■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ5■


“ギンガ転生! 凜々しき勇姿
正しいものは決して負けない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ5(25話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕

◆第二十五章「黒騎士の決意」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 「ゴウタウラス、行くぞ。最後の戦いだ。この星もろとも、バルバンを吹き飛ばす」
 ギンガの光を手に入れ損ねた黒騎士は冒頭から物騒な事を言い出すが、盟友ゴウタウラスから「昔に戻りたい」と拒絶され、 思わず弟クランツと過ごした日々を脳裏に甦らせる。
 「昔のような戦士に戻ってなんの意味がある! 今の私に守るべきものはない」
 それを振り切り、歩き出す黒騎士だが、またもその身を襲う激しい動悸息切れ。
 「わかっているぞ。この痛み、貴様だな」
 (黒騎士、やめるんだ。考え直せ)
 語りかけるその声は、ヒュウガ?!
 一方、イリエスが行動隊長として本格的な活動を開始したバルバンでは、ブリッジがタイアップ回名物ハワイアンショーの様相を呈し、 (もしかして、行動隊長の選抜、間違えた……?)と船長が唸っていた。
 「なんの騒ぎだこれは?!」
 駆けつけたシェリンダさんもおかんむりで、なんだか早くも、イリエスとは相性が悪そうです。
 石化の封印を解く魔法の槍を持ったワンワン仮面は、ダイタニクスの封印を解くだけの魔力を得るべく、 街へと繰り出し槍へと憎しみの心を集めていく。
 一方、コンゴウ山に出現したブルタウラスは、火口から地球の中心へとエネルギーを送り込む事で、 本気で地球を吹き飛ばそうとしていた。
 もともと、エピソード怪人が戦略級から時に惑星規模で天変地異を引き起こす能力を見せる作品だけに、 復讐成就の執念×タイムリミットへの焦りに突き動かされる黒騎士の最終手段が地球滅亡クラス、というのは納得のいくスケール感。 そしてその取り返しのつかなさが黒騎士の破滅的な復讐心を強く訴えると共に、ギンガの光争奪戦の決着→幹部退場、という山から山、 の展開から格落ちせずに物語のテンションを保持してもいます。
 ギンガイオーの制止を振り払うブルタウラスだが、地球最後の一撃を放つ直前、ゴウタウラスに拒絶されて合体解除。更にそこへ、 極上の憎しみを感じた魔人が現れて黒騎士に槍を突き立て、憎しみの魂を吸収するという、入り乱れる展開が面白い。
 グリーンらが魔人を足止めしている間に、レッドは傷ついた黒騎士と逃走し、迫る海賊兵を切り裂く。
 「私を助けて、恩を売るつもりか? ……それとも、この私が、改心するとでも思っているのか?」
 最初にリョウマ木っ葉微塵の危機を救ったし、いずれこの人、復讐を乗り越えてギンガマンと手を組むんですよね……?  と出てきたキャラクターの台詞が、事ここに至って完全にねじくれた悪役のそれで素晴らしい(笑)
 「今はそんなこと言ってる場合じゃない!」
 海賊兵の刃をその身で受けながらも、黒騎士を守って戦い続けるレッド。
 「ギンガレッド! 貴様どこまでその甘さを押し通すつもりだ」
 「俺は誰だろうと、見殺しにできないだけだ!」
 「私が……おまえの兄を利用していると知ってもかっ」
 己の行為の正当化の為、リョウマの甘さを“弱さ”として否定せずにはいられない黒騎士(しかし、既にその言葉の中で、 甘さを「押し通す」事が出来ればそれは強さに繋がる、事を半ば認めてしまっているのが皮肉)は、 3000年間転がっていた地の底に落ちてきたヒュウガの体を取り込み、そのアースにより復活した、と衝撃の真相を明かす。
 「兄さんが……生きてる?」
 「生きてるといえるかどうか」
 復讐を止めようとするヒュウガの度重なる呼びかけと妨害に業を煮やした黒騎士は、弟の形見の短剣を触媒に用いて、 ヒュウガの意思を厳重に封印してしまっていた。
 「ヒュウガが解放されるのは、私が死ぬ時だ」
 ヒュウガ=黒騎士を一度否定した上で、実質的にやはりヒュウガだった、というのは散りばめてきたヒントの数々から予定調和なのですが、 そこからすぐさま、極めて重い選択を投げかけてキャラクターの葛藤に繋げるのが鮮やか。
 「私を殺すか? ヒュウガを取り返す為に」
 海賊兵を切り倒した星獣剣を手にしたまま、黒騎士の問いに黙り込むレッド。
 「見ろ、誰でも同じだ。憎しみと目的の為には手段を選ばない。しかし今殺されるわけにはいかん。私は復讐を果たす!」
 レッド目がけて放たれた黒騎士の斬撃は白い花を散らし、それをかわしたレッドはしかし、剣を収める事を選ぶ。
 「何かを守る為に、戦う事を教えてくれたのは兄さんだ。あなたを殺して助け出しても、兄さんは喜ばない! 俺たちは、 星を守る為に戦っているんだ!」
 主に勇太少年とリョウマの関係を通して、“強さ”とは何かを描き、リョウマと黒騎士の対決を通してそれを研ぎ澄ましてきた今作ですが、 ここでその集大成として“戦う”とは何か? に至り、今作における「正義のルール」として、繰り返されてきたお題目といえる 「星を守る為の戦い」が具体的な形で示される、という構成が実に精妙。
 リョウマが勇太に伝えてきたものは、ヒュウガからリョウマに伝えられたものであり、 更にその背後にはギンガの民3000年の伝承があり、この“受け継がれる想い”というのは、 後の作品を見ても小林靖子作品における一つ重要なモチーフであるのかもしれません (小林靖子作品の重要なモチーフである“時間の積み重ね”に呼応しているともいえます)。

 ――僕もいつか、兄さんと一緒に星を守る戦士になるよ!

