■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ4■


“見せつけろ 星獣魂! 雄々しく 熱く
燃え上がれ 星獣魂! バルバンを倒せ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ4(19話〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第十九章「復讐の騎士」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 かつて――まだバルバンが魔獣ダイタニクスを駆って銀河狭しと暴れ回っていた頃、その襲撃を受けて壊滅した星の1つこそが、 黒騎士ブルブラックの母星であった。
 謎の巨影ゴウタウラスと共にバルバンに反抗し続けていた黒騎士だが、弟クランツを人質に取られてしまう。
 「あめぇなブルブラック。こんなお荷物しょって戦おうってのが間違いよ。その甘さ、結局なんの足しにもならねぇって事、教えてやるぜ」
 剣を捨て、無抵抗で嬲り者にされた黒騎士の目の前で弟は船長の手により無惨に真っ二つにされ、着ぐるみとはいえ、 年端もいかぬ少年にエフェクトがばっさり入っていてえぐい。
 黒騎士が弟を失っていた、というのは当然リョウマとヒュウガの関係を想起させるのですが、 黒騎士の弟クランツが震える手に短刀を握りしめてゼイハブと向かい合うシーンは前々回の勇太少年の姿と重ねられており、 黒騎士弟の恐怖に同調しやすいのと同時に、もしあの時、勇太くんが海賊兵にずんばらりんされていたら……?  と黒騎士自身の心境も想像しやすくする、という仕掛けが鮮やか。
 海賊達は敢えて黒騎士にトドメを刺さずに嘲笑いながら路傍に捨て置き、バルバンへの復讐者と化した男は今、 遠き地球の地で3000年の眠りを超えて、弟の形見の短刀を手に、星空を見上げる。
 「来い、ゴウタウラス。復讐は始まっているぞ!」
 黒騎士の渋い声音とあいまって、ここでサブタイトル入るのがまた、格好いい。
 今作、バルバン幹部クラスに豪華なベテランを中心に揃えた一方(茶風林さんの昔からずっとベテラン感はホント凄い……(笑))、 各話怪人はアニメ畑の有名声優、というわけではないキャストが多く、黒騎士役も初めて聞く名前だったのですが、 抑えの利いた演技が非常にはまっており、何より、ヒュウガである事を期待させた上で、 明確にヒュウガではないところでキャラを立たせているのがお見事。
 どうしても、やはりヒュウガではなかった、と一度がっかりさせた上で独自の魅力を出さないといけない、 という難しいキャラなのですが、声、見せ方、台詞回しなど、よく練られており、 特に今回「復讐は始まっている」というフレーズは大変格好良かったです。
 その頃バルバンでは、知恵袋としてのプライドをいたく傷つけられた樽爺がブドー更迭の為に讒言を繰り返していたが、 船長はそれを退ける。
 「ブドー! てめぇに任せた以上そう簡単に交代させたんじゃ俺のメンツも立たねぇ」
 「はっ!」
 「だが俺も気が変わりやすいからな。あんまり長引くようじゃ、てめぇの命、保障はできねぇぜ」
 猛者どもを束ねるキャプテンとしての貫禄を見せたと思ったら、すぐに恫喝してしまう懐の狭さが玉に瑕な船長ですが、 この恐怖政治とそれに付随する配下の功名争いが、組織としてのバルバンの特性といえるでしょうか。
 「全て覚悟の上」
 ブドーは既に配下最強の4将軍を動かしており、その内の一人、砂爆盗が狙うのは「灼熱の星を象りしもの」……すなわち、 太陽のオブジェを爆破しようとするオコゼ魔人だが、風を切る形見の短刀!
 2月2日、クランツを殺したのは貴様か?!
 某有名リベンジャーヒーロー先輩同様、大事な形見で攻撃する人だった黒騎士はオコゼと交戦し、モークがこれをキャッチ。 まずはバルバン抹殺が最優先と黒騎士に加勢する5人だが、キバの逆鱗を破った一番槍の虚無僧に続き、4将軍にはバズーカが通用せず、 なんと、モークバズーカ、半クールでただの巨大なチクワに!!
 ギンガの光にのみこだわる黒騎士は周囲の一般人に構わずショットガンをぶちかまし、赤青緑がこれを必死に止めている間に、 オブジェを破壊したオコゼ魔人は撤収。ギンガマンは黒騎士へと詰め寄り憤りをぶつける。
 「黒騎士! どうしてこんな無茶をした?!」
 「バルバンを倒す為だ」
 「おまえ! バルバンさえ倒せばそれでいいっていうのかよ?!」
 「そうだ」
 「そんな?! どうして?!」
 「奴らは私の星を滅ぼした。私の弟を殺した。……そういう事だ」
 同じ“悪”と戦うものながら、ギンガマンと黒騎士、両者の手段が明確に衝突し、去って行く黒騎士の背を見送る事しかできないギンガマン。
 「黒騎士ってさ……私たちと、似てるね」
 もともと復讐者としての一面を持っていたギンガマンですが、様々なものを失い、復讐に飲み込まれた者と飲み込まれなかった者、 黒騎士の登場による対比からその一面がくっきりと浮き上がると同時に、では復讐に飲み込まれる事なく戦い続ける “ギンガマンとは如何なる存在なのか”と繋がり、ヒーローが物語られるという、新キャラクターの使い方が鮮やか。
 「黒騎士も、ふるさとと弟を」
 「黒騎士の戦いは、その復讐というわけか」
 「わかるけどさ……俺だってバルバンぶっ潰してやりたいし」
 「でも……俺はあんな戦い方は、嫌だ」
 「……黒騎士の気持ちはわかる気がするよ。あの時はただ、怒りに我を忘れていただけだと思う」
 複雑な思いを抱えながらも黒騎士の戦い方を否定するギンガマンは、対になるもう一つの太陽の彫刻を破壊しようとするオコゼ魔人と激突し、 今回も銀河炸裂!
