■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ6■


“ギガライノス! ガガー!
ギガフェニックス! ギギー!
ギガバイタス! グォーグォー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・  〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕

◆第三十一章「呪いの石」◆ (監督:小中肇 脚本:小林靖子)
 「今日からダイタニクス復活が1日遅れるごとに、褒美の金貨も1枚ずつ減らす。ただ働きにならねぇようにしな」
 船長、割と細かい単位設定(笑)
 「すぐに復活させますわ! ええ、今日にでも」
 ストイックに自らの任務を果たそうとしていたブドーとの差別化もあり、すっかり俗っぽい守銭奴路線となったイリエスは、 初参加の小中監督の演出によりそこはかとなくコミカルな色もついてきて、これが、樽爺の血統か……!
 その頃、ハヤテと勇太は買い出しで街を歩いており、リョウマだけではなくハヤテからも戦士の心得を学ぼうとする勇太。
 「戦士か……そうだな……まず学校できちんと勉強して、先生の言う事を聞いて、元気に遊ぶ」
 コメントでいただいた輝剣さんの見立てに成る程と思ったのですが、ハヤテはすっかり、ヒュウガ復活の余波により、 責任感の強い皆のお兄さんから、口うるさい第二の母(第一の母は包容力の塊であるゴウキ)へとポジションがスライド(笑)  生真面目に少しズレている、という要素も含みつつ、勇太君には不評ながら、その歳でないと出来ない事の大切さを説いているのは、 地味に良いところ。
 「ハヤテって、慌てないよね。冷静っていうか(……そうだ、ハヤテから教わるとしたら、戦士の冷静さかも。うん、 挑戦してみる価値はあるよ、絶対)」
 暴走トラックから赤ん坊を救いながら平然と買い出しに戻るハヤテの姿に、常在戦場の心意気もとい沈着冷静な平常心の強さを見た勇太少年は、 女性関係に残念なマッチョとか、スネ出しの猿顔よりも、やっぱり婚約者の居る二枚目だよね!  とハヤテのイケメンムーヴを真似してみるが、どうにも空回り。
 「真似してみればなんとなく掴めると思ったんだけど」
 「駄目駄目。ハヤテのあれは性格なんだよ、性格。真似できるようなもんじゃないって」
 ヒカル、ハヤテみたいのが増えると大変面倒くさいと思っているのか、必要以上に否定的(笑)
 ギンガマンそれぞれに憧れとして接する勇太少年の微笑ましい一幕だが、 占い師に扮して333人分の身代わり手形を集めていた魔神ガーラガーラが儀式を始めた事で、事態は急変。 ダイタニクスにかけられた封印を、333人の体に分散して転化するという恐るべき呪術により、 買い出しの際にそうとは知らず占いに立ち寄っていたハヤテと勇太の右手が石化してしまう!
 これまで、基本的に儀式の準備中あるいは発動間もなくギンガマンに妨害されてしまう為、 実際に効果があるか怪しげだったイリエス魔人族の儀式魔術ですが、苦労して333人を占いしただけあって、本当に効果が!!
 この後で見せる戦闘力も含めて、ガーラガーラ(インド系の神話風デザイン)は、ここまで屈指の強力魔人。
 自分と勇太が石化した事から占いの館を訪れるハヤテだが、既にそこはもぬけの殻。 モークセンサーが町外れの石切場から妙な風の流れを感知し、右手に続いて左足も石化してしまったハヤテと勇太を残し、 ギンガマンは石切場へ。石化の恐怖に対してハヤテを見習って冷静さを心がけようとする勇太だが、ハヤテのあまりにドライな計算に、 つい声を荒げてしまう。
 「そういうの冷たいって言うんじゃないの?!」
 「……勇太」
 何か言いかけるハヤテだが、そこへ雪辱に燃えるシェリンダが格好いいBGMで登場。
 「ギンガグリーン、貴様のトドメは私が刺す!」
 「勇太、離れてろ……。銀河転生!」
 「その体では満足に戦えないだろう。だが手加減はしない。それが宇宙海賊の流儀だ!」
 船へのこだわりといい、実は凄く真面目に海賊をしようとしている貴重な人材な気がするシェリンダ (一方で剣士としての雪辱に燃える辺り、ゾンネット的な出自も思わせますが……)は、ギンガグリーンをぐりぐりと踏みつけにするが、 婚約者の居るハヤテに新しい扉を開けさせるわけにはいかない! と勇太くん、まさかのダイレクトアタック。

―― ギンガマン! それは、勇気ある、銀河戦士の称号である。

 思わず若本規夫のナレーションが脳内に響いてくる、勇太くん渾身の《チャージアタック》がシェリンダをよろめかせ、 《投石》《破壊工作》に続いて、笑ってしまうぐらい順調に戦士としての階梯を登っていく勇太ですが、この分だと最終決戦の頃には、 ロボットの一つや二つ、操縦していそうです。
 だがさすがにシェリンダは幹部クラス、すぐに体勢を立て直すと海賊光線を放ち、勇太をかばって直撃を受けた緑は変身解除。 しかしそれでも、決して諦めはしない。
 「大丈夫。残された時間はある。まだな」
 (あの時、ハヤテは1時間しかないって言ったんじゃないんだ。1時間もある、って言いたかったんだ。大丈夫だって。……そうだよ、 どんな時でも、チャンスとか、出来る事って、きっと残ってる。ハヤテはそれを信じてるんだ。だからいつも冷静でいられるんだ!)