 「……クランツ」
 黒騎士に背を向けたレッドは、何かを振り切るかのように猛然と走り去り、黒騎士はその背を見つめながら、 かつての弟の言葉を思い出す……。
 「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 仮面魔人に苦戦する仲間達の元へと駆け戻ったレッドの絶叫は、使命と私情、正義と我欲、 の間で切り刻まれるリョウマの気持ちが入っていて、とても良い絶叫でした。
 「唸れ、ギンガの光!」
 5人揃ったギンガマンは獣装光し、ギンガの閃光で仮面魔人を瞬殺。巨大戦でも超装光ギンガイオーで秒殺するが、 吹き飛んだ憎しみの槍が火口へ落ちてしまう大失策。
 これが最後の一押しになり、はからずも黒騎士の思惑通り、崩壊の危機を迎える地球。寒冷化とか連続大地震とか大地が溶けるとか色々ありましたが、 かつてここまで、地球に厳しい戦隊があったでしょうか!
 モークのアドバイスにより、火口に5人のアースを注ぐ事で破滅的エネルギーを中和しようとするギンガマンだが、 吹き荒れるエネルギーの奔流に阻まれて近づく事ができず、エネルギー波のダメージにより変身も解除されてしまう。
 「終わりか……バルバンも、この星も。……そして私も」
 それでも諦めず、生身で火口へ近づこうとする5人を見つめながら、限界の近づく肉体で地面に横たわる黒騎士。
 ――俺たちは、星を守るために戦っているんだ!
 ――兄さん、戦って! 星を守って!
 「これでいいんだ……これで復讐は終わる」
 フラッシュバックするリョウマとクランツの言葉を振り切り、静かに最期の時を迎えようとする黒騎士だったが……
 「兄さん……兄さん」
 それは、死期の迫る目が望んだ走馬灯か、ヒュウガ封印の為に体内に埋め込んだクランツ形見の短刀が見せた想いの残滓か、 花を片手に、近づいてくる亡き弟の姿。
 「クランツ……!」
 「戦おうよ、兄さん。あの人達のように」
 最後の力を振り絞って立ち上がった黒騎士にクランツは願い、先に回想で挿入された「兄さん、戦って! 星を守って!」という、 人質によくある台詞(「○○に構わず戦って!」)というだけだった筈のものが、あの時クランツが告げた 「戦って」とはどういう意味だったのろう? 私にとって、貴方にとって、「戦う」とはなんだろう?  と普遍的な問いと願いに化けるという、会心の接続。
 元々の台詞の時点でどこまで計算していたのかわかりませんが、これは唸らされました。
 「駄目だ。私にはもう、守るべき星も、人もない。ゴウタウラスさえ去ってしまった。そして何より、おまえが居ない! クランツ!」
 よろめきながら手を伸ばす黒騎士に対して、幻影のクランツは、花を手に空を見上げる。
 「星はいっぱいあるよ。人もたくさん居る。……ね、兄さん?」
 この瞬間、閉じきっていた黒騎士の世界が拡散すると共に、『ギンガマン』という物語世界も一瞬、 フィクションの境界線を越えて現実と接続し、地球を守ろうとするギンガマンの姿から、誰にとってもの「戦う」とは何かを胸に問い、お見事。
 「星を守ろうよ。昔みたいに」
 「クランツ!」
 虚しくかき消えるクランツの姿だが、倒れた黒騎士の掌中には、幻影のクランツが託した、白い花が。 それを目にした黒騎士は体内で封印としていた短刀を抜き取る事でヒュウガの体を解放し、ところどころがひび割れ、 古び砕けかけた鎧姿に。
 「これ以上、私に付き合わせるわけにはいかないからな」
 自らの命を繋ぎ止めていたヒュウガの肉体とアースを失った黒騎士は、崩れ落ちそうな足取りながらもリョウマ達を制止してバリアに閉じ込めると、 噴出するエネルギーを体内に取り込んで自爆する事で、地球を救う事を告げる。
 「ゴウタウラス! 来るんじゃない! この星で仲間を見つけろ。一緒に戦う仲間を!」
 自分が出来なかった事をタウラスに託した黒騎士は、火口から迸るエネルギーで炎に撒かれながらも歩を進め続け、いつしかその姿は、 弟クランツと手を取り合う幻像へ。
 「星を守るぞ、クランツ」
 黒騎士は火口に身を投じると、破滅のエネルギーをその身に閉じ込める事で地球の崩壊を防ぎ、 消滅したその肉体は黄金の粒子となって周囲に降り注ぎ、ギンガマンはそこに黒騎士の魂を感じるのであった……。
 そして、黒騎士から解放された目を覚ましたヒュウガが5人の前に現れ、思い切って胸にダイブするサヤ、拾われて良かった。
 「リョウマ!」
 「兄さん……」
 兄弟は抱きしめ合い、今ここに、ヒュウガ復活!
 「――それは、竜馬達が夢に描いた再会であった」
 長くリョウマと対峙し続けてきた黒騎士が壮絶な最期を遂げる、ブドー編にして黒騎士編であった、 『ギンガマン』第2部のクライマックスとして、良いエピソードでした。
 コンゴウ山にエネルギー打ち込みまくったのは黒騎士であり、最後の一押しとなった憎しみの槍のエネルギーもかなり黒騎士分なので、 黒騎士の行動はマッチポンプといえばマッチポンプなのですが、黒騎士が最後に何をしたのかというと、「僕もいつか、 兄さんと一緒に星を守る戦士になるよ!」という、クランツの願いをかなえたのであり、 それは自己犠牲とは別の黒騎士兄弟にとっての「戦い」であって、その選択により黒騎士は復讐を乗り越え、クランツの魂は昇華される、 というのが構造上の美。
 また復讐の果てにあるのは破滅あるいは新たな破壊者の誕生である、というのは繰り返し語られてきた暗示であり、 今作が徹底して「復讐しても死んだ人は喜ばない」的なレトリックを用いずに、復讐を否定しているのは、好印象です。
 復讐が果たされて嬉しいのかどうか、死者は何も語る事はなく、しかし少なくとも最後に、黒騎士は愛する弟の望みを果たした、 といえるのでしょう。だからこそ、そこには劇的な美しさがあります。
 蛇足めいた話になりますが、私、『仮面ライダーBLACK』第1話(監督:小林義明 脚本:上原正三)で、 主人公・南光太郎が叫ぶ、
 「父さんだって戦わなければこの廃墟と同じじゃないか!」
 という台詞が妙に強く印象に残っていて、それと通じる、フィクションと現実の境界線上で揺らめきながら、 誰にとっても「戦う」とは何だろう? という問いかけのイメージを感じるエピソードでありました。

