■『激走戦隊カーレンジャー』感想まとめ5■


“ボーイ いい子はやめて 仲間になろうぜ
蹴散らす奴が ブッ壊す奴が 明日のヒーロー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『激走戦隊カーレンジャー』 感想の、まとめ5(25話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕

◆第25話「ナゾナゾ割り込み娘!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
 ペガサスの面々が花火大会を楽しむ夜、地球に落ちた流れ星に胸騒ぎを覚えるゾンネット……その流れ星から降り立ったのは、 カーレンジャーを探す白いドレスの少女であった。
 「チーキュのニッポンポンってなんて素敵なんだろ。早く会いたいなぁ。カーレンジャーの5人に」
 少女は海で遊んでいたペガサスの一般市民達と行き会い、せいぜい中学生ぐらいに見える少女にデレデレする実、ちょっと危ないぞ実、 気をつけて実!! 王女様回の設定を忘れず、土門が緊張で恭介の陰に隠れていたのは良かったです。
 少女にカーレンジャーについて聞かれて適当に誤魔化した5人は、海岸に飛んできた「ニューヒーロー誕生。 激走戦隊はもう古い」というチラシを拾い、そこに大地を震わせながら走ってくる5台の巨大改造車……の特撮が割と格好いい(笑)
 「みんな、行くぜ!」
 教授によって派遣されたボーゾック1のヒーロー研究家・SSパマーンは、4人のメンバーを従え、ケチな悪事を働きながら次々と、 ゾクウレッド、ゾクブルー、ゾクグリーン、ゾクイエロー、ゾクピンクを名乗る。
 「「「「「暴走戦隊・ゾクレンジャー!」」」」」
 予告からゲストキャラ主体の回かと思ったら変な隠し球が出てきましたが、木下健もとい荒川さん、 同年に別番組で似たようなネタをやっていたんですか(笑)
 (※同年放映の『超光戦士シャンゼリオン』において、「ヒーローの先生!」というパロディ満載のエピソードを書いており、 放映日でいうと、今回の『カーレン』が2ヶ月ほど先。『シャンゼリオン』は今作とはまた違う形で「ヒーロー」を描いていたので、 同じパロディでも、意味はまた異なりますが)
 「俺たちカーレンジャーがおまえらみたいな暴走野郎、こてんぱんにやっつけてやるぜ!」
 5vs5で対峙した所でイントロが流れ出し、主題歌をバックに両雄激突……と思いきや、 主題歌と同じメロディで主題歌と同じ歌手が物凄く普通に歌っているのは、よくよく聞くとゾクレンジャーの歌!

ゾクレンジャー! ゾクレンジャー!
俺も不真面目になれ 陽気な悪人目指して! GO! GO!

 悪役サイドのテーマソング、というのは昔から存在しますが、番組の顔といえるOP主題歌を替え歌にして、オリジナル歌手に歌わせ、 演出として全く不自然でない所でさらっと流す、というのは大胆かつなかなかにアクロバットで、 しばらく本気で替え歌である事に気付いていなかった分、気付いた時の衝撃が強烈でした(笑)
 「戦隊ヒーローといえば、なんといってもこれだパマン」
 パマーンによって完全に動きを研究されたカーレンジャーは苦戦し、更に繰り出される、まさかのゾクレンジャーボール。
 凄くメタな事を言っていてバランス的にはちょっと危ういですが、族レンジャーの必殺コンビネーション攻撃を受けたカーレンジャーは、 かつてない最大のピンチに陥ってしまう。
 ――だがその時パマンに突き刺さる、風を切るJPカード! 吹きすさぶ怒りのつむじ風!  ……じゃなかった、「ラジエッタで〜す、よろしくね」と書かれた、どう見てもホステスの名刺。
 海岸で出会った白いドレスの少女が姿を見せると、傘から謎の粒子をばらまいて族レンジャーを後退させる。
 「誰だ、てめぇ」
 「私は、銀河伝説のクルマジックパワーに導かれたかのように、チーキュにやってきた、カーレンジャー6番目の妹。 本名ラジエッタ・フォンネルト。正義の為に変身します! ティラミス・コンニャク・ミルフィーユ! 夢見る交通安全、 激走少女・ホワイトレーサー!」
 突然の魔法のステッキに変な呪文といい、やたらなローアングルといい、恐らくこれ自体が《不思議コメディ》シリーズのパロディ (《不思議コメディ》とローアングルを結びつけるのはどうか…………何もかも『シュシュトリアン』が悪い)となっており、 それ故に荒川脚本なのでしょうが、なんて濃いAパートだ(^^;
 自称ホワイトレーサーは、ナゾナゾに正解しないと爆発する必殺ホワイトナゾナゾ爆弾(『ゴレンジャー』次回予告からのネタ?) を投げ込んで族レンジャーを撃退。
 大興奮でカーレンジャーにサインと記念撮影を求め、当惑しながらもかなり達者なサインを書くカーレンジャー(笑) 恭介、 その「激走戦隊カーレンジャー」の筆致は、明らかにこっそり練習していただろう!
