■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ7■


“ガンガンギギーン ギンガマン!
ガンガンギギーン ギンガマン!
銀河を貫く伝説の刃”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ7(37話〜42話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ8〕

◆第三十七章「ブクラテスの野望」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子)
 ヒュウガは傷ついたタウラスを治療する為、人里離れた山岳地帯で寝起きを共にしていた……とここ数話の、 黒騎士不在や到着の遅さを補強。兄の元を訪れたリョウマは、その地がタウラスの生まれ故郷に似ている事を教えられ、照れるタウラス、 それを微笑ましく見つめるリョウマとヒュウガ、とこの後の展開を考えると、「故郷」というキーワードを忍び込ませつつ、 タウラスに可愛げを与える手管が卑劣! 卑劣なり小林靖子……!
 リョウマとヒュウガは折角だからと剣を打ち合わせ、兄の貫禄を見せつけるヒュウガ。
 「リョウマ、おまえは訓練となると無意識に剣捌きが鈍くなる。闘いでは何が起こるかわからないんだ。 相手によって遠慮してたら勝てないぞ。……例えば」
 ニヤリと笑ったヒュウガは、訓練用の木の枝を捨てると、黒騎士剣を抜いてリョウマへと躍りかかる。
 「この俺が敵になる事もある!」
 打ち込まれたリョウマもそれを凌ぐと、ヒュウガの視界から外れて死角から星獣剣を突きつけるという、成長を披露。
 「あんまり甘く見ないでくれよな。もし戦わなきゃいけないなら、俺も容赦はしないさ! たとえ兄さんでもね!」
 「上等だ!」
 弟の成長に笑顔を浮かべたヒュウガは再び剣を振るい、戦隊史に残りそうな勢いの爽やか人間兵器兄弟は戦闘訓練を続行。 二人の放ったアースの炎がぶつかり合う映像は格好いいのですが、君たち、タウラスの故郷に似た山の中で、爆発起こすな(笑)
 剣を握って命のやり取りをしていると、生きているって気がするな……! と訓練を終えた兄弟は、 美しい夕陽を見つめながら満足げに汗をぬぐう。
 「リョウマ」
 「え?」
 「どんな事があっても、必ずバルバンを倒そう。この星の全てを守る為に。それに……いつか、ギンガの森へ帰る為にも。 ……このアースに懸けて」
 ヒュウガはその掌中にアースの灯火を掲げ、それに並ぶリョウマ。二人の炎の色が、微妙に違うのは丁寧な部分。
 一方バルバンでは、ダイタニクスに星獣の心臓移植を行う、という大胆な作戦が提案され、 負傷により結界を張る力も弱まっているゴウタウラスがその標的とされる。白黒剣士が率いる、大量の麻酔弾を持った部隊の姿を目にしたのは…… 九死に一生を得て海岸に流れ着き、ゼイハブへの復讐に燃える樽爺!
 自らの手足となる戦力を求めて頭をひねっていた樽爺は、魔人部隊の行動からゴウタウラス――そして黒騎士に目をつけ、 安全圏から他人の作戦に厭味を言ったり、姪っ子の太鼓持ちをしたりという安穏とした暮らしで鈍っていた頭の回路が死の瀬戸際を経験する事で目を覚ましたのか、 その知謀が往年の輝きを取り戻そうとしていた!
 山岳地帯へと侵攻してきた魔人部隊に立ち向かう黒騎士とギンガマンだが、黒の一撃や炎一閃はおろか、 ギンガマンのあらゆる攻撃をコピーした上、一手先んじる事でオリジナルを上回る威力の攻撃を放つ、白黒剣士に大苦戦。
 「貴様等の動きも武器も、全て調べ尽くした。この俺に、指一本触れる事すらできんぞ。次にどういう攻撃に出るか、全てわかるからな」
 本人の言動によると、コピーではなく、あくまでもインプットしたデータを元に再現しているようであり、ブルライアットに星獣剣、 モーク竹輪から機刃に至るまで、宇宙に一つレベルのオリジナル武器を準備しているという、バルバン魔人らしい出鱈目なスペック。
 この強敵を前にリョウマ達が足止めを買って出ている間に、黒騎士はタウラスの元へと急ぐが、なんと樽爺の仕掛けたブービートラップにはまってしまう!  そして誰よりも早くタウラスの元に辿り着いていた樽爺は、なんと魔法の樽の中にタウラスを小型化して捕らえていた!
