■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ3■


“大地激震! 来たぞ星獣
野生爆発! 大転生だ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第十三章「逆転の獣撃棒」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 冒頭、眠れる魔獣ダイタニクスの頭上で刀を振るブドー、というのが良く出来たカット。
 サンバッシュが愛車と共に敢えなく地球の海に散り、次の行動隊長の座を巡って再び内部対立が発生したバルバンにおいて、 ブドーはダイタニクス復活の鍵として<ギンガの光>について持ち出す……と前回のスパイ行為を活かして、 サンバッシュの失敗を肥やしにして新展開へ。
 「ギンガの光はいろんな物の中に姿を潜ませるエネルギー体じゃぞ。なにをどうやって探すつもりなんじゃ」
 「ギンガの光が潜む物は言い伝えによればわずか数種類。その全てをここに、書き出してござる。これを一つ一つ当たってゆけば、 必ずやギンガの光に、行き当たる筈」
 ブドーは一帖の巻物を掲げ、サンバッシュ編の「ダイタニクス復活に適したエネルギーを探す」から、 「ギンガの光を探す」に目的は変更しつつも、毎回のキー要素に絡んで作戦を展開していく、という基本構造は一緒に。
 ギンガ組においても、サンバッシュの言い残したギンガの光をバルバンに渡してはいけない、と会議が開かれていたが、 ヒュウガの事を考えて気もそぞろなリョウマはモーク先生にたしなめられる。
 「あの戦いであそこまで追い込まれたのは、君自身のせいだという事はわかっているね。リョウマ、ヒュウガへの想いが、君の、 弱点になっている。そんな弱点を持っていては、戦士として失格だ!」
 天堂○のような事を言い出すモークですが、生きているギンガマンを心配しているがゆえ、 という気持ちが前回描かれているので、ただ無神経な人でなしには見えない(人ではないけど……)という流れが秀逸。一方で、 生きている/死んでいる、でドライに切り分けてしまえる部分は人間的配慮に欠けるとはいえ、
 「モーク! そういう言い方ないだろ!」
 「そんなに簡単に忘れられるわけないじゃない!」
 「酷すぎるぽっくー」
 お子様勢+ドングリから一斉に非難を浴びる事に。
 「だがどんな時も冷静に対処してこそ戦士だ」
 「モークのは冷静っていうより冷たいんだよ! 少しは人の気持ち理解しろよな!」
 退席したリョウマに続き、2+1は会議室を飛び出していき、モーク、己が言動を顧みる。
 「私の言い方は、きついかな」
 「……ちょっと」
 「そうか……それはそうと、これからの戦いに備えて、準備しているものがあるんだが、意見を聞かせてくれないか」
 「結構めげないな、モーク」
 いってみれば戦隊の基地システムそのものであり、ギンガマンの長官であると同時にマザーコンピューターでもあるモークですが、 そこに“喋る木”という外装を被せる事により、機械的でありながら生物的であり、 3000年のアース×長老人格の影響?による大人の思考と、そうはいっても生まれたてである子供の要素(柔軟な拡張性) を持ち合わせている、というのは欲張りながら巧い設定。
 勿論、欲張りなだけに単なる便利キャラに堕してしまう危険性も大きいのですが、 そこでモークとギンガマンのやり取りを適度に散りばめる事でモーク自身に愛嬌を持たせ、 モークが“許せるようになる”範囲を広げておくという地均しを欠かさないのが目配りの行き届いているところ。
 これからの戦いの為にも、無意識に兄にすがる弱さを克服しなければならない……とヒュウガへの思いを振り切ろうと心に誓っていたリョウマは、 霧を撒き散らしながら街を練り歩く虚無僧集団を怪しみ追いかけるが、見失ってしまう。
 「ふふ……おまえたちがこの作戦に気付く頃には、全ての準備は終了している」
 東映名物:謎の虚無僧集団は、高寺さんの趣味によるオーダーでしょうか……?(笑)
 一方バルバンでは、ブリッジの一角に和室をしつらえ、正座で墨を擦っていたブドーが、ギンガの光探索大作戦、第一の標的は、樹、と発表。
 「尺八で ギンガの光 探し出し」
 流麗な宇宙文字で、一句詠んだ(笑)
 行動隊長変更しての新展開という事で、BGMから小道具まで、色々と趣向を凝らして雰囲気を変えているのですが、 サンバッシュ編を長石監督で締めて、ブドー編のスタートにパイロット版の田崎監督、という差配も巧く決まった感あり。
 ギンガ組ではモーク顧問弁護士に対して不満の消えないお子様達をゴウキとハヤテがなだめていた所、弱ったモークから緊急連絡が入る。 なんとブドー虚無僧部隊は特殊な宇宙カビを散布しており、そのカビに冒された地球上のあらゆる樹が、 あと数時間で死滅の危機に瀕していたのだった。
 「リョウマ……。私の言い方は、きつかったが……」
 「ははは、モークの言ってる事は正しいよ。俺なら、大丈夫だ!」
 モークとの感情的軋轢は、自分の身よりもギンガマンを案ずるモークをヒカルとサヤが仲間として心配する事で解決し、 新しい武器があってもなくても殺るしかない、と一致団結、肝心のリョウマは笑顔にガッツポーズで出撃する、というのが物凄く、 爽やかバーバリアン軍団こと、ギンガマンです。
 もっとも、ここでリョウマがヒュウガの問題を一人で胸に飲み込んだのは、今後の大きな爆弾となる可能性も秘めていそうですが。
 リョウマの目撃情報からギンガマンは虚無僧集団に辿り着き、なるほど虚無八は、横から見るとタコなのか。
 新展開一発目という事でかギンガマンは久々にフル名乗りを決め、この広場は、いったい幾つの戦隊の死闘を見つめてきたのだろう……(笑)
 仕込み尺八一刀流で赤を上回る剣技を見せ、キバの逆鱗をまさかの逆鱗返しで両断、魔人殺法・幻の舞いでギンガマンを追い詰める虚無僧の強さに、 自分の体が壊れる危険を冒しても新装備を完成させようとするモーク。
 「それに……仲間は放っておけない。そうだろう?」
 「モーク、冷静になれ!」
 「君からそんな言葉が出るとは思わなかったな」
 モークは全身全霊を込めて新兵器を生み出し、ドングリによってギンガマンの下へ運ばれたのは、ギンガハンマー獣撃棒!
