■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ8■


“今日という日は明日の伝説”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ8(43話〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・  〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕

◆第四十三章「伝説の足跡」◆ (監督:田崎竜太 脚本:沖田徹男)
 配信の言語設定おかしくなった? と一瞬狼狽する英語ナレーションから、英語歌詞主題歌でスタートの総集編。
 遂に魔獣ダイタニクスを葬り去るも、バルバンは未だ健在。勝って兜の緒を締めるギンガマンの元を、 父の描いたイラストを持った勇太くんが訪れ、散らばったそれを拾い集めながらこれまでの物語を振り返るという趣向で、 青山父が描いたという名目のイラストが、それぞれやたらめったら格好よくて眼福。
 ギンガレッドのキャラ紹介イラストの背景には、2回しか使っていないライオンバイクが描かれているのですが、 青山父はギンガマンの戦いについて勇太くんから話を聞いているのかとは思われますが、ここまで詳しいと、 密かにスニーキングしながらギンガマンのあらゆる戦いを伝説の目撃者として書き留めているのでは、という疑惑が急浮上します。
 まあ、強引に理屈をつけるならば、モークの中にこれまでの戦いの記録がアーカイブ映像として保存されていそうなので、 それを見せてもらったのか(次の世代の為に、実戦の記録、超重要)。
 ……しかしバイクは、無理に登場させた割にはここまでの本編での使用回数2回で、本当にどうして出す事になったのか。 この扱いに物凄く怒っている人が居たのではないだろうか、といらぬ心配をしてしまいます。
 勇太くんとの出会いに始まり、ギンガマン5人の活躍シーンの後は、バルバン各軍団との戦いを振り返り、 それぞれの行動隊長&部下魔人が並んだ絵がまた格好良く、特にゼイハブのイラストが超格好いい。
 そしてゴウキは、どさくさに紛れて鈴子先生の絵を懐に収めようとしていた。
 「森の中で暮らしていたら、出会う事のない人達と、出会えたんだからな」
 忘れられがちだが婚約者の居るハヤテがゴウキの心情を慮ってフォローを入れ、全体的に今回、ハヤテのイケメンムーヴが多め。
 そこから、5人それぞれとゲストキャラが絡むエピソードが回想され、宿命の銀河戦士として内部で完結してしまう事のないように、 勇太くんに代表される「外」との繋がりを、今作が重視して積み重ねてきた事が改めて裏打ちされます。
 この、「外」(世間)との繋がり、という要素は割と、やっているつもりで抜け落ちていて終盤に大惨事を招いてしまう事があるのですが、 堂々と焦点を当てた回想をしてみせるように、各キャラ二人ずつほどゲスト回を割り当てられていたという計算が見えます。
 リョウマ〔バイク兄妹〕
 ハヤテ〔青山父/元オーナー〕
 ゴウキ〔鈴子先生/岸本〕
 ヒカル〔シェフ/パチプロ魔人・しゃっくり助教授〕
 サヤ〔瓜二つアイドル/柔道家・猫の女の子〕
 (※ヒュウガ〔女子高生〕)
 前が実際に回想シーンに登場したキャラ、後ろがそれ以外でメイン回で個人的絡みの強かったキャラとなり、 ハヤテとサヤは回想キャラ逆で良かった気もするのですが、そうしないと青山父の出番が確保できなかったのか。こう見ると、 勇太・ヒュウガというメインキャラとの繋がりを描くエピソードの多いリョウマに友達を作った事と、 ゴウキの恋敵としての岸本を出した事の意味の大きさが窺えるのですが、パチプロ魔人回がやや中途半端な出来になったのは、 ヒカルと心の交流をさせる、という全体構成の都合があったのかもしれません(そういえば、 メンバー中の年少ポジションと怪人の交流エピソードとしては『超新星フラッシュマン』第43話「カウラーの反逆!」 が良い出来だったな、と唐突に思い出す)。しゃっくり回の助教授では、強い繋がりの相手というにはちょっと苦しいですし。
 ……そして、序盤に婚約者の存在が描かれたハヤテは、おじさん担当であった。まあ、 敵方のシェリンダとの因縁が大きいのですが。
 青山父からの依頼により戦士自筆のイラストを添える事にになった5人はそれぞれの星獣を描き…………全員、引くほど上手い。
 「戦士のたしなみってやつだな」
 と思ったらリョウマが、小学生がクレヨンで描いたような絵を満面の笑みで掲げてオチ要員になるのですが、なんだろう、 むしろ、他の4人があまりに捏造めいた上手さの為、等身大のリョウマの好感度が上がります(笑)
 星獣・ロボ、そして黒騎士とヒュウガで一通りの回想を終え、
 ナレーション「星獣戦隊! それは、銀河の平和を守るために戦う、伝説の勇者達の事である」
 から歌詞付きの日本語主題歌をバックに更にダイジェストでここまでの戦いを振り返り、ほぼ最終回ノリ(笑)  最終回どうするのだろう、と心配になるぐらい最終回のエンディングみたいな編集なのですが……しかしまだ、戦いは終わっていない!
 改めてバルバン殲滅を誓う5人に勇太くんも手を重ね、モークとバルバンも揃って、決着に向けて意気上がるギンガマン。だが……
 「俺たちの新しい力でこの星を潰す日がすぐに来る。必ずな。ふふふふふふふ」
 魔獣ダイタニクスを失いながらもむしろ不敵に嗤うゼイハブ、その凶悪でおぞましい企みとは?! で、つづく。
 ED曲も英語バージョンで、次回――まさかの、岸本再登場。
 「弟子入り?!」
 「そうだ。俺は越えてみせる。お前の強さを、たくましさを、そして、その優しさを!」
 ――その時、バルバン最強の切り札が誕生する。
 半分ぐらいコメディっぽいのに、予告がまた、やたらめったら格好いいぞ!

