■『光戦隊マスクマン』感想まとめ1■


“人の体には、未知の力が秘められている。
鍛えれば鍛えるほど、それは無限の力を発揮する”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『光戦隊マスクマン』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「美しき謎の逃亡者」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 三角形に組まれた印・半身機械の如来の画・弾けるマッスル・氷柱を叩き割る……のではなく、触れずに粉々にする!
 と大変激しい導入で、もしかして、「光の波動=筋肉」のはしりは今作なのでしょうか?(笑)
 物語は、1987年・早春――サーキットにおけるレースシーンから幕を開け、レーシングドライバーであるタケルに必死に呼びかける女・美緒の、 マンホールから顔を出した所をバイクで走っていたタケルにバッタリ、という衝撃的な二人の出会いの回想から始まる、なかなかの変化球。
 素足の女の為にタケルはギターケースの中に仕込んだハイヒールをプレゼントし、いったい何が夢で、何が現実なのか、 全てが曖昧だった……。
 回想に入る前に、側溝にはまって脱げ落ちた赤いハイヒールが強調されており、ロマンス方面に振った時の長石監督らしい演出ではあります(笑)
 (タケル、大変な事が起きるの、タケル)
 そして、ハイヒールからカメラを“下”へと引いていき……
 「地の底奥深く……我が地底人が生まれて5000年。我らは光を嫌い、冷たく暗い闇の中にひっそりと生きてきた。だがその歴史も、 今終わろうとしている!」
 地球の地下――赤黒い闇に包まれたその世界には、地底帝国チューブが存在していた!
 「かくも壮大なる帝国、地底帝国チューブをお築きになられた我らが王が、光溢れる世界を、征服するとのたもうたのだ! おお、 なんと偉大なる王よ……全知全能の王よ、我らを導かれるその尊い、御方の名前を――地帝王ゼーバと申すなりぃ」
 穴熊怪人の朗々と響く気持ちのよい口上に重ねて、地帝城に集ったチューブ上層部が紹介されていき、 最後にキラキラした衣装に黒い仮面を被った、地帝王ゼーバが降臨。
 スケール感は前作の首領であったラー・デウスと似たような感じで、完全な置物系ではないものの自由に動き回るのは難しそうな雰囲気ですが、 仮面の下に人間の瞳が見えるなど、ラー・デウスよりは、生もの寄りのデザイン。
 「地上をこの地底と同じ、冷たく暗い闇の世界に変えるのだ。その時こそ、地帝王ゼーバが、全地球の支配者となるのだ」
 一方、地上では思いあまった美緒がレース中のコース内に飛び出し、タケルは急停車。
 「逃げて! 私と一緒に逃げて!」
 「いったいどうしたっていうんだ」
 「地底帝国チューブが攻めてくるんです」
 「なんだって?」
 だがその動向は、穴熊怪人に筒抜けであった!
 「地上のスパイに、裏切り者が出ました」
 穴熊怪人、アナグマスという豪快なネーミングから第1話のやられキャラかとばかり思っていたら、我が帝王を朗々とたたえる他、 スパイの管理までしていて、割と有能な気配。
 「いつの世も愚か者は居るものだ。地上に未来など有り得ぬものを」
 ゼーバは地表への総攻撃を指令し、冷凍洞窟に眠る闇の地底獣覚醒の他、王子率いる戦闘機部隊と、ハゲ将軍率いる歩兵部隊が、 次々と地上への侵攻を開始。
 その頃、タケルはバイクでタンデムし、レースを放り投げて普通に逃げていた(笑)
 (どうか、早く遠くへ連れて行って……誰も居ない、私と貴方だけの世界に)
 侵略者の脅威を裏切った敵スパイの切迫感で示し、そこに男女のロマンスを濃密に振り掛けるという変則的な見せ方ですが、 権藤権藤雨権藤ならぬ曽田曽田曽田曽田曽田曽田だからこそ出てきたアプローチではありましょうか。
 だが逃げる二人は戦闘機部隊の攻撃を受け、派手な爆発の中を疾駆するも地割れに飲み込まれて、地下洞窟に落下。 美緒は怪人の作り出した蟻地獄に飲み込まれ、タケルに首飾りを託して地底の闇の中に消えてしまうのであった……。
 「殺戮せよ! 破壊せよ! 地上を地獄の荒野と化せ……その地獄から! 闇が生まれるのだ」
 吹き飛ぶビル! 逃げ惑う市民! チューブの暴威が地上を焼き尽くさんとしたその時、ヘリメカやドリルメカが次々と出現して迎撃を行い、 ヘリのローターを止めて急旋回で敵機後方に回り込んだり、急降下からの地上掃射など、仮面の戦士達が華麗な空戦テクニックを披露。
 力強い空中戦を描きつつ、女性戦士のマスクにはイヤリングがついており、それが印象的に示されるのが、軽やかなアクセント。
 「ブルーマスク!」「イエローマスク!」「ピンクマスク!」「ブラックマスク!」
 地表に降り立った4色の戦士達は合体怪人の火球攻撃を受けて大ピンチに陥るが、もう一機のファイターメカがそこに駆け付け、 陽炎たちのぼる道路の向こう側から徐々に姿を見せる赤い戦士のヒロイックさ、そして、その行く手を塞ぐように黒いズボン(王子) の両足が映り込む、というのが大変、長石監督らしい映像。
 「タケル……!」
 「無事だったんだ!」
 ……え、いや、その男、レースを放り投げて彼女と逃げていたのですが、 や、優しいなみんな……(感涙)
 「何者だ?!」
 「レッド・マスク!」
 「おのれぇ!」
 「よーく覚えておくがいい。地球人の中にも、地底帝国チューブの侵略を予期していた者がいたのだ! そして、密かに結成されたのが、 俺達5人の戦士。――光戦隊・マスクマン!」
 冒頭の穴熊の時もでしたが、台詞の合間に、別場面のカットを挟み込む演出が、サスペンスを盛り上げて格好いい。
 5人揃ったマスクマンは拳法アクションで戦闘員を蹴散らし、幹部クラスとも軽く一当たり。怪人の分裂攻撃に苦しみ、 やたらに強い火球攻撃に追い詰められるマスクマンだったが、美緒の復讐の為、 憎しみを力に変えたレッドマスクが爆発をものともせずに駆け抜けて放ったジャンプ突きがクリティカルヒット。
 基本武器の剣と銃を組み合わせて5人揃って放つレーザーマグナムで弱らせると、大型兵器・ショットボンバーを構え、多分、 電池係という事なのでしょうが、砲身の後ろで巨大なバックパックを背負って立っているだけのリーダーが、割と間抜け(笑)
 バズーカに手を触れてさえいないのですが、これが、無限の力なのか!