 「ごめんなさい、私、実は魔法で変身できるだけの、ただのファンなんです」
 カーレンジャーはいまや『チーキュの歩き方』という本に特集されるだけの知名度になっており、 カーレンジャーの軽くていい加減な所が気に入ったというラジエッタだが、カーレンジャーの戦いに巻き込むわけにはいかない、 という正義に堅いレッドの真面目な発言にショックを受け、走り去ってしまう。
 一方バリバリアンでは、グラッチが合体武器・ゾクレンバズーカを完成させていた。
 真っ当な出番は久しぶりの気もしますが、至極あっさりギガフォーミュラの5倍の威力を持つ兵器を作っており、 相変わらず技術力が底抜けで恐ろしい。
 ただしバズーカのエネルギー源として宇宙辺境の田舎で産出される鉱石ファンベルダイヤが必要であったのだが、 ゾンネットがそれを持っていた事で解決。族レンジャーは地球へと再出撃すると、手始めにラジエッタを誘拐する。
 そうとは知らぬカーレンジャーは、基地へ戻って反省タイム。
 「ちょっと可哀想だったかなぁ? 遠い星から一人で来たのに」
 「仕方ないさ。俺たちだって遊びでやってんじゃないんだ」
 「あれー? ちゃうかったんか?」
 混ぜっ返した実は洋子にはたかれ土門に睨みつけられ。真顔で「冗談や」と取り繕い、がっつりパロディを仕掛けてきたエピソードで、 “カーレンジャーとしての一線”――世界観はギャグだしメタネタもパロディもやるけど、 劇中の恭介達は恭介達なりに真剣にヒーローをやっている――をしっかり描いているのが、バランスの良い所。
 ボーゾック発生の警報に出撃した5人は、囚われのラジエッタの姿を目にする事に。
 「卑怯よ!」
 「暴走戦隊だからいいパマン。だいたい、普段一人のボーゾックに5人でかかってくるおまえらに、言われたくないパマン」
 それ言うと普段、ワンパー繰り出してますが(笑)
 抵抗できないカーレンジャーは、ゾクレンバズーカも受けてまたも大ピンチに陥るが、 機転を利かせたラジエッタがガイナモに変身する事でパマーンを騙し、脱出に成功。 久々発射のフォーミュラノヴァがゾクレンバズーカを押し返し(5倍では無かった……)、族レンジャーを撃破。
 「巨大戦だってとことん研究したパマン。最強の必殺剣を受けるパマン。 大銀河電撃科学暗黒剣・稲妻電撃プラズマサイバーオーロラ……」
 「技の名前が長いんだよ!」
 巨大化したパマーンは戦隊20年の歴史の篭もった必殺剣を放とうとするが、コマンド入力が長すぎてあえなく激走斬りに一刀両断されて散るのであった。
 ラジエッタは6人目のカーレンジャーにふさわしくなれるよう勉強し直してくる、と宇宙へ帰るが、 バズーカから外れたのを地上で拾った赤いファンベルダイヤの首飾りは、何故かラジエッタの持つ白い宝石の首飾りと瓜二つなのであった……と、 多数のパロディの中にカーレンジャーのヒーロー性も織り込んだ上でそれとなく伏線までねじ込まれ、やたらめったら濃い回でした。 ……結果的にラジエッタがゾンネットお気に入りの宝石を盗難した事になった気がするのですが、 次回総長、踏まれるのでは。
 ラジエッタ/ホワイトレーサーは、再登場の余地を残しましたが、さすがにレギュラー化しなくて良かったです(笑) ダップと、 どちらがカーレンジャーのマスコットにふさわしいのか、血で血を洗う戦いになる予感がしますし!
 次回――突き刺さる冷たいツッコミ。「信号は青でも、飛び出したら、あかんで」。

◆第26話「ノンストップ宅配武器」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 実が、北海道に引っ越したペガサス最初のお客さんに、初孫祝いとして送った揺り籠……のつもりだったのは、
 「苦労して……」
 「苦労して……」
 「苦労して……」
 「ほっんと苦労して……あんただけが、営業だからする事なくて全っ然苦労しないで」
 「やっとの事で完成させた新必殺武器、ギガブースターだったんだ」
 以前にカーナビをかなり勢いで完成させていましたが、技術職集団という特性(+ダップの宇宙マジック)を活かして、 土門がデザイン、洋子がプログラム関係、恭介と菜摘が実作業、という分担で新装備を自作、でも営業の実は何もしていない、 というのは“お仕事戦隊”の要素を持つ今作らしい描き方。
 「俺今すぐ取り返してくるわ!」
 もしも届いたギガブースターを知らずに発射してしまったら、正義のヒーロー謹製の必殺武器で、平和な街が大惨事!  慌てた実はグリーンレーサーに変身すると、本来送る筈だった揺り籠の入った段ボールを担いで (全く同じ段ボールにギガブースター詰めたダップも原因の一端を担っている気はするのですが、 ペガサスはデフォルトで実に厳しい(笑))、荷物を交換するべく配送中のトラックを追いかけて激走する事に。
 折悪しく、ボーゾック1の通販マニア・DDドンモが街に出現。宇宙通販生活のカタログを見てテレフォンショッピングした宇宙的通販アイテムを用いて、次々と街に被害を及ぼしていく。
 強いぞ高枝切りばさみ!