◆第四十四章「地球の魔獣」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 魔獣ダイタニクスがギンガマンに倒されてから十日間……最大の戦力かつ宇宙を駆ける移動要塞を失ったにも関わらず余裕を見せるバルバンは、 カード遊びに興じながら“最後の切り札”の出現を待ち、その間にゼイハブは黒騎士と樽爺の行方を追わせていた。
 黒騎士ヒュウガは本日も樽コーチの指導の下、ひたすら斧を振って振って振りまくってスキルLV上昇に邁進し、 樽爺はタウラスを人質に取るばかりではなく、肝心要の“ゼイハブの倒し方”についてはヒュウガに教えていなかった、 とコンビ続行を余儀なくされる事情を補強。
 一方、新年を迎えたギンガマンの食卓にはミルクとロールパンとサラダが並び、 ギンガの森では特に正月料理というものが存在しないのかもしれませんが(そもそも暦が同一か不明)、相変わらず、季節感が薄かった。
 そこへ青山父と鈴子先生が新年の挨拶に訪れ、父の着物姿と持ってきたおせち料理で挿入される季節イベント。
 「あけましておめでとうございます。こんな時こそ、元気を出して行きましょう!」
 そしてさりげなく、青山父をこういう事を言えるキャラにしているのが、巧い。
 鈴子先生にデレデレのゴウキを微笑ましく見つめるメンバーだが、ボックが馬房をうろつく不審人物を発見して取り押さえると、 それはかつての一方的恋敵・岸本で、新年早々、食卓が大変微妙な空気に。
 「ゴウキくん、実はだ……弟子入りさせてもらう」
 「ええっ?!」
 ゴウキが鈴子先生をバス停まで見送った帰路、岸本が突拍子もない事を言い出て立て板に水と喋り出し、 2年前のヒーローとローテ監督による息の合ったコミカルな芝居にゴウキはこんらんしている!
 「あの日以来、俺はずっと考えてたんだ。ま、鈴子先生がお前を選んだのは仕方ない。先生の、自由だからな! しかし、俺は、 男として、おまえに負けたままでいいのか? 教師は戦士を超えられないのか? そんな疑問を解決すべく、弟子入りを思いついたんだ」
 教師は戦士を超えられないのか?というフレーズのリズム感の良さと頭の悪い感じと内に秘められた哲学的問いかけが、 お気に入り(笑)
 「でも、俺、まだまだですから」
 「おまえがまだまだだったら、俺はどうなる?!」
 困惑するゴウキに絡む岸本は、転んだ少女を助け起こし、大事に抱えていたぬいぐるみを拾って手渡してあげるゴウキに対抗して、 巨大なぬいぐるみを買って押しつけると勝利宣言。
 「俺はおまえの全てを見極め、その全ての上を行き、おまえに勝つと決意してきたのだ」
 失恋の痛手で大変厄介な人にクラスチェンジしてしまった岸本は、 半袖ゴウキが八百屋の店主に気に入られているのを見て自分も脱ぎ出すが、戦隊名物の半裸(語弊あり) に突入する前に街を巨大な地震が襲う……それこそが、バルバンの待っていたその時だった!
 「これは、ただの地震じゃあないようだ」
 モークは地中に邪悪な気配を感じ、出撃したリョウマ達はバットバス特殊部隊を率いるタンク魔人軍団と接触。 軍団が巨大なドリルで穴を開けた地中に潜む邪悪な気配の正体、それは――
 「地球で生まれた、地球魔獣だ!」
 「地球魔獣?!」
 「てめぇらが手を貸してくれたんだぜ、ギンガマン!」
 ギンガマンがダイタニクスを倒したあの時、爆発したダイタニクスの破片が地球に染み込み、星の中心を汚染していた……
 「魔獣ってのはな、そういう汚れた星から生まれるのよ」
 クールごとに行動隊長の作戦目的の違いで変化をつけ、出来るだけ一本調子になる事を避けてきた今作、 3クール目の締めにまさかのダイタニクス復活と撃破を持ってきて大きな驚きとしましたが、遂にそれを布石とした最終章の仕掛けが判明。 それは敢えてダイタニクスをギンガマンに倒させる事により、地球を母胎にした新車に乗り換える事だったのだ!
 ダイタニクスを倒したと思ったらより強い魔獣が、というのはインパクトにはやや欠けるのですが、ここで秀逸なのは、 これまで規格外の存在という扱いだった「魔獣(ダイタニクス)」がアンチ星獣と位置づけられる事により、 物語の中に収められた事。
 これにより、星獣の力で星を守る戦士が、星から生まれた魔獣と戦う、という真のラスボスとの関係性に大きな説得力が生まれました。 また、劇中の現象としてはダイタニクス汚染になっていますが、「汚れた星」という表現の中には、「環境破壊」「人心の荒廃」 「戦争やテロ」といったそこに住む人間自らが星を傷つける行為をメタファーとして含んでいると思われ、 魔獣の誕生と普遍的問題意識も綺麗に繋がっています。
 そしてそれは、
 「ここであの子を見捨てれば……どう戦おうと、それは、バルバンと同じだ!」
 という今作の核心にあるテーマ性(総集編でもしっかり盛り込まれて嬉しかった台詞)とも繋がり、「心の中のバルバン(悪)」 を常に意識しながら戦ってきたギンガマンが「地球の中の悪」と向き合う事になる…… 星から「星獣」を生むのも「魔獣」を生むのも、そこに生きる命次第というテーゼを示しているように見えるのは、 終幕に向けて期待大。
 一方、地震により地下道に逃げ込んだ人々が生き埋めになりそうになり、出口付近に落下してきた瓦礫を必死に支えるゴウキ (とちょっとだけ手を貸す風の岸本……支えにはなっていないですしギャグっぽい描写ですが、なんだかんだ人々に退避を促し、 最後までその場に居残るあたり、やはり悪い人ではない)。人々が脱出する時間を稼いだゴウキは、 少女が落としたぬいぐるみを拾おうとして危うく瓦礫の下敷きになりかけるが、なんとかぬいぐるみを確保して自身も脱出に成功する。
 「おまえまさか、そんな物のために……」
 「やっぱり俺……甘いですよね。こういうところ、直そうと思っていたのに。でも……あの子、凄く大切にしてたみたいだから。 ……これ、お願いします」
 ぬいぐるみを岸本に託したゴウキは肩を負傷しながらも仲間の元に急ぎ、かつてヒュウガがリョウマに、そしてリョウマが勇太に教えた、 戦士に必要な本当の強さと勇気――「誰かを守りたいっていう気持ちが本当の強さなんだ。怖くたって、 それを乗り越えようとする気持ちが、勇気なんだ」――を、最終章を前にゴウキを通して改めて具体的に提示。
 泣き虫で気の弱いところがあり優しすぎるゴウキが確かに持つ、己の中のバルバン(悪)に負けない強さ、 それが瓦礫を支える肉体的強さのみならず、ぬいぐるみに気付き、それに手を伸ばせる心根(そしてそれは、誰だって持てるものである) として描かれています。
 「……また負けか」
 ゴウキの真の強さに気付いた岸本は、託されたぬいぐるみを少女に渡して2年前のヒーローらしいところをちょっぴり見せ、 “岸本の目”を通して、ゴウキの真の強さをいち早く受け止めていた鈴子先生の見る目が肯定される、というのはややトリッキーな構成 (ストレートにやると鈴子先生を持ち上げすぎになりかねないので、それを避ける意図もあったか)。
 タンク魔人特殊部隊は、生まれたばかりの小さい魔獣に急成長エキスを打ち込もうと巨大注射器ミサイルを地下へ発射。 バリアーで守られた装置を破壊できず、タンク魔人の砲撃に近づく事もできないギンガマンだが、そこへ駆けつけたギンガブルーが、 高い所に陣取ってバズーカを連射する。
 結果的に、正面部隊が敵を引きつけている間に伏兵の砲撃手が最善の場所へ辿り着いた囮戦術のように見えるのが、凄く銀河戦士です(笑)
 心の中で(げげーっ、ギンガブルー?!)と横山光輝ごっこをするタンク魔人だが、 肩を負傷しているブルーはバズーカの反動に耐えきれずに膝を付き、更には跳ね返ってきた砲弾を受けてあおのけに倒れそうになった時、 それを後ろから支えたのは岸本。
 「しっかりしろ」
 「岸本さん!」
 「俺の肩、貸してやっから」
 4人がタンク魔人に組み付いている間に、背中合わせに岸本の肩を借りたブルーは、モークバズーカにアースを充填。
 「諦めたよ。おまえには勝てん。優しすぎて、強すぎる」
 「……俺が?」
 「とぼけちゃって。それで鈴子先生をおとしたくせに。優しさあまって強さ100倍。おまえの武器なんだろ?  なんで直す必要があるんだ!」
 岸本の激励に、自分の甘さは戦士としての弱さなのではないか、と考えていたゴウキは考えを改めてアースを高め、 ゴウキの見せた戦士の魂が岸本に伝播し、それがぐるりと回ってゴウキを支え励ます力になる、とヒーローと大衆のテーゼに着地。
 リョウマ−勇太の関係を、大人の男二人でやっている、ともいえますが、 リョウマ−勇太があくまでもリョウマが勇太を励まし導くという構造だったのに対し、ここでは岸本がゴウキを肯定する、 というアレンジが加えられています。
 これは2年前のヒーローゲストへのサービスもあったのかもですが、ゴウキにとっての鈴子先生が全肯定女神属性すぎる所はあったので、 身内と鈴子先生以外のキャラクターがゴウキの強さを認めて自信を与える、というのは全体構成の中ではプラスに転がりました。
 「……それよりこれ、熱いぞ?」
 そしてしっかり、オチをつける岸本(笑)
 赤熱していく竹輪に岸本があたふたしつつも、放たれた友情のハイパーゴリラバズーカの一撃が装置を破壊し、 バルバンの成長エキス注入は失敗。驚いた魔獣は地中を別の場所へ移動して行方をくらませてしまい、 5人揃ったギンガマンは残ったタンク魔人を相手にギンガの光を発動。連続ガントレット攻撃でよろめかせると一斉に突撃するも、 タンク魔人の85mm砲を受けて煙に飲み込まれるが、その中から飛び出してきたのはライオンバイク!  粉塵を突き抜けて姿を見せたバイクはそのままの勢いで魔人を獅子の棺桶もとい装甲アタックで轢き殺し、 今回の使い方は格好良かったです!
 作戦変更で巨大化したタンク魔人の体当たりに苦戦したギンガイオーは増援を要請し、 「鋼の装甲を誇る」ライノスの支援攻撃からざっくり獣王斬りで、巨大戦はいつもの調子に戻るのであった(笑)
 今作の巨大戦、基本的にざっくりかつ遊び心も弱いのですが、エピソードのメインだったキャラが星獣召喚→星獣登場、 のところまでは物語が乗っているのに、乗っていた物語のブースト効果がまるでなく苦戦→物語のまるで乗っていないギガ助っ人、 というフォーマットになっている事で、余計に残念感が増しているのが辛い。
 毎度の挿入歌は格好いいですし、ライノスもフェニックスもデザインは嫌いではないのですが。
 ギンガマンはハイパーゴリラバズーカの反動ダメージで倒れていた岸本を無事に回収するが、守るべき星の地下に宿った、 新たなる脅威の存在を感じずにはいられないのであった! で、つづく。
 次回――ここでまさかのボック回?!

◆第四十五章「妖精の涙」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 注目は、追っ手に囲まれた樽爺を格好良く助ける黒騎士。
 「ここにはもう居られないな!」
 「時間はあまりなさそうじゃ。急いで技を完成させねば」
 二人の息は妙にピッタリだ!
 地球魔獣の反応を再び捉えたバルバンからは、ノコギリ魔人が特殊部隊を率いて出撃。 同じく気配を察知したモークによりギンガマンも出撃しようとした時、サヤは白い花を手にした謎の少女に話しかけられるが、 その声は届かない……。そして戦いのさ中、少女とサヤが触れ合うと地底の魔獣が苦悶して逃げ出すが、 ビズネラが少女の手に持っていた花を攻撃すると、少女の姿はかき消えてしまう……少女の正体は、 花の戦士とのシンクロにより対魔獣特攻を発動し、その為に3000年前にバルバンが焼き払おうとした白い花の妖精であった!
 多分、ゴウキとシンクロしたら、地球上から邪悪な心が消滅していた。
 再びサヤと少女が協力すれば地球魔獣を倒せるかもしれない……少女の出現により伝承に語られていた「白い花」の正体が判明し、 奇跡的に生き延びていた群生地へと急ぐサヤだが、一足早く動いていたバルバンによって花は焼き払われてしまう。
 「最低だね……私。あなたと、力を合わせたい。この花の花言葉……小さい声だけど、一生懸命、語りかけてたのに」
 わずかに姿を留めていた枯れかけの一輪を乗馬倶楽部に持ち帰ったサヤは深く沈み込み、実際、少女の声が全く聞こえなかった上で、 「今忙しいから後でね!」ノリで捨て置くという花の戦士失格案件なので、フォローのしようがありません。
 そっとその場を離れた男達は魔獣の気配に出撃し、一心不乱にアースを送り込んで花を甦らせる事にこだわるサヤを立ち直らせようとするボックは、 ギンガの森が失われた直後、毎日泣いてばかりのボック(両親が森に居たらしい……!)を励ましてくれたサヤの言葉を思い出させようとする。
 「今のボックに必要なのはね、とにかく、なんでもいいから前を見る事。ほら、前、見てごらん?」
 ボックが顔を上げると笑顔のサヤ、という荒川マジックで遅まきながらサヤのヒロイン力を上乗せしてくるのですが、 「なんでもいいから前を見る事」をギンガの民用語に翻訳すると「黙って引き金を引く事」に受け止められるので、 腹ぁくくってオヤジの恩に応えにゃならん、もうこれは戦争なんじゃ!
 「サヤ、ボックもサヤを信じているボック。だから、何でもいいから前を見るボック」
 今せにゃあかんのは、死んだ連中に顔向けできるケジメをつける事じゃないですかい姐さん!
 ……そうじゃ、花の妖精どもの代わりに、バルバンの連中の腹ん中に火炎放射器ぶちかましてやらにゃあ気がすまん!  とサヤが前向きな気持ちを取り戻すと、花は妖精の命の結晶である白い宝石へと姿を変え、 それを手にしたサヤはボックを背負うと地球魔獣もバルバンも目にものみせてやるけんのう! 
 と、仁義なきキャラソンをバックにカチコミをしかけ、ボックは頭突きで魔人のノコギリを破壊するという、まさかの見せ場(笑)
 ノコギリ魔人によってエキスを打ち込まれていた地球魔獣だが、ピンクが放った白い石のエネルギーを浴びると元の大きさに戻って逃走し、 花の妖精パワーが強力すぎて、失敗をリカバーするという形でしか使いようが無くなってしまったのは、 エピソードとしていまいち面白く転がりませんでした。
 どちらかというと、ラスト前に一度はボックを目立たせようというのありきでサヤ回と繋げたのかと思われますが、 これまでのボックの立ち位置から仕方ないとはいえ、サヤとボックの関係性自体に全くここまでの蓄積が存在しない為、 唐突感は否めず。
 ボックは、ポジション的には当初は勇太くんと対応させるのかと思ったら、勇太くんはもっと積極的に銀河戦士達と絡む事になって (それで良かったのですが)置き去りにされてしまい、いざという時の便利要員にしかならなかった印象です。
 まあ、仮にボックが画面に居なかったとすると、モークだけだと雰囲気が堅苦しくなりすぎたかもしれず、 妖精としてファンタジー感を補強しつつマスコットとして画面に彩りを加えるという点では十分に機能していたと見るべきなのかもですが…… 小林戦隊でいうと次作『未来戦隊タイムレンジャー』のサポートキャラであるタックが、今作になぞらえるとモーク+ボック (見た目ボック寄りだけど中身モークというか)なのは、この反省を踏まえたのかなとも思うところ。
 5人揃ったギンガマンはギンガの閃光で魔人を撃破。巨大化した魔人の丸鋸でギンガイオーが頭を割られそうになると 「攪乱攻撃を得意とする」フェニックス出撃し、飛び蹴りからブーメランでダメージを与えたところに、大獣王斬りでザックリ。
 「いつかまた、きっと咲くボック……あの花」
 風に乗る白い花びらを見つめるサヤとボックですが、種子は残っておらず、命の結晶は消滅させてしまい、 花びらしか残っていなかったので、尊い犠牲になってしまったような……と苦みのあるオチで、つづく。
 どうやら最終決戦前に、新展開のフォーマットを使いながらキャラ回を一巡りするようですが、サヤは最後まで跳ねられなかった印象で、 やはり、最も関連の深いキャラがヒュウガ、としてしまったのが難しくなってしまったように思えます。 憧れのお兄さんへの恋になる一歩手前の気持ち、というのがどだい戦隊シリーズではなかなか掘り下げにくいですし…… ヒュウガの脱退が無ければもう少しどうにかなったかもしれませんが、その場合はヒュウガというキャラが死んでしまった可能性が高く、 ヒュウガを生かすかサヤを生かすかで、作品として、ヒュウガを生かす道を取った、という面はあるのかな、と。
 また、成長要素を持った年下キャラのポジションにはヒカルが居ますし、勇太君のお姉さん(お兄さん) ポジションはリョウマが君臨していますし、ヒュウガとの心の繋がりもリョウマが鉄壁のディフェンスを誇ってますし……やはり、 本当の敵はリョウマか。
 どうもサヤは物語の進行の中で、キャラクターとしてのステップアップを巧く与えられなかった感があり、 物足りないキャラになってしまいました。例えば今回の花の戦士失格案件も、 ヒュウガに贈り物しようと舞い上がっていて戦士の本分を忘れて……とか繋げられたらまたひと味違ったかもしれないのですが、 花の戦士としての在り方もサヤの場合さほど掘り下げられていないので、最終盤のキャラ回としては、 年間の要素の積み上げがあまりに無くて、残念。