 サンバッシュ編の際に、トンデモ発明能力(イリエスとの関係を考えると、科学というより呪具なのか……?) を幾つか見せていた樽爺だけに、ここで状況を大きく変えてしまうひみつ道具を繰り出す事には、一定の説得力。 そして何より瞠目すべきは、幾ら焦りがあったとはいえ、戦闘民族ギンガの民の中でもS級戦士といえるヒュウガに気取られないトラップ技術であり、 第37話にして浮上する、全盛期樽爺・最強疑惑。
 「黒騎士……もう決まったんじゃよ。おまえが取る道は、一つしかない。儂に従え」
 そしてキレキレの樽爺は、ゴウタウラスを人質に、黒騎士ヒュウガを自らの復讐の刃に変えんとする。
 一方、まさかのギンガの閃光返しにより完敗を喫したリョウマ達は、負傷しながらもタウラスの元へと急いでいた。途中、 ヒカルの発言からハヤテが反撃の糸口を掴み、樽爺の横槍により姿を消したタウラスを探す魔人部隊と再び遭遇した5人は、銀河転生。
 「まだわからんのか……貴様等の技は通用しない!」
 だが、レッドモードを発動した魔人に対し、剣を収めて荒ぶる隼の構えを取った赤は、 緑を彷彿とさせる空中からの連続キックで魔人を翻弄。続けて黄が、青を思わせるパワープレーで投げ飛ばすと、緑は桃、青は黄、 最後に桃が赤、というなりきり作戦で次々と有効打を与え、ギンガマンはギンガマンなので、仲間の戦闘手段は熟知しているのだ!  というこの、有無を言わせぬ説得力(笑)
 コピーにこだわり、技に溺れた白黒剣士を追い詰めたギンガマンは、満を持してギンガの閃光……と見せかけて バイクで轢殺。
 第32話で強引に挿入された後、およそ一ヶ月に渡って1カットも登場していなかったバイクだけに (前回からOPに登場しているのが凄い違和感)、データ系の敵に対する決め技として物凄い説得力でした(笑)
 巨大化した魔人はギンガイオーすらコピーしてみせるが、むしろ最近のギンガイオーはコピーしない方が良いわけであり、 「変幻自在の技を誇る」フェニックスが、ブーメランと見せてライノスから借りてきた銃で撃つ、 という今作の巨大戦にしては面白い一ひねりから、大獣王斬りでずんばらりん。
 強敵魔人軍団の心臓移植大作戦を打ち破るギンガマンだったが、黒騎士とゴウタウラスは姿を消してしまい、 伝説の1ページに暗雲が立ちこめるのであった……。果たして、ブクラテスの「復讐」の道具に選ばれてしまった、 ヒュウガとゴウタウラスの運命は?! で、つづく。

◆第三十八章「ヒュウガの決断」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子)
 前回の闘いの傷も癒えぬまま、ヒュウガとゴウタウラスを探すリョウマ達だがその行方は杳として知れず、 兄を心配する気持ちを押し殺して休憩を提案するリョウマに、人間としての成長ぶりを感じるハヤテ。
 リョウマの人間的成長は、勇太・黒騎士・ヒュウガらとの関係や対比を通して視聴者に見せていくという形が主だったのですが、 ここで、ヒュウガ不在の時の姿でハヤテ(もう一人のリーダー格)から、という新バリエーションを見せてくるのが、 最終クールに向けていよいよ“真のリーダー”になっていくリョウマ、という感じがします。
 ハヤテなりにリョウマへ対するライバル意識があっても面白いかなと思うのですが、今回のところは、 一歩引いた冷静な分析力を見せる形に。
 「復讐する……と言ったな、バルバンに」
 「ゼイハブを殺し、バルバンを乗っ取る。おまえにはその為の道具になってもらう」
 一方、バルバンの知恵袋の座を追われた代わりに、全盛期の切れ味を取り戻した?樽爺は、ゼイハブを倒す唯一の方法として、 禁断の薬草を飲めとヒュウガに迫っていた。
 「……今の話は、確かなのか? 本当だという証拠は?」
 「本当か嘘か、一種の賭けじゃな。じゃが、この賭けに乗らなければ、ゴウタウラスは死ぬぞ。そして、 おまえもいずれギンガマン共々ゼイハブに倒される事になるじゃろう。……黒騎士、乗るしかないんじゃ。儂につけ」
 樽爺にいいように使われたままだと、人質になっているタウラスと、 ヒーローとしてそれを救い出せないヒュウガの株価がどんどん下がっていってしまうのですが、 ここで樽爺が“ゼイハブを倒す方法”を持ち出す事により、ヒュウガが樽爺に屈する“ヒーローとしての理由”が生まれる、 という構造が秀逸。同時に、その手段を飲まなければゼイハブには絶対に勝てない、と樽爺に言わせ、ヒュウガに納得させる事で、 船長の脅威も補強。
 「…………わかった」
 ヒュウガは苦悩の末に樽爺の提案を受け入れ、いやらしい搦め手から言を弄して心を惑わす樽爺が、某コンサルタントみたいに!
 滑稽な見た目もあって、頭脳として約立たなくなった中盤はすっかりコメディリリーフに落ち着いていた樽爺ですが、 前回今回で完全に邪悪な策士として返り咲き、台詞回しと演出の妙、恐るべし。
 一方、心臓移植を諦めたバットバス魔人部隊は、ダイタニクスの血管を掃除する為に子供狩りを始め、 産業革命期イギリスの煙突掃除にまつわるエピソードを思い起こさせ、こちらも凶悪。
 幼稚園バスを襲ったマグネット魔人がマグネットステッキを操作すると、子供だけが逆回しでステッキにくっつく、 という映像は面白く、良いスパイス。捕まえた子供達の身長を測るところまではギャグめいているのですが、そこから一転、 血管掃除に適していると採用した子供は無造作に頭陀袋へ、不採用の子供は力一杯放り投げ、 命を物としてしか扱わない邪悪の表現にメリハリが利いて、小中監督が好演出。
 どこかサンバッシュ軍団の発展系という雰囲気のあるバットバス軍団ですが、久々に顔を出した、 ギャグで人を殺せる不慮の殺伐さというのは、改めてバルバンのルーツとしてのボーゾックを感じさせます(更にその背景としては、 戦隊シリーズが表現の中に持つ“子供の残酷さ”という源流があるのでしょうが)。
 投げ飛ばされた子供は地面に叩きつけられる寸前にギンガマンが救い、そこに黒騎士も現れると魔人は撤退するが、 黒騎士は救出した子供が山で見つけた野草を強引にもぎ取ると無言で飛び去り、先代が農協を襲撃していた頃を彷彿とさせるのが、 またニクい演出。
 樽爺と合流した黒騎士はギンガマンを銃撃すると姿を消し、愕然とする5人は現場に残っていた葉の形から、 黒騎士が奪い取ったのがシズミ草である事に気付く。
 「飲んだら二度とアースを使えなくなる。ギンガの森でも、禁断の薬草だ!」
 苦節3クール、穴の空いた知恵袋として定評のあった樽爺の知識が、物語に思わぬ波紋を投げかける事に!