 「そんなお手軽な商品でなんかやられないんだから!」
 緑「その頃俺は、宅配便のトラックを追って、一般道を激走し、福島県に突入しとった」
 ドンモと戦う残り4人はフォーミュラノヴァを放つが、ドンモが通販した、戦う主婦を助ける、 どんなビームも跳ね返すエプロン・ハネカA(エース)の前に敗北(笑) 変身解除級のダメージを受けてしまい、身を隠す大ピンチ。
 広いぞ宇宙!
 その頃実は、グリーンレーサーの姿では小学生に囲まれてしまった事から変身を解除し、レンタカーを借りて仙台市内を走っていた所、 トランクから大きくはみ出した段ボールを見とがめられてシグナルマンに捕まっていた。
 「本官は、正義の交通安全講習の為に、宮城県杜の都文化会館2階大ホールで、講演していたのだ」
 新兵器を宅配便で送ってしまうというナンセンスな発端に、浦沢さんのギャグパターンである必要以上の長い説明台詞(の繰り返し) が盛り込まれ、統一感を持たせようという高寺さんの差配もあったのかもですが、今回のエピソードは特に、 荒川さんが浦沢さんを口寄せしているかのような内容(笑)
 また養殖ボーゾック回以来、シグナルマンと市太郎がセットで描かれて距離を縮めているのですが (前回は遊びに行った海で一緒に交番ベースの前に立っていた)、ここでも市太郎が同行しており 「シグナルマンさんのマネージャーとして、夏休みの間、一緒に旅をしているんだ」との事。
 一方東京では、ぽくぽくぽくぽくちーんした恭介が、クーリングオフを思いついていた。
 「通信販売の商品は一週間以内なら返品が可能なんだ。――みんな行くぞ!」
 「「「おう!」」」
 「……よくわかんないけど」
 再び変身した4人はRVロボを繰り出すと、ドンモのショッピングにより宇宙通販ロケットで届いた商品を、鷲掴みにして投げ返し、 勝手に強制クーリングオフ。
 「激走! クーリングオフ!」
 勢いよく言うと、「プラズマクラスター!」が必殺技に聞こえる的なアレ。
 かくして戦闘は、次々と飛んでくる通販ロケットと、それを「激走! 回転クーリングオフ!」するRVロボ、という珍妙な構図に。
 「実さん、早く返ってきてでございます!」
 実「そんな叫びも空しく、俺はシグナルマン、市太郎とともに、あのトラックを追っかけ、遂に……北海道まで来てしもうたんや」
 「なんだって?!」
 カーレンジャーの危機をシグナルマンに訴えた実は、シグナルマンのバイクに先導される事で道交法違反を回避しており、 ブログにいただいたタイキさんのコメント通り、シグナルマンが地球の官憲と何らかの協力関係を結んでいるのは間違いないようです。シグナルマン、 ありとあらゆる惑星の道交法を把握しているのかも、と思うと、それは夏休みも塾で交通ルールを学んでいたわけです。
 しかし問題のギガブースターは既に届けられ、孫の玩具になってしまっていた。ギガブースターの上でご機嫌の赤ん坊の手が、 発射スイッチを押してしまうまで後わずか、赤ん坊の気を逸らす為、実とシグナルマンは即席のお笑いコンビを組んで漫才を始めるが…………ウケなかった。
 「待ちたまえ。小ネタは急に浮かばない」
 東京ではRVロボがクーリングオフの限界に達してバナナと爆弾のコンボで危機に陥っていたが、 北海道では市太郎の古典ネタが赤ん坊のツボを突いてギガブースター回収に成功し、大規模な損害賠償の危機を回避。
 ……まあ正直この漫才のくだりは微妙でしたが、言える事は一つ、付けよう安全装置。 地球を守る為のトリガーは軽い。
 東京ではドンモがヒーローサヨナラキャノンを通販するが、いち早くそこに落ちてきた段ボールの中身は……
 「一般市民・上杉実、只今届けられましたー!」
 サイレンダーに投擲される事であっという間に東京に舞い戻った実とギガブースターはドンモを攻撃。 ブースターはフォーミュラ同様に自走しながら攻撃すると、更にドラゴンカーに合体して砲撃とギミック見せ。 RVロボを降りた4人が合流すると、大砲モードでサヨナラキャノンとの撃ち合いを制してカーレンジャーは強敵を打ち破る事に成功。 ロボットを中盤に出すという変則構成で、新兵器がその力を見せつけるのであった。
 フォーミュラノヴァの使用回数が少なめなので新兵器登場のインパクトは薄いのですが、 前回久々にフォーミュラノヴァを使用&ボーゾックに同形の武器を持たせた、 というのがより高威力の兵器の開発に一定の説得力を持たせており、 この辺りは『カーレン』初の2話連続となった荒川さんの計算なのかな、と。装備としては自走ギミックが被ってしまいましたが、 これは作品コンセプト的に外せない所だったのか。
 「この度は、ほんまにすんませんでした……」
 「俺たちが大変だった時に……」
 「北海道で、漫才やっていたとはねぇ」
 「え、色々と……」
 「わたくし達も、聞いてみたいでございますねぇ」
 「とびっっっっっっっっきり面白いギャグをね」
 「ぎゃ、ギャグ……」
 困った実は市太郎のネタを剽窃するが、皆から一斉にツッコまれ、オチ。
