に女の子なのですが、 イジンの台詞回しからすると「イガム様」と「王子様」は別人の可能性はあり、夭折した兄王子に変わって、 双子の姉妹の姉であるイガムが跡継ぎの王子として育てられた、という王家の秘密も有り得そうでしょうか。
 そんな立場で国が崩壊、やむなく一族の生き残りの為に男性を演じ続けながらゼーバの配下として忍従の日々を送っている内に、 スパイに身をやつして地上で苦労していると思った妹がいつの間にか現地の男といちゃいちゃしていたら、 それは心も歪むというものです。  凄く、いい感じになってきたぞ、イガム!
 ……とか妄想を広げていたのですが、イジンは「王子様」ではなく「王妃様」と言っていたようで(ヘイスタックさん、 ありがとうございます)、そんな歪んだ人生などなかった! でも歪んでいてもいいぞイガム!
 「過ぎた昔の事、とっくに忘れた!」
 吐き捨てるように告げて背を向けるイガムの姿には、それでもイジンの顔を一目見ずには居られなかった複雑な心境が現れており、 地底の抗争やイガムの過去を含めて、情報量の多いやり取り。
 第1話において「かくも壮大なる帝国、地底帝国チューブをお築きになられた我らが王」と、 ゼーバが地底を統一してチューブを建国した事が仄めかされていましたが、その経緯が補強されると共に、 亡国の王子というイガムの立場がスッキリ。また地上では、ユウがゼーバの支配に抵抗して地上に逃れてきた亡命地底人である事をケンタに明かし、 地底人と地上人の融和の可能性が示されて、タケルと美緒の関係にも、一筋の光明が射す事に。
 ……タケルと美緒の行く末に関しては、藤井先生がストーリーラインにどこまで関係してくるかの影響の方が大きそうな気はしますが(笑)
 「ケンタ、お願いです。髪飾りの秘密を解き、ゼーバを倒し、地底人と、地上人を仲良くさせて下さい。お願い」
 ハゲ将軍からイジンの命と髪飾りの交換が要求され、長官を説得して呼び出しの場所に赴くマスクマンとユウ。 囚われのイジンが地底忍法スイッチONにより自力で脱出を図ったのをきっかけにもつれ込んだ乱戦のさなか、 髪飾りに隠されたゼーバの秘密――地底王妃の残したメッセージが公開されかけるが、ゾーラドグラーの攻撃により髪飾りは砕け散り、 怒りのイジンは特攻をかけて壮絶な自爆を遂げる。
 辛うじて生き延びたゾーラにショットバスターでトドメを刺し、変形合体抜きでグレートファイブを召喚したマスクマンは、 ファイナルオーラバーストでフィニッシュ。
 地底忍法ビデオメッセージにより、ゼーバの秘密を隠した王妃アイテムは他にもある、と父の声を聞いたユウは、 地上と地底の平和が実現する日の為に、それを探す旅に出る事を決意するのであった……で、つづく。
 なにぶん藤井脚本なので、いつ死ぬのかいつ死ぬのかとドキドキしていたユウは最後まで生き残り、再登場の可能性も残す形に。 思えばケンタが、原宿ナンパ回で片思いの気持ちをゲストヒロインに告げぬまま別離を選んでいる為に、 再び女性ゲストと絡んでも恋愛感情を持つわけにいかず、藤井先生的に爆死させるほどの盛り上がりが生まれなかったのかもしれません。
 代わりに父忍者が自爆しましたが、力尽くで脱出→戦場の真っ只中で情報公開を行おうとする→失敗して特攻、 という展開はかなり無理矢理で(一応、ゾーラドグラーが妻の仇、という補助線が引かれてはいましたが)、 イジンを演じた伴直弥(大介)さんにそれなりの見せ場を、という要請により歪みが生じてしまった感はあり。
 この時点でゼーバの重大な秘密が明かされはしないだろう、というのが案の定の茶番になってしまったのも含め、 イガム周りの情報整理は面白かっただけに、それ以外の筋の強引さが惜しまれるエピソードでした。
 次回――ニンジャ! ニンジャ?! ニンジャーーー!! 待望のハルカ回に、 今回の次回で物凄くストレートに忍者が投入されてきて心の整理が追いつきませんが、ハルカ、風になれ!

