■『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ2■


“吠えろ! 吠えろ! 吠えろ!
ギンガマン!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『星獣戦隊ギンガマン』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第七章「復活の時」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子)
 星獣の犠牲によって体内の毒は浄化されたものの、まだ体力的な消耗の残る勇太を看病する父の姿で、親子愛をフォロー。 そして青山父は、昼間からブラブラしている夢見がちな中年男性というだけではなく、どうやら絵本作家か何からしいと判明。
 ギンガマンは石化した星獣にアースを注ぎ込む事で復活を試みようとするが上手く行かず、 バルバンでは星獣の死体を磨り潰して薬にする事でダイタニクスを目覚めさせよう、と甲虫ブラザーズが出撃し、 巨大な星獣の石像にハンマーを打ち付ける魔人、というのがなかなか凶悪な絵面。
 それを阻止しようとする戦いの中で、ギンガマンは自在剣機刃が星獣の星から力を引き出す機能を持っている事を知る。 だが星の力はあまりに大きすぎ、それを受け止めるギンガマンが只ではすまないだろう……。
 「君たちまで居なくなったら、誰が地球を守るんだ」
 命を賭けて地球を救った星獣の心に応える為、自分たちも命がけで星獣を救おうとするギンガマンをモークが冷静に止め、 命を賭ける意味・強大な力のリスク・地球を守る為に最適な選択とは何か、とここまで描いてきた要素をきちっと積み重ねてきます。
 だが5人はキバを手にモークの制止を振り切ると、アースを高める事で星獣の星の力を受け止めようとする!
 「彼らも、星獣と同じだ……誰がなんと言おうと、使命を果たす」
 第1話時点から極めて強い使命感と固い覚悟を持つギンガマンですが、その魂の強さと気高さゆえに、 星の力を引き出し受け止める器として戦う事ができる――巨大な力とそれに見合う魂――の関係が星獣となぞらえる姿で描かれ、 ある種の犠牲的精神は、まさに“英雄”のそれといえます。
 「そうさ……俺たちは、死ぬわけにはいかないんだ。……必ず生きて、星獣たちと一緒に、新しい力を、手に入れてみせる」
 その上で、“使命の為に命を賭ける”けど“使命の為に死なない”という、 自家発電ぶりが研ぎ澄まされた3000年の破壊力(笑)
 星獣の復活エネルギーを横取りして魔獣復活に利用しようとするザンバッシュ組の謀略を、勇太少年が渾身の投石で打ち破り、 星獣の寂しさを心配する勇太少年の子供らしい優しさが絆を生み、その象徴として前後編でスポットを当ててきた星の石がキーアイテムになるのは、 一足飛びに奇跡を起こすのではなく、定石を丁寧に組み込んできました。
 (勇太は、星獣の友達だろ。だったら、信じるんだ、星獣の力を)
 とリョウマの言葉を思い出した結果の行動が、え? 投げるの……?! だったのはちょっと驚きましたが………… 思えば友情のメーターは飛び道具となり、友の形見は打撃武器になるのが東映ヒロイズムなので、 星を超えた友情の証で魔人滅殺を図るのは、極めて正しいに違いありません。
 機刃を通して星の力を受けて復活した星獣は、「大転生・銀星獣!」により、メカ化。 「星獣合体・ギンガイオー!」の叫びで変形合体し、超派手なカラーリングの巨大ロボが誕生する!