 ハヤテが本当にクールでドライだったら、そもそもお小言マシンと化さないわけで、実は他人を慮る気持ちも強いが、 言い方に問題が多々あるというハヤテの短所が織り込まれつつ、その高すぎる戦士の覚悟を知って、 勇太少年のレベルがあがった!
 この分だと最終決戦の頃には、獣装光勇太くんぐらい誕生しそうです。
 とはいえ状況は依然不利のままだったが、追い詰められたハヤテは封印を逆手に取ったまさかの石化ガードでシェリンダの剣を弾き、 勇気ゲージがブースト中の勇太くんはそれを拾ってハヤテへとパス。しかし怒りのシェリンダの海賊光線を再び受けて瓦礫の下敷きになってしまい、 前線で活躍する一方で、相変わらずきちっとピンチになるのが、全方位に隙がありません。
 戦士と世間を繋ぐパイプ役の賑やかし子供キャラであり、時に戦場でサポートキャラもこなし、なによりもヒロイン属性持ちの上で、 積み重ねてきた丁寧な描写により好感度も高いという勇太少年、圧倒的強靱さ。
 全然作『カーレンジャー』における市太郎少年の、浦沢時空的毒気と比べると多分に理想化された存在なのですが、 比較検討してみても面白い材料であるかもしれません。
 「勇太!」
 激情を燃やしたハヤテが、身をかがめた低い姿勢を取りながら、その顔に前髪がかかるのが獣の怒りという感じで格好良く、 シェリンダの光線をものともしない突撃から、ばっさりと袈裟懸けにするもダブルノックアウト。
 一方、伸縮自在の腕によるガーラガーラの攻撃に苦戦していたギンガマンだが、土中潜行による反撃で儀式に必要な呪具の破壊に成功し、 封印の反転を解除。石化が解けて起き上がったハヤテは瓦礫を必死にどけ、勇太くんの靴だけが見つかる、というのが凶悪な演出で、 怒りから哀しみへ、ハヤテの感情を強く炙り出してきます。
 だが勇太は、咄嗟にベンチの下に隠れる事で下敷きを回避しており、戦士の冷静さを発揮したぞ、と少々自慢げに顔を出した勇太を、 泣きながら抱きしめるハヤテ。
 「…………ハヤテ、どうしたの?」
 「……良かった……良かった勇太!」
 「ハヤテ……ごめん」
 冷たいようで実は熱いハヤテの心情が、勇太との距離感の変化を伴って描かれ、勇太がかなりアグレッシブな事で、 ただのピンチ要員になっていないのが上手いところ。また、ただハヤテを掘り下げるのではなく、勇太の“気付き”の物語になっている、 というのが良く出来た構造です(同時に、勇太を愚者と描かない事で、トラブルメーカーにもしていない)。
 「ハヤテ、リョウマ達と、合流できるか? 敵は、かなり手強いんだ」
 そしてそこに声をかけてくる事で示される、本当に冷静なのはモーク(笑)
 ハヤテと勇太は倒れたままのシェリンダを捨て置いて石切場へと急ぎ、更なる屈辱にまみれる事になるシェリンダの叫びが、 因縁の布石として強い印象を生みます。
 「待て! ギンガグリーン! 戦え……! 戦え……戦え!」
 呪具を破壊するも引き続きガーラガーラに苦戦し、ヒュウガが絶体絶命のその時、間一髪間に合うギンガグリーン(これにより、 シェリンダをただ見逃したのではなく、時間をかけずに急いだ事でヒュウガを救えた、という構造になっているのが手堅い)。 怒濤の空中殺法から5人揃ったギンガの光で強敵を打ち破るが、「イリエス魔人族はしぶといのだぁ……!」で巨大化。
 超ギンガイオーも複雑怪奇な伸ばして縮めて!に苦戦し、ギンガマンは冒頭で滝の裏に隠れていると解説されたギガバイタスに増援を要請。 バイタスの空中戦艦モードから地上要塞モードへのトランスフォーム、そしてライノスとフェニックスの出撃シーンがフルで描かれ、 前回−前々回はシルエットだった5つのメカが発進・合体して巨大ロボになるのですが、もともと1体の星獣が、 5つメカに分解された上で、それぞれにジタバタする意志が宿っている――すなわち、魂が5分割されている――というのが図らずも、 財団Bの走狗もとい阪神商人の外道ぶりを引き上げています。
 自律型のライノスとフェニックスが駆けつけてギンガイオーを助け、最後はブーメラン、ブーストライフル、 大獣王斬りの3連続攻撃でフィニッシュ。不在のゴウタウラスはこれも冒頭で前回の戦いのダメージが示唆され、休養中の扱いに。
 次回――まさかのバイク。

◆第三十二章「友情の機動馬」◆ (監督:小中肇 脚本:武上純希)
 ヒュウガに負けじと女子高生をキャッチしたリョウマは、助けた少女・百合子の兄、バイク屋の一郎に誤解から殴り飛ばされるが、 それが縁で友達となる事に。
 「おまえも、バイクに乗るのか?」
 「いや、いつもは馬に乗ってる」
 は大変面白かったです(笑)
 一方、金蔵の鍵穴から金貨を覗き見してすっかり守銭奴キャラが板に付いてきたイリエスは、22人の恐怖を集めるべく蛇女妹を派遣し、 乗馬倶楽部に遊びに来た百合子が、蛇魔人のペンダントに囚われてしまう。
 「見損なったぜリョウマ! おまえギンガマンなんだろ……? ギンガマンなら、どうして百合子を守れなかったんだ?!」
 「一郎……」
 「おまえなんかに、百合子が助けられるもんか! 百合子は、俺が助け出してみせる!」
 妹を救おうと、バルバンを挑発した一郎は無謀にも蛇魔人に立ち向かった所をリョウマに救われ、 手から火を出すリョウマの姿を見て友情復活。フル名乗りを決めたギンガマンは蛇魔人からペンダントを奪い取る事には成功するが、 突然繰り出されたゴルゴンギア(蛇バイク)に敗れるギンガの閃光。
 予告でバイクを煽り、ゲストがバイク屋の割に、敵が物凄く足が速いわけでもバイクに絡んだ能力というわけでもなく、 どうやってバイクと繋げるのかと思ったら、特に理由は無いけど趣味はバイク乗りでした!