 「貴様等を地獄に送り込む!」
 そこへ現れた黒騎士は、ギンガマンを苦戦させるオコゼを追い込む武勇を見せつけるが、 落としたぬいぐるみを拾いに戻ってきた幼稚園児がオコゼの人質にされてしまい、かつて弟が人質にされた時と同じ状況に陥る事に。
 「人質はおまえのお得意だな」
 「ブルブラック、ギンガマン、剣を捨てろ」
 卑劣なオコゼの指示に従うギンガマンだが、既に何よりも大事な存在を失った黒騎士は、握った剣を離そうとはしない。
 「ブルブラック、聞こえねぇのか」
 「今の私に人質など意味はない。……貴様等バルバンを倒すのに」
 かつての悲劇を背負い、その復讐を心に抱く黒騎士は、人質無効を宣言すると躊躇う事なく歩を前に進め、思わずたじろぐオコゼ。
 「てめぇ……なに考えてやがる?!」
 「3000年の間、貴様等バルバンを倒す事だけを考えていた」
 噛み合っていないのに、噛み合っているのが、素晴らしい台詞(笑)
 黒騎士はギンガマンの制止を無視して剣を向けたまま直進していき……大丈夫大丈夫、もし何か問題が発生しても、
 「あ! なんて事をする!」 (某B先輩)
 「しまった……。秘密を守る為に自爆してしまったんだ」 (某K先輩)
 と、大変遺憾です、という気持ちを態度と言葉で表明すれば、意外と流せます。
 「貴様……いいんだな」
 「やってみろ。だが同時に、貴様の命もない!」
 「黒騎士! やめろぉ!」
 人質無効の復讐の刃が放たれようとしたその時、必死に組み付いて黒騎士を押しとどめるレッド。
 「あの子を死なせるわけにはいかない!」
 ちょうど盾になる形でその背にオコゼ魔人の爆煙が直撃し、崩れ落ちた赤を一顧だにせず直進しようとする黒騎士だが、赤はその足に、 その体にしがみつき、全身全霊をもって黒騎士の前進を止める。
 「駄目だ黒騎士」
 直後、更なる攻撃を背中に浴びながらも、赤は黒騎士の体を離さない。
 「ここであの子を見捨てれば……どう戦おうと、それは、バルバンと同じだ!」
 正義も悪も、突き詰めれば暴力で事態を解決するならば、その違いはどこにあるのか? 普遍的な問い、根源的な呪縛に対して、 その一線を高らかに宣言し、ギンガマンとは如何なるヒーローなのか、が血を吐くよう叫びに濃縮されて、大変格好良かったです。
 これを言えるのがリョウマである、と主人公としてのリョウマも大きくジャンプアップ。
 まとめて爆煙で吹き飛ばされる赤と黒騎士だが、オコゼの注意が二人に向いていた隙に回り込んでいた緑がキバショットを用いて園児を救出し、 結果的に囮になった赤が作った機会を逃さずに利用するギンガの民、マジ戦闘民族。
 「待て! おまえを倒すのは、この私だ!」
 さすがにナノスキン装甲ではなかったらしく、負傷しながらも立ち上がった黒騎士は間接的に弟の仇といえるオコゼに躍りかかるも剣を失って苦戦するが、 赤が投げつけた剣を空中キャッチから必殺剣で一撃粉砕。膝を付いた黒騎士の前で最後の力を振り絞ったオコゼはオブジェを破壊してギンガの光がそこに宿っていなかった事を確認すると、エキスで巨大化。
 ギンガイオーを繰り出すギンガマンだが、太め体型から繰り出されたまさかのドロップキックの直撃を受けて仰向けに倒れ、更に史上初、 鳥頭ボウガンの発動モーション時にカウンターの爆煙を浴びて、驚愕の合体解除。モークバズーカに続いてギンガイオーさえ破り去る驚異のブドー4将軍だが、 その時、大地を震わせ、地割れと共に姿を見せる、巨大な黒牛。
 それこそ、かつて黒騎士と共にバルバンと戦っていた巨大な影の正体、その名を、重星獣ゴウタウラス!
 「黒騎士ブルブラックは、重星獣ゴウタウラスの力によって巨大化し、重騎士ブルブラックとなる」
 タウラスからビッグライトを投射された黒騎士は瞠目の巨大化を見せ、鎧の一部が可変し、 シルエットがどことなくマッシブになっているのは……脱いだ!というイメージなのでしょうか?  ほぼ黒一色だった黒騎士モードとは違い、体の半分ほどが赤くなり、配色は正直……格好悪い(^^;
 体型的にラリアットからバックブリーカーとかしそう……と思った重騎士ですが、 タウラスの背にまたがっての突進攻撃の後は牛の角イメージとおぼしき二刀流で普通に接近戦を行い、 この戦いを呆然と見ているのではなく、地上からキバショットで参戦するギンガマンが、マジ戦闘民族。
 ギンガマンに迫ったオコゼの攻撃を防いで赤への借りを返したブルブラックは、タウラス赤熱ホーンで魔人を放り投げると騎獣合身し、 二足歩行モードになったタウラスの胴体にはまりこんで、合身獣士ブルタウラス誕生。
 どうやらこちらが本命の2号ロボらしく、ブルタウラスは合身するや否や柳生旋風剣でオコゼを斬殺、新たな瞬殺ロボが誕生するのであった。
 「私は星を無くしてから、ずっと一人だった。仲間はいらん、ゴウタウラス以外は。それにお前達は甘すぎる。あんな戦い方では、 絶対にバルバンに勝てん」
 「でも……復讐だけで、手段を選ばないとしたら、それは……!」
 「ギンガの光を手に入れ、バルバンを倒す。今の私にあるのは、それだけだ」
 共闘を持ちかけるリョウマの言葉を撥ね付けた黒騎士は、ヒュウガの死やギンガの森の封印という5人の事情を聞かされても足を止める事なく、 歩み去って行く。
 「それでも! おまえみたいな戦い方するもんかよ! 絶対!」
 その背にヒカルの叫びが叩きつけられるも、両者の道は未だ交わらず、伝説は激闘と混迷を深めていくのであった……!
 実質的に職業戦隊であり、公私ともに明確な目的意識から戦いに対するブレの無い、正統派“正義のヒーロー”であったギンガマンは、 圧倒的にわかりやすい反面、良くも悪くも臭みが無い所があったのですが、伝説クラスの戦士にして地の底で熟成された復讐者、 という黒騎士の登場によりギンガマンの抱える光と影が明確になり、それらを既に飲み込んでしまっているギンガマンの本質とは何か?  が掘り下げられてとても良かったです。
 この後、00年代に入って追加戦士が完全に定番になっていくと、逆にここまでシンプルな作劇はやりにくくなっていくのかもしれませんが、 追加戦士と戦隊の関係としては、一つのお手本のような用い方。

◆第二十章「ひとりの戦い」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 「俺たちは故郷は無くしたけど、仲間と一緒だし……それに、勇太もいるだろ」
 勇太に黒騎士の事情を語ったリョウマの、通じる所のある黒騎士へのフォローを入れつつ、 勇太少年に笑顔を向ける好青年ぶりが素晴らしい一方、黒騎士の話題から除け者にされて面倒くさくいじける青山父(笑)
 ミラクルシェフ・ゴウキの料理が場を和やかにした頃、バルバンではブドーに対抗意識を燃やす樽爺がギンガの光の手がかりを発見するが……それはブドーの下書きだった。
 「ははは、ブクラテス、おまえにしては早まったな」
 嘲笑しつつも「にしては」と意外と評価の高い樽爺ですが、若い頃はきっとキレキレの策士だったのでしょう……(遠い目)
 一方、年寄りのプライドを悪気無く逆撫でするブドーの次の目標は、「夢より醒めるもの」。
 「目覚めるとなればすなわち生きているもの全て」
 「多すぎる! どうやって探すつもりだ」
 「全ての生き物を永遠の眠りに落とせば、ギンガの光は姿を現す筈」
 そもそも活動範囲と目標が地球だけではなく大宇宙規模なので、ナチュラルにトンデモない事を言い出しました!