 「バルバン! 俺たちは勝つ。必ず勝つ!」
 5人の戦士と5匹の星獣が心と力を一つにしたギンガイオーは、 ベルトの位置にゴリラの顔があるのが凄く気になるのはまあさておいて、銀河獣王斬りで巨大クワガタを瞬殺。 カブトバズーカの直撃を受けても無傷で立つと、剣をクロスボウに変形させて鳥の頭を飛ばし、圧倒的な力で巨大カブトも撃破するのであった。
 かくして星獣のメカ化という尊い犠牲を払い、ギンガマン大勝利! …………と思ったらあくまでもメカ化は星獣の強化形態という事らしく、 戦闘終わったら生ものに戻っていて、ガックリ(おぃ)
 いや、予告見た時にてっきり、生身から一度、石化→復活、というプロセスを経る事により、 もはや後戻りできない形でスムーズにメカ化するのだとばかり思い込んでいたもので、 星獣の魂を宿したメカとして復活! 燃える!とワクワクしており、 少々ツボとはズレてしまったのでありました(^^;
 いや多分、私の発想とツボが邪悪なだけです、ハイ。
 次回――ヒカルのグルメ。

◆第八章「愛情の料理」◆ (監督:田崎竜太 脚本:武上純希)
 「すいませーん、この店で一番うまいものくださーい」
 外の世界の食文化に興味津々のヒカル……それは、真似したら駄目な人だ!!
 「……なんだってぇ? うちの店にまずいもんなんかある筈ないだろ」
 案の定、危うく包丁で千切りにされて伝説からリタイアしかけるヒカルだったが、厨房から顔を出したシェフが、 ヒカルをひったくりと勘違いして叩きのめした女性だった事から、本当のおふくろの味をその場でご馳走になる事に。
 この冒頭、ヒカルがひったくりを捕まえる(アースを使っておらず、さりげない成長の織り込みは秀逸)→ シェフに勘違いでしばかれる→お詫びにお店に案内される、の流れの方がスムーズだったと思うのですが (或いはひったくりの被害者がシェフ)、しばかれる→シーン切り替わってレストランを探すヒカル→たまたま入店、 と遠回りをしたのは単純に尺が余ったりしたか何なのか。
 シェフがヒカルを制圧する武闘派である事が特に後半活用されるわけでもなく、 結果として“シェフがヒカルに謝るシーン”が一言も無い為に、導入からゲストキャラに変な引っかかりが生じてしまいました。
 息子を早くに亡くしたシェフ・静子と、母を早くに亡くしたヒカルの不器用な交流も、素直じゃない二人の姿が、 悪い意味で変にひねくれた印象に。
 その頃、バルバンではゼイハブのオヤジがいい加減、しびれを切らし始めていた。
 「なあザンバッシュ……反省って言葉知ってるか?」
 「はぁ? なんですか船長、突然」
 知らなかった(笑)
 「反省が足りねぇから失敗ばかり続く……そうは思わねぇかって言ってるんだい!」
 鉤爪を磨く船長はドスの利いた声でガンマンを恫喝し、バルバン会とギンガ組のシマ争いが過熱。
 「どうだ……? サメに食われて、胃袋の中でゆーっくり反省してみてぇか?」
 ケツに火のついたザンバッシュは苦し紛れの閃きでダイタニクスを美味そうな食べ物でつってみてはどうかと提案するが、 これが意外や、悪のコンサルタント樽先生に好感触。かくして至高の料理を求めて美食家のダンゴムシ怪人が街へと繰り出し、 その場の思いつきみたいな作戦に即応できる人材がゴロゴロ居るのが、割と侮れませんザンバッシュ組(笑) ……ただし、 知力が、知力が。
 一方、この俺が食事当番の時に姿を消すとはその所業断じて許すまじ、と怒りの鬼神と化していたゴウキだが、 静子にどやしつけられながら料理を教わるヒカルの姿を見て、母の温もりを求めていたに違いない……と独り合点すると、 仏のゴウキにフォームチェンジ。
