■『激走戦隊カーレンジャー』感想まとめ3■


“電線にハトが2羽3バ 愛がありゃこの世は天国
皆様お疲れさんバ この次は絶対勝つゾ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『激走戦隊カーレンジャー』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・  〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕

◆第13話「出動!!自慢の緊急車両」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:浦沢義雄)
 衝撃の事実。
 「確かに先週はRVロボにやられたんだけど、ボーゾックの為にもうひとがんばりしたいって気持ちが強かったみたいで、 根性で復活したの」
 激走斬りは、根性で生き延びられる。
 シグナルマン撲滅の策を思いついたゾンネットは、再生強化したUUウーリンを連れて地球へ。 市太郎と出会って自転車の乗り方を講習していたシグナルマンに、艶っぽい和装の美女・ゾン子として接触すると、 包帯ぐるぐる巻きの怪人をリヤカーに乗せて弟と紹介する。
 「私の弟が、激走戦隊カーレンジャーに、襲われたのです」
 (あのカーレンジャーが……駐車違反を注意されただけで、一般市民を襲うなんて、本官は信じられん)
 ゾン子の美貌によろめきつつも、自制心を働かせ、カーレンジャーに対しても良識的な判断を見せるシグナルマン。 いつの間にか市太郎に講習できるぐらい、地球上の乗り物の交通ルールも熟知しているし、凄いぞ僕らのシグナルマン!
 「ゾン子は……嘘は申しません」
 しかし宇宙交通界ナンバーワンの調略技術を誇るボーゾックの姫は、すかさすボディアタックから近距離熱視線のクリティカル攻撃を放ち、 シグナルマンの胸の高鳴りはレッドゾーンだ!
 「本官は……ゾン子さんを信じる!」
 シグナルマン、抵抗判定、失敗。
 「何が“戦う交通安全”だ……“正義の交通ルール”本官が撲滅してやる!」
 残してきた家族の事も忘れてゾン子の言い分を信じ込んだシグナルマンは、市太郎に交番ベースを任せてカーレンジャーを探しに向かい、 しばらく後にそこを通りすがる恭介と洋子。
 「本官は、シグナルマンに頼まれて、留守番です」
 順応性の激しく高い市太郎から話を聞いた恭介と洋子はボーゾックの陰謀に違いないと変身するが、出会ったシグナルマンと戦う羽目に。
 「見損なったぞカーレンジャー。おまえたちを逮捕する」
 問答無用で先制攻撃はしつつも、しっかりと足を狙って動きを止め、その場で処刑せずに逮捕しようとするシグナルマン、 感心するほど立派な警官です(笑)
 ……階級が低いので抹殺権限が無いだけかもしれませんが。
 ピンクレーサーが足を負傷して戦線離脱し、レッドレーサーとシグナルマンは、赤の反動三段蹴りを本官が鋼の肉体で跳ね返すなど、 見応えのある格闘戦を展開。
 「あのカーレンジャーのレッドレーサー…………いい男!」
 そして思わぬ所で思わぬ人物のハートに火が点いていた(笑)
 「おらピンクレーサーがいいなウーリン」
 触発された怪人がピンクに抱きついた事で、正体判明。本官は騙された事に気付き、ゾンネットがカーレンジャー相手に初名乗り。 ゼルモダが現れてワンパーが投入され、レッドレーサーは落ち込むシグナルマンを清々しく励ます。
 「本官を許してくれるのか」
 「ああ!」
 「ありがとう!」
 こういう所、レッドレーサーはひたすら気持ちの良いヒーロー路線です。……まあ、痛い思いしたのは実はピンクなわけですが(笑)
 二人は協力してゼルモダを撃破し、確実に足を潰すシグナルマン、えぐい。
 残り3人も合流してピンクの危機を救い、怒りのバンパーボウからフォーミュラノヴァが炸裂。 巨大化した怪人に対してRVロボを呼び出そうとするカーレンジャーだったが、それを妨害されて圧死の危機に陥ってしまう。
 「このままでは、やられる……!」
 ウーリンの振るう巨大な剣に潰されそうになったその時――
 「カーレンジャー、待たせて悪かった!」
 何故か小さいパトカーを引き連れながら、巨大なパトカーが現場に駆けつける。
 「正義の交通ルールを守りましょう。シグナルマン、再登場!」
 先週は巨大ウーリンに鷲掴みにされてRVロボに助けられた本官ですが、巨大メカ、持ってた。
 「STAND UP! サイレンダー!」
 巨大パトカーはトンネルを走り抜けながらトランスフォームして、人型のロボットに変形。 最初はワッパガンで拘束したので人権への配慮を感じたのですが、次に取り出したのは「サイレンダガー!」だったので、 いつも通りの宇宙警察でした。サイレンダーはウーリンの電撃をシールドで防いでフラッシュで反撃すると、 トドメはサイレンバルカンで宇宙警察に逆らう愚かな犯罪者は蜂の巣だ!