◆第四十六章「怒りの風」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子/村山桂)
 「この星で魔獣が生まれるなんて……」
 「私には、星の悲鳴が聞こえるようだ。なんとしても、魔獣の成長を阻止して、この、星の命達を守らなくてはね」
 魔獣に対する警戒を強めるも、受け身に回るしかないギンガマンの元を、家の前に捨てられていたという犬を連れて勇太が訪れる。
 「勇太、俺たちが戦ってるのは、こういう小さな命を、助ける為だろ」
 病気で弱った犬の治療法を求めるも5人に気を遣おうとする勇太への言葉を通して、改めて、ギンガマンが何の為に戦っているのか、 を確認し、ハヤテと勇太が一緒に薬草を採りに行く事に。
 結婚して子供が出来たら、こういうのも悪くないな……と、いつしかハヤテはギンガの森と共に眠る婚約者の事を思い出し、 序盤の回想以来でミハルさんが登場(富野ファンとしてはどうしても、大西洋を血に染めそうな名前で困ります)。
 「お前のアースを笑うヤツは居ないよ。おまえのアースは……」
 「なに?」
 「ま、大した事ない」
 照れくさげに言いよどみ、結局、目を逸らして誤魔化したハヤテは、じゃれ合いの追いかけっこから寄り添って笛を吹くというイケメンムーヴを発動し、 しばらく、正統派いちゃいちゃ回想をお楽しみ下さい。
 一方、バルバンではビズネラが新たな作戦計画を立案しており、船長の多分「で?!」という凄む相槌が、 「ゼイ!」に聞こえるのは私だけなのか、本当にネタでそう言っているのか……。 地下深くでじっと時を待つ魔獣に成長エキスを届かせる為、浸透剤を先に使用する、という作戦に従って三日月魔人が特殊部隊を率いて出撃し、 ギンガマンもそれを察知。
 薬草を勇太に預けて先行したハヤテは、いつまで待っても新車が納入されないのでストレス解消に外出していたシェリンダと、 いち早く接触する事になる。
 「おまえに構ってる暇は無い! どけ!」
 「貴様ぁ……あたしが相手をしてやろうというのに!」
 ハヤテからはあくまでも、星の敵であるバルバンの一員、でしかないのに対し、ギンガマンの中でも一番ムカつく緑のヤツ、 と一方的に執着をぶつけてくるシェリンダ、この温度差はそのまま、星を守る使命こそ大事であり個々の戦闘に囚われないギンガマンと、 あくまでも強者の視点の為に個人的敗北が根深い屈辱になるシェリンダとの立場の差であり、ギンガマンとバルバンの、 究極的な組織としての性質の違いを示しているようにも見て取れます。
 相変わらず格好いい実質的なテーマ曲と共にシェリンダはハヤテに斬りかかり、 それを回転ジャンプでかわしたハヤテは空中で顔面パンチをお見舞いして走り去り…… ハヤテさん実はドSで、狙って最高の屈辱を与えているのではないか?!
 「ギンガグリーン、貴様はいつもそうだ! この私をまるで価値が無いかのように! 宇宙中の誰もが、あたしを恐れ、 ひざまづくというのに! ……許さん! おまえのようなやつは絶対に許さない!」
   宇宙に名を轟かせるバルバンの操舵手にして剣士としての誇りをますます傷つけられて憤るシェリンダですが、 シェリンダとハヤテのビジュアルから(当然狙っているのだとは思いますが)、滅茶苦茶モテる悪の美女がイケメンに袖にされて恨み骨髄、 という要素が付加されているのが、なんともいえない面白さになっています。
 ハヤテ×シェリンダの関係は、婚約者が居るハヤテ、を前提にした上で、ハヤテにとってはヒュウガとの明確な差別化ポイントとなり、 シェリンダにとってはバルバンの彩り&嫌味係以外の面を引き出す良い肉付けとなり、お互いにとって大変効果的な積み重ねとなってくれました。
 怒りに震え、地面に剣を突き立てたシェリンダだが、走り去ったハヤテが落としたポシェット、 そしてそこに収められていたミハルのお守りを発見してほくそ笑む。
 「ふ、後悔させてやる、ギンガグリーン。そして嫌でもこのあたしと戦わせてみせる」
 先に三日月魔人と接触したリョウマ達は、星獣剣も弾き返す圧倒的な強さの前に揃って川落ちしており、ひとり応援へと急ぐハヤテだが、 その耳に届く、ミハルの声。
 (まさか……ミハルがこんな所に居る筈は)
 振り返るとそこに立っていたミハルの姿に呆然と固まるハヤテは、無意識に手を伸ばしてポシェットが無い事に気付き、 近づくミハルを警戒しつつも正体を図りかねて戸惑うが、手を伸ばした所で閃くナイフ。
 そして、右上段回し蹴り。
 この安定した重心から繰り出されるこめかみを切り裂くような鋭さは、間違いなくミハル……! ……じゃなかった、 偽物を強調する為の体術の冴えだと思われるのですが、世界観が世界観なので、本物もこれぐらい出来たのではという気がして困ります(笑)  ギンガの民の夫婦喧嘩は、ある一線を越えたら命がけ!(※アースの使用は掟で禁止)
 川から復帰した4人はこの戦いを目にして混乱するが、そこにモークから、 バルバンの流した浸透剤が大地を腐らせ森を根こそぎ枯死させようとしている事が伝えられる。偽ミハルはハヤテが請け負い、 再びバルバンに挑む4人は、怒りの銀河炸裂!
 一方、夫婦喧嘩の予行演習に巻き込まれそうになったウサギを助ける為、ハヤテは偽ミハルに反射的に飛び蹴りを決めてしまい…… 風の戦士はジャンプすると自動的に攻撃が出る仕様です。
 思わず駆け寄った所を再びナイフに刺されそうになって辛うじて避けたハヤテの姿を、嘲笑いに姿を見せるシェリンダ。
 「ははははははは! どうしたギンガグリーン、こんな小娘に苦戦しているとは!」
 「やはりお前が作った偽物か!」
 「そう思うならさっさと切り捨てたらどうだ?」
 「貴様……!」
 偽物とわかっていても割り切れないハヤテは滝壺に追い詰められ、脳裏を走馬灯のように駆け巡るいちゃいちゃ回想。
 ――「お前のアースを笑うヤツは居ないよ。おまえのアースは……」
 ――「なに?」
 (ミハル……あの時言わなかったが、おまえのアースは、命を大切に想う、暖かさに溢れていた)
 たとえ偽物でも、そんなミハルを、命を蹂躙する企ての為に使わせるわけにはいかない…… 絶叫したハヤテの放った風のアースが偽ミハルを消滅させ、後に残っていたのは、シェリンダが術式に使った貝殻と、 それに巻き付けられたミハルのお守り。
 貝殻からお守りを外そうとするハヤテだが、それはバラバラにほどけて散らばってしまい一粒のビーズが地面に残る…… というのがアップで印象的に描写されるのが大変えげつなく、口元をひきつらせながら手の中に残った組紐を握りしめるハヤテ。
 「はははは、ははは、なかなか面白い見世物だったぞ」
 「聞こうか……なぜこんな事をした」
 ドスを利かせた声音が大変格好いい。
 「おまえはあたしを軽んじ、侮辱しすぎた」
 シェリンダが髪を横に払うと、アーマーの生々しい傷跡が覗ける、というのが冴えた演出。
 「多少の償いはしてもらわねなばな?」
 「……それだけか? ……その為だけに、ミハルを使ったのか」
 「そうだ」
 「……お前の名は?」
 「バルバン! 操舵手! シェリンダ!」
 リョウマ達4人は大ピンチ、浸透剤は山を汚染し、地球を滅ぼす魔獣にエキス注入目前、と色々それどころではないのですがしかし、 ここで初めてハヤテが「個人」としてバルバンに名を問い、対して名乗る、というのが決闘の前振りとしては滅茶苦茶格好いい。
 「シェリンダ……おまえは俺の大切なものを汚した。おまえは、俺が倒す!」
 「その言葉を待っていた! 来い! ギンガグリーン・ハヤテ!」
 サンバッシュ編のヒュウガ、イリエス編の勇太に続き、都合3回目となる偽物ギミックなのですが、 今回のシェリンダの何がいやらしいって、偽物でギンガマンを倒したり引っかけるのが狙いなのではなく、 偽物を使って揺さぶりをかけるという外道なあたしが憎いでしょ? ほーら憎いでしょ?  と目を向けさせる事こそが狙いであり、いわば、
 「好きでも嫌いでもねぇって言われるより、いっそのこと嫌われた方がすっきりするぜ! もっと嫌え!  もっともっと思いっきり嫌ってくれ!」(『鳥人戦隊ジェットマン』第17話より)
 というやつなのですが、遂にハヤテの憎悪を自分に向けさせるという目的を達成し、喜悦の表情で迎え撃つ姿が、 どいつもこいつも大概な、バルバン上層部にふさわしい悪辣ぶりを見せつけてくれます。
 「銀河転生!」
 ギンガグリーンとシェリンダは剣と剣でぶつかり合い、本気の風の戦士の空中戦は、思い切り顔面に蹴りを入れるぞ……!
 白熱する両者の決闘は、魔獣の移動に巻き込まれた緑が崖から落下し、ギンガファルコンに拾われた事で水入り。
 「星獣め、余計な真似を! ギンガグリーン……決着は次だ、次こそは必ず決着を!」
 結局、シェリンダのストレスは更に増してしまうのであった。
 なんとか成長エキスは破壊するも、強敵・三日月魔人相手に息も絶え絶えだった4人に緑が合流し、ギンガの閃光。 だが魔人はその一撃さえ弾き返してしまう!
 「おまえ達に俺は倒せん」
 魔人ミサイルが放たれ打つ手無しかと思われたその時、怒りのボルテージでパワーゲイン全開の緑が、ミサイルの発射口こそ脆い部分、 と見切ると爆発に耐えきって至近距離からガントレットねじ込み、大逆転勝利。
 奇を衒う事なく、純粋な総合力でギンガマンを上回る難敵だった三日月魔人、ある意味、 シェリンダの奸計のとばっちりで敗北する事になりました(笑)
 今や実力派魔人と勝負になるわけもないギンガイオーは呆気なく蹴り飛ばされ、「魔人ザッカスの、爆発的破壊力に対して、 それを上回る」というもはや何でもありの理由でライノス出撃。ギガバイタスも随分と頑張ってきましたが、そろそろ、 ネタが尽きてきたようです。
 三日月魔人はライノスの連続パンチからの猛攻に倒れた所を、大獣王斬りでフィニッシュ。お守りを修復し、 ポシェットを抱きしめるハヤテを4人が遠巻きに見つめていると、無事に回復した犬を抱えた勇太くんが声をかけ、 子供ゆえの気遣いの薄さが却って壁の内側にするりと入り込むきっかけになる、という見せ方に嫌味がなくて良い使い方。
 そしてハヤテは、地球に生きる命を守りながら、いつかギンガの森へ帰る事を改めて誓うのだった。
 その頃……樽爺コーチの取り出した星の命の石に歯が立たず、苦しくたってー、哀しくたってー、ギンガの戦士は平気なの、 アタックー、アタックー、と今日も今日とてハヤテは斧スキルを上げ続けていた。
 「リョウマ達は必ず勝つ。この星を守って、ギンガの森へ……」
 地球魔人の危機に対し、離れていても、別の道を選んでも、リョウマ達を信じ続けるヒュウガ。
 「おまえは帰れんがの」
 吐き捨てるように樽が呟き、故郷に対する関係性の変化を改めて強調しつつ、それでも、ヒュウガは斧を手に立ち上がる。
 「俺はゼイハブを倒す」
 果たしてヒュウガは、必殺スパイクを修得してゼイハブを倒す事が出来るのか……そして、 ギンガマンは地球魔獣の成長を食い止める事が出来るのか。バルバンの動きに対応できるがゼイハブを倒す切り札を持たないギンガマンと、 ゼイハブを倒す一点にのみ力を注いでいる為にバルバンに対応できないヒュウガ、と戦士達が別れて戦う意味をそれぞれ巧く補強して、つづく。
 次回――順番通りにヒカル回。ゴウキは鈴子先生絡み、サヤはボックを拾って、ハヤテが婚約者の話と来たから、 俺はアース大道芸でTVに出ちゃう感じかな、と気楽に構えていたら、とんでもないエピソードの担当になってしまい、 縛られて吊されるのはヒュウガの仕事じゃないのぉぉぉぉぉぉ……(フェードアウト)。