 そこへバルバン出現の報が入り、ヒカルとゴウキは他の3人と合流すると、怪人めがけていきなりのジャンピング頭突き、 はなかなか見ない攻撃の気がしますが、運命の歯車が一つズレていたら、ゴウキ怒りのダイビングヘッドバットがヒカルの肝臓に突き刺さっていたのかと思うと、 アースの導きに感謝。
 「いい若いもんが、ブラブラしてるようだったら、料理でも仕込めば、一人前になるかと思ってたんだけど、あんた見かけによらず、 大した仕事してるじゃない。料理を作るのは私に任せて、あんたはあんたの仕事を頑張りな」
 社会不適格者だと思われていた。
 …………もはや慣れてきたけど、まあ、その服装だしな…………(納得)。
 その後、至高の料理を作る至高のシェフとして静子が狙われるが、イエローがシェフ直伝の包丁捌きでこれを撃退。 巨大化した魔人に対してメカ星獣の属性ビーム攻撃から星獣合体し、自慢の装甲を銀河獣王斬りであっさり切り裂くと、 鳥頭ボウガンで銀河炸裂。
 子を母を重ねていた事を打ち明けた静子とヒカルが厨房でドタバタするのを、皆で生暖かく見守って、オチ。
 ロボット誕生で立ち上がり一段落という事でか、前年『メガレンジャー』でメインライターを務めた武上さんがサブ一番手で参戦。 一山越えた後のキャラ回で、可も無く不可も無くといった出来。次回、ようやく花の戦士のターンです。
 ところで今頃、OPのギンガマンが走っているシーンで、水たまりに映ったバルバンの旗印を踏みつぶす、 という格好いい演出の存在に気付きました。

◆第九章「秘密の子猫」◆ (監督:辻野正人 脚本:武上純希)
 本日の名言。
 「成功したら俺様の手柄、失敗したら先生の責任って事だ」
 素晴らしいスタンスです(笑)
 OPがややマイナーチェンジし、メカ星獣からギンガイオーへの合体バンクなどが追加。
 公式花の戦士としてゴウキに負けてはいられない、とケーキを作るサヤ、それをギンガットに届けようとするが、 謎の隕石で聖なる力を失ったギンガットが小さくなって、ユウコという少女に拾われてしまう。
 「かわい〜」
 かわ…………いくない!!
 …………ま、まあ、アンバランスな頭部の大きさは、女児向けアニメの不思議生物を実写化したらこんな感じだろうか…… という雰囲気がなくもないですが。
 ユウコは森で見つけたピンクの石をギンガ猫の首にかけるが、それこそがギンガ猫から力を奪った隕石であり、 その隕石によりダイタニクスを復活させられるのでは、と考えたザンバッシュ組に狙われる事に。
 家出した飼い猫を重ねているユウコからギンガ猫を無理矢理引き離す事ができず、悩めるサヤだが、街にカマキリ魔人が出現して、 男衆が出撃。だがそれは陽動であり、隕石を狙ってライダーブレイクしてくるザンバッシュ。
 「ハロー、可愛い子ちゃん。残念ながら、悪い奴らってのはそう簡単にはやられねぇもんさ」
 格好つけている間に、体当たりを食らう(笑)
 少女を守る為、1人で戦う事になるギンガピンクに対し、さすがに幹部クラスの力を見せるザンバッシュ。 ピンクの危機にもがく猫の姿に首飾りにしていた石を外す事に少女は気付き、地球人の特技は……投石だ!
 高々と放り投げられた隕石、それを追いかけるザンバッシュ、華麗なジャンプで飛びつくザンバッシュ、 キャッチ寸前に隕石に突き刺さるキバアロー、弾け飛ぶ隕石の爆発に巻き込まれるザンバッシュ、 と洒落た台詞で登場して戦闘力を見せつけてからの無様なリタイア、と現場に出てきたザンバッシュがいい仕事ぶり(笑)
 街では火炎放射からの二刀流で赤がカマキリを倒し、巨大カマキリには復活したギンガ猫の体当たりから、星獣合体。 鳥ボウガンが背中から外れる特撮が追加され、銀河炸裂!
 最後はモークが家出した猫を見つけて少女の元へ返してハッピーエンドとなり、今回もモークが有能ぶりを見せつけるのでありました!