 前回今回と何が凄いって、ブービートラップを除くと、概ね1クールの間に明かされていたスペック通りにも関わらず、 カムバック樽爺が邪悪な復讐コンサルタントとして成立している事。
 偉大なる先人は言いました。
 「大切なのは己を鍛え、自ら強くなる事なのだ!!」
 (メギド王子/『科学戦隊ダイナマン』)
 立場に胡座をかかず、常に切磋琢磨する心があれば、樽爺だってまだまだLVが上がるのです。
 バルバン内部の暗闘など知るよしもなく、樽爺覚醒の復讐劇に巻き込まれる形となったギンガマンは、シズミ草の効果に恐れおののく。
 「アースを失くせば、戦士でなくなるだけじゃない。ギンガの森にも、住めなくなる」
 大切な故郷に戻る手段を自ら失おうとする筈はなく、ヒュウガが脅されているに違いないと推測した5人は、 草を煎じた匂いからモークがキャッチした洞窟へと突入。鮮やかに樽爺を拘束するが、煩悶するヒュウガはサヤを人質に取り、 リョウマ達にショットガンを発砲。
 「俺はアースを捨てる!」
 ヒュウガはギンガマンを抜け、樽爺とオヤジギャグブラザーズを結成する事を宣言。折悪しくマグネット魔人部隊が子供狩りを再開し、 ヒュウガの事情を聞き出すか、子供達の救出に向かうのか、苦しい選択を迫られる5人。 リョウマはハヤテ達4人に救出活動を任せて兄と対峙しようとするが、球際で存在感をアピールせずにはいられない崖っぷちのメンバーが一人居た。
 「私、残る!」
 「サヤ! バルバンが子供達を襲ってるんだ!」
 「だってヒュウガがアースを捨てちゃう!」
 「行くんだサヤ! お前は戦士だろう!」
 〔ヒュウガがアースを捨てる → ギンガの森に住めなくなる → 全ドリーム崩壊〕という 乙女の一大事に必死に食らい付こうとデュエルを挑むサヤだが、 おまえの好感度では《説得》は不可能だと、バッサリ股抜き。
 兄の事になると目の色が変わるリョウマに無惨に切って捨てられましたが、 あくまで「英雄の大義」を第一とするギンガマンとしての一線を守りつつ、ここでサヤの感情を拾ってくれたのは良かったです。
 涙をにじませながらも戦士としての使命を選んだサヤは覚悟を決めて走り出し、残ったリョウマはヒュウガと激突。両者の闘いを煽り、 面白い見世物と称する樽爺がここに来て大変いやらしいのですが、「ゼイハブの敵」には回ったものの、 ゼイハブを倒した後に考えているのは「バルバン乗っ取り」であり、牛を「人質」にヒュウガを「道具」にと、 敵の敵は味方に見えてしまないように、意識して邪悪さを強調しているのかと思います。
 ハヤテ達は遊園地の子供狩りの阻止に成功し、ギンガピンクは乙女の怒りを連続攻撃としてマグネット魔人に叩き込む。
 一方、「もし戦わなきゃいけないなら、俺も容赦はしない」という宣言通り、ヒュウガとの死闘に身を投じるリョウマは、 闘いの中で兄からの無言のメッセージを感じ取る。
 「俺も言った筈だ!」
 (やっぱり……やっぱり何かあるんだ。兄さんが、アースを捨てる理由が!)
 ショットガンを受けて倒れながら、リョウマもまた、一つの覚悟を決める。
 (兄さんが、そこまでやるというなら、俺も、俺もそれに賭ける!)
 射撃の爆風に隠れてて引き下がる事を選び、絶叫しながらハヤテ達の元へと駆けるリョウマの胸に去来するのは、兄との誓い。
 ――どんな事があっても、必ずバルバンを倒そう。この星の全てを守る為に。
 そして樽爺に自らの本気を証明したヒュウガは、禁断の薬湯を一気に喉へと流し込む。
 ……それに……いつかギンガの森へ帰る為にな。
 今作初期から繰り返されてきた「ギンガの森への帰還」という、極めて素朴な故郷への想いは、 ギンガマンが常に戦いの決着した“その先”を見据えている、という点で、 恐ろしいほど使命感の強い3000年戦士でありながら同時に前向き、というギンガマンの特性を支える要素になっていたのですが、 ここでそれを天秤の上に乗せる事で、ヒュウガの選択の重さに大きな説得力を持たせたのは、物語の積み重ねが綺麗に活きました。
 ヒュウガは引き返せぬ道を選び、リョウマはその決断を背に銀河転生し、両者の悲壮な覚悟と深い繋がりが、大変格好良いシーンに。
 仲間の窮地に駆けつけたギンガレッドは、やり場の無い慟哭を剣技に乗せてマグネット魔人を切り刻み、トドメはギンガの閃光。 巨大マグネット魔人に剣を奪われて恒例のピンチに陥るギンガイオーだが、「鉄壁の守備力を誇る」ライノスが連続パンチで圧倒し、 いつの間にか拾っていた剣で大獣王斬りするのであった。
 「俺は兄さんを信じる。きっと、兄さんは戻ってくる! だから、俺たちは、俺たちで闘い続けよう。バルバンを倒す為に!」
 ヒュウガ再び脱退、という衝撃の苦難にも、リョウマを筆頭として結束を確認する5人。
 「黒騎士……頼りにしとるぞ」
 一方、予想の斜め上を行くニューコンビが登場し、ゼイハブに対する復讐の牙を研ぎ澄ませようとしていた。
 もはやアースの炎を灯す事ができないヒュウガの手と、兄を信じて灯火を燃やすリョウマの手が対比され、果たして、兄弟が再び、 手を握り合う日は来るのか……?! そして、樽爺の知る、ゼイハブを倒す方法とは……?!
 ――今、伝説は終章に向けて加速する!!
