■『激走戦隊カーレンジャー』感想まとめ2■


“ボーイ あきらめないで 信じてごらんよ
夢見る君が ときめく君が 明日のヒーロー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『激走戦隊カーレンジャー』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第7話「青(ブルー)は侵入禁止?!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:浦沢義雄)
 注目のデザイナーとして雑誌に紹介され、大手会社からヘッドハントを受ける土門直樹(17) ……って、17歳なのっ?!
 3倍の給料を打診されるもペガサスの仲間達を選んで断った土門だが、会社に戻ると何故か社内に入れてもらえず、 汚れてもいない車の洗車をしてくるように、と追い払われてしまう。もしやヘッドハントの現場を見られ、 裏切り者だと思われて嫌われているのでは……苦悩する土門だが、たぶん、軋轢が生じたとしたら、 第1話で話の弾みで給料を明かしてしまった時だと思います(笑)
 グラッチの作った高カロリーで太るスプレーを手にボーゾック1の落書き名人NNネレンコが地球に襲来し、 カーレンジャーとしての招集に気持ちを切り替える土門。
 「たとえみんなが嫌っていたとしても、わたくしは、激走戦隊カーレンジャーの、ブルーレーサーなのです!  わたくし達カーレンジャーには、5人一丸となって、地球の平和を守る、任務があるのでした!」
 自分の存在意義を戦いに見出し、かなり、クルマジックパワーが回ってきています。
 遅れて駆けつけるも4人は逃げた怪人を追撃してしまい、やはり自分は村八分されているのではと落ち込む青だが、 スプレーを浴びてピンチになった4人から「助けてくれ……」の通信が届くとやる気を取り戻し、割と面倒くさい性格(笑)
 ブルーが激走カーウォッシャーでスプレーを洗い流し、太りすぎによる破裂死を阻止すると、 5人はギガフォーミュラで怪人を撃破。ロボ戦もあっさり決着がつくが戦いが終わると4人はそそくさと姿を消してしまい、 束の間の儚い関係だったのか……と失意の土門がペガサスに戻ると、実は中ではサプライズ誕生パーティを準備していたのでした、 でも本当は誕生日は来月でした、という定番のオチで、特にこれといって面白くはない出来。
 これまで若干怪しげな丁寧語で特徴づけられていた土門、年下枠・高度な技術・他人に頼られる事に自分の存在意義を見出す、 と後の『未来戦隊タイムレンジャー』のシオンが割と被っているのは、もしかしたら意識した所があったのでしょうか。 名前はドモンですが、それも含めて。
 (※なお、筆者に「なおき」という読みの友人が居る為、なんとなく「直樹」「直樹」と書きにくいので、 本文中の土門の呼称は主に「土門」となります)
 次回――「道渡る時は、右見て左見て、もいっかい右を確認や!」。

◆第8話「変身腕輪(ブレス)不携帯」◆ (監督:田崎竜太 脚本:浦沢義雄)
 八百屋にロケットエンジンを売り込もうとする実は、商店街をマッドマシンで暴走するボーゾックの走り屋YYビンゴを目撃して変身し、 ゴーカートで追撃。
 「ははははははっ、地球の平和は、このグリーンレーサーが守ったる」
 「来たなカーレンジャー」
 「待てぇーっ!」
 方言キャラの強みもありますが、緑は発音の違いによる特徴的な台詞回しが小気味よく、聞いていて面白いです。……その分、 同じく基本の喋り方で特徴付けている青の方は、食われてあまり台詞が面白くならなかったりはしているのですが(^^;
 「正義は、必ず、勝つんやー!!」
 レース対決の末、ビンゴを障害物に衝突させて葬り去り、爆発を背景に格好良くポーズを決める緑。