 前回同様にゲストキャラとの関わりを軸として、可もなく不可もなくといった出来でしたが、前回は外の社会、今回は星獣、 と『ギンガマン』の特性にそれぞれ焦点を合わせてキャラエピソードに繋げる事で、今作らしさが出ていたのは良かった点。
 ところで前回の「ぷっ」といい、今回の「ケーキ好きなのか? ギンガット?!」といい、身内をからかう時に、 やんちゃしていた過去が顔を出すハヤテさんですが、次回――俺のイケメンパワーを見せてやる! やたら格好いい予告で、 果たしてハヤテは、迫り来る煩悩を打ち払う事が出来るのか?!

◆第十章「風の笛」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子)
 横笛を吹きながら、一人の女性の事を思うハヤテを皆が遠巻きに見つめる中、 特別な日なのだからギンガの森に帰るべきだと声をかけるリョウマだが、バルバンの腐れどもを沈めるまでワシらに帰る故郷はないんじゃ、 とハヤテは頑なにそれを拒否。
 「どうしておまえはそう、お節介なんだ!」
 「そっちこそ、どうしてそう、頑固なんだ!」
 珍しく2人が揉めているのを耳にした勇太は会話に出てきた「ミハル」という名前について問い、顔を見合わせるゴウキ・ヒカル・サヤ。 勇太の子供らしい疑問を厭味なく描く事で、それと対比される3人が自然と大人の反応を見せる事になり、 人間関係の繊細な描写の中で戦隊メンバーがさりげなく大人っぽさを見せているのが秀逸。
 「……うん、ミハルはね――」
 だがその時、街に溢れる様々な音を増幅、束ねる事で大騒音による交響曲を奏でるスピーカー魔人が出現。声が大竹宏さんの為、 ザンバッシュ組のボーゾック度が更に上昇(笑)
 バルバン上層部すら耳を塞いで怯ませるその轟音により魔獣ダイタニクスを揺さぶり起こそうとするガンマンだが、 日々ストレスを溜めているシェリンダ、このやかましい作戦に堪忍袋の緒が切れて、とうとう身内に剣を向ける。
 「もういい加減、海に浮かんでいるのは飽き飽きだぞ。いつになったらダイタニクスを動かせるんだ!」
 シェリンダは操舵輪に手をかけ、これまでバルバンの駄目出し要員だったシェリンダの“こだわり”が描かれる事で、 キャラクターが一気に立体的になったのはお見事。
 危うく刀の錆になりかけるガンマンだったが、見当外れと思われた作戦がまさかの大当たり。
 ……樽先生の意見など聞かなくて良かった!
 「ダイタニクスが、復活する」
 笑みを浮かべるシェリンダだが、ハヤテの横笛が響き渡ると耳を聾する騒音がかき消され、 振動に反応していたダイタニクスの鳴動も収まってしまう。
 「ギンガグリーン、貴様何を?!」
 「知らないの? 風の戦士の吹く笛は、邪悪な音を消す力があるのよ!」
 なにぶん笛を吹いているので、ピンク、代わりに説明(笑)
 笛を吹くハヤテを守りながら戦うギンガマンだが、怒り心頭のシェリンダが前線に現れると剣を投げつけて笛を両断。 攻撃を受けたハヤテは気絶するがギンガマンの攻撃で魔人も指揮棒を失い、痛み分けで両者撤退。ハヤテとリョウマは新たな笛を作る為、 ギンガの森の風の木と似た材質の木を求めて山へと向かう……。
 「無理でもなんでもやるしかないさ。……今日っていう日に……笛を作るのも悪くない」
 なんとか新たな笛を作るハヤテだが、シェリンダの強襲によりリョウマと一緒に川流れ。 街では活動再開したスピーカー魔人に立ち向かう残り3人が苦戦し、これまでになく復活の近づく魔獣ダイタニクス。 ハヤテが笛を吹く時間を稼ぐ為に囮を買って出るリョウマだが、単純な囮作戦ではすぐにバレてしまうだろう…… と黙考したハヤテはある一計を閃く。
 「リョウマ……今日ギンガの森へ行けって言ってくれたのは、嬉しかった。……行くわけにはいかないけどな」
 「ははは、ホントに頑固だな。なんでミハルがおまえを選んだのか、不思議だよ」
