■『地球戦隊ファイブマン』感想まとめ5■


“戦うことが愛ならば
君のために戦い続けるだろう”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『地球戦隊ファイブマン』 感想の、まとめ5(33話〜40話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第33話「必殺裏返し」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「何の真似だ?!」
 「予約したのさ」
 「予約?」
 「艦長の椅子、そろそろ返して貰えそうなのでな」
 シュバリェに挑発されたガロアは憤然と艦長の椅子に座り込むが……なにぶん予告で宙を舞っていたので、風前の灯火……!
 遅々として進まない地球侵略、上司からの厳しい視線、厭味な前任者の出現、と焦るガロアは、 空と陸の王者を合身させてジュウオウ……もといゴリワシギンを生み出そうとするが、合身フランケンカプセル(というらしい) の扱いに失敗し、爆発と共に生み出されたのは、銀河闘士が前後でくっついた、これはこれで強そうなタイプ違いのゴリワシギン。
 紫「生兵法は大怪我の元」
 赤「ゴリワシいうより、ほとんどゴリ押しでんな」
 青「……一体あれで、何が出来るというんだろう」
 皆のツッコミがきつい、というか、生暖かい……まあそれはそれとして、 “キザな強敵”ポジションを完全に失った銀河剣士は、新しい芸風を募集中です!
 とにもかくにも出撃したゴリワシは、艦長にどやされ、シュバリェに笑われ、裏と表で主導権争いを続けてグルグル回っている内に、 回転暴風殺法に覚醒(笑)
 電話ボックスが宙を舞うのはなかなかの迫力で、現場に居合わせた星川兄妹はゴリワシに立ち向かうが、 前後に死角なしの思わぬ強さに一時撤退を余儀なくされてしまう。
 「ガロア艦長、瓢箪から駒とはよく言ったものだな」
 「とんでもございません! 断じてあれはまぐれではありませんぞ! 私の才能が一気に花開き、遂にここに、 究極の裏表合身銀河闘士が完成したのであります!」
 「ふん、嘘つけ」
 いちいち突っかかるシュバリェがちょっと楽しそう(笑)
 一気に攻勢に出ようとするガロア艦長だが、ゴリワシ対策に頭を悩ませていた学は、メンコを見てひらめキーングすると、 ゴリワシにメンコで勝負を挑む。
 「兄貴、どういうつもりだ?」
 ……そ、蘇生の後遺症かもですね。
 ところが、自らのアイデンティティは裏にあるのか表にあるのかゴリラが表でワシが裏なのかワシが表でゴリラが裏なのか貼って貼られて貼り返されて裏は表で表は裏で裏の裏は表なのか、 裏表をひっくり返す事に病的に執着するゴリワシは、学の目論み通りに、メンコに夢中になってしまう。
 「すっかりメンコの魅力に取り憑かれたわ」
 「そう、やってみると、面白いもんだ」
 ……もしかすると放映当時にレトロ遊びブームとかあったのかもですが、一体どこへ行こうとしているのですか(笑)
 功を焦る不憫艦長はゴリワシを鉄拳制裁するも反抗を受けて華麗に宙を舞うと、ゴルリン28号を召喚して強制巨大化。 巨大ゴリワシの投げつける巨大メンコが星川兄妹を襲い、突き抜けすぎてちょっと面白いの領域には入っていますが、 前回配信分との温度差に胃がひきつけを起こしそうです。
 艦長……不憫艦長……第1話の「子供だけでどこまで飛べるやら」は凄く格好良かったのに、 どうして全力でコメディリリーフを獲りに走っているの艦長。
 スターファイブが発進すると、当然のようにメンコ対決が始まり、メンコの帝王・学アニキに高まる、 不正メンコ疑惑。
 連戦連敗のゴリワシが物理に訴えてくると5くん人形による応援が挟まり、スーパーブラザーズジョイント!  回転メンコ攻撃をものともせずに突き進むSFロボスーパーベクトルパンチが炸裂し、思わぬ強敵だった裏表合身闘士は、 その魂の彷徨ゆえに、地球に散るのであった。
 「負けた……ゴリワシギンが負けた……なんという事だ」
 「ガロア艦長、覚悟は出来ておるな」
 がっくりと膝を付いたガロアには陛下からのお仕置きサンダーが炸裂すると、続けて黒ゴルリンにむんずと掴まれ運ばれていき、 果たして、ガロア艦長の運命や如何に?!
 「助けてくれぇぇぇぇぇ!!」
 ……最高幹部の情けない悲鳴でつづく、はなかなか珍しい例でしょうか(笑)

◆第34話「人間カン詰」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 シュバリェ、バルガイヤー艦長復帰。
 そしてガロア元艦長は、掃除係に転落していた。
 「艦長はん……」
 「ガロア艦長が便所掃除とは……」
 さすがにちょっと、いたたまれない感じの元部下たち(笑)
 「ははははははは! 一から出直すには、便所掃除と相場は決まっておるのだ。ふふふふ……ん? ガロアくん、磨き方が足りないな、 磨き方が。もっと心を込めて磨きたまえ」
 「……ぬぅぅぅぅ……無念!」
 ……とりあえず、そのごつい鎧兜は、脱いだほうがいいのでは。
 ガロアが惨めに転落する一方(とはいえ監獄送りや処刑されずに降格で済まされ、意外と人材への意識あり)、 艦内の酒場では優雅に弦楽四重奏が奏でられ銀帝軍ゾーンは雰囲気一新。
 「いい音楽に美味い酒……これに美味い食い物が揃えば最高だな」
 早速、部下の人心掌握を図るシュバリェは、就任祝いにこの世で最高の食い物を教えてやる、とサメジゴクギンを送り出し……そう、 それこそ、人間カン詰!