 宇宙警察 イズ ジャスティス!!
 追加戦士としては微妙な雰囲気で登場したシグナルマンでしたが、さっそく巨大ロボを投入してきて、追加戦士らしさも披露。 先週の今週という事は通常配備の武装と思われるので、基本的に巨大化したらデリート許可なのです。宇宙の風は悪党どもに冷たいのです。公務執行妨害は極刑だ!
 サイレンダーはバイザーを上げると凄くファイヤー顔で、メタルヒーローにおける警察ヒーロー顔デザインの系譜を意図的に取り込んだ感じでしょうか。
 次回――「歩道のあるところは、ちゃんと歩道を歩かな、あかんで」。

◆第14話「雷地獄へフルアクセル」◆ (監督:田崎竜太 脚本:曽田博久)
 これまで本編映像の切り貼りが主だったOPが、新規映像大量投入で大幅パワーアップし、主題歌の方もニューアレンジに。 もともと主題歌は割と格好良いのですが、キャラ紹介の所で変身前後が並ぶカットなど、かなり良い感じのOPになりました。
 カートレース会場で、とてもレギュレーションを通りそうにないなんだか怪しげなクスリを営業する実……ゼルモダに売れる(笑)
 カーレンジャー、第1話でボーゾックの前で変身していたような……思っていたのですが、第1話では、
 〔ダップに生身で連行される → 変身拒否 → ダップがゼルモダと一騎打ち → ダップ死んだふり → 何かが変わった → カーレンジャー変身 → した時にはボーゾックは既に立ち去っていた〕
 ので、掴みのギャグがまさかの正体隠しに繋がっていた!!
 これは、浦沢脚本のミラクルなのか何なのか。
 実から購入したクスリをバイクに用いたゼルモダは、限界スピードを越えようと爆走。
 「ゼルモダ、ま、まさか……! そうか……奴はあのバキバキ伝説に挑戦していたのか」
 バキバキ伝説――それは、スピードの向こう側へ行く事で想像を絶するパワー(イメージ図では、 ゼルモダが巨大怪獣化)を得られるという、宇宙に伝わる伝説の一つ。カーレンジャーを撲滅できず、 今またシグナルマンまで単身赴任してきてしまった苦境を覆すべく、ゼルモダはボーゾック副長として自らの強化を図ろうとしていたのだった!
 …………珍しく、ボーゾックが、普通に悪の組織っぽい事を!!
 ゼルモダは前線で戦闘こなすものの、基本的にここまで幹部が最大のギャグ要員だったボーゾックですが、 2クール目に入るに際して、組織の在り方に誰かが危機感を抱いたのか、今回のゼルモダは終始シリアス。
 ところが、限界スピードに近づいた時(怪しいクスリには効果があった!)にバイクの起こす気流の乱れによって雷雲が発生。 若き日の過ちで雷にトラウマを持つゼルモダはチャレンジを投げ出してしまう。
 「後一歩で、限界スピードを超えられる所だったのに、俺は……俺は……バキバキ伝説に挑む事ができねぇんだ。 あぁ……なんて情けねぇ男なんだ!」
 「よし! 俺がやるぜ!」
 落ち込むゼルモダをガイナモが励まし、ボーゾックは最初、たった二人から始まったという過去が判明。
 ――「ゼルモダ……今は二人しかいないけど、いつの日か、宇宙にボーゾックの旗を翻そうぜ!」
 ――「ああ! やるぜ、ガイナモ!」
 宇宙ヤンキー二人から始まったチームが、今では巨大な宇宙基地に数多くの構成員を従え、 惑星を壊滅させて宇宙警察に目を付けられる組織にまで成長しており、意外と凄いのでは、この二人……。
 ……或いは、通りすがりのUFOが気軽に攻撃してきたり、ボーゾック撲滅にシグナルマン1人しか派遣されない事を考えると、 この宇宙では惑星壊滅は日常茶飯事であり、 ボーゾックを小指で蹴散らすレベルの悪の組織が山のように存在している可能性も。
 …………ジニス様ばりの悪党がダース単位で存在するという、戦隊史上、最も邪悪に溢れた宇宙なのかもしれない、 『カーレン』ユニバース。
 「おまえにだけ、危険な真似はさせるものか」
 「ガイナモ……そこまで俺の事を。……ありがとう、ガイナモぉ!」
 いつも伸ばしている鼻の下はどこへやら、男の友情を見せるガイナモの意気に感じ入ったゼルモダは、 敢えてガイナモをパンチで気絶させると、自ら飛び出していく。
 「やっぱり俺が行くぜ! ガイナモ、今度こそおまえの気持ちに、応えるぜぇ!」
 ………………更にもしかしたら、ゾンネットのフィールド効果により常時ボーゾック全体にバッドステータス《魅惑》《眩惑》 《知力低下》が発動しているだけで、ゾンネット不在だと、本来はこういうノリなのかボーゾック。
 状態異常を振り切ったゼルモダは、雷を克服して遂にバキバキ伝説を越え、そこに現れる真っ赤な超人エレキンタ。 限界スピードを超えようとした時に発生する雷雲そのものが伝説の力であり、バキバキ伝説を越えた者には無敵の雷パワーが与えられるのだ!