 ……
 …………
 ……た、た、た、樽爺ーーー?!
 という事で、あまりの樽爺フィーバーに戦慄しています(笑)
 前々回の予告を見た時点では、どうせちょっと引っかき回して、せいぜい前後編でリタイアするんですよね、 ぐらいに構えていたのですが、まさかこんなキラーバスを放り込んでくるとは。
 そして、裏庭で油田が見つかったかのような勢いで急上昇する、ゴウタウラスのヒロイン力。
 ヒュウガがまたも「復讐」の道具にされてしまう、という運命が実に残酷なのですが、かつて
「ここであの子を見捨てれば……どう戦おうと、それは、バルバンと同じだ!」
 と、復讐そのものではなく、復讐の結果、復讐の対象と同じ悪になってしまう事を否定した今作において、 今度はバルバンという悪の中から復讐者が誕生する、という形で再び持ち込まれた「復讐」という要素が、どんな着地を見るかは注目です。
 そしてこれは、己の欲望の為に他者を切り捨ててきた船長にとっては因果応報といえるのですが、サンバッシュのギンガの光、 ブドーの最期に見るように、その萌芽は前半時点から物語の中に織り込まれており、構造上の仕掛けが実に念入りで説得力を増しているのがお見事。
 気に掛かるのは、悪が悪ゆえに内側から崩壊するというテーゼを含みつつも、最終盤の展開如何ではMVPは樽爺、 になりかねない所ですが、その岩礁を巧く回避できるのか、ここからの舵取りも楽しみです。
 次回――ゴウタウラスにまで後れを取ったサヤの乙女心にスポットを当て……当て…………当たるの?

◆第三十九章「心のマッサージ」◆ (監督:辻野正人 脚本:きだつよし)
 バルバンでは、ダイタニクスの心臓マッサージをする事で血の巡りを良くし、ダイタニクス自らに復活のパワーをもたらそう、 という指圧の心親心押せば命の泉湧く作戦がスタート。ダイタニクスの心臓をマッサージする巨大な手を得る為に、 エキスを直接与えると死亡してしまう人間のマッサージ師に、その抑制薬を同時に打ち込む事で適切に巨大化しようと、 ガンキャノン魔人が出撃する。
 一方、離脱したヒュウガへの想いを胸に訓練に打ち込むサヤは足をひねってしまい、勇太少年の案内で、 柔道家でマッサージの得意な忍を紹介され、その治療を受ける事に。
 年上の女性である忍から張り切りすぎを指摘されるも頑なになるサヤだが、そんなタイミングでバルバンが出現。 一足遅れで現場へ到着したサヤが目にしたのは、ガンキャノン魔人によって弾丸を撃ち込まれた結果、 膨らみすぎた風船のような百貫デブと化してしまった男衆の姿であった!
 見た目はおふざけだが実質的な戦闘不能で割と大ピンチ、というギャグ回の恐怖に飲み込まれるギンガマンだが、魔人は弾切れで撤収。 唯一無事だったサヤは、抑制薬を手に入れる為に痛む足をかばいながらも魔人を捜索しようとし……どういうわけだか2回目 (アイドル身代わり回以来)の、“足を痛めたサヤが奮闘する”エピソード。
 つまるところ、“負傷をこらえて健気に努力を続ける”スポ根ものの系譜なのですが、特に今回は明確に、サヤのヒュウガへの思慕と、 ゲストキャラの柔道のコーチへの好意が重ねられていて、サヤとヒュウガの関係性が、少女漫画的な選手からコーチへの憧れとして解釈されており、 心身共に研ぎ済まれた“強い戦士”であるギンガマンの中で女性メンバーのヒロイン性をどう描くかを悩んだ末の着地点が、 スポ根系ヒロインであった、というのが見て取れます。
 後はそれがキャラクターとしての魅力に繋がっているのかという事になるのですが、個人的には、 痛みをこらえて頑張っています!的なシチュエーションと芝居があまり好きではなく(個人的なニュアンスとしては、 老人化したキャラクターの、普段できる事ができない!を戯画的に強調するような芝居が苦手、と通じるものなのですが)、 そういった方向性も、いまひとつサヤがピンとこない理由の一つかとは思えてみたり。
 マッサージ師として狙われた忍をかばったサヤは、調整に成功したエキス+抑制薬の作用により巨大化し、どうしても巨大フジ隊員 (『ウルトラマン』)を思い出してしまう所ですが、幸い勇太少年は悪い異星人にはさらわれませんでした。
 代わりにさらわれそうになる忍だが、それを妨害したのは、太っていてもギンガマン!
 「どんな状況でも戦うのが戦士だ!」
 百貫デブ状態の男衆4人はそれでもヤートットを蹴散らす戦いぶりを見せると魔人にはギンガ張り手を炸裂させ、基本ギャグ回で、 絵は酷いけど、凄く、ギンガマンです。
 逃げた忍は巨大サヤに昔の自分の話を聞かせ、肩肘張らずに自分らしく居る事の大切さを説いてその心をほぐすと、 駆けつけたギンガ猫に秘伝マッサージを伝授し、サヤは足の痛みから回復。
 「よくも私を大きくしてくれたわね」
 怒りに任せて怪人を握り潰そうとする巨大サヤは至近距離から抑制薬を喰らって元の大きさに戻ってしまうが、 落下した怪人が抑制薬を落とし、それを入手。男衆に弾丸を……といってもどうやって撃つのかと思ったらモークバズーカを持ち出し、 超久々に役に立った!