 ブドー4将軍の一人、渡世人風の氷度笠(クラゲ)が出陣し、街中に降り注ぐ氷の針をその身に受けた人々は、 全て冬眠状態に陥ってしまう。モークがこれを感知し、クラゲ軍団とギンガマンの夜戦において、 背後にネオンサインを背負って戦うというシーン演出が大胆な格好良さ。
 クラゲの剣技の前に炎一閃が敗れ、次々と氷の針を受けるギンガマン。さしもの戦闘民族も冬眠状態に陥ってしまい、唯一動けるのは、 炎属性のリョウマだけになってしまう。
 「眠れ……ギンガの光を誘い出す、深く冷たい眠りに落ちろ」
 モークすら眠りに落ちてしまい孤立無援のリョウマだが、冬眠状態の人々が耐えられるのは恐らく日暮れまで…… というモークの言葉を胸に一人でも戦う覚悟を固め、凍り付いた街の中を飛び回るクラゲの笠を発見。 だがその後を追うリョウマ目がけて飛んでくる形見の短刀!
 2月2日、クランツを殺したのは貴様か?!
 「今バルバンの邪魔をされては困る」
 「なに?! どういう事だ!」
 「決まっている。ギンガの光を待つのだ。せっかくのお膳立てを利用しない手はない。奴はその後で、倒す」
 「そんな事してたら、みんな死んでしまう! どいてくれ!」
 「多少の犠牲は仕方ないだろう」
 躊躇なく断言し、リョウマに剣を向けて妨害する黒騎士は思った以上に道を踏み外しており、しかし、 こういう情念の深さの描き方が、信用できるところです。
 下手な物語だと、この行動基準を話の都合で軽く扱ってしまうのですが、黒騎士が復讐の為にどこまでやるのか、というのはすなわち、 黒騎士が復讐に懸ける思いの強さを示すのであり、黒騎士というキャラクターの核と密接に繋がっている、という意識がしっかりとしています。
 「今言い争っている暇はない!」
 銀河転生した赤は黒騎士と激突するが、3000年戦士を上回る力を見せる、復讐の騎士。
 「仲間と馴れ合い、守るものを抱え込んでいる限り、バルバンと対等に戦う事はできん! 貴様のこの弱さが、その証拠だ!」
 「それは違う!」
 今回も出鱈目に散弾をばらまく黒騎士から、冬眠中のネコをかばったレッドは、そのダメージで変身解除。
 「それだ……その甘さだ。守るものがある限り、それは弱点となる」
 「でも俺は……今までそうやって戦ってきたんだ! そのせいで弱いなら、弱くったっていい!  その代わり俺は、何度でも立ち上がる! 守りたいものがある限り!」
 前回今回と、リョウマが黒騎士と向き合い、戦士として拠って立つところを自分の言葉にする事で、男っぷりと主人公度が大変上がりました。
 「何もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ。あなたの戦い方では、終わった後に、 何も残らない!」
 「貴様ぁ……」
 そしてここでポイントなのは、リョウマは黒騎士の復讐そのものは否定していないという事で、ここで黒騎士の復讐を否定すると、 リョウマ(及びギンガマン)の中にあるものをも否定する事になってしまうのですが、リョウマはそれをしない。
 復讐しても何も残らないのではなく、復讐の仕方を間違えると何も残らない、復讐を果たし、勝利の後に何を得るかに視点があるのが、 実にギンガマンらしいといえます。そして、なぜ復讐の仕方を間違えてはいけないかといえば、 復讐の為にバルバンと同じになってしまうなら、復讐を果たした後に残っているのは、新たに生まれた、復讐されるべき悪だから、 というのが、今作のヒロイズムといえるでしょうか。
 睨み合う二人だが、その時、浮上するギンガの光。
 黒騎士に火炎放射を浴びせたリョウマは馬にまたがりその後を追い、同じく馬に乗って光を掴み取った三度笠だったが、それは偽物。 人々を救う為にリョウマは馬上で銀河転生し、挿入歌をバックに始まる騎乗戦闘は、スピード感のあるカットでなかなかの迫力。
 「無駄だ。貴様と私とでは実力が違う!」
 だが、剣技では赤を上回る三度笠に滅多切りにされ、倒れるレッド。
 (やるしかない。勝つしかないんだ。みんなを守る為にも)
 実力差は歴然ながらも、守りたいものの為、弱さを超えて再び立ち上がった赤は、 ノーガード仁王立ちから抜刀術へ捨て身のカウンターを炸裂させ、敗れた三度笠よりも勝ったレッドの方が体を倒しながらの泥臭い剣術、 というのが面白いところ。それこそ往古の東映時代劇を思わせる一騎打ちでしたが、一部スタッフの趣味が色濃く反映されたのでしょうか(笑)
 「……もう一人、居たというわけか……」
 思わぬ言葉を残してクラゲ笠は大爆発し、その背に付き立っていたのは、形見の短刀。
 「言った筈だ。貴様の力では、バルバンには勝てんとな」
 黒騎士と赤が睨み合っている間にクラゲ笠は巨大化し、傀儡太夫戦で出番の無かった銀河ライオンが今回はソロで戦うも苦闘を強いられているところに、 牛と黒マッスルが乱入。
 「貴様は私の星で何人殺した」
 「知らん。一人でない事は確か」
 「そうか。……許さん」
 黒マッスルは一騎打ちでクラゲ笠を切り払い、メカライオンの火球が炸裂後、機獣合身から今回も一撃必殺。 バルバンでは偽のギンガの光によりクラゲ笠とギンガレッド、黒騎士をぶつけ、 ブドーの作戦妨害に成功した樽爺とイリエスが溜飲を下げて高笑いし、イリエスは樽爺の姪という血縁関係が判明する。
 クラゲ笠の死により氷の針の効果は消え、平穏を取り戻した世界で、視線をぶつけるリョウマと黒騎士。
 「貴様等にバルバンは倒せん。いつかはその甘さが、命取りになる」
 「……認めない、黒騎士。俺はあなたの戦い方を」
 黒騎士は本日もマントをなびかせ、孤独に去って行くのであった……で、つづく。
 前半早々にメンバー4人がリタイアし、サブタイトル通りにほぼリョウマ単独で進行するという展開の中で黒騎士との対比が更に進められ、 過去のトラウマから孤独である事を強さに繋げようとする黒騎士に対して、
 「俺たちは故郷は無くしたけど、仲間と一緒だし……それに、勇太もいるだろ」
 という冒頭の言葉をエピソードを貫くテーゼと置き、ギンガマンの戦い方、ギンガマンの持つ強さ、をあぶり出す事で、 “ひとりの戦い”を通してむしろ仲間の意味を描く、というのが実に戦隊していて、好エピソード。
 また、実力を背景に殴ってくる黒騎士の理屈に対して、確かに実力不足を露呈しながらも、 「何故そうあってはいけないのか」というリョウマの理屈にしっかりと説得力があるのがお見事でした。
 前回今回と、黒騎士の背景から導き出される他者の命に対する価値観・ギンガマンは黒騎士の戦い方を否定するがその心情は否定しない・ だからリョウマは黒騎士に対して安易な綺麗事で殴り返さない、と、一歩踏み外すと腰まではまってしまいそうな落とし穴を華麗に回避して走り抜けていたのも、 非常に優れたバランス感覚。
 難を言えば、「4将軍」というだけでは説得力の上積みに限度があり、バズーカとギンガイオーの弱体化が唐突になりましたが、 思想信条において相反する黒騎士と向き合う事でリョウマが大きくジャンプアップしたのは好材料で、 ここからギンガマンと黒騎士がいかなるところに“本当の強さ”を見出してバルバンに立ち向かう事ができるのか、 今作の見せてくれる解答が楽しみです。
 次回――「ゴウキの涙がトマトを濡らす」。
 妙に予告が格好いいのに、キーワードは「トマト」でいったいどうなる?!