 必殺ボンバーの直撃を受けて怪人は消し飛び、幹部クラスは撤収。地底帝国チューブの侵略を阻止したぞ、 と意気揚々と帰還するマスクマンだが、暗がりにグラサンをかけて座り込んでいた姿長官に一喝される。
 「地底帝国チューブの力はあんなものではない。……このままではチューブには勝てん」
 「……長官。長官、じゃあどうしたら勝てるんですか」
 「オーラパワーを引き出すのだ」
 「オーラパワー?」
 「え?」
 「オーラパワー?」
 全員がきょとんとする中、長官がリモコンを操作すると部屋の壁に隠されていた様々なパネルが姿を現し、 長官はピラミッド型のエネルギー枠の中に座り込む。
 ナレーション「姿長官は、いったい何をしようとしているのか。 本当にこの人についていっていいのか?オーラパワーとは何か? そして、美緒とは何者か?  果たしてその運命は。地底帝国チューブの挑戦を受けて、5人の若者は、今、想像を絶した、未知の世界への入り口に立ったのである!」
 ED映像がいきなり、いちゃいちゃ回想から始まって、辛い、とても辛い……!
 と同時に、氷漬けの美緒?のカットが入り、美緒は一発退場では無さそうな事が示唆されたのは、先の展開に興味を引く形に。 また、クレジットによると美緒と王子が同じキャストというのも、何か仕掛けがあるのか気になるところです。
 メインライター連続6年目(!)に突入し、疲弊と表裏一体ながら爛熟期に入った曽田脚本と、 『電撃戦隊チェンジマン』でシリーズ初参加、戦隊3年目にしてパイロット版を任された長石多可男の演出が濃厚に噛み合って、 本編約17分ながら、かなりの情報密度。
 「侵略者は地底人」とか「長官は恰幅のいいオカルトかぶれ」とか、シリーズ過去作を彷彿とさせる要素がブレンド風味ながらも、 そこに主人公ポジションのレッドと女スパイのロマンス要素を絡めて特色となる軸を示し、 憎しみを力に変えて地底帝国チューブを倒すのよ!
 と、改めて《スーパー戦隊》における80年代戦隊の存在の大きさというか、スタッフの満身創痍の度合いが増してはいくものの、 作り続ける事でこの時代に形成された《スーパー戦隊》の<コア>要素が、後代へ繋がっていく影響、後代を支える地盤の力を感じます。
 タケルと美緒のロマンスを押し出す尺を確保する為に、戦隊メンバーは選抜・訓練済みであり、 4人だけで先行して登場するという思い切った采配も、劇中要素のメリハリ強化に効果的に繋がり、二人の関係の重要性を示す事に成功。
 副作用として、仲間も地球の危機もさておいて、とりあえず彼女と逃げるレッドが誕生しましたが、 選抜・訓練は済んでいるが真の力には目覚めていない、というスパイスを含め、次回どう進んでいくか、 主題歌以外ほぼ知らない作品なので、展開が楽しみです。

◆第2話「怪奇!闇の地底城」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 姿長官は無念無想の境地に入った!
 ピラミッドスペースで気を高めた長官は、座禅を組んだ姿勢のまま浮き上がり、地底帝国チューブとの戦闘より驚愕する面々(笑)
 「はははははははは……これがオーラパワーだ」(※効果には個人差があります)
 正直、口から火を噴く連中が出てきた後なのでインパクトはそれほどでもないのですが、姿長官は、 タケル達5人を戦士として鍛えてきたのは、オーラパワーを引き出せる資質の持ち主と見込んだからである、と説明。
 「人はその体を鍛えれば鍛えるほど強くなる。そして人知を越えた力、想像を絶した力を引き出す事が出来るんだ。タケル、ケンタ、 アキラ、ハルカ、モモコ。なんの為に今までその体を鍛えてきたんだ。己を信じて、更に鍛えるんだ。君たちなら引き出す事ができる、 オーラーパワーを」(※独自の研究です)
 長官の主張するオーラパワーは、超科学でも外的に与えられる能力でもなく、“人間の秘めた内的な力”と位置づけられ、 特訓モードに入る5人。レオタード姿で忍者と戦う特訓が割と謎ですが、チューブにも凄く普通に忍者が居たので、 忍者は万国共通の超人なのです。
 地底では幹部陣が帝王ゼーバのお仕置きを受け、心の広さが内部分裂の温床を生んでしまった、前作のラー・デウスを反面教師にしてか、 ゼーバはスパルタ路線。赤い光線が目から入り込んでいるのが、凄く痛そうです。
 幹部陣が適度にのたうち回ったところでアナグマがなだめに入り、コメディリリーフも兼ねていそうですが、大臣ポジション、 といった様子。アナグマは裏切り者のスパイこそ粛正すべきだと進言し……地底獣に飲み込まれたかと思われた美緒は、 地帝城の牢獄に囚われの身ながら生きていた!
 そして空手着を身につけ特訓中のタケルは、託された首飾りを通して届く、美緒の声を耳にする。
 「美緒は生きている……美緒!」
 速攻で、特訓を放棄して、走り出す(笑)
 その姿に戸惑う仲間達、そして、凄く慌てる姿長官。
 「タケル! 戻るんだ!」
 ……もしかしてこの島、特訓中の逃亡を許さない為に、そこら中、地雷だらけだったりするのか。
 「タケル……好きでした。初めて会った時から」
 囚われの美緒のいちゃいちゃ回想が始まり、前回に続いて二人の関係性を念入りにフィーチャー。 正味17分時代の戦隊作劇というのもありますが、繰り返されるあははうふふもテンポが良くて間延びしないのが、 長石演出の良いところ(個人的に長石監督の演出とリズムが合う、というのはありますが)。
 「短かったけど、素敵な思い出をありがとう……。……さようならタケル、もう二度と会う事は無いでしょう」
 「……何故だ……何故なんだ!」
 「何故って……何故って私は……私は……」
 美緒の正体は、チューブの軍指揮官の一人であるイガム王子の妹、イアル姫であり、帝王ゼーバの前に引きずり出されたイアルは、 ゼーバによる冷凍刑の処分を受けてしまう。
 「イアル……地獄で眠れ」
 氷漬けの状態で永遠に悪夢を見続ける恐るべき刑が執行され、美緒の正体と現状を見せつつ、没落貴族と罵られるイガム王子 (ゼーバの血縁ではないらしく、チューブに降伏した一族、といったところでしょうか)と、 貴族に対しあからさまな敵意を向ける姿が叩き上げの軍人めいたハゲ将軍の対立関係を盛り込むのが、手堅い。
 「生きていてくれ……必ず助けに行く。たとえ地の底へでも」
 通信の途切れた首飾りを握りしめたタケルの呟きが格好良く、美緒以外は何もかも後回しという私情を基準に行動しつつも、 要所要所でタケルをヒロイックに描き出す事で、主人公としての存在感を失わせないのが、巧い作りです。
 目線を砂浜にやったタケルは過ぎ去りし美緒との日々を思い返し、タケルと対応してのイメージカラーなのか、赤い靴、赤い帽子、 サボテンの赤い花が印象的に強調。
 「いつの日か必ず、また会えると信じてるよ」
 思い出チャージを終えたタケルが、希望を込めた呟きの際に僅かに微笑を浮かべているのが、 美緒との思い出は悲劇ではなく美しく穏やかなものであり、その背を突き動かすのが復讐の狂気だけではないというラインを示して、 大変いい表情。
 開始時点で出来上がっていた恋人関係が、悲劇的な別離を通して敵味方の関係性に一本の芯を通したところから、 生存の希望をそのまま戦う覚悟に結びつけ、シンプルながら要点を押さえた作りが鮮やかです。
 ……それにしても、微妙に邪悪な文様の首飾りですね!(左右を向いた人の顔の意匠か?)