 テニスコートを襲うサメ地獄(ワニカエルと同様、頭部はほとんどサメで、胸部から下にアリジゴクが融合したデザイン)は、 地中に引きずり込んだ人間を次々と缶詰に変えていき、市民を助けた数美が早くも脱落。
 「一体どうする気だ?!」
 「勿論、食べるのさ」
 のシュバリェの表情が大変良い感じ。
 「お前達も缶詰にしてやる。ファイブマンの缶詰が五つ揃った時、我がパーティは、地球最後の晩餐会となるのだ」
 サメ地獄が青を缶詰にするのに失敗するとシュバリェは一時撤収し、数美ちゃんを早く食べたい、 とピンクの缶詰に頬ずりするドンゴロスが、とっても猟奇です。
 「あと四つ……ファイブマンの缶詰、必ず揃えてやるぞ」
 それはそれとしてサメ地獄は今度は陸上部の女子を狙い……どうやら、K・S監督と同じ趣味の持ち主であった。
 銛を撃ち込んで倒そうとするも失敗して青が脱落し、バイクで勝負を挑むも、黄をかばった黒が脱落。 追い立てられる赤黄はかろうじて退却するが、サメ地獄は次は女子バレー部を狙い……確実に、 K・S監督と同じ趣味の持ち主であった。
 「……そういえば、サメジゴクギンは、ファイブマン以外は女の子しか狙わないわ」
 そして、それに気付くレミ(笑)
 おめかしレミがスカートを翻しながら囮になると、坂本こ……じゃなかった、サメ地獄を罠まで誘導して、鉤針で釣り上げる事に成功。 宙吊りになったサメ地獄に赤が斬撃を浴びせると缶詰にされた人々が解放され、 5人揃ったファイブマンはエンドボールを叩き込んでフィニッシュ!
 ゴルリン29号により誕生した巨大サメ地獄と、黒ゴルリンの連携に対し、ファイブロボはスターキャリアの援護を受けると、 フライングアタックでサメ地獄を一刀両断し、巨大戦で色々な技を見せてくれるのは良いところ……力強く登場したマックスマグマは、 音沙汰が無いですが。
 「なかなかやるな、ファイブマン。また会おう」
 シュバリェと黒ゴルリンは去って行き、シュバリェの脅威を兄妹とナレーションさんとBGMが煽って、つづく。
 初登場から数えること7話、とうとうシュバリエによる宿敵剥奪が発生して司令官交代となりましたが、 前任者のファイナルミッションが半ばギャグ回、更迭された前任者が継続雇用、はかなり珍しい印象。 元艦長の捲土重来の可能性は残る形となりましたが、「おのれ……! 決してこのまま死ぬ俺ではないぞ……」(←このまま死んだ) の二の舞にならない事を、祈りたいと思います。
 ……ガロアくん人形と合体したら、ガロア完全体とかになれるのではないか。

◆第35話「学の秘密!!」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:藤井邦夫)
 星川母、子供に、夫婦の馴れ初めを聞かせてくるタイプの親だった。
 ……ま、まあ、遠い異星の地で子供に地球の写真を見せていたら流れでそうなったのかもですが、 学にとってそれは貴重な両親との思い出になっており、写真で見たものとよく似た高原を、度々訪れているのであった。
 (ここに来ると、父さんや母さんに会えるような気がするんだ)
 学は、地元の牧場の娘・百合子と親しくなっており、『超新星フラッシュマン』でサラ/イエローフラッシュを演じた中村容子さんがゲスト出演。
 「学さーん!」
 「やあ」
 「来ていたんですか」
 「……うん。ちょっと、疲れたもんでね」
 ぐさっっっ。
 かれこれ第17話以来となった藤井先生、「ミドリ……母さんと同じ名前」に続き、 スタート直後から豪速球を心臓付近に投げつけてきます。
 この当時の完璧超人系ヒーローとしては割と大胆な弱音でもあったかと思うのですが、学が心身の疲弊を高原の風で癒やしていた頃、 合身銀河闘士の反応に出撃した弟妹4人を待ち構えていたのは、シュバリェの生み出したヒョウコブラルギン!
 凶悪な風貌に加えて動きにも一切の笑いがなく、珍しく普通に強そうな銀河闘士にレッドを欠くファイブマンは苦戦し、辛くも撤退。 バイクで急いだ赤は結局戦闘に間に合わなかった事から、兄妹4人から厳しい視線を向けられる事に。
 「……すまなかった」
 「変だぜ兄貴。ときどき誰にも内緒で行方不明になるなんて、いったいどこに行ってたんだよ?! (デートか?! デートなのかよ?!)
 「…………それは」
 「秘密だから言えないってのか(やっぱりデートなのかよ?!)
 「……すまん」
 まるで何か後ろめたい事でもあるかのように、頑なに口を閉ざす学に弟妹たちは反発。
 「健……数美、レミ、文矢……すまん!」
 これまでの描写を考えると下4人の不信感爆発はだいぶ強引ですが……兄貴は兄貴で、大皿の唐揚げにいきなりレモンをかけたり、 弟たちのプロティンを勝手に飲んだり、妹たち宛てのラブレターを開封して断りの返事を書いたり、 日頃から知らず知らずの内に家庭内で不興を買っていたのかもしれません。
 バルガイヤーでは元艦長が掃除係から銀帝酒場のボーイに出世しており、青ら4人を見逃した事で陛下からお叱りを受けたシュバリェは、 再出撃。
 「……せいぜい油断して、墓穴を掘るがいい」
 元艦長が憎々しげに呟いてゾーン内部の空気にアクセントを付ける一方、マグマベースでは星川兄妹の絆に大きな亀裂が入り、 シュバリェからの挑戦に、学はやむなく単身で出撃。
 飛び蹴りを解禁したシュバリェは赤と剣を打ち合わせるとヒョウコブラとの連携で着実に赤を追い詰めていき、 「長兄・学への信頼感が揺らぐ」波乱は面白い一方、星川兄妹の行動原理として、 〔兄妹の不和 > 地球の平和〕はあまりにも飛躍が大きく、パーソナルな要素がチームヒーローのバランスを崩す展開としては、 強引になってしまったのは残念。
 「どうしたレッド? 兄妹が応援に現れないな!」
 もはや学を見捨てる勢いの4人だが、シュバレーザーを受けて赤が吹き飛ぶとさすがに基地を飛び出していく一方、 辛くも逃走した学は高原に辿り着いていた。
 「父さん、母さん…………僕はどうしたらいいんです?! 僕は、長男として、父さんや母さんと一番多く暮らした。だから!  思い出も健たちよりずっと多い! でも! でも、それを出来るだけ言わないようにしてきた! 健や、数美……そして、 赤ん坊でなんの思い出もない、文矢とレミが可哀想だったからです! それは……間違いだったんですか?!」
 弟妹との亀裂に苦しむ学は心情を激白し、4人に弱いところを見せられない、といった責任感の話かと思ったら、 それだけでなく学の立場ゆえの気遣いが直接は伝えにくいものになっていたのは、年齢差から上手く膨らませて納得。
 崖の上で叫ぶ学の姿を、離れた位置から背中で見せたのも良く、流れの強引さは気になったものの、 長兄・学の掘り下げとして、良い場面でした。
 ところで以前から気になってはいたのですが……学兄貴の背中が強調されると、どうしても「BARCELONA」に目が行ってしまい、 どうして学兄貴は、放映当時2年後に開催を控えていたバルセロナオリンピックに向けて、こんなにも気合が入っていたのでしょうか。
 学の苦悩を知った百合子は弟妹たちと接触すると、両親との思い出を口にする事をタブーにするあまり、 いつしかそれを大きく抱え込んでしまっていた学の心情を4人に伝える。
 「いくら自分が説明してやっても、それは、説明でしかなくて、文矢たちの思い出にはならない」
 兄貴、真面目すぎるぜ兄貴……!