 ヒーロー物としては特におかしくはないのですが、爆発した車からよろよろと這い出したビンゴが倒れ伏して爆死する、 という一種くどい描写が全体的なノリの軽さとのギャップを生んでか、やたらと殺意が高く見えます(笑)
 恐らく意図的なものでしょうが、今作独特の、日常と非日常の切り替えの薄さというか、 カップヌードルの待ち時間に宇宙人を殺して食事に戻る感じというか。それをプロフェッショナル集団ではなく、 アマチュアの市民にやらせる事でベースをコメディにしているのだな、と。
 快勝に気を良くした実は勝利のポーズをアレンジしている内に、腕を思い切り振りすぎてブレスが外れてしまうが、 それに気付かずに立ち去ってしまう。
 ……アクセルブレス、就寝時も入浴時も決して外れない呪いのアイテムの類いだと思っていたので、外れるという事実にホッとしました(笑)
 ボーゾックでは、YYビンゴの弟・YYゴンザが復讐の為に地球へ降り立ち、兄を弔った場所でブレスを拾うが (ハンドルを加工した墓碑が『マッドマックス』感あって格好いい)、まさか憎きカーレンジャーの変身アイテムとは思わずに尻尾飾りに。
 街を暴走するゴンザを目にして変身しようとするもブレスを無くした事に気付いた実はペガサスへ慌てて戻るが、そこでダップから、 アクセルブレスは車の星座に選ばれた者にたった一度だけ与えられる、替えの効かないものである事を教えられる。
 「君たちがカーレンジャーに変身できるのは、アクセルブレスからクルマジックパワーを引き出してるからなんだ」
 自分がカーレンジャーの資格を失った事に茫然自失となる実だが、これまで注入されてきたクルマジックパワーがその戦士の魂を揺さぶり動かす。
 「俺、カーレンジャーとして許されへん事をしてしまった! せやけど、この責任だけはきっちり取らしてもらうで!」
 襲われていた市民を助けるも、YYゴンザに苦戦する4人の元へ駆けつけたのは……生身でスパナを振り回す実。
 「ボーゾック! 宇宙へ帰れぇ!」
 「……なんだおまえ?」
 「一般市民、上杉実!」
 変身能力を失ったヒーローが魂で再起するという王道の展開ですが、そのまますんなり格好良く進まず、「ボーゾック、 こんな奴は気にするなよ」と4人の後ろに隠されるのがカーレンジャーな間合い(笑) その一方で、 「ヒーロー」として立ち上がるのではなく、ヒーローになれないけど「一般市民」として立ち上がる ――一般市民だって立ち上がれる――というのは、第8話にして最終回近辺のようなテーゼが持ち込まれており、 愛があれば投石だって大丈夫☆
 実を止めようとする4人だが、一般市民として戦いたいという実の強い気持ちを受け入れ、
 「気の済むように、してあげよう」
 というのはしかし、スパナ握りしめた成人男性への言葉としては凄く危ない。
 つまり、高度に戦士化された一般市民は、暴徒と区別がつかないのだ。
 だが魂だけでは巨大な敵に勝てないというのも現実であり、スパナで躍りかかるも一蹴され、一方的な暴行を受ける実。 助けに入ろうとする4人だが、それをダップが止める。
 「みんな、待つんだ! 今助けちゃいけない。 ここで実が戦死すれば自動的に新しいメンバーが選抜される筈ダップ!   実は戦士としての自分を、試してるんダップ!」
 なにか昆虫魂的な本音が聞こえた気がしましたが、たぶんキノセイ。
 「みんなの仲間として、これからも戦っていけるかどうか、それを自分で、試してるところダップ!」
 「実……例えグリーンレーサーになれなくても、おまえは立派な、激走戦隊カーレンジャーだ!」
 結局あえなく実は気絶し、4人の一斉攻撃を受けたゴンザは受け取った羊羹で巨大化。RVロボを呼べずに逃げ惑う4人だが、 巨大化した際に尻尾から外れたアクセルブレスが、目を覚ました実の前へと転がり落ちてくる。