 タケルが誰も居ない海で二人の愛を確かめていた頃、ハゲ将軍率いる部隊が、地上に出現。
 ナレーション「マスクマンは、バラバの挑戦を受けた」
 4人で(笑)
 …………君ら、ホントいい奴だな……(感涙)。
 この1−2話、タケルと美緒を中心にしていて残り4人は潔くキャラ回待ちという描き方なのですが(アキラだけ、 コメディリリーフ的な扱い)、タケルが愛のソルジャーすればする程、暖かい距離を取る4人の好感度が自動的に上がっていくミラクル(笑)
 だが、特訓半ばの4人は待ち受けるチューブ軍の攻撃を受けて斜面を転がり落ち、更に、前回妙に強調されていた怪人の手の残骸は、 なんと伏線だった!
 エネルギー獣オケランパ(結構凝った造形)が地上に送り込まれると、その放出したエネルギーを受けた地底獣が、腕から巨大化復活。
 そして、長官の呼び出しを受けて仲間の元に駆け付けようとしたタケルの前には、イガム王子が姿を見せる!
 美緒を救い出してみせる、と決意も新たにタケルが振り向いて走り出そうとするとそこにイガム王子が!  というドラマチックな演出も合わせて非常に格好いい展開で、イガムはタケルの握りしめるペンダントに目を止める。
 (妹をたぶらかした男とは、こいつだったのか)
 イガムの攻撃をかわしたタケルは、若干オーラパワーが洩れ気味のスーパージャンプから空中変身。
 「レッド・マスク!」
 「貴様がレッドマスク! なんということだ! おのれ倒す! 絶対に倒す!」
 両者は激しく空中で切り結び、妹へ対する愛か憎しみか、汚名を雪ぎたいという家名へのこだわりか、 王子が妹に対して終わった話として無感情でない事が示されると共に、タケルと王子の因縁も構築され、いやぁ手堅い、実に手堅い。
 地底くノ一が王子の援軍として乱入し、第1話時点では、敵の幹部クラスが多すぎでは、と思ったのですが、王子−くノ一、 ハゲ−赤タイツがセット、という図式が判明して覚えやすくまとまりました(なお赤タイツを演じるのは、 宇宙海賊ブーバやカウラー部長の右腕ボー・ガルダンなどの岡本美登さん)。
 口から火を吐いたり短刀を吐いたりするビックリ人間のくノ一の攻撃を受け、二対一で苦戦するレッドは、 本部の指示を受けて仲間の救援を最優先とし、レーザーマグナムで目くらましをすると、 シューター(各所に配備してあるらしいマスクマン移動用ポッド)に乗り込み格納庫に到着。
 巨大戦闘母艦ターボランジャーが滝を割って出撃するとチューブの戦闘機を蹴散らし、 地底怪獣に追い詰められていた仲間達の元へ辿り着くと、ファイター(赤)・ジェット(黄)・ジャイロ(桃)・タンク(青)・ ドリル(黒)の出撃シーンに主題歌が重ねられて大変格好いいのですが、第1話の戦闘シーンでは使用しなかったので、 劇中初使用が合体メカ→巨大ロボ誕生のシーンという事に。
 「合体・ファイブクロス!」
 5機のメカが変形合体し(5つのメカが合体ロボになるのは今作がシリーズ初だそうで、やたら「ファイブ」を強調しているのは、 その為か)、ちょっと中年男性顔のグレートファイブが誕生する!
 「やられてたまるものか……美緒を助けるまで、死ぬものか!」
 分離合体を繰り返す地底獣の変則的な攻撃に苦戦するグレートファイブだったが、愛のパワーを振り絞ったレッドの操縦で立ち直ると、 シールドから光電子ライザーを引き抜き、光子斬りで成敗。
 だが地底では怒りのゼーバがダークホロンのエネルギーを放射し、地底城(の影)がいきなり地表へと浮上する――。
 「ふふははは! 殺戮と破壊で地上がこの世の地獄と化した時、我がダークホロンの妖気が、暗黒の地帝城を生み出したのだ。 今こそ地上は冷たく、暗い闇の世界に変わっていくのだ」
 何が「我がダークホロン」なのかは現時点ではさっぱりですが、もしかして、 ゼーバの衣装の上半身前面から両サイドに突き出している飾り部分は、ホルン(角笛)モチーフなのか? 
 ナレーション「遂に、恐るべき暗黒の地帝城が出現した。果たしてマスクマンは、地上に光を取り戻す事ができるのであろうか」
 体当たりを敢行するも弾き返され、デビュー戦を華々しく飾った巨大ロボが、 その余韻も冷めない内に敵の居城に完敗を喫してしまう衝撃の展開で、つづく。
 彼女の為に敵前逃亡を繰り返すレッド・フル名乗りの5人揃い踏み無し・巨大ロボットいきなりの敗北 とここまでのシリーズで固まりつつあった定石に崩しを入れつつも、要所のヒロイックな見せ方、マスクアクションとロボアクション、 悪の脅威と因縁構築、と押さえるべきポイントはしっかり押さえてヒーローフィクションとしては非常に洗練されており、 曽田脚本の匠の業前とテンポ良くドラマ性を深めていく長石演出がガッチリ噛み合って、今回も濃密な一本でした。
 正直ちょっと、想定外の濃さ。
 チューブ陣営の場面ではしばしばキャラの目元にカメラを寄せて、 顔の隠れた悪役陣にも目で芝居をさせようというのは長石監督らしい見せ方ですが、敵側のデザインに関して、 監督の要望もあったりしたのかどうか。
 第2話においてもオーラパワーに覚醒せず、5人のフル名乗りも無い、というのは意外でしたが、 その分しっかりと巨大ロボでヒーローの見せ場は確保しているので物足りないという事はなく、 型と型破りを同居させるバランス感覚が巧妙(この辺りは、スタッフが連続している事のメリットといえましょうか)。 今後もこのテンションが持続していくかはわかりませんが、パイロット版としては、かなり好感触でした。
 過去数年のシリーズ作品と比べて1話ごとのギミック量を減らし、その分タケルと美緒の物語を濃密に描く、 という導入はこの先に興味を持つのに十分なフックになりましたし、長編の中で巧く結実してくれる事を期待したいです。
 次回――美緒への気持ちを雑念として消されてしまうタケル! 本当にこの人についていっていいのか?! 出るか、オーラパワー?!