 「……俺もそう思う。…………リョウマ」
 「ん?」
 「死ぬなよ」
 バルバン復活がなければ、ハヤテが婚約者ミハルと結婚する筈だった“特別な日”を軸に、 これまであまり絡みが無かったリョウマとハヤテの関係を掘り下げ、リョウマの気遣い、ハヤテの責任感、2人の友情、 そしてシェリンダの執着とそれを邪魔するハヤテへの憎悪、とそれぞれの関係性を通してキャラが肉付けされていく手並みが実に鮮やか。
 森で眠っている(と思われる)婚約者の存在というのは、振り返る事なく前のめりにバルバンとの抗争に挑みつつも、 戦いが終わった後の事を考えているギンガマンの姿勢を補強する要素としてもふさわしいピースで、作品世界の土台作りが終わり、 比較的自由度の高かったと思われるエピソードで、小林靖子の技巧が光ります。
 また、「音」をキーにしたという事があってか、街中の生活音その他が折り重なって破滅の交響曲となる様子、クラシック音楽の挿入、 ハヤテやミハルの笛、劇伴、と様々な音楽の入れ方が非常に格好良く、辻野監督の演出が巧み。
 ハヤテはアース忍法による攪乱とリョウマの囮の二重作戦でシェリンダを引き離すと、笛を吹いて邪悪な音をかき消す事に成功。 シェリンダとの一騎打ちにも勝利し、手傷を負ったシェリンダは「ギンガグリーン、この決着は必ず」と言い残して引き下がり、 顔出し女幹部とイケメン枠を絡めていく姿勢も、良い感じです(笑)
 赤と緑は、笛の音が響く事を信じてスピーカー魔人&ザンバッシュの猛攻に耐えていた3人と合流するとキバの逆鱗を放ち、 直撃を受けたザンバッシュがリタイアしかけて、これが、巧く行きすぎた作戦のツケか……!
 巨大スピーカー魔人に対しては、火炎放射でスピーカを破壊し、獣王斬りから鳥頭ボウガンで銀河炸裂。今日も強いぞギンガイオー。
 「ギンガグリーン、ハヤテ……貴様だけは、この私が倒す。必ず」
 ハヤテに個人的憎悪を燃やすシェリンダに、ダイタニクスを動かせないストレスに加えて、女剣士的プライドがほのみえて、 一気に存在感が増したのは、今後に向けて好材料。……ところでリョウマではなくハヤテと絡む事になったのって…… もしかして:説教繋がり?
 ……ま、まあ、リョウマは兄関係のドラマが今後もありそうなので、ハヤテに振ったのでしょうが。
 そのハヤテは横笛を吹きながら、いちゃいちゃ回想にふけるのであった、でつづく。
 次回――花の戦士、走る。

◆第十一章「戦士の純情」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 「サンバッシュ、俺も遊びでてめぇを行動隊長にしたんじゃねぇ。ここらあたりが我慢の限界ってもんだぜ」
 「せ、船長、すまねぇ! あと一回、俺にチャンスをくれ」
 いよいよ駿河湾に沈められそうになったサンバッシュが最後のチャンスを与えられた頃、ギンガマンは青山父から、 急用で行けなくなった自分に変わり、勇太の授業参観に出てほしいと頼まれていた。
 「俺行く、俺!」「私も!」
 「どなたか……」と言いつつ、ヒカルとサヤが真っ先に手を挙げると(信用できない……)という顔になる父、正直(笑)
 「子供が行ってどうするんだ」
 ハヤテが二人の後頭部をホウキで小突き、軽妙なやり取りの中で5人内部の関係性も順調に定まっていきます。
 ハヤテとリョウマが乗馬教室の担当日だった事からオフのゴウキが青山父代理に指名される事となり…………客、来るんだ。 そして、その格好で担当しているんだ。
 寝泊まりする場所を提供されている分、表向きの仕事をちゃんとこなしているのがわかってホッとしましたが、何か、 雰囲気から入る系の教室として、違ったウケ方をしているのでしょうか(笑)
 授業参観へと向かったゴウキは、勇太の担任、鈴子先生と接触してときめきゲージが急上昇。 勇太を撮ってほしいと頼まれたビデオカメラで鈴子先生を撮り続け、それはもはや犯罪だぞゴウキ!!