 まるっきり偶然なのですが、実が改めて戦士の資格を見せたからこそ、運命が実に味方した、 という天の配剤として偶然の意味が綺麗に繋がっています。
 「みんな……今行くでぇ! 激走! アクセルチェンジャー!!」
 身を引きずるようにしながらも実がアクセルブレスを手にする所から挿入歌が流れ出し……前回の青と比べると、 えらく差のある良い個人回。これは、あれか、所得格差のフォローなのか。
 「おまえの相手はこっちや!」
 ゴンザを挑発してゴーカートに乗り込んだ緑は、敢えて足下に突っ込むと真下からミサイルを撃ち込み、 カート実物と怪人の巨大な足(柱2本)を同じ画面に収めて見せるという、割と珍しい感じの映像(踏みつけ表現として、 足をちゃんと宙に浮かしてみせたり)。ミサイルで怪人がひっくり返っている隙に激走合体し、 グリーン復讐の跳び蹴りから激走斬りでフィニッシュ。
 戦死寸前の激闘を乗り越えて少々反省、戦士として成長したかと思われた実だが……またも調子にのった拍子にブレスが外れてしまい、 仲間からからかわれるのであった、でオチ。
 ……実、ブレスが外れやすいのは、ちょっと肉が多めだからなのだろうか。
 次回――「飛び出すな車は急に止まれない、ダップ」。

◆第9話「星(スター)へのUターン」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄)
 会社を飛び出して公園で愚痴る恭介は、段々独り言が癖になっているのではないかと心配になってきます。
 レーサー志望の恭介の夢を知り、自分もかつてレーサーを目指していた事を語り始めるダップ。宇宙中の子供達のヒーローだったが、 レース中の事故で死亡してしまった憧れのヒーロー・マックスの思い出に感極まって涙をこぼすが……第1話が第1話だったので、 凄く、胡散臭いです(笑)
 ところが実はマックスは、事故で不時着した所をボーゾックに拾われ、物忘れ水鉄砲で記憶を失い、 皿洗いジャケットを着せられてボーゾックの皿洗いして働かされていたのだった。
 ボーゾックのお陰で一命を取り留めたと言えなくはないのですが、他人の記憶を一切の良心の呵責なくあっさり奪い去り、 都合の良い奴隷労働力として扱うボーゾックが、物凄い邪悪。
 そしてそれが、殊更に“邪悪な行為”として劇中で強調されない、というのが今作の怖い所です。
 様々な偶然の連鎖からマックスとしての記憶を取り戻すも、再びボーゾックに記憶を奪われてしまい、 カーレンジャーと戦う事になるマックス。最後はダップをかばってヒーローとしての自分を取り戻して散るのですが、 ダップからのまた聞きでしかないのに急に「あなたはスーパーヒーローだ!」と言い出す赤、 いきなり「憧れてたのにー!」と泣き叫ぶダップなど、ダップを中心に感情の発露が全体的に唐突すぎた為、 マックスが記憶を取り戻すくだりもあまり劇的にならず、どうも話にノれませんでした(^^;
 居眠りしていた社長に怒られた恭介(夢の中でロボ戦は消化)が、 社長に対して「クビだ!」と怒鳴ると社長がその気になって会社を出て行こうとして途中ではたと気付いてやり直す、 というギャグは面白かったですけど。
 それにしても、今作について“ギャグで人を殺せる戦隊”とは書きましたが、 不幸な事故にあった男が記憶を消されて道具として使われた挙げ句になんの悪意もないまま兵隊にされてそのまま死亡する、 という内容は、洗脳エピソードの亜流としても救いようのなさは戦隊史上でもかなり上位なのでは。
 次回――「自転車の2人乗りは」「やってはいけませんよ」。

◆第10話「大逆転!!自動車教習」◆ (監督:坂本太郎 脚本:曽田博久)
 いきなり、土門に熱い視線を送る菜摘からスタート。
 「どう? 私の弟にならない?」