◆第四十七章「悪魔の策略」◆ (監督:辻野正人 脚本:きだつよし)
 新車乗り換え計画が思うとおりに進まない事に焦れる船長は、腹心のバットバスは責め立てにくいのでその矛先をビズネラへと向け、 陣頭指揮を半強制。元はといえば無一文になったところを拾われた身、外様の悲しさで泣く泣く受け入れたビズネラは、 自ら最前線へ出る事に。
 その頃、ひたすら斧スキルを上げようとする黒騎士ヒュウガは、必殺サーブ修得の壁にぶつかっていた。
 「何度言ったらわかるんじゃ。タイミングがズレとるんじゃ、タイミングが! まったく、余計な手間をかけさせおって。ほれ」
 樽爺コーチは負傷したヒュウガの手にスカーフを巻いて応急処置をほどこし、ぎゅいーーーんと上昇するヒュウガ (裏ヒロイン)のときめきゲージ。
 「勘違いするな。ゼイハブを倒すまでは、おまえは儂の大事な道具じゃからな」
 ヤングだった頃の樽爺、7頭身でキレキレの天才軍師だった上に、少女マンガにおける王子キャラ属性持ちであった可能性が急浮上。
 次の『スペース・スクワッド』の黒幕は、ヤング樽爺(CV:田中秀幸)でお願いします!
 バルバンの計画をくじく為、そして存在するだけで地球を汚染していく魔獣を撃破する為、 ギンガマンと相談したモークはバズーカの強化を決意。早速その作業に入っている間、ギンガマンは姿を見せたビズネラと接敵。 ビズネラが謎のリモコンスイッチを起動すると魔獣らしき存在が地を揺るがして近づいてくるが、 イエローがビズネラを投げ飛ばしてスイッチを止めると、魔獣は何処かへ姿を消してしまう。
 「この装置、魔獣の動きと、何か関係があるんじゃないのか?!」
 「言わないなら!」
 ギンガマンはビズネラを取り囲んで剣を向け、質問は既に、拷問に変わっているんだぜ。
 ……先日ちょうど『ジョジョ』第5部アニメを見て、声に出して日常生活で使いたい日本語として忘れない内にどこかで使いたくて仕方がなかったのですが、 こんなに早く使いどころが来るとは(笑)
 命乞いしたビズネラは、スイッチは魔獣の好む音波を発信するものだとあっさり口を割り、ギンガマンはそれを逆に利用する事を計画。 モークが完成させたハイパーモークバズーカ(砲身に飾り羽があしらわれた強化デザインが派手でなかなか格好いい)を用い、 人里離れた山中に誘い込んだ魔獣を木っ葉微塵にしてやると息巻くが、隠し持っていたヤスリで鎖から抜け出したビズネラが逃亡してしまう。
 「奴に作戦を聞かれた」
 4人を作戦に先行させ、俺がきっちり口を封じてくるぜ! とビズネラを追うヒカルだったが、 増援のバットバスの出現により逆に囚われの身となってしまう。ギンガマンが魔獣誘導装置だと思って入手したのは、 ビズネラが用意したリモコン爆弾の誘導装置であり、使えば魔獣どころか、強力な爆弾を呼び寄せてしまう事になる罠だったのだ!
 「折角ですから、魔獣を呼び出す前に、あなたにも見せてあげますよ。あなたのお仲間が吹っ飛ぶところをね」
 囚われのヒカルは西部劇よろしくロープで縛られた状態で疾走するジープに引きずられる事となり、 己のひ弱な小物というイメージを奸計に組み込んでくるビズネラが、実にいやらしいえげつなさ。
 敢えてギンガマンに捕まる事で罠を仕掛ける、というのが宇宙海賊には出来そうにない、宇宙商人ならではの策略ともなっており、 巧妙にギンガマンの隙を突けた事への説得力もあります。
 「いい格好ですね、ギンガマン。ははははははは」
 散々に痛めつけられるヒカルだが、諦める事も弱音を吐く事もなくじっとチャンスを待つ、という戦士としての成長を見せ、 脱出に成功。リョウマ達に罠について報せようとするが、バズーカ強化による消耗でモークが休眠状態になっており、 連絡する事ができない。
 (みんな、俺が行くまで無事で居てくれ)
 逃走に気付いたバットバス達の追撃を逃れながら必死に走るヒカルだったが、その目にしたのは誘導ミサイルによる大爆発の炎と、 何も残っていない爆発の跡。がっくりと崩れ落ちたヒカルはビズネラに蹴り飛ばされ、急成長エキスの満たされたプールの上に、 クレーンで吊り下げられる事に。
 ビズネラは満を持して魔獣誘導スイッチを起動するが、最後の最後まで勝利を諦めないヒカルは、渾身のアースをその身に溜めていた。
 (リョウマ……ハヤテ……ゴウキ……サヤ!)
 「さあ! これでこの星も終わりです!
 「負けてたまるかよ! おまえらなんかに、俺たちギンガマンが負けるわけにはいかないんだ!」
 魔獣出現の寸前、ヒカルはアース電撃をスパークさせてビズネラ達を吹き飛ばし、ど派手な爆発と共に銀河転生。 一つのシーンや台詞に集約するというよりも、苦境に追い込まれたヒカルの姿を通して、 これまでの戦いの積み重ねによるヒカルの成長をその行動の数々で納得させていく、というのは割と面白い見せ方。
 そしてそのクライマックスが、森を出た当初は面白半分に大道芸まがいに使っていたアースの力を、 ここ一番に最後の切り札として爆発させる事、と鮮やかに着地しました。
 地球魔獣はまたも地中を逃走してしまい、雷一掃で切りつけられたビズネラは魔獣の為に用意されていたエキスプールに落下。 だが急成長エキスの作用によってか内なる猛虎魂に完全覚醒し、半ば野獣と化した姿に変貌すると、イエローへと襲いかかる。
 思えばヒカルとビズネラは、ギガ星獣編でヒカルが囚われの身となってからの因縁といえますが、腰の低い策士ぶりを捨て、 野獣と化した猛虎ビズネラは、ネガギンガイエローとでもいえそうなデザインが印象的。
 奮戦虚しく猛虎ビズネラに追い詰められるイエローだったが、その時、爆死したかと思われた4人のギンガマンが姿を見せる。
 「何故だ?! おまえたちは死んだ筈!」
 「バルバンを倒すまで、俺たちは死なない! 俺たちは、絶対負けるわけにはいかないんだ!」
 某ストロンガーばりの不死身ぶりを見せるギンガマンの根拠不明具合は今作ここまでの積み重ねとはやや波長が合っていないのですが、 脚本のきださんが好まれるという“昭和ヒーローの外連味”というのが恐らくこういったノリかと思われ、2本目の参加で、 ここは好きな事を通させてもらった、という感じ。
 「ギンガマン、そのしぶとさを今後悔させてあげます」
 獣装光した5人によるギンガントレットパンチを跳ね返す強化ビズネラは、爪の一振りで、ギンガの閃光すらセンター返し。
 「なんだ、この強さは?!」
 「きっと、 野村克也監督就任によって 急成長エキスのせいで、凄い力を手に入れたんだ!」
 そう、野村ID野球で今シーズンこそ阪神優勝や!
 (……なお、1999年シーズンの阪神タイガースは最下位に終わりました。なお、2000年シーズンは(以下略))
 「諦めるな。俺たちには、モークが強化してくれた、獣撃棒がある」
 ドングリが運搬してきた竹輪の卵を、かんしゃく玉のように地面に投げつけた5人は、ハイパーモークバズーカを装備。 対魔獣用に強化されたその一斉砲火により猛虎投手陣をオーバーキルするのであった。
 「悪く思うな。作戦変更」
 バットバスに助けを求めるビズネラだったが、バルバエキスを打ち込まれ、巨大化。存外、 拾ってもらった恩義は真摯に感じていたようで最後まで「バットバス様」と呼び続けるビズネラですが、 バルバエキス銃が恐らくビズネラ手製のアイテムだと考えると、それによって切り捨てられるのは何とも皮肉です。
 かつて、その銃により強制的に巨大化したパチプロ魔人がダイタニクス復活の引き金となった事を思うと、巨大化した猛虎ビズネラ (全身エキス漬け)が、飛び出してきた地球魔獣の餌となって(ヒカルの事を餌にしようとしていた) 地球魔獣を成長させたら強烈な皮肉と最期だと思って少しワクワクしたのですが、さすがにそこまではやらず。
 猛虎打線の反撃に倒れるギンガイオーだったが、恨み重なるビズネラを倒す為にギガバイタスが直接その姿を現して支援砲撃を浴びせると、 ライノスとフェニックス同時出撃の大判振る舞い。星獣拳ダブルギガスピンが猛虎ビズネラの胴体を貫き、 トドメの大獣王斬りが炸裂すると、ここに阪神商人ビズネラはその長く卑劣な生涯を終えるのであった……!
 年末の頃は生え抜き上層部と一緒に高笑いをしていたので、 外様メンバーの露骨な切り捨てがやや急展開でいかにもな在庫整理になってしまったのは惜しい所でしたが、 よもやの生き残りから後半のスパイスとして、面白いキャラでした。根っこのところでバルバンではないので、 ギンガマンの宿敵としてまでは扱いにくい、という所が影響したのでしょうが、 そういう意味ではここで退場させたのはギリギリのタイミングであったでしょうか。
 地球魔獣の打破はならずも、結果としてモークの助力により史上最大の危機を突破したギンガマンだったが、その代償は大きく、 どす黒い顔色となったモークの消耗は激しい……。果たして、モークは精気を取り戻す事が出来るのか、 ギンガマンは地球魔獣を止められるのか、そして黒騎士ヒュウガは……?!
 次回――「私も、星を護る一員だよ」。
 ……モークぅぅぅぅぅぅ!!