 「だから自分も、お父さんと母さんの思い出を、出来るだけ口にしないでおこう。学さんそう考えたそうなの」
 弟妹たちに寂しい思いをさせないようにとしてきた学は、高原を訪れる内に自らの寂しさを埋める幻の父母の姿をそこに見出すと、 折に触れては悩みを相談する(という形で前に進む)ようになっており……過去ヒーローゲストという事もあってか、 たっぷりとした語りが用意されているのですが、ゲストキャラとして百合子個人にスポットが当たるわけでもないのに加え、 4人との接触もかなり無理が出て、目の付け所は面白かっただけに、ちょくちょく、展開に強引な箇所があるのは惜しまれます。
 高原に現れたシュバリェは剣・銃に続く鞭モードで学を追い詰めるが、トドメの寸前、弟妹が集結。
 「兄妹5人、一つに団結すれば、貴様なんか目じゃないぜ!」
 復活したファイブマンは、個人武器を手に兄貴との思い出アタックを次々とヒョウコブラルギンに叩き込み、団結の力で撃破。 巨大ヒョウコブラは、決め台詞さえ無しに超次元ソードで瞬殺するのであった。
 「それから、父さんと母さんは――」
 「もういいのよ、兄さん」
 色々とバレた兄貴は高原について4人に説明し、それ以上は延々と話が無くなりそうだからそのぐらいでいい、と数美が止めました(笑)
 「……数美」
 「兄さんの思い出は、兄さんのものだけでいいじゃない。」
 「そう、長男だって、一人で甘えられる思い出が必要だぜ」
 「みんな……」
 「それから、兄貴……俺たちもう、とっくに大人だぜ。これからは、なんでも相談してくれよな」
 「わかったよ、みんな」
 兄妹は笑顔を取り戻し、気を利かせた4人はその場を離れ、かつて、父と母が出会ったかもしれない場所で、 百合子に母の面影を見る学兄貴に、ロマンスの香り……?
 ナレーション「学は、大声で叫びたかった。父と、母の、名を。いつの日か、きっと、会えることを願って」
 ラストのやり取りは爽やかで良かったですし、星川兄妹の「ヒーロー性」そのものに崩しを入れつつ、 一蓮托生度の高かった星川兄妹の抱える、根本的かつ潜在的な“ズレ”に焦点を当てたのは面白かったのですが、 そこに至るルート整備が強引になってしまったのが、重ね重ね残念。 ただ、確実に80年代から90年代へ向けた《スーパー戦隊》変質の過程を感じさせる一本でした。
 次回――双子入れ替わり。そして予告が文矢に(5くんお役御免?)。

◆第36話「双子大作戦」◆ (監督:東條昭平 脚本:渡辺麻実)
 コンビ殺法の特訓中だった文矢とレミは、サソリナマズギン(関西弁)の攻撃を受け、肉体と精神が入れ替わってしまう! (文矢がレミの口調と声で喋り、レミが文矢の口調と声で喋る事で表現)
 芝居の面白さを出すのと入れ替わりをわかりやすくする為にか、レミはお気に入りのぬいぐるみを抱えてみたり普段より幾分可愛げをアピールし…… まあ考えてみると体は文矢なので、後で念入りにファブリーズですね!(酷い)
 「今は3人だけの、スリーマーーン、かな?」
 入れ替わりの副産物として文矢とレミが変身不能になり、赤青桃の3人だけで立ち向かうが、今回もシュバリェ強し。 初登場から10話近く経ちながら、未だ直接戦闘では無敗を誇り、圧倒的な強者ぶり。
 アーサーに出撃を止められる文矢とレミだが、「二人で一人」の言葉に閃くと、 お互いの動きに合わせてその場で声をアテレコする事により、入れ替わりが解除された、とゾーンを騙し、 再び攻撃を受ける事で元に戻ってファイブマン!