 土門のような可愛い弟が居たら、プロレスしたりチャンバラの相手にしたりとっても楽しそう……うっとりと呟く菜摘の姿に 合法的な折檻の気配を感じ取り、必死に拒否する土門(笑)
 その頃、ボーゾックのレディース・LLオネネが走り屋仲間を増やそうと地球に降り立ち、 暴走族なりきりハチマキを巻かれた土門は暴走族になってしまう……自転車で。
 「みんなで走れば怖くない!」
 前回の物忘れ水鉄砲に続き、人の精神を操る超アイテムが『ドラえもん』ノリで物凄くぞんざいに登場して、 恐るべき大宇宙というか恐るべきボーゾックというか。星座伝説もこんなノリで地球人にクルマジックを注入しているに違いありません。
 オネネは順調に珍走自転車団を増やしていき、商店街を大暴走。カーレンジャーはスピーダーでオネネの自転車を追い、 住宅街の道路で自転車とスピーダーがチェイスするシーンは、地味に凄い映像のような(笑)
 スピーダー、道路交通法的にはどういう扱いなのだろう。
 小回りを活かした自転車に逃げ切られてしまい、オネネの自転車団は、暴走三輪車集団、暴走一輪車集団、とエスカレート。
 「可愛い弟を救うのは、姉さんの役目」
 土門を心配して飛び出した菜摘は二丁スパナを構えると、天馬激走流・アクセルスパナの舞により、 走行中の自転車をすれ違いざまに解体する神業で、土門の救出に成功。
 これによりハチマキが人々の豹変の原因と判明するが、事態の解決にはどうにかしてオネネを止めなくてはならない。 暴走状態のパワーに注目した菜摘は、敢えて再びハチマキを巻かせた土門を特訓。 オネネを越える脚力を身につけさせる事で自転車には自転車で対抗し、遂に土門はオネネを自転車からはたき落とす事に成功。 集合したカーレンジャーはオネネを追い詰め、巨大化後はRVロボのヘアピンキックから、激走斬りで撃破するのであった。
 浦沢さんによる立ち上げ〜キャラ回一巡した所で、80年代戦隊を支えてきた曽田さんが参戦。 怪人が街に被害と混乱をもたらす→原因判明→対抗手段を練って解決、と『カーレンジャー』風味を探り探り取り込みつつも、凄く正攻法。
 自動車が自転車になっているのがナンセンスギャグになった上で、映像的にはそこまでグレードダウンしていないという工夫は良かったです。
 事件は解決したが、やはり土門は菜摘から必死に逃げるのであった……というオチは入りとキャラの関係性が全く変わらない為、 もう一ひねり欲しかったですが、前回のオチも恭介が社長に「クビだ!」と言う繰り返しネタだったので、 もしかしたら坂本監督の方で二つのオチを合わせたのでしょうか。
 ところで今回から、主題歌のアレンジが豪華になった?
 次回――「道路でのボール遊びは危ないよ」。

◆第11話「怒りの重量オーバー」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
 夏に向けて水着を新調しようとする、洋子と菜摘。夏のビーチで視線を釘付け、モデルデビューにアイドルデビュー、 末はホワイトチャペルで玉の輿……と妄想をたくましくする洋子だったが、 引きしまった菜摘の体型を見て自分のスタイルに自信をなくした所に、ボーゾックが襲来。
 ボーゾック一の数字の魔術師PPラッパーは地球の数字を次々と行儀悪くしていき、戦闘中、怪人の「重い」発言を気にした洋子は、 TVでカーレンジャーが紹介された際に「ピンクはちょっと太めでは」というコメンテーターの言葉に追い打ちを受け、 ダイエットに邁進する事に……と、前回の菜摘が女ガキ大将路線だったのに対し、 洋子がコスプレ満載で体重を気にする正統派ヒロインエピソード。
 どう考えてもちょっと太めなのはグリーンレーサーですが、実がダイエットに奮闘しても喜ぶ人が少なそうという政治的判断です!