◆第四十八章「モークの最期」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 「地球魔獣による、汚染だ……地中の汚れが、地上にまで、広がってきてしまったんだ」
 木々や河川などが毒々しい紫色に染まる現象が各地で起こり、地球魔獣の脅威が潜在的なものから実質的なものとして迫り来る中、 注目は、樽爺コーチから貰ったスカーフを大事そうに傷跡に巻き直すヒュウガ。
 明らかに何かが芽生えてしまっているのです、これはいわゆる、ストックホルム症候群というやつなのか。
 その樽爺は、打倒ゼイハブの必殺スパイク修得の為に砕くように命じている漆黒の鉱石――星の命――を丁寧に磨いており、 ヒュウガはその背に思わず声をかける。
 「砕けという割には、大事そうだな」
 「ふん!」
 星の命とは、魔獣ダイタニクスが喰らった星を宝石に変えたものであり、その1つを大事そうに保有していたとなると樽爺の背景が自ずと浮かび上がってきますが、 ううむ、そう来るか……。
 順調にイベントCGを回収していく2人だが、シェリンダの放っていた密偵ヤートットに隠れ家を発見されてしまい、 切り札であるミサイル魔人を出撃させたバットバスが、「一度黒騎士と戦いてぇんだ」と自ら出撃。
 背中の巨大ミサイルに成長エキスを詰め込み魔獣を探すミサイル魔人と一当たりしたギンガマンだが、突如として苦しむと変身解除。 地球魔獣による星の汚染が、そこから生まれる星の力であるアースにまで波及し、汚れたアースがギンガマンにとって毒同然となってしまったのだった!
 地球魔獣急成長作戦の相次ぐ失敗で苛立ち始めた船長ではありますが、ギンガマンにダイタニクスを倒させ、 地球に魔獣を根付かせた時点で、水源に毒を投げ込んだようなものであり、仮に作戦が順調に進まなくても、 やがては地球という肉体に毒が回りギンガマンの弱体化に繋がる、というもう1つの策が発動しているのが実に周到。
 大宇宙を荒らし回り、様々な星を滅ぼしてきた(星の守護者達と戦ってきた)という経歴に説得力を持たせます。
 物語上では地球1つの戦いながら、その端々で3000年前(封印)以前の、 宇宙での暴虐というバルバンの背景と繋げているのは今作の面白い所の1つであり、またそれが、 バルバンにとってのアンチ存在である星獣という存在の説得力を補強しているのが巧妙。
 毒素と化したアースに肉体を蝕まれ、弱りながらもリョウマ達がバルバンを追う一方、 ヒュウガと樽爺はバットバスのトラップによる奇襲を受け、ヒュウガは洞窟から投げ出されて崖を落ち、 樽爺は洞窟の中に生き埋めになってしまう。
 「爺さんよぉ、ここをおめぇの墓場にしときな!」
 斥候からの情報があったとはいえ、あのヒュウガを相手に爆弾トラップを成功させ、目論見通りにヒュウガと樽爺を分断するバットバス、有能。
 ところがこのアクシデントにより、モークがヒュウガを発見し、リョウマ達に連絡。ある意味、 アースを捨てた事で難を逃れたヒュウガへの救援要請を提案するが、リョウマは互いの目的の為に選んだ道を信じ、それを制止する。
 「俺たちは俺たちで、全力でバルバンを倒す。それが今の兄さんへの、俺たちの応え方だ!」
 「早く行こうぜ。バルバンと地球魔獣は絶対ぶっ潰す!」
 「うん。行くぞ!!」
 選んだ道を全うする事で、互いの信頼に応える――ヒュウガから完全に独り立ちしたリョウマの言葉に、 どこに出しても恥ずかしくない戦士へと成長したヒカルが即座に続き、物理的な距離はありながらも、 6人が共に戦っているという見せ方が実にお見事。
 離れていても心は一つ、というのは定番ですが、それを兄弟として戦士としての信頼と行動という形で具体化する事で、 ギンガマンらしく示しています(なおゴウキの成長は、前回あたりからさらさらした髪型に窺えます)。
 アース汚染の影響により深刻なダメージを受けながらも雄々しく前を向いて進み続ける5人だが、 その姿に居ても立っても居られなくなったモークは独断でヒュウガとコンタクトを取り、 5人を心配する気持ちはあってもその示し方がわからず、かつては「冷たい」とも評されたモークの情緒の変化、 そして積み重ねてきた戦士達との関係も活きます。
 「頼む、彼らを助けてやってほしい」
 「……リョウマ達が、そう言ったのか?」
 「いいや。彼らは、自分たちで切り抜けるつもりでいる」
 「そうか。……モーク、俺も行くつもりはない」
 互いに星を護る戦士として認め合うが故に、ヒュウガもまた勝利へ向けて自分の選んだ道を進み続ける事をモークに告げ、 絆もあれば情もあり、勝利の為にそれを切り捨てるかどうかの葛藤は既に遠く乗り越え、 全てを手にしたまま「バルバンと同じにならない」形で、勝利への道を邁進するギンガマンの“強さ”、ここに極まれりといった感。
 高寺Pによる今作のコンセプトは「王道」にあったそうですが、その象徴ともいえそうな今作の“強いヒーロー”像が、 リョウマ達とヒュウガを分断した事で互いをより鮮やかに引き立て、濃厚に結実したのは終盤の激震が絶妙にはまってくれました。
 「君たちは、どこまで強いんだ……」
 6人の戦士としての覚悟をまざまざと感じ取り、瞑目するモーク。
 (ブクラテス、死ぬな。俺はまだおまえに聞きたい事がある)
 そしてコーチの元へ急ごうとするヒュウガだったが、その前にバットバスが立ちはだかり、シーンとしては久々の騎士転生!
 一方、長らく地中を蠢いていた地球魔獣が遂にその顔を地表に覗かせると、噴出する毒液によりトンネル内部で車を溶解させ、 ダイタニクスといい地球魔獣といい、今作の巨大魔獣はどこか円谷ノリ(笑)
 ギンガマンより早く魔獣の元へ辿り着いたミサイル魔人はエキス発射の準備に入り、星を蝕む汚染、そして迫り来る破滅を止める為、 モークは地中の汚れをその身に集める事で、5人を支援しようと決断する。
 「私も、星を護る一員だよ」
 たとえ星獣剣の戦士ではなくとも、星を護ろうとする想いは同じ……全身が紫色に染まっていき、 生い茂っていた緑の葉が次々と枯れ落ちながらもモークは毒素を吸収し続け、万事に有能なモークらしく出鱈目なキャパシティを見せつけるのですが、 用法としては起死回生の奇跡に近いながら、大地に根ざし、全ての木々と繋がる、樹木というモークの特性が最後まで活かされているのも実にお見事。
 身動きできない、という最大の弱点を除くとサポートキャラとしては極めて有能なモークでしたが、 折につけ樹木である事の長短を描く事でバランスを取っていたのは良く、穏やかな語り口で戦士達を見守る後見役として、 良いキャラでした。……なんか今作は、樹とか樽とか、開始当初からは予想もしなかったキャラに、思い入れが生まれているな……(笑)
 「貴様等どこまで邪魔する気だぁ?!」
 「おまえたちを倒すまでだ!」
 かつての黒騎士とオコゼ魔人の、
 「てめぇ……なに考えてやがる?!」
 「3000年の間、貴様等バルバンを倒す事だけを考えていた」
 というやり取りを彷彿とさせますが、凄く、ギンガマンです!
 「みんな……転生するんだ……」
 そしてここで響く声により、モークもまた、離れていても一緒に戦っている事が示されるのが、 ギンガマンというチームの一つの到達点として、鮮やかでした(モークの元には、勇太くんとボックが寄り添ってもいる)。
 「行くぞ!」
 「「「「「銀河転生!!」」」」」
 一身に星の汚れを引き受け、急速に弱っていくモークの鼓動、命尽き果てていく象徴としての落葉を繰り返し交えながら熾烈な戦いが繰り広げられ、 追い詰められながらもギンガマンは起死回生のバイクアタックで魔人を撃破。
 巨大化した魔人のバルカン射撃をものともせずに突進し、今日は根性入っているかと思われたギンガイオーだったが、 振り下ろした獣王剣をさくっと受け止められ……いつも通りでした。
 ギンガイオーに組み付いたミサイル魔人は作戦失敗の責任を取って自爆を敢行しようとし、 その捨て身の攻撃に対して「フェイント攻撃を得意とする」フェニックスが緊急出撃。 飛び蹴りから逆に魔人を押さえ込んだ所に獣王斬りが炸裂し、バットバスの切り札も、ギンガマンの前に敗れるのであった……!
 「モーク! 大丈夫なのか?!」
 「リョウマ、すまない……どうやら君たちと、最後まで戦う事が、出来そうに、ないよ……」
 「モーク!」「ば、ばか! なに言ってんだよ?!」「モーク!」
 空が夕焼けに染まる中、乗馬倶楽部へと必死に駆ける5人だが、モークの命は既に尽きようとしていた。冒頭、 弱ったモークにアースを流し込んで消耗を和らげていた5人を真似て、毒々しい紫色に染まってしまったモークの幹にそっと触れる勇太。
 「モーク……僕にもアースがあればいいのに!」
 「……感じるよ……勇太。君の、優しい気持ちを。きっとそれが、君のアースなんだよ。ありがとう……」
 戦う力だけではない、星を護る力にも色々な形がある事をモークは勇太に伝え、勇太の優しさがモークを救うと共に、 人間の感情を理解できるようになったモークもまた勇太を救う、という1年間の積み重ねも実に手堅く、 きっちりとこういうやり取りを収めてくれるのが素晴らしい。
 「リョウマ……ハヤテ……ゴウキ……ヒカル、サヤ……戦いは辛くても、きっと終わる。君たちとヒュウガなら、 終わらせられる。……私は、確信したよ」
 「モーク! もうすぐ帰る! 帰るから!」
 「みんな……」
 5人の存在を感じ、勇太とボックに看取られながら、キラキラと黄金の光に包まれていくモーク…… 
 「一緒に居る間……楽しかった…………」
 最後の最後、戦いを離れ、“生きていた”自分の想いを告げたモークの姿は光の粒子と化し、戻ってきたリョウマ達が目にしたのは、 床に僅かに残った落ち葉と、勇太の手の中に残った、小さな緑色の種だけ。
 ギンガマンの戦士としての在り方、勇太の持つアース、地球汚染の脅威……これまでの蓄積をたっぷりと踏まえた上で最終決戦へと繋がっていく要素を、 モークを中継点として劇的に描き、最後までその存在を使いきったモーク、リタイア。いってみれば、 マザーコンピューター@ファンタジー仕様というキャラでしたが、半ば超然とした便利キャラの長所も短所も、 “樹木”という特徴にこだわって描写する事でキャラクターとして成立させていたのが、物語を通して良かったです。
 納谷六朗さんの抑制の効いた声と演技も、時に激しやすいギンガマンと好対照となって上手く噛み合い、 物語に欠かせない調和をもたらしてくれました。
 かくして、絶体絶命のギンガマンを救い、知恵の樹・モークは倒れた……一方、執念で洞窟を脱出し、愛弟子を探す樽爺だが、
 「その必要は無い」
 「……シェリンダ!」
 その胴体をシェリンダの剣が貫く!
 (ブクラテス……)
 バットバスの妨害をくぐり抜けた黒騎士はコーチの姿を求めて必死に駆けるが、果たして樽爺の生死や如何に?!  モークの最期が半ば吹き飛ぶ勢いの衝撃のオチで、次回へつづく。
 というか我ながらどうして、樽爺の生死をこんなに気にしているの?!
 次回――いよいよ迫り来る最終決戦! 伝説は今、最終章を迎える!!