 巨大サソリナマズの電気鞭攻撃にスターファイブが苦しむも、黒が単独で乗り込んだファイブロボがソードで鞭を叩っ切ると、 「双子の底力、見せてやる!」から兄弟ロボのダブル攻撃で勝利を収め、街には平穏が戻って、ほのぼのエンド。
 入れ替わりネタ定番の、もう一度敵の攻撃を受ける、に双子要素を組み込んだのが今作ならではとなった一方で、 距離感の近すぎる兄妹だと入れ替わりが個人の芝居レベル以上には面白くなりにくい限界が見えて、単発のアイデアエピソードとしては、 及第点まで、といった内容。外部の他者と接触すればまた面白さが違ってきますが、そこまでの尺もなく。
 次回――え、えええ……(予告音声は健となり、スポットの当たるキャラの持ち回りになりそう)。

◆第37話「人間大砲!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 5文字縛り傑作選に是非入れたいサブタイトル(笑)
 謎の黒アーマーに追い詰められる黒黄桃。星川家伝のスピンキックさえ弾き返すそのアーマーの正体は、 実験強化装備を身につけた青だったが、戦闘テスト中にアーマーが火花をあげ……
 「危ない!」
 のところでサブタイトルが入るのが、冴えます(笑)
 アーマーの爆発に巻き込まれた青が変身解除級のダメージを受けて地面に倒れると、弟妹たちの悲痛な叫びは滝壺に吸い込まれ…… 科学の進歩の為には、犠牲が不可欠なのだ。
 −−−−−  「なにが反重力ベルトだよ?! もー!」
 「私たちを殺す気?!」
 「ごめん! ……今度こそ、必ず」
 「え!? まだやる気かよ?! 冗談じゃないぜ。御免だぜ俺は!」
(『電撃戦隊チェンジマン』第19話「さやかに賭けろ!」)
 −−−−−
 「健、大丈夫か?」
 「……冗談じゃないぜ兄貴。こいつのどこがスーパー結晶の新合金なんだよ。……おまけに重くて、動けやしないし。こんな役、 もう二度と御免だからな!」
 「……ん? あ! 待て、健! 失敗の原因がわかったぞ! ほら、これを見てくれ! ここに不純物が混ざってる」
 肉親を肉親とも思わぬ非道な人体実験に怒り心頭の健だが、 根が科学の人=東映ヒーロー時空では自動的に頭にマッドが付く人達と限りなく紙一重な学は弟の様子に全く気付かず……くしくも今回、 第35話と対をなすような構造になっているのですが、学兄貴がこんな実験を繰り返していたとしたならば、 ソロでレイドボスに立ち向かわせたい気持ちになっても、仕方ないような気はしてきました(笑)
 「ファイブマンも落ちたもんだな。……そんなもんに頼って強くなろうなんて、だいたい俺はそういう根性が気に入らねぇんだよ」
 「健、それは違うぞ」
 学は、シュバリェの脅威に対抗する為に出来る事は全てやるべきだと語り……ここ数話の流れを受け、 運命共同体としての性質が強かった星川兄妹の間に意見の相違からの不和を描き、 兄妹の関係性に凹凸とそこから生まれる陰影を付けると共に、これまで取り上げていなかった“シュバリェへの対抗手段” を持ち出す事で説得力を付加してグッと物語の精度を上げてくるのは、さすがの腕前。
 シュバリェ登場後の立て直しが軌道に乗り始め、第一期(スタートから中盤まで)・第二期(諸々の迷走期)を経て、 いわば第三期に入ったといえる『ファイブマン』ですが、この腹筋の強さには、当時のスタッフの地力の高さが窺えます。
 「それならなおの事、体を鍛え、もっと技を磨くべきだぜ!」
 最後に物事を解決するのは、筋肉!
 ファイブテクターの開発を進めようとする4人+アーサーに健は背を向け、第35話では、 兄妹から不信任を突きつけられた学が一人で戦う事になったのが、今回は兄妹の姿勢に不満を抱く健が一人で離脱する構図に。
 「父さんと母さんに貰ったこの体に、不可能はないぜ!」
 バックボーンの提示として鮮やかな台詞と共に独り山ごもりして修行に打ち込んでいた健だが、 そこに現れる如何にも硬そうな合身銀河闘士・サザエマジロギン。
 ドルドラ自慢の銀河闘士には青の攻撃が一切通用せず、4人が駆け付けると即座に「気をつけろみんな!」と青が声を掛ける事で、 筋トレのメニューを巡る対立はあったものの、それははそれこれはこれ、と第35話の失点もカバー。
 だがファイブマンは、サザエの吐き出した剣と盾を身につけて強化されたザザ&戦闘員に手も足も出ず、真っ向から壊滅の危機に。
 やむなく赤は、最後の切り札としてスーツのリミッターを解除すると捨て身の突撃を仕掛け、ここまで上手く転がしていただけに、 秘密兵器がかなり唐突になってしまったのは勿体なかったですが、いざとなったら学アニキは(実質的な) 腹マイトを辞さない点は、凄く説得力がありました(笑)
 基本、ゾーンを倒した後の未来志向を持っている戦隊なので特攻精神は薄めなものの、 最悪の場合はバルガイヤーにさえ乗り込めれば刺し違える準備は出来ているところを見せつけた学の攻撃により、 さすがのサザエマジロも大ダメージを負うが、その代償として瀕死となった学を健らは発見。
 「あの時、ファイブテクター作りに協力していれば……兄貴をこんな目に……すまん! 兄貴ぃ!」
 ドルドラさんはすかさずゴルリン32号を召喚し、Aパートにしてサザエ巨大化。
 すかさずファイブロボが召喚されるが、巨大サザエには超次元ソードも通用せず、続けてスターキャリアが発進。だが、 SFロボの拳さえサザエには軽々と受け止められ、必殺のスーパーベクトルパンチも……腕、もげた(なおこれが、衝撃の伏線)。
 「巨大サザエマジロギン! そろそろお返しをしておやり!」
 ドルドラさんは、絶好調だと、こちらも見ていて楽しいのが、いいキャラだなと思います(笑)
 「念願の1000個目の星、今こそシュバリェが、メドー様に捧げましょう!」
 「おお! 遂に永遠の命をうる時が来たか」
 バルガイヤーでの一幕を挟み、サザエの猛攻を受けたSFロボは海中に投げ込まれ、損傷箇所から浸水。 3作目にしてパターン化に見えてしまう難点(長期シリーズ物の宿痾)の出ていたスーパー合体ですが、スーパー化しても完敗、 というスパイスが盛りこまれる事に。更にサザエの追撃を受け、本日2回目の全滅の危機に陥るファイブマンだが、 意識不明の学が譫言で口にした「ファイブテクター」の言葉に、健がひらめキーング(最近、文末に凄く便利な事に気付いてしまって……)。
 「兄貴! ファイブテクターを俺に任せてくれ。兄貴……ファイブテクターの、ファイブテクターの、パワーを見せてやるからな」
 鍛え上げた筋肉を駆使し、単独で海面まで浮上した健(コックピットに意識不明の学を運び込んでいるので全員が脱出できない事情は設定されているものの、 普通に泳いで脱出できたのは、ピンチ台無し感が強くなってしまい惜しい)はマグマベースへ向かうと、アーサーが完成させていたファイブテクターを受け取り、装着。
 肩・腕・脛に、追加装甲を身に付ける形となり(肩の模様で胸のVマークが延長)、今時の「スーパー化」と比べるとだいぶシンプルですが、 名前からも「プロテクター」のイメージかと思われ、当時のローラスケートやスケートボードのブームの反映でしょうか。
 「今に見てろー!」
 誰にともなく新装備をアピールした青は、なんとか地上に戻ってくるもサザエの攻撃に倒れたSFロボに近付くと、 ジェットナックルの発射口に潜り込む。
 ……え。
 ……い、いや、次回予告の映像でバッチリ見ましたが、それでもなお、え?