◆第3話「未知への第一歩!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 前回ラストで出現した闇の地帝城は、その暗黒の力で太陽を遮り、地上を冷たく暗い闇の世界に変え、 いきなり迸るハカイダー部隊ばりのCLIMAX感。
 そして……「この闇の地帝城に打ち勝つには、オーラパワーを引き出すしかない」と、 激しく筋トレするマスクマン。
 ……侵略の初手で地上に前線基地を作られてしまうのを含め、光と筋肉の関係性が『重甲ビーファイター』(1995年) を思い出さずにはいられませんが、80年代への回帰的志向のあった『ビーファイター』は今作の影響下にもあったのか、 と今更ながら成る程。
 ここに、『光戦隊マスクマン』〜『重甲ビーファイター』〜『ウルトラマンガイア』を、「光と肉の三部作」と位置づける説を唱えたい。
 バレーや大縄跳びを模した謎の特訓で追い込まれる事で変な波長が上がったり、今作の更に源流に昭和スポ根物があるのでしょうが、 順調に おかしくなって 成長していく5人は、第5段階の特訓として雪山でザゼーンを組んで精神集中し、 ゴールデンコンドル!! じゃなかった、げふんげふん(筆者は、劇中でヒーローが座禅を組む姿を見ると反射的に 『正義のシンボル コンドールマン』を思い出す病気にかかっています)。
 無念無想の境地に入ろうとするほど、地底の闇に呑まれた美緒を思い出すタケルはピラミッドフィールドを維持する事が出来ず、一方、 地底ではイガム王子が氷漬けのイアル姫に向けて恨み言をぶつけていた。
 「地底貴族の名門、イガム家の一族とあろうものが、恥ずかしい姿をさらしおって……お陰でこの俺は、裏切り者の兄と後ろ指さされ、 どれだけ悔しい思いをしている事か」
 救出を願うタケルと、憎しみを向けるイガム、地上と地下の両者から別々の感情を向けてキーパーソンとしてのイアル姫の存在を強調しつつ、 イガム王子の立場も補強して、今回も実に手堅い作り。
 「覚えておけイアル姫! おまえが愛した男、口にするも汚らわしい、あのレッドマスクは俺が叩っ切ってやる!」
 眠り姫と化したイアルに向けてイガム王子は吐き捨て、芝居がかった台詞回しが早くも特徴的で良い感じです。 「口にするも汚らわしい」って、なかなか言えない!
 王の間ではこの光景がモニターされており、敵意を向けるハゲ将軍をなだめるアナグマ着ぐるみの、 ひっきりなしに動き回る目玉が面白い造形。
 地上では、精神集中できないタケルのいちゃいちゃ回想がオーラパワー発現の妨げとなって爆発を引き起こし、 揃って斜面を転がり落ちる一同。
 「みんな…………すまん」
 「タケル、水くさいぜ。出来るまで何度でもやればいいじゃないか」
 「そうだよね、みんな」
 「「「うん」」」
 「もう一度挑戦、頑張りましょ」
 君ら、ホントいいヤツだな……!(涙)
 タケルが私情に惑わされるほど、残りメンバーの好感度が上がるのは、実に巧い構造です。 タケルと美緒のいちゃいちゃ回想がこの二人の間だけで閉じてしまうと両者の好感度にも悪影響になりかねないのですが、 そこから周囲の人間関係へ展開する事でシーンそのものに複数の意味を持たせる事により、二人の関係の重要性を示しつつも、 巧くマスクマン全体の描写に繋げているのが、秀逸。
 ……ところで、赤黒青はそれぞれの色ジャージなのに、女性2人は黄と桃ではなく水色のジャージで共通なのは、何故なのか。
 姿長官が女性オペレーターを二人も雇ったせいで、色違いのジャージを揃える予算が削減された疑惑の募る光戦隊だが (オペレーターの一人が白人女性で、ワールドワイド感を出そうとする意図が見えるのですが、官製なのか民間組織なのかも含め、 組織の規模は激しく謎)、めげずに修行を再開しようとする5人は、助けを求める美緒の声を聞き取る。
 「美緒の声だ……美緒ーーー!」
 「タケル! 行こう、美緒さんを助けなくちゃ」
 君ら、ホントいい奴だな……!(感涙)
 危うく、主人公が、レース放棄→特訓放棄→修行放棄、の敵前逃亡トリプルプレーを決めてしまう所でしたが、仲間達の総意として、 声に導かれて暗闇に閉ざされた高層ビル街に向かうマスクマン。だがそこで待ち受けていたのは、 声真似の術で5人を誘き寄せた地底くノ一の罠だった!
 王子とくノ一に挟み撃ちを受けた5人は生身で戦闘員に立ち向かい、早速ぶつかり合う忍者vs忍者!  イガムの右のドラゴンと左のドラゴン(ガントレットからの飛び道具)を受けて追い詰められた5人は変身しようとするが、 闇の地帝城の力により、変身を妨害されてしまう。
 今のままでは勝ち目は無い、と5人は一目散に逃走し、本部ビルに戻ってきたタケルを待っていた姿長官は、 イアルから託された首飾りを、引きちぎる。
 「忘れろ。今は忘れるんだ。……雑念があるからオーラパワーが出ないんだ。……おまえ一人じゃないんだぞ」
 五人全員がオーラパワーに覚醒しなければ、マスクマンは真の力を発揮する事ができない。地底帝国チューブに打ち勝つ為、 私情を捨てて大義の為のマシンと化せ、と迫る姿長官がド外道ですが、一人の不覚が四人の仲間の危機に直結するのは事前の修行で映像的にも示されており、 巧いところをついてきます。
 5人のチームがなぜ一蓮托生なのか、という要素を一段掘り下げて描いており、タケルと美緒を見守ってきた仲間達の存在が、 タケルの背を支えるもう一つの柱になる、というのも考えられた構成。
 レッドマスク抹殺に逸る王子は、戦闘機部隊を連結合体させるまさかのスネークロボで地上攻撃を宣言し、 その映像にタケルを先頭に飛び出していくマスクマン。
 「俺は逃げない!!」
 スネークロボの圧倒的巨体と火力に蹂躙されそうになるも、タケルは敢えてそこに踏みとどまり、4人の仲間も、 共に立ち向かう事を選ぶ。
 「危ない!」
 「みんなどういうつもりなのかしら?!」
 「――特訓だ!」
 「「え?」」
 「これこそ若者達が、自ら己に課したトレーニングなんだ。自ら危険な状況に身をさらして、絶体絶命の中から、 未知の力を引き出そうとしてるんだ!」
 とんでもない事を言い出す長官ですが、「雑念を捨てる」=「生き残る以外何も考えられない状態になる」だと思えば、 説明がつかない事もない……のか?