 これは納得の解決でした。
 デブ状態から回復し、ようやくギャグの世界から帰還したギンガマンはギンガの閃光を直撃させ、魔人は巨大化。
 「こうなったら俺がこの手で、ダイタニクスの心臓をマッサージしてやるぜー」
 こちらのツッコミより早く、率先してこの行動を取りに行く辺りが、バットバス軍団の魔人、優秀(笑)
 その前に立ちふさがり、合体したギンガイオーは腹バルカンを喰らってあっさりと増援を要請し、 「優れた反射神経を誇る」フェニックスが出撃するとブーメランでバルカン全てを弾き落として弾切れさせ、大獣王斬りでフィニッシュ。
 「心をほぐして、常に自分らしく……か」
 「それが戦いに勝つ秘訣。どんな戦いでもね」
 忍は意中のコーチと結婚にこぎつけた写真を見せてサヤに恋のアドバイスを送り、蚊帳の外の男衆、そしてコーチ、じゃなかったヒュウガは、 新たな相棒である樽爺の指導の下、ゼイハブを倒す為の武器、ナイトアックスを完成させていた! でつづく。
 ……つまりヒュウガと樽爺コーチとの友好度が急上昇していき、終わってみたら、 サヤよりもヒュウガのヒロイン度が上がった!(待て)
 第4クール突入前のインターミッション的エピソードで、後に『仮面ライダー響鬼』(前半)と『仮面ライダーウィザード』でメインライターを務め、 多くのヒーローショーで脚本・演出を務めるきだつよしが、初参戦。
 昭和ヒーローものに愛着が深いらしいきださんですが、年上の女性からサヤの心を解きほぐそうとする、 というのは面白いアプローチでした。サヤに必要だったのは、ヒュウガが近くに居る内に鈴子先生との友好度を上げておく事だったのだな、 と惜しまれます。……まあ鈴子先生は鈴子先生で女神属性なので、アドバイザーとしてはあまり役に立たないかもしれませんが!
 次回――今度はパチプロ(違う)登場。

◆第四十章「哀しみの魔人」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 心臓マッサージ作戦も失敗に終わったビズネラは、地球に近づく彗星のエネルギーを捉え、それをダイタニクスに注ぎ込むという作戦を立案。 だがそれを実行するには、今度こそ配下の魔人を巨大化させ、捨て駒にしなくてはならない。
 前回の作戦失敗を受けより強硬的な手段に出たというよりも、悪いタイミングでアイデアがかぶった感はありますが、 バットバスは一人の魔人を、死ぬぐらいしか役に立たない存在と、この作戦に起用する。
 「なるほど。あいつなら捨てても惜しくは無い」
 「なんであろうと惜しくはねぇよ。ダイタニクスの為ならな」
 それに対する船長のコメントが、これまでの行動全てを明確な意志で貫いて、凶悪。
 ビズネラにより、恐らくアース吸収装置と同系統のテクノロジーと思われる、 彗星エネルギー吸収装置を取り付けられた魔人デギウスは己が捨て駒である事を悟っており、死ぬ前の最後の花道として、 意図的に暴れ回る事でギンガマンと対決。しかしイエローと一緒に海に落下し、二人はガスの噴出する洞穴の中へ落下してしまう。
 「俺がおまえの足になる代わりに、おめぇは俺の目になれ」
 デギウスが戦力外として扱われているのは、過去の負傷により視力が極端に低下している為だと明かされ、 協力して洞穴から脱出に成功すると、魔人はヒカルを、最後の闘いの相手として指名。
 「いい目だな、坊や……俺も昔、そんな目をして、星を守っていたんだ」
 「え?」
 「んー……すげぇ昔だ。だがな、戦うたびに、大事なもんがなくなっちまうんだ。親や、兄弟や、ふるさとなんかがな。 坊やもそうじゃねぇのか? なんだか疲れて馬鹿馬鹿しくなっちまってな。気がついたら、バルバンに入ってたってわけだ」
 怪人との交流エピソードの亜流として、使命を捨てた者と使命を背負って成長していく者との対比を、 去りゆく老兵とギンガマン最年少ヒカルの対決と理解という形で描いているのですが、暗黒面に堕ちたギンガマンともいえる魔人に対し、 ヒカルが「戦士の心」を見るというのがピンと来ず、もうひとつノれませんでした。
 勿論、罪を償う道と可能性というのは100%断絶されるべきないとはいえますが、魔人自らも「殺しすぎている」というように、 結局はバルバンの悪という自由を謳歌する道を選んだ魔人にヒカルが救済を提示する割に、最終的に魔人はビズネラに利用され、 なんら爪痕も残せないままダイタニクス復活の道具として使い捨てられる無惨な最期を遂げる、という展開も分裂気味。
 ヒカルの善性としての若い青臭さと、それはそれとして見つめなければならない現実、をぶつけたのかもしれませんが、 一つのエピソードとしては、消化不良という感触が強かったです。
 まあ、ヒカルの言葉に心を揺り動かされた魔人が実は最後の抵抗をしていて、ダイタニクス復活かと思いきや彗星エネルギーが不完全だった…… という可能性も次回、なくはないですが、さて。
 「結局俺は……星を裏切り続けちまったな……」
 巨大デギウスのハンマー攻撃に近付けず、「鋼の腕力を誇る」ギガライノスが押さえ込んでいる間に装置を破壊しようとするも失敗、 デギウスの体を通して彗星エネルギーはダイタニクスに注ぎ込まれ、デギウスは大爆死。
 「デギウスみたいな奴は、ひとりで十分だ。……バルバンは絶対に倒す!」
 ヒカルの中で、とはいえ、デギウスがバルバンの被害者扱いなのもスッキリしませんし(これまで描かれてきたバルバンの悪は、 誘惑する悪、というわけでもないので)、色々なピースがここまでの『ギンガマン』の物語の積み重ねともう一つしっくり来ないまま、 夕陽が沈む海を見つめる5人、でつづく。
 次回――魔獣ダイタニクスは本当に復活したのか?! 樽爺コーチと二人三脚でひたすら斧スキルを上げまくるヒュウガは全国大会に間に合うのか?!  そして、再びの直接対決!!
