ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『地球戦隊ファイブマン』 感想の、まとめ6(41話〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
- ◆第41話「怖いデート」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:藤井邦夫)
- 「何事も慎重で思慮深い数美も、これで少しは今風の脳天気な女の子になるさ」
派手な衣装に身を包んで地球人に偽装したドルドラとザザが、生活用品を買い出し中の数美にハニートラップを仕掛けて攪乱を図り…… なんか色々、バブルの残り香!
カメレザルギンが化けた軽薄そうな男・トオルからラブレターを受け取った数美は、 兄弟の母親代わりとして青春を喪失してしまうなんて勿体ない、といった内容にずどーーーんとクリティカルヒットを受けており、 それそのものはわからないでもないのですが、これまでずっと、 ファイブマンにおける母親代わりはアーサーだったわけで、急にそこに、 「長女だから」と数美をあてはめてしまうのは、あまりにも紋切り型で残念。
星川兄妹の生活とか、むしろアーサーに依存しきっているイメージですし、これまで特に数美がそこに関わる描写の強調も皆無であり、 学の秘密回(今回と同じ監督×脚本)の牧場娘・百合子の立ち位置をそのまま引っ張り出して当てはめた感じもあって、 数美の行動原理の根本をなす背景に、納得しがたいエピソードになってしまいました。
また、数美は長女ではありますが、兄弟の三番目(健の下)な事もあって、星川兄妹の中での「姉」としての存在感もあまり強くなく、 これが二番目(健の上)だったら、またちょっと印象が変わったかもですが。
いい年して洗濯物を押しつけるな、とマグマベースを飛び出した数美は、ハイテンションなトオルに連れ回されて、ドライブ、乗馬、 クルーザー、スキューバー、とコスプレ&デート回(クルーザーに乗っている時、あ、めぐみさんなら海に飛び込む流れだ、 と思って本当にすみません)。
そして学兄貴が、それを見ていた。
……学兄貴、もっと激しく狼狽して、父親目線で「叩っ切る!」とか言い出すのかと思ったら案外冷静にラブレターを受け止めていたのですが、 はしゃぐ数美の姿を(俺は、あいつにも知らず知らず苦労をかけていたんだな……!)といった視線で見守っており、これ全部、 自分の反省材料にしそうで、それはそれで重い。
一方、ドルドラさんはメドー様に今回の作戦の目的を「学たち兄弟の人間としての弱点を知り抜いているのは、 母親代わりの数美」と説明するのですが、上述したように無理矢理感があってノれません。
それはそれとして、トオルは目論み通りに「兄妹に優しすぎる事と、幽霊」こそが学の弱点と聞き出し、デートを終えた数美を、 何故か全部把握してバイクで迎えにくる学、普通に受け入れては駄目なのでは、数美(笑)
帰路の2人を襲撃したカメレザルは、お約束の透明化能力で数美を人質にとって学をいたぶるが、他の3人が駆け付け、形勢逆転。
トイレの掃除に不満をもらした文矢とレミは学兄さんから逆説教を受け、 キョロキョロ動くカメレオンの目からトオルに不審を抱いた数美だが、正体を現したカメレザルにより、再び人質にされてしまう。
ドルドラさんは謎の科学力で白塗りの幽霊怪人軍団を召喚し、情けない姿を見せる学だが、これは、幽霊に該当するのか……?(笑)
どちらかというと、怪物だったら怖くない! と殴り飛ばされるパターンな気がしてならず、 せめて台詞で恨み言でも口にしてくれれば幽霊感が出たのですが、エピソードのスポットがそこに無い事もあって、 学が本当に幽霊が怖いのかさえ微妙な見せ方になってしまい、貴重なシーンになるところだったのに、勿体ない使い方に。
囚われの数美は目を覚ますと、力技で牢屋を脱出して4人の窮地に駆け付けてドルドラたちを蹴散らし、強いぞ、 (奪い取った)スペース拳銃!!
「ドルドラ! カメレザルギン! よくも純真な乙女心を騙してくれたわね! もう容赦はしないわよ!」
変身から主題歌バトルとなり、今回はSFボールでフィニッシュ。ゴルリン33号が召喚されて、 巨大カメレザルはスターファイブのシールド投擲から、必殺攻撃でもなんでもない銃撃で射殺され、実に酷い扱い。
話の内容としては、“年の離れた長男の苦悩”を掘り下げた第35話の対といえるのですが、 そこでそのまま“世話焼き長女の苦労”を描くと第35話の主題となった学の特質が薄れてしまうのでコスプレデート回を融合した結果、 “アーサーの存在を無視した出来の悪い焼き直し回”になってしまい、残念でした。
- ◆第42話「カンフー魂」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- 話数的にそろそろ最後のメイン回という事でか、綺麗な刺繍の入ったカンフー道着に身を包んだレミが冒頭から立ち回りを見せる一方、 バルガイヤー艦内の掃除中に見知らぬ通路を発見したガロア艦長は、噴き出した謎のエネルギー波によって今日も宙を舞っていた。
すると中空に浮かぶメドー様の髪が朱色に、化粧がより凶悪なものへと変貌し、 基本的に「魔女」や「化け猫」を彷彿とさせるデザインでしたが、“美しさ”よりも“恐ろしさ”を前面に出した「夜叉」の形相へとグレードアップ。
さしものシュバリェも胡座をかいてはいられずに、自らカンフー道場へ殴り込んでレミを襲撃すると、レミが変身しようとした瞬間、 そのエネルギーがヒルアゲハギンに吸収されてしまい、傍らに控えていたギンガマンが、マフラー巻いた偽ファイブイエローに銀河○生!
「レミ、ファイブイエローに殺される気分は、どんなものかな。ふふふ」
偽黄がレミを崖から投げ落とすと、トドメのレーザーを撃ち込むシュバリェ、さすがシュバリエ。
続けて偽黄がゾーンに追われているように見せかけて残り4人を誘き寄せるとそのエネルギーをも吸い取り、 星川兄妹が全員変身不能な上に、そのエネルギーを借用した偽ファイブマンが誕生する、シリーズ史上でも屈指の大ピンチ。
「銀河皇帝メドー様! ファイブマンを使ってファイブマンを倒す! これこそが私の作戦だったのです!」
足下に火はついているものの引き続き有能さをこれでもかと見せつけるシュバリェにメドー様はにんまり笑い、絶体絶命となる4人だが、 ジープで突っ込んできたレミに助けられ、辛くも逃走。
だが5人がベースで傷を癒やしている間にアサルトライフル片手に偽ファイブマンは大暴れを繰り広げ、もういっそ、 突撃レポーターが再登場してインタビューを試みてほしい勢いでしたが、レミ回といえば八百屋、ギンガマン回といえば商店街、 という事で、商店街で八百屋の軒先をひっくり返す嫌がらせに収束し、どうしてそうなった(笑)
純粋な少女が偽物を指摘し、その声に懸命に立ち上がったレミは飛び蹴りの一発で偽赤を変身解除に持ち込むと残りの偽物を相手に激しい立ち回りを見せて、 これでもかの生アクション祭。
なお背後に、明らかにギャラリーの為の観客席が出来ています(笑)
偽ファイブマンが全員正体を暴かれると建物の影から顔を出すシュバリエだが、そこに、学たち4人が合流。
「ふん、変身できないおまえ達に、何ができる!」
「レミが教えてくれたさ。変身しなくても戦える事を!」
そう、戦士に必要なのは、鍛え上げた筋肉と、折れぬ精神(復讐心)!