 視聴率は低空飛行だったようですが、ここ数話で『カーレンジャー』的なるものが完成してきたのかなぁ、という感じで、 個人的にはだいぶ見やすくなってきました。作品としていえばダップを持て余している……というか、開き直って無理に使わない、 というのが気になるといえば気になりますが、そもそもダップへの個人的な好感度が低いので、出てこなくても特に困ってはいません(笑)
 次回――父の背中に漂う哀愁、家族と離れて地球に一人、宇宙警官は正義の交通ルールを守り抜く事が出来るのか?! 「黄色信号になったら、焦らず次を待とう」「ね!」。

◆第27話「単身赴任の分岐点…」◆ (監督:田崎竜太 脚本:浦沢義雄)
 「誰も、通らない……」
 今日も今日とて交番ベースの前で立ち尽くすシグナルマンに届く一通の封書……それは、ポリス星に残してきた息子、 シグタロウからのものだった。
 「妻よ……休みを取って、ポリス星に帰りたい……。帰りたいが、本官には、ボーゾックを撲滅する任務がある。本官は、 任務を放り出して、チーキュを離れる事はできない。妻よ、息子よ、許してくれ……」
 煩悶するシグナルマンは愛車を倒して壊してしまい、ペガサスに修理して貰う為に持ち込む事に……。
 一方、ボーゾックでは年に一度のボーゾック祭の準備中で忙しく、 提案した作戦を無視されたボーゾック1のピザ作りの名人XXミレーノは、カーレンジャーピザを作る為に単独で地球へ。
 上層部に雑な扱いを受ける所から始まり、肩書きからしてギャグ怪人かと思われたミレーノですが、 空中を乱舞するピザでカーレンジャーとシグナルマンを苦戦させ、更にペガサスカーとドラゴンカーをピザで洗脳し、 手も足も出ないカーレンジャーを巨大オーブンに閉じ込めて行動不能に追い込むという、凄まじい強さ(笑)
 トドメに完成したカーレンジャーピザを食べようとして極めて猟奇。
 ペースを握った時のボーゾック怪人の力をまざまざと見せつけてきました。
 全国のお茶の間に、足からむさぼり食われて全滅、というショッキング映像をお届けして最終回を迎えそうになるカーレンジャーだったが、 本官に助けられて窮地を脱出。正統派の6人連携からギガブースターを放ち、巨大化後はサイレンバルカンから激走斬りで、 強敵ピザ職人を撃破するのであった。
 (息子よ……本官は、ともに戦うこの仲間を見捨てて帰るわけにはいかない)
 カーレンジャーの為にも、ボーゾック撲滅のその時までチーキュを離れるわけにはいかない、 と愛する家族への思いを抑えるシグナルマンにカーレンジャーは礼を述べ、「本官の許可無く本官を追い抜いてはいかん!」 と理不尽に追いかけ回される事があったりはしつつも、戦友として握手を交わす赤と本官。
 今作はメンバーそれぞれの社会人としての職種が物語の随所に反映される“お仕事戦隊”でありつつ、 カーレンジャー自体は非職業戦隊でありメンバー個人のプライベートで活動しているわけですが、 一方で宇宙警官でありいわば職業ヒーローであるシグナルマンのプライベートを通して、家族の問題で揺れるとともに、 カーレンジャーに対して職業的使命とは別の個人的仲間意識を抱くようになっている、 という2つの面が描かれている、というのが巧妙な構成。
 宇宙刑事的ヒーローを単身赴任のお父さんとして描くという大胆なパロディだけに留まらず、 “ヒーローと個人”の問題を主人公達とさりげなく対比させる形で描いているのが、今作の上手さといえます。
 ……ただエピソード単独としては、全体的にもっさりとして冴えない出来でしたが(^^;
 家族からの手紙に悩むシグナルマンを心配していた市太郎が笑顔で駆け寄ろうとしたその時、物陰から奇襲攻撃が本官を襲い、 突然の投げトランプという新技を身につけたゼルモダが市太郎をさらい、まさかのつづく!
 次回――「たとえ本官がいなくなっても、赤信号は絶対に止まれだ!」.

◆第28話「さらば信号野郎!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄)
 ポリス星の息子の事を思いつつ、さらわれた市太郎を懸命に捜索するシグナルマンだったが、 バリバリアンに連れ去られた市太郎はボーゾック祭の神輿にくくりつけられていた。
 ボーゾックの一大イベント、年に一度のボーゾック祭……それは、宇宙の邪悪なエネルギーを特殊な神輿に集め、 特製栄養ドリンクに変えて皆で飲む、という大変和気藹々かつ恐るべきものであった!
 『暴辞苑』の項目を読む、という形で毎度毎度の馬鹿馬鹿しい説明が入る一方、 神輿に群がるボーゾックが特製栄養ドリンクをストローで吸い上げると、神輿にまつられた市太郎はみるみる内に骸骨に…… というイメージ映像のストレートな残酷描写が凄く『カーレンジャー』です。
 太陽系をぐるりと回ったボーゾック神輿は、いよいよチーキュへと降り立ち、大変珍しい幹部揃い踏みの中、 集まってくる邪悪なエネルギー。カーレンジャーが正面からいつもより派手に名乗って陽動を務め、 その隙に後方から市太郎を救出しようとする本官だったが、その前に立ちはだかり、立派な悪役のように笑うリッチハイカー教授!