 「文矢! 俺を撃て!」
 「兄貴! 無茶な事を!」
 「あの時兄貴は体当たりで俺たちを守ってくれた。――今度は俺の番だ!」
 次回予告の衝撃映像通りに、ファイブテクターを身に纏った青は自らを弾頭とし……凄く、 初期星川兄妹です(笑)
 ここに、第一期『ファイブマン』と第三期『ファイブマン』が奇跡の融合を見せ、
 「今だ!」
 「あ〜〜〜! 健兄貴ー!」
 南無三、と文矢がスイッチを押し込むと、射出の瞬間に学が目を覚まし、復讐と狂気を乗せた青い光弾と化したファイブブルーは、 巨大サザエを貫通。
 今、知恵と勇気と筋肉が、宇宙最硬の合身銀河闘士を打ち破るのであった!
 「勝ったぞ!」
 ファイブテクターを信じ、勝利を掴み取った青は凱歌を上げ、発射されたロケット青の姿に対して、 半死半生の状態ながら目を逸らさずに凝視している学、目を背けるも爆発音で顔を上げる文矢、 文矢の声でようやく顔を上げる数美&レミ、それぞれの反応の違いが、非常に秀逸。
 今回、Bパートはほぼずっと、生身の星川兄妹の芝居がコックピットの中だけで展開する大胆な変化球なのですが、意識不明の学、 奮闘する弟妹、瀕死の学に寄り添い続ける数美、と限定された空間だからこその兄妹の描き分けが効いていて、とても良かったです。
 「兄貴! やっぱりファイブテクターは凄いぜ!」
 「……いや、人間大砲なんて健、おまえじゃなきゃ出来なかった事さ!」
 科学技術ばかりではなく、それを扱う人間自らの心身の健やかさも大切なのだ、 と“科学は使う者次第”の普遍的なテーゼが変奏曲で盛りこまれて、 巨大怪人を文字通りの体当たりで粉砕するトンデモ展開を脚本と演出の豪腕で劇的に押し切り、 テクター姿の青がしゃきーんとポーズを決めて、つづく。
 前作『ターボレンジャー』でも展開の定番崩しが積極的に試みられていましたが、半分で赤が戦線離脱・Bパートは芝居重視の巨大戦、 という変則的状況の二段重ねで巧みにドラマを盛り上げ、学と健が方針の違いで衝突 → 弟妹の為に捨て身の行動に出る学 → 学不在の状況で後悔を胸に奮闘する健、と突っかかり役&肉体派の健が、 危機的状況下で次兄として踏ん張る姿への焦点の当たり方がスムーズで、構成の冴え渡るエピソードでした。
 あと、敵幹部の自信作が本当に強かった、のもちょっと一ひねりでしょうか(笑) ドルドラさん、基本的には有能。
 第32話で井上敏樹、第35話で藤井邦夫が見せてきたものを受けた曽田博久が、復讐と殺意に満ちた最初期『ファイブマン』と、 シュバリェ登場後にネジを巻き直し始めた現『ファイブマン』を「狂気」で接着し、 新装備登場編をこなしつつ作品全体を最終ステージへと引っ張り上げる離れ業を見せ、こういう事をやってくるから、 つくづく曽田先生は侮れません。
 …………ところで、どう考えても出番の筈マの字さえ呼ばれずに終わったマックスマグマですが (SFロボが収納されないと起動できないとはいえ、チャレンジさえ試みられない)やはり変形合体時に居住空間が大惨事になるので、 使用禁止令が出たのでしょうか。

◆第38話「偽兄弟先生」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「僕たちの分校に、兄弟先生がやって来てから一週間経った。はじめは夢でも見てんのかと思った。でも夢じゃない。本当に東京から、 あの噂の兄弟先生がやってきたんだ」
 ちょび髭の学?、ちょっと化粧の濃い数美?、どことなく残念な感じの文矢?、ベリーショートのレミ?、そして、 やたらいい声の健?が次々と紹介され……敵幹部コスプレ回のカテゴリなのですが、これは、 キャスティングの妙(笑)
 ゾーン先生たちは、跳び箱を跳べた少年に一斉に拍手と爽やかな歓声を送り、もう、ここだけで、面白すぎます。
 「このままずっと居てくれるよね? ずーっとずっとこの分校に居てくれるよね?」
 「当たり前じゃないか。僕たちは、君達の兄弟先生なんだからな」
 「約束だよ!」
 「ああ、約束だ」
 指蹴りげんまんにサブタイトルがかかるのが、鬼だ、スタッフが鬼だ!!