 初期装備の星獣剣、伝説のマルチウエポン機刃、更に新たな打撃武器、と近接武器の追加はやや矢継ぎ早の感はありますが、 バルバン側の幹部交代劇と絡める事で敵戦力の強化を理由付けした上で、星獣剣は「ギンガマン」の象徴、 機刃は「星獣との絆」の象徴、獣撃棒は「モークとの絆」の象徴と物語上の意味づけを付加しているのは達者。
 従来装備に比べて獣撃棒の背景の弱さはどうしてもありますが、なるべく説得力の生じるクッションを入れよう、という姿勢は窺えます。
 モークから受け取った思いも込めて、3000年の殺意、じゃなかったアースの凝縮されたツインハンマーを構えたギンガマンは反撃開始。 虚無僧の必殺攻撃を回転カウンターにより力尽くで打ち破ると、バズーカモードの一斉射撃、ギンガ獣撃弾で木っ葉微塵に爆殺。 新兵器という事もあってか爆破の演出が派手で、前回でバルバンエキス終了……?と思ったのですが、 辛うじて生きていた虚無僧はヒョウタンに変わった小道具から芋焼酎をぐいとやり、「最後のご奉公」として巨大化。
 しかし、人間大ではギンガマンを追い詰めた虚無僧も獣王斬りから鳥頭ボウガンの必殺コンボには太刀打ちできず、ギンガイオー、強し!
 かくして宇宙カビは除去され、モークも復活。
 「私も君たちに影響されているようだね、悪い傾向だ」
 「ははは、モーク、ありがとう。助かったよ」
 「助かったのは私の方だ。ありがとう、みんな」
 モーク、木だけど、ウィットまであって人格者……! どこぞの博士とかに皮を煎じて飲ませた上で、 3日ぐらいぶっ通しで説教してほしい(笑)
 次回――アイドル炸裂!

◆第十四章「二人のサヤ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 今回の一句:「写真機の 呪いの札に 弾け飛び」
 冒頭から盛り上げBGMでゴウキとサヤの戦闘訓練が描かれ、背後から絞め落とそうとするゴウキの足の甲を踏んでひるんだところに脇腹に肘打ちを叩き込んで一本背負い、 という華麗な反撃を決めるサヤの足を土で汚して見せるのが、男女別なく泥臭く戦士であるギンガマン的で秀逸。
 そんなサヤのもとに、グラビア雑誌を持って集まってくる、リョウマ、ハヤテ、ヒカルの3人。 ……わざわざ街で買ってきたとは思いがたく、君たち、それ、森で拾った?
 …………や、もしかしたら、乗馬倶楽部の待合室用に、オーナーが定期購読しているのかもしれませんが。
 株価が大暴落寸前とは思いも寄らず、驚きの表情でグラビア写真とサヤを見比べる男達……なんと、 雑誌に載っていた人気急上昇中アイドル・星野美咲は、サヤと瓜二つだったのだ!
 という一人二役ネタで、特撮アイドル回のマエストロ、荒川稔久、参戦。ここまでのところ前作『メガレンジャー』と同じ脚本陣なのは、 初メインライターとして抜擢した小林さんの書きやすさに配慮したのかと思われますが、浦沢義雄(魔空空間)、 武上純希(戦隊初参加初メイン)、小林靖子(初メイン)、と3年続けて挑戦の見えるメインライターをサポートする、 荒川さんの存在の力強さよ。
 ただ……
 「頑張った後には、もっと笑顔になれるって、信じてるから」
 ギンガイオーの都合で個人回が遅くなったサヤに改めてスポットを当てて、お約束の入れ替わりを通して、 どんな状況でも一生懸命で真っ直ぐな頑張り屋であるサヤを描く、というエピソード内容は、戦闘で負傷した足の痛みをかばう演技がどうも面白くも可愛くもならず、 いまいちの出来。
 銀河戦士がアイドルを通して別の世界を知るのではなく、銀河戦士はアイドルの代役だって殺す気でやる! という味付けが、 メンバー中におけるサヤならではの魅力を引き出す、という形になってくれませんでした。
 どちらかというと、グラビア写真のような可愛いドレスも着てみたいというサヤに対して愕然と振り向き、
 「「「「え?」」」」
 と声を合わせるギンガ男衆が、見事に戦隊ダメンズ加入したのが印象深いです(笑)
 あと、ギンガピンクセンターからのクライマックスバトルで流れたサヤのイメージソング?が、 80年代ロボットアニメソングっぽいノリで、変に盛り上がったのは面白かった(笑)
 なお、<ギンガの光>を炙り出す為に、世界中のあらゆるカメラを破壊しようとしたイカ僧正も、ギンガイオーに瞬殺されました。 ……まあギンガイオー、生でも十分に強い星獣の強化版といえる存在なので、実質2号ロボだから仕方ない。

◆第十五章「恐怖のしゃっくり」◆ (監督:辻野正人 脚本:武上純希)
 「まさかこれは?! ……爆弾。そんな……3000年前に何故」
 それはその頃、宇宙海賊と土着の戦闘民族が地球の覇権を懸けて血で血を洗う仁義なき抗争を繰り広げていたからです!!