◆第四十九章「奇跡の山」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 樽爺を貫く海賊の刃!
 倒れた樽爺の顔を思い切り踏みつけて澱みに澱んだストレスの一部を解消するシェリンダだったが、 駆けつけた黒騎士がコーチを抱えて逃走。
 「なあバットバス、船のねぇ宇宙海賊ってのを聞いた事があるか?」
 一方、黒騎士を始末し損ねた事を報告に戻ったバットバスに、いよいよ船長恒例の、お小言始まる。
 「そーんな間抜けなもんがあるかよ〜」
 バットバス、実力もさる事ながら、この性格だから船長とずっと付き合ってこれたのだろうな……と、最終回手前で明らかになる真実(笑)
 「その間抜けが今の俺たちよ!」
 イヤミの通じないバットバスの斧を掴み、とうとう怒声を挙げる船長。
 「バットバス、俺ぁ結構痺れ切らしてるんだぜ」
 「わ……わかりやしたよぉ。地球魔獣はこの俺がなんとかしますって。この俺が本気出しゃ一発ですよぉ。へへへへへ」
 斧を突きつけられたバットバスは船長の本気を感じると追従モードに切り替わり、ボスキャラ級の声ながら、 筋肉過剰の暴れん坊からへっぴり腰の三下まで、一つのキャラの中に違和感なく収めてみせるのはベテラン渡部猛さんの味を感じます。
 「ボック、モークをいつか、ギンガの森へ連れて行こうね」
 乗馬倶楽部ではモークの種をペンダントに収めて第2話の状態に戻したサヤがボックに優しく微笑みかけ、 サヤは最初からこの方向性で良かったのは?! という、今更ながらの気付き(笑)
 ……まあ、今作のコンセプトとして「3000年アースを鍛え続けてきた宿命の戦士」らしさを押し出すというのが優先事項であって、 それとの取捨選択ではあったのでしょうが、戦士以外の一面をボックとの絡みで見せる、というのを僅かずつでも積み重ねていければ、 第46話の出来映えや、サヤの印象もかなり変わったのではと惜しまれます。
 前回のビズネラの奸計がヒントになったのか、地球魔獣を誘き寄せる方法を探すギンガマンは、 ギンガブレスが眠っていたオタケビ山が3000年前、決戦の地としてダイタニクスを誘き寄せた場所であると星獣たちに教えられ、 その仕掛けを作動させるべく山へと向かう……全ての始まりの地が、決戦の地として収束していく、 というのは「伝説」をベースとした今作らしい構成。
 その頃、致命傷を負った樽爺コーチはヒュウガに手当を受けながら、今まで隠してきたゼイハブの秘密を明かしていた。
 3000年前――星獣によって瀕死の重傷を負ったゼイハブは、ゼイハブの母星を原材料とする、 宇宙で最も邪悪な星の命を右胸に埋め込む事で一命を取り留める。その緊急手術を執刀したのが、 魔道医学にも精通していたスーパードクター樽爺であり、その結果としてゼイハブは、星の命から無限のエネルギーを得ているのであった。
 「それを砕けるのがナイトアックスというわけか」
 「そうじゃ。これを砕けるようになれば、ゼイハブの星の命も、砕ける筈じゃぁ……!」
 樽爺の取り出す漆黒の鉱石を、どこか哀しげな瞳で見つめるヒュウガ。
 「……それはおまえの――星の命なんじゃないのか?」
 「?!」
 「……復讐の為に何もかも捨てるのやめろ。砕くのはゼイハブの星の命だけで十分だ」
 今作を貫く「復讐」というテーマが再浮上し、黒騎士の魂を受け継ぐ者でもあるヒュウガの言い回しが大変格好良いと同時に、 誰にでも故郷を大切に想う気持ちはある筈だ、という、ギンガの森、そして星を護ろうとするギンガマンの、 根幹的な“戦う理由”が示されるのが劇的。
 一方で、「滅ぼされた」のか「滅ぼした」のかはわかりませんが(構造的には恐らく後者か)、 ゼイハブの母星が既に星の命と化している事から、ゼイハブそしてバルバンが、故郷を持たないか捨てた存在である事が暗示されており ――星の命を持つ樽爺や、海賊に鞍替えした魔人などから、海賊メンバーは概ね似たような境遇が想像されます――、 例えば大事な船もより良い新車に乗り換える機会と見るやあっさりと捨てみせるように、 バルバンの本質とはまさにギンガマンのネガである護るものを持たない存在といえます。
 だからこそバルバンは、他者のそれを、奪い、踏みにじり、貪り尽くせる。
 ここに「故郷」という要素を軸にして、船長の秘密から、バルバンとは何であるのか、まで綺麗に繋がりきったのはお見事。
 ちなみに牽強付会の蛇足になりますが、小林靖子がデビュー2年目に参加した『ブルースワット』(1994)に登場するのが、 故郷から追放された宇宙犯罪者達が手を組んで生まれた悪の組織で、特に扇澤延男脚本では、 その漂泊者としてのデラシネ的要素に焦点を当てたりしていたのが、今作に多少は影響あったりしたのかなかったのか。
 「黒騎士……」
 ゼイハブへの復讐だけを考えて生き延びてきた樽爺の心にも何かのゲージがぎゅいーーーんと芽生え、 ここで「ヒュウガ……」と呼びかけていたらサヤは樽爺にまで周回遅れで千切られるところでしたが、 あくまでそこの一線は越えずに樽爺を「悪」の側に置き続けるのが、今作の作風であり、デリケートなところ。
 船長に尻を叩かれたバットバスは、力技で地球魔獣をいぶり出そうと闇雲に地下へ攻撃を仕掛け、青山父からそれを教えられた (父の出番を確保しつつモーク不在の穴埋めをさせていて実に巧妙)ギンガマンは、二手に分かれる事に。
 「心配で、来ちゃいました」
 「鈴子先生……戦いが終わったら、ギンガの森、案内します」
 「……はい」
 駆けつけた鈴子先生はゴウキに笑顔で応え、さすが女神属性。
 「伝説の力、信じてますよ」
 青山父からのエールも背に、リョウマは山へ、ハヤテ達4人は街へとそれぞれ走り、もともとヒーローというのは割と 「走る」存在ではありますが、今作随所で長めの尺を採って戦士達が激情を内に秘めながら「走る」 姿を描いているのはこだわりを感じる所で、最後まで印象深い疾駆のシーンとなりました。
 ……まあ、一番印象深いのは、第11話で鈴子先生への恋破れたと思い込んで涙をこらえて走るゴウキなのですけど(笑)  ……というかあれが、今作における印象的な「走る」の画期か?
 (余談ですが、私個人が、「走る」姿を巧く取り込んで描く事が如何に面白さと気持ちよさに繋がるのかに気付くきっかけとなった作品が、 アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー』(監督:アミノテツロー)。それから、『∀ガンダム』において主役機∀ガンダムを “スムーズに走るMS”として描写した富野監督の卓越を思う次第です)
 ……あと余談に逸れている内に思いつきましたが、今作と企画的に繋がりが深いらしい『百獣戦隊ガオレンジャー』のレッドが 「獅子・走(かける)」なのは、果たして単なる偶然なのか。
 闇を切り裂く虹になるべく走るハヤテ達がバットバス部隊と戦端を開いた頃、樽師弟の隠れ潜む小屋にはシェリンダが迫っていた。
 「逃げろ……黒騎士、おまえにはどうしても……ゼイハブを倒してもらわねば!」
 ゼイハブの倒し方を伝えられたヒュウガは、しかしそれでもコーチを見捨てようとはせず、 ゴウタウラス入りの魔法の樽を返されてもなお、一緒に逃げる事にこだわる。
 「行くんじゃ。アースを捨てた事を、無駄にするな!」
 「ブクラテス!」
 そんなヒュウガを思い切らせる為、虫の息のコーチが取り出したのは、既に火が点いた爆弾。 樽爺は小屋に踏み込んできたヤートットを巻き込んで壮絶に自爆し、番組史上最高レベルの気がする爆発で木っ葉微塵に吹き飛んだ小屋の残骸の中に、 シェリンダは原形を残さずバラバラになった樽の破片と眼鏡を発見する……。
 「ブクラテス……死んだか」
 ……さすがに死んだとは思いますが、死に方としてはこれ完全に、「ふっふっふ、 あの程度で儂が死んだとでも思ったのか?」と言って高い所から現れたり、 過去を捨てて仮面の人になって再登場するパターンなのが、不安を誘います(笑)
 それでなくても樽爺には前例があるし、自分の死を偽装して官憲と敵の目を逃れ、 裏の世界からテロリストを支援する主要登場人物が出てくる作品が、実は小林靖子さんの脚本デビュー作なわけですが、 合言葉はフォー・ジャスティス!
 ……発作的な与太はさておき、終盤戦の思わぬキーパーソンになったブクラテス、 厳しく特訓を指導しているだけだとヒュウガの登場シーンが面白くなくなってしまう都合もあってか、 母星を失った背景を与えられてなんとなく距離が縮まったりもしつつ、「復讐者として決してわかりあえない」 という一線はギリギリ守って、凄絶な自爆で退場。
 博士ポジションの便利キャラ→役立たずのコメディリリーフから、怨念を抱えた復讐者としてヒュウガに独自の役割を与え、波瀾万丈、 色々と転がった面白いキャラクターでした。身勝手で剽軽な言動からどす黒い悪意まで、茶風林さんも持ち味を存分に活かして素晴らしかったです。
 いつか何かの劇場版(或いはVシネマ)で、伝説のヤング樽爺が登場する日を待っています!(え)
 一方、オタケビ山に辿り着いてほこらを調べる内に、落とし穴に落ちてしまったリョウマは、その奥で仕掛けを発見。 それが発動すると風の通り道が開き、星獣たちの記憶通りに、吼える山。
 「これが! オタケビ山の、叫び!」
 強風に煽られて山腹から吹き飛ばされそうになるリョウマは無駄に死にそうになり、 ハヤテ達が戦っている一方でリョウマが無傷というわけにはいかないバランスへの配慮や、 この後のヒュウガとの再会を劇的にしたいという意図はあったのでしょうが、吹き飛ばされまいと必死に岩肌に捕まるリョウマのシーンは、 この局面でそれで命の危機に陥らなくても、と少々くどくなってしまった印象。これが、 山を吼えさせる為の試練の一環で死にかけるなら話はまた変わりますが、吼えさせたのはほぼ偶然の産物であり、 順序が逆になっているので(この辺りは試練とするほど時間を取れない尺の問題もあったでしょうか)。
 響き渡る山の咆哮は3000年前同様に魔獣を呼び寄せ、ハヤテ達を退けたバットバスは山へと急ぐ。 ハヤテ達はギンガファルコンの背に乗って山へと向かい、あわや転落死の危機をヒュウガに助けられたリョウマ達と合流。 更なる地球汚染を防ぐ為に魔獣を焼き尽くすべく迎撃態勢を取るギンガマンだが、そこにバットバスが到着して6人は銀河転生&騎士転生。
 「決戦だ! 行くぞー!」
 「銀河炸裂!」
 地球魔獣を滅ぼすか、成長させるか――始まりと終わりの地・オタケビ山にて地球の命運を大きく左右する激突が始まり、 華麗に構成員を蹴散らす緑の、顔面を明らかに狙って蹴り飛ばすドSなハイヒール。
 「シェリンダ!」
 「――決着を付けようか、ギンガグリーン」
 最終決戦の中で両者の因縁がしっかり拾われ、互いの剣を抜いて刃を交えたと思ったら、間合いが離れた途端にキバショットを繰り出すドSな風の戦士。
 だがシェリンダはそれを剣で弾き返すとサイコビームを放ち、逆にグリーンにダメージを与える。
 「ギンガグリーン、今日こそおまえを、跪かせる」
 「……それはどうかな」
 「なにぃ?」
 立ち上がった緑は構えを変えるとノーガードで挑発し、頭に血が上ったシェリンダの突撃を鮮やかにかわすと、 ビーム攻撃をものともせず上空から疾風一陣で縦一閃。その一撃は致命傷を与えるが、 よろめきながらも立ち上がったシェリンダは残った力で最後の一刀を振り下ろし、互いに名乗り合った戦士としてか、 甘んじてそれを受ける緑。
 「私の……勝ちだ……」
 朦朧とする意識の中、弱々しい斬撃でギンガグリーンに僅かな傷を与えたシェリンダは、すれ違うように倒れ、大爆死。
 ラストを担当すると必然的に増えるというのはありますが、これで長石監督は、サンバッシュ、ブドー、ダイタニクス、モーク、 ブクラテス、シェリンダ、そしてこの後バットバスに始末をつける事に。イリエスとビズネラは辻野監督だったので、 意外やパイロット版の田崎監督が誰の退場にも関わらず……と思ったら黒騎士の最期が田崎監督でした。 黒騎士の最期は非常に気合いが入っていましたが、構成の関係でなかなか敵幹部の最期を担当できない分もあったりしたのでしょうか。
 美しき悪女にしてプライドの高い女剣士であり、ハンドル握るとテンション上がるタイプだったシェリンダですが、 その最期ひいてはバルバンの最終的な敗因はやはり、ダイタニクスを捨てた事にあるのだろうな、と。 ギンガマンを侮り続けているバルバンからすれば、“この先”を考えた魔獣の乗り換えは必然性のあるものだったのですが、その傲慢、 そしてシェリンダが「あたしのダイタニクス」にこだわる事なく、廃車に同意してしまったのが、大きな運命の分かれ道になったのかと思います。
 「てめぇら……許さん!」
 シェリンダの爆死を見て怒りに震えるバットバスはギンガマンを火球で吹き飛ばすが、そこに地球魔獣が到来。そしてあろう事か、 急成長エキスを掲げたバットバスを頭から丸呑みにしてしまう!
 前々回のビズネラ退場エピソードで、猛虎ビズネラ@急成長エキス漬けが地球魔獣に食べられたら因果応報として面白かったのに、 と書きましたが、くしくも上司がそれをやる事になり、メカ星獣ロボの一件といい、『ギンガマン』は我ながら酷いネタがどんぴしゃりだ!
 単純な戦闘力でいえば最後までギンガマンを圧倒し続けたバットバス、ここに衝撃の退場。
 思わぬ猟奇シーンに動揺しつつも、アースを結集したギンガマンは、ハイパー炎のたてがみで地球魔獣を焼き尽くそうとし、 浄化の炎に飲み込まれる魔獣……
 「やったのか?!」
 「……やったぞ! 地球魔獣を倒したぞ!」
 だが、一斉に立たせるフラグに応えて、魔獣は遂に巨大化してしまう!
 「地球魔獣が……!」
 穢れの象徴という事でか、格好いい系とは180度逆なデザインの地球魔獣は、 おもむろに口を開いたと思ったら想像を遙かに超えて両の肩口までばっくり裂ける、 というのがファーストアクションとして物凄いインパクト。
 「おお……山を、食べた!」
 オタケビ山の頂に立つ、赤い布の巻かれた木の柱が繰り返し映されていたのですが、妙に強調するなと思ったら、 その落下が崩れ去る山の象徴として鮮やかに機能。
 「こいつ、本当に星ぐらい喰うぜ?!」
 「みんな、バルバンを倒すぞ! この星を護る為に!」
 ギンガイオーとブルタウラスが久しぶりに揃い踏み地球魔獣に挑もうとする一方、 ゼイハブの元にはヤートットが次々と急報をもたらしていた。
 「で、で、伝令っス! 地球魔獣の成長に、成功したっス!」
 「おお!」
 「伝令っス! バットバス様が、魔獣に食われたっス!」
 「なに?! 食われた?」
 船長、ちょっぴり、反応に困る。
 ここは笑うところなのか悲しむところなのか詳細を聞く所なのか、考える間もなく立て続けの伝令はもう一つ。
 「伝令っスー! シェリンダ様も、ギンガマンにやられたっス!」
 「なにぃ! ぬぅぅぅぅ……シェリンダ……!」
 形見となったシェリンダの剣を受け取ったゼイハブは絞り出すようなうなり声をあげ、 多くの配下を目的の為に切り捨て続けてきた船長にとっても、シェリンダだけは異例な存在であった事が窺えます。してみれば、 操舵手という立場はあるにしても、船長がシェリンダに行動隊長としての役割と権限を与えていなかったのは、 失敗した場合に責任を取らせなくてはいけなくなるからであったのか。
 この辺りにリーダーとしてのゼイハブのマネジメントを見る所ですが、ここで立て続けに伝令が現れ、 良いニュース・悪いニュース・悪いニュース、を伝えていくところは、最後の最後ながら、 組織としては死んでいないバルバンの姿を見せると同時に、船長の感情の起伏が劇的に演出されて、妙に好きなシーン。
 「野郎ども! 地球魔獣を手に入れるぜ! 出発だーい!!」
 寂寥を振り切ったゼイハブは号令をかけ、殺し、奪い、貪り尽くす新たな力を得る為に、自ら海賊城を飛翔させ……いよいよ次回最終回!
 ――そして今、伝説の刃が銀河を貫く。