 に、宇宙の邪悪なエネルギーが直撃!!
 本来は神輿を通して栄養ドリンクとして皆で分け合う筈だったエネルギーを一人で全て受け止めてしまった教授はその場にひっくり返り、 てっきり季節ネタの一発ギャグだと思っていたので、この急展開はビックリ。
 「ボーゾックと戦うという任務を投げ出して、チーキュを離れる事はできないのだ。宇宙警察の名にかけて、本官は戦う!」
 教授が倒れている間に助けた市太郎と、帰りを待つ息子の姿を重ねつつも、戦う公務員として職務を選ぶシグナルマンは、 ワッショイ怪人とワンパー相手に、珍しく格闘戦を展開。必殺の警棒で叩き伏せたワッショイが巨大化するとRVロボを綿飴攻撃で行動不能に追い込むが、 サイレンダーのバルカンによってデリート執行するのであった。
 市太郎は無事に父母と再会するも、その姿にますます揺れるシグナルマン。
 「帰りたい……帰りたいが、本官にはチーキュでボーゾックと戦う任務があり、帰る事はできない。 息子よ許せ……今年も運動会の二人三脚で、本官は、いや、父ちゃんは、一緒に走れない……!」
 選ぶべきは、任務なのか? 家族なのか?
 これまでずっと、あくまで職業人である事を前に出していたシグナルマンが、ここでとうとう個人としての本音を吐露する、 というのを一人称の違いで鮮やかに示し、一見すると前回の実が口にした「仕事と家族とどっちが大事なの?」 とヒーローに現実的問題を突きつけるギャグなのですが、そのギャグにくるまれた本質は、 “ヒーローとして守るべきもの”と“個人として一番大事なもの”を天秤にかける問いであり、普遍的な大義と個人の相克といえます。
 ここで今作は、その相克に折れそうになるシグナルマンに対して、ヒーローを応援する少年、の立ち位置である市太郎が真っ先にその背中を押します。
 「シグナルマン。帰ってあげて」
 と。
 そしてカーレンジャーがシグナルバイクにカーナビをセットするというお節介を焼き、シグナルマンに家族を選ばせる。
 象徴としてシグナルマンの職業が警官となっているように、例えば、警察官、消防士、自衛官……また、 医者や各種インフラに携わる方々など、“現実”には事にあたって公私における公を優先する方々が勿論いてくれて、でもなるべくなら、 そうやって時に誰かが突っ張って折れそうにならない世の中の方が、いいに決まっている。
 それを手助けできるのは誰だろう?
 それは、私たち一人一人ではないか?
 大きなお世話になる危険性を常に孕みつつも、小さな親切で公をより良くしていこうとする一般市民がヒーローになれる、 それがすなわちカーレンジャーなのかな、と。
 (そこに一抹の危うさが描かれるのが、今作の抱くアイロニーといえましょうか)
 また、前回今回の葛藤を経たシグナルマンは自分の内心と深く向き合う事で、
 自分にもある 弱さを知れば 本当のヒーロー
 に近づいたといえ、強いだけでは折れてしまう、だから自分の弱さを知るのが大事であるし、 弱さと向かい合った時に支えてくれる誰かと居られるといいし、支えられる誰かになれればいい、 そうすれば次はきっと問題を乗り越えられるようになる、というのもまた『カーレンジャー』的なヒーローの姿なのかと思います。
 「市太郎くん、では、さらばだ! ペガサスの諸君、カーレンジャーの諸君に、もしも会ったら、よろしく伝えてくれたまえ」
 「もしも、会ったらね」
 「さらばだ!」
 というわけで、サブタイトル通りに、シグナルマン、本当に帰還。
 凄いぞカーナビ。
 というか超高性能なカーナビは、あまりに高性能すぎたので、このままシグナルマンと一緒に退場なのか?!(笑)
 やはり、一度狙った標的をどこまでも追いかけ続けるホーミングビームはやり過ぎだったと思うのですが、 シグナルマンは大塚芳忠さんのボーナスポイント込みで好きなキャラなので、帰還をお願いしたいところ。
 ――その頃バリバリアンでは、まさか仇敵が運動会の為に帰郷しているなど知る由もなく、 全身に包帯ぐるぐる巻きで呻いていたリッチハイカー教授の中で何かが蠢き……立ち上がった教授が包帯を剥ぎ取ると、 顔が金色に。
 「閃いたぞ、カーレンジャーを倒す方法を。宇宙の邪悪なエネルギーを浴びたこのわたくしが、必ず、カーレンジャーを倒してみせる。 ふふふふふふふふ、ぬはははははははは……りーっちっちっちっちっちっちっち」
 まさかのゴールデンリッチハイカーは、今度こそ、本当に、有能な悪のコンサルタントなのか?!
 予想外のシグナルマン前後編から意表を突く教授強化(希望)で、たたみかけるように、つづく!