 舞い上がる姿がコミカルに描かれたゴウキは、モークから招集指令を受けると3階の窓から大ジャンプを見せて現場へと走り、 常人離れしたアクションで一気に日常からヒーローの時間へと切り替わるのが鮮やか。
 地面に次々と謎の針を打ち込んでいた魔人はギンガマンと一当たりするとあっさり撤退。学校に駆け戻ると既に授業参観は終了しており、 鈴子先生への恋煩いで心ここにあらずのゴウキは、得意の料理も手につかない。
 料理担当になりつつあるゴウキですが、当番制らしき言及はあるものの、これをサヤに振らずに見るからに一番ごついゴウキに振っているというのは、 割と意図的なのかな、とは思ってみたり。
 「ひょっとして一目惚れってやつ?」
 「はぁ……わかりやすい性格」
 邪念を払うべく公園で顔から水を浴びていたゴウキは、ベンチで鈴子先生が泣いているのを目撃してしまって、大困惑。
 「俺、剣苦手だったけど、戦士になったし」
 「勇太くんが言ってた。ゴウキは強いけど、優しい戦士なんだって。ほんとね」
 戦士、流されたぞ、戦士……!
 鈴子先生的にはなんらかの比喩表現だと思っているのかもしれませんが、先日はシェフがギンガイエローをあっさり受け入れていましたし、 今作世界の一般人のギンガマン認識はちょっとドキドキします(笑)
 割と、メジャーな職業なのか、戦士……!
 授業へのクレームに傷ついていた鈴子先生を励ましてちょっぴり好感度を稼ぐ事に成功したゴウキだが、突然、謎の鳴動が発生する。 魔人が打ち込んでいた針は大地のツボを刺激するものであり、街を襲う大地震! 先生と一緒に逃げていたゴウキは、 逃亡中に事故車の中で気絶している男性を発見。なんとそれは「明日結婚する相手」であり、鉄塔が崩れ落ちてきそうになる中、 ゴウキは鈴子先生の為、必死の活躍で男性とウェディングドレスの救出に成功すると、戦いへダッシュ。
 「銀河転生!」
 ゴウキは涙声で変身し、力強く振り切って戦いへ赴く格好良さではなく、失恋を引きずる一抹の情けなさの方を隠さず示す、 というのはかなり珍しい作劇の気がします。戦士として前のめりなギンガマンゆえに、人間的な弱さの部分を敢えて強調する意図だったのかと思われますが、 今回を象徴する変身シーン。
 あのギンガレッドを追い詰め、かなりの強さを見せる地震魔人だったが、駆けつけたブルーがゴリパンチ、からのゴリスイングを放ち、 失恋パワーを星獣剣に乗せた激流一刀で撃破。巨大化後はゴリラ単独のプロレスアクションで痛めつけてから星獣合体し、 鳥頭ボウガンで遠距離から射殺。
 ブルー回にしても、ロボットよりゴリラの戦闘シーンの方が長い、という大胆な事をしているのですが、 割とざっくりロボ戦を短くしてしまう事もあったという長石監督、星獣バトルには新機軸の面白みがある、という判断があったのでしょうか。
 かくして地球の危機は救ったが恋には破れ、体育座りするゴウキを遠くから見つめる4人だったが、 救出した男性は「先生の姉の結婚相手」と判明し、お礼に届いた手作りケーキでチャージアップ!  明日結婚する人の行動としてはどうも不自然なような……と思ったら納得のオチで、朴訥キャラがゲストに一目惚れ→失恋、 というオーソドックスなパターンにスパイスをひとつまみ振りかけた上で、今後へ拡張する余地も残って良かったと思います。 ギンガマンの場合かなり一般社会に順応はしているのですが、やはり、ギンガの民と外部の社会、という要素はあった方が良いと思うので。
 乗馬倶楽部でケーキの奪い合いが勃発しようとしていた頃、ラストチャンスに失敗、したのではなく、真の狙いを別に持っていたサンバッシュが、 地震によって姿を見せた洞穴の中にある、“本当の切り札”を手に入れようとしていた……。
 次回――
 サンバッシュの最後の! そして、最大の切り札! それは!