 これまで、発動すると基本的に標的を地獄送りだった超必殺技を破られたギンガマンは、 リョウマとの友情の為に蛇女にバイクで立ち向かう一郎の姿と、おっとり刀で駆けつけたヒュウガ兄さんを通した黒騎士の魂の助言により、 5人のギンガの光を結集。
 「生まれ変われ! ギンガの光!」
 ギンガの光は様々なものに身を隠す性質があると説明されていたので、その形を変える事が可能、というのは納得できる範囲なのですが、 う、生まれ変わらせて良かったの?!
 誕生したライオンバイクのデザインと、疾走感のあるバイクアクションそのものは割と格好良かったのですが、 思えばこの時期は《平成ライダー》以前の『仮面ライダー』空白期間なので、割と貴重なバイクアクションでもあったのでしょうか。
 かなり強引にライオンバイクありきのエピソードで、ギガシリーズ登場に不満を爆発させたという小林さんに代わって、 武上さんがとにかく割り切った1本を仕上げてくれた感が強いのですが、一つに戻したギンガの光を、 バイクという形で制御している所には、ギンガマンの成長が見て取れるとは言えるかもしれません。
 弾丸形態に変形して体当たりという必殺攻撃は馬鹿っぽくて好きです。 ……赤が個人使用する轢殺兵器がジャイアントローラー(『超力戦隊オーレンジャー』)を彷彿とさせつつ、 座席部分が前後から閉じて脱出不能になるこれは実質“走る棺桶”なのでは……という気もしますが、その後、 光がバイクから5人の獣装光に戻ったのは、心底ホッとしました(笑)
 蛇魔人は「イリエス魔人族はしぶといのよ」で巨大化し、その幻術に苦戦するギンガイオーは、ギガバイタスに増援を要請。
 ナレーション「ギガバイタスは、メルダメルダの幻覚魔術攻撃を打ち破るべく、驚異の集中力を誇る、ギガライノスを選んだ」
 と、メカ星獣にキャラ付けが与えられ、応援に駆けつけたギガライノスは、横からの体当たり一発で事態を解決。

 …………しゅ、集中力……?

 余談に逸れますが、現行『仮面ライダービルド』が時折見せる力強い大穴進行って、 特撮ヒーロー作品でままあるこの手のノリを、“特撮物らしい面白さ”として意図的に再現したいのではないか?  と感じる時がたまにあるのですが、今回のこれは1998年でも悪い例としても、 時代による洗練は洗練として受け入れないといけないところはあって、2018年に似たような勢いをそのまま再現しようとするのは、 無理があったのでないかという気がしてならず。
 そこで無理を通して道理を引っ込めたいと狙うならば、設計段階から無理を通す物語を作らなくてはならないのであろうと思うわけです (それをやろうとして狂気と正気の境目が中途半端になってしまったのが、多分『フォーゼ』)。
 つまり2010年代のドラマ性の中で70年代的な説得力をただ持ち込んでも噛み合うわけがなく、それを物語として成立させる為には、 むしろ緻密な設計と計算が必要なのではないか、と。……これもしかしたら、『キュウレンジャー』も同じ落とし穴にはまっていたのかもしれず、 児童向け作品という前提含めて、求められている洗練さの段階が上がりすぎてしまっている事に対する、 作り手の問題意識が絡んでいるのかなとは思うところです。
 こういう形で長文の感想を書いているとハッキリ感じる点として、90年代以前の作品と、00年代以降の作品は、 単純な尺の問題以上に1エピソードにおける情報量に明確な差があって(勿論、いつの世も例外や突然変異的作品はありますが)、 00年代の作品になると私の目から見ても、ちょっと情報量多すぎなのでは……と思うエピソードがあったりするのですが、 その辺りは恐らく、戦隊もライダーも30分枠の限界に到達しつつある中で、その舵取りに対して延々と行われてきた試行錯誤が、 一つの分水嶺に来ているのかもしれません(勿論、今後も(続いていけば)様々な揺り戻しはあるでしょうが)。
 (と考えてきた所で今更ながら、『エグゼイド』がどの辺りでバランスを取ろうと志向していたのか、が気になってきてみたり)
 誤解の無いように付け加えておくと、これは“昔は良かった”という話ではなくて、 時代時代で“面白さの種類がある”という事なのですが(その上でどこに自分のベストを見出すかもまた人それぞれで)、 そう考えると『ビルド』というのは、一つの作品の中で二つの面白さを取り込もうとする志向があったのかもとは思え、 しかし残念ながら、商業的な諸事情含めてその最適解としてのベストマッチを見つけられなかったのかな、と。
 なんか上手い事オチがついた気持ちになったところで話を戻して集中力の勝利! によりギンガマンは蛇魔人を降し、 人々も無事に解放。お礼にと渡された一郎作のクッキーは、リョウマすら拒否する味だった、でオチ。 百合子からの淡い好意をスタートにしつつ、一郎との友情で終わるのが、リョウマらしい(笑)
 カメラテストかOBか的な使われ方でしたが、一郎は一本気な青年を好演していて、いいゲストでした。
 次回――サヤ、《綺麗なお姉さん》スキルに挑戦、している間に阪神Vやねん!!