 3000年前の古墳から出土した球体を研究中、それが強力な爆弾である事を知る佐伯助教授だが、 そこに古代遺跡の出土品を狙うボウケンジャー、じゃなかった、ブドー魔人衆のキセル魔人が登場。
 「お宝を けむで探すは 大泥棒」
 頭髪にウニの意匠を取り込んだ石川五右衛門モチーフの魔人は割と格好いいのですが、 六方を踏んで大仰に名乗っている内にプレシャス抱えた助教授に逃げられてしまい、全体的に今回、コメディのテンポ。
 魔人から逃げる教授は、青山家の引っ越しの手伝いをサボる為に仮病を使ったヒカルと、 それを甲斐甲斐しく世話していたリョウマと行き合い、リョウマが手にしていた風邪薬の缶と、 教授が持っていた爆弾の缶が入れ替わった事で、ヒカルは爆弾を飲み込んでしまう事に!
 ヒカルの胃の中の爆弾はしゃっくり100回で爆発し、それを止める為には、打ち消しの滝の水を飲むしかない。 かくしてヒカルとリョウマ、そしてプレシャスを取り戻しに来た佐伯助教授の3人は、 爆弾の中にギンガの光が隠れているに違いないと執拗に襲い来るキセル魔人の追撃をかわしながら、滝を目指して珍道中を繰り広げる事に。
 佐伯助教授は話を聞かずに車を爆走させたり、通りすがりの幼稚園バスにこれ幸いと乗り込んだり、 テンション高く勢い任せのコメディリリーフとして描かれ、無茶苦茶なゲストにリョウマとヒカルが振り回されつつ、 ヒーローが幼稚園バスに乗り込むシチュエーションがバルバンの罠だったり、 最後にアース忍法大凧の術で滝へ向かったりという辺りは東映ヒーローものの狙ったパロディでしょうか。
 つまり、飛騨忍者はギンガの民の末裔だったんだよ!!
 納得(おぃ)
 助教授に押し切られる形でバスに乗り込み、お約束の童謡が始まった所で、
 「でも、なんでこんな所に幼稚園バスが……」
 と不審を呟くのは、今回一番面白かったところ。もはや「幼稚園バス」って、東映ヒーロー世界においては一種の固有名詞だなと(笑)
 どんな状況でもヒカルのしゃっくりの回数を数え続けるリョウマが若干サイコホラーにつま先を踏み入れつつ、爆死寸前、 滝の水によって体内の爆弾が浄化されたヒカルがギンガイエローとして復帰。 引っ越しの手伝い中に事故で閉じ込められてしまっていたハヤテ達3人もローン35年の家の壁を破って駆けつけ、 合流したギンガマンは色々と蓄積されたストレスを殺意に変える!
 モークバズーカからは白兵戦用のレーザービームも撃てる事が判明し、これ確実に、「いいかみんな、赤いスイッチを押すんだ。 突入作戦用のサブマシンガンモードになるぞ。青いスイッチは、対空スティンガーモード。敵が穴蔵に篭もっているようなら、 緑のスイッチを押して××弾を撃ち込んでやりたまえ」まで仕込まれている。
 バズーカ一斉射撃を受けたキセル魔人は巨大化して火種攻撃を放つが、カウンターで撃ち返して鳥頭ボウガンで射殺。
 リョウマとヒカルの友情も交えつつのドタバタギャグ回でしたが、ハヤテ達が行動不能になる理由を 「お世話になっている青山家のローン35年の家を破壊できないから」としていながら、 最終的に強行突破を「いいんです」で済ませてしまったのは、詰めが甘くなって残念。ゲスト優先となったのかもですが、 ネタとしたからには上手くオチに使ってほしかったです。
 次回――「遂に明かされるハヤテの弱点」というほど完璧超人キャラのイメージは無いのですが、 引き続きシェリンダとの因縁が展開してくれそうなのは期待。

◆第十六章「心の故郷(ふるさと)」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 相手の脇腹、横隔膜と肋骨の間を狙って、抉り込むように刺すべし刺すべし!  と本日もドスの訓練に余念がないギンガ組員達を見とがめる、中年の紳士が一人。
 「場合によっては……クビだ」
 現オーナーの父親であり、前オーナーでもあるという紳士・森川から通告を受けたギンガマン、第16話にして、 野宿再び→ 士気の低下 → 解散或いは逮捕という最大の危機!!
 戦士といえども、一度贅沢の味を覚えてしまうと、なかなか野生には戻る事が出来ない緊急事態に、サロンもモークも渋い顔。
 「リョウマ達は、あまり、森の外の仕事に、慣れてないからね。まあ……ハヤテが頼みの綱だが。ひょっとすると、 私も引っ越しの準備をした方がいいかもしれない」
 できるのか、引っ越し。
 ややこしいので先に書いてしまうと、森川は前オーナーは前オーナーでも、乗馬倶楽部の所有者だったというだけで現オーナーとは赤の他人で、 勿論5人を解雇する権利など全く無し。オーナーに確認を取った青山父からそれを知らされるハヤテだが、 あえて黙って、ギンガマンに嫌がらせを繰り返す森川の嘘に付き合ってみせる。
 森川の気持ちを慮り、かつてハチの集団に追われたトラウマから、舐めると倒れてしまうハチミツにまで口をつけるハヤテだが、 大地に潜むギンガの光を炙り出そうと、ブドー魔人・雨法師(だけにアメフラシ?)が行動を開始。
 「邪悪なる 雨を逃れる すべはなし」
 その降らせる呪いの雨は全地球規模で大地を溶かして地殻変動を引き起こし、カメラ、骨董品、 とややスケールダウンしていた2話を挟んで、再び地球壊滅レベルなのがいかにもバルバン魔人です。
 この辺り、次々と繰り出される魔人の脅威が、三千年戦士であるギンガマン(ギンガの民) の戦闘力の高さと連綿たる殺意の継承に説得力を持たせているのは良いところ。
 儀式の場に向かうギンガマンはバルバン船員の妨害を受け、途中で職場放棄した5人を追いかけてきた森川は、 そつない仕事ぶりで一目置いていたハヤテに守られた事で、自分の正体と真意を告白する。
 「この歳になって……もう一度見ておきたいと思って来てみたんだが……君たちが自由に楽しそうにやっているのを見て、なんだか、 ふるさとを取られたような気がしてな。それで、つい、意地悪をして」
 「俺たちも、ふるさとの森をなくしたんです。……あの時感じた辛さと痛み、きっと同じです。だから……誰にも言えませんでした。 でも、俺たちは信じています。ふるさとはそんな簡単になくならない。いつでもそこにあるって」
 ハヤテのイケメンリアクション!