◆第二十一章「トマトの試練」◆ (監督:辻野正人 脚本:荒川稔久)
 夏だ! 水着だ! 鈴子先生だ!
 ハヤテの髪型チェンジぐらいしか暑さの気配が無かった所に、地球の夏など私には関係ない! と夏らしさ皆無の黒騎士が登場してますます季節感の無かった今作ですが、激闘の合間、 英気を養い殺意を研ぎ澄ます為にも束の間の休息が戦士には必要、と一行は勇太少年の誘いで海へ…… そしてその土地は鈴子先生の実家ほど近くであり、ゴウキ大ハッスル!
 それぞれ水着で遊ぶ中で何故かゴウキが脱がないのですが……照英さんが意外と色白でゴウキのイメージに合わないとNGになったのか、 あまりに危険すぎるボディに目の毒だとお蔵入りになったのか……ゴウキの水着は絶対フンドシですよね?! と脚本会議で変な方向に盛り上がった結果、封印されてしまったのか…………大変、気になります。
 なお膝丈の水着で勇太少年とビーチボールでたわむれるハヤテが完全に“お父さん”なのですが、 ギンガの森を取り戻した後に向けて着々とシミュレートが進んでおります。
 海には入らないが鈴子先生とバーベキューの準備をして大喜びのゴウキだが、鈴子先生がお裾分けで持ってきた、 実家で採れたトマトを目にして、顔を背けるハヤテ……段々、ただの偏食の人みたいになってきたゾ。
 素直に苦手と白状すればいいのに、必死に誤魔化そうとするあまり凄い勢いで駄目な感じになっていくハヤテは、 犬と戯れるフリをしてトマトを水着の中に隠し、大変不適切な感じの映像になっているのですが、「気付いたらトマトが入っていた」 「なぜ、私どもの手にトマトがあったのか知りたい」は、いつ頃かと思ったら1990年でした。
 ハヤテの奇行に何やら苦渋の表情を浮かべるゴウキは、二人きりで大事な話があると鈴子先生を呼び出し、 それを完全にアンブッシュしてピーピングする戦闘民族ギンガの民達。
 「実は俺…………大好きなんです!」
 「え?」
 「……本当に好きなんです。トマト!」
 すわ告白か、と盛り上がっていたピーピング軍団が一斉にひっくり返ったところで、赤くて丸い食べ物を手当たり次第に破壊していく歌舞伎カニ魔人が出現。 突出したグリーンが歌舞伎バズーカの直撃を受けて派手に負傷してしまい、ギンガマンは風の戦士の怪我や病気をたちどころに治すという、 微妙に危ない気配のあるシラスズの実の事を思い出す、のだが……
 「でもあの実はギンガの森にしか……」
 「いや、可能性はある」
 「どういう事だモーク!」
 「――トマトだ」
 ハヤテ、超ショックの表情で固まる(笑)
 「トマトの中には、シラスズの実と同じ栄養分が含まれている。だからトマトを食べれば」
 手元には鈴子先生から貰ったトマトが山盛りで、これ幸いとヒカルが突き出すトマトを、凄くシリアスな音楽で見つめるハヤテ。
 「良かったな! これで5人で、戦える!」
 友よ、おまえのキラキラしたガッツポーズが、辛い……!
 「ほら、ハヤテ、がぶっといって元気になってくれよ!」
 「…………駄目だ」
 「まさかハヤテ、トマトが嫌いなのか?! ……なんだよハヤテ! いつも偉そうな事言ってるくせに、好き嫌い多すぎじゃないか?!」
 ヒカルの率直なツッコミが、生死の瀬戸際で説教戦士の胸にぐさっと突き刺さり、大変面白い事に。
 ハヤテの偏食を責めるヒカルをゴウキが止めた時、「みんな、今度は黒騎士が現れた」と遂にモークからエネミー設定を受けてしまう黒騎士(笑)  それ以上は無理強いせずに4人はハヤテを残して対応に向かうが、その黒騎士は、農家のトラックを公然と襲うと、 片っ端からトマトを撃ちまくっていた。
 「地球汚染源、消滅」
 じゃなかった、
 「ここにもギンガの光は無かったか」
 声も構えも渋い黒騎士ですが、やっている事はモンスター軍団(『コンドールマン』)の日本ハンガー作戦を思い出させて困ります。
 「狙いはトマトに、絞られたというわけか」
 更にその背後にブドーが現れ、声は渋いが物語の焦点はトマトです。
 黒騎士とブドーはギターの音色をBGMに切り結ぶ格好いい一騎打ちに突入するが、 駆けつけたギンガマンの目前で突如として胸を抑えて倒れる黒騎士。ギンガマンの助勢もあって手傷を負ったブドーは撤退し、 ギンガマンは続けて魔人が現れたJAトマトセンターへ。トマトを食べて回復したグリーンも合流……と思いきや、 結局トマトを食べずに気力と責任感と見栄で復活を装っていた緑は再び負傷し、赤黄桃が歌舞伎魔人を追う事に。
 「「すまん!」」
 残ったゴウキとハヤテは互いに謝罪し、驚くハヤテを前に涙を流すゴウキ。
 「すまん! 俺が、俺がトマトをおいしく料理できていれば、こんな事ならなかったのに……!」
 「ゴウキ、どうしておまえが泣くんだ?」
 「……後はおまえだけだったんだ。リョウマもヒカルもサヤも、嫌いな食べ物をこっそり料理に混ぜて出していたら、そのうちに、 好き嫌いがなくなっていったんだ。だから、なんとかおまえにも嫌いなトマトを食べてもらえるようにと思って、夜も寝ないで、 考えていたんだが……」
 銀河戦士達から好き嫌いを根絶するプロジェクトゴウキの存在が明るみとなり、ゴウキはとうとうとその理屈を語る。
 「好き嫌いはないほうがいい。体も丈夫になるし、なんでも食べられるって、嬉しい事だ。そんな嬉しいお前に、 してやりたかったのに……」
 「おまえのその気持ちには応えたい。けど、俺にはどうしても、トマトが……」
 生死を懸けた激闘の中で大の男達がトマトを食えるか食えないかで葛藤する、という大惨事すれすれの展開なのですが、 男泣きのゴウキ、シリアスに応えるハヤテ、とあくまで真剣な描写を徹底する事で、なんだか凄く面白い事に(笑)
 脚本会議を経た上で最終的には監督の領分かと思われるのですが、同じ辻野監督によるヒカル×リョウマのしゃっくり爆死回が、 迫り来る爆死タイムリミットというシリアスな状況設定に対し、 ゲストキャラ含めて徹底的にギャグとして演出する事で悲劇性を緩和しつつリョウマの真面目さがサイコホラー風味のスパイスになっていたのに対し、 今回はトマトを食えるか食えないか、という迫真とはほど遠い状況設定をあくまでシリアスに描写し続ける事で当人達の真剣なやり取りが一周回って笑いに繋がっているというのが、 脚本に対する演出のアプローチとして対照的で興味深いところ。
 「そうだ! まだ可能性はある」