 ランニングやエクササイズに汗を流すも思うように体重が減らない……というのはお約束ですが、 ランニングウェアを着込んだ洋子が腹筋しながら伝票に数字を打ち込む姿は、なかなか壮絶(笑)
 そして、社長を気にしてカンペで指示を出す知恵を身につけるダップ。
 数字をおかしくするリモコンの電池が切れないよう、バッテリーパックを背負ったラッパーが再襲来。幼稚園バスが暴走し、 それを筋肉で食い止めようとするカーレンジャーは、身動き取れない所に数字爆弾を投げつけられて、割とシリアスなピンチに。 過度の運動がたたって腰を痛めた洋子はダップに基地に運ばれ、戦闘の映像を見つめている内に謎が全て解けた。
 「そうか……あの体重計もあいつがおかしくしたんだ。そうじゃなきゃあんなに増えてる筈ないもん。そうだったんだ。そうだったんだ!」
 「おーっと、突然復活したダップ」
 怒りの矛先を見つけた洋子は、腰の痛みから立ち直り、4人を助けに参上。
 「私のハートが勝手に決めた、道交法の1102条! 花も恥じらう乙女の前で、体重の事を、話すべからず。激走!  アクセル・チェンジャー!」
 なお一応確認したところ、道路交通法は2017年現在、全132条なので、語呂の勢いで凄く盛っています。
 「守れ、最大積載量! ピンクレーサー!」
 そのままキャッチフレーズに使えてしまいそうな名乗りでポーズを決めたピンクレーサーは、 キャラクターソング?をバックに一騎打ちで大暴れし、渡辺×荒川コンビが、例のように例の如く煩悩のままに好き放題。
 「覚悟しなさいPPラッパー、体重計をおかしくした罰よ! 怒りの、ピンク爆弾パーンチ!」
 ジャイアントスイングもするし、正義のエージェントが乗り移った疑惑。
 「体重計なんて、知らないんだけどラッパー」
 否認する容疑者は芋羊羹を食べて巨大化するが、
 「今度こそ体重計をおかしくした罰」
 でジャッジメント!
 宇宙激走裁判所からはデリート許可が下り、RVソード激走斬りで処刑されるのであった。ごっちゅう!
 もちろん冤罪なので肝心の体重は変わる筈がなく、落ち込む洋子をなぐさめる4人。「じゃ……なんかおごって」で笑顔でドタバタして、 大団円。
 ベテラン曽田博久に続き、この時点で既に4本の戦隊に参加経験のあった荒川稔久が参戦。『カーレン』らしさ云々というよりも、 いっそ清々しい安定の煩悩ぶり。これも一応、アイドル回に数えていいのか?!
 次回――歴史は繰り返し、主役はまたも強奪されてしまうのか。「信号は青は進め、赤は止まれだ」。

◆第12話「宇宙から来た信号野郎」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:浦沢義雄)
 サボり中にワンパーの虫干しを目撃して変身する恭介、仕事よりもヒーロー活動に真面目(笑)
 なんだかんだ喧嘩は強いゼルモダに追い詰められたレッドレーサーだが、そこにサイレンの音が鳴り響く。
 「ま、まさか……」
 スモークの向こうからバイクに乗ってやってきたのは、青いボディに3色のシグナルを散りばめた……
 「本官は、宇宙交通戦争を引き起こしている、宇宙暴走族・ボーゾックを取り締まりに、宇宙警察のポリス星から、 このチーキュに、単身赴任してきた。正義の交通ルールを守りましょう! 本名、シグナルマン・ポリス・コバーン!」
 ……ヒーロー?
 普通なら新キャラの格好いい登場シーンの筈なのですが、微妙にコミカルなBGMで登場して困惑を誘います。
 メカメカしい外見、東映刑事ヒーロー、正義を語る、とヤバい要素てんこ盛りのシグナルマンは屋外に出ると、 テーマソングをバックにスペース特殊警棒でワンパー達を次々と蹴散らし、その銃撃も軽々と弾き返す、正統派ヒーロー演出で立ち回り。
 ……これは、信じていいのか?!
 「本官は強い!」
 スペース特殊警棒をスペース光線銃に可変させたシグナルマンは、ワンパー達の足を次々と撃ち抜いていき、 これまでの東映刑事ヒーローとは毛色が違う事を見せつけます。
 足を負傷したゼルモダはワンパーを回収して車で逃走し、出番が来たとスピーダーでそれを猛追する赤。だが……
 「その車、止まりなさい!」
 シグナルマンのバイクに止められ、路肩に停車させられる。
 「何キロオーバーだと思ってんの? 免許証見せて」
 シグナルマンは、対ボーゾックの正義のヒーローではなく、あくまでも正義の交通ルールを守らせる事を使命とした、 宇宙警察官だったのだ!