 また、ダップが最近眠たくて仕方がない……という伏線が入り、ようやくスポットが当たりそうですが、やはり、 成長期なのでしょうか……超スマートなイケメン(CV:速水奨)になったらどうしよう?!
 次回――「止まってる車でも、急に動き出す事があるから」「気をつけてね」。

◆第29話「予期せぬ大怪獣事故!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄)
 今日も今日とて睡魔に襲われるダップがその理由に気付き、恭介がポリス星に送り出したシグナルマンに思いを馳せている頃、 バリバリアンでは新たなる脅威が誕生しようとしていた。
 「ガイナモ。いったい誰に向かって口を聞いているのかな?」
 口調の豹変した教授が指を鳴らすと、バリバリアンの窓から覗く巨大な瞳、そして腕。
 「名付けてブレーキング」
 宇宙の邪悪なエネルギーをその身に直接浴びる事故によって見た目ばかりでもなく悪知恵の強化されたリッチハイカー教授は、 ガイナモがゾンネットとの結婚資金として貯め込んでいた秘密定期預金を拝借して、巨大怪獣ロボットを完成させていたのである。
 当然これに怒るガイナモ、そしてゾンネット。
 「誰があんたなんかと結婚するわけ! ……だけど、あたしの為に貯めてたって事は、あたしのお金ぇ?! リッチハイカー!  誰に断ってあたしのお金で、あーんなくだらないロボット作ったわけ?」
 論理の飛躍が最低だ(笑)
 「ゼルモダ、グラッチ、このうるさい二人を何とかしなさい」
 驚くべき事にゼルモダとグラッチは教授の命令に従ってガイナモとゾンネットを拘束――両者はともに、 結婚資金の分け前にあずかって、リッチハイカー教授に魂を売り渡してしまっていたのだった!
 ……回想……
 「俺とガイナモは、固い友情で結ばれてるんだぜ。ガイナモを裏切るような事はできねぇよ」
 「ふーむ……その友情とやらを、高くお買いいたしましょう」
 「ふん、友情は売り物じゃねえよ。な?」
 「売りもんじゃねーよ」
 「成る程、そこをなんとか」
 「馬鹿にするんじゃねえ! 俺にだって誇りってもんがあらぁな!」
 「馬鹿に、ほこりっぽいぜ」
 「その、誇りとやらも、まとめてお買いしましょう。さぁ」
 というやり取りが、酷くて素晴らしい(笑)
 かくしてゼルモダとグラッチは教授に買収され、教授はボーゾックを乗っ取ると宇宙征服して大もうけを宣言。 隙を突いて逃げ出したガイナモとゾンネットを追い、自ら操縦するブレーキングで地球へと乗り込んでいく。
 ゴジラ体型のロボット怪獣ブレーキングは、頭上に剥き出しのコックピットがついており、 物凄い死亡フラグですよ教授! ギャグでもあっさり死ぬんですよ教授!!
 「カーーーレンジャーの皆さん、お待ちしてました」
 ガイナモ達を追い散らした金色教授は、埠頭で優雅にお茶をたしなみながらカーレンジャーを待ち受けると、 ボーゾック二代目総長への就任を宣言。
 「人呼んで、リッチリッチハイカー教授!」
 その名前だけは無いと思っていたのに……(笑)
 ワンパーを蹴散らすカーレンジャーだがブレーキングが出現。ギガブースターは発射3回目ぐらいにして消しゴムの破片のような扱いを受け、 5人はRVロボ出撃を要請するが、ダップからの反応がなく一時退却。基地に逃げ戻った5人は眠りこけるダップを目にして揺り起こすが、 ダップの口から衝撃の真相が明かされる。
 「実は、ハザード星人は、冬眠しなければ生きてはいけない体の宿命を背負ってるんダップ」
 ダップ、とうとうスポットが当たるのかと思ったらまさかの冬眠……でこのまま降板か?!
 それでもいいぞ!!(おぃ)
 「みんな、ごめんダップ……」
 冬眠に入ってダップが離脱、前回シグナルマンを気持ち良く送り出した直後に予想外のボーゾック内紛により、 思わぬ形で孤立無援になってしまうカーレンジャー。
 「俺たちだけで、やるしかないだろ」
 恭介が気合いを入れ直したその時、ボーゾック警報のサイレンが響き渡る。
 「――みんな行くぞ!!」
 「「「「おう!」」」」
 気負って肩に力が入りすぎている感じも含めて、ここの叫びが実に格好良く、サボり癖などの欠点を散りばめつつも、 恭介の造形が戦隊を茶化すのではなく、むしろ正統派レッドの系譜に立って要所を締めている、というのは今作の強み。
 5人はブレーキングに立ち向かうため初手からRVロボで出撃し、殴り合いから激走斬りを放つが、 ブレーキングのカウンター技により、RVソードを根元から折られてしまう!
 「これまでの、頭の悪いボーゾックの攻撃とは、ひと味違うのです」
 RVロボは高圧電流を浴びて機器が故障、行動不能に陥ってしまい、 そこへ更にゼルモダ率いる地上部隊がロープを引っかけてRVロボに直接乗り込んで白兵戦を仕掛けてくる、という連係攻撃が非常に秀逸。
 なんとかワンパーを蹴散らして離脱するカーレンジャーだったが、RVロボはそのまま宇宙へと持ち去られてしまい、 第29話にして完全敗北。早めに出したサイレンダーを煙幕に実質的な2号ロボ展開としてはかなり遅く、 このまま勢いで強化ロボとか出さないのかと思ってドキドキしていたのですが、宇宙の邪悪なエネルギーがそんな事は許さなかった!