 鈴子先生の実家に駆け込んだゴウキ(勇太くんは、ここに避難中)は、幼い鈴子先生のトマト嫌いを直したという伝説のレシピを聞き出し、 それが調理法ではなく、近くの山で採れる銀河一おいしいトマトのお陰だと知る。ゴウキはトマトを手に入れるべく山に走るが、 その情報が歌舞伎に伝わってしまい、ギンガの光はトマトの中 → 銀河一おいしいトマトの存在 → ならギンガの光はその中にあるに違いない、 と妙な連鎖で生じる変な説得力(笑)
 「俺は! おまえらと戦ってる、暇はないんだ!」
 ゴウキは群がるヤートットを怒りの形相で蹴散らしていき、泣きばかりではなく、1話の中にしっかりと色々なゴウキが詰め込まれているのも、 良かったところ。
 「もう、駄目なのか……? お、俺が、好き嫌いをしたばかりに……」
 「ハヤテーーーーーーーー!!」
 全滅直前だった4人の元へゴウキが戻り、トマトをパス。この期に及んでトマトにかぶりつくのを躊躇うハヤテに対し、 「ギンガの光、食べさせはせん!」と歌舞伎バズーカから銃撃が放たれるが、赤黄桃は身を挺してハヤテをかばう!
 「ハヤテ! 後はおまえの気持ちだけだ! 好き嫌いに勝とうとする、心だけだぁ!!」
 ひたすらシリアスな演出が続き、魔人に立ち向かう仲間達の背と、手の中のトマトを見つめるハヤテ。
 (好き嫌いに勝とうとする心……)
 「ハヤテ!」
 「食べろ!」
 仲間達の想いに応え、ハヤテ、遂にトマトをがぶっと一口。
 「……美味い! 本当に美味い!」
 その姿に満面の笑顔を浮かべたゴウキ、会心のガッツポーズからの流れで、背後のヤートットに肘を叩き込むのが格好いい。
 しかしトマト嫌いの克服も束の間、歌舞伎バズーカの直撃を受けるハヤテだが、爆炎が晴れるとギンガグリーン完全復活。 そしてここで、炎の向こうにグリーンが姿を見せると共に流れる主題歌!!
 ……今回多分、筋だけ抜き出すとえーーーという話なのですが、辻野監督の演出が冴えまくって、 変な方向にやたら面白い事に。
 「銀河を貫く伝説の刃、星獣戦隊・ギンガマン!」
 絶好調のグリーンは飛行攻撃で歌舞伎を翻弄し、ハヤテがトマトを食べられなかったのはやはり、 風の戦士にとってのヤバい成分が強すぎたからなのでは。
 つまり、お薬は用法用量を守って正しく使いお茶の中に偶然混入していだけであって意図的な摂取ではなくアース忍法竜巻の術から久々のバズーカ滅殺で、 これが、リコピンの力だ!
 リコピンの赴くまま今回はギンガイオーも圧勝し、トマトは実は、ごく普通のトマトでした、でオチ。
 「食べ物はみんな、大地の恵みだ。好き嫌いをなくせば、それだけ幸せも、増えるし。頑張る力も、わいてくる!」
 もはやゴウキがなんの戦士だったかよくわからなくなってきたところで、皆でトマトにかぶりついて、つづく。

◆第二十二章「光の出現」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 「おまえらな、これは訓練だぞ。喧嘩じゃない」
 戦闘訓練中の意見の衝突からどつき合いを始めたサヤとヒカルを止めるハヤテが、やたらシリアスで怖い(笑)
 「ま、まだまだ子供だからさ」
 サヤの作ったケーキをヒカルが黙って一人で食べてしまって大揉め、という前日にあった一騒動を勇太君に紹介するリョウマ、 割と年下二人に対しては軽く茶化すのですが、この言葉を聞きとがめられて迫られるも、それを止めるハヤテ。
 「いいや。リョウマの言う通りだ。二人とも今日買い出し当番だったな。ちょっと行って頭冷やしてこい!」
 前回の補填をするかのように強面を前面に押し出すハヤテに加え、その横に並んだゴウキが剣を肩にかついでいるのが、地味に怖い。
 「いいの? あのままで」
 「あれぐらいいつもの事だ」
 「付き合い長いからさ。逆に謝るきっかけが難しいだけなんだ」
 絡みそうであまり絡みの無かった年下コンビがフォーカスされ(まあサヤとしてはヒカルと同じカテゴリには入れられたくないでしょうし)、 サヤの方がちょっぴり年上と判明した二人が大きく距離を開けながらも街へ向かった頃、バルバンでは本日も樽に厭味を言われながら、 遂にブドーが最後の項目に辿り着いていた――ギンガの光が潜みしもの、それは、清く湧きいずるもの。
 「処刑の準備は進めておく」
 ブドークラスですらぞんざいに切り捨てられるのがバルバンの戦力的厚みとはいえますが、相変わらず冷ややかな上層部の反応にも、 己の道を信じて泰然自若を貫くブドーは、4将軍も最後の一人、怒濤武者(エビ)を送り込む。
 「ギンガの光を手に入れよ。拙者の命、その方に預けた」
 かつて街の地下にあったという聖なる泉の水脈を求めるエビは、ギンガマンや黒騎士の妨害を防ぐ為に結界を張り巡らせ、 これによりギンガマンは、結界の外の年上トリオと、結界の中の年下コンビに分断されてしまう。
 エビ武者は胡座をかいた余裕の姿勢のまま、黄の雷一刀と桃の花一閃(初披露?)を受け止めてみせると、 爆発的な剣技で両者を一蹴。更に結界内部は酸欠状態になっていく事が判明し、エビの撃破か結界の破壊か、 優先順位で揉めたヒカルとサヤは、完全に決裂して別行動を取る事に。
 外の3人が結界の隙間を必死に探す中、海賊兵から逃走中のヒカルはケーキ屋のディスプレイを見かけて、 サヤの用意していたケーキがヒュウガの誕生日用のものだった事に気付き、これは、やってしまいました……! という重さと、 ちゃんとその重さにヒカルが気付くシーンの切り抜き方が秀逸で、ヒカルとサヤの好感度が同時に上がるのが鮮やか。
 サヤと合流したヒカルは海賊兵を尋問して結界の繋ぎ目について聞き出し、ここまで脚本も演出もテンポ良く面白かっただけに、 結界の繋ぎ目が、プラスチックの文房具めいた小道具だったのは、実に残念……(笑)
 一方、外部ではブルタウラスとなった黒騎士が強引に結界を破壊しようと攻撃を加え、 外部から衝撃を与え続けると結界が大爆発を起こす事を知る3人が星獣で止めに入って、巨大戦をうまく確保。 黒騎士は再び心臓の痛みで撤収し、強キャラが頭痛や腹痛で早退するパターンが続くと面白みを削ぐのは悪いパターンですが、 黒騎士の場合、本人は平然と受け入れているけどそもそも3000年の眠りから急に目覚めたのが不自然では……という要素があるので、 納得いく形で繋がってほしいところです。
 ……黒騎士、鎧兜を外したら、動悸息切れの激しくなる年配の男性だったらどうしよう!