◆第二十六章「炎の兄弟」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 というわけで、第1話で敢えなく地割れに飲み込まれ、長らく地底刑務所に収監されていた、ヒュウガの兄さんが娑婆に帰ってきました!
 長い間のおつとめご苦労さんでしたアニキーーー!
 「こうしてみんなと会えたのは、黒騎士のお陰だ」
 ドングリと再会を喜び、モークと顔を合わせたヒュウガ、ある意味では体を乗っ取っていた相手でもある黒騎士に、 命の恩人としての感謝を示すのが、超爽やか。
 そのヒュウガは黒地に赤のアクセントの入った、新衣装を着用。既存の5人がゆったり目の布地でギンガの民の民族衣装、 という雰囲気が強いのに対して、ピチピチ気味な事もあってバトルスーツ感が強く、並んだ時の個性になっています。
 襟元を直すサヤの指先に巻かれた絆創膏に目を止め、「もしかして……」と手を取り、ちょっぴり甘い空気が流れかけるが、
 「みんなで手分けして作ったんだ」
 というコメントが割と容赦ないなハヤテ!
 なお私の妄想だと割合は、ゴウキ65%(オカン)・ハヤテ25%(器用そう)・サヤ8%(愛を主張)・リョウマ&ヒカル2% (苦手そう)、です。
 当初はサヤが全部自分で作るつもりだったのですが、途中で見るに見かねて参加したゴウキとハヤテが終わってみればほとんど作ってしまいました!(涙)
 青山親子も出所祝いに顔を見せ、ヒュウガは青山父の「トンカツで復活」という駄洒落がツボに入って笑い転げるという、 思わぬ弱点を披露。
 一方、バルバンからはイリエス魔人族の骸骨騎士が出撃し、人々を次々と鏡の中に閉じ込めていく。 駆けつけたギンガマンはヒュウガ復活サービスで生バトルを展開するが、ハヤテ・ゴウキ・ヒカル・サヤの4人が、 まとめて鏡の中に閉じ込められてしまう。4人を助けなければと焦るリョウマを強引に退却させたヒュウガは、 劣勢の中で海賊兵をマーキングしていた事を伝え、早速、戦士としての有能さを見せつける。
 骸骨騎士はギンガマン4人を含め、人間を閉じ込めた39枚の鏡を使ってダイタニクス復活の為の儀式を始め、 それっぽいエネルギーを集める→ギンガの光を探す→独自の儀式を行う、とバルバンの活動も第三のパターンに。 それぞれ個別にダイタニクス復活の可能性を秘めた儀式魔術を行えるイリエス魔人がまたハイスペックですが、 「復活可能と主張している」だけで、実際に復活可能かどうかは明確ではない、のがミソといえばミソでしょうか(笑)
 モークレーダーにより骸骨騎士の事務所を突き止めたリョウマとヒュウガは早速カチコミを仕掛け、 待ち受けていた死神セキュリティを兄弟の連携で次々と撃破。その途中、成り行きから星獣剣を手にする事になったヒュウガに、 リョウマは深刻な表情で語りかける。
 「兄さん……さっきの話だけど」
 「……星獣剣を、返すっていうのか、俺に」
 「そうしようかと思ったよ。今日久しぶりに兄さんの凄さを見て。……でも兄さん! 俺にこのまま星獣剣の戦士として、 戦わせてくれせないか!?」
 前半、ヒュウガへの敬愛も含め、性格からいってリョウマは星獣剣を返そうとするのではないか、 と仲間の反応で誘導した上でリョウマが自身の言葉でそれを裏切り、薄々それを危惧していたヒュウガも驚きの表情になる事で、 周囲の想像を超えたリョウマの精神的成長を表現。
 「前の俺なら、こんな事考えもしなかった。でも、今なら言える。俺、戦っていけると思うんだ! 星獣剣の戦士として、 バルバンを倒したいんだ!」
 ここまで25話、積み重ねてきた戦いで十分な説得力を与えつつ、黒騎士という大きな壁を乗り越えたリョウマにとって、 星獣剣の戦士として星を守る為に戦うのは、約束と責任でもある、というのが絶妙なタイミング。
 退場した黒騎士がただヒュウガ復活の為の駒として盤面から消え去ってしまうのではなく、 黒騎士退場からヒュウガ復活という流れそのものが、リョウマの転機に必要不可欠な意味を与えています。
 ヒュウガが死神セキュリティの不意打ちを振り向きざまに退け、その鮮やかな剣捌きに兄に届かない自分を思い知るリョウマだが、 振り返ったヒュウガはきっぱりと断言する。
 「俺が星獣剣を使うのはこれが最後だ!」
 割と早めに機刃が登場し、2クール目には竹輪バズーカも登場し、根幹にあるアイテムにしては獣装光登場まで武器としての存在感がやや薄くなっていた星獣剣に、 ここで改めて、銀河戦士の象徴としての意味を与え直してくれたのは非常に良かったです。
 星獣剣を振るう兄さんの見せ場を作った後で、というのがまた、印象として剣にも兄さんにもおいしい。
 「成長したな、リョウマ。おまえが一言でも返すと言えば、俺は取り上げるつもりだった。おまえはもう俺の代わりなんかじゃない。 ギンガレッドはおまえだよ。ハヤテ達にとってもな」
 「……兄さん」
 ここに改めて星獣剣は兄から弟へと継承され、ギンガマンにとって大きく感情を揺さぶる存在だったヒュウガの復活、 正真正銘の追加戦士誕生か?! というところから代理戦士であったリョウマの葛藤、そしてその成長が導き出した結論に繋げ、 兄弟の新たな絆を描く、までが非常に劇的に収まりました。
 「行くぞ」
 「うん」
 そして、事務所に乗り込んでくる時は兄が先、弟が後であったのが、ここでリョウマが自然とヒュウガを追い抜き、 先行するリョウマをヒュウガが追いかける、という形になるのが、関係性の変化として象徴的となり、田崎監督の演出もノっています。
 儀式の現場に乗り込んだ2人は、3体目の死神セキュリティをあっさりと蹴りで撃破すると、 格好良く決まったダブル「「炎の、たてがみ!!」」で鏡の盾ごと骸骨騎士を吹き飛ばし、魔術が解けて解放される人々。
 仲間達はリョウマが手にした星獣剣を見てその決意を知り、必要以上に語らずに理解し合うのが、ここまでの戦いの積み重ねと 、「ギンガレッドはおまえだよ。ハヤテ達にとってもな」というヒュウガの言葉の真実を感じさせ、気持ちの良い展開。
 「みんな、行くぞ!」
 高所からのジャンプで地面に降り立った5人は、改めてリョウマの音頭で銀河転生し、 外連味のある演出から象徴的なフル名乗りの揃い踏みで、真のギンガレッドとなるリョウマ。