 ぴっぴろりろりーん♪
 森川の好感度が大きく上昇した!
 森川に身を隠させて仲間を追いかけるハヤテだったが、その前に復讐に燃えるシェリンダが登場。剣ばかりでなく、 サイコパワーによる鞭攻撃など器用さも見せるシェリンダに苦戦するグリーンは窮地に陥るが、森川の絆タックルが炸裂!
 インパクトと爆発力ではゴウキに劣り、総合的な戦闘能力ではおそらくリョウマに劣るハヤテですが、 何でもそつなくこなす器用さの一方、他者(特に身内)への対応には精神的な不器用さを見せる、 という両面が森川の心を説かして逆転の鍵になる、というのはハヤテの立ち位置が綺麗に繋がりました。
 剣撃でキバショットを跳ね返してさえみせるシェリンダだが、グリーンが咄嗟に放った空中からの二刀一刃がクリティカルヒット。 雨法師にはレッドの火炎ハンマーが炸裂し、バズーカ地獄で巨大化したところで、シェリンダは撤退。巨大雨法師は、 鳥ハリケーンで転ばせてからのギンガイオーがボウガン瞬殺し、今日もギンガイオーは強かった。
 当初、星獣で押し切りたかったのが合体してしまった影響もあるのかもですが、ギンガイオー、強すぎて、 巨大戦で書く事があまりにもありません(笑) 前作はロボ推し戦隊だったので圧勝なりに割と趣向を凝らしていたのですが、 ギンガイオー基本、撃ち殺す撃ち殺すそして撃ち殺す、ですし。
 自分内サンプルがあまり多くないので明言できないのですが、80年代ほどプロレスせず、 00年代のような戦闘中のパーツ組み替えが無い関係で、90年代ロボは瞬殺度高めの印象(大連王の印象が強すぎる説もありますが)。 今度80年代戦隊を見るときは、巨大戦の流れを気にしてみたい。……ああでも、一応90年代だけど、ジェットイカロスは、 腕がもげたり土手っ腹に穴開けられる印象しかない。
 流れに変化が生じたとしたら『ジュウレンジャー』の可能性がありそうですが、未見。
 「ふるさとは、いつでもそこにあるか。そうかもしれないな。嘘をついてすまなかった。君たちなら、この故郷を任せても安心だ。……じゃ」
 森川はギンガマンと和解して帰っていき、それはそれとして乗馬倶楽部における勤務態度について良い勉強になったと説教モードに入ろうとするハヤテだったが、 ハチミツを突き出されて目を白黒させる、でオチ。
 定期的に故郷について振り返るギンガマンですが、地球を守るという「大義」と、 鍛え上げ研ぎ澄まされた伝説の刃としての「使命」の合わせ技で、基本、正義について考えないパーフェクトソルジャー戦隊であるギンガマンにとって、 「いつか故郷を取り戻す」という勝利の先の願いが人間性を与える事になっているのが、今作の構造的な妙味。
 同時にそれは実は、古典的なヒーローの動機付けである「復讐」といえるのですが、 それを極めて前向きかつ爽やかに「使命」の先にセッティングしてしまえるのが、ギンガマンの強さといえるでしょうか。
 一方でそこで浮上してくるのが、より私的な動機付けとなる「ヒュウガ」の存在ですが、元最強の戦士が、 ギンガマン唯一の心理的な弱みとして急所になっている、というのは面白い構造で、今後その札をどう使ってくるのか楽しみです。
 ハヤテ×シェリンダは今回も尺を採った一騎打ちで因縁が強化され、 年長トリオの中では放っておくと埋没しそうなハヤテの存在感を上げつつ、バルバン側でやや不明確なポジションであるシェリンダにも、 物語上の意味づけが増えて良い感じ。……樽先生とかすっかり、暇そうなタダ飯食らいと化していますし。
 また、森に婚約者を残すハヤテが故郷に軸足を置いているのも自然でありますが、こうなると、 アイドル回のサヤは故郷について何か触れておいても良かったのかな、とは思うところ。鈴子先生に一目惚れしたゴウキ、 諸々に興味津々なヒカルに対して、アイドルと入れ替わってもあくまで戦士なサヤは、ハヤテ寄りのポジションなのかと思われますが、 バランスとしてそこを強調しておいた方がわかりやすかったし、サヤの個性の強化に繋がったかなと。
 次回――
 MAY DAY! MAY DAY! 首都圏を襲うレスキューポリスばりの爆破テロ!
 かつてない危機に勇太少年は《投石》に次ぐ新たな戦闘本能に覚醒できるのか!
 だがその時、戦場に舞い降りたバイオサムライの剣がギンガ反応を断つ!
 の豪華盛り沢山でお送りいたします。
 ……そして姿を見せる、謎の黒い影――?!