 結界の繋ぎ目を目前にエビ武者に阻まれていた桃と黄は土壇場で鮮やかな連係攻撃を決め、 技名を叫んでエビを攻撃するのも結界を破壊するのも黄色なのが、どうもサヤは不憫。
 年下コンビの奮闘により内部から結界が破壊されて5人は合流し、無防備に突っ込んできたエビにカウンターでモークバズーカが炸裂するが、 エビ武者は無傷。前回の今回で再び巨大なチクワと化してしまうバズーカだが、その時、大地が激しく揺れ、にわかに暗雲が立ちこめ、 青白い光が瞬くと突風が巻き起こり……眩く輝き浮上したのはギンガの光?! で、つづく。
 いよいよギンガの光争奪戦がクライマックスに突入し、ギンガマン、黒騎士、ブドー、イリエス&樽爺、様々な思惑が交錯する中で、 その先にあるものは何か――今回も予告が大変格好良く、今作、予告の編集がアベレージ高いのは長所の一つです。

◆第二十三章「争奪の果て」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 遂に浮上したギンガの光! 怒濤武者はギンガマンのあらゆる攻撃を弾く凄まじい戦いを見せ、ギンガの光を壺に収めて撤収。 これを知った樽爺とイリエスは配下の蛇女魔人を送り込み、蛇女の変身した偽ブドーに騙された怒濤武者は、 ギンガマン抹殺を優先せよという命令を信じ込み、ギンガの光を用いてパーフェクト怒濤武者に。
 ギンガの光の受け入れ準備を進めていた海賊船では、一向に光が到着しない事に困惑の広がる船長室へわざとらしく駆け込んできた樽爺が、 怒濤武者がギンガの光を自らに用いた事を報告し、これはブドー軍団による反乱である、と讒言。
 これまで散々、樽爺を粗略に扱っておいて足を引っ張られると
 「何を言われる、ご老体」
 と言い出すブドーも、
 これまで散々、ブドーに冷徹な態度を取っておいて裏切りの可能性が浮上すると
 「ブドー、貴様!」
 と凄むシェリンダさんも、揃って他人の扱いが雑(笑)
 “他者の気持ちを考える事が出来ない”というのが「悪」の一つの象徴として描かれており、ギンガマンとは極めて対照的といえます。
 シェリンダに剣を向けられたブドーが進退窮まり、謀略の成功にイリエスがほくそ笑む中、 ただでさえ強かったエビはパーフェクト化により大暴れし、ギンガマン、本日2回目の崖落ち。モークにも「勝ち目は無い」と断定され、 かつてなく追い詰められるギンガマンだが、山を舐め尽くす炎の中で、自然や動物の命が失われていく光景に激しい怒りを燃やす。
 「俺達は死ぬわけにはいかないんだ! お前達がこの星の命を奪おうとする限り!」
 死力を尽くして戦うギンガマンは炎に飲み込まれるも駆け抜けながら銀河転生し、人間やその文明ばかりではなく、 星に関わるあらゆる命の為に戦う存在としてのギンガマンを改めて強調。
 だが、限界を振り絞って放った竹輪バズーカは、パーフェクトエビに完全に豆鉄砲扱いされてしまう。
 「もう終わりなのだ。貴様等もそしてこの星もな」
 「終わらない、俺たちが終わらせない!」
 それでも屈しないギンガマンの纏うアースが輝きを増し、連続バズーカがエビを後ずらせるが、 激しく消耗したギンガマンは膝を付いてしまう、というのが、気合いとパワーだけで全てを乗り越えさせず、 かつてない窮地としてバランスが良かったです。
 いよいよ伝説終焉かと思われた時、偽ブドーがエビに預けた数珠から毒の煙が吹き出してエビを弱らせ……なんだか、 『仮面ライダーストロンガー』のデルザー軍団編を思い出す展開(笑)
 タイミングを見計らっていた蛇女がエビの足下をすくってギンガの光を再回収しようとするが、回収用の壺は、 黒騎士の銃弾によって破壊される。
 「待ちくたびれたぞ。なかなかおまえが動かんからな」
 「なんですって?! おまえ私の作戦を!」
 エビを妨害しようとするも偽ブドーに切られて崖から落ちていたのがかえって功を奏し、 偽ブドーが蛇女に戻る瞬間を目撃していた黒騎士は、ギンガマンが壊滅寸前になるのを横目に、 悪党の上前をはねる瞬間を手ぐすね引いて待ち構えていたのだった!