 エレキンタによりゼルモダのバイクにカブトローのようなマークがつくが、そこにやってくるカーレンジャー。
 「見せてやる、我らがパワーを」
 伝説に紐付けられた条件によって召喚される、善とか悪とか無関係の存在なのか、なぜか一緒に襲ってくるエレキンタ(笑)
 二台のバイクが繰り出すバキバキサンダー攻撃にカーレンジャーは大苦戦し、応援に駆けつけたシグナルマンにもサンダー直撃。 ゼルモダと同じく雷にトラウマを持つグリーンは敵前逃亡するが、ダップ、菜摘、洋子の策略によりデンキウナギの蒲焼き(一応、 実際に食べられる模様)を食べさせられ、落雷+ウナギのトラウマを克服する……くだりは正直、あまり面白くならず(^^;
 変なテンションになったグリーンは雷無効体質になり、超くるくる回るグリーンレーサー浪速蹴りでライジングゼルモダを撃破。 エレキンタのバイクアタックも空中で受け止めるという凄まじい強さを見せ、びりびりパワーを破られたエレキンタは伝説の誇りに懸け、 二台のバイクを吸収して巨大化する。
 「またしても、本官の許可無く巨大化したな!」
 どうやら巨大化した時点で宇宙交通法に違反した事になるようで、つまり、無許可の巨大化は宇宙的に極刑。
 サイレンダーが主題歌インストの軽快なアレンジで戦い、 最後はRVソード激走斬りとサイレンバルカンの同時攻撃でエレキンタをパニッシュ。バキバキ伝説は宇宙辺境で終焉を迎えるのであった。
 ボーゾック本拠ではびりびりパワーを得るも無念の敗北を喫して戻ってきたゼルモダをガイナモが励まし、 てっきりゼルモダの友情パンチを誤解したガイナモが怒り心頭で待ち受けていて……みたいな酷いギャグでオチるかと思っていたら、 2人の篤い友情が貫き通されてビックリ(笑)
 やはり、男の友情は女で壊れるのです。
 一方ペガサスでは、トラウマ解消記念と敵前逃亡(はヒーロー道不覚悟で石抱きの刑)のお詫びを兼ねて、実が皆に鰻重をおごるが、 デンキウナギの高額請求書を回されて目を白黒させるのであった、とオチ。……月給が一番安いのが明言されている為、 実とお金にまつわるネタはちょっと笑いにくいんですよ!
 善玉サイドと悪玉サイドが同じトラウマを持っているという形で進行するのですが、善玉サイドはギャグと身内による騙し討ちで克服し、 悪玉サイドは熱い男の友情で乗り越えるというねじれ現象は、今作らしい凝ったギャグなのか。曽田さんもかなりぶっ飛んだネタをやる事がありますが、 浦沢さんに比べると凄く良心的に見えるのが恐ろしい。
 次回――悪の園に咲く道ならぬ恋の花? 「道ばたでふざけちゃ危ないってば、ねえ?」。

◆第15話「悪まで仮免恋愛中!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 ウェディングドレス姿で結婚式の夢を見るゾンネット……白いタキシードに身を包んだ相手の男の顔が明確になると レッドレーサーというのは、なかなか衝撃の絵(笑)
 グラッチが神父役なのもおかしいといえば実におかしいのですが、前回出番がなかったのでここに入れた感じか。
 (これってなに……? なんなの?)