そして数美は、敵のスペース拳銃を奪うのがちょっと癖になっていた。
5人が生身でギンガマンを叩きのめしたところで、ブレスのエネルギーチャージ完了。復活したファイブマンは、 SFボールで今までの恨みをたっぷり晴らして、フィニッシュ!
ゴルリン34号が召喚されて、巨大ヒルアゲハに立ち向かったファイブロボは超次元ソードを奪われてピンチに陥るが、 スーパーブラザージョイントからのスーパーベクトルパンチによりこれを抹殺するのであった。
基本、生アクションありきの内容で、そこに純粋な子供の眼差しと声援・大事なのは健全な精神と肉体、と繋げ、可も無く不可も無く、 といった出来でしたが、なんとなく生アクションにするのではなく、 必然としての「変身できない」を最大の危機と繋げてくるのは綺麗に収まりました……だけに、 偽ファイブマンの行動が宿場町のヤクザレベルに落ち着いてしまったのがちょっと残念(笑)
次回――なんだか随分と珍妙な……。
- ◆第43話「テレビの恋」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- バルガイヤーの奥底から響く、何かが呼吸するような音……シュバリェは掃除係のガロアを偵察に向かわせるが、 ガロアは今回も華麗に宙を舞う羽目に。
(確かに今のは何かの声……どうやらバルガイヤーには、まだ俺たちの知らぬ秘密が隠されているようだ)
一方、マグマベースにはテレビばかり見ている子供の母親から悩み相談がもたらされ、都市伝説、動く。
後の、
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「ねえちょっと聞いて、また起きたみたいよ、摩訶不思議事件」
「えー、巻き込まれたどうしよう。
−−−−
やばいよね」
「そんな時は、手の平に指で“M”って3回書いて、有明の月に向かって
−−−−−
有明の月に向かって呪文を唱えると、五人の魔法使いが助けてくれるそうじゃ」
「ありあけの月って
−−−−−
なに?」
「朝になっても出てる、月のことなんだって」
「ねえねえその呪文って、どんなんだっけ?」
−−−−−
「――マジカ・マジカ・マジカ」
『魔法戦隊マジレンジャー』Stage.4「魔人の王様〜マージ・ジルマ・マジ・ジンガ〜」(監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)より
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が凄く好きなのですが、「兄妹先生相談室」は完全に、「魔法110番」のはしりだ!(笑)
かくして、マジカル・ブラザーズ、ならぬマジカル・ティーチャーズが問題解決に動き出すが、 問題の良夫少年は文矢の呼びかけにも全く反応せずに『バトルフィーバーJ』を見続け……つまり、 「洗脳してもらえば、勉強好きの子になるわ」ですね!!
たぶん気のせいですが、上原正三オマージュ回だと思うと、悪魔TVによる洗脳作戦が、これ以上なく、腑に落ちます。
ドンゴロスの作り出した合身銀河闘士テラノTVギン(胴体にTVがはめこまれており、もはや完全にデストロン怪人)の能力により、 TVから胴体と手足の生えた悪魔TVが誕生するとTV好きの人々を追い駆け回し、 良夫を追いかける悪魔TVの声に聞き覚えがあるのですが……コロンさん?
文矢は悪魔TVに追いかけられる少年を助けるが、怒りの悪魔TVは目からビームを出して実力行使に訴え、 真っ赤なドレスに身を包んだ一つ目TVが少年を追い回す、色々な意味で悪魔的な映像がひたすら続きます。
「悪魔TVは誰も止められへんで!」
なお、対象者が軒並み逃げ出している事から、洗脳作戦は明らかに失敗。
当初はTVに追い回される良夫少年を囃し立てていた子供達だが、悪魔TVの放つビームを目の当たりにすると笑い事では無い事に気付き、 少年野球チームのユニフォームに紛れさす事で、良夫を救出。
「友達っていいもんだぜ」
TVよりも外で運動だ! というテーマの押しつけがましさは若干どうかと思うものの、文矢がそれらしくまとめて、ファイブマン合流。
悪魔TVは自爆し、黒の必殺ファイブテクターでテラノTVギンを撃破すると、ゴルリン35号召喚。 TV電波を用いた黒ゴルリン特別出演攻撃に苦戦するスターファイブだが、スーパー合体すると妨害電波を放って特別出演攻撃を封じ、 ジェットナックルからのスーパーベクトルパンチ!
実物でないものの、最近出番の無かった黒ゴルリンを使ってくれたのは、良かったです。
良夫少年は少年野球に参加するようになり、ナレーションさんが「TVは楽しいけど、見すぎはいけないね」 とバランスをアピールして綺麗にまとめて、つづく。
中盤以降、割と目立つようになっていた文矢ですが、話数的に最後と思われる単独メイン回が“誰でもいい”内容になってしまったのは残念で、 頂上手前の休憩所、といった感のある一本。
次回――ニュータウン小学校再建! そして逆襲のガロア!!
- ◆第44話「死闘ロボ戦」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
- ゾーンによる侵略初動で木っ葉微塵になったニュータウン小学校が再建され、 学の教え子たちはそれぞれが育てていたシドンの花の鉢植えを持って学校に集まり、星川兄妹はスーツでおめかし。
一方ガロア元艦長は、掃除中にバルガイヤー内部で発見した謎のエネルギーを用いて強化したゴルリン36号を出撃させ、 スーツ×ジープの強烈な組み合わせで出勤途中の星川兄妹に迫る巨大ブルドーザー!
そして、建設現場の重機を取り込んで誕生する、巨大ロボ・ビッグガロアン!!
「今銀河に新たなる伝説が誕生する。ビッグガロアンの力、見せてやる」
子供達が兄妹先生の到来を待つ中、強烈な砲撃はスターファイブを一蹴。SFロボで立ち向かうファイブマンだが、 ビッグガロアンのパワーはSFロボをも上回り、スーパーベクトルパンチをあっさり受け止めると、 もげる腕! 吹き飛ぶ頭! 崩れ落ちる胴体!
雄壮たるガロア復活を印象づける狙いもあってか、徹底的に破壊されたSFロボはむごたらしい生首を地面にさらし、完敗。
「ファイブマンの死体を確かめるまでは、勝ったとはいえんぞ」
シュバリェの挑発を受けたガロアはマグマベースの破壊に向かい、続けてアーサーが大ピンチ。
ところが……
「無い! マグマベースが無い」
すっかり所在の割れているマグマベースは忽然と姿を消しており、狼狽するガロアだが、なんとマグマベースは、宇宙に脱出していた!