 「みんな、手を繋ぐんだ!」
 爆撃の嵐の中、一つに集まった5人は周囲を包む業火の中で精神を集中し、文字通りの「火事場の馬鹿力」により、 はち切れんばかりのオーラマッスルへと覚醒――そう、

 筋こそ光、肉こそ真理!

 変則的な構成で第3話まで引っ張った“真の力への覚醒”が、結局ほぼ勢いで処理されてしまったのは残念でしたが、 「火事場の馬鹿力」=「脳のリミッターを外す」を意図的に行えるようになるのがオーラパワーだと考えれば、筋が通らない事はない……のか?

「光戦隊!」
「「「「「マスクマン!!」」」」」

 金のオーラに命を燃やし、宇宙に続く奇跡の道に覚醒した5人は、今、真の光戦隊マスクマンへと変身する!
 「あの中で生きていたとは……!」
 なんか、ヤバいものに手を出してしまったのかもしれない、と目を見開くイガム王子。
 「イガム! 俺達は不死身だ、許さんぞ!」
 生と死の境界で狂気の臨界を突破したマスクマンは母艦を呼び出し、迫力たっぷりのメカ特撮でスネークメカと激突。
 真の力への覚醒後に主題歌バトルでスーツアクションを期待していたら、そのままメカ戦に突入してしまったのは肩すかしで残念でしたが、 ややパターンを変える代わりに、2−3話でしっかりロボ(メカ)を強調する、というのが商業的要請との落としどころであったのでしょうか。
 自由自在に動き回るスネークロボに苦しむグレートファイブだが、電光ブーメランを投げつけてダメージを与えると光電子ライザーを抜き放ち、 全身に光を纏って舞い飛びながら切りつけるファイナルオーラバーストでスネークロボを破壊。イガム王子は逃走するが、 地上にはまだ闇の地帝城が健在……と思ったら、オーラパワーを込めた光電子ライザーを投げつけると闇の地帝城は割とあっさり消滅し、 地上には光が戻るのであった……!
 人体の秘めた神秘のパワーを押し出している割に、オーラパワー覚醒後の活躍がロボばかり、 というのはやや作品として齟齬が出てしまった感じですが、やられメカが合体して巨大ロボの相手を務めるスネークロボの趣向は面白かったです。
 長官の下に戻った5人は歓喜を分かち合い、 鍛えに鍛えて今の自分の限界を乗り越えて何かを成し遂げる達成感そのものに大きな喜びを感じている様子の5人は基本的にアスリート脳のようで、 そう見ると「オーラパワーへの覚醒」とは今風にいうところの「ゾーンに入る」事を自在に行う技能ともいえるのかもしれません。
 一同揃って、今作の主要ギミックである「人の体の秘めた無限の可能性の素晴らしさ」を讃え、 和気藹々としたままなし崩しで終わってしまいそうでドキドキしていたら、首飾り、返してくれて本当に良かった。
 「こういうものは、ここに仕舞っておくもんだ」
 このまま終わったら人の皮を被った畜生一直線だった姿長官が、 タケルと美緒の絆の証である首飾りをタケルのジャケットの胸ポケットに入れて返すのは格好良く決まり、 それを仲間達が微笑ましく見つめるのが、立ち上がりに描かれた“マスクマンらしさ”として象徴的。
 ナレーション「それは、美緒の事は胸の奥底に秘めて戦え、という事だと、タケルは思った」
 オカルトかぶれで特訓マニアで個人の感情を顧みない鬼畜外道の類だとばかり思っていた姿長官ですが、 目の前で恋人と死に別れた直後で錯乱状態の男に平手打ちを一閃して復讐の炎に乾燥した薪を屯単位でくべていく某小田切長官よりは、 だいぶいい人だな……。
 上述したように、5人の揃い踏みを先送りし、2−3話が実質前後編という変則的な構成で第3話まで引っ張った“真の力への覚醒”が、 無理を通して力技なのは残念でしたが、そこはどうしても、80年代〜90年代へ向かう、中間期の作品ゆえ、という面はありましょうか。 ここで蒔かれた種が(この後の数作は未見なのでわかりませんが)、「力の発現」という要素を切り離す形で、 『鳥人戦隊ジェットマン』を経て、やがては小林靖子の諸作などで「真の戦隊になる」というテーゼに発展・結実していくのは、 シリーズの流れとして面白いところ。
 次回――撮影当日に、思わぬ雪が降ってしまった、みたいな映像になっていましたが、大丈夫かF1魂?!

◆第4話「燃やせ! F1魂!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 キャストクレジットに金尾哲夫さんの名前があり、今回の登場人物からすると、少年のお父さん役でしょうか。
 光戦隊マスクマンの仮初めの顔であった姿レーシングクラブにファンの少年から電話があり、 タケルは少年にレーシングカーを見せる事を約束。だが、少年を乗せた車がチューブの作り出したメビウストンネルに入り込んでしまい、 無限に続く異空間を彷徨う事に。
 「日本中のトンネルを、メビウストンネルにするのだ」
 「一挙に地上を闇の世界に変える事は失敗したが、地底帝国チューブの恐ろしさ、思い知らせてやるのだ」
 確かに、作戦が順調に進行すればインフラに深刻な大打撃を与えられそうではありますが、一挙に、嫌がらせ路線になったなチューブ……!
