ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超新星フラッシュマン』感想の、 総括&構成分析です。執筆中にコメントをいただきましたkanataさん、Beniさん、やり取りが内容に反映されている所もあります。改めて、 ありがとうございました。
- ☆総括☆
- 一言でまとめしまうなら、如何にも過渡期の作品。
同時に、1年の物語を構成する難しさを、まざまざと思わせてくれるシリーズでありました。
全体的な理由付けの無さ、適当な伏線、いい加減な戦闘、などなど、以後のシリーズで徐々に改善されていく問題点が全て浮き彫りで、 その中で、部分部分で光るものや試みがあるのですが、まだそれが全体には至っていない。
物足りなさと惜しさの同居するシリーズでありました。
目立つ問題としてはまず、幹部の使い分けの失敗(特にガルス!)。
それから、中盤以降顕著な、変身ブレスレットで「フラッシュ!」すると、とりあえず逃げられてしまう事。あれはあまりにも便利使い しすぎた上に、劇中でここぞという時ならともかく、乱発しまくるのにメス側も一切の対策を立てない為、非常に興ざめになってしまい ました。
それから、2台のロボットの使い分けに全く理由の無い戦闘構成。後続の作品になると、今度は新ロボを出す事だけが優先になって1号 ロボが理不尽に目立たなくなるという問題が出る事もあるわけですが、せっかく1号ロボも併用するという形にも関わらず、フラッシュマン がロボットを意図的に使い分けない点は非常に勿体なかったです。そこで使い分けを行えば、もう少し戦闘にドラマが出たのですが…… 通常戦闘でもとにかく最後に「ローリングバルカンだ!」をすれば片付いてしまう為、フラッシュマンのパワーアップイベントも今ひとつ 活かされず、そういった諸々がいちいち残念でなりません(後世のシリーズ作品の踏み台になったといえば、見事になっているのですが)。
そして構成上の最大の問題点は、途中でも触れましたが、
フラッシュマン側とメス側の個人的な因縁を構築できなかった事
になると思います。
一応途中で、ジン×ワンダ、ジン×カウラーの要素を盛り込もうという気配はありましたが、失敗。
結果的に、終盤に組み込まれたメス側の内部対立である、ケフレン×カウラーの方が盛り上がってしまった。
しかも同時期に“反フラッシュ現象”が発生した事により、フラッシュマンの最大の敵はむしろ反フラッシュ現象 になってしまい、vsケフレンにも、vsカウラーにも、今ひとつピントが合わなかった。
カウラーなどは、20年前にフラッシュマン達を攫ったハンター、という極めつけの因縁があるのですが、これも活かしきれずじまい。 最後にサラを生家に連れて行く、という形でなんとか物語には組み込めましたが。
究極的には、フラッシュマン個々のキャラクターを立てきれなかった。
もちろん私個人の好き嫌いもありますが、2クールかけても、フラッシュマン個々に対して、嫌いではないけど愛着も持てない、という のは、やはり辛い。
結果的には、構成としては多少しつこくなっても家族関係のエピソードを積極的に盛り込んで、個々のキャラクターを立てる方向に行く べきであったかとは思います。
……まあ、復讐の超戦士としてのフラッシュマンは、それはそれで楽しいのですけど。
結局この、チームとしての立ち方と、キャラクターとしての立ち方、それが両立できなかった。
『フラッシュマン』は物語としては、最大の特徴が最大の縛りになっている、というのはあって、あまりにも最初から戦士として完成 されすぎている上にチームとして一蓮托生にすぎる。その為、チーム内部での個々のドラマが非常に描きにくい(せいぜい、女性陣の喧嘩 が1回あったぐらい)。また、戦士としての成長を描く部分もない。
そういった特殊な環境(フラッシュ星)で育った事を物語に組み込もうという意図も見えましたが、カルチャーギャップ要素などは、 やりすぎるとどうしても両刃の剣(あれは知らないのに、何故あれは知っているのか、など)になってしまう為、メインでは扱いにくい。
後半、サラやブンに多少の変化が描かれていきますが、もう一歩二歩、そちらに切り込めていたら、ぐっと面白くなったかもしれません。