「20年前、マグマベースはシドン星から地球まで、宇宙旅行をしてきたことを、忘れてもらっちゃ困るよ」
絶体絶命を切り抜けた大ファインプレーを明るく説明した直後に、どうして、 第1話の悲劇の回想をたっぷり入れますか(笑)
最終章を前に原点回帰、といった意図もあったのでしょうが落差に目眩がしてきます。
完全勝利の間際でアーサーにしてやられたガロアだが、兄妹先生の安否を気遣うパソコン通信を傍受し、星川兄妹を引きずり出す為、 ニュータウン小学校破壊を宣言。
しかしこんなこともあろうかと、再建したニュータウン小学校には宇宙脱出機能が!!
「残念だったなガロアくん! また会おうーーーーー!」
……ではなく、SFロボを欠いたまま、ガスタンクの上に仁王立ちするファイブマン。
「必ず出てくると思っていたぞ。馬鹿め! その甘さがおまえたちの最大の弱点なのだ!」
「果たしてそうかな。ここを突破してみろ!」
なにぶん立っている場所が立っている場所なので、ビッグガロアンの攻撃を誘い、 相討ち覚悟のガスタンク誘爆大作戦かと思ったのですがさすがにそんな事はなく、 ギリギリまでビッグガロアンを引きつけたファイブマンは至近距離からのアースカノンでコックピットをダイレクトアタック!
更に、怒りにかられたガロアを誘い込むと、頭上からマグマベースで圧殺!!
……だったら凄く面白かったのですが、それも回避され、アーサー操るマグマベースの集中攻撃によりビッグガロアンを沈め、これぞ、 星川流釣り野伏せ。
ちなみに、この短時間にアーサーが単独の大気圏突入と突破を行っているのですが、 もはや惑星破壊爆弾の一つや二つ仕込まれていても驚きませんアーサー。
なんとかバルガイヤーに帰還した元艦長は、敗れはしたがスーパーファイブロボ撃破の功績をメドー様に認められ、 再び火花を散らす初代艦長と元艦長、でつづく。
次回――グンサー復活! 生きていた両親?! そして、バルガイヤー突入!! の急展開で、敵組織のボス周辺に、 部下も知らない秘密があった……は曽田さんの好きなパターンですが、果たして、《スーパー戦隊》シリーズ一つの節目は、 如何なるクライマックスを迎えるのか。
- ◆第45話「敵基地突入」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
- 星川兄妹が不眠不休でSFロボの修理に励む一方、土俵際からの大逆転で艦長の座に返り咲いたガロアをこぞって持ち上げるギンテイジャーの面々だが、 一足先に打倒ファイブマンの切り札となる謎エネルギーを利用したシュバリェが、 銀河化石よりイワカセキギン(いわ/じめん)を誕生させる。
「ガロア、おまえがトドメを刺し損ねたファイブマンは、この俺、シュバリェが倒してみせる」
「なにぃ?!」
「――銀河にヒーローは、一人。ふっ」
立場が悪くなっても徹底してキザを貫き、あくまで銀帝軍のヒーローと自らを見立てるシュバリェの矜持は、仇役として実にいい味。
「シュバリエ、この星の長い歴史の中で、悪が栄えたためしはない!」
「ふっ、その歴史を今、造り替えてやるのだ」
どこまでも憎々しげかつ冴えた台詞回しでファイブマンとの決戦に望んだシュバリェは、 岩化石ギンの能力により鉄壁を誇る岩石生命体ロックマンを作り出し、その必殺攻撃“いしのなかにいる”により、ピンクが石化。
「みんな俺の戦いの記念碑になるのだ! 花ぐらい添えてやるぜ」
ロックマンにより桃が岩塊の中に投げ込まれると、石化した頭部が表面に浮かび上がる映像がなかなかにショッキングで、 これまで散々ファイブマンを苦しめてきたシュバリェ渾身の作戦として十分なインパクト(そしてもしかして、 後のあの人はこれのオマージュだったのか?)。
残った4人はテクターパンチでロックマンを粉砕……するが、なんとそれは即座に再生し、青黒黄も次々とテレポート失敗攻撃の犠牲に。
――これぞまさしく、銀河ヒーロー流・“勝手にお墓”返し!!
ただ一人残った学もロックマンに拘束されて風前の灯火のその時、地球に落下した謎の岩塊が学の窮地を救い、 その人型を思わせる塊の正体は、銀河の困った暴れん坊、グンサー(あく/かくとう)!
予告で見せる事により唐突感の減じるメタ力技でしたが……強引に解釈するなら、 シュバリェがバルガイヤーに銀河化石を引き寄せた際に、ついでに牽引されてしまったのでしょうか。
バールギンが倒された事で呪縛が弱まっていたのか、力尽くで石化から復活したグンサーは、 前回登場時に言い損ねた「おまえたちの両親は生きている」と衝撃の情報を伝え、友情パワーで学を援護。
「貴様いったい何者だ?!」
……そういえば、知らなかった。
「宇宙の暴れウルフ、グンサー!」
あまりにも違う芸風に、ペースを乱されそう、と判断したのか、シュバリェはパラボラ宇宙船に学を回収するが、グンサー、 ひとっ飛びで宇宙船の外壁に掴まった(笑)
「学、今伝えてやる。両親の事を……!」
暴れん坊・武器が棒・鬘と化粧の方向性・岩から復活・改心してからは頼れる仲間に…… となんだか孫悟空めいてきたグンサーが貼り付いているとは夢にも思わず、学を捕虜にしたシュバリエは高笑いでバルガイヤーへと帰還。
「最後のモニュメントは、やはりメドー様の御前で作ろうと思ってな」
ガロアらの前で勝利に酔い痴れるシュバリェだが、バルガイヤーに乗り込んだグンサーは次々と戦闘員を蹴散らし、やたらに活躍(笑)
更に、勢いよく謁見の間までズカズカと乗り込むも、一足遅れで学が岩の中に放り込まれてしまうと、 えいやっと学岩にチェーンを巻き付けて背負って逃走(笑)
第19−20話登場時の行動(実質小学生への暴力行為からレー・バラキ案件まで)があまりにもイメージの悪かったグンサー、 復活するや怒濤の大暴れにより悪いイメージを払拭、とかそういった段階を越えた別次元の面白さに到達してしまっているのですが、 思えばシリーズ枠消滅の可能性も取り沙汰されていた時期であり、デンジロボより約10年、 《スーパー戦隊》の一つの顔といえる巨大ロボを演じ続けてきた日下秀明さんのスペシャルタイムの意図もあったのかもしれません。
学岩を背負って脱出を試みるも謎の触手に掴まり追い詰められるグンサーだが、
「学、幸運を祈る!」
蹴った(笑)
果たして銀河のヒーローは誰だったのか……苦し紛れのひと蹴りはまさかの6ゾロクリティカルを叩き出し、ゴロゴロと転がった学岩は、 なんと例の穴の中に吸い込まれると、謎の溶解液を浴びた事で石碑コーティングが溶け、学復活。
辺りの様子から何かに気付き、変身したレッドが床を突き刺すと野太い男のような叫び声が響き渡り、 穴の中から弾き飛ばされたレッドは、必殺ファイブテクターにより岩化石ギンを撃破。そして、 居並ぶギンテイジャーの前で艦内の壁に向けて剣を投げつけると、崩れ落ちた内壁の下から、まるで生物の内臓のように脈打つ肉塊が!