 昼間は優しい分校の教師、だが夜になるとギンテイジャーの顔つきは一変し、ポーズをきめて普段の姿になるのが、 心なしか皆さんちょっと楽しそう(笑)
 兄弟先生を騙って分校に潜り込んだシュバリェたちの目的、それは校舎の地下に埋もれている 、銀河の毒貝・アンモナイトンを掘り出す事にあった。“動く細菌兵器”と呼ばれ、 シュバリェと共に数々の星を滅ぼしてきたアンモナイトンだが、ある時、移動中に乗っていたUFOが故障。 そのまま行方知れずとなっていたのが地球で発見されたものの、故障したUFOに爆発の危険がある為、 分校に潜り込んだ上で慎重な掘り出し作業を進めていたのだった。
 田舎の分校に潜入するにあたって、わざわざ星川兄妹になりすますのは策士策に溺れるといった感がありますが、案の定、 たまたま山を訪れたツーリング中の文矢がビリ矢先生を目撃。 挙動不審なビリ矢先生とBARCELONAジャケットまで用意したガロブ先生の失策によって偽物作戦がバレてしまった上、 子供達の目の前で馬乗りになってガロブ先生に暴行を加えようとしていた文矢が、地下の掘削現場に入り込んでしまう。
 「ギンガマン!」
 黒は掘削部隊と戦い始め、その音を誤魔化す為に、エレクトーンを弾くザザミ先生と、合唱する幹部たちの図が、面白すぎます(笑)
 地下では、黒が暴れた事でアンモナイトンが外へと脱出。生き埋めにされるもファイブテクターにより助かった黒はマグマベースに連絡を取り、 アンモナイトンを乗せたゾーン戦闘機を赤マシンが追って、久々のドッグファイト。
 戦闘機は撃墜するも、シュバケン先生とアンモナイトンは走って海へと向かい、 シュバケン先生を慕う少年がずっと走って追いかけてきているのですが、戦闘機に乗せた意味、は(笑)
 いよいよ銀河ペスト菌をばらまくべく海へとダイブするアンモナイトンだが、間一髪、 これも走って追いかけてきた文矢がギリギリでそれを阻止。だがタイミング悪く、少年もまたそこに追いついてきてしまう。
 「そうだね。いけないね……約束を破っちゃ!」
 約束を訴える少年を抱きしめたシュバリェは、正体を現すと少年を人質に取って容赦なく悪を突きつけるが、 コスプレを見せつけるドル美先生(ドルドラさん、何かにつけいちいち楽しそうに芝居してくれるのが、凄く好きです) らの妨害をくぐり抜けた学たちが合流すると初手から全員テクター装備のファイブマンに変身。
 テクターファイブマンは、なんとシュバレーザーを跳ね返し、前回時点では判断保留していたのですが、これはがもう完全に、 今に至る「スーパー化」のはしりと認定して良さそうです。
 「そんな馬鹿な!」
 シュバリェが焦りを見せた間に人質を救出し、なにぶん、学瀕死・酸欠で全滅寸前・人間大砲! の試練をくぐり抜けた末に手に入れた強化モードなので、抜群の説得力(笑)
 「兄妹戦士の力、見せてやる!」
 テクター装備のVファイブマンは強化された打撃でアンモナイトンに連続攻撃を決めると、「必殺! ファイブテクター!」を放ち、 炎のビクトリー魔球と化した赤がアンモナイトンに突撃して大勝利。
 ブラザーコンビネーション → アースカノン → スーパーファイブボール → 必殺! ファイブテクター!
 と個人技での撃破を除き4代目のフィニッシュ攻撃を手に入れたファイブマンですが、 バズーカ無効から特に強化を考えたわけではないがなんとなく生まれた新必殺技(オマージュネタ)、 が使われたり使われなかったりしている内に、何故か単独必殺攻撃が新たに誕生してしまい、どうも、トドメが落ち着きません。
 まあ、この辺りも、巨大戦同様、一本調子になるのを避ける工夫の一つであったのかもですが。
 シュバリェの野望を打ち砕いた5人は、本物の兄弟先生として分校の子供たちの為に授業を行い、 シチュエーションはかなり強引なものの、星川兄妹になりすますゾーン幹部の圧倒的な面白さと、 教師要素を改めて拾っての爽やかなオチは良かったです。
 第4クールを前に、曽田先生がとうとう波に乗ってきたのは好材料で、次回――うーうーん……こ、これは、どっちだ? い、 井上敏樹、か……?!(藤井先生と二択)

◆第39話「愛を下さい」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 井上敏樹でした!!(何かに勝利した満足感)
 「はははははは、貴様のままごと拳法、果たしてこの俺に通用するかな」
 素手の相手に剣を振り回せば勝てるのでは、とトレーニング中のレミに襲いかかるビリオンだが、突如その戦いに割って入ったのは、 ビリオンを探して宇宙からやってきた女戦士ソーラ(演:水野美紀さんは今作が女優デビューとの事ですが、つまり、 夫の唐橋充さんともども、ご夫婦で揃ってTVドラマデビュー作が井上敏樹脚本という奇縁)。
 「会いたかった、会いたかったぞビリオン」
 「……おまえは」
 ソーラはかつて、銀河ゴロツキ集団に襲われていたところをビリオンに助けられた事があり、 当時はまだ一匹狼だったりしたのか、ゴロツキを切り倒すだけ切り倒したビリオンは、野辺の花を切り裂くと、 ソーラの両親の死体に手向ける完璧な残念ムーヴを決めて無言で立ち去り、 乙女の胸に鮮烈な印象を刻み込んでしまったのであった。
 「ありがとうビリオン。ビリオンの正義の剣が私を守ってくれた」
 すっかり勘違いしているソーラのキラキラした眼差しに無言できびすを返すビリオンだが、 ソーラは……バルガイヤーまでついてきてしまい、色々、大丈夫なのかバルガイヤー(笑)
 ただでさえ立場が無いも同然なのに、何を格好つけながら部外者を連れてきているのか、と同僚から冷たい視線を受けたビリオンは、 この星を守る為、と偽ってソーラをファイブマンにけしかけ、乙女の瞳にはシュバリェもドルドラもドンゴロスも正義の仲間達に見えます、 というよりも、視界に入りません!