◆最終章「明日の伝説(レジェンド)」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 「この星を、バルバンの思い通りにはさせない!」
 遂に巨大化してしまった地球魔獣を焼き尽くすべく、炎のアースを乗せて放たれるギンガイオーの銀河獣王火炎斬りだが……勿論、 さくっと跳ね返される(笑)
 前半戦の圧倒的な強さが嘘のように最終回まで平常運転すぎるギンガイオーの危機を助けるべくお助けメカが駆けつけるが、 そこに飛んできたのはゼイハブ自らが操る海賊城。
 「へへはははは! そこまでだぜギンガマン!」
 ギンガロボ軍団を上空からのビーム攻撃で退けた海賊城は、地球魔獣の頭部に、パイルダー・オン!
 ……明らかにプロデューサーの影がちらつく演出なのですが、どうしてもやりたかったんですか高寺さん(笑)
 「ギンガマン! てめぇらには、返しても返しきれねぇ、3000年分の借りがある。これがその例だ。遠慮無く受けとりなぁ」
 海賊城とドッキングした地球魔獣は爪が鋭利になるなどより凶悪な姿に変貌し、操舵輪を操るゼイハブの傍らに、 シェリンダ形見の剣が丁寧に置かれているのが一抹の悲しさを漂わせます。
 地球魔獣バリバルンガーZの猛威の前にギンガロボ軍団は次々と倒され、呆気なく跳ね返されてしまうも、 久々に鳥頭ボウガンを使ってくれたのは、最終回として嬉しかったポイント。
 「みんな、魔獣を頼む! 俺はゼイハブをなんとかする!」
 この苦境を打開すべく捨て身の突撃を仕掛けたブルタウラスは、コーチ直伝の必殺スパイクを魔城に直接叩き込む!
 反撃により巨大化は解除されてしまうも、城を深々と断ち割ったアックスの剛撃により、魔城は爆発炎上。 シェリンダ形見の剣は砕け散り、海賊旗は炎に包まれて燃え落ち、ゼイハブは城外へと投げ出され (恐らく生き残りのヤートットは城と運命を共にし)、遂に、独りだけの存在となる宇宙海賊バルバン。
 「この星を……! 守るんだ!!」
 一方、炎のアースをギンガイオーに宿らせ続けるギンガレッドは、激しく消耗しながらも何度でも立ち上がっていたが、 そこに集う仲間達。
 「リョウマ、一緒にやろう!」
 「俺たち、ずっと一緒に戦ってきたんだからな!」
 「もう一度合わせよう、私たちのアース!」
 「今度は絶対うまく行くって! アースを信じようぜ!」
 スクラムした銀河戦士は再び5色のアースを重ね、外ではライノスとフェニックスがギンガイオーを支え、戦士と星獣、 その想いを一つにして放たれた渾身のギンガ大火炎は、遂に地球魔獣を焼き尽くす……!
 前回ラストで軽々と山を平らげるインパクトは見せたものの、 今作にしては巨大戦が面白かったvsダイタニクスと比べるとややあっさりした決着になってしまいましたが、地球魔獣とゼイハブ、 どちらを最後の相手にするかといえば後者こそふさわしいとは思うので、取捨選択としては納得できます。
 また、魔獣撃破による汚染を防ぐ為に、毒素を浄化し焼き尽くす「炎」のアースが重要な意味を持つ、という話運びは、 今作らしい丁寧な段取りから炎の戦士への鮮やかな収束。
 念願の地球魔獣を塵にされ、怒りに震えるゼイハブに振り下ろされる、黒騎士必殺の一撃だが、 それはゼイハブに埋め込まれた星の命を砕くに至らない。……なんとゼイハブは、 密かに星の命を右胸から別の場所に移し替えていたのだった!
 と、船長がいつまでも、他人に知られている自分の弱点をそのままにしておかない、というのも納得の展開。
 「アースを捨てたのはいいが、俺を倒すには腕が足りねぇようだな」
 星の命の場所を探りながら斧を振るうも、徐々にゼイハブに押し込まれていく黒騎士の危機に駆けつける、ギンガマン。
 「てめぇらなんぞにこの俺は倒せねぇよ。俺がてめぇらをぶっ殺す!」
 「なに?!」
 「その前に……この星を壊して汚して、また魔獣を調達しなきゃなんねぇがな」
 「そんな事絶対にさせない! 行くぞ!!」
 「馬鹿が」
 海賊ビームが炸裂して5人も吹き飛び、怒濤のコンビネーションアタックを仕掛けてよろめかせるも、 ゼイハブの反撃により頼みのナイトアックスが砕け散り、全員が変身解除にまで追い込まれてしまう。
 その頃、オタケビ山へと走る一台の車の中に、青山父子とボックの姿があった。
 「リョウマ……ハヤテ……ゴウキ……」
 「勇太……勇太が先に負けてどうする。リョウマさんたちは絶対勝つ。そう信じて応援するんだ。 リョウマさん達に届くように、大きな声で」
 ラスト2話、ここに来て晴彦さんの存在が、割とおいしく、しっかりとキャラを使い切ってきます。
 「パパ……」
 涙をぬぐい、窓を開けて叫ぶ真ヒロイン。
 「みんなー、頑張ってー!」
 守りたいものがある限り、戦士は何度でも立ち上がる――いちはやく立ち直ったヒュウガは、満身創痍でよろめきながらも剣を抜くが、 それを悠然と待ち構えるゼイハブ。
 「よぉし、てめぇから地獄に送ってやるぜ」
 こ、これはコーチが出てくるところだ!と拳を握りしめてドキドキしましたが奇跡は起きず、 ゼイハブの一刀に貫かれて崩れ落ちるヒュウガ。トドメを刺される寸前、リョウマの火炎放射がヒュウガを救い (ダイタニクス復活前編の意図的な焼き直しか)、ハヤテ達が立ち向かっている間に兄弟は一時撤退。
 「俺は戦う! 戦ってゼイハブを倒す! 例えナイトアックスがなくても……例えアースがなくても…………俺はこの星を護りたいんだ」
 「兄さん……アースはあるよ。兄さんの中に、アースはある」
 「……リョウマ」
 「アースは星を護る力だろ。星を愛する心があれば、アースは生まれるんだ。星を護って戦っている限り、兄さんの中にも、 大きなアースは生まれる筈だよ。……自分を信じるんだ。教えてくれたのは兄さんだろ」
 まるでアースの代わりに、己の命を燃やそうと(捨てようと)するかのようなヒュウガに対し、アースは決して消えてはいない、 それはまた生まれてくる筈だ、とリョウマが諭し、ヒュウガの胸に去来する第1話のやり取り。
 「リョウマ、聞くんだ。おまえにも、大きなアースはある筈だ。自分を、信じていないだけだ」
 「兄さん……!」
 「おまえの力を、俺は信じてる」
 ヒュウガにとって、「(星を)守る為」ではなく「(ゼイハブを)倒す為」の戦士となる事を選んでアースを捨てたのは一種のスティグマのような意味を持っていたのかと思われ、 勝利の為に自分を見限っていた(今作において象徴される黒騎士化であり、その行き着く先であるバルバン化の前段階にいた)ところのあるヒュウガを、 崖っぷちで、引きずり上げるリョウマ。
 「何もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ。あなたの戦い方では、終わった後に、何も残らない!」
 ここにリョウマは、星獣剣を託して地の底に消えたヒュウガを、自らの行為を償う為に火口へと身を投じた黒騎士を、その手を握り、 地上へ引き戻す、ギンガマンとしての真の“強さ”を示す。
 「リョウマ……」
 「……俺たちのアースで、ゼイハブを倒そう!」
 リョウマとヒュウガは固く拳を握り締め、ヒュウガが黒騎士を後継した事の意味(黒騎士はヒュウガとなりヒュウガは黒騎士となり、 そしてリョウマはかつて救えなかったヒュウガと黒騎士を救う)が、重なり合う救済に着地するのですが、惜しまれるのは、 「なぜナイトアックスなら星の命を砕けるのか」「なぜナイトアックスを使うにはアースを捨てなければならないのか」という理由が、 物語の中に収まりきらなかった事。
 星獣と魔獣の関係を含め、諸々の理屈と繋がりを丁寧に物語内部で収めている今作においてナイトアックスはやや異質といえる存在なのですが、 そこが綺麗に収まっていれば「アースを捨てる」「アースを取り戻す」事の位置づけもよりハッキリしてパズルの完成度が上がったのですが (個人的に思いついた解釈としては、ナイトアックスの原材料は「星の命」であり、その為にアースと反発する?)。
 「てめぇらもつくづく馬鹿な野郎達だな。奪って壊してこその星じゃねぇか。守る価値なんざありゃしねぇ」
 追い詰められたハヤテ達へ向けて語られる“星”をどう捉えるか、の違いで、ギンガマンとバルバンの対比に駄目押しを加えつつ、 それに屈しない4人。
 「おまえには、絶対わからない……この星に、どれだけ大切なものがあるか!」
 「この星は、絶対守る!」
 「これぐらいで、負けないぜ!」
 「この星が生きている限り、私たちは戦う!」
 「だったら星と一緒に心中でもするんだな」
 そこに崖上まで辿り着いた勇太くんが思わず「やめろー!」と叫び、ゼイハブは無防備な青山父子へと砲口を向けるが、 火を噴く砲弾をボックが頭突きで弾き返し、じゃなかった、火を噴く寸前に、駆けつける炎の兄弟。
 「ゼイハブ! お前は終わりだ!」
 裂帛の気合いと共に放たれたダブル炎のたてがみがゼイハブを包み込み、その業火は割と目立つ所(胴体中央) に隠されていたゼイハブの星の命を粉々に打ち砕く!
 「こんな馬鹿な……!」
 「ゼイハブ! 星を傷つけるおまえから星が離れたんだ! おまえを倒す!」
 「この星を守る為に!」
 大事なものを守る為、星と繋がり続ける者達の振るう力が、他者から奪い貪るだけの為に一方的に星から吸い上げている力を打ち破り、 今ここに、OPイントロから満を持して、6人並んで銀河転生&騎士転生。