「銀河戦艦バルガイヤーは、これ自体が、一つの巨大な生命体なんだ」
アイデアそのものは、某ラスボスの縮小版といった感もあり今ひとつの面白みでしたが(もう少し布石も欲しかったところですが、 これは当時の作劇の限界を見るところ)、明かされた正体の描写に『バトルフィーバーJ』の怪人製造カプセルを思い出して少し懐かしかったです。
「おまえ達は騙されていたんだ!」
自分たちが乗り回していたものの異様な姿におののくギンテイジャーは、再び赤が鼻息に吹き飛ばされたところで、メドー様にお伺い。
「メドー様、一体どういう事なのですか?!」
「おまえ達が一つの星を滅ぼした時、その星には、死のエキスが溢れる。バルガイヤーはそのエキスを密かに吸っていたのだ」
「我々はバルガイヤーの為に、星を滅ぼしてきたとおっしゃるのですか?!」
「そうだ。バルガイヤーを育てる為にだ。そして今、バルガイヤーは脱皮して、自ら大変身を遂げるのだ」
バルガイヤーが要塞モードで地表に“突き刺さって”いた理由が明らかとなり、バルガイヤーを発進させたメドー様は、地上に大攻勢。
「バルガイヤーは自らの力で地球を滅ぼす。そしてその暁にこそ……あはははは! あはははははは! あはははははははは!!」
爛々と瞳を輝かせたメドーは狂笑をあげ、その迫力に飲まれるギンテイジャー。
ナレーション「驚くべきバルガイヤーの正体。果たして、バルガイヤーはどうなるのか。そして、学とグンサーの運命は如何に」
とうとう、学と同列に扱われたぞグンサー! どういう扱いの良さなんだグンサー! でも、 次回予告で力強く殺されたぞグンサー!
- ◆第46話「父母の行方」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
- 迫り来るバルガイヤーによりニュータウン小学校が再び消し飛ぶかと思われたその時、子供達の育てていたシドンの花から花粉が舞うと、 それを浴びたバルガイヤーの中でメドー様が凄い顔で苦しみ出すのは、おお! という展開。
「あれは! あんなところにシドンの花が」
メドーが苦悶の声をあげると地球を瞬く間に蹂躙するかと思われたバルガイヤーは地表に墜落し、ゾーン幹部まるまる残った状態で、 バルガイヤーの正体判明により忠誠度大幅減の雰囲気・バルガイヤー直接攻撃が始まってギンテイジャー用済み感MAX、 でどう始末をつけていくのかと思ったら、意外な弱点を物語の始まりと繋げながら、ギンテイジャーが動くに足る状況に持ち込むのは、 実に鮮やかな流れ。
そして、傾いだ状態で地面に突き刺さったバルガイヤーから、枠線付きのメドー様が逆さまに虚空に映り…… あ、あれ? 配信始まっちゃってる?!
「ふふふふふ、遂にバレたか」
「誰だ?!」
「バルガイヤー」
そう、銀河に名だたるカリスマ、麗しの銀河皇帝メドー様の中の人は、中年の引きこもり男性(イメージ)だったのです!
「こんなものに騙されていたとは! こんなものに、我が人生の全てを懸けてしまったとは! 私の……私の人生はなんだったのだ?! …………銀河博士ドルドラ……いったい何をやってきたのだ!」
あまりにあまりな推しの正体を受け入れられないドルドラは、パニック状態で中の人に罵声を浴びせると座り込み、 この辺りはどうしてもアハメス様の二番煎じっぽくなってしまうところがありますが、 兜を投げ捨てると甲高く笑い続けながら髪を振り乱すのは、まさに、狂女、といった演出。
「ふふふ、おまえの悩む姿を見るのは忍びない。可愛いドルドラよ、今楽にしてやるぞ」
ドルドラに向けて艦内の触手が伸びると、思った以上に忠誠度の高かったザザがドルドラを助けようと駆け寄るが、 二人まとめて銀河エネルギーを注ぎ込まれ、合体銀河闘士バラドルギンが誕生する!
どうせならドルザザギンでも良かったのでは、と思いましたが(ザザ分は、ボディカラーに採用)、 長石監督らしい見せ方により凄惨さの中にどこか色気を漂わせていたドルドラが、 一瞬で無機質でメカニカルな姿へと変貌するギャップに加え、前頭部から薔薇が生えているのが操り人形感を増して、 非常にえげつない誕生シーン。
シドンの花を人食い花に変えろと命令を受けたバラドルは出撃し、天井裏に潜んで一部始終を目撃していた学はそれを止めようとするが、 その前にはビリオンが立ちはだかる。
「貴様の行く手に出口は無い。地球と人類の未来にも出口などないのだ!」
ドルドラの末路を目の当たりにした事で学との一騎打ちにこだわるのは納得のいく流れであり、台詞回しは相変わらず格好良く、 クール系ライバル剣士としてデザインも悪くないのですが、いったいビリオンには何が足りなかったのか…… ブルーか、ブルーが悪かったのか……?
「貴様等こそ、こんな化け物が神となる世界に、未来があると思っているのか?!」
「ふん! 俺は酒と剣に生きるのみさ」
酒かぁ!!
だいたい、酒に手を出す悪の幹部は碌な事にならないと相場が決まっているのですが、 実力はそこそこのビリオンが学を足止めしている頃、バラドルがデビル化したシドンの花が子供達を襲うが、 そこに駆け付ける青桃黒黄のファイブマン。
「早く、シドンの花を始末しろぉぉ!!」
ファイブマンの血を吸ってデビルシドンの花弁は赤く染まっていき、地面に突き刺さった状態で、ピクピク羽を動かす戦艦、 はなかなか珍しい画(笑)
ビリオンに追い詰められていた学は墜落の衝撃で触手の拘束を逃れた銀河ウルフに助けられ、 ニュータウン小学校ではシドンの花の最後の一鉢を手に駆け出した教え子の少年をバラドルが追い、少年の窮地を救ったのは、 スピンキック学。
「タツヤとシドンの花には、指一本触れさせんぞ!」
辛うじて教え子を救う学だが、バラドルの蔦に拘束されたところに迫る、ビリオン必殺の白刃!