「銀河を貫く伝説の刃! 星獣戦隊!」
「「「「「ギンガマン!」」」」」

―― ギンガマン! それは、勇気ある、銀河戦士の称号である。


 「真の○○になる」というのも小林靖子の脚本作品でしばしば用いられるモチーフですが、 ストーリー上の紆余曲折が揃い踏みの名乗りにおいて一点に集約される、という戦隊作劇の美ともパーフェクトに噛み合い、 大変痺れました。
 初期はやや多めの使用が気になったナレーションも、何よりも兄への屈託を乗り越えたリョウマが自らを「勇気ある、 銀河戦士」として覚悟を固めたこの瞬間に、最高のはまり方。
 2クール目のラストに、『ギンガマン』が一つの完成を見、そしてヒュウガを加えて新たなる戦いが始まる、という構成も美しく、 ある意味、完璧すぎてもはや最終回(笑)
 「銀河炸裂!」
 から主題歌(2番)が入ってのバトルとなり、至れり尽くせり。

走れ! 星の光を追い越して
走れ! 闇を切り裂く虹になれ
吼えろ! 吼えろ! 吼えろ! ギンガマン

 ヒュウガの生バトルも交えてギンガマンは海賊兵を蹴散らし、残った魔人相手の、獣装光→ギンガの閃光は、少々、 鳥頭ボウガンめいてきました(笑)
 レッドvsブドーの一騎打ちを除くと、ここまで獣装光でのアクションが余りないのは、左腕が重いのか、パーツが高かったりするのか。 まあ今のところはギンガの光の強烈さを見せつけて、後に敵魔人の強力さに繋げる仕込みだと思いたいですが。
 「イリエス魔人族は、しつこいのだ」
 骸骨騎士はバルバンエキスで巨大化し、前回は「イリエス魔人族、しぶとい」だったので、今回は魔人の数だけ形容詞、でやりきれるのか?!
 今週も1R35秒K.Oを狙った超ギンガイオーだったが、鏡の術で閉じ込められてしまい、思わぬ苦戦。その時、 モークサロンに保管されていた黒騎士の形見の剣が浮上すると、仲間の苦境を見つめるヒュウガの元へ飛来する。
 (私の力を、星を守る戦いに使ってくれ。ヒュウガ、それが出来るのは、おまえだけだ)
 ヒュウガの胸に黒騎士の声が響くと、ゴウタウラスも姿を見せ、剣を手に取るヒュウガ。
 「黒騎士……。戦おう、一緒に。星を守るために!」
 テーマ曲と共に剣を掲げたヒュウガは黒騎士の姿へと変わり、同化していたので心情が伝わっていた、という言及も後にありますが、 ヒュウガが黒騎士を憎むのではなく理解し、「一緒に」と言ってくれるのが、凄くいいところ。これにより、 前回のクランツに続き黒騎士の魂もまた昇華され、新たな戦士として転生を果たす事に。
 黒ヒュウガは巨大化すると折り畳まれてタウラスと合体し、人間としては微妙な一線を越えてしまった気もしないでもないですが、 こーいうのは勢いです。思えば黒騎士としてもヒュウガとしても、死を体験して俗世から一度切り離されるというイニシエーションを果たしたといえるわけですが、 紫色のアイツは言いました。「どう生まれたかが問題ではない。どう生きていくかが重要なんだ」!
 そんなわけで復讐の超戦士から星を浄める宿命の騎士へと生まれ変わったブルタウラス・フォー・ジャスティスは、 合体即柳生竜巻剣で、骸骨騎士を瞬殺(笑) 超ギンガイオー突然の苦戦が新生ブルタウラス登場の露骨すぎる前座になってしまったのは、 出来の良いエピソードだっただけに残念でしたが、本当に、生ものの出てこない巨大戦はざっくりとした作品です。
 「俺は黒騎士の想いを受け継ぐ。彼と一緒に戦うよ。――バルバンと」
 前回・前々回、ギンガの光の発現からブドー退場まで大変盛り上がりましたが、 続けて黒騎士退場・ヒュウガ復活と畳みかける展開の中でギンガの光による強化だけではないリョウマの成長、そしてそれを軸とし、 失ったものの一つ取り戻したギンガマンの新たな結束を集約し、話数としても物語としても文字通りのターニングポイントで、 非常に面白かったです。
 特にこのエピソードをやる事で、なんだかんだ超越的な力(ギンガの光)でパワーアップを果たしたギンガマンが、 それとは別の“強さ”を表明してみせた、というのは今作の明確なスタイルを示して良かった点。
 星獣剣をリョウマに託したヒュウガは黒騎士への変身能力を得て戦闘力不足の心配もなく追加戦士となり、 後は色々な意味で強キャラすぎるヒュウガと、周囲のバランスをどう取るかに若干の不安が出てきますが、 よりによって青山父の「黒騎士だけに、くろうする」がクリティカルヒットするというのは、調整という意味では良い弱点設定かなと(笑)
 まさか、こんな事で、青山父のヒエラルキーが急上昇するとは!
 ただし青山父は勇太少年からは相変わらず大変粗雑な扱いを受けるので、勇太少年最強説(笑) ……こうなってくるとどこかで、 青山父が勇太くんにいい所を見せるエピソードは欲しいものですが。
 次回――早速発揮されるヒュウガのモテパワーに、噴き上がるジェラシー! ギンガマンはこの危機を乗り越える事が出来るのか?!