こういった描き方の不足は、敵側にも見え、カウラーがケフレンひいてはデウスに敵対していく流れや、ケフレンのデウスへの叛意など の描写が非常におざなり為、敵幹部の行動がほぼ全て成り行きに見えてしまい、終盤のドラマがぐだぐだになってしまったのは、勿体ない。
特にケフレンの「実は地球人」という設定が、あくまで専務個人がショックを受けただけで、大きな物語の中に全く盛り込めなかった のは、実に残念。
様々な萌芽を感じさせつつも、劇中での収穫には失敗した作品となりました。
それでも最後の最後は、それぞれのキャラクターのいい部分を前面に押し出す事で盛り上げてみせたのは、熟練の技か。
好きなエピソード・ベスト3
- 43話「カウラーの反逆!」
- 最終話「さらば!故郷の星」
- 6話「ほえろ!マシーン」
43話は、ブンがテロの連鎖を乗り越える、傑作回。劇中で絶対悪と規定しているメスサイドに対しても、(決裂した後とはいえ)交流 が持てないとは限らない、という所にもこっそり踏み込んでおり、野心的なエピソードともいえます。まあこの路線を進めると全て ひっくり返さなくてはならなくなるのでそこまでは期待していませんでしたが、単発エピソードとしても、評価できる1本。
最終話は、とにかく清水紘治(リー・ケフレン)の怪演が凄まじかった! 途中ぐだぐだになりましたが、あそこまでやってくれれば 大満足です。
6話は序盤の名エピソードであるバイク回。
次点でもう一つあげると、8話「父よ!母よ!妹よ」。単体としては傑作回なのですが、話にオチをつける後編といえる9話が酷かった ので、次点止まりに。9話はなぁ、引っ張るだけ引っ張って東京オリンピック見て終わりか! と(笑)
『フラッシュマン』は全編通してこの、“引っ張ったネタは全て外す”というのも残念だったところです(^^;
……手厳しめの総括になりましたが、率直な所、70〜80年代の作品の多くは、今日的な視点で真剣に見ると、こういう評価になると 思います。一部にミュータント的な傑作も紛れていますが、大体は、時代のマグマ的なパワーと、整合性はともかくネタとしては面白い、 的な楽しみ方になるのは、致し方ない所かと。特に、東映特撮のライダー・戦隊路線は、書いてなんぼ・作ってなんぼ、というものを求め られていたシリーズですし。
逆に、80年代作品にこういった評価をざっくり出来る程度に、10年・20年の蓄積を経て戦隊シリーズの構成が改善されている、 そのスピリットが連綿と続いた上で、人を楽しませる為の特撮ヒーロー物、が歩みを止める事なく向上心を持って作り続けられている、 その事の証左として捉えていいのではないかと、そんな事を思います。
- ★構成分析★
- 〔メインキャラ〕は、そのエピソードの中心になったキャラ。選定は筆者の視点に基づきます。
〔敵指揮官〕は、幹部の主な現場指揮回数。メスは幹部が直接作戦を計画する、というパターンは少ないので、主にメインで 獣戦士を操っているかどうか、を判断基準にしています(若干、記憶違いしている可能性もあり)。
〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。記憶と感想を 読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。自分の中で『フラッシュマン』を見て いたイメージの山谷を、目に見える形にしてみようと思ったもので、非常に私的な基準であるとご了承下さい。
話数 監督 脚本 メインキャラ 敵指揮官 備考 評 1 堀長文 曽田博久 ―― ―― 〔改造実験帝国メス、地球侵攻〕 ○ 2 堀長文 曽田博久 ―― ―― 〔フラッシュキング登場〕 − 3 山田稔 曽田博久 ジン 全員 − 4 東條昭平 曽田博久 ダイ 全員 ○ 5 東條昭平 曽田博久 サラ×ルー 全員 − 6 山田稔 曽田博久 バイク ネフェル ○ 7 山田稔 藤井邦夫 ブン ワンダ × 8 長石多可男 曽田博久 ―― ネフェル 〔時村一家、登場〕 ◎ 9 長石多可男 曽田博久 ―― ネフェル × 10 東條昭平 藤井邦夫 ダイ 全員 − 11 東條昭平 曽田博久 ルー ガルス 〔レー・ワンダ、ハイパー化〕 − 12 山田稔 曽田博久 ジン ワンダ − 13 山田稔 藤井邦夫 ジン×サラ ワンダ − 14 長石多可男 井上敏樹 ブン ネフェル − 15 長石多可男 曽田博久 ―― カウラー 〔サー・カウラー登場〕