――だがその時、グンサーが友情カバーリングでその一撃を受けると、「両親の事を伝えるまでは死ねん!」と、 土手っ腹と口の端から血を流しながらもビリオンを殴り飛ばし、学を解放すると、崖から落下。
学、そして合流した星川兄妹は瀕死のグンサーを助け起こし、グンサーが「銀河系P16惑星」で星川夫妻と出会い命を救われるも、 夫妻が開発していたスターファイブに目がくらみ、それを奪って逃走した大変駄目な過去を告白される。
「俺は悪い男だ……」
そうですね!
「グンサー、そのスターファイブのお陰で、俺たちは助かったんだ」
「……そう言って貰えると嬉しい。……祈ってる。両親と、会える日の来る事を」
直観と欲望で動きすぎのグンサー、最終的には、無法者が惚れた兄貴分の為に命を懸け、自らの仁義を通して散るという、 銀河任侠な感じで、死亡。
基本的に大変困った人をなんかいい感じにまとめようとして、このロジックが出てくるのが東映のDNAといったところでありましょうか。
……それにしても、地球帰還の為の宇宙船を、戦闘ロボットとして作成していた星川夫妻、 シドン星の悲劇とか、ゾーンの支配する宇宙の危険度の高さとか、妻を取り戻すまでの大冒険とか、 スターファイブ完成にこぎ着けるまでに人格が変わっても仕方のないような事が色々あったのでしょうが、今頃、銀河系P16惑星で、 現地で確保できる生体パーツをメインにした宇宙戦艦とか作り出していないか心配です(つまり、メドー様のモデル=星川緑説)。
「……ありがとう。……ありがとう、グンサー……」
そんな大宇宙の新たな悪魔を解き放ってしまったかもしれないが、己の過ちを認め、 命がけでレー・バラキ案件を克服したグンサーの生き様に星川兄妹は惜別の感謝を述べ、そこにしつこく現れるビリオンとバラドルギン。
「……グンサーも一人じゃさびしかろう。おまえたちもグンサーの側へすぐに送ってやるぜ」
「グンサーの死は無駄にはしないぞ。この星に生きとし生けるもの、花一輪さえ守り抜いてみせる! ――ファイブマン!」
ここの啖呵は大変格好良く決まり(「花」の意味づけの重さがまさに『ファイブマン』なので)、5人は変身。 それを子供たちが目撃するが、特に正体を隠していた記憶もないので、これはまあ、なんとなくレベルのフレーバー。
赤はビリオンと激しい一騎打ちを繰り広げ、残り4人はその背後で蔦につるされ、前回今回と、青以下の4人の扱いが悲惨ですが、 何もかもグンサーが悪い。
今日は絶好調のビリオンだが、炸裂する星川流スピンキックに吹き飛び、事ここに及んでも特に因縁はないので、 命のやり取りの真っ最中に笑いながら酒瓶を呷る剣鬼の姿を徹底する事で、盛り上がりを捏造(笑)
熾烈な死闘は続き、不意にマントを外すと赤の視界を奪う必殺の奇襲戦法を放つビリオンだが、 振り下ろした剣はファイブレッドの骨を断つには至らず、逆にその腹部を赤の剣が貫く!
ビリオンが赤に巻き付けたマントを外すと、赤はファイブテクターを装備する事でビリオンの斬撃をギリギリで受け止めていた! のは、 互いの小道具を活かして大変格好良く、因縁は薄いなりに、魅せる一騎打ちとなりました。
「レッドめ……」
致命傷を受けながらもなお戦意を喪失しないビリオンだが、レッド渾身の飛翔斬りがその剣ごと土手っ腹を貫通し、 己の折れた剣を目にするビリオン、の後に頭上に三日月月のカットが挟まるのが、実に長石多可男。
「いい月だぜ…………酒を!」
インパクトのある断末魔でギンテイブルーが散ると、残ったバラドルはゴルリンに吸収されて巨大化し、 修理の終わったスターファイブが到着。なんだか、いい話風にグンサーとの出会いを振り返ると、 結界ビームからの二丁拳銃でさくっと撃破され、ギンテイイエロー&パープルも、地球で最期を遂げるのだった。
本家本元“勝手にお墓”に手を合わせた5人は、銀河系P16惑星に思いを馳せ……急げ星川兄妹、 真のラスボスは父親かもしれない!! いよいよ地球の運命を賭けた決戦の気運が高まる中、シドンの花の鉢植えを受け取って、つづく。
前回ラストの時点では、ゾーンの幹部が残りすぎてどうなる事かと思われたのですが、 幹部3人&ゲストキャラを1エピソードでまとめて退場させる、まさかの離れ業。
その上で、〔序盤(ドルドラ&ザザ)−中盤(グンサー)−終盤(ビリオン)〕と、 退場キャラのクライマックスを三つに分ける事で全体にバランス良く緩急をつけてみせたのが、お見事。
結局、渡辺脚本回(第40話)の要素は拾われなかったビリオンの最期ですが、 第40話を拾うならビリオンを合身銀河闘士にする方がふさわしく、しかし同じエピソードに詰め込むのならば、 ビリオンにはそのまま一騎打ち、ドルドラはじっくり苦悶を描いてからザザとセットで処理、の方が画として面白いのは納得で、 この辺りは戦隊シリーズの難しいところでありましょうか。
ドンゴロス辺りはさすがに雑になりそうな気配濃厚ですが、残りメンバーとの決着を、どう盛り上げてくるのか期待したいです。
次回――空はひび割れ太陽は燃え尽き、ヒーローになる時、それは今。
- ◆第47話「超獣大脱皮」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- メドー長官は、スポンサー確保の為に作られた虚像に過ぎなかった!
驚愕の真実に動揺するギンテイジャーの前に姿を見せたのは長年にわたり、 生配信・Instagram・フェイスブック・Twitterの全てにおいて、メドー長官を完璧に演じ続けていたバルガイヤー総司令!
今まで注ぎ込んできたグッズ代で高級別荘地に土地ごと豪邸が買える事を知ったドルドラとザザは揃って田舎に帰り、 やけ酒を呷り続けたビリオンは病院に運ばれ、戦力の激減したギンテイジャーは、果たして夢の武道館に辿り着く事ができるのか?!
見所は、自分でカウントダウンを始めるバルガイヤー総司令 (CV:加藤精三)。
こんな土壇場で、面白悪役ポイントを稼がないで下さい!!
一方、グンサーの遺した言葉を頼りに銀河系P16惑星に通信を送る星川兄妹の必死の呼びかけを、 遠く宇宙の彼方で生き延びていた両親がキャッチ。
「通じたんですね! 20年ぶりに、あの子たちと……!」
「……うん!」
だがそれも束の間、蠢動するバルガイヤーの生み出したオーロラによる通信障害でか細い糸は途切れてしまい、 バルガイヤーは遂に脱皮の第一段階をスタート。
「あと二時間――四段階を経て、銀河超獣バルガイヤーとなる」
その最終段階において、脱皮を完成させるエネルギーとなる最高極上の死のエキスを求めるバルガイヤーは、 ファイブマンの死を厳命してシュバリェとガロアを出撃させ、いよいよ始まるギンテイジャーとの最終決戦!