 「ああ、感謝するぞ。だが、お前の役目はここで終わりだ」
 ショットガンをがしゃこんし、ド悪党だーーーーー(笑)
 指を立てて、ちっちっち、とやる黒騎士、声も台詞回しも仕草も格好いいのに、 言っている事とやっている事と武装が完全に強盗のそれなのが、変な面白さを発生させます。
 動悸息切れが激しくなり、なにやら焦りもあるのでしょうが、口元をスカーフで覆っていそうなノリになってきた黒騎士は蛇女を撤退に追い込むと、 毒で弱ったエビへと切りかかる。
 「無駄だ。貴様にギンガの光は荷が重すぎる。私でさえ3000年前、手放すしかなかったのだからな」
 黒騎士、格好いい喋りで堂々と、格好悪い内容を喋るのが芸風になってきていないか。
 そもそもギンガの光を制御できていなかったらしい黒騎士は弱ったエビを切り刻み、エビの体から飛び出した光を追うが、 その前に立ちふさがったのは、満身創痍のギンガマン。
 「どけ、ギンガの光はこの私の為の力だ」
 「渡さない! 復讐だけのあなたが使っても、バルバンと同じように破壊が生まれるだけだ!」
 「それがどうした。バルバンさえ倒せば、それでいい」
 もはやバルバンを倒す為にバルバンになる事をいとわない――怨念に飲み込まれた竜と化した黒騎士は、 ギンガマンを躊躇なく銃撃すると光に手を伸ばすが……
 「あいつやバルバンに使わせるぐらいなら、壊したほうがいい!」
 「うん。あたしは……いらない!」
 「ああ。星を傷つける為の力なら」
 「そんな事の為にある力なら、俺たちはいらない!」
 復讐に狂った心に妄執を呼び、破壊の為の破壊を生む、強すぎる力そのものを否定するギンガマンは、 モークバズーカをギンガの光に向け、一種の神の力を否定する事で、バルバンと同一になる事を否定する、 というのがなかなか強烈な展開。
 またここに至る流れを、リョウマvs黒騎士の直接対決から積み重ねてきた事で、 ギンガマンの決意がその場限りのものになっていないのも良い所です。
 「よせ! 銀河に一つしかない力だぞ!」
 「俺たちに必要なのは、星を守る力だけだ!!」
 そしてそれは、3000年前に黒騎士がギンガの光を使いこなせなかった理由であり、今、 ギンガの光がギンガマンを認める理由となる――
 「これは……奇跡か?! みんな、ギンガの光を掴むんだ。大いなる力を、星を守る力に変えるのは、君たちだ!」
 5人の“心”に反応したギンガの光が五つに分かれ、それを手にしたギンガマンは、左上腕と右手首に腕輪、 ベルトのバックルに追加パーツ、星獣剣が強化、左手にガントレットクローを装備し、スーパー化。
 「大いなる力・ギンガの光は、今、ギンガマンに装着され、獣装光となった」
 あちこち金色となった獣装光ギンガマンとなり、追加装甲によるスーパー化のはしり……でしょうか?
 爆発的に強化されたギンガマンの攻撃により、エビは巨大化もできずに大爆死。かくして5人は、 それぞれのギンガブレスにギンガの光を宿すのであった。
 「うっ……貴様等に、ギンガの光を使いこなせるとは……くっ!」
 悔しい……!とハンカチを噛みしめながら、黒騎士は撤退。バルバンではブドーが牢屋に放り込まれ、 伝説が新たな躍動を見せる次回につづく……!

◆第二十四章「ブドーの執念」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 死闘の末、ギンガの光によって新たな力を手に入れたギンガマンはひとまずの休息を得、調子に乗るヒカルを一斉攻撃する年上トリオ、 子守の思い出を語り始める。
 「また始まった……」
 大変、面倒くさいですね!
 「もっともリョウマはすぐ逃げ出したけどな」
 割と悪ガキだったリョウマ少年時代が回想され、付き合いの長さを勇太くんに説明。
 「もう飽きてくるぐらいな」
 「……飽きてるのか?」
 本気で受け取ったゴウキが半べそをかいてリョウマが慌てて訂正し、ハヤテが吹き出す一幕の頃、 バルバンでは腹心のサメ忍者・闇丸&鬼丸に救出されたブドーが、汚名返上の為に脱獄していた。 樽爺の推挙もあってイリエスが新行動隊長に任命される一方、ギンガの光を取り戻す事で汚名をすすごうとするブドーは、 ギンガマンを挑発する為に街で大虐殺を開始。
 立ち向かうギンガマンはレッドが魔人忍法まどわしの術を受けてしまうが、 優勢のブドーらは蛇女の追っ手に囲まれるとバルバンに刃を向けようとはせず、「濡れ衣を ギンガの光で 晴らすべし」と、 久々の宇宙俳句を残して撤収。
 そしてモークサロンで目を醒ましたリョウマは術の影響により周囲全てが敵だと認識して暴れ出し、 裏拳の直撃で物凄く景気良く飛んでいくドングリ(笑)
 かつて見たことのないレベルのマスコットの扱いです。
 色々と盛り沢山なエピソードでしたが、何が印象に残ったかといえば、このシーンが一番印象に残りました(笑)
 サロン内部で咆哮し、辺り構わず暴れ狂うリョウマは仲間達を振り払って街へ繰り出し、長石階段で辻斬り未遂を敢行。 星獣剣を振り回して一般市民を追いかけ回すリョウマという、かなり危ない映像が続きます。
 サヤとヒカルは迫るブドー軍団の囮を買って出て、ハヤテ&ゴウキは何とかリョウマを取り押さえようと、 派手な生アクションの取っ組み合い。
 「荒っぽいが、ギリギリのところまで追い込めば、あるいは……」
 戦隊名物? 打撃による修理を推奨し、モークにも頭脳の限界があって少しホッとしました(笑)
 「しかし、これ以上やれば、リョウマも俺たちも」
 握りしめていた鉄パイプ(似合いすぎる)を投げ捨てたゴウキは、リョウマを傷つける事を拒否し、 涙を浮かべて一歩一歩近付きながら語りかける渾身のヒロインムーヴを発動。
 「リョウマ……! ……おまえにわからない筈ないだろう、俺たちが」
 判定に失敗し、マッチョはお呼びでないキックを受けて倒れるゴウキだが、それでも説得を試み続け、すっかり泣き虫キャラを確立。 詳しくないのでイメージだけですが、ゴウキはこの辺り、昭和のファミリードラマに居そうなキャラという位置づけも感じます。
 「俺たち、飽きるほど一緒に居たんだからな。リョウマ……そうだろう!」
 「そうだリョウマ、思い出せ。ヒカルとサヤが危ないんだよ! 俺たちが行かなきゃ。リョウマ、わかるか? ヒカルとサヤだ!」
 更にハヤテも参戦し、ここでヒカルとサヤの存在も絡めてみせるのが、今回の白眉。
 「ヒカル……サヤ……」
 冒頭の日常でのやり取りを説得のキーにしていく中で、リョウマ−ハヤテ−ゴウキ、3人の友情ばかりでなくヒカルとサヤに対する責任感を追加し、 それが幼友達の関係性と密接に繋がっている事で、5人1チームの意味づけが生まれる、というのが実に鮮やかです。
 ハヤテとゴウキは最後の一押しとリョウマにアースをぶつけ、直撃させるハヤテと、目をつぶって明後日の方向に放った結果、 二次被害が結局ダメージを与えるゴウキ、というコンボが似たような幼い日の出来事を思い出させ、リョウマは遂に正気を取り戻す。