◆第三十三章「憧れのサヤ」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 日々減り続ける報酬に耐えきれなくなったイリエスにより、切り札として出撃するイリエスの弟・GR魔人。 その放つ<嘆きの仮面>を被せられた者は深い悲しみの感情に囚われてしまい、ギンガマンの男衆も次々と戦闘不能に陥ってしまう。 ひとり難を逃れたサヤはモークのアドバイスにより、悲しみを癒やす効果を持つトキワの森の木の実の入手に向かう……。
 サヤに憧れ、サヤに振り向いてもらう為に「格好いい」事にこだわる思春期炸裂な少年・恭平(11歳)が、
 「無茶する事はちっとも格好いい事じゃないんだよ」
 と諭され、出来る事でサヤを助けようと奮闘するのですが、バルバンに石を投げたり、ギンガマンの為に頑張ったり、 バルバンにダイレクトアタックしたり、というのはセミレギュラーの勇太少年が段階を踏んで見せてきた事なので、 今更ゲスト少年で似たような事をされても、劇的な盛り上がりがどうにも生まれず。
 これなら荒川脚本で、正道ラブコメエピソードに仕立ててくれた方が面白そうだった、というのが正直。
 「恭平、格好いいとこあるじゃない」
 「え?」
 「出来ないって正直に言うの、凄く勇気がいるもんね」
 「サヤ……」
 「無茶する恭平より、今の素直な恭平の方が好きだよ!」
 重度な戦士脳ではありますが、恋する乙女でもあるので、実は、わかってやっているのでは、サヤ(17歳)……。
 足を負傷したサヤに代わり、苦手な高い所を克服した恭平少年が木の実を手に入れ、嘆きの儀式の達成直前、 GR魔人に連続攻撃を浴びせるギンガピンク、そして、薬物の力で一時的にハイになり復帰する男衆。
 キャット空中連続攻撃からギンガの閃光で撃破するも、戦力増強で慢心したのか、戦いの連続による勤続披露か、 そろそろリフレッシュ休暇が欲しい超ギンガイオーは巨大化したGR魔人に普通に斬り合いで追い詰められ、ギガバイタスに応援要請。
 ナレーション「ギガバイタスは、魔人デスフィアスの圧倒的な剛力に対して、並外れた俊敏さを誇る、ギガフェニックスを選択した」
 ……パターン化するとそれはそれで、ちょっと面白くなってきました(笑)
 前回に比べると映像としてしっかりスピードを活かし、顔面ストレートで弱らせた所に大獣王斬りでフィニッシュし、 敢えなく木っ葉微塵になるGR魔人。性格は酷薄だが血族の繋がりは強いのか、弟の死を嘆き悲しむイリエスだが、その頃、 バットバスとビズネラが密かに船長とシェリンダを呼び、中途半端な部分的復活が繰り返された結果、 ダイタニクスの生肉の部分が腐り始めている事を指摘していた。この情報によりイリエスに取って代わろうとするバットバスだが、 船長はそれを拒否。
 「バットバス、てめぇは昔から俺の片腕だった」
 「んー、そうだ」
 「てめぇの出番は必ず来る。もう少し待ってろ」
 人を呪わば穴二つ、バルバン内部でまたも不穏な内部抗争の気配がちらつき出し、追い詰められたイリエスが見せる本気、 そして――勇太くん、遂に、星獣剣を手にする! と、期待と恐怖の渦巻く次回へつづく!
 ……エピソード自体は盛り上がれなかったのですが、予告のカット一つで色々と持って行かれました(笑)
 果たして勇太くんは、どこまで突き進んでしまうのか……?!