 「俺たちカーレンジャーは、ダップやシグナルマンが居ないと、ボーゾックに勝てないのか!」
 海を見つめて落ち込む5人……の前に突如現れる、黒と銀のライダースーツに渋い美声のフルフェイス。
 「戦う交通安全が、泣いてるぜ」
 「誰だおまえ?!」
 「敵か味方か、宇宙の一匹狼、VRVマスター」
 素顔を見せない謎のフルフェイスは気取ったポーズで名乗ると、そのまま、姿を消す。
 て、名乗りたかっただけかーーーーーーー(笑)
 という謎の目立ちたがりが登場した所で、つづく。
 大塚芳忠声が家族サービスに帰還したと思ったら、間髪入れずに小林清志声が登場したのですが、現在私の中で小林清志というと、 拳銃依存症の鬼刑事(『超人バロム・1』)の印象が強いので、少々戸惑います(笑)
 そして本人達の前で「敵か味方か」と名乗る姿に、当人に面と向かって「ある時はジライヤの味方。またある時はジライヤの敵」 と言い放った某柳生忍者さん(『世界忍者戦ジライヤ』)を思い出してしまいました。
 宇宙ではよくある事なのか。
 果たしてVRVマスターは、敵か味方か、そしてチーキュで回転寿司やカラオケを満喫している元総長と姫はボーゾックに復帰できるのか!
 次回――はたらく車に不満たらたら? 「歩道橋のある所は」「歩道橋を渡ろうね!」。

◆第30話「衝撃のデビュー!はたらく車!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:浦沢義雄)
 リッチリッチハイカー教授に完全敗北して茫然自失のカーレンジャーは、りんどう湖から恵美ちゃんがやってきても上の空。
 まさかのゲストキャラ再登場にビックリしましたが(しかもメインライター以外の回)、存在を覚えていなくても「りんどう湖から来た」で、 タイアップ回で出てきた過去ゲストか、とわかるので便利だ「りんどう湖」!
 強奪したRVロボを解析中のボーゾックでは、教授が構成員の知力を上げようとしていたが捗らず、 学習用のテキストを大量に入手しようと目論んだ教授は国際学習図書見本市を狙いブレーキングを出撃させる。
 「勝てなくても…………たとえ、負けるとわかっていても……戦いを挑むのが、本当の勇気、本当の正義ってもんだろ」
 違うよ恭介、それはただの無謀だよ!!
 「そして、それができるのは、俺たち、カーレンジャーしかいない。みんな、そう思わないか?」
 恭介の謎の説得力に頷いてしまう4人だが――
 「勝手に思え」
 「あ、あんた?!」
 「敵か味方か、宇宙の一匹狼、VRVマスター」
 5人の出端をくじく形でまたも姿を見せたのは、謎のフルフェイスことパチンコ帰りのVRVマスター。
 「俺が宇宙から持ってきた凄いマシーンを使って、ボーゾックと戦う気はないか?」
 「う、宇宙から持ってきた、凄いマシーン?」
 「名付けて、VRVマシーン」
 何故かペガサスの一般市民達がカーレンジャーの正体だと知るマスターは、 怪しい・胡散臭いの大合唱を受けながらも全く動じる事なく、東京ドーム地下秘密ガレージに収納された、 五台のビクトリーレンジャービークルを5人に見せる。
 「これがお前達の乗る新しい車、VRVマシーンだ」
 ……これは……これは……これはまさかの、

 長官乗っ取り?!