 「ギンガレッド、てめぇの弱さを教えてやるぜぇ」
 今、伝説のインターハイに、暗雲が立ちこめる!

◆第四十一章「魔獣の復活」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 前回ラスト、阪神商人の思惑通りに彗星のエネルギーを注入された事により、蠢動するダイタニクス。
 「こうしちゃいられねぇ。封印の解け具合、調べてくるぜ。ふふふはははは!」
 「調べる必要などあるものか! ――ダイタニクスは、復活する!」
 操舵輪の感触を確かめながら、力強く断言するシェリンダが、違いのわかるこだわりを見せて格好いい。
 「ああ。そしてこの星も、終わりだ」
 渦巻く暴風、轟く雷雲……ダイタニクスの覚醒は地球環境にすら影響を与え、その目覚めをハッキリと確認するモーク。
 「魔獣ダイタニクスが、復活する」
 「えっ?!」
 「戦いが始まる。最も、厳しい戦いが」
 そしてまた、樽爺も謎の呪具によりダイタニクス復活を察知する一方、ヒュウガは焚き火に当たりながら呑気に休憩中。
 「どうかしたかじゃと?! ……そうか、アースをなくしたせいで星の危機を感じ取れんのか」
 からヒュウガの選んだ状況の重さを改めて示してくるのが、渋い。
 バルバンではダイタニクスの表面を覆っていた石の部分が剥がれ落ちてその下の本体が少しずつ顔を見せ、 一気に覚醒するのではなく徐々に解放されていく様子と、それに対する各勢力のリアクションを積み重ねていく、という作劇が実に重厚。
 3クールを引っ張り続けてきた存在にふさわしい大仕掛けの見せ方となっています。
 「ダイタニクスが復活すりゃあこっちのもんだ。また昔みてぇに、好きなだけ壊して殺して、奪いまくれるぜ」
 てっきりラスト直前まで引っ張るのかと思っていたので、このタイミングでのダイタニクス復活は予想外でしたが、 視聴者に驚きを与えつつ、敢えてここまでのフォーマットを終了させて最終クールに飛び込む、という判断がどんな物語を生むのか、 楽しみです。
 いよいよ強くなるダイタニクスの気配をモークが感知し、ギンガマンは水際での上陸阻止の為に出撃し、状況はすっかり、 『ゴ○ラvsギンガマン』。
 「みんな……気をつけて。必ず、ここへ戻ってくるんだ。いいね」
 「大丈夫。俺たちは勝つよ。絶対に!」
 「ああ。信じてるよ」
 いつになく5人を気遣うモークの姿も緊迫感を高め、吹きすさぶ嵐の中を走るギンガマンは、5人の元へ向かっていた勇太くんから、 白いハンカチを受け取る。
 「これ、みんなのお守りの代わり。運動会で一等だった時も、テストで100点だった時も、このハンカチ、持ってたんだ。だから、 だからちょっとは効果あるかも」
 「……勇太、ありがとう!」
 勇太くんはハンカチをリョウマの手首に巻き付け、まだまだヒロインレースで引き下がる気はない!
 「みんな、負けないよね、絶対」
 「……ああ」
 「勝つに決まってるだろ」
 「私たち、今までだってずっと勝ってきたじゃない」
 「でも、今度は……今までとは違う気がする」
 「そんな事ない。今までと同じだ!」
 「俺たちは帰ってくる。必ずな」
 「どんなに強い敵でも、俺たちは負けない。星や、勇太達みんなを、守るために! 約束するよ」
 5人それぞれと言葉をかわし、その背を見送る勇太くんの姿がギンガマンの決意を劇的に彩り、故郷を失った5人にとって、 森の外に「約束」する相手の存在がある事が、戦士としてのギンガマンの裾野を広げた上で終盤戦にしっかり機能しているのが巧妙。 「宿命」と「世界」を結ぶ連結装置としての勇太少年は、とにかく縦横無尽の大活躍です。
 「可哀想に、切羽詰まった顔しやがって。こっちは盛り上がる一方でな。一つ派手に暴れさせてもらうぜ。ヤートット!」
 海岸ではバットバスが待ち受けており、銀河転生した5人はヤートットを切り払うと、星獣剣を砂浜に突き立てる。
 「銀河を貫く伝説の刃! 星獣戦隊!」
 「「「「「ギンガマン!」」」」」
 おのおの星獣剣を前に置いての変則名乗りから揃い踏みは、ギンガマンの決意の姿として痺れる格好良さ。

ギンガマン――それは、勇気ある銀河戦士の称号である。

 5人は星獣剣を手に取るやギンガの光を発動して海賊兵を蹴散らすが、そこに姿を見せる、阪神商人。
 「ギンガマン。もうバルバンの皆さんに逆らっても無駄ですよ。さっさと諦めることです」
 バルバン、殺す(船長)・捻り殺す(バットバス)・轢き殺す(シェリンダ)、みたいなメンバー構成の中で、 嫌味たっぷりな台詞回しのビズネラは非常が良いアクセントで、名優・塩沢兼人の味も光ります。
 ギンガマンはバットバスのチャージアックスに吹き飛ばされ、そして――
 「ダイタニクスの復活だ!」
 3000年ぶりに目を覚ましたダイタニクスが、遂に上陸。
 「残念だったなギンガマン。野郎ども! この星には世話んなった。ダイタニクスに食わせる前に、たっぷり礼をしなきゃならねぇ。 戻ってこい」
 巨獣ダイタニクスを止めるべく、東宝特撮メカならぬ星獣たちが出撃し、バンクフル使用で並ぶ3大ロボ。だが、 ライノスとフェニックスは尻尾の一撃で敢えなく倒れ、ギンガイオーも初手から必殺剣を口でくわえて受け止められ、 満を持して発揮されるシェリンダの凄腕パイロットぶりに手も足も出ない。
 ダイタニクスに地球を滅ぼされても困るが、かといってゼイハブを倒すには斧スキルが足りない…… とこの戦いを見つめるオヤジギャグリベンジャーズ。ともかく復讐の可能性を僅かでも残すべき、 と決断した樽爺がタウラスによる援護を許可しようとするが、一足早く砲弾が二人の足下に突き刺さる。
 「先生、まーさか生きているとは思わなかったぜ」
 貫禄たっぷりに二人を追い詰める船長に対し、復讐を宣言する樽爺は「儂は知っとるぞ。おまえを倒す方法を」と指を突きつけ、 振り下ろされた黒騎士のナイトアックスを目にした船長は、黒騎士がアースを捨てた事を見抜く。
 「どうやら今の内に殺しとかなきゃいけねぇようだな」
 重厚な鎧姿に大ぶりなポールウェポンがよく似合って格好いい黒騎士@ナイトアックスだが、 樽爺の指摘通りにヒュウガの斧スキルは未だゼイハブに届くには至らず……ここに来て、 なまじ生まれつき伝説の武器が準備されているが故に、剣スキルしか鍛えてこなかった事が裏目に出る羽目に!