◆第12話「挑戦!忍びの誇り」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 都会の喧噪の中、次々とマンホールの蓋を開けて地上の様子を窺うフーミン……という、地味に手間のかかっていそうな映像から、 地上に飛び出すフーミンの姿でスタート。
 (地底忍びフーミンの目はごまかされぬ。地底獣シノビドグラー! そこだぁ!)
 フーミンがビルの壁に隠れ身していたシノビドグラーと戦い始めると、 日常生活を送っていた一般市民が次々と巻き込まれて犠牲になっていき、群衆や車輌を多めに取り込む事で臨場感を増した、 日常を引き裂く突然の忍者バトル! が面白い映像。
 流れ手裏剣を受けそうになった子供をハルカがかばい、そこに乱入するマスクマン。
 「なんて酷い事を! これはいったいなんの騒ぎなの?!」
 「地底獣シノビドグラーを倒せば、スーパーシノビになれるのさ」
 「なんですって?! スーパーシノビ?」
 「そうはいかん! スーパーシノビになるのは俺だ」
 オヨブーも参戦して立て続けに「スーパーシノビ」という単語が繰り出され、大変頭のおかしい事に(笑)
 マスクマンそっちのけの忍者バトルに、地上忍者のイエローマスクも参戦するが、シノビームによってビルから叩き出されてしまい、 本部で傷の手当てを受ける。
 「みんな、聞いて。私は、代々忍者の家に生まれ、子供の頃から、忍びとして育てられたの。忍びは、人知れず修行し、 人知れず戦うものと教わったわ。…………それなのにフーミン達は、大っぴらに技を競い合い、沢山の人達を戦いに巻き込んでいる」
 なんか、怒るところのピントがズレている!
 “忍び”とは。見えない悪を、倒して平和に変えること、と明確になったハルカの出自は、 周囲のリアクションも非常に薄い代々続く忍者の家系が当たり前の世界観でしたが、前回の地底抜け忍騒動を踏まえると、 亡命地底忍者を先祖にした地上忍者一族とか、逆に、亡命地上忍者を先祖にした地底忍者一族とか、 地上と地底は古来よりニンジャカルチャーで混血していそう。
 ニンジャバトルをこのまま放置していては、「もっともっと沢山の人達が傷ついてしまう」と良識と正義感も見せたハルカは、 負傷をおして出撃を嘆願。
 「それに、スーパーシノビの秘密も暴かなくては」
 「俺達に任せろ」
 「いいえ。それが出来るのは私だけよ。本当の忍びがどんなのものか、見せてやるの!」
 包帯を外したハルカは煙玉で逃走し、長らく先送りにされていたハルカ回ですが、 結果として序盤の内に勢いで放り込まず、1クール目の終わりになってからさも当たり前のように語られる事で全体の破壊力が増しており、 演出と脚本のテンションの高さが面白すぎて目眩がしてきます(笑)
 本気モード(黒装束)を発動したハルカは、シノビドグラーと戦闘中のフーミンに背後から忍び寄って気絶させると、 すり替わってシノビドグラーを誘導。ダンプに仕掛けた罠でドグラーを拘束すると、そのまま走り出し、 もしかしてこのままダンプを崖から落とすのか?! とイチロー兄さんも真っ青なニンジャトラップの可能性にドキドキしましたが、 機を窺っていたオヨブーの攻撃を受け、運転席から転がり落ちるとダンプは停車。
 だがそれもニンジャトラップの一環であり、フーミンを激励しに現れたイガムから、 シノビドグラーの体内に封じられたシノビボールを手に入れる事でスーパーシノビになれる、という情報を入手。 その間にオヨブーは普通にシノビドグラーにやられそうになっており、基本的に凄く強いぞシノビドグラー。
 地底忍法・テレポート失敗の術によりオヨブーを仕留めたシノビドグラーがハルカに襲いかかるが、 ハルカはオーラ忍法・空蝉爆弾の術でそれを回避。
 「シノビドグラー! 本当の忍びの戦いを見せてあげるわ!」
 光戦隊そっちのけで啖呵を切ったハルカは(多分イガムが嫌がらせで置いていった)戦闘員を次々と打ち破り…… 言ってはいけない系の発言ですが、この人に、オーラパワーは、必要なのか(笑)
 シノビドグラーとアングラ兵の飛び道具を回避したハルカは、オーラマスクからのロープアクションを決めるとマスキーローターを放ち、 紐で拘束してからの火薬攻撃により、爆・殺!