 「ヒカルと、サヤは?」
 「おまえにもたっぷりお守りさせてやる」
 「え?」
 「行くぞリョウマ!」
 伏線としては非常にストレートな(故に3人の関係でまとめるのかと思っていた)冒頭のやり取りを、 年上トリオの友情だけではない5人の繋がり(そして社会の中での役割と関係性)に広げ、回復の説得力を二重三重に積み重ねた上で、 ニヤリとさせる台詞でまとめ、巧い。
 一方、ブドーの前には蛇女が現れ、握り潰した宇宙俳句を見せつけると、前回の暗躍を種明かし。
 「あんたは見限られたのよ。バルバンにも、運にも」
 ブドーを絶望させようと言葉を重ねて愚弄する蛇女だが、これがかえって、ブドーの理性の糸をぷつんと切ってしまう。
 「……ふふふふふふ、ふはははははは! ふはははははははは!!」
 「何がおかしいの?!」
 「見苦しいか……確かにな」
 声音の変わったブドーは、周囲を囲むヤートットを次々と切り伏せると蛇女も一刀両断し、あくまでバルバンの一員である、 という自らの拠って立つ所も切断。
 立ち回りが格好良く実力もあり、忠義に篤いサムライというブドー、ご多分に漏れず私もかなり気に入っていたのですが、 そのブドーが樽爺とイリエスのケチな謀略に引っかかって失脚してそのまま脱落……ではあまりにもスッキリしないので一矢を報いさせつつ、 それをただの視聴者サービスではなく、ブドーの覚悟に繋げるという話の転がし方が鮮やか。
 また、先の市内での虐殺シーンにおいて一般市民を次々と斬殺するブドーを明確に描く事で、 あくまでブドーは残酷非道に他者の命を踏みにじる悪である、という事を強調してキャラクターとしてのバランスを取っています。
 「……ギンガの、光……」
 追い詰められたブドーの心には、黒騎士と通じる巨大な力への渇望という闇が宿り、 サメ忍者に追い詰められていた桃と黄の元には年上トリオが駆けつける。
 「ギンガレッド、なぜ俺の術を?!」
 「飽きるほど付き合ってる、仲間のお陰でな!」
 5人揃ったギンガマンは、
 「唸れ、ギンガの光!」
 で獣装光。絶大すぎるギンガの光は5分割される事でギンガマンが使いこなせるようになっているが、 その代わりに5人揃わないとスーパー化できない、と巨大な力を制御できる理由とその制約をきっち盛り込んでくる辺りは、 高寺Pらしさでしょうか。
 見方を変えると、超強化にまつわる設定の説明を、5人1チームの関係性を掘り下げるエピソードに仕立て上げている、 というのが良く出来たところです。
 そこへ現れたブドーは鞘を投げ捨て、勝って帰るつもりならなぜ鞘を捨てる! とさすがにギンガマンから言わないものの、 わかる人にはわかるネタで、御大将の行動にぎょっとするW忍者。
 「闇丸、鬼丸、もはや我らブドー軍団に戻る場所などありはしない。後はただ存分に戦うのみ」
 投げ捨てた鞘が音を立てて地面に転がると、ギンガマンvsブドー軍団の最後の戦いが始まり、ぶつかり合う赤とブドー。 吹き荒れる炎の中、激しい一騎打ちの末にブドーの必殺剣をクローで受け止めたレッドはその愛刀を叩き折り、 剣×爪×炎のミックス攻撃、獣火一閃をブドーに直撃させる。
 「まだ……戦い足りぬ……」
 バルバンの行動隊長ではなく一匹の修羅と化したブドーは折れた刀を手にギンガレッドへと迫り、 失脚した組織の幹部がその最後に個人として誇りと執念を懸けてギンガマンに挑む、 という構図がサンバッシュと重なっているのは意図的と思われますが、軍団単位では高い統制を見せながら組織全体として見ると個人主義の寄せ集め、 というバルバンらしさを象徴しているようにも思えます。
 そしてこれは、バルバンとギンガマンの対比であると同時に、黒騎士とギンガマンの対比でもあるのだろうな、と。
 つまるところブドーの最期は、このままでは黒騎士が辿るであろう末路の暗示であり、 こういったキャラクターの使い切り方はさすがの冴え。
 「散ればこそ……花美しく……名を残し……いまひとたびの……バルバンの夢」
 辞世の句を詠みながら死力を振り絞り躍りかかってきたブドーの斬撃を防いだレッドは、返す刀でブドーを切り裂き、剣将ブドー、 ここに大爆死。
 ここまで監督3人ローテで回っている今作ですが、同じ長石監督の演出回という事もあり、ブドーの砕けた刀が虚しく転がるのは、 サンバッシュのバイク爆散に通じるものを感じ、演出的にも意図的な重ねなのかな、と。
 近年は劇場版などの関係で出入りが激しくなってなかなかそうも行かないのですが、田崎監督が新展開を立ち上げ、 長石監督が節目を締め、その間に辻野監督が比較的フリーな演出でアクセントをつける、という今作前半の構成は、 演出ローテと意識的に噛み合わせている節があり、綺麗にはまっています。
 正直、前作『メガ』の長石監督はラスト2本を除くとあまりキレを感じなかったのですが、 今作では後に見せる小林靖子脚本との相性の良さもあってか節目節目に冴えを見せ、満足度高し。 辻野監督の面白さも十二分に発揮されていますし、パイロット版に抜擢した田崎監督を含めかなりバランスの良い演出陣を揃えたという印象ですが、 監督の色を活かしたローテの構成という点では、後の『クウガ』〔石田秀範−渡辺勝也−長石多可男〕 で高寺P作品としては一つの完成を見る要素なのかもしれません。
 ブドーの死を見届けた闇丸と鬼丸はダブル巨大化し、「せめて、最後のご奉公を」という台詞が状況にぴたっとはまり、 ブドー軍団のラストを象徴する形で使い切られたのも秀逸。
 ギンガマンが星獣を召喚してギンガイオーに合体するとギンガの光がそれに反応し、兜と胸部装甲と剣が強化された、 超装光ギンガイオーが誕生。
 襲い来る闇丸と鬼丸をギンガ大獣王斬りのカウンターで一撃秒殺し、テロップ出てから40秒で戦闘終了(笑)
 ……まあ、ブドーがリタイアした以上、W忍者は完全におまけなので、変に長引かせないのは全くもって納得なのですが、 凄まじいデビュー戦となりました。
 「あいっかわらずハヤテは容赦ないよな。それにゴウキも、あいっかわらず外すし。かえって危ないんだよ」
 「人に当てるのが、嫌なだけだ」
 まあそもそも、いざって時は人に当ててOKなのが衝撃的というか、幼少の頃から、 “(心理的に)人に当てられるように”訓練していたという点と、下手に加減をすると間合いが狂ってかえって危険ノリで受け止める所に、 ギンガの民の決戦民族ぶりを見て殺意の高さに胸が震えます。
 かくしてギンガマンが死闘の連続をくぐり抜けて大きな壁を乗り越えた一方、バルバンへの復讐心に燃える黒騎士は、 地球の夏に悩まされていた。
 「ポ、ポカリ……」
 じゃなかった、
 「この体を、自由にできる、間に……」
 と大変意味深な言葉を呟き、つづく。

→〔まとめ5へ続く〕

(2020年3月30日)

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