◆第十七章「本当の勇気」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 バルバンの海賊船との対比の意図もあってか、シルバースター乗馬倶楽部の看板と背後にそびえるモークのカットから入るのが定番になっていましたが、 今回新たに、馬を象った小さめの吊り下げ看板からスタート。
 「リョウマ……僕、戦士になりたいんだ! リョウマや星獣たちが戦ってるのに、見ているだけじゃ駄目だよ!」
 伝染する殺意!!
 「でも、無理だよね。……アースも使えないし、剣も出来ないし」
 「力や技だけが、戦士の条件じゃないよ」
 必要なのは、全てを捨てられる復讐の心だ!!(違う)
 「なんで? 戦士にはそれが一番大事でしょ?」
 「うーん……ただ暴れるだけならな。けど、戦士に必要な、強さや勇気は、そこからは生まれない」
 首をかしげる勇太にリョウマは微笑みかけ、殺意はあるが穏やかな日常が過ぎていく昼下がり、 大変ストレスの溜まっているシェリンダさんはブドーに八つ当たりをぶつけ、それに船長が加勢していた。
 「ブドー、心配してるわけじゃねぇ、催促してんだ」
 気の短い上層部にせっつかれるも泰然自若と受け流すブドーは、今回のお題を発表。
 「片っ端からビルを破壊すれば、必ずやギンガの光の宿ったビルに行き当たる筈」
 その狙いはそびえるもの――高層ビル。
 「歯車の 音は全てを 吹き飛ばし」
 人里離れた山の中、川の真ん中を気にも留めずに歩いて渡る無表情な黒服の集団、それこそ、ネオギルド、じゃなかった、 ブドー魔人衆が一人、傀儡太夫が作り出した爆発人形であった!
 「ギンガの光を炙り出せ……」
 爆発人形は次々と都市部に送り込まれると、セーラー服の女子高生(名前はきっとトコちゃん)が、ビルの中でおもむろに自爆!!
 サラリーマン風の男も、エレベーターの中でおもむろに自爆!!
 日常の中に潜り込んだ非日常をストレートに見せる映像がかえってシュルレアリスム的な空気を醸しだし、異常に面白い事に。
 樹木センサーによりこの連続爆破テロを感知したモークはギンガマンを出撃させ、連絡を受けたリョウマも勇太と一緒に街へ戻ろうとするが、 その途中、隊列を組んで街へと向かう妙な一団を発見する。その内の一人が足を踏み外して滑落し、 土手っ腹に木の枝が突き刺さりながらも平然と歩み去ろうとするが、その異常さに驚きつつも善意から助けようと手を伸ばしたリョウマは、 偶然にも自爆装置の起動スイッチ(腕をひねる)を入れてしまう!
 モークが気付いて警告を発するも時既に遅く、爆発に巻き込まれたリョウマ、ど派手に吹き飛んで崖下に転落、 というノンストップで凄まじい展開(笑)
 街では、未曾有の連続爆破テロにより、ギンガの光探索とかもうどうでもいいのでは、というレベルで地球が危機に陥っていた。
 「人形なら息はしない筈だ。街の樹木達がそれを探す」
 今回も極めて優秀な(しかし納得のいく)モークのサポートでハヤテ達は爆弾人形を探す為に散らばり、 一方山ではモークの制止を振り切って勇太がリョウマを助けようと崖を下りていき、サスペンスフルな音楽で両シーンを繋ぐ事で、 ギンガマンの戦いから勇太少年の奮闘へと、場の緊迫感を繋げているのが上手い。
 (戦わなきゃ。こいつらを倒して、リョウマを助けに行かなきゃ!)
 途中、偶然にも傀儡太夫のアジトを発見してしまった勇太は海賊兵士に追われる羽目になり、 木の枝を拾って戦いを挑むも文字通りの子供扱いであしらわれてしまう。普段は今作におけるコメディ要員として滑稽に描かれる事が多いヤートットですが、 侵略宇宙海賊の残酷さ、一般市民に対する脅威がしっかりと描かれ、泥まみれで後ずさる勇太に容赦なく迫る海賊の刃、そこに見る死の実感が強烈。
 間一髪、傷だらけのリョウマが勇太を救い、二人は何とか岩陰に身を潜めるが、震えながら俯く勇太がリョウマの呼びかけにしばらく応えられず、 突きつけられた死の恐怖に怯えている、というのが大変良い芝居。
 「僕、駄目だった……」
 「え?」
 「殺されるって思った時、凄く怖かった。リョウマぁぁ」
 堰を切ったように嗚咽する勇太をリョウマは抱き留め、ヒュウガに教え導かれてきたリョウマが、 勇太(視聴者の現し身でもある)を教え導く立場になる、というのは上手い構造。
 「リョウマを助けたかったのに、戦えなかった。こんなんじゃ戦士になんかなれない!」
 「勇太…………言ったろ、戦士に必要なのは、力や技だけじゃないって」
 リョウマは泣きじゃくり目を逸らす勇太に、ウサギを助けようとして深い縦穴に落ちて進退窮まった、自らの子供時代を語る。
 「俺は、叱られると思った。戦士としては、どうにも情けない姿だったからね」
 映像的には小学校低学年ぐらいに子供リョウマですが、恐るべし、生粋戦士の心構え。
 「リョウマ、おまえは戦士だ。誰かを守りたいっていう気持ちが本当の強さなんだ。怖くたって、それを乗り越えようとする気持ちが、 勇気なんだ」
 だがヒュウガは、誰かを助けようとしたリョウマの強さ、自分は穴に落ちたままでもウサギを逃がしてみせたその勇気を称える。
 「俺を助けに来てくれた勇太も、戦士だよ。だろ?」
 力や技ではない、戦士に大切な本当の強さと勇気、それは、何のために行動するのか、から生まれるのだと勇太に伝えたリョウマは、 傷だらけの体を引きずりながら、傀儡太夫のアジトを目指そうとする。
 「リョウマ、今も怖いって……思う?」
 「……うん、怖いさ。今も怖い。でも行かなきゃ」
 「リョウマ、僕も行くよ」
 勇気と強さ、二つの刃を心に抱いて二人は洞穴へと向かい、一方街では、モーク情報に基づいてギンガマン4人が次々と爆弾人形を狩っていた。 だがその前に、立ちはだかる青白い影。
 「バルバン剣将、ブドー、推参。ギンガマン、これ以上の邪魔立ては、無用」
 ブドーはギンガマンを制する剣の冴えを披露して4人を足止めし、直接対決……からカメラを引いていくと画面手前を人形達が無表情に横切っていくというのがまた強烈な映像。
 ブドーの参戦もあって連続テロを止めきれないギンガマンだが、敵の喉元に単身突入したレッドが傀儡太夫を外に誘き出し、 その間に機刃を手にした勇太が洞穴に乗り込むと、製造装置にダイレクトアタック!