「二時間以内に決着をつけねばならん。それが出来るのは、銀河のヒーロー、シュバリェ!」
「銀河戦隊!」
「「「「「ギンガマン!!」」」」」
まさか、クライマックスまで使われるとは……(笑)
「ふん、カッコばかりつけやがって!」
こちらはもはや、バツラー兵しか従うものの居ないガロアも剣を掲げ、挟み込まれる形になった学たちは変身。
「レッド! 勝負!」
せめておいしいところを持っていこうとするガロアだが……
「待てぇ! レッドの相手はこの俺だ! ガロア、貴様には雑魚を任せたぜ!」
と・ら・れ・た。
古式に則り宿敵強奪がまたも発動してガロアは青桃黒黄の相手をする事となり、 ドンゴロスが艦内でしたたり落ちる体液を必死に集める中、脱皮の第二段階に入ったバルガイヤーは巨大な繭に包まれる。
一方、この20年の間、泥水をすすり血の涙を流し、復讐の為に生きてきたのは星川兄妹ばかりではなかった! バルガイヤーについて情報を集めていたらしい星川夫妻は懸命に地球への呼びかけを続き、 星川家の両親が“ただ生きていた”だけではなく、“キャラクターとして20年間を生き続けてきた”ならば、 打倒ゾーンの為に出来る事をしていた、のは納得のいく流れで綺麗なピースのはまり方。
「シュバリェ! あと1時間だぞー!」
「おまえこそ! 雑魚を相手に何を手間取っているのだ!」
大乱戦の中で脱皮は第三段階へと進み、いがみ合っている二人のやり取りが、 全くそんな意図は無いのに何かの拍子にコンビめいてしまうの、好き(笑)
ガロア艦長は、銀河メンコ流ワシゴリラ譲りの大風車剣で青桃黒黄を吹き飛ばし、赤はギンガマンの連携攻撃に苦しみ、 クライマックス一つ手前、怪人不在で集団戦を見せる形で、ギンガマンがまさかまさかの大活躍(笑)
ここまで来ると、むしろ後年よく、タイトルに『ギンガマン』が採用されたなと思うレベルです。
「あと30分! なんとしても脱皮を食い止めねば!」
一気に畳みに入った今作ですが、劇中でもバルガイヤー脱皮へのタイムリミットサスペンスを持ち込む事により、 メタ的なスピード感と物語内部のスピード感のバランスを取る事で、盛り上がりをブーストするのが、なかなかに巧妙。
弟妹の苦戦に気を取られた赤にギンガコンビネーションが炸裂するが、その勢いを逆に利用した赤は不意を突いてガロアに斬り掛かり、 兜の角を落とされたガロアは、戦線離脱。体制を整え直したファイブマンはギンガマンを5vs5で撃破し、
「「「「「シュバリぇ様……さよなら、さよならーーー!!」」」」」
末期の台詞まであったぞギンガマン(笑)
「おのれぇぇぇ!」
残ったシュバリェは黒ゴルリンを召喚し、ファイブロボ発進。赤はシュバリェにチェーンデスマッチを挑まれて一騎打ちとなり、 赤vsシュバリェ、青桃黒黄&アーサーvs黒ゴルリン、の戦いが並行して描かれて、この局面でもスキップを踏む黒ゴルリン。
「死のエキスを……この世で最高極上の死のエキスを……」
相手が後半戦を引っ張ったシュバリェとはいえ、2話続けての一騎打ちの構図で盛り上げるのは難しいという判断だったのか、 タイムリミットサスペンスと巨大戦同時進行が掛け合わされ、結果的に、ラストで正攻法の一騎打ちが丹念に描かれたビリオン、 大変ミラクルな扱いとなりました!
「倒す! 必ず貴様を倒す! 勝負は1秒あれば、決まるのだ!!」
ラスボス自らのカウントダウンをBGM代わりに切り結ぶ赤と敵最高幹部という極めて稀な状況設定となり、 SFロボはダブルベクトルパンチで黒ゴルリンを撃破。
そしてカウントダウンの終わった時――Vソード縦一閃を受けて散ったのは、追加戦士ギンテイシルバー。
ファイブマンを散々に苦しめてきた初代艦長シュバリェは壮絶な最期を遂げ、バルガイヤーの完全脱皮は防がれたのか?! そう思われた時、バルガイヤーはシュバリェの命を吸い取る事で、最後のエネルギーを手に入れてしまう!
「愚か者! この世で最高極上の死のエキスといえば、それはシュバリェの命だったのだ! 銀河で数多くの殺戮を繰り返してきた、 シュバリェの全身は、数多の生命体の血に染まっている。その血の染み込んだ体が、持てる力の全てを使い切って倒れた時、 その時の死のエキスこそ、私の求めていたものなのだ」
ファイブマンが敗北してバルガイヤー超進化、は無いとするとシュバリェが……とはなりますが、何故シュバリェなのかといえば、 それはゾーンの侵略活動の副次的要素として、シュバリェそのものが超一級の呪物と化していたのだ、は納得の流れ。
「ふふ……ふふふふふふ……くくくくくく……シュバリェは死んだ! 栄光のバルガイヤー艦長は、 このガロアをおいて他にはなーーーい! あーっははははは! あーはーはっはははは!!」
この顛末に膝を付いたガロアはショックを受けているのかと思いきや高笑いを始め、 己が生け贄としても出来損ないだった事も理解できない様子で以前と同様の価値観にしがみつき、 事態の推移から完全に置いていかれている感じなのですが大丈夫なのかガロア?! 一応 、学兄さんと一番因縁のあるのは貴方なんですよ艦長?!