 日本全国の無線通信をオーラパワーで傍受している姿長官により少年のSOSがキャッチされ、救出に向かうタケル達だが、 メビウストンネルに弾き飛ばされてしまう。そこに地底忍者赤影が現れて戦闘に突入し、ハルカが物凄くナチュラルに忍者な事が、 気になって仕方ありません(笑)
 戦闘員の電磁鞭攻撃を受け、更にアキラがメビウストンネルに吸い込まれそうになり、苦闘の続く5人は変身。
 空中浮揚から印を組むと裸になり、光の壁に突入して一人ずつ変身していく、というのはあまり格好良くないのですが、 今後簡略化されるのか。
 赤影一味は撤収し、一度本部に戻ったマスクマンは、一定以上のパワーを持った車ならば、 メビウストンネルの異空間を破壊できるという分析結果を伝えられる。
 「姿スーパーF1モデルを改造して、もっともっとパワーアップをはかるんだ!」
 姿長官は、押して駄目ならもっと押してみろでここまでの人生を渡り抜いてきたのか。
 「いつの日か、このマシンを完成させて、グランプリを制覇するのが夢だったのに」
 「レースに出る事なく、改造されちゃうなんて」
 5人は少年を救う為、未完成のマシンを別の姿に生まれ変わらせる事を決断し、5人のこれまでの日常、 若者達の私人としての夢の象徴を、素材として解体し、自らの手で兵器として組み立てさせる鬼畜の所業により、 後戻り不可能な戦いの道を深層心理に刻み込み、追い込み方がえぐいな光戦隊……。
 侵略者との戦いが始まった以上、社会的なペルソナなど不要! という割り切りぶりが実に80年代戦隊的。
 姿長官は、改造作業を進める5人の元へ黒いつなぎ姿でおにぎりを差し入れ、普段は「ボス」と呼ばせている事が判明(笑)
 今のところ、個人の資産で都心部に巨大な高層ビルを本拠として構え、レーシングチームを運営しつつ5人の若者を鍛え上げ、 チューブの侵略に対抗しようとしている大富豪にして篤志家に見えるのですが、各種設備から溢れる趣味感が腑に落ちます。
 (俺が君たちをレーシングチームに組織したのは、その団結力とチームワークを、戦士として活かしてほしかったからだ。 君たちはわかってくれているね)
 全てはこの時の為の準備に過ぎない、と表向きの姿に与えた夢と目標を根こそぎ奪い取った上で、自己完結する姿長官、 なまじ5人との距離感が近い事で、一方的な「思いやっているつもり」と「わかってくれているつもり」が永久運動していて、 とてもタチが悪そうです!
 この辺り、同時代的な無茶は無茶でも、チェンジマンのような軍人(公務員)戦隊の方が、 今日見ると受け入れやすかったりして機能的な設定ではあるのですが(『チェンジマン』が時代を超えて評価が高い一因だと思います)、 それはそれで、どうしても枠組みにはめる事になってしまう難はあったのだろうな、と。
 F1の魂を捨て、じゃなかった、胸の奥底に秘め、新生したスピンクルーザーはメビウストンネルへと突入。 その内蔵するパワーにより異空間の破壊に成功すると少年父子を救出し、5人揃っての名乗りからのバトルは、 意外やEDテーマで始動(まあこちらも格好いいんですが)。
 「マシン攻撃だ!」
 超重量の剣を軽々と振るうハゲ将軍や、モチーフ怪人と寄生生物の合体路線である地底獣の二段攻撃に苦しむマスクマンは、 クルーザーとバイクを持ち出して蹂躙し、肉体の力、どこ行った(笑)
 前回のロボ、今回の地上マシン、といずれも作品のテーゼと販促事情が巧く噛み合っていない感じはあり、 変身段階からパターンを少し変えている事も加わって、戦闘シーンはまだ試行錯誤の色合いが強く窺えます。
 再合体した怪人をショットボンバーで消し飛ばすと、地底ではゼーバ様が自らエネルギー獣オケランパを送り込み、 戦闘母艦の出撃シーンでOPインストを使用。二体に分かれる巨大地底獣に苦しむグレートファイブだが、グレートガンで反撃し、 合体したところをファイナルオーラバーストで撃破するのであった。
 地底獣&寄生生物のツーマンセルも、巨大戦では単純に数2倍という事もあってロボを苦しめるのですが、 逆に合体時の個性が弱くなってしまい、トドメを刺される為に合体する、という作劇になっているのが、 まだアイデアを巧く消化できていない感。
 怒濤のプロローグが終わり、5人の若者達の現在の立ち位置を示す、基本設定の確認編。助けた少年との会話で、 地上が平和になった暁には、またレースに復帰したい、と「個人」の夢を再び浮き上がらせ、清々しくつづいたところからの、 EDいちゃいちゃ回想が辛い。
 このフォーマットに慣れるまで、EDの度に変な精神ダメージを受けそうです(笑)

◆第5話「小さな剣士ブルー」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 新たな地底獣・スカルドグラーが解凍され、物凄く普通に、マンホールを通路代わりにしているチューブ。
 元々は第1話における、タケルと美緒の運命的な出会い・ちょっとお茶目で浮き世離れした美緒の印象、 を強調する為の小道具だと思われるのですが、最早、後には引けない感じに。
 パトロール中、リンゴを追いかけて怪人を見逃してしまったアキラは16歳と判明し、地上に出現したスカルの能力により、 人々の顔が入れ替わってしまう、面白い、というより、気色の悪い映像(笑)
 この現場に居合わせたアキラはふわふわと飛ぶスカルヘッドを追い、合体スカルの火炎放射を愛用の二刀流で跳ね返すも光線で弾き飛ばされた所に、 飛んできた剣がばっちり刺さったーーーと思ったら、懐に入れていたリンゴによって幸運判定に成功。
 「やるわね。でも余計な手出しは怪我の元よ。坊や。ははははははははっ」
 「坊や? いっちばん気にしてる事、言ってくれるじゃないの」
 敵サイドの頭数が多いので、存在感が薄れるのを危惧していた地底くノ一にしっかりと台詞を与え、相手を見下す傲慢な姿と、 それに負けん気を燃やす構図にキャラの個性を絡め、印象的にマスクマンメンバーと対峙させてくれたのは、嬉しい。
 「はははははははは! 地底貴族の名門、イガム家に代々仕える、地底忍フーミンに、その程度の技が通じると思っているのか!」
 フーミンは地底忍法・空蝉の術でアキラを翻弄し、ホント東映は、忍者が出てくると演出のテンションが上がります(笑)
 当時の作りからしてJAC枠かと思われるフーミンさんと、リアル拳法家である広田さん演じるアキラ、 動ける二人を早い段階から直接ぶつけて生身アクションを前面に押し出し、フーミンはスカルを連れて撤収。
 王子−くノ一、司令−赤影、というW指揮官&上司と従者体制になっているチューブですが、 今回は王子が直接出馬せずに現場指揮をくノ一に任せる事により、必要以上の格落ちを避ける有効活用。
 「顔を移し替える事によって人間社会は大混乱。地底帝国チューブの恐ろしさに震え上がっております」
 前回に続き、確かに地味な嫌がらせとしては有効に働いているのですが、そこまで自慢げな顔をされても(笑) 一方、 将軍は将軍で物凄い目つきで王子を睨みつけており、この辺りのさりげない見せ方で敵味方双方のキャラクターに厚みを与えていくのが、 曽田×長石に続き、曽田×東條が匠の技。立ち上がり、名匠二人の演出力が光ります。
 「もっともっと混乱を引き起こせ! その混乱に乗じて、一挙に地上征服に乗り出すのだ」
 あくまで本命は、混乱を足がかりにした侵攻だと王様自らフォローを入れ、時間・予算・兵員を大量に投入した初動の大規模作戦が失敗に終わり、 侵攻計画の抜本的立て直しを迫られる(中でじり貧に陥っていく)……という構図には、某地底国家の先輩を思い出してしまうところ(笑)
 一方、地上の光戦隊では、アキラと連絡が取れなくなっていた。
 「あの子どこ行っちゃったのかしら」
 ハルカからは、“あの子”扱い。
 「戦士としての心構えが出来てないよ。やっぱりあいつは、まだまだ子供なのさ」
 ぼやくケンタの言葉を、黙って腕組みしながら聞いているタケル@敵前逃亡前歴アリ(笑)
 「そんな事はないぞ」
 ケンタをたしなめた長官は「マスクマンになるにふさわしい若者を探して、日本中を旅した」スカウト時代を回想し、 アキラが華麗な拳法アクションと入浴シーンを披露。
 「体は小さく、歳も若い。やる事は子供っぽいが、何をしでかすかわからない意外性がある。――みんなにはそれぞれ個性がある。 その個性を活かし5人の力をフルに発揮するのが、チームワークじゃないか」
 現実へのフィードバック要素としての“個性の尊重”を、戦隊である事の意味とスムーズに繋げた良い台詞で、 “若者達を導く大人”としての姿長官の株も上げ……
 「大丈夫。俺の目に狂いはない」
 直後の、自分自慢で台無しに(笑)
 やり取りの最中、終始無言のタケル@敵前逃亡前歴アリは、ここまでスポットの中心だったので今回は故意に台詞を押さえたのだとは思うのですが、 結果的に、周囲の言葉がグサグサと胸に突き刺さっている感じに(笑)
 個性、俺の個性は、暴走……!