◆第三十四章「不死身のイリエス」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 前回、バットバスとビズネラからダイタニクスの異変についての情報を得た船長は、倍の報酬を餌にイリエス自らの出撃を促す。
 「わかりましたわ。命を賭けた最高の魔術の力、ご覧に入れましょう」
 「命を賭けた……か。…………期待してるぞ?」
 厭味たっぷりの言い回しで、シェリンダさんの演技もだいぶいい感じになって参りました。
 「私が死ぬと思ってるならお生憎よ。宇宙で最強の魔術を極めたこの私は、たとえ死んでも、何度でも復活できるわ。ほほほほほ」
 自信満々でイリエスが出陣した後、激しく鳴動するダイタニクスについて船長もシェリンダも樽爺に真実を隠し、 これまで腹心の知恵袋という扱いだった樽爺が(イリエスへ肩入れしすぎた為か)いつの間にやら爪弾きにされているのが恐ろしいのですが、 樽爺は樽爺で不審を抱き……とそれぞれの思惑が錯綜してバルバン側の物語も盛り上げてきます。
 街に繰り出したイリエスは呪いのトカゲの群れを街に放ち、9000人の血を集める事でダイタニクスを復活させようと儀式を始め、 現場に駆けつけたギンガマンは何故か変身が解けてしまう。
 「ようこそ、ギンガマン。我が生け贄の街に」
 以前にギンガブルーにばっさりやられたように、正面衝突では分が悪いかと思われたイリエスだが、 これまで散っていた部下の魔人達の力を取り込む事で、全身に魔人の仮面がついた邪帝イリエスへとパワーアップ。その猛攻の前に、 変身不能なギンガマンは一時撤退を余儀なくされてしまう。
 一方、ダイタニクスの腐食に気付いた樽爺は、それを教えに向かったブリッジで、船長とバットバスらの密談を耳にする。
 「イリエスはたとえ死んでもその魂を魔力の塊にして遺す。何度でも復活する為にな。だが、それだけ強力な魔力の塊なら、 ダイタニクスが腐る事ぐれぇは止められるってもんじゃねぇか?」
 イリエスが成功すればそれで良し、失敗しても魂を利用する、とどちらに転んでも利益になる手を打った船長は更に、 イリエスを切り捨てる事を明言。
 「しかしだ、イリエスのあの欲深さと小狡さは始末に終えねぇ。どっちにしろ奴はここまでだ。そうなりゃ今度はてめぇの出番よ、 バットバス」
 今回ラストで明確になりますが、裏切りに味を占めた者はまた裏切るに決まっているので、ブドーへの謀略を船長に把握された時点で 「始末に終えねぇ」と評されたイリエスの命運は決まっていたといえるのかもしれません。
 その頃、乗馬倶楽部で体勢を立て直し、状況を確認したギンガマンは、魔力の中心となる塔の存在を把握する。 イリエスの魔力の影響で銀河転生は不能、更に街は呪いのトカゲだらけだが、それでも、手をこまねいてただ見ているわけにはいかない。
 「たとえ誰が倒れても……残った者はそれに構わず広場を目指す」
 「行こう! 街の人達を救えるのは、俺たちだけだ。最後の一人になったとしても、その一人が、バルバンを倒す!」
 カット変わると、ギターをかきならすBGMで星獣剣を背に走るギンガマン、という格好いいシーンとなり、 少々『必殺!』や『大江戸捜査網』を想起させますが、小林さんの時代劇趣味を演出で反映したのでしょうか。
 イリエスが儀式を執り行う塔のある広場を目指して街へ突撃するギンガマンだが、その前に再生魔人軍団が立ちふさがり、 サヤ、ヒカル、ヒュウガが次々と脱落。
 「行くんだ! たとえ最後の一人になっても、その後ろで仲間が支えてる事を信じろ!」
 事前の宣言とは裏腹に、仲間を置いて先に進む事を思い切れないリョウマに対し、 足止めに残るのは「自己犠牲」ではなく、先へ行く者を「支える」為なのだと背中を押すヒュウガの、 前向きな変換がギンガマンの在り方ともシンクロしていて大変巧い。
 突撃するヒーロー、脱落していく仲間達、という、最近の最新作(『仮面ライダービルド』)でもあったド定番の展開の中で、 こういった台詞が作品の個性としてキラリと光ります。
 「俺たちは一緒だ。行けぇぇぇぇぇっ!」
 人々の血がダイタニクスに集まっていく中、仮面魔人に襲われてハヤテも脱落。残るリョウマとゴウキが広場に辿り着き、 ゴウキが雪男魔人を食い止めている間に塔へと迫るリョウマだが、その前にイリエス、そして、 星獣剣を構えた勇太くんが!
 「勇太、操られているのか……? それとも、偽物?!」
 予告で注目のワンカットは、イリエスのトラップであったという事になりましたが、 勇太くんなら星獣剣を握りしめて戦場に出てきかねない、というのが視聴者とリョウマで共通の認識になっているのが恐ろしい(笑)
 影の無い事から幻術と見破ったリョウマは偽勇太を思い切りよく火炎放射で焼き払い、邪帝イリエスと直接激突。 触手攻撃に苦戦するも、仲間の支えを背に反撃すると、塔の破壊に成功。これにより儀式は失敗し、復活魔人もトカゲも消滅、 仲間達が駆けつけてここからギンガマンのターン! と変身への流れをきっちり盛り上げてきます。
 「「「「「ギンガマン!!」」」」」」
 すかさず獣装光から黒の一撃により倒れるイリエスだったが、なんと即座に復活。ギンガの閃光にもしぶとく耐えきったイリエスは巨大化し、 ギンガイオーと戦線復帰したゴウタウラスが立ち向かうが、両ロボともすっかり、前座体質が染みついてしまっていた!(涙)
 二大ロボは邪帝イリエスの攻撃で倒れてバイタスに増援を要請し、こんな事なら、度重なる戦いで星獣の力が弱ってきている (そもそも、イレギュラーにメカ化した生ものですし)など理由を付けるエピソードを挟んでおければ、 それでも戦う星獣たちの意志の強さと、助っ人ロボに頼る説得力を上げられたのでは……と思ったのですが、 それだと毎度ギンガイオーで出撃するギンガマンが鬼畜になりかねないし、 ライノスとフェニックスを召喚して黙って観戦していた方がいいのでは……となってしまうので、どちらにせよ苦しいか。
 後付けかつ無責任な岡目八目の立場でもこれなので、商業的要請の消化というのはつくづく難しいな、と思う次第。
 敵は行動隊長という事で出し惜しみせずにライノスとフェニックスが揃って出撃し、集中力タックル! スピードキック!  からの連続必殺技で今度こそ砕け散るイリエス。ここにイリエス魔人族壊滅……! と思われたが、 宇宙で最強の魔術を極めたイリエスの魂は、宣言通りに魔力の塊として残っており、樽爺がこれを回収。
 姪っ子の命を船長達の思惑通りにはさせまい、と密かに復活の儀式を執り行う樽爺だったが……その老体に背後から曲刀が振り下ろされる!