 「あ! そういえばダップが冬眠する前言ってたわ」
 ――「見知らぬ宇宙人の甘い言葉には気をつけるダップ。もしかしたら、ボーゾックかもしれないダップ」
 だがダップは、先んじてこの危機に手を打っていた(笑)
 「VRVマスター、俺たちカーレンジャーは、ダップの言葉に従う」
 「どうしてもか」
 「わけもわからず、いきなり消防車に乗れって言われたって、無理な話だ」
 殺伐とした世紀末宇宙で新マシーン詐欺に遭って契約書にサインしたばかりにエリア88に飛ばされたり莫大な借金を抱える事になったりローストチキンにされてしまう危惧から申し出を断る5人だが、 帰りがけにマスターがパチンコで取った景品の缶ドロップを渡された事から、洋子がまたもダップの言葉を思い出す。
 「そういえばダップが冬眠する前に、こうも言ってたの」
 ――「ドロップ好きの宇宙人は、信用してもいいダップ。地球のドロップは、ハザード星の匂いがするダップ〜。懐かしいママの匂い、 そしてパパの匂い……」
 「VRVマスター、俺たちカーレンジャーは、ダップの言葉に従う」
 先ほどと全く同じ台詞で、VRVマシーンに乗ることを決断するカーレンジャー(笑)
 強化展開としては、敗北の次の回に正体不明の新キャラが新装備をくれる、という率直にかなり大雑把なのですが、 その印象を酷いギャグで上書きするという物凄い力技。
 カーレンジャーが判断基準をダップに丸投げ気味な事もひっくるめてギャグになっているのですが、 広い宇宙は危険がいっぱいなので仕方がない。
 気をつけよう、甘い言葉と契約書。
 かつてはその手の詐欺の常習犯だったと思われる教授は国際学習図書見本市の会場ビルをブレーキングで襲撃し、 そこに市太郎と恵美が取り残されている事に気付いたカーレンジャーは、改めて変身して揃い踏み。
 「ゆけ、カーレンジャー」
 ……やはり、司令乗っ取りでは(笑)
 今作より約20年前を思い起こさせる、このネタの微妙なメタさ加減で、割と色々許せてしまう、駄目な私。
 新たな行動隊長VRVマスターの指揮の下、ドーム地下から巨大トレーラーが発進。 更にその中から5台のVRVマシーンが出撃していく。
 「この勝負に勝ったら、甘くてほろ苦いアレを、俺がおごるぜ」
 5台のマシンを送り出したトレーラーも縦に重なるように変形して何やら巨大ロボっぽくなり、 指揮車輌も兼ねたそのブリッジで、マスターは悠然と足を組む。
 「噂に聞いたお前達の激走、見せてもらうぜ」
 一方、教授はブレーキングでビルを引き抜いてそのままバリバリアンへ持ち帰ろうとしており、 激しく揺れるビルの中で恵美に抱きつかれて、胸のエンジンに火が点く市太郎。
 「え、恵美ちゃん、大丈夫。何があっても、ぼ、僕は、君を守る。んー」
 ……キスを迫る(笑)
 「やめて!」
 「いいじゃないですか」
 「やめて!」
 「いいじゃないですか!」
 「やめて!」
 間近に怪獣が迫っている緊迫した状況でさいてーのシーンですが、浦沢先生は相変わらず、 思春期の入り口に立った少年が勢い余って変態に道を踏み外すのを描くのが好きだなぁ…………(虚ろな瞳)
 好き嫌いでいうと浦沢さんのこのノリは苦手なのですが、シグナルマン編で市太郎を純朴な少年として描きすぎた事への、 浦沢先生の強い反省が窺えるような気がしてなりません。
 色々あわやのその時、VRVマシーンが現場に到着。Vファイヤー(消防車/赤)が放水でブレーキングを後退させ、 Vポリス(パトカー/青)が体当たりを仕掛け、Vレスキュー(救急車/桃)と足下を攪乱。Vダンプ(ダンプ/緑) が後部に積んだ大量のボールでブレーキングを転倒させるもビル上部が折られてしまうが、Vドーザー(ブルドーザー/黄) がそれを見事にキャッチ。
 「助かったみたい……」
 「助かった記念にキスしていい?!」
 「どさくさに紛れて!」
 市太郎、遂に辞典で殴り飛ばされ、K.O。
 地上ではVレスキューが巨大注射器でブレーキングを麻痺させ、Vファイヤーが転がるガスタンクを放水で押し返すと、 ブレーキングの股下にはまったガスタンクに引火して大爆発。ブレーキングは大気圏を突破するとバリバリアンまで吹っ飛んでいき、 VRVマシーンは初陣で大勝利を収めるのであった。
 当時の尺もあってか一気の新ロボではなくVRVマシーンの活躍がそれぞれ描かれ、 大怪獣vs特殊車両のバトルは東宝特撮風味も出て楽しかったです。
 「恵美ちゃんごめんなさい! ほんの出来心だったんですよ!」
 生死の境目でなにやら開けてはいけない扉を押し開けてしまった市太郎は大人の非常階段を飛び降りていき、 恵美に冷たい視線を浴びる事に。
 「戦いの後と風呂上がりには、甘くほろ苦いこいつが、よく似合う」
 パチプロマスターは5人にコーヒー牛乳を渡すと去って行き、ひとまず逆境を乗り越えるカーレンジャー。
 ラストは、いわゆるコーヒー牛乳を飲むポーズで5人が並んだ向こうの空に大きく夕陽を映す、という格好良い筈なのに格好良くない、 絶妙なカットで、つづく。
 エピソードとしてはかなり雑な展開なのですが、その雑さそのものをギャグにしてしまい、見ているこちらもいい加減、 『カーレン』だしな……という気分になってしまっていて、良いのか悪いのか(^^;  長官乗っ取り展開をどう受け止めればいいのか困惑している内に市太郎爆弾で目を逸らし、 後半は新メカのバトルシーンで走り抜けてしまう辺りは、堂に入った詐欺師の手腕を感じます(笑)
 なお、ガイナモとゾンネットはパチンコ屋に貼られた住み込みのバイト募集に目を止めており…… ガイナモがごく普通に街中を歩いているのが、実にあっさりとした突き抜けぶり。二人はこのまま、 チーキュの片隅で新生活を始めてしまうのか?!
 そして、Vポリスと正面から丸被りしてしまったシグナルマン(サイレンダー)は、もはやチーキュへの帰還はかなわないのか?!
 次回――逆襲の改造ブレーキング。「大勢で広がって歩いたら、危ないでぇ」。

→〔その6へ続く〕

(2018年4月7日)

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