 本当の勇気とは何かを知った勇太は、新たなスキル《破壊工作:LV1》を覚えた!!
 歯車手裏剣を振り回し、肉弾戦でも意外と強かったヒトデ太夫は久々の炎一閃でずんばらりん。だが、「我が子供たちよ、 ギンガレッドを倒せ……!」という最期の指令に従った人形軍団が勇太と合流したリョウマへ襲いかかり、勇太を逃がしたリョウマは、 ゾンビ映画もかくやという爆弾人形に群がり押し潰され、壮絶な自爆の炎の中に消える……!
 だがこれにより傀儡製造装置が全壊した事で街に放たれていた爆弾人形は機能を停止。 重傷の身を押して律儀に作戦の失敗を報告したヒトデ太夫は最後のご奉公として巨大化するが、 星獣達の連続攻撃を受けて地球に散るのであった。
 サンバッシュとの決着編では4人でギンガイオー操縦もありましたが、 そもそもライオンを召喚できないというリョウマ不在の巨大戦を成立させる為にヒトデ太夫の瀕死を強調し、 生星獣の出番と勝利の説得力を確保。ブドーの実力披露の機会を作ると同時に、それを傀儡太夫が最後の力を振り絞って御大将の元へ辿り着くという必然に繋げ、 山間部と都市部の同時進行をスムーズに連動させる作劇が巧妙で、脚本・演出ともに質の高い出来。
 かくしてバルバンの(結果的に)大規模爆破テロを辛うじて中止に追い込んだギンガマンは急ぎ山中へと向かい、気絶していた勇太を発見。 爆炎に消えたリョウマの安否を確認しようとしたその時、洞穴の奥からリョウマを肩にかついだ謎の人影が姿を見せる。 漆黒の鎧兜で全身を覆い、兜からは黄金の角を生やすその人物は、敵か、味方か?!
 予告から期待された通りの盛り沢山の内容が、テンポの良い演出でまとめられて大変面白い回でした。 ヒュウガとリョウマの関係に重ねる形でリョウマが勇太に戦士の心得を伝えるのは定番を丁寧にやって良かったですし、 勇太に剣を向ける海賊兵と合わせて、個々の怪人の能力が高いバルバンの、作戦が噛み合った時の恐ろしさを見せつけてきたのも、 悪の脅威が継続されてタイミング的に良かったです。

◆第十八章「謎の黒騎士」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 最大の見所は、焚き火の周りをサヤと笑顔で踊るヒュウガ兄さん。
 ……サヤの、いちゃいちゃ捏造回想でないといいなぁ(笑)
 「私は黒騎士、ブルブラック」
 肩にかついだリョウマを地面に横たえた鎧の戦士は、名前だけを名乗ると凄まじいジャンプ力を見せて姿を消し、 その正体に疑問を抱きながらもハヤテ達は急ぎモークの元へと戻る。恐らくアースによるバリア技などを用いたのでしょうが、 高層ビルが吹き飛ぶレベルの自爆×10体前後を至近距離かつ逃げ場のない洞窟で食らって生きているリョウマの生命力、恐るべし。
 一命を取り留めたリョウマだが、果たしてブルブラックとは何者なのか……
 勇太:リョウマを助けてくれたのでいい人
 ヒカル:油断させるつもりに違いない
 ゴウキ:リョウマの命の恩人を疑うなんて
 ハヤテ:現段階では判断材料が少なすぎるから落ち着け
 と早速それぞれの考え方の違いから小さな衝突が織り込まれるのがいい所。
 そして、一人沈黙していたサヤは、うなされるリョウマの「兄さん……」という小さな呻き声を耳にする……。
 一方バルバンでは、次なる目標をブドーが発表していた。
 「砕かれぬもの? つまりは、「硬い」という事じゃな。わかったぞ! ダイヤモンドじゃ!」
 前回の「ビル」に続き、ブドーと樽爺の名コンビ誕生? かと思ったら……
 「そこまでは素人でも考えつくことでござる」
 3秒でコンビ解散。
 「ブドーの奴、あのもったいぶった態度、我慢できん」
 ダイヤモンドより硬いといわれる“鬼の石”こそギンガの光が潜むものに違いない、と改めて具体名をあげるブドーに対し、 樽爺に続いてシェリンダも嫌悪感をあらわにし、積み重なっていく上層部の不満。
 「大槌に さしもの石も 砕け散り」
 船長がブドーについて「裏切る心配だけはねぇ男だ」とシェリンダをなだめるも、 三下根性丸出しのサンバッシュの方が馬鹿だけど扱いやすかった、という態度が上層部の見解として一致しており、 そもそも4人の幹部をまとめられていない所に始まり、この“器量の無さ”が今作における「悪」の一つの属性であり、 強大な戦力を誇るバルバンの付け入る隙(敗因)として象徴されています。
 またそれが、血よりも濃い盃で結ばれたギンガマンの意思統一性の高さとの対比としても、上手く機能。
 ブドーの配下、珊瑚弁慶の得た情報通り、鬼の石が宇宙科学研究所に輸送開始されていた頃、 目覚めたリョウマは自分を助けた黒騎士についてハッキリとした記憶を持っていなかった。
 (あの時、俺は……何故か、兄さんに助けられたような感じがしていた。声も姿も違うのに、兄さんだと思えた)
 黒騎士は兄なのか、それともそれは、兄を吹っ切れない弱さが生む思い込みなのか。
 でも本当にヒュウガ兄さんだったら、お姫様だっこだったのではないかと思えるのです。