 「リョウマ……」
 「兄さん!」
 だがその喜びは、悪夢の始まりだった!
 「ここまでだなギンガマン、チェックメイトだ」
 テンション高く、やたらめったら格好良い予告で、衝撃の再会?!

◆第十二章「悪夢の再会」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 「処刑の方法は選ばせてやる。なにがいい?」
 「わしゃ、久しぶりに火あぶりがいいと思うがなぁ」
 「ちょっと待ったぁ!」
 アジトに戻るやいなやケジメを付けられそうになるサンバッシュ、シェリンダと樽先生の他人事具合が、前回に続いてホント酷い(笑)  第10話の作戦なんて成功寸前だったのですから、シェリンダはサンバッシュに座布団1枚分の慈悲ぐらいあってもいいと思うのですが、 むしろ殺す気満々です。
 樽爺は……割と責任転嫁されたり蹴られたりするので、まあ、仕方ないでしょうか。
 「これが俺の最後の、そして、完璧な作戦だ!」
 ギンガマンを挑発したサンバッシュが、バイクで引きずる棺の中から見せつけたのはなんと……地下空洞で拾ったというヒュウガ!  カゲロウ岬へ来いと告げるサンバッシュを追おうとする5人を招集したモークは軽挙を戒めるが、 たとえ罠でもヒュウガを救える可能性があるならば、と5人の決意は固い。
 「何があろうと、バルバンが何か企んでいるなら、俺たちは行くべきだ。そうだろう?」
 「私は、心配なんだ、君たちが」
 「大丈夫! 俺たちは戦士だ」
 ギンガマンのヒュウガへの情と、大局を見るモークの論理の対立と見せて、モークにはモークでギンガマンへの情が存在している、 という一方的ではない視点の置き方が秀逸。そしてそれら全てを乗り越えていく「俺たちは戦士だ」という理屈(笑)
 これを、悲壮感を纏わせず、サムズアップでもしそうな爽やかさで言ってのけるのが3000年のアースの極みです。銀河炸裂!!
 またここでモークと言葉を交わすのがハヤテというのは、一行の兄貴分という立ち位置と、先行するリョウマのヒュウガへの想いの強さが同時に示されて良かったです。
 岬へ向かった5人が血気に逸りながらも正面から突撃する愚は犯さず、回り込んで陽動をしかけてヒュウガを救出するのが凄くギンガマン。 だが感涙の再会も束の間、リョウマの肩を優しく叩いたヒュウガは、断崖の洞窟へ向かうように告げる。 そこには遙か古代に宇宙から流れ着き、手に入れたものに凄まじい力を与えるという<ギンガの光>が隠されており、 その扉はアースによってしか開かない。
 地底のマグマの中で全てのアースを失ってしまったというヒュウガは、サンバッシュより早く<ギンガの光>を手に入れろと、 リョウマを洞穴に向かわせて自らは海賊兵士を食い止める。
 「行けー! ギンガの光を手に入れろ! バルバンを、倒すために!」
 さすが元ヒーローだけあって、こういった勢いのある演技がはまります。
 洞穴へと向かったリョウマはギンガの光が秘められているとおぼしき小箱を手に入れるが、悪い顔で笑うヒュウガに不意打ちを受け、 箱を奪われてしまう。ヒュウガの正体は、サンバッシュの部下、グリンジー。全ては、 箱を手に入れる為にリョウマに扉を開けさせようという、サンバッシュの罠だったのだ!