 「アキラは必ず、立派な戦士になる若者だ」
 何故なら俺が、見出したからな、と自慢げに胸を張る姿長官だが、丁度その時、 スカルヘッドにまたがって空を飛ぶアキラの姿がオーラカメラに捕捉され、一同唖然。
 「何やってんだ?! 遊びじゃないんだぞ!」
 「これで立派な戦士なんですかねぇ……」
 長官に割ときついツッコミを入れるニンジャマスクイエロー(笑)
 もっとも、ここでストレートに「さっすが姿長官!」としてしまうと、それはそれで危うい面を孕むので、 コミカルな要素を取り込みつつ姿長官に隙を与えるのは、巧いバランスになったと思います。
 やや余談に逸れますが、後のボウケンレッド(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)の造形と変遷は、80年代的レッド像のみならず、 長官ポジションの変質も意識的に取り込んでいたのかもしれないな、と今更ながら。
 「ん? ……はぁ」
 将来、「あいつは儂が育てた」と言って回るのが夢な長官は溜息をつき、 スカルヘッドに振り落とされそうなアキラを救うべく出撃しようとするタケル達だが、 飛び回るヘッドを操る誘導電波の存在がキャッチされる。
 てっきりオペレーターだと思っていた白い服の女性が長官から「ハカセ」と呼ばれ、 超有能なエリートキャリアに延々と伝票の宛名を手書きさせている的な人材の無駄遣い感が漂いますが、 仮に光戦隊の各種装備を開発した人だとしたら、そんな所で通信処理とかやらせていていい人なのか、ハカセ。或いは、 「博士」ではなく「葉加瀬」(苗字)というオチなのか。
 葉加瀬(仮名)の分析によりヘッドを操るボディの存在を突き止めたマスクマンは、謎のオーラネットでヘッドを捕まえ、アキラを救出。
 「御免よ、心配かけて」
 「なに、謝る事はないさ」
 「アキラのお陰で」
 「スカルを操ってる仕組みがわかったわ」
 「え?」
 「ハルカ!」
 ボディの潜む茂みに向けて、物凄くナチュラルに手裏剣を投げるハルカさん、なんだか、 好きになってしまいそう(笑)
 アキラの意外性の助けにより、首尾良くスカルドグラーを無力化したかと思われたマスクマンだがその時、 茂みの奥から王子が奇襲の電光を放ち、誇り高い名門貴族だが、「正々堂々」の4文字は辞書に載っていないのだ!
 王子登場が正面足下から映され、堂々ハイヒールな事に気付いたのですが、生物学上の性別はまだ不明なものの、 一応男性の役柄に女性キャストを配した上で(特段、男性的な容姿というわけでもない)、 女性的なシルエットを消すよりも活かす方向のデザイン、というのもまた面白いところです。
 「イガム! これ以上阿漕な真似は、許さんぞ!」
 イガムに啖呵を切るタケルのポーズと表情が格好良く、5人はオーラマスク(「変身」の意)。 5人が飛び上がったところで主題歌が流れ始め、〔タケル→画面4分割で4人同時〕に簡略化された変身シーンから揃って名乗り、 第5話にして初の、揃い踏みからの主題歌バトルが、やはり盛り上がります。
 黄は、マスキーローター(独楽)を脳天に突き刺し、黒は五節棍にもなるマスキーロッドを振り回して戦闘員を薙ぎ倒し、 冒頭で仲違いした黒と青がコンビネーション攻撃を決めて、スカルボディの電波発生源を破壊。 更にくノ一の地底忍法・フーミントルネードをマスキートンファーで打ち破ると、 レーザーマグナムで弱らせてからのショットボンバーで合体スカルを撃破。
 「エネルギー獣! オケランパー!!」
 ……物凄い勢いで巨大化担当を送り込むのが見せ場の首領ポジション、て割と珍しいようなそうでもないような。
 今回も地底獣の分離攻撃に苦しむグレートファイブだったが、銃で反撃すると、ジャイロカッター(十字手裏剣) を投げつけてスカルボディの電波誘導を無効化し、トドメはファイナルオーラバースト。
 かくしてチューブの嫌がらせは失敗に終わり、街中で二刀を振り回し子供達の至近距離でリンゴを切り刻む剣の達人とか、 自販機でジュースを買うかのように手裏剣を投げる忍者とか……姿長官の集めてきた人材が本格的に紙一重な感じであり、 今のところ太極拳使いという以外にこれといって特徴もなく雰囲気も普通なモモコ辺りのハードルが物凄く上がってきていますが、 大丈夫か?!
 こんな顔して相手の精神を破壊する必殺魔球の使い手とかだったりするのか?!
 次回――ケンタかと思ったらタケル回で、目覚めよ、神の一手!