 恐らく、晴らせぬ恨みを晴らすお仕事をしていた先祖の居るイエローは、更に、秘術・影分身を発動し、 なんと9人のイエローマスクが投入されるという、大盤振る舞い。
 タケル回を優先してキャラ回が遅くなった分を補う意識があったのか、忍者アクションに興が乗りすぎたのかはわかりませんが、 テンションの高い忍者バトルが連続してマスクマンのアクションパートをほぼ一人で担当してしまい、 遅いスポットを挽回してお釣りが出るレベルの大活躍。
 分身攻撃でシノビドグラーを弱らせたところに、ハルカを心配して追ってきたら、 そのハルカの運転する大型ダンプに轢き殺されかけた4人が合流するが、その時のハルカはフーミンに変装していたので、 真相は闇の中なのであった。
 5人揃ってショットボンバーが炸裂し、弾け飛んだシノビドグラーの体内から宙に舞ったシノビボールは、 ハルカの身代わりの術によってシノビームを受け、軽く三途の川を覗いてきたフーミンに奪われてしまう……かと思いきや、 シノビドグラーの術にやられたフリをしていたオヨブーが更にそれを掠め取り、 怪人ポジションにやられたまま終わらない両者の忍びらしさも最後まで面白く、崖の中から突き出す二本の腕、 という不気味な末路の姿を強調しておいて、いつの間にかそれが二本の木に変わっている、という演出もノリノリ。
 「オヨブー!」
 「最後は俺が笑うと言った筈だぜ」
 こんなに格好いいのに、どうして名前がオヨブーなのかオヨブー。
 「ひ、卑劣な真似を……!」
 「俺を甘く見るなよ。卑劣に徹してこそ忍びよ」
 ところが、更にそのオヨブーの手からもボールは奪い取られ、なんと地底のアナグマの元へ。
 「ひひひひひひ、遂に手に入れたぞ、シノビボール」
 「なんだと?!」
 「この杖と球が揃った時、このアナグマスこそがスーパーパワーを授かり、地上征服も思いのまま、スーパーアナグマスとなるのじゃ」
 「スーパーアナグマス、我らを騙したな!」
 「はっははは、伊達に300年も生きておらんわい。おまえらまだまだ、若いのう」
 忍者バトルに興奮していたら、全く予想外の展開に(笑)
 地上ではオケラパワーでシノビドグラーが巨大化し、地底ではアナグマがスーパー化しようと儀式を執り行うが…… ボールが爆発して失敗。シノビドグラーは超電子ライザーで両断され、アナグマは爆発の衝撃で床にひっくり返り、 ここでいきなりアナグマがスーパー化、というのはそれはそれで見たかったので2話続けての肩すかしでしたが、 事前にイガムからボールの情報を手に入れていた筈のイエローが何も手を打たずにみすみす奪われてしまう流れには違和感があったので、 既にイエローがボールを爆弾とすり替えており、出し抜き合戦に最終的な勝利を収めるのは納得のいく忍者バトルの結末で、 卑劣に徹してこそ忍びよ!
 肝心のシノビボールは、太陽の光を浴びると砂になって消滅してしまい、一朝一夕にスーパーパワーを手に入れるのではなく、 修行を重ねて真理に近づけば空も飛べる筈なのだ、でオチ。チーム物としては、あまりにもイエローの活躍に焦点が集中しすぎていたので、 最後に5人でほのぼのシーンが入る、のはバランスとして良かったです。
 ナレーション「地底と、地上の忍び達との、熱く長い一日は終わった。本当の忍びの意地と誇りを示す事ができて、ハルカは満足であった」
 徹頭徹尾、疾走するニンジャロジックで進行し、忍者最強すぎてオーラパワーが吹き飛び気味でしたが、 忍者好きとしては大変満足させていただきました(笑) ここまでストレートな忍者エピソードをやってしまうと、 今後のハルカ回では忍者要素から少し離れそうですが、今後もナチュラルに手裏剣を投げ続けてくれる事に期待です。 そして、スーパーアナグマス誕生の日はいつか来るのか?!

→〔まとめ3へ続く〕

(2022年11月13日)

戻る