 繰り返しレッドレーサーの夢を見る自分の感情の正体がわからないゾンネットは、それを確かめるべく、 パワフルダンサー製造機によって足の筋肉が超パワーアップしたGと共に地球へ。芋羊羹を購入中に、 胸の切ない気持ちが「きゅん」と書かれた小枕として具現化したゾンネットは、本屋で読んだ少女マンガで恋について学び、 レッドレーサーへのアタックを決意する。
 レッドレーサーの顔が、
 「涼しい目……ニヒルな顎……凜々しい眉……はぁ〜……レッドレーサー様」
 に見えるという、変身ヒーローの根本設定から、宇宙的感覚の違いを世界観の表現とギャグの両面に用いてくる流れが巧み。
 ゾンネットはGにパワフルダンスで地震を起こさせてカーレンジャーを誘い出すと、Gが4人を抑えている間に、 レッドレーサーにダイレクトラブアタック。
 「宇宙に芽生えた恋の花、咲かせてみせます、この愛で! ね、レッドーレーサー様?」
 「どういう事?」
 てっきり「アタック」を勘違いして後頭部を鈍器で殴打、とかの路線かと思っていたら、強制お姫様だっこからラブレターを渡すという、 思ったより真っ当な行動でした(笑)
 渡された手紙に困惑するレッドレーサーだが、吹っ飛ばされたGに巻き込まれて遠くまで転がって変身解除。 苛立ちに任せて手紙を破り捨てようとするが、そこにゾンネットが追いかけてくる。
 「お待ち、一般市民。愛しのレッドレーサー様への手紙、返さないと、酷いわよ!」
 「愛しのレッドレーサー様?!」
 ゾンネットビームの直撃を受けた恭介即死、かと思われましたが軽く痺れただけで終わり、意外と殺意の薄いゾンネットは、 チーキュを花火にしたらそこに生きるものが死滅する、という想像力が働かないタイプの悪である模様。
 ゾンネットにとってはレッドレーサーと陣内恭介は別人であるという認識の元、何やらこんがらがった状況に陥るが、 4人が合流してゾンネットとGは一時撤収。憧れの仮面のヒーロー/ヒロインの正体が、実は冴えない(いけすかない)あの人、 というネタは古今に多数の例がある定番ですが、“レッドレーサーはレッドレーサーである(中の人なんていない)”という宇宙的認識が、 今作としての味付けになっています。
 5人は手紙の内容がラブレターである事を確認し、
 朗読して笑い飛ばすダップ(最低)、他人事を面白がって囃し立てる実、罠ではと疑う土門、 ボーゾックと付き合えるわけがないと頭ごなしに否定する恭介、の男性陣に対し、 洋子は断るならヒーローと悪ではなく男と女として真剣に断れと怒り、菜摘は「恭介、このラブレターけっこう真剣だよ」と読み解き、 同じ女として相手の気持ちを汲む女性陣、とそれぞれの反応の差が描かれ……つまり現行戦隊の『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017) に欲しいのはこういう要素なのです!
 その上で、
 「もしかしたらゾンネット、心を入れ替えようとしているのかもよ」
 と、菜摘の解釈の後半は的中しているわけでもない、一方的な思い込みで簡単に理解し合えるわけではない、となっているのが上手い所。
 「どうすりゃいいんだよ……」
 手紙を握り、悩める恭介。
 (罠かもしれないよな。でも、もしゾンネットが純粋な心を取り戻そうとしているとしたら……)
 ちかちかと左右に瞬くウィンカーを見つめ、
 「……わかんねぇな」
 と、恋愛という非常に私的な要素に対してヒーロー思考で悪即斬しかけた恭介がブレーキをかけ、 人間として向き合おうとするというのは、純粋正義のヒーローになりかけていた陣内恭介というキャラクター自体にブレーキがかかり、 奥行きが出て非常に良かったです。
 チーキュの少女マンガで地球の恋愛について学習を続けるゾンネットは、巨大Gに相合い傘で巨大な名前を書かせ、 出撃するサイレンダー。登場3回目にしてサイレンダーはGの足技に苦戦し、駆けつけたRVロボから外に降りたレッドはゾンネットと向かい合う。
 「二人っきりになれるおまじない、ばっちり効いちゃった」
 きゅん小枕をプレゼントに贈り、レッドに交際を申し込んでくるゾンネット。
 「お付き合いしてほしいの。いいでしょ?」
 「だーめだってそんな事言っても……」
 しょせん二人は正義と悪、ヒーローとしてあくまで男女交際をお断りする赤だが、ゾンネットは正義と悪の垣根を超えて、 愛情をアピール。
 「カーレンジャーが人手不足なら、ワンパー何人か子分にしてもいいから! だから、ね?」
 ……これはもしかして、政略結婚による和平が成立するのでは。
 「もう、いい加減にしてくれよ!」
 だがカーレンジャーは、武力衝突を辞さない!