 「せ……せんちょぉ?!」
 「先生、おれぁ大抵の事には目をつぶる。たとえてめぇとイリエスがブドーを陥れたってな。だが今度だけは別だ。先生、 長い付き合いだったが残念だぜ」
 この期に及んで「先生」扱いなのが大変凶悪ですが、船長からすると樽爺は「蘊蓄を披露できれば満足」 ゆえに御しやすいところがあったのが(報酬に対してイリエスほど強い興味を示していた記憶もない)、姪っ子可愛さに造反を辞さない、 という別の価値観が入ってくるならば邪魔になる、というのが姿勢として冷徹な一貫。
 こうなってみると、ブドーは樽爺に酷い事したよね……と思うところですが、ブドーにしろ、イリエスにしろ、樽爺にしろ、 船長にとってはいつ切り捨てても構わない手駒に過ぎなかった、というのはここに来て船長の存在感を押し上げてきます。
 サンバッシュのギンガの光問題に綻びの一端は見えましたが、ここまで部下に冷淡なトップが求心力を失う事で組織を瓦解させずにやってこれたのは、 船長が「欲」を操るのに長けた存在であった事が窺え、バルバンの悪というのは、欲望のままに他者をほしいままにする悪なのかな、と。
 だからこそ、「己の復讐」のみを求める黒騎士(オリジナル)はバルバンと同一の存在になりかけていたわけですが、 とすれば「欲望のままに他者をほしいままにする存在」のみならず、「他者を傷つける事をいとわない自らの欲望」とも戦える、 というのが『ギンガマン』のヒロイズムの一つであるのかもしれません。
 致命傷を負いながら、必死にイリエスの結晶に手を伸ばす樽爺だが、横から振り下ろされた斧により、目の前でそれは無惨に砕け散る。
 「諦めな爺さん。こいつはダイタニクスの為に使わせてもらうぜ」
 「……イリエス……イリエスぅ……!!」
 悲痛な叫びと共に樽爺はばたっと倒れ、樽が……樽なのに……思わぬ酷い最期を!!
 「バットバス、たった今からてめぇが行動隊長だ」
 「任せときな船長。ダイタニクスは必ず復活させてやるぜぇ! くははははははは!!」
 長石監督回まで保たなかったイリエスに続き、行動隊長とは別枠の扱いだった樽先生まで身内の手で最期を迎え、急展開で次回につづく!
 死に様といいタイミングといい、樽爺のリタイアはかなり驚きだったのですが、考えてみると樽爺が一番輝いていたのって、 横から余計な知識を投げ与えては安全圏から作戦には不満を漏らすというサンバッシュ編であり、 ブドー編の時点で既に存在価値がだいぶ薄れていたので、引っ張りすぎずにあっさり退場宣告を下す、 というのは英断だったかもしれません。
 まあ、余りにもあっさりすぎたので、バットバスが回収し損ねたイリエスの魔力結晶の一欠片と合体して、 七頭身イケメン策士・ヤング樽爺(CV:田中秀幸)となって10話ぐらい後に復活してくれてもOKです(笑)
 与太はさておき次回――その純情が銀河を貫く!

◆第三十五章「ゴウキの選択」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 樽爺、捨てられた……(笑)
 これといって強調されないが、ざっくり酷い導入で、『超光戦士シャンゼリオン』(1996年)で監督デビューした諸田さんは、 これが戦隊監督デビュー。
 バットバスがイリエス結晶によってダイタニクスの腐敗を止める姿も描かれてイリエス魔人族が冷酷に使い切られ、 更にイリエスの魔力は、ダイタニクスの心臓に鼓動を甦らせる。
 「折角動き出した心臓だ。ダイタニクス復活は、何を犠牲にしてもやりとげるんだ」
 「任せてくれ、船長。これからの復活作戦は、全部心臓への一点集中だ」
 バットバスが声をかけるとハンマー魔人が率いる大量の船員がブリッジに集合。
 「俺たちは?」
 「「「バットバス・魔人部隊!」」」
 「目障りなのは?」
 「「「ギンガマン!」」」
 「つえぇのは?」
 「「「俺たちだー!」」」
 「よーし野郎ども、ビズネラから作戦を説明させる」
 魔人の号令に船員の集団が足並み揃えて声をあげ、更に参謀によるブリーフィングまで入ってガラリと雰囲気が変わり、 行動隊長の交代にともなう諸要素の色分けは、今作においてかなり巧く行っている部分の一つ。
 バットバスの副官としてすっかり立ち直ったように見えるビズネラは、作戦の狙いはダイタニクスの心臓の動きを補助するポンプの強化にあると語り、 その指示により、魔人部隊は大量のガラスを集めに街へと出撃する。
 その頃、戦闘の負傷が激しいタウラスの為にヒュウガは乗馬倶楽部を離れ、ゴウキは鈴子先生へ告白しようと頭をひねっていた。
 「よし、慰める会、準備しとくか」
 花を手に学校へ向かうゴウキだが、そこで豪華な花束を抱えた告白のライバル・岸本(演じるは猿顔の一般市民こと岸祐二)と出会い、 どちらが先に花を渡すか、をピアノのメロディに合わせてコミカルに演出した末、もつれ合った2人は教室へ派手にダイブしてまとめて怒られる事に。