◆第二十七章「ミイラの誘惑」◆ (監督:辻野正人 脚本:荒川稔久)
 予告から、ああ、荒川さんかな……と思うと、8割ぐらい荒川さんなのは荒川さんの凄い所だな、と改めて思う今日この頃。
 ヒュウガと激しい稽古を繰り広げるリョウマとハヤテを背景に、鉢植えに水をやり、私が花の戦士よ! とアピールするサヤは、 かつてヒュウガに教わった「戦士の基本は信じる事」という言葉が戦士としての自分の基本になっている、とドングリに教え、 花の戦士としてはゴウキ、ヒュウガ親衛隊としてはリョウマ、ライバルが多くて色々と大変そうです。
 カメラの距離からも吹き替えかとは思いますが、ハヤテの連続バック宙回避などかなり見応えのあるアクションを見つめながら、
 「やっぱり素敵だなぁ、ヒュウガ……」
 色々ダダ漏れのサヤはヒカルにからかわれ、今頃、それに驚くゴウキ、おいしい(笑)
 「違うよもう! 私にとってヒュウガは優しいお兄さんで、戦士として尊敬できる先輩!」
 「へーーー、どうかな〜」
 「怒るよヒカル!」
 からいきなり握り拳なのが、凄く、ギンガマンです。
 イリエス魔人族からは、81人の乙女の若さを集めて復活の秘薬を作り出すべくミイラ魔人が出撃し、 襲われていた女子高生を助けたヒュウガ兄さんが、怯える少女をわざわざ家まで送っていくと別行動を取った事に、違和感を覚える5人。 ヒカルの混ぜっ返しが、信頼と嫉妬の狭間で揺れるサヤの心を余計にかきまわす中、虚空から伸びる包帯が次々と女性を襲っていき、 後手後手に回って苦戦するギンガマン。
 この非常事態に、女子高生とイチャイチャしているヒュウガの姿がモークカメラによって映し出され、 我慢できずに真意を問い質すサヤだが、冷たく拒絶されてしまう。花屋で買った黄色い花を少女にプレゼントし、 肩を抱きながら退場するヒュウガだが、実は少女に憑依していたミイラ魔人がヒュウガの毒殺を図り…… 物凄い勢いで毒入りジュースをストローで一気飲みする兄さん(笑)
 一生懸命作ってもらった手前言い出せないけど、やっぱりそのスーツ、暑いの兄さん?!
 毒に倒れたヒュウガは地面に崩れ落ち、正体を現したミイラ魔人は最後の標的として、憑依していた女子高生(狙った獲物への執着は、 繰り返し宣言)に襲いかかるが、しかしそれこそ、憑依された少女を傷つけずに救う為、ヒュウガが待ち望んでいた瞬間だった。
 「やっと会えたな、バルバン」
 ニヤッと笑ったところで流れる黒騎士のテーマ曲が格好良く、BGM自体も盛り上がるのですが、 このテーマ曲が旧・黒騎士と新・黒騎士を繋ぎ、存在のシンクロ率を高めるという形で上手く機能しています。
 「この花の本当の花言葉は偽物!」
 ヒュウガが密かに送った、花言葉のメッセージに気付いていたサヤが、嫉妬に狂った末の修羅場と見せかけてジュースをすり替えており、 合流した6人は銀河転生と騎士転生。
 初の6人揃い踏み……はまだせずに、「星獣戦隊ギンガマン!」「黒騎士! ヒュウガ!」と名乗りが別カットなのは肩すかしだったのですが、 この先、山場で仕掛ける予定があったりするのでしょうか。
 なお、少し変化をつけたギンガマンの名乗りポーズ、片足立ちのピンクがだいぶきつそう(笑) ……ちょっと揺れた(笑)
 「負けない……私、絶対に負けない! ヒュウガと一緒にバルバンを倒すんだ!」
 ミイラ忍術で黒騎士を苦戦させる魔人だが、桃が援護に入って反撃に転じ、黒の一撃ver.ヒュウガと、 ピンク一人ギンガの閃光のダブル攻撃で快勝。「イリエス魔人族、とてもしぶとい」で巨大化したミイラ魔人は二大瞬殺ロボに挟まれるも酸のビームでダメージを与えるが、 柳生竜巻剣を食らったところに超装光獣王斬りでずんばらりんされ、時間をかけた割には特に流れのない大技2発で倒してしまう為、 どうもロボ戦がパッとしません(^^;
 ギンガイオーはまだともかく、先代時代にゴウタウラスを強く描写しすぎて、ロボット2体並べての戦闘がやりにくくなっている感。
 「あの花のメッセージ、よく気付いてくれたなサヤ」
 「そりゃ花の戦士だもん!」
 強くアピール(笑)
 「……やっぱり」
 「ん?」
 「やっぱりヒュウガは、私の信じた通りのヒュウガだった」
 「え?」
 「ううん、なんでもない。これからも戦士の先輩として、よろしくお願いします」
 小声で呟いたサヤは満開の笑顔をヒュウガに向け、道中ちょっぴり、「兄さん、女子高生とイチャイチャしたかったなんて、 見損なったよ兄さん……!」と疑っていたリョウマに1馬身先行するのであった!
 以前のアイドル身代わり回では、もう一つサヤの魅力がどこにあるのかを引き出し切れなかった荒川さんですが、 今回は思慕の対象がハッキリした上に復活したという事もあり、得意フィールドで手堅く展開。 ……まあ荒川さんの好みからするとサヤはちょっと、“堅すぎる”のかな……という感じはありますが(笑)
 サヤとヒュウガの関係性を掘り下げつつ、パーティバランス的にあまり積極的でも面倒になるので一定の距離を保つ理由を与え、 その上で、サヤのみならず、リョウマ達全員とヒュウガが“しばらくぶりの再会”である事、幼なじみであり同志ではあるけれど、 半年の時間差が生じてしまっているという事も取り込みながら改めて解きほぐした、というのはさすがの手並み。