 「じゃあ、どうしたらいいの?」
 「ちょっとだけ、目をつぶっててくれ」
 (もしかして、いきなりキスされちゃったら、どうしよう)
 乙女妄想を昂ぶらせるゾンネットに対し、変身を解除した恭介は、恥ずかしがり屋のレッドレーサーからの伝言として、 改めて交際をお断り。
 「どうして?」
 「住む世界が違うから、ってそう言ってた」
 まあ、正義とか悪とか以上に侵略宇宙人と地球人の間の溝は深く、 真っ当な対応を取った恭介は多少の罪悪感を覚えながらも背を向けて歩み去るが、 その手の中できゅん小枕が消滅して光の粒子がゾンネットの中に戻っていき、落ち込むゾンネットが涙を流す姿を目にしてしまう。
 ゾンネットの恋愛感情が突然具現化したきゅん小枕は最初どうしたものかと思ったのですが、 失恋が具体的な形で目に見える事で割と堅物の恭介でもそれに明確に気付き、他人の心を傷つけた事に対して恭介も傷つく、 という小道具の使い方としては悪くない着地に。
 恭介は物陰で再びレッドレーサーに変身すると、
 (友達から、始めたっていいよな……。そうだ、友達から始めればいいんだ、友達から)
 とゾンネットの元へと駆けていくが、恋破れたゾンネットの姿はそこになく、Gに地球攻撃を指示。 荒ぶるGだがエネルギー切れで小型に戻ってしまい、ゾンネットと共に宇宙へ帰還する。
 「レッドレーサーの馬鹿、馬鹿ーーー!!」
 ゾンネットの叫びは宇宙に木霊し、恭介はなんだか複雑な思いで海を見つめて黄昏れてしまうのであった……で、つづく。
 敵味方の恋愛に、鉄仮面騎士様の正体は……?!という定番要素をベースにしつつ、 ゾンネットから見るとカーレンジャーはああいう姿の宇宙人、というギャグで『カーレン』世界らしく味付け。そこに更に、 善とか悪とかではなく、お互い人間として誠実に向き合うべきだと言われたにも関わらず、 レッドレーサーとしてではなく恭介の姿で間接的に断る、というズルをした恭介が、その事で相手の真の誠実さを知り、 自身の不明を恥じると共に心に引っかかりを得る、という所まで詰め込んできたのはお見事。
 また、恭介とゾンネットだけでなく、何を命じられてもゾンネットにひたすら忠実に尽くす姿でGにまで愛嬌を付加し、 得意のラブコメネタで、荒川さんがキャラクターを肉付けする手腕を鮮やかに発揮。……どうも、市太郎をどう使えばいいのかは、 若干困っている感じですが(^^;
 次回――悪のコンサルタント登場! 「黄色信号でも、走ればOKよ!」「おりゃ! 駄目駄目!」。

◆第16話「ワル知恵合流注意」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄)

行き詰まった宇宙の悪党の皆さんへ!
お安くお手伝いします。
悪のコンサルタント リッチハイカー教授

 カーレンジャーの妨害によりチーキュをなかなか花火にできないボーゾックは、宇宙新聞に入っていたこの折り込みチラシを目にして、 悪のコンサルタントを電話で招聘。
 ……この一文だけでナンセンスが機関銃のように詰め込まれていますが、個人的には、宇宙に新聞配達ネットワークがある事よりも、 ボーゾックが新聞を購読している事に驚きました(笑)
 誰が読んでいるんだ、新聞。
 かくしてやってきたのは、白黒のカラーリング(白衣のイメージ?)で割とスマートなデザインの、リッチハイカー教授。 見た目からして、ガラリとボーゾックに新風を吹き込む美形悪役的なキャスティングなのかと思ったら、 声を演じるのはベテラン田中信夫さんで、なんとも言えず胡散臭い中年紳士といった雰囲気で、まずは一つかわしてきます。
 カーレンジャー撲滅について相談を受けた教授は、酒場にたむろしているメンバーの中からJJジェットンを選抜して地球へ。 ジェットンに勉強させている所をカーレンジャーに見せ、全宇宙ボーゾックを真面目に立ち直らせる会会長を名乗り、 カーレンジャーへと接近する。
 ところがそこへ、「本官の悪口を言った罪」でカーレンジャーを逮捕しようとシグナルマンが乱入。 公権力を濫用する本官は「身許がハッキリするまで、あなたも逮捕する」と教授も捕まえようとし、今回はやたらと横暴(笑)
 まあ、つい先日もバキバキ伝説に苦戦している所を助けに入ったのに(役には立ちませんでしたが)、 なんかアイツむかつくと陰口をたたかれればそれは虫の居所も悪くなるとはいうものかもしれませんが、 主に好戦的なのは恭介だけなので、逮捕して拷問するのはレッドレーサーだけでいいと思います!