 恋のライバルとして牽制し合うゴウキと岸本は、鈴子と共に割れた花瓶を買いに街に出るが、そこで、 大量のガラスを集める為にビルを丸ごと破砕しようとするハンマー魔人部隊と遭遇。
 ダイタニクス復活の為に「ある物」を集める、という状況設定はサンバッシュ編と重なっているのですが、 ビルそのものを破壊する事で砕けた窓ガラスなどを一気に集める、 という目的と手段の底抜けのギャップで恐怖を与えてくるという見せ方に工夫が見えて秀逸。
 ギンガブルーが魔人部隊に立ち向かう中、銀河戦士達との度重なる接触で内なるアースに目覚めたのか、 襲われている市民を助ける為にカートアタックを仕掛ける鈴子だが、銃撃を受けて負傷してしまう…… というシビアさが凄く『ギンガマン』。仲間達が駆けつけ、ガラス回収に使うポンプが破壊された事で、魔人部隊は撤退。 だが鈴子は足を怪我して入院し、見舞いに行ったゴウキは岸本から厳しい言葉をぶつけられる。
 「ハッキリ言う。鈴子先生には、もう近づくな!」
 「え?」
 「先生が無茶したのは、絶対おまえの影響だ。戦いにも巻き込まれるし、それなのにおまえは、先生を守れないんだからな」
 「そんな、俺は先生を」
 「守れない。だいたい先生が怪我をした時、おまえは何をしていた? 戦ってただろ。当然だ。戦士なんだからな。でも、 鈴子先生の事は、守れなかった」
 戦いの中で生じる公と私の選択を突きつけられ、言葉に詰まるゴウキだが、タイミング悪くハンマー魔人部隊が再び出現したとの報が入る。
 「行けよ。街は任せた。……鈴子は、俺に任せろ。すきなおんなのそばにいてまもってやれないおとこなんて、鈴子には、必要ない」
 恋敵を蹴落とそうとかさに掛かるも、声が裏返り気味の岸本は悪人になりきれないのですが、 脚本段階からこうだったのか岸祐二氏のキャスティングでこうなったのかは、少々気になるところです。
 「…………そうですよね」
 「え?」
 「馬鹿だな、俺。そんな事に、気付かなかったなんて」
 星を守る戦士として、公の大義を取る苦渋の選択をしたゴウキは、自作のお守りを岸本に託して戦場へと走り、 これ幸いと一度はお守りを捨てるも、そのまま無かった事にできずにお守りを拾ってしまう岸本。この辺りは、設定した、教師、 という職業への配慮もあったでしょうか(子供が日常的に関わる大人なので)。
 (戦士だ、俺は……戦士なんだ! 戦士なんだ!)
 天堂竜教団の教えを胸にひた走るゴウキはハンマー魔人軍団に立ち向かい、病院では岸本からゴウキのお守りを受け取った鈴子が、 松葉杖を突きながらも病室の外へ。
 「戦うんだ……俺は、戦士だ!」
 星獣剣すら弾き返す鋼鉄ボディを誇るハンマー魔人の攻撃に倒れながら、必死に立ち上がろうとするブルーだが、 その戦いの場に鈴子が姿を見せる。
 「危険です! 戻って下さい!」
 「戻りません!」
 そのタイミングで、思い切り鈴子の足下に海賊兵を蹴り飛ばしてしまうギンガグリーン……ハヤテ…… 婚約者持ちなのに恋愛相談で全く役に立たない事に定評があるハヤテ……。
 鈴子に迫る海賊兵の刃だがしかし、渾身の力で振り下ろした松葉杖がクリティカルヒット(笑)
 伊達に! 勇太くんの担任教師ではありません!
 「誰が守ってほしいって言いました?! 私、自分の事は自分で守ります。だから、大丈夫です」
 市民に対する脅威である事が明確に描かれ続ける海賊兵を、鈴子先生がノックダウンしてしまうのは若干やりすぎた部分もあるのですが、 鈴子先生が守られるべきヒロインという記号ではなく、 独立した一人格である事を力強く宣言する姿と重ねる事で劇的な説得力を与えるのに成功しており、 強烈なカウンターパンチが鮮やかに炸裂しました。
 「……鈴子先生!」
 その笑顔に百人力を得たギンガブルーはハンマーを受け止め、アイアンクローから投げ飛ばす愛のパワーを発揮。
 「バルバン! これ以上はさせない!」
 からフル名乗りでギンガの閃光から更にギンガブルーの追撃2発で撃破すると、ハンマー魔人は「やろー、作戦変更!」で巨大化。 今日もざっくり苦戦したギンガイオーの要請により「接近戦を得意とする」ギガライノスが出撃するとパンチの連打で吹き飛ばし、 弱ったところに必殺剣を放って勝利を収めるのであった。
 戦い終わり、いよいよ告白のチャンスが来るも緊張のあまり言葉にならないゴウキに対し……
 「ゴウキさん……私、私だけを守ってくれるより、星を守って、戦っているゴウキさんが……好きなんです」
 未だライクかラブかはわからないものの、鈴子先生が好意を示して歓喜のゴウキは気絶、でエンド。
 次回――(深刻なBGM)
 突如、ハヤテと晴彦の手が繋がったままに。それは、ギンガマン最大のピンチか、それとも――
 「お任せ下さい」(メインテーマBGM)
 今、街の危機に、晴彦が立ち上がる! 走れ! 跳べ! 駆け抜けろ!