ナレーション「果たしてファイブマンは、地球と銀河の平和を守り抜く事が出来るのであろうか」
脱皮を果たした銀河超獣バルガイヤー(名前格好いい)のシルエットが浮かび上がる中、 銀河系P16惑星からは星川夫妻が地球へ向けて必死の呼びかけを続けていた……
「通じてくれ…………どうしても、これだけは伝なくてはならないんだ!」
「学! 健! 数美! 応えて! 文矢! レミ!」
両親が伝えたいものとはなにか、ガロア艦長に割かれる尺は残っているのか、そして、マックスマグマの出番はあるのか?! 次回――最終回、「「「「「五人の愛が、銀河を守る!」」」」」。
- ◆第48話「星への旅立ち」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
- 「銀河超獣バルガイヤー!」
バルガイヤーは、腹部に巨大な悪鬼の顔めいた意匠の入った、植物と昆虫をかけあわせたような巨大生物へと変貌し、 背中の六枚羽が広げた花弁のようにも見えるのが秀逸。
「今こそ1000個目の星地球も滅ぼし、銀河の神とならん!」
「行けー! 銀河戦艦バルガイヤー!」
あくまでも「戦艦」と呼ぶガロアは、完全に状況に取り残されて自らの価値観にしがみつく人物として描かれ、 最終回まで生き残った上でちょっと酷い扱いになりましたが、この狭小さと傲慢さこそがガロアの器の限界でありましょうか。
銀河超獣バルガイヤーは、中空に浮かびながら大破壊を開始し、灰燼と化していく市街地。
子供たちの声援を受けながら立ち向かうスーパーファイブロボは、飛行しながらSFロボビームを放つも、 超獣が動くだけで巻き起こる突風に敢えなく吹き飛ばされ、空中を滑るように動く巨大生物、風でもみくちゃにされる巨大ロボ、 と最終回にしてこれまでになかなか無い画を入れてきます。
「あの子たちはきっと戦ってるんだ……命の限り連絡を取り続けるんだ!」
P16惑星では星川夫妻が賢明に地球への呼びかけを続け、第1話もかなり、 星川博士役の俳優(三ツ木清隆さん)への信頼が見える演出になっていましたが、 ここでも“遠い星で両親も一緒に戦っている”空気をしっかりと出して、物語を引き締めてくれました(ちなみに加齢は、口ひげで表現)。
市街地を蹂躙した銀河超獣バルガイヤーはマグマベースに迫り……今遂に、マックス・クロス!
……マックス・クロス!(涙)
だが第29話以来の登場となったマックスマグマの一斉射撃はバルガイヤーに全く通用せず、マックス・クロス……!
銀河超獣バルガイヤーの脅威を示すものとして、これ以上ない効果を上げてはいるのですが、18話ぶり2回目の登場にして、 何も出来ないまま腕のもげ落ちるマックスマグマの姿に、全銀河が泣いた。
最強最悪のラスボス登場・最強ロボ敗北・基地壊滅、のイベントが同時進行で発生していき、マグマベースが崩壊の危機に陥ったその時、 P16惑星との通信が奇跡的に回復。そして、シドンの花こそが切り札と伝えられるが…… その詳細に触れる前に再び通信は切断されてしまう。
「……シドンの花があるでしょうか」
「……あるさ。……私たち一家の思い出の花、私たちの子供なら、地球でもきっと、育てている筈だよ」
物語の開幕を告げた希望と絶望の象徴にして、断ち切られた家族の思い出を繋ぐものでもあったシドンの花が最後のキーアイテムとなるのは美しく、 更にそれが、親から子(星川学)、星川学から教え子達へ、と絆のバトンになっていた事で、 “ヒーローから魂を託される者”にして“未来へ向けて花を育てる者”としての子供達が自然とフレームに入ってくるのは、実に鮮やか。
ファイブマンは、シドンの花の鉢植えを手に超獣から逃げ回っていたタツヤ少年を助け、 崖から落下した鉢植えはメロディタクトでミラクルキャッチ。
「君たちが、真心こめて育ててくれたこの花で、必ず世界を、いや、銀河を守り抜いてみせる!」
そして再び、子供達からヒーローへとバトンは巡り、その心に応えるべく、ファイブマンは何度だって立ち上がる!
5人は半壊したマックスマグマに乗り込み、そう……今こそ、人間大砲ぉぉぉぉぉ!!
46センチ砲で5人が次々とバルガイヤーに打ち込まれたら伏線の回収としては完璧だったのですがそんな事はなく、 執拗にシドンの花を狙うバルガイヤーの攻撃でマックスマグマの首がもげ、上半身が千切れ飛ぶ中、 その爆炎に紛れて分離したSFロボでバルガイヤー内部へと特攻を仕掛け……マックスマグマ、空前絶後の尊い犠牲でした。
「行けー! バルガイヤー! 銀河が俺を待っているー! あっはっはははは!」
ファイブマンが艦内に乗り込むと、そこではガロアが高笑いをあげており、この状況でブリッジまで辿り着いたガロア、 相当凄いのでは(笑)
「やはり艦長の椅子の座り心地は素晴らしい! 我こそ無敵バルガイヤーの真の艦長だー! あーっははは! あーはっ――ファイブマン?! バルガイヤーは渡さんぞ! バルガイヤーは儂のものだ!」
理解を絶する出来事を前に半ば狂気に陥っているという事なのか、ガロアはひたすら、偽りの栄光、 偽りの玉座に固執する人物として描かれ(ガロアはガロアなりに、忠誠心を持って会社に尽くしていたら、 一番偉い人から社員まとめてリストラされたような立場ではあり、脳の配線がショートしてしまったニュアンスは入っていそう)、 これは最終的に、バルガイヤー――そしてゾーンの落としどころの補助線となる事に。
脱皮完成時に溶かされたとかで処理されるかと思ったドンゴロスは艦内の金庫を漁る火事場泥棒の真っ最中で、これはこれで、おいしい(笑)
もはや現実を見失っているガロアを一蹴したファイブマンは、艦橋の更に奥で、クリスタルの棺に眠る女性を発見。
「?! 銀河皇帝メドー様!」
追いすがるガロアもそれを認めて棺に駆け寄り、画面の都合でこれしか無かったのかもですが、棺を挟んだガロアと赤が、 仲間みたいな距離感になっているのは、ちょっと変なシーンになってしまいました(笑)
棺の中に眠るメドーと瓜二つの女性にレッドが近付いた時、その手に持ったシドンの花に反応して女性の生き霊が浮かび上がり、 その正体は、かつてバルガイヤーからしつこく求愛を受けるも拒絶した末に、死を遂げた女性メドー(回想シーンでは、 バルガイヤーに追いかけられた末に、崖から転落死)。
バルガイヤーはメドーの亡骸を自らの体内に安置・保存すると、その似姿を銀帝軍ゾーンの首魁に据え、 自ら“私の愛するメドーが妻として銀河皇帝だったら”ロールプレイを延々と続けていた、 超弩級の変態だったのだ!!
……凄いぞ! ラスト2話だけで、バルガイヤーが異次元の面白さに到達してしまったぞ?!