 「何故あの時の宇宙警察官が、チーキュに居るんだ」
 実は過去に本官に取り調べを受けた事があった教授はその場を誤魔化すと、カーレンジャー撲滅の前にシグナルマン抹殺を計画。 盗んだシグナイザーを餌にされた本官は、哀れ至近距離から爆弾で吹き飛ばされて、瓦礫の下に埋まってしまう。
 首尾良く本官を排除した教授は、ジェットンの更生祝いを名目にカーレンジャーをパーティに招待。 ワインに毒を入れて毒殺を目論むが………………あれ、何か非常に重要な問題を忘れているような。
 「「「かんぱーい」」」
 一同グラスを打ち合わせたその時、
 正義の交通ルールは未成年の飲酒を許さない!
 と、法の守護者が不屈の復活。満身創痍ながらも正確にワイングラスだけ撃ち落とす相変わらずの凄腕を見せたシグナルマンが突きつけたシグナイザーの録音機能により、 教授がボーゾックと手を結んでいる事が露見する。
 冒頭、ペガサスの前に設置された交番ベースで恭介が呟いた悪口が録音されており、 レッドレーサーがわざわざ交番ベースに侵入して悪口を言って帰ったと誤解されるというネタが事件の解決に一役買うのですが、 このネタの為に、別にシグナルマンに隠さなくてもいい気がするカーレンジャーの正体を、 成り行きで隠し通さなくてはいけなくなるという状況が発生しており、割と本編に影響を与えるネタなのでは。
 作戦が失敗に終わった教授はジェットンをけしかけ、地味に体術の冴えるジェットンだったが、猛反撃を受けて倒れて芋羊羹で巨大化。 健闘虚しく、サイレンダーの援護を受けて合体したRVロボにより、ばっさり成敗されるのであった。 建物の影に隠れる教授の情けない姿がギャグとして描かれるのですが、爆発四散したジェットンの“破片”がぶつかっているというのは冷静に考えなくてもかなりエグい映像で、 とにかく命の重みよりギャグ優先です(^^;
 這々の体で逃げ帰った教授は白けた空気と冷たい視線に迎えられ、そして始まるコンサルティング料金の割引交渉、でオチ。
 この当時の東映ヒーロー物においては、新レギュラーキャラ投入や初期の路線修正が入るのが通例の時期に、 ボーゾックに欠落していた知謀70台(?)の新幹部クラス登場でどう転がるかと思われましたが…… メインライター浦沢義雄の時点で覚悟は完了していた……! ぶっちぎれ、コメディの向こう側!!  みたいな。
 初登場ゲタすらはかせてもらえず、現状、作戦参謀というよりケチな詐欺師めいている (回想シーンの唐草模様のほっかむり姿がまた……)リッチハイカーですが、いったい何話もつのか?! ただ、 名前が「ヒッチハイカー」から来ているならやや意味深で(ボーゾックを利用しようとしている?) 物語にどんなスパイスを加えていくのか、楽しみです。
 ちなみに翌年の『電磁戦隊メガレンジャー』では、第19話から真っ当な策士系新幹部が参戦し、 「頭脳的な上に卑劣」と評価される華々しいデビュー戦を飾るのですが、連続で見ると、ある意味で1年越しのギャグになっていたのか(笑)
 しかしこう、今になって2話ずつで見ているので“こういう作品”という視点から楽しめていますが、 リアルタイムで毎週1話ずつだとこの常道外しに当時の自分がついていけなかったのは改めて納得してしまうところ(^^;  同期の『超光戦士シャンゼリオン』は毎週TVの前でひっくり返りながら楽しんでいたので、ヒーロー×コメディが駄目だったのではなく、 “戦隊に求めているもの”が今より狭かったのでしょうが。
 次回――「車の窓から、手や顔を出すと危ないぞ」。

◆第17話「押し着せ正面衝突!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄)
 小型UFOを追うボーゾックを制止したシグナルマンは、助けたファッションデザイナーからお礼にジャケットを仕立ててもらうが、 それはリッチハイカー教授の罠であった。怒りジャケットにより怒りの感情をコントロールされたシグナルマンは菜摘と洋子を追いかけ回し、 カーレンジャーが仕方なく変身すると、一気にサイレンダーを召喚。RVロボで対応するカーレンジャーだが、 サイレンダーまでが巨大な怒りジャケットを着せられ、暴走を始めてしまう……!