 格好いい予告の多いギンガマンですが、番組史上最高かも(笑)

◆第三十六章「無敵の晴彦」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
 今回も魔人に合わせて大量の船員登場からブリーフィングが描かれ、砲弾魔人部隊が、 ビズネラの用意した宇宙鉱石を蒸し焼きにする為に、街一つを火の海にする作戦の為に出撃する。
 「作戦失敗したヤツは?」
 「「「てめぇで頭を食いちぎれ!」」」
 効果的に街を焼き払う為に、30箇所に爆弾を設置して一斉に起動する、というこれまでのバルバンとはひと味違う綿密な作戦を遂行する魔人部隊だが、 設置時のミスで誤爆が発生。これをキャッチしてギンガマンに知らせるモークだが、この時、 銀河戦士達は一つのトラブルに見舞われていた……乗馬倶楽部の補修作業中の事故により、ハヤテの右手と晴彦の左手が、 モーク特製接着剤でピッタリとくっついてしまっていたのだ!
 「晴彦さんすいません、付き合ってもらいます」
 状況は喜劇だが、戦いとなればあくまで真剣な表情を見せるハヤテだが……
 「感激だなぁ……私、前から一度、戦いのお役に立ちたいと思ってたんですよ。こんな形で、果たせる日が来るなんて」
 やたら前のめりで、無駄にジャンプしたりする晴彦に振り回される事に。
 「ほんっとに気持ちだけで……」
 一方、他にも爆弾が仕掛けられているのでは、と街を調べ回っていたリョウマ達だが、砲弾魔人の仕掛けていたトラップにより、 見つけた爆弾に触った途端に指が張り付いてしまい、全員行動不能に。
 「前から、やってみたかったんですよ、これ」
 爆弾を運ぶ海賊兵のトラックに行き会ったハヤテと晴彦が、走行中のトラックの屋根にダイブしたり、そこで戦闘を繰り広げたりと、 ドタバタコメディの勢いで無茶をしている頃……
 「いつ爆発しちゃうんだろ……」
 間抜けな体勢の残り4名は、割とかつてない生命の危機にあった。
 アジトに突入して起爆装置の解除と破壊に成功するハヤテと晴彦だが、ハヤテが溶鉱炉に落下寸前のピンチとなり、 そんなタイミングで効力を失う接着剤。だが晴彦は我が身を省みずにハヤテの手を握り続け、 山から駆けつけた黒騎士ヒュウガの登場により窮地を脱する。
 「少しはお役に立ちましたか、私」
 「……ええ、とても」
 「良かった」
 立ち上がったハヤテは、敢えて再び晴彦の手を握ると、合流したギンガマンを苦しめる砲丸魔人に対し、背後の高い所から姿を見せ、 飛び降りから2人で決めポーズ。そのまま一緒に突撃すると、まさかのコンビネーションアタック (1人が手を広げて踏み台となってもう1人が高々とジャンプするのと、空中で横になった1人の足の裏を押して加速をつける定番のやつ)を放ち、 あまりの事に直撃を受けてしまう砲弾魔人(笑)
 新バージョンの一人ギンガの閃光で魔人を打ち砕き、巨大化した魔人の砲撃に苦戦するが、 「抜群の跳躍力を誇る」フェニックスの応援によりギンガマンは勝利を収めるのであった。
 以前に父子愛エピソードがあったので、もうフィーチャーはないのではなと思っていた晴彦さん、まさかのメイン回でしたが、 “ならでは”という要素が薄いまま肉体的に活躍してしまった為、出来は微妙。
 もう少し、妻子と暮らす街への愛情が挿入されたり、絵本作家の閃きがピンチを切り抜けたり、 途中にあった近道のような街への知識がハヤテを助けたり、などあれば良かったのですが、そういった晴彦さんの特徴が活かされないまま、 年甲斐もない戦士への憧れという「生兵法」の部分がドタバタコメディの勢いであまりにも肯定的に描かれてしまったのは面白く受け止められませんでした。
 晴彦さんの純粋さと献身が勝利に繋がる、というのを夢見がちな父親像の肯定として描く意図だったのかもしれませんが、 プロフェッショナル戦隊である今作の一線は踏み外してしまった印象で、言ってしまえば小林さんの脚本を、 諸田監督が『シャンゼリオン』(井上敏樹の筆によるすれ違いコメディやバディ形式を活かしたスラップスティックコメディが十八番) に変換して撮ってしまったようなエピソード。
 前回−今回は、ギンガマンと関わりの深い周辺人物2人の姿を通して、ただヒーローに“守られる”だけではなく、 “戦う”意志を持つ事は誰にでも出来る、と描いた一対のエピソードといえるのですが、鈴子先生がここぞのピンポイントだったのに対し、 晴彦さんは終始戦闘状況というのはやり過ぎだったと思いますし、2話連続かつ同じ監督の為に、 演出側でアプローチを変える事を迫られた、というのが悪い方向に転がった感。
 ……あと東映戦隊のノリで言うと、晴彦役の高杢さんが本当に「前から、やってみたかった」可能性もありそうでしょうか。
 (※本来はハヤテと手を繋ぐのはヒカルの予定で脚本も完成していたが、ヒカル役が手を負傷した為に、急遽、 相手役が晴彦さんになったとの事)
 次回――ギガシリーズのあおりで部屋の隅に追いやられつつあるゴウタウラスと黒騎士に迫る影!  かつてない強敵がギンガマンを襲う! 縛られるの何度目だヒュウガ! そして……!

→〔まとめ7へ続く〕

(2020年4月6日)

戻る