 ソーラは得意の棒術を用いて、打倒ソーラの特訓中だったレミへと襲いかかり、この両者の絡みはここまでなのに、 冒頭から生アクションが強調されてマッチアップが用意されたのは、水野さんもアクション志向があった関係でしょうか。
 「私は負けない。ビリオンの為に、平和の為に!」
 「平和の為?!」
 容赦なく顔面に蹴りを叩き込まれたソーラは、何やら薬剤を取り出すと、ドーピングにより異形の怪物――ダークソーラへと変貌。 様子を窺っていたビリオンは、打倒ファイブマンの駒として思ったより役に立ちそうだと、薬の効果が切れたソーラを回収。
 「……見られたくなかった。おまえだけには。私の醜い姿を」
 「何を言う。……戦うおまえは美しい。もう一度変身するのだ。俺の為に……いや、地球の平和の為に」
 ビリオンはソーラを後ろから抱きしめながら耳元に囁き、圧倒的敏樹感(笑)
 第32話と今回は、いよいよ『ジェットマン』前夜からの飛翔を感じさせる井上濃度です。
 「やってくれるな。おまえなら出来る。ファイブマンを倒すのだ」
 残る薬は、飲んだが最後、死の瞬間まで元の姿に戻る事はできない一錠のみ……徹底的に悪い男のビリオンに、 ソーラは一日いちゃいちゃタイムを望み、口づけをかわした二人は地球人の姿となるとしばらくデートタイムとなって、 衣装が4パターンぐらい用意されているのですが、ゲストの美人度が高くて、 長石監督が大変楽しそうです(笑)
 「……時間だ、ソーラ」
 地球での儚い恋の時間は終わりを告げ、零時の鐘と共にビリオンが胸ポケットに入れた白い花を捨てると、二人は元の姿に。
 「ファイブマンを倒すのだソーラ。おまえがどのような姿になっても、俺はずっと、おまえの側に居る」
 翌日、ソーラが騙されて利用されているのでは、と行方を追っていた学は襲撃を受け、ビリオンの介入により説得にも失敗。
 「騙されるなソーラ。悪い奴ほど口が巧い」
 意を決したソーラは愛する男の為に薬を飲み込むと再び怪物と化し、合流した星川兄妹は、 その圧倒的パワーを前にファイブマンへの変身を余儀なくされる。
 「ふははははは! いいぞソーラ! おまえこそ我が愛を受けるにふさわしい女だ! トドメを刺せ!」
 ビリオンは、ダークソーラが羽交い締めにした赤に襲いかかり必殺の一撃を放つが、赤がかろうじて身をかわした結果、 その刃は背後のダークソーラを刺し貫く!
 「ドジな奴め!」
 ……君がな。
 どこまでも残念な銀河剣士は、もはやソーラは役立たず、とゾーンの一員としての本性をさらけ出し、赤に抱き起こされた闇ソーラは、 その真実を目の当たりにする。
 「貴様、私を騙したのか?!」
 「違うな。おまえが勝手に俺を正義の戦士だと思い込んだだけの事」
 「ならば、何故あの時私を助けた」
 「助けた? ふん、自惚れるな! 俺は血に飢えていたのだ。今と同じようにな」
 過去にソーラを(結果的に)助けたのは、ただの辻斬り行為、ないし、発作的な俺格好いいムーヴだった事が明らかになり、 命がけの愛をそのまま憎悪へと変えたダークソーラはビリオンに飛びかかると爪を閃かせるが、振り下ろす事ができない。
 「出来ない……ビリオン……おまえが悪の手先でも……私を利用したのだとしても……それでも私は……私はおまえの事が――」
 ソーラは愛に殉じる道を選ぶとファイブマンへとその牙を向け、理性を失って怪物として死ぬのでもなく、 正気を取り戻して切り捨てられるのでもなく、個人的な「愛」が善も悪も超越してしまう、凶悪な展開(勿論そこには、 「愛」そのものが「狂気」である、と含意されているわけですが)
 「ソーラぁ!」
 故にファイブマンは、銀河に死をもたらすゾーンの“悪”以外のものと対峙する事を余儀なくされ、 それがヒーローが“正義の剣”を振るう対象ではないとわかっていながら、やむなく反撃せざるを得ない、のがまた凶悪で、 かなり意識的に、ヒーロー作品の基本的構図そのものを破壊しにいっています。
 脚本のみならず、監督他のスタッフもかなり思い切って一線を踏み越えてきた印象(恐らくは、 既に次作を見据えてのプレ『ジェットマン』的な意図はあったのかと思われます)。
 赤の斬撃を受けた闇ソーラはビリオンの足下に転がると、ビリオンの剣を自らの手に掴む。
 「ビリオン……せめて……せめてトドメはおまえの手で」
 瀕死の闇ソーラは、ビリオンの剣の切っ先を自らの喉元に当て、あまりにも激烈なその行為にビリオンが狼狽すると、 体を押し込むようにして剣を喉に突き刺して自害を遂げ……ファイブマンにトドメを刺させる事を避け、 心中失敗や返り討ちなどの定番も避けた上で、その情念を昇華させる、とんでもない着地。
 命尽き果てた闇ソーラの姿は光の粒子に包まれるとソーラの姿に戻り、根っからの悪人ではないが異形の姿で悪に与して戦う敵を、 最期の瞬間に綺麗にするかどうか、というのは慎重さを問われる部分ですが、今回は事前に、命尽きる時に元に戻る、 と言わせているのが地味に秀逸。
 闇ソーラの峻烈な死に様に後ずさったビリオンは姿を消し、学に抱き起こされたソーラは薄れゆく意識の中で学をビリオンだと思い込み、 徹底してヒーローの言葉が届かないのが凄まじい(導入ではレミにスポットが当たっていたのに、 途中からそれが学兄貴に移るのはどうしてかと思っていたら、この仕掛けの為で納得)。
 学はソーラの為にビリオンを演じ、ソーラは、愛する男の優しい言葉を胸に、絶命。
 その光景を離れた場所から複雑な面持ちで見つめていたビリオンは、手にした白い花をソーラに手向けるかのように海に投げ落とし、 漂う花びらに気付く学。
 ナレーション「愛ゆえに、死んでいった一輪の花」
 だが、顔を上げると既に、ビリオンの姿は無く……渋い…………!!
 シュバリェ登場後、すっかり存在感を失っていたビリオンにスポットが当たったのは嬉しく、 勢いでこのまま心中リタイアでも打ち上げ花火としてはOKでしたが、 ソーラの最期はそれよりも更に強烈なものとなり、印象深いエピソードとなりました。
 「愛」という言葉(行為)の中にあるエゴをあぶり出し、その美しさと醜さが、ソーラ/ダークソーラの姿に象徴されたのも秀逸。
 次回――この勢いでビリオン最後の決戦か?! むしろ、その方が良いのではと思うので、銀河剣士の晴れ舞台に期待。

◆第40話「少年魔神剣」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:渡辺麻実)
 古式に則りザゼーンを組むビリオン目がけて飛来した一振りの剣、それは、銀河魔神剣サーベルギン!