 ブローアップ!
 浦沢ワールド的には無機物に感情があるのはそれほどおかしくないので、怒りジャケットが効力を発揮するのも自然。
 サイレンダーのコックピットに乗り込んだ赤は本官がジャケットで洗脳されている事と、教授とデザイナーが一緒に行動しているのを発見。 青と緑がそちらを攻撃し、怒りリモコンの破壊に成功すると、巨大化したデザイナー怪人を協力して倒すのであった。
 サイレンダーとRVロボが戦っている間にその足下で巨大ジャケットを仕立て、完成したそれをロケットでサイレンダーに着せる、 という辺りが一番の笑いどころなのでしょうが、個人的なツボには入らず。
 元々、坂本×浦沢コンビとはあまり相性が良くないのですが、凄くそれを感じるエピソードでした(^^;
 次回――りんどう湖ファミリー牧場で社員旅行。「道路で遊ばないで、こういうひろーい所で遊ぼうね!」。

◆第18話「うそつきハート整備中」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:曽田博久)
 「ZZゼリの、怒りのジャケット作戦も、惜しくもしっぱーい。甚だ遺憾でしたので、今週は逆に、服を脱がせる作戦を、 ぶちかましたいと思います」
 90年代の曽田さんは、妖刀の切れ味だな……!
 リッチハイカー教授は、ボーゾックの温泉研究家OOオーパが研究中の、脱ぎ脱ぎビームガンを用いた作戦を立案。
 「それってエッチじゃないの?」
 とゾンネットに言わせるのがまた凄い(笑)
 下心の有無はさておき、教授の狙い、それはカーレンジャーの服を脱がす事で風邪を引かせ、 10日ほど寝込んでいる間にチーキュを征服してしまおう、という周到な計画であった……。
 服を脱がす=正体を見破る、と来ても良さそうな所、あくまでもああいう顔の宇宙人だと思われているので、風邪を引かせる、 となるのはしょうもなさも含めて今作らしい展開。
 その頃、脱衣の危機が迫っているとは知らないペガサス一行は、前年、 杉本升マッドサイエンティストテーマの極致として阿鼻叫喚の舞台となったりんどう湖ファミリー牧場を社員旅行で訪れていた。
 前年は殺す気で仕掛けてきた悪の天才に奪われる変身アイテムそして人類への裏切りと父親の狂気、 というシリアスかつハードな展開の中でファミリー牧場を駆け回って人を探したり敵と戦うのに少々無理がありましたが、 今年はしばらく、爽やかな観光タイアップをお楽しみ下さい。
 ファミリー牧場を満喫する5人+社長+市太郎だが、「宇宙人が出た」と叫ぶ少女が現れ、さてはボーゾック?! と5人はその確認へ。
 「待て市太郎、行っちゃいかん。近頃東京を騒がせている、あのボーゾックという奴等かもしれんぞ」
 残った父子の会話で、えらく具体的に限定される範囲(笑)
 従来作も、ロケ地云々を抜きに言行から概ね東京中心ですし、敵の作戦が大規模な場合は「首都圏」 という言葉ぐらいは出てくる事はありますが、微妙なご近所感を出しつつ地名を明示してくるのは、 曽田さん的なメタギャグなのかと思われます。
 今作のコンセプトあってこそですが、浦沢ワールドという舞台で、 サブライターという立場の曽田さんの暴れ方がフリーダムで面白い事に。
 宇宙人出現は地元では嘘つきで有名な少女・恵美の悪戯であり、振り回された事を知った面々は、 今度は本当にOOオーパと遭遇した恵美の言葉を信じない。それなら証拠写真を撮ろうと温泉水を集めるオーパの後を追った少女は、 アジトを発見。
 「温泉の中には、人が裸になりたくなる未知の成分、ヌギヌギニウムがある。そこでそれを取り出し、 ヌギヌギクリスタルという結晶にする」
 珍しくグラッチを通さずに怪人が自ら新兵器の開発を行っており、そうか、こういうメンバーが新聞を読んでいるのか(笑)
 設備が故障するも実験は成功し、ヌギヌギクリスタルが完成。そこを写真に撮ろうとする恵美だったが教授に見つかってしまう。