 オーソドックスな展開ですが、ヒュウガ、あれだけ力強く死んでおいて、地下空洞でサンバッシュに拾われましたではあんまりだったので、 ある意味、偽物で良かった(^^;
 箱を巡る争いの中、(リョウマ! リョウマ、立て! おまえは勝てる!)と本物の兄の言葉を聞いた気がした赤は苦戦しながらも反撃するが、 小箱を手にしたサンバッシュとの挟撃を受け、倒れるギンガマン。だが5人はヒュウガの姿を利用した魔人への怒りから立ち上がり、 逆鱗が炸裂してグリンジーは巨大化。
 ギンガイオーを4人に任せてサンバッシュには赤が一人で立ち向かい、銃弾の雨を浴びてもなお立ち上がる。
 「てめぇ……不死身か?!」
 「言った筈だ。俺はおまえを、許さない!!」
 赤は殺意の乗った炎一閃でサンバッシュを両断するが、重傷を負いながらも反撃してきたサンバッシュの銃弾を受け、 箱を挟んで互いに剣と銃を構えながらダブルノックアウト、というのは格好いいシーン。
 「俺は……負けねぇ……」
 魔人グリンジーは4人乗りでもギンガイオーに射殺され、根性見せて匍匐前進で箱へと辿り着くサンバッシュだが、その中身は……空。
 「く……はは……ははははは……そうか……そういう事かよ……。ははははは、ははは」
 かつて地球にギンガの光を持ち込んだ者を始末し、隠し場所を聞き出して胸に秘めていたサンバッシュだったが、 教えられた隠し場所自体が嘘だったのだ、と悪のはまった落とし穴が、虚ろな笑いで強調されて印象的。
 「いつか、どデカい事しようと、3000年もの間、船長にも隠してたもんを……! 俺にもう、後はねぇ!」
 全身から火花を散らすサンバッシュはバイクにまたがると銃を乱射しながらレッドめがけて突撃し、 最後の力を振り絞ってジャンプでかわしたレッドはすれ違いざまローリング二刀一閃。直撃を受けたサンバッシュはそのまま海へ向かってダイブし、 壮絶な空中爆死を遂げるのであった。
 行動隊長に指名されてからぴったり10話でリタイアしたサンバッシュ、 複数幹部の存在が示された上での一番手かつ頭悪そうな時点でどうしてもやられ役のイメージが先行してしまい、 配下のスペックはともかく総合的な脅威度は低めでしたが、サンバッシュなりの誇りを持ち、組織の歯車ではなく、 野心を持った一匹の狼としてギンガレッドと戦い、そして散っていった最期は良かったです。
 貴重なマジックアイテムを上司に隠しておくというのが、部下と全く同じ事をやっていた、というのも変な説得力が(笑)
 「ヒュウガ……本当に、生きててくれたのかと思った。やっぱりヒュウガは……!」
 改めて哀しみに沈むギンガマンだが、リョウマは、戦いのさなかに確かに聞こえた気がした兄の声に戸惑っていた。
 「あれは……あの声はいったい……」
 果たしてそれは、割と出血多量だったリョウマの聞いた幻だったのか……? バルバンでは新たな行動隊長が蠢動を始め、抗争は、 新たな動きを見せ始める……!
 構造的には前回と似ていて、今回は偽ヒュウガというオーソドックスなプロットに、 ギンガの光とヒュウガの声という引き要素でプラスワンする、という作り。その中で、「罠があってもぶち殺す」 「ヒュウガを騙った貴様等をぶち殺す」「てめーは絶対許せないからぶち殺す」と、 ギンガマンの殺意と戦闘遂行能力の高さが強調されました(笑)
 「大丈夫! 俺たちは戦士だ」(爽やかに)

→〔まとめ3へ続く〕

(2019年10月6日)

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