 (もし言えば、またみんなをいたずらに期待させるだけだ)
 リョウマの迷いを解消させようとしたモークの心遣いがむしろバッチリ暗示になってしまっているのが割と凶悪なのですが、 口を噤む事を選んだリョウマの様子を気に懸け、考え込むサヤ。
 ギンガ会議室内部は神秘的な雰囲気を出す為か、微妙にキラキラしたフィルターがかかっている(?)のですが、 その効果によりアップのサヤが当社比1割増しほど可愛く映っており、女性キャラを綺麗に撮ろうとする傾向のある長石監督と、 サヤのクローズアップ回が絶妙にはまってくれました。
 敵か味方か謎の黒騎士がギンガマンそれぞれの心中に思わぬさざ波をもたらしていた頃、 鬼の石を輸送するトラックの前に立ちはだかったのはブドー魔人……ではなく、その黒騎士。
 「それを渡すんだ。怪我はさせたくない」
 紳士的に山賊を行おうとする黒騎士だが、ぞんがい使命感の強い研究員達が石を守って逃げようとすると、むんずと掴みかかる。
 「選択の余地はない。渡せ!」
 臨獣拳的に翻訳すると「選ばせてやるぜ。俺にいたぶられてからそれを渡すのと、 それを奪われてからいたぶられるのと……どっちがいい?」と研究員危うしのその時、駆けつけるギンガマン。
 一方的に信頼を裏切られたと阿修羅モードに突入するギンガブルーだが、黒騎士は怒りのゴリラパンチを跳ね返し交戦状態に。 だがそこに弁慶部隊も参戦し、まんまと鬼の石を入手した弁慶が撤収すると、黒騎士も姿を消す。
 「黒騎士はヒュウガかもしれない」
 一度乗馬倶楽部に戻ったギンガマンは善後策を検討し、外へ出て悩めるリョウマを問い詰めるサヤ。
 「私、ヒュウガと一緒に戦士になりたかった。……ヒュウガが褒めてくれるから頑張れた」
 冒頭の黒騎士絡みのやり取りにも参加せずまたも埋没を懸念していたのですが、ヒュウガとの訓練、 ダンスの思い出……憧れの先輩的ポジションだったヒュウガへの淡い想いを語るサヤが、ここでようやく立ち位置を確立。
 ネコ回やアイドル回はあったものの、花の戦士の座をゴウキに奪われたのを皮切りにどうもここまで不遇な扱いでしたが、 ヒュウガ絡みの物事にはしっかり反応していたので唐突さはなく、やっと仕込みが開花したここからの巻き返しを期待したいです(が、 リョウマに持っていかれる予感しかしない……)ま、まずは、目指せ花の戦士奪還!!
 あともう一つ、アイドル回でそれとなくサヤとリョウマの物理的絡みが見受けられたのですが、 ヒュウガの控えから伝説の戦士の一員となったリョウマには、同時にサヤにとってヒュウガの代用品になる可能性が存在しており、 少し高めの年齢層向けの、応用問題もさりげなく仕込まれている感。
 「前に一度、戦いの中で、兄さんの声を聞いたような気がした。そして今度は、黒騎士を兄さんのように感じた。声も姿も違うのに」
 「それじゃやっぱり!」
 「でもそれだけだ」
 リョウマはぐいぐいと来るサヤを押しとどめ、自分の弱さへの恐れと、仲間への気遣いから、皆には言うなと口止めするのが、 これまでの積み重ねをしっかりと踏まえて納得がいきます。そしてリョウマとサヤがヒュウガへの想いから秘密を共有し、 黒騎士の正体を確かめようとするというのが、サヤの存在感が出て良い展開。
 「一人で考え込んでるなんて、リョウマらしくないよ!」
 第1話で衝撃の死亡 → 第1章(サンバッシュ編)ラストで生存の可能性を匂わせる → フォーマット確立前とはいえ如何にもなタイミングで登場するフルアーマー → 幼なじみの関係に肉親の情と男女の情もエンハンス
 と、黒騎士の正体がヒュウガだったらいいな……と、キャラクターと視聴者の願望を同調させる物語の組み立てが、 鮮やかすぎてエグい。
 堀学校の虎の子・小林靖子が、高寺プロデューサーとの化学反応を得て、初メインライターにして鬼畜の片鱗をまざまざと見せつけてきます。
 一方、自慢の大槌を振るうも鬼の石を破壊できなかった弁慶は、ギンガマンを呼び出す果たし状を街にばらまく。 モークの写し出す映像から、一目で「果たし状か?」と判断するハヤテ、バルバン文字が読めるのか、こういうのは果たし状だ、 という戦士の直感なのか(笑) まあモークには読めるようなので、ギンガの民の知識の範疇のようですが。
 罠を承知で石を取り戻すチャンスに賭け、果たし状の場に赴いたギンガマンは銀河転生し、主題歌→「銀河を貫く伝説の刃!」 →ナレーション「ギンガマン、それは……」→「銀河炸裂!」と、個人名乗りは省略されたものの久々のフルセット。 特に「銀河炸裂!」は無かった事にされそうな雰囲気だったので、復活して良かったです(笑)
 戦闘員を引きずるアクションは木などにぶつけるのが定番でしたが、黄と桃が互いに引きずってきた戦闘員の頭と頭をぶつけた瞬間に手を離し、 その勢いを殺さないまま前転して両サイドに流れていく、というアクションはスピード感があって非常に格好良かったです。