 というか、対ラスボス用の特殊武器がカテゴリ:斧とか、そんな伝説は後世の子供にウケが悪そうなので書き直しを要求する、 と内心思っても口には出せない真面目なヒュウガ兄さんであった!
 「この程度じゃ俺は殺せねぇぜ」
 樽爺の危惧した通り、逆に船長に追い詰められてしまう黒騎士だが、そこへこの戦いをギンガイオーから目にしたギンガレッドが乱入。 黒騎士の斧が傷つけた箇所に星獣剣を突き刺すも払いのけられ、黒騎士も海賊ビームで吹き飛ばされてしまう。 咄嗟にナイトアックスに手を伸ばした赤だが、それはアースを持つ者には触れる事のできない材質(?)で出来ており、 逆にダメージを受けてしまう事に。
 「ギンガレッド、伝説の剣の切れ味、自分でためしてみるか」
 余裕たっぷりの船長は、自らの体に突き刺さったままだった星獣剣を引き抜く、という印象的な映像から、 その刃でギンガレッドの土手っ腹を刺し貫く!
 「ふん、馬鹿が」
 ギンガレッドは変身が解けながら仰のけに倒れ込み、その手首からほどける、勇太のハンカチ。 致命的な攻撃を受けて苦痛に呻くリョウマの目に入ったのは、ハンカチに書かれた
 ぜったい勝てますように
 という勇太の祈り。
 虫の息のリョウマは必死に手を伸ばしてハンカチを掴むも意識を失い、勇太くん、ヒロイン力が強すぎて、 主人公を瀕死に追い込む。
 「あばよ、ギンガレッド」
 凡百の悪党ならここで仕留めたと思い込んで満足して帰ってしまう所ですが、宇宙海賊バルバンの頭領は、 樽爺の時と同じ過ちを犯しはしない!(樽爺の時でさえ錘付けて東京湾に沈めていたので、どちらかという、樽爺が凄い)
 完全に意識を失い、ピクリともしないリョウマへ向けて振り下ろされようとする星獣剣……このまま、 日曜朝のお茶の間に主人公串刺し絶命シーンをお届けしてしまうのか?! で、つづく。
 背後で色々あったらしく今作屈指の残念回だったギガ説得成功の第30話以来となった長石監督でしたが、 大きな山場をしっかりと劇的に見せてくれました。あと、長石監督(なのか、コンビを組む事が多いカメラのいのくまさんなのか) は演出陣の中で一番、ちょっとしたシーンでもサヤを可愛く撮ってあげようという意識が見える気がします(笑)
 なお今回からアイキャッチイラストが、黒騎士入りのAパートと、ロボット大集合のBパート、それぞれ新作に。
 次回、生と死の狭間で、銀河戦士は再び立ち上がる事が出来るのか。今――誰のヒロイン力が一番高いのか、伝説が問う!

◆第四十二章「戦慄の魔獣」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 あわや惨殺寸前のリョウマは樽爺を振り切った黒騎士に助けられ、樽爺のマジックアイテムで逃亡する3人だが、 背後ではギガライノスとギガフェニックスが腕を食いちぎられ、ギンガイオーも合体解除。
 「ギンガグリーン、あたしのダイタニクスで死ぬがいい」
 愛車の勝利=私の勝利と、因縁ごと緑を踏み潰そうとするシェリンダはアクセルをベタ踏みするが、 寝起きに激しく運動しすぎたせいか、ダイタニクスの体温が急上昇。戻ってきた船長の命令により急遽Uターンし、 海へダイブして体温を冷やす事になる。
 「まったくよ。3000年ぶりだってのに、誰かが無茶しやがるからよ! 少しはダイタニクスの事も考えろ」
 「落ち着いたら出撃する」
 シェリンダ、完全に、ハンドルを握ると前しか見えない暴走ドライバー状態(笑)
 「おまえなぁ」
 呆れるバットバスと口論になりかけるが、割って入った船長は、何故かようやく甦ったダイタニクスの背中に繋がっていたバルバン居城の切り離しを指示。 ダイタニクスの様子を見て思いついた何かを、腹心たる二人に耳打ちするのだった。
 「俺たちゃもっと強くなる」
 一方、緊急脱出に成功したヒュウガは瀕死のリョウマを手当しようとするが樽爺にせっつかれ、 復讐の為にのみ行動する樽爺の悪辣さを改めて強調すると共に、弟への愛情と星を守る使命、という私の情と公の大義の間で選択を迫られるヒュウガ、 というのは別行動ヒュウガの存在が物語の奥行きを深めて良かったです。
 「リョウマ……俺はゼイハブを倒すために、アースを捨てた。失敗しても、後にはおまえ達が居ると思ったからこそ、 出来た賭けなんだ。……リョウマ」
 「黒騎士、何をしておる。早く来い!」
 「……リョウマ……生きろ。……もう一度立つんだ! ……リョウマ…………いいな」
 タウラスという人質ヒロインの存在もあり、立ち去らざるを得なかったヒュウガは迫真の芝居でリョウマに魂のエールを残すと、 樽爺の目を盗んで星獣剣でこっそりとモークへのサインを送り、らしい頭脳プレー。
 ドングリが既にハヤテ達の元へ送り込まれていた為、危険を顧みずリョウマの元へと向かった勇太がモークに教わりながら傷の手当てを行い、 これまで様々な形で戦いの場に居合わせた勇太くんに、傷を負った仲間を“助けさせる”という役割を与えたのは、 バランス感覚として非常に良かったです。