 「誰だ?! さてはチーキュの産業スパイ! 捕まえろ!」
 どうしてそうなる(笑)
 恵美の事を気にして探していた菜摘は、追われていた少女を助けるも脱ぎ脱ぎビームの標的にされるが、 教授の放った光線はアクセルブレスに当たって反射され、自力でりんどう湖まで辿り着いていたダップに命中。 おもむろに脱ぎ始めたダップに教授が呆気にとられている内にクリスタルの強奪に成功する菜摘だったが、 ビームの衝撃でアクセルブレスが機能不全に陥り、孤立無援に陥ってしまう。
 単独行動を反省した菜摘は、ひとまず身を隠す事に成功。小学生の頃、既に興味のあった機械工学の知識で教室のTVを直すも (よい子は真似してはいけません!)男子から「嘘つき」扱いされた思い出を語り、他人に信じて貰えない悲しさを知っているから、 恵美を放っておけなかった、と語る。
 「でも、お姉ちゃんと違って、恵美、もともと嘘つきだもん」
 「今は違う。もう嘘つきじゃないでしょ。本当に宇宙人が居たんだから。みんなに、宇宙人が居る事、お姉ちゃんが証明してあげる。 だから、約束。もう、二度と嘘をつかない事」
 「うん、お姉ちゃん、私、もう絶対に嘘はつかない。そして、お姉ちゃんみたいな素敵な人になる!」
 二人は指切りをかわし、菜摘の姉御肌を少女との交流で活用。今作あまり無かった子供ゲストとの定番エピソードを消化しつつ、 女性メンバーの対比としてやや優遇加減だった洋子との格差を縮める正統派良い話を持ってきたのはバランス的に良かったと思います。 菜摘みたいなタイプは雑なエピソードが回される事が多いですし、実際ここが初の単独メイン回でもあるので。
 菜摘はイメージソングみたいな歌をバックに生身でワンパーを蹴散らし、恵美と逃走。一方、 正気に戻った全裸のダップはキャンプ場を襲撃し、今回シグナルマンが居たら罪状山盛りで最終回になる所でした(笑)
 この辺り、社員旅行なのでダップは置き去り・ダップ不在なのでボーゾック反応が感知されない・ ダップが巻き込まれるのとアクセルブレスの故障を同じ原因にまとめる・りんどう湖なので本官不在の必然性が高い、 という辺りがきっちり繋がっていて、けっこうテクニカル。
 ダップはキャンプ場で入手した携帯電話でメンバーに菜摘の危機を連絡し、アクセルブレスには携帯電話から通信ができる!
 その頃、ワンパーに取り押さえられた菜摘はヌギヌギクリスタルを奪われてしまっていたが、駆けつける4人。 菜摘はダップが大事な所を隠す為に巻いていたタオルを止めていた安全ピンに目を留めると、それを用いてアクセルブレスを緊急修理。 瞬間自転車解体といい、ペガサス1の異能の持ち主なのでは(笑)
 ここまで脱衣を中心にドタバタ展開していましたが、5人揃ったカーレンジャーがOPのイントロから久々にフル名乗りで戦闘へ、 というのが如何にも渡辺監督で、曽田さんのぶっ飛んだ所+戦隊文法と、渡辺監督の演出ラインが美しく一致。
 ……まあ、怪人の首から下は浴衣姿なのですが(笑)
 でも、割と強烈な火を噴く。
 ファミリー牧場各地で戦闘シーンが描かれ、最後はイエローが一騎打ちでオーパを撃破。 巨大化したオーパの各種温泉攻撃に苦戦するRVロボだったが、イエロー回転キックで反撃から激走斬りでフィニッシュ。 かくしてリッチハイカー教授の全人類全裸作戦もといカーレンジャー夏風邪作戦は失敗に終わるのだった。
 菜摘達を追うボーゾックがファミリー牧場を走り回った事で宇宙人の存在は証明され、恵美も嘘つき扱いを脱し、 みんなで楽しく遊んで大団円。
 次回――野球×ラブコメ。「自転車に乗るときは」「周りの人に、気をつけろ」。

→〔その4へ続く〕

(2018年2月1日)

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