◆第二十八章「パパの豹変」◆ (監督:辻野正人 脚本:武上純希)
 「イリエス、どうやらてめぇの手下の魔術とやらも、大してアテにはならねぇようだなぁ」
 「そんな、たまたま邪魔が入っただけですわ」
 「言い訳する暇があるなら、さっさと魔獣ダイタニクスの封印を解いてみせろ!」
 ……私、今、大変な事に気付いてしまったのですが、シェリンダさんがもっと落ち着いた性格で、船長と行動隊長の関係を取り持ったり、 行動隊長同士の間に入ってなだめられる潤滑油になれる人だったら、バルバン、ここまで酷い事にならなかったのでは……(笑)
 つまりバルバンに今求められている存在とは…………ジュウオウイーグル・風切大和!(おぃ)
 本日も樽爺が姪っ子をかばい、イリエス魔人族の冷え冷え天使が人間の思いやりや優しさの感情を抜き取って111人分集める作戦を開始している中、 本日も勇太くんは、お父さんに冷たかった。
 「約束って?! パパとの約束は?」
 「とにかく、今はパパの相手してる暇ないの、じゃあね!」
 「じゃあねってそんな! パパを見捨てる気か?!」
 その勇太が向かった先は、シルバースター乗馬倶楽部。ゴウキと鈴子先生のデートをセッティングした勇太だが、 それを尾行していた青山父は、自分よりゴウキとの約束が大事なのだとショックを受けて帰宅中、ひえひえの矢を受けてしまう。
 一方、ゴウキを待ち合わせ場所へ案内する勇太は、こういう時は「ばっちり決める」とゴウキを煽り、
 「あ! そうだ、そういう時は、こうやって、手を握って、相手の目をじっと目を見ればいいって……パパが言ってた!」
 父を冷たくあしらう事が多い勇太が、お父さんから聞いたアドバイスをゴウキに伝える、というすれ違いが秀逸。
 ゴウキをデートに送り出した勇太は家に戻るが心を失った父に家を叩き出されてしまい、一方のゴウキはいい所で魔人出現の連絡に現場へ向かう事に。 モークバズーカの直撃を受けた冷え冷えはあっさり氷となって砕け散り、ダッシュで離脱するブルーの姿に、首を捻るレッド。
 「なんか前にも……こんな事あったような気が……」
 「「「「……あ! 鈴子先生!」」」」
 「え?」
 この半年間の事情を知らない、黒騎士(ヒュウガ)の反応がおいしい(笑)
 ところがゴウキは鈴子先生の元に戻る途中、道で泣いている勇太を発見。一緒に青山家へ向かうが不在で、 二人で青山父を捜し回る事に……元凶はバルバンの悪事なのですが、勇太くん主観ではあくまで、急に約束を破ったから父が怒ったのだ、 と等身大の問題として捉えているというのが上手く機能。勇太が約束を破った理由は自分にもある、 と責任を感じて同行するゴウキは本当に善良なのですが……でも、待ちぼうけを食らわせている鈴子先生について「待っててくれるさ、 きっと!」は、凄く駄目だと思います。
 フラフラと歩く父を発見した勇太は、自分一人で謝れるから大丈夫、とゴウキは先生の元へ急がせ、ここで勇太が、 本当の勇気(悪い事を謝る勇気)を手にしている、というのが勇太君の成長もしっかり織り込まれていて、 今回の白眉。
 「パパ、ごめんなさい。パパとの約束勝手に破っちゃって!」
 「離せ。おまえなど、どっかに行け」
 だが様子のおかしい青山父は勇太を払いのけて歩き続け、その後を追った勇太は、山の中に無表情で集まってきた人々を発見。 そこで儀式を目撃して父を助けようと飛び込むが、青山父も心をの矢を引き抜かれてしまい、 遂に111人の感情エネルギーが巨大水晶の中に集まってしまう。
 「やっぱり俺、勇太の事、ほっとけない!」
 と鈴子先生と会わないまま駆け戻っていたゴウキは、モークから連絡を受けていちはやく駆けつけ、他メンバーも突入してきて、銀河転生。
 一方、勇太君は、巨大水晶に素手攻撃を繰り返していた。
 「パパの心を取り戻してやる!」
 殴りつけた拳から血が滲み、それでも殴り続ける勇太少年の姿から本当は父親を大切にしている事が伝わってくるのですが、 地球の子供達が、ホント、アグレッシブ。
 「何をしているの坊や」
 だがそこにイリエス自らが姿を見せ、黒騎士の援護で突入してきたギンガブルーと直接対決。 ブルーはイリエスのサイキックパワーに苦しめられるも気合いと腕力で逆に拘束し、その間に、 気合いの体当たりで水晶を破壊する勇太。
 てっきり、ブルーが機刃ぐらいレンタルするのかと思ったのですが……勇太は《破壊工作》のレベルが上がった!
 これにより奪われた感情エネルギーは人々の中に戻り、正気を取り戻した青山父に、勇太少年が改めてきちんと謝るのも、良かったところ。
 冷え冷えに大苦戦中のギンガマンの元へブルーが合流すると、獣装光からギンガの光で瞬殺。先に黒の一撃を放った黒騎士が画面手前、 閃光を放ったギンガマンが奥に位置し、その間で魔人が大爆発、というカットが格好良かったです。
 「イリエス魔人族のしつこさ、見せてやるわ」
 巨大化した魔人の冷凍吹雪に苦戦……かと思ったら、ギンガイオーがあっさり凍った横でゴウタウラス、 普通に槍を回転させて跳ね返した(笑) ぐさっと槍で一刺しするも氷変化で回復されるが、 ギンガイオーが超装光で強引に解凍し、前回と同じ旋風剣から獣王斬りのコンボで滅殺。
 ギンガイオーが強化された直後でもあるだけに、ロボ併用の意味がそもそも限りなく薄い為、描写にかなり苦慮が見られますが、 ロボ戦の面白くなさは今作の惜しい短所。
 同じく今回は特に、先輩ヒーローが現役ヒーローの出番を食ってしまいかねない部分への配慮も含め、ヒュウガ(黒騎士)をどう使うか、 という部分にも混乱が見え、不自然に一緒に出てこない・唐突に敵と遭遇している、など雑な使い方になってしまったのは残念。 青山父子の関係を拾い、ここまでの流れをきちっと受け継いだ勇太くんの描写は良かっただけに、勿体なかった部分です。
 ところで黒騎士の弱体化が激しいのは、根本的に中身が違うというのもあるでしょうが、なんだかんだ半年のブランクがあるヒュウガが、 戦場での機知や瞬発力は保っていても、肉体的に完調でなかったりする……とか含みがあると面白いのですけども。
 事件は解決するも、愛しの鈴子先生を完全に忘れていた事に気付くゴウキ、慌てて戻るもベンチには重箱詰めた鞄が残っているだけ…… がっくりと落ち込むが、女神のごとき鈴子先生は、お茶を買いに席を外していただけだった!
 テンション上がったゴウキは勢いで手を握ってじっと目を見ようとするが、そこには乱入した仲間達が、でオチ。……まあ、今回は、仕方ない。
 大きな山を越えて、箸休め的エピソード二つ。ヒュウガ加入の直後という事もあり、キャラクターのバランスをどう取るか、 という試行錯誤が全体に見えすぎてしまうエピソードとなりましたが、その中で、勇太少年のキャラクター強度の高さが光りました。
 次回――想像の斜め上の存在が、出てきた。