「ギンガレッド――リョウマ!」
「ギンガグリーン――ハヤテ!」
「ギンガブルー――ゴウキ!」
「ギンガイエロー――ヒカル!」
「ギンガピンク――サヤ!」
「黒騎士――ヒュウガ!」
「「「「「「銀河を貫く伝説の刃! 星獣戦隊・ギンガマン!!!」」」」」」」


――ギンガマン
 それは、勇気ある者のみに許された
 名誉ある銀河戦士の称号である

 ギンガマンの揃い踏みから、このナレーションで締めるここぞの流れは、最後まで大好き。

走れ! 地球せましと駆けめぐれ
走れ! 荒野ゆさぶる風になれ
ほえろ! ほえろ! ほえろ! ギンガマン

 「てめぇら全員、地獄へ叩き込んでやるぜ!
 「唸れ! ギンガの光!」
 ここまで来たら後は押し切るばかりと、主題歌をバックに黒の一撃からギンガの閃光のコンボが久々に炸裂し、 トドメの炎一閃二刀流が遂にゼイハブを粉砕。ここに、銀河戦士達は3000年前にも成し遂げられなかった、 バルバンへの完全勝利を成し遂げたのだった!
 そしてゼイハブが倒れた事により、森に設置されていたエネルギー吸収装置が無効化されたのか、 石化封印されていたギンガの森が復活する……脇目もふらずに湖へと走る6人の眼前で湖底から甦るギンガの森の姿は、 魔獣による汚染が食い止められ、再生していく環境の象徴のようにも見えます。
 「きっと星が、リョウマ達に返してくれたんだね、森を」
 「繋がってるんだよ、星と人は」
 長老やミハル、村人達から拍手で迎えられたギンガマンが歓喜の絶叫と感涙をこぼしながら森へと走る姿にEDテーマがかぶせられ、 エピローグパートへ。種になったモークは森に植え直され、さくっと復活。
 「みんな、また会えて、こんなに嬉しい事はないよ」
 大団円という事で、ここは非常にあっさりでした(笑)
 リョウマが勇太と追いかけっこしたり、ハヤテがミハルに寄り添われながら笛を吹いていたり、 というのは通常ED映像と重ねたと思われ、ゴウキは約束通りに鈴子先生を森で案内し、一番盛り上がる
 緑の中で生まれた君と 星の巡りに呼ばれた君と
 のところで登場する鈴子先生、台詞は無いながらも安定したヒロイン度の高さ。
 「……もう……毎日会えないね」
 「……勇太、俺たちはいつも、ここに居るよ!」
 リョウマは爽やかな笑顔で勇太の頭を撫で、“いつもそこに居る存在”としてヒーローのエターナル性を確保しつつ (今作においてそれは、星そのもののメタファーでもありましょうか)、「少年とヒーロー」の関係を通して、 どこか「別離」の要素が持ち込まれているようにも見えますが、これは「別離」というテーゼを大事にする後の小林作品を知っているので感じるのかもしれません。
 そこも含めて幾つか、後の小林作品で掘り下げられるテーゼの雛形かもしれないものが見え隠れする初メイン作品でしたが、ラスト、 やがていつも思い出すものにはならなくなるかもしれないが、それでも、ヒーローは、 「いつも、ここに居るよ」というのは、メタ的なヒーロー観としても大変美しく、気持ちの良い着地点でした。
 掴み取った平和な明日に向けて、勇太くんと6人は笑顔で走り出し、ちょっと弾けてみせるヒュウガ。
 「また会おうね、ボック」
 という、ドングリの言葉で、エンド。

(2020年4月20日)

戻る