 ギンガマンを挑発した弁慶はモークバズーカを撃たせると、その衝撃を鬼の石で受け止め、 というか魔人衆を次々と木っ葉微塵にしてきたバズーカの威力を利用して石を破壊しようとしたのだが、 なんと鬼の石はモークバズーカを跳ね返し、予想外の鮮やかなカウンターが炸裂してしまう(笑)
 「む?! なに?! これでもまだ割れぬというのか!」
 凡百の頭の悪い怪人だとここで一度帰ってしまう所ですが、弁慶は好機とばかりにギンガマン殲滅に目的を切り替え、 素早い撤収・任務遂行の為にモークバズーカ直撃を辞さない精神力と忠誠心・機を見るに敏な咄嗟の判断力、と弁慶怪人、非常に優秀。
 「ギンガレッド、まずはおまえの首から貰う」
 踏みつけにした赤に長刀を振り下ろそうとする弁慶だがその時、風を切るJPカード! じゃなかった、弁慶の腕に突き刺さる短刀。
 「何者だ?!」
 短刀の柄に下がった飾りが鳴らす、風鈴のような澄んだ音色をBGM代わりに、陽炎のようにシルエットを揺らめかせながら歩いてくる黒騎士が、超格好いい。
 「また貴様か! こいつらに味方するつもりか?!」
 「いいや。ただ貴様等バルバンの思い通りにさせたくはないだけだ。それより、貴様の持っている例の石、渡してもらおうか」
 そして自由。
 弁慶がヤートット軍団を繰り出すとBGMが一気にウェスタン調になり、これまでも音楽や馬要素、 EDテーマなどそこはかとなくウェスタン風味を散りばめていた今作ですが、なるほど黒騎士は、 騎士だけど流しのガンマンなのか。登場シーンは西部劇で主人公が酒場に入ってくるシーンのイメージめいていましたし、 ブル(雄牛)ブラックという名前もカウボーイからの連想を思わせます。ここで大変今更ですが、 『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017)のオウシブラックって、完全に黒騎士のセルフパロディだったのですね。
 「違う……兄さんの剣捌きじゃない」
 黒騎士は逆手持ちの斬撃で次々とヤートットを切り裂いていき、太刀筋から別人と判定する、というのが戦闘民族らしくて大変良かったです。
 そして黒騎士は剣を銃モードに変えると、ショットガンスタイルで次々と海賊兵士を吹き飛ばしていく。
 「貴様、なぜギンガの光を狙う」
 「3000年前、ギンガの光を地球に持ち込んだのはこの私だ。貴様等を倒す為に!」
 え? という事は、サンバッシュにやられて嘘教えた人なの?! と、急上昇していた株価が大暴落する衝撃発言が飛び出し、 黒騎士と弁慶は決闘モードで対峙。
 弁慶の長刀の一撃をガントレットで受け止めた黒騎士は逆手抜刀術で連続攻撃を浴びせると、トドメは黒騎士ダイナミックで一刀両断。 その一撃は弁慶もろとも、ハザードレベル80はありそうな鬼の石も真っ二つにしてみせる!
 「ギンガの光では、なかったか」
 黒騎士はがに股スタイルの振り返りモーションを決め(色彩とポーズの関係で、どこかRXを彷彿)、弁慶は大爆発。
 モークバズーカ返しのダメージにより、この戦闘は見つめるだけだったギンガマン、弁慶が巨大化すると、 とりあえず反射的に星獣呼ぶのが訓練された殺意の高さ(笑) そして弁慶の長刀をあっさり片手で受け止めたギンガイオーは、 動きを封じた弁慶の土手っ腹を剣で貫いて力任せに投げ飛ばすと、今日も鳥頭ボウガンで圧勝するのであった。
 「成る程……少しは戦えるようだな」
 冷静に星2つ評価を与えた黒騎士は、3000年前、地球に降り立つもサンバッシュにギンガの光を奪われそうになり、 とりあえず光を解放して隠れるに任せ、サンバッシュに偽の隠し場所を伝えて自身は崖から転落していたという真相を語り、 サンバッシュに敗れたのは地球に来るまでにHPとMPを消費し尽くして満身創痍だったからであり決して実力ではありません、 と自らの価値をフォロー。
 「私は地の底で3000年の時を過ごし、ようやく甦る事ができた」
 「じゃあ、あなたはやっぱり……」
 「今こうして甦った以上、私が再びギンガの光を手に入れ、バルバンを倒す」
 拳を握って力強く宣言すると、黒騎士は風にマントを翻して去って行くのだった……で、つづく。
 3000年前の事件と絡める事で黒騎士とヒュウガが別人である事を明確にしてきた一方、リョウマの感じた兄の気配、 なぜ3000年後の今になって黒騎士は甦る事が出来たのか、と含みを持たせた展開で、 ギンガマン側の縦軸になる要素を良い感じにブースト。ヒュウガの存在が、殺伐とした抗争の中でギンガマンの情の部分に奥行きを与えており、 死んだキャラがしっかりと生きています。
 次回――
 「今の私に人質など意味は無い」
 私の中の黒騎士株が、上がって、下がって、また上がりました!!
 果たして黒騎士は、東映ヒーロー史における新たな人質無効体質として、諸先輩(超人バロム・1、ジャンパーソン、など?) に続いて名を轟かす事が出来るのか?!

→〔まとめ4へ続く〕

(2020年3月28日)

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