◆第6話「夢のゴッドハンド」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 マスクマンは原因不明の事件が続く大滝市の調査に赴き、地震の揺れで落ちてきた石造りの鳥居の一部を、 素手のパンチで打ち砕くタケル(笑)
 あまりにも真っ正面からの強行突破に、色々なものが吹っ飛ぶ映像です。
 「すげぇー……ゴッドハンドだ」
 空手を学び、『黄金の腕』という「ゴッドハンド」について書かれた本を愛読する少年・ノリオから熱い憧れの視線を向けられるタケルだが、 少年の夢であるゴッドハンドを「ありえない」と真っ正面から否定し、敵前逃亡、特訓放棄に続き、子供を雑に扱う、 という新たな失点を稼ぎ出し、そろそろ累積レッドカードになりかねないぞ!
 「でもあの時、石の鳥居を……」
 「鍛えればレンガだって割れるだろ? あの石も、ヒビが入っていたしね」
 タケル、ちょっと待ってタケル! 手裏剣で物事を解決する同僚とか、空中に浮かぶ上司とか、手から光線を出す義兄(予定)とか、 周囲の人々がハードモードすぎて、物事の基準がちょっとおかしくなっているぞタケル!!
 この辺り、従来のヒーロー像からの変化の意識は窺えるのですが、「オーラマスク」とかしている人間が、それとこれとは別の話、 と「ゴッドハンド」をばっさり否定するのは、無理が出た感。……逆に、 タケル基準の「ゴッドハンド」=「一撃で地形を変える」レベルという可能性はありますが。
 頻発する地震の原因はチューブの地底獣ドリラドグラーのトンネル掘削であり、 チューブは縦横無尽に張り巡らしたトンネル網に仕掛けた爆弾を同時に起爆する事で、大滝市を丸ごと地底に沈めようとしていた。
 「大滝市が地の底に沈むのも、あと5時間」
 それを聞いてしまったノリオはチューブに追われ、そこに行き合うタケルだが、石の鳥居も砕く必殺パンチを怪人の装甲に弾き返され、 ノリオは地下へと引きずり込まれてしまう。
 「おのれぇぇぇ!!」
 悲痛に泣き叫ぶノリオ母の姿に、目の前で美緒を連れ去られた哀しみを思い出し、激怒したタケルはオーラマスク。 仲間達も参戦するがドリル獣の装甲の前には剣さえ折れ、作戦を優先したハゲ将軍一味は撤収。
 (俺が、ゴッドハンドだったら、ノリオくんを、救えたのに)
 「ゴッドハンドはある」(※独自の研究です)
 「「「「ええっ?!」」」」
 助言を求めて本部に戻ると姿長官は断定し、どうやら、この世界における「ゴッドハンド」とは、空手を極めた達人の技の通称ではなく、 伝説的な技の固有名詞の模様。
 「本当に、ゴッドハンドが?」
 「オーラパワーを忘れたのか。オーラパワーを発揮した君になら可能だ。いいかね、 君たちはまだ秘められた力の半分も活用していないのだ。オーラパワーは、奥深く、底知れぬ力を秘めている」
 姿長官の言葉で今後の成長の可能性が示唆され、別行動を取っていたピンクマスクが大滝市の地下に張り巡らされたトンネルを発見するが、 迫る爆発のタイムリミット。
 「タケル、どんな事があっても、オーラパワーを信じるんだ」
 ノリは完全に、2年前の「アースフォースを信じるんだ」と同じですが、 「オーラパワーを信じる」=「自分(積み重ねてきた鍛錬)を信じる」と自動的に変換される構造が、今作の特徴に。
 大滝市で合流した5人は、ノリオくんの落とし物から秘密の入り口を発見して地下アジトに突入し、 即座に手裏剣の一投で爆弾の起爆装置を止める忍者優秀、超優秀。
 「この本が、君の居場所を教えてくれた。――ゴッドハンドが、君を救う」
 タケルはチョップ一発で鉄の鎖を切断して少年を救出し、全体的に荒っぽい展開ながら、少年の愛読書を救出劇と繋げる事で、 「少年の夢」という要素を忘れずに拾い、それを守る者としてタケルのヒーローLVを上げてくれたのは、良かったところ。
 「馬鹿め。素手でドリラドグラーに勝てると思ってるのか」
 「秘められた力は、生身の体からこそ、発揮できるのだ!!」
 変身ヒーローの根幹を揺るがしかねない気合いの叫びをあげてドリル獣に躍りかかるも叩き伏せられるタケルだが、 これまでの訓練の数々と長官の言葉を思い出すと、精神集中により自らの内側に眠る力を引き出し、ゴッドハンドに覚醒。 正拳の一突きでドリルの腹部を貫いてみせ、冷や汗の垂れる展開なのですが、そもそもマスクマンの場合オーラパワー覚醒前から変身しているので、 スーツはあくまで、超パワーを発現して戦闘力を急上昇させるものではなく、 肉体の酷使によるバックファイヤを含め様々なダメージの低減が主目的の装甲戦闘服であり、戦闘力そのものは、 あくまでも鍛え上げた肉体の力に依拠する、と思えば良いでしょうか。
 イガム王子に続き、地上人マジやばい……と戦慄したハゲ将軍が戦闘員を繰り出すと5人はオーラマスクし、 レッドマスクはゴッドハンドの一撃でドリル獣の土手っ腹に風穴を開けると、ショットボンバーで粉砕。
 巨大戦ではまさかのグレートゴッドハンドが炸裂し、肉体を鍛えて引き出す神秘のパワーと、ロボットによる巨大戦との間にあった溝に、 力技で橋を架けました(笑)
 大滝市の危機は回避され、ノリオ少年は海に向けて一心不乱に打ち込みを行い、信じる力が神の手に繋がるのだ、 と指切りを交わすタケルであった。
 ナレーション「今またここに、秘められた未知の力を信じる者が現れた。少年は、あのオーラの輝きを決して忘れない。人の体には、 不思議な力が秘められている。鍛えれば鍛えるほど、その不思議な力を引き出す事ができるのだ」
 締めのナレーションが念押しするように、作品コンセプトを再確認しつつ、 少年の夢を守って拳を振るうタケルのヒーロー性を引き上げるエピソードだったのですが、ノリオ母の姿に美緒との別離を思い返す事で、 タケルが「私」の情動で動く要素が強まっていて、「少年とヒーロー」の構図としては、やや雑念が交ざりすぎた印象。
 コンセプトの確認作業として美緒の存在を念押しするのはわかりますし、タケルはあくまで、それを切り離せないヒーロー、 として描いていくという事なのかもしれませんが、巧く噛み合っていってほしい要素です。
 なお、ノリオ母が、ゲスト少年の母親という役どころにしては出番が多かったのは、演者がひし美ゆり子さんだったからでありましょうか。

→〔その2へ続く〕

(2022年11月2日)

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