 3年ほど前に国家権力の壁を木っ端微塵に粉砕した紫色の正義の化身が居ましたが、ヒーローと法律という、 危険なネタが剛速球。
 カーレンジャーの説明をする赤だが勝手にヒーローをやっている素人と嘲られ、衝突寸前に仲間達に止められる事に。
 一方、ボーゾック本拠ではガイナモがシグナルマンに対する怒りを露わにしていた。
 「遂にあの宇宙一交通ルールにうるさい、宇宙警察のシグナルマンが、チーキュに単身赴任してきたか」
 シグナルマンは次々とボーゾックに違反切符を切ってきた宿敵であり、特にガイナモにとっては、 総長として箔を付けようと交通違反で罰則を受けるのをドキドキして待ち構えていたら、「シートベルトをつけて下さい」 と注意されただけで終わってしまった、恨み骨髄の相手だったのである。
 地球にコバーンベースを設置し、通りすがりのお婆ちゃんの道案内をするシグナルマンだったが、それはボーゾックの罠。
 「シグナルマン、チーキュへ単身赴任した事を祝って、盛大なパーティを開かせてもらうぜ」
 待ち伏せていたワンパーに囲まれるシグナルマンだったが、カーレンジャーの助けを断って、これを楽々撃破。 伏兵部隊のチェーン攻撃を受けて苦戦するも笛を吹くとバイクが走ってきて、それにまたがりながら華麗なガンアクションを披露し、 歴戦の宇宙警官として凄腕を見せつける。
 てっきりシグナルマンの救援拒否に怒って帰ってしまったカーレンジャーが助けに入るのかと思いきや、ここまで全く役立たず(笑)
 これは本当に主役強奪されてしまうのかと思われたが、さすがのシグナルマンも、巨大化した怪人UUウーリンに鷲掴みにされ大ピンチ。
 「カーレンジャーの諸君、どうして本官を助けない?」
 とあっさり前言を撤回し、仕方ないので出撃したRVロボが激走斬り。ガイナモ達はすごすごと退却し、 ウーリンも一撃では死なずに逃げ帰るのですが、次回再挑戦してくるのか。
 「カーレンジャーの諸君。これからは、本官と力を合わせ、ボーゾックと戦っていこう」
 「調子ええやっちゃな」
 「まいっか!」
 シグナルマンはカーレンジャーを認め、基本いい人の集団であるカーレンジャーも特に遺恨なくそれを受け入れ、 がっちりとスクラムを組む6人。ここに、ボーゾックに対抗する宇宙の正義が集った! が……
 「ところで……あの車は、駐車違反だ。取り締まらなくては」
 汚職と癒着を許さないシグナルマンがスピーダーに違反切符を切ろうとし、慌てて逃げるカーレンジャー、でオチ。
 いわゆる追加戦士のフォーマットがまだ固まっていない90年代戦隊であり、登場も早い事から、 今でいう追加戦士が登場したというよりも、『カーレン』世界に新たな変人がやってきたという印象(笑)
 一応ヒーロー初登場らしい下駄を履いた戦闘の見せ場もあるのですが、格好良くしすぎてはいけない、という意識も演出に感じます。
 ところでシグナルマン、ワンパーに対しては警官らしく足への銃撃を徹底していたので、 怪人ポジションにはどう対応するのか注目していたのですが、思いっきり頭から撃ったので、やはり大宇宙の正義はジャッジメントなのか。
 次回――男盛りの単身赴任に、忍び寄る美人局の影。早くも本官の社会的立場に危機が迫る!
 「歩行者用信号の青が点滅したら、渡っては駄目だ!」。

→〔ぞの3へ続く〕

(2018年1月13日)

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