◆第二十九章「闇の商人」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 イリエス魔人族の策謀を次々と打ち破ったギンガマンは、ギンガの森の行事である、星祭りの準備中。
 「毎年森のみんなで、平和を願うんだ」
 バルバンが復活したら即戦争のギンガの民の言葉だけに、凄まじい重さ。
 そして祭りの最初に星獣剣の戦士が唱える「戦士の誓い」が、飾り付けを手伝う勇太くんに紹介される。
 「戦士とは……」
 「日々においても戦いにおいても、心に平和を忘れず。
 持てる力全てを惜しまず、諦めず、振り返らず。
 また、仲間を信じ、苦難と哀しみは受け入れる。
 全ては星を、守る為に」
 勿論これが今回のキーワードになってくるわけですが、こういったわかりやすい提示をした上で、後段で成る程と唸らせてくるのは小林脚本の巧さ。
 一方その頃、バットバスと特に親しく、封印以前からバルバンと付き合いがあったという宇宙の闇商人ビズネラが地球へやってくる。 バルバンに売り込もうと運んできた兵器……のシルエットがジャガーバルカンに見えるのですが。
 メカメカしいボディに貴族風の襟、というマシン帝国バラノイアの生き残りのようなデザインと、 猛虎魂を感じさせるカラーリングのビズネラはバットバスと船長にはへりくだった態度で接し、 権力にこびへつらう口の上手いごますり野郎、とでも思われているのか、来訪早々、女性陣からの風当たりがやたらにきつい(笑)
 だがそこは宇宙を股に掛ける阪神商人、暗黒期でも応援を続ける心の強さを持つビズネラは、星獣を葬り去るという兵器をお薦めし、 今なら幻獣ポイントが2倍です。
 「それは信用できんな。おまえは我々が荒らした星の残り物を漁る、いわばハイエナだ。そのおまえがどうしてそんな兵器を持っている」
 「はっはっはっはっは……ところが、思わぬ拾い物もあるんですよ。落ちているのは、鉄クズだけとは限らないのでね」
 ここまでの今作とはかなり異質なキャラクターを、バルバンとの関係性をもって今作の中に落とし込んだ、このやり取りが大変秀逸。
 ハイエナ商人はヤートットを借りて街に繰り出すとイエローと黒騎士を拉致し、超兵器のコントローラーを完成させる為に、 ヒュウガを人質にしてヒカルにアースを放出させようとする。
 「ごめん、俺、強がっちゃって……このざまだ」
 「弱音を吐くな。戦いは、始まったばかりだ」
 ヒカルが珍しく素直な態度を見せるのに対し、ヒュウガは毎度ながら冷静な大人の対応で励まし、頭ごなしに叱るのでもなく、 茶化して煽るのでもなく、相手の心情を慮りながら、巧みに成長に向けて誘導していくというのはリョウマを通して身につけたのでしょうが、 ヒュウガ先生が有能すぎて、サイコサスペンスだったら絶対に真犯人(え)
 娑婆に戻ってきて間もないというのに、拘束されて殴る蹴るの暴行を受けるヒュウガの姿に唇を噛みしめながらも、 超破壊兵器を完成させない為にぐっとこらえ続けるヒカル。
 「彼、死んじゃいますよ?」
 迫真の拷問でビズネラのいやらしさが強調されると共に、ヒュウガのみならず、耐え続けるヒカルの戦士としての成長もしっかりと盛り込まれています。
 「ヒカル……よく我慢したな……」
 耐え続けた二人の戦士に呆れたビズネラは、ナイターでタイガース戦が始まるので、一時撤収。
 「俺もう……限界かもしれない」
 「……おまえが一番辛いのはよくわかる。けど……」
 「見殺しになんて出来るかよ!」
 ……そういえば、ヒカルのハチマキも、猛虎魂。
 「おまえは戦士の誓いを……戦いに活かせるんじゃなかったのか。戦士とは……日々においても戦いにおいても、心に平和を忘れず。 持てる力全てを惜しまず、諦めず、振り返らず。また、仲間を信じ、苦難と哀しみは、受け入れる」
 「苦難と、哀しみ……」
 「そうだ……全ては星を……守るために」
 ヒュウガはがっくりと気を失い、翌日――憔悴しきったヒカルが考え抜いて出した戦士としての結論は、 檻の内部に仕掛けられたアース吸収装置を破壊した上での、自爆!
 「明日の星祭り……一緒に出たかったよ……」
 「幾ら仲間の為とはいえ、自分で自分の命を絶つなんて、そんな事出来るはずがありません!」
 「そう思うなら黙って見てればいいだろう!」
 ヒュウガのヒロイン度が急上昇した!のはともかく、ここでビズネラに啖呵を切るヒカルは非常に格好良く、 リョウマのみならず、半年間の成長が形になりました。
 「戦士とは……」
 しっかり覚えていなかった筈の戦士の誓いを口にしながら、反動で自分が傷つくのも構わずにヒカルはアースを放ち続けた末に倒れ、 折角捉えた銀河戦士に死なれては困るビズネラは、やむなく牢獄を開放。
 「持てる力、全てを惜しまず、諦めず、振り返らず……」
 「まったく、無茶苦茶な事を!」
 その瞬間、目を開いたヒカルは、メインテーマをバックに渾身の反撃で奪われた変身アイテムの回収に成功。
 「また、仲間を信じ!」
 続けてアース狼煙を放ち、二人を探し続けていた仲間達にメッセージを送ると、立ち直ったビズネラを雷撃で吹き飛ばす。
 「苦難と哀しみは受け入れる――銀河転生!」
 勝利の為に他者の犠牲に耐えるのではなく、自ら苦しみを背負った末に活路を見出したヒカルは、変身するとヒュウガを救出。
 「……全ては星を守るために。これでいいだろ?」
 「ああ、上出来だ。――騎士転生!」
 誓いの文言を上っ面だけ覚えるよりもその実践が大事……窮地の中で強がりを有言実行してみせた事で、 ヒカルが日々の戦いの中で真に身につけていた戦士の心構えが発揮され、クライマックスに鮮やかに収束。 畳みかける反撃の見せ方もテンポが大変良かったです。
 「完璧に私の商売を邪魔してくれましたね。ヤートット!」
 「銀河炸裂!」
 全員合流して主題歌バトルとなり、結構強いぞ宇宙商人。
 だが、獣装光→黒の一撃→ギンガの閃光、の無敵コンボの前には瞬殺……と思いきや、 そのエネルギーをコントローラーで回収するという離れ業を見せると、ジャガーバルカンもといデンジタイガーもとい、 巨大兵器・ギガバイタスを起動する!
 変形すると今度はビグトレーラー似のシルエットとなるギガバイタスから更に、赤と青の巨大ロボ、 ギガライノスとギガフェニックスが発進し……高寺さんならしれっとやりそうですが、キョーダイン?(あと微妙にワンセブン風味)
 ギンガマンも星獣を召喚して合体するが、何故かギンガイオーもブルタウラスも戦いを拒否して行動不能に陥り、 一方的な攻撃を受ける事に。
 「さすがに星獣たちにはわかったようですね。そう、戦えませんよ。ギガライノスとギガフェニックスも、同じ星獣なんですから」
 なんと、ビズネラが用意した星獣を葬り去る為の兵器とは、その星獣であった!
 「ははは、はははは!」
 どうしてコントーラーのエネルギー源としてアースを欲しがったのか、という要素も綺麗に収まった所で、 次回――勇太君のヒロイン力が、全宇宙に問われる!