 ドングリの持ってきた薬で回復したギンガマンはダイタニクスの発熱に気付き、ヒュウガも樽爺から、 腐りかけた事がある背中にダイタニクスの弱点があるに違いない、と聞かされる。バルバンでは海賊城が切り離されて着水し、 制御を離れたダイタニクスは再び陸地へ。
 ギンガマンはリョウマ復活を信じて4体の星獣を呼び、上陸して大破壊を繰り広げるダイタニクスと、久方ぶりの大怪獣バトル。 樽爺は時間制限付きでタウラスを解放してヒュウガは騎士転生し、一時期ほぼいらない子になっていたブルタウラスが、 4星獣の窮地に現れてまさかこんなヒロイックな存在になるとは(笑)
 ダイタニクスの背中目がけてナイトアックスを振り下ろすブルタウラスを、ゴリラとファルコンが援護するという死闘が繰り広げられている頃、 瀕死のリョウマが生死の境で思い出したのは――勇太との誓い。
 「どんなに強い敵でも、俺たちは負けない。星や、勇太達みんなを、守るために! 約束するよ」
 ギンガマン、愛とか勇気とか希望で力を得るというより――むしろ我々こそが愛とか勇気とか希望だ! というヒーロー力が物凄い。
 そして、勇太くん以外にも青山父や鈴子先生をはじめ、「森の外」における人々との繋がりをしっかり積み重ねてきているので、 銀河戦士が銀河戦士だけの世界で完結する事がなく、前回−今回における勇太くんが積み重ねてきた繋がりの「代表」であり 「象徴」として機能しています。
 なればこそ人々の祈りがある限り、ギンガマンは何度でも蘇り――死の象徴として哄笑するゼイハブの幻影を払いのけ、 リョウマは目を開く。
 「リョウマ……リョウマ!」
 「……勇太」
 「……リョウマ」
 「……約束だったな。……負けないって」
 リョウマと勇太はがっちりと抱擁をかわし、勇太くんの凄まじいヒロイン力よ!!
 今年見た特撮作品では、メレ様(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)がぶっちぎりでヒロインレースを優勝するかと思っていたのですが、 最終コーナーを回って勇太くんが物凄い勢いで追い上げて参りました(笑)
 またここで、勇太くんの献身だけで復活すると「奇跡」の匂いが強くなりすぎるところを、 ヒュウガと二段構えにする事で「戦士の誓い」と「守りたい存在との約束」という二つの支えで立ち上がるというのが良く出来ています。
 勇太くんに負けじとヒロイン力を発揮したゴウタウラスがゴウタウラスなのでやはりピンチに陥っていたその時、 ダイタニクスの背中に吹き付けられる渦巻く炎。甦ったギンガレッドが銀河ライオンと共に参戦し、大転生。 シーズン的にクリスマスだったのか、前回−今回とバイタス含めて出撃シーンのフル使用でライノスとフェニックスも戦線復帰し、 機械の体、ベンリ。
 史上最大の魔獣に挑む4大ロボは、先陣を切ったタウラスがナイトアックスで尻尾を切断すると柳生アックスクラッシュを炸裂させ、 ライノス&フェニックスが星獣拳ギガビーストスピンで追撃。
 「バルバン、許さん!」
 そしてリョウマの雄叫びがギンガイオーの眠れる力を呼び覚まし、放たれた銀河獣王無尽斬りにより、 ダイタニクスは木っ葉微塵に消し飛ぶのであった!
 喜びを分かち合う間もなく樽爺の魔術によりタウラスは再び閉じ込められ、オヤジギャグリベンジャーズは復讐の斧スキル上げの旅を再開。 ギンガマンは基地へ帰還し、モーク・勇太・ボックと5人は勝利を噛みしめる。だが……
 「ダイタニクスが、死んだか。……ふふふふふふふ」
 3000年ぶりの復活から今日まで、こだわり続けてきたダイタニクスの死を、 なぜか喜びを持って受け止めたバルバン上層部は高笑いを重ねるのであった……で、つづく。
 予想外に早い復活で物語の流れに大きなアクセントを加えてきたと思ったら、新展開への布石としてダイタニクスあっさり退場、 と畳みかけてきましたが、これを受けての最終章に、ただただ期待です。
 復活前後編で散ったダイタニクスも、ここまで圧倒的だったギガシリーズを蹂躙する事で脅威を見せ、 ギンガマンを壊滅寸前に追い込む大活躍。破壊規模といい爆発といい、3クールを引っ張った大物として納得できる存在感を示してくれました。 復讐を第一とする樽爺が、放っておくと地球が滅びるので一時的にタウラスを解放、というのも十分な説得力がありましたし、 最終章への布石に要点を置きつつも、ダイタニクスが虚仮威しに終わる事がなかったのは良かったです。
 次回――青山父のイラスト(格好いい)で戦いを振り返る総集編。

→〔その8へ続く〕

(2020年4月14日)

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