〔フラッシュキング敗北〕◎ 16 東條昭平 曽田博久 サラ カウラー − 17 東條昭平 曽田博久 ジン カウラー − 18 山田稔 曽田博久 ―― カウラー 〔2号ロボ登場〕 − 19 山田稔 曽田博久 ジン カウラー × 20 長石多可男 藤井邦夫 ダイ ネフェル × 21 長石多可男 島田満 サラ 全員 − 22 東條昭平 藤井邦夫 ジン 全員 − 23 山田稔 曽田博久 サラ×ルー ネフェル − 24 長石多可男 曽田博久 ブン カウラー − 25 山田稔 照井啓司 ジン ワンダ × 26 東條昭平 曽田博久 ルー ネフェル − 27 長石多可男 井上敏樹 ダイ 全員 − 28 東條昭平 曽田博久 ―― ガルス 〔レー・ガルス死亡〕 ○ 29 東條昭平 曽田博久 ブン ワンダ 〔レー・ワンダ強化〕
〔時村一家再登場〕− 30 山田稔 曽田博久 ―― ネフェル 〔レー・ネフェル強化〕 ○ 31 山田稔 曽田博久 時村博士 ワンダ × 32 長石多可男 曽田博久 マグ 〔フラッシュマン強化〕 × 33 東條昭平 曽田博久 ジン カウラー − 34 長石多可男 藤井邦夫 ブン ネフェル − 35 東條昭平 井上敏樹 サラ×ルー ワンダ − 36 山田稔 曽田博久 ―― 全員 ○ 37 長石多可男 藤井邦夫 ダイ ネフェル × 38 長石多可男 井上敏樹 ジン カウラー − 39 山田稔 曽田博久 サラ ネフェル − 40 長石多可男 長石多可男 ジン ネフェル − 41 東條昭平 曽田博久 ダイ ワンダ − 42 東條昭平 曽田博久 サラ 全員 − 43 長石多可男 曽田博久 ブン
カウラー全員 〔サー・カウラー、メスに造反〕
〔ボー・ガルダン登場〕◎ 44 東條昭平 曽田博久 ―― 全員 〔デウス獣戦士登場〕
〔反フラッシュ現象発生〕× 45 東條昭平 曽田博久 ―― ワンダ 〔ウルク&キルト死亡〕 × 46 長石多可男 曽田博久 ―― ネフェル ○ 47 長石多可男 曽田博久 ―― ワンダ 〔レー・ワンダ死亡〕 × 48 東條昭平 曽田博久 ―― ネフェル 〔ボー・ガルダン死亡〕 − 49 東條昭平 曽田博久 ケフレン ケフレン 〔サー・カウラー死亡〕
〔ラー・デウス死亡〕○ 50 東條昭平 曽田博久 ケフレン ケフレン 〔改造実験帝国メス、壊滅〕 ○
(演出担当/東條昭平:19本 長石多可男:16本 山田稔:13本 堀長文:2本)
(脚本担当/曽田博久:36本 藤井邦夫:7本 井上敏樹:4本 島田満:1本 照井啓司:1本 長石多可男:1本)
メイン&準メイン回の配分は
〔赤:10 緑:6 青:6 黄:8 桃:5〕
若干サラが多く見えますが、単独メイン、と言っていい回は4回で、他はコンビでの回なので、それほど抜けているわけでもありません。 劇中通しては、ローリングバルカンのサーチ役だったりコスモソードの発射役だったりを初めに、その他もろもろ色々と贔屓されていますが。
その煽りを受ける形になったルーは、単独メイン回は2回、しかも最後が26話で、後半2クールでは単独メイン回無し、と、案の定 とはいえ、さすがにあんまりな扱い。やはりメスに寝返るべきだったのでは(おぃ)
リーダーは物語上の重要回でなんとなくスポットが当たる事が多い為の回数で、良くも悪くも正統派レッド。
キャラクターとドラマという点では、ダイ、ブンが、きちっと単独でのドラマが回数あって、得したポジションでしょうか。キャラが 立ったかどうかは別に。ダイは、いい話が割と揃う中、スミレちゃんエピソードがあれでしたが。若干、子供っぽい所を残し、感情をスト レートに表現できる2.5枚目ポジションという事で、後半の割と重要な台詞や傑作43話のメインが回ってきたブンが、エピソード的に はおいしい所を貰った感じ。
とはいえ、43話まで来ても、ブンでは無くても話が成立しただろう、というのが総括で記したような今作の大きな問題点であったと 言えます。
フラッシュマン5人以外では、判定がちょっと難しいですが
〔ケフレン:2 カウラー:1 マグ:1 時村博士:1 バイク:1〕
としました。
ラスト2話の主役は、間違いなくケフレン。
幹部の主な指揮回数は(個人の場合のみカウント)
〔ワンダ:10 ネフェル:14 ガルス:2 カウラー:8〕