◆第三十章「鋼の星獣」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 「まぎれもなく星獣ですよ……ただし元ね」
 ギガバイタス・ギガライノス・ギガフェニックス、その正体は、バルバンに滅ぼされた星に所属していた星獣を回収し、 兵器として改造したものだった!
 「かつては星の為にバルバンと戦った星獣たちも、今や私の操り人形」
 だいぶ以前、ギンガイオー誕生編の際に、一度は倒れた星獣たちが後戻りできないメカとなって甦る展開だったら更に燃えたのに!  というような事を書きましたが、宇宙の闇商人と発想がかぶった!(笑)
 ライノスとフェニックスがブーストライフルとブーメランでギンガイオーとブルタウラスを痛めつけ、 ビズネラはバルバンとの商談の為にトドメを刺さずに引き上げ、見事に売買成立。コントーラーは行動隊長イリエスに預けられ、 緑の大猿バルキバルキが出撃する。
 一方ギンガマンは、心を殺された同胞達にどう対応すべきかを決めあぐねていた。
 「今夜は星祭りだったな」
 「星獣は星から生まれる。星を、守る為に。そして何千年もの間には、死んでいった星獣もたくさんいる。 でもそんな星獣たちの心は死なない。きっと生きてる。そう信じて、星を守る全ての心を一つにして、平和を願うのが、星祭りなんだ」
 前回の星祭りの要素を引っ張りつつ、星獣とは何か、というのを再設定。
 「心を一つに?」
 「その飾りは、星獣や戦士たちの心を繋げた、象徴だよ」
 「そんな日に、殺し合っていい筈ないよ。星獣が、あの星獣たちだって、きっと悲しんでると思う」
 「助けよう! あの星獣達を! なんとかして元の、星を守る星獣に戻すんだ!」
 勇太くんの言葉もあり、改造星獣を倒すのではなく、心を取り戻させる、という道を選ぶギンガマン。
 「……星獣達の心は死なない」
 ヒュウガのこの言い回しは大変格好良く、前回は冒頭に掲げた「戦士の誓い」がクライマックスに見事に集約されたのですが、 今回はこの後、暴れ回る宇宙鉄人ギンガの森風を相手に、成功率10%の《説得》コマンドをひたすら繰り返していたらたまたま成功した みたいな事になってしまい、大変雑な展開。
 象徴の飾りを手にサロンから声援を送る勇太くんの存在も特に効かないですし(宇宙ライオンなどとの友情も別に反映されない)、 ギンガマンの行動にも特に劇的な転機となるものが描かれないので、とにかく殴る蹴るに耐えながら毎ターン説得を繰り返していたら、 ふっと相手が正気に戻った、という山も谷もなさでクライマックスが心停止。
 「死んでなかった! やっぱり星獣の心は死んでなかったんだ!」
 を幾ら繰り返しても劇的な説得力を持たせるには至らず(これはあくまで、補強する理屈に過ぎないので)、 商業的な都合で急ぎ足にならざるを得ない事情などがあったのかもですが、丁寧な積み上げで山場山場の展開に説得力を持たせてきた今作としては、 ここまででワーストクラスの大惨事。
 ラスト、無事に開催された星祭りの夜に戦士の誓いが唱和され、大集合する星獣たちは良い絵で、 リョウマが勇太くんとした「心配するな。今夜の星祭り、みんなでやろう。あの星獣たちも一緒に!」 という約束を守ってみせたのも良かったのですが……「星獣達の心は死なない」事にどう説得力を持たせ、どうそこに言葉を届かせるか、 という物語としての肉付けが全くない無味無臭のクライマックスが、脚本・演出ともに残念でした。
 初のメインライターながらここまで順調に物語を紡いできた小林靖子回だけに、 様々な商業的要請を受け止めながら年間通してアベレージを保つ事の難しさを、改めて感じる勿体ない失点。
 海賊に不良品を売りつけたふてぇ野郎として全財産を没収された阪神商人は、男気を見せたバットバスに拾われ、馬鹿×暴れん坊で、 サンバッシュとの差がこれまで見られなかったバットバスに、親分肌の一面が強化。そして行動隊長イリエスの前には、 初代瞬殺ロボ&二代目瞬殺ロボ&機動要塞&追加ロボ赤&追加ロボ青、と、一挙に2.5倍となった巨大戦力が立ちはだかるのであった!
 次回――シェリンダ、動く。
 サイコサスペンスなら、中盤、真犯人(ヒュウガ)に全ての罪を着せられて犯人に仕立て上げられ、 自殺に偽装されて殺されそうなハヤテは、案の定ヒュウガ復活によって兄役ポジションを奪い去られ、 年少者を導く存在としても圧倒的な格の違いを見せつけられてしまいましたが、ここで、 ヒュウガにはないハヤテだけの要素として、シェリンダとの因縁が浮かび上がる、というのは成る程。 ヒュウガ復活を見越した上でハヤテにこの因縁を与えていたのだとしたら、先を見据えた仕込みがお見事です。

→〔まとめ6へ続く〕

(2020年3月30日)

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