「私をバルガイヤーから出して下さい」
生前のメドーが花冠としていたシドンの花がメドーの意志に反応すると、閃光がバルがイヤーのコアに突き刺さり…… 以前にシドンの花に反応してメドー様(バルガイヤー)が苦しんでいたのは、同様の現象が弱いレベルで起こっていたと解釈できそうでしょうか。
……ちょっと気になるのは、星川博士がこの、伝説級と思われる過去にどうやって辿り着いたかなのですが、 これは、もしかして、あの「信頼ある伝説筋」案件(※独自の研究です)。
「おのれぇ……! メドーが! 私のメドーがぁ!!」
致命的なスキャンダル発覚により武道館目前で大炎上したバルガイヤーの呪縛から解放され、 時の流れを取り戻したメドーの亡骸が棺の中で朽ち果てていく映像が容赦ないですが、花と髑髏、 にはヴァニタス(虚栄)の意が込められていたのかもしれず、ガロアがその棺の中に転がり落ちて最期を迎えるのは、象徴的な結末に。
「今だ! 今こそバルガイヤーにトドメを刺すんだ!」
艦内から脱出したファイブマンはSFロボに乗り込むと、失った青春の痛みに藻掻き苦しむバルガイヤー目がけて突撃。 奇跡の絆で結ばれた熱い熱い炎の光球となってバルガイヤーを貫き……
ラスボスの敗因:失恋。
取り残されたガロアは艦長の椅子に、ドンゴロスは札束に、それぞれ執着しながら崩壊するバルガイヤーと運命を共にし…… 今作における“悪”とは何か、といえば、ストレートに「死(をもたらすもの)」であったのですが (故に殺戮を司ってきたシュバリェは死の供物となり、バルガイヤーは自らの中に死を抱えていた事が明らかになる)、 そのバルガイヤーを含めて、個々のキャラクターの落としどころとしては、個人の執着に取り憑かれて滅びる形に。
バルガイヤーは妄執の愛に、ガロアは栄誉に、ドンゴロスは金銭に、ドルドラは恐らく名声に、ザザはドルドラへの忠誠に、 ビリオンは剣と酒に、シュバリェは銀帝軍のヒーローである事に……それが物語の積み重ねとして成立していたかといえば、 作品自体の迷走も影響して部分部分で不足していたのは残念でしたが、最終盤かなり駆け足だった割には、 軍団の瓦解としては一定の満足いく形になってくれたのは良かったです。
……最初から最後まで、一番ブレなかったのはドンゴロスでしょうか(笑)
「「「「「やった!」」」」」
「父さん、母さん! 銀河の平和を守り抜きましたよ」
マックスマグマの屍を踏み越えてファイブマンは強大無比の銀帝軍ゾーンに勝利を収め、両親との再会、 そしてゾーンによって滅ぼされた星に豊かな自然を取り戻す為に、地球を離れる事に。
「別れるのは辛いけど、僕たち平気です!」
「先生たちは今度は、銀河の大勢の子供たちの先生になって下さい」
今、兄妹先生は地球の都市伝説から、銀河の伝説へ!
「ありがとうみんな。ゾーンに滅ぼされた星に、このシドンの花を、ここみたいに沢山咲かせてみせるからね。 ……そしてこの地球みたいに、美しい星に甦らせるんだ」
「綺麗な花がいっぱい!」
「立派な先生になるからね」
「みんなも、算数の勉強、頑張るのよ」
「銀河に居ても、地球を見守ってるからな」
「泣かないで。みんな泣かないで。さあみんな、元気に歌を歌おう。ね!」
レミの言葉からEDに入るのかと思ったら、「仰げば尊し」に繋げて、兄妹先生の地球(戦隊)からの卒業式、という形でしんみり。
そして、5人&アーサーの乗り込んだスターキャリアーの離陸にEDがかかってスタッフロールが流れ始め、いざ、 銀河系P16惑星へと飛び立つ星川兄妹。P16惑星では、子供達を待つ両親の姿が描かれ、かつて、 「子供だけでどこまで飛べるやら」と嘲笑われた星川家の子供達が、アーサーG6に育てられて地球で立派に成長し、地球を守り、 ゾーンを倒し、今度は両親を迎えに宇宙へ飛び立つ、と第1話と最終話が繋がる美しい着地で、おわり。
今作はとにかく第1話の印象が強烈で、SF、そして1年間の大河ストーリーの導入として抜群の出来の良さだったのですが、 EDで映像が流れるなど、第1話と最終回を繋げる意識が明確にあったのは、嬉しかったところ。
個人的にはパイロット版担当の続いていた長石監督で最終回を見たかった気持ちはありますが、 80年代後半の《スーパー戦隊》を支えた両雄、長石−東條のバトンで(概念としての)“80年代戦隊”は幕を閉じる事となり、 スタッフワークでいうと、結局この時期に最終回担当の回ってこなかった長石監督が、 90年代の《スーパー戦隊》復帰後に逆に最終回職人のポジションになるのは、少々面白いところです。
ざっくりとした作品の総評としては、『ライブマン』を越えるには至らず“谷間の作品”の印象は払拭できなかったものの、 道中の激しい乱気流に揉まれながらも爽やかな未来志向が貫かれての美しい着地に辿り着いたのは、好評価。終わりよければに加え、 ラスト2話、バルガイヤー総司令が面白悪役ポイントを大きく稼ぎ出したのが、ミラクル(笑)
先に、「今作における“悪”とは何か、といえば、ストレートに「死(をもたらすもの)」」と触れましたが、 では対するファイブマンが象徴していたものは何かといえば「再生(未来)」であり、 20年前の悲劇に端を発する強烈な復讐心を原動力にしつつも、亡き(と思われていた)両親の遺志を同時に継ぐ事で、 常に戦いのその先、ゾーンを倒した銀河に豊かな自然を取り戻す、未来への目的を強く持っていたのが、 ファイブマンを貫く芯として良かったです。
鈴木−曽田体制の集大成といえる『ライブマン』で“戦争”と“青春”に一区切りをつけたものの、前作『ターボレンジャー』では、 最終的に“戦争の生んだ亡霊”の抱えた怨念がヒーロー側と釣り合いが取れなくなってしまったのですが、 今作ではゾーンのもたらす「死」に対し、ファイブマンが「再生」のテーゼを強く突きつけ続ける事により、 絶望視された両親の生存を勝ち取り、結果的に“80年代戦隊”として『フラッシュマン』の精算を為しえる事となったのは、 星川兄妹の持つ徹底した未来志向の賜物であったのかな、と。
そしてそれは、「教師」という星川兄妹の職業に深くリンクし……実際に物語を動かす中では短所も出てしまった設定ですが、 『ターボ』で上手くいかなかった“未来への意識”を、主人公たちを受け継ぎ伝える者とする事で成立させたのは、 最終的な着地点と綺麗に繋がり、紆余曲折はありましたが、時間と空間のスケール感を併せ持った、良いラストでした。
80年代戦隊作劇の爛熟と限界を共に抱えた今作の苦闘は、 次作『ジェットマン』において《スーパー戦隊》の新たな時代の幕開けに繋がる事になりますが、死から再生へ、地球から宇宙へ、 そして今日(大人)から明日(子供)へ、劇中においても、メタ的な位置づけにおいても、 “架け橋のヒーロー”であったかな、と思う次第です。
キャラクターの話など別項で多少付け加えるかもしれませんが、以上ひとまず、『地球戦隊ファイブマン』感想、長々とお付き合い、 ありがとうございました!
(2024年11月5日)
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