後半の判断が難しいのと、記憶違いもあるかもで割と適当なので、ガルスが如何に悲惨かを見るだけの データだと思ってください(笑)
評点ですが、これは駄目だ……という回は
〔7,9,19,20,25,31,32,37,44,45,47〕
それぞれ、風船回、時村博士初登場後編、バラキ死亡回、スミレちゃん回1、ジン合体不能、プリズムエネルギー減退〜復活〜パワー アップの回、スミレちゃん回2、反フラッシュ現象回、ワンダ死亡回、となります。
単独で酷かったのは、風船・バラキ死亡・スミレちゃん・合体不能、のそれぞれ。
他は基本的に、その前で盛り上げたのに次が酷かったのでイメージが凄く悪い、というパターン。
●時村博士とタイムマシンの登場でフラッシュマンの過去に触れて盛り上げたのに東京オリンピックを見て帰ってきただけ
●妖獣士登場で折角盛り上がったのにフラッシュマンのパワーダウンと復活とパワーアップの流れが全てぐだぐだ
●カウラー反乱のクライマックス展開で盛り上がってきたと思ったら唐突すぎる反フラッシュ現象
●クライマックスで盛り上がっている真っ最中にタイムストップ3秒殺しとタイムマシンの二大トンデモ炸裂
『フラッシュマン』はとりあえず、山が持続しないというか、山が来た直後に限って、物凄い谷に突き落としてくる、というパターンが 多すぎました(笑)
割と面白かった回としては
〔1,4,6,28,30,36,46,49,50〕
初回、逆立ち回、バイク回、ガルス死亡回、ネフェルーラ登場回、黄金虫回、クライマックス展開。
地味なところでは、黄金虫回が、けっこう好きです。
名作としては
〔8,15,43〕
時村博士登場、カウラー登場、ブンがテロの連鎖を乗り越える&カウラー決起、です。
全体の星取りを見て振り返ると、(あくまで私個人の感想ですが)16話〜27話の間に○も◎もなく、×が3つ付いているのが、 シリーズできつかった所かなぁと。
カウラー登場で盛り上げた後に、その勢いを維持できなかった。具体的には、バラキ&2号ロボが、今ひとつ盛り上がらなかった。 ついでにそこで引いた伏線は後半、とても駄目な感じになった。せめてキャラクターを深めるエピソードが展開できれば良かったのですが そういう事もなく、この間にメス幹部とフラッシュマンの個人的な因縁も構築できなかった。
玩具絡みの構成はスポンサーとの関係もあるので難しいのですが、この辺りで何とか、面白くなるかはさておき時村一家のエピソードで も挟めれば良かったのになぁ、と思わずにいられません。この中盤に挟めなかった為に(その次点では時村一家を重要なキーパーソンに すると決めてなかった可能性、というのが一番高そうですが)、一家の再登場まで20話の間隔が空いてしまっているのも、最終的には 痛かった部分。
後付けで好き勝手言っているのは重々承知ですが、20話前後ぐらいで、時村一家それも特に二人の娘、と絡むようなエピソードを 入れたかった。ただしこの辺りは夏休み展開になるので、出来るだけ単発の軽めの話優先になりがち、という制作上の都合はあったとは 思われますが。
で、その時村一家の再登場は、ガルス死亡・妖獣士登場・プリズムエネルギー減退・フラッシュマンパワーアップ、と絡むわけですが、 この実質5連作が、詰め込みすぎになった結果、妖獣士やフラッシュマンのパワーアップによる敵味方の力関係などが非常に適当になって しまったのは、後半に向けて致命的でした。
こういった事を踏まえて、後年の作品になると、更に新ロボ出したり、追加戦士が出てきたり、となっているのは面白いところ。
しかしこれでまあ、進行形の作品の反省などしている場合もなく、スタッフみんな後半からは翌年の企画受けて設定立てて脚本書いて 撮影始めているのだから、よく連綿と続いたよなぁ、と。凄まじい制作環境が窺え、この時期にメイン張っていた人達は、それは途中で しばらく姿を消すよなぁ、とも思うわけであります。
以上、『超新星フラッシュマン』感想まとめでした。
80年代作品は突っ込むの前提で見るにしても、それでもかなりぐだぐだと言わざるを得ない作品でしたが、終盤は善玉サイドのキャラの 魅力不足を、カウラーとケフレンとネフェルさんが補ってくれて、なんとか完走する事が出来ました。
ありがとう、部長、そして専務。
(2012年1月27日)
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