 「ふふふふふふふ……相変わらずいい腕ですな、ビリオン様」
 伝説のマジックアイテムの類かと思ったら、喋る剣(ドラゴン系の顔付き)が、そのまま銀河闘士(魔神)扱いは、 意表を突かれました(笑) ……ネーミングセンスからはお馴染みバード星の関与を窺わせ、 元来はなにがしかの実験生物兵器であったのかもしれません。
 「銀河魔神剣サーベルギン! おまえの力を借りる時が来た」
 「銀河魔神剣を手にするもの、己であって己でなし。よろしいのですか」
 「ふん、承知の上だ!」
 神に逢っては神を斬り魔物に逢っては魔物を斬る、銀河魔神剣を手にしたビリオンの瞳が紅く輝く一方、 街でチンピラに絡まれていた家族を助けたのが縁で、学兄貴は青空剣道教室で子供達に剣の道を教えていた。
 「練習次第で、誰でも強くはなれるさ。でも剣道に強くなるだけじゃ、本当に強くなったとはいえないんだ」
 「本当に強くなる?」
 「ああ。腕よりここだ。心を鍛える事。心が強ければ、どんな事にも立ち向かえる」
 学に憧れるあまり、「もっと強くならなくちゃ……力をつけなくちゃ駄目なんですよ!」と倒れた相手にも竹刀で打ちかかる 「まなぶ」少年を諭す学だが、そこに奇襲をかけてくるビリオン!
 「甘いわ! 強くなる為に心など必要ない!」
 ビリオンは巨大な魔神剣(率直に取り回しが悪そう)を振り回し、弟妹に子供達を逃すよう指示した学は、華麗な真剣白刃取り。
 「ふふはははは、あーひゃはははは!」
 口の端から涎でも垂らしていそうな勢いで笑いながら剛剣を振るうビリオンは、じわじわと学を追い詰めていき、 剣道着姿の学が跳んだり跳ねたり転がったりする大サービス。
 「戦え! 俺と戦え! そうすれば俺はもっと強くなれる!」
 「ビリオン! 魔剣に魅入られたか!」
 光線技をかわした学兄貴は、回転飛びでビリオンの背負った剣を抜き取ると、振り向きざまに魔神剣を弾き飛ばす格好いいアクションを見せるが、 ビリオンの手を離れた魔神剣があろう事か、戦いを見つめていたまなぶ少年の足下に転がってしまう。
 「この剣を持てば、強くなれる!」
 強さに執着するまなぶが剣に手を伸ばして魔神まなぶが誕生すると魔剣に操られるままに学へと襲いかかり、魔神剣は、 顔部分の目がぎょろぎょろ動くのが、秀逸な造形。
 魔神剣の凄まじい力の前にファイブマンは揃って崖落ちし、戦えば戦うほど強くなる魔神剣に力を蓄えさせる為にはむしろ好機、 とビリオンはまなぶを利用する事を思いつくと、そうだ、辻斬りしよう。
 さすがに少年による直接の刃傷沙汰は控えられて水飲み場や自転車が次々と刀の錆になり、無機物でも経験値は上がるのか銀河魔神剣?!
 とにかく戦闘回数をこなす事が重要なのだ、と範囲攻撃で爆発を撒き散らしたところで駆け付ける星川兄妹。
 (ゆけ! あいつらも叩っ切れ! そうすれば俺はビリオン様を、最強の剣士に出来る)
 「学! 剣に惑わされるな!」
 「うるさい! 俺はもっと強くなるんだ!」
 少年はすっかり剣と同調して5人に襲いかかるが、なんとか正気を取り戻させようと学は決死の説得を続け……そういえば、 表のジョブが教師なので、《説得》や《交渉》にスキルポイントを振ってあるのでした。
 「本当の強さは、剣に強くなる事だけじゃない! 思い出すんだ!」
 「本当の強さ……」
 「迷うな坊主! おまえは今、銀河最強の剣士だ!」
 だが魔神剣はまなぶの心を巧みに操り、強さを求めるあまり邪悪な力に溺れてしまうド定番のストーリーラインなのですが、 台詞回しと造形の光る魔神剣が随所でいい味を加える事で面白さが出ています。
 「俺はまだ、あの子に本当の強さを教えていない。今がその時かもしれん!」
 ……だったのですが、赤が捨て身の突撃から体当たりで説得すると問題解決、はセオリーをそのまま当てはめただけになってしまい、 ファイブマンならでは、星川学ならでは、といったもう一工夫が無かったのは残念。
 全体としては“教師と教え子”の構図に収められているのですが、3クールを経た上で、 その蓄積を活かした飛躍がこれといって無いのは、物足りない部分でした(作風なのか、脚本陣の役割分担なのか、 渡辺脚本回は意識的にオーソドックスに徹していそうな節はありますが)。
 まなぶ少年は魔神剣から解放されるが、辻斬りのパワーをたくわえた剣は自らビリオンの手に戻ると驚愕の合体をし、 誕生するゴールデンコンド……じゃなかった、サーベルビリオン。
 ……どうせなら、合身銀河剣士ビリベルギンにでもなってくれれば応援のし甲斐があったのですが。
 「勝負だ、ファイブレッド!」
 「数美、まなぶを頼む!」
 角張ったアーマー姿となったビリオンの攻撃を受け、またも折られるVサーベル。青からレンタルした剣で赤は反撃に転じ、 ビリオン自身はそこまで嫌いではないのですが、なにぶん赤との因縁は藁半紙よりも薄いので、 一騎打ちしても盛り上がりに繋がりません。
 「剣に心を売り渡した奴に、負けるわけにはいかない!」
 「銀河魔神剣、俺に最後の力を!!」
 OPの剣道要素がそこはかとなく拾われ、ごくごく普通に赤に敗北したスーパービリオンは、遂に巨大化。
 よし! 今こそ! マックスマグマの出番だ!!
 ……などという事は勿論なく、辛うじてファイブロボと互角の戦いを演じたスーパービリオンは、 超次元ソードの一撃でサーベルギンが両断されると、強化エネルギーを失って元の姿で地面に転がり、 特にトドメを刺される事もないまま捨て置かれるのであった!
 「おのれファイブマンめ! お前達を倒せるならこの命、悪魔にくれてやるぜ! うぁぁぁぁぁ! うぉぉぉー!」
 強化の反動か、吐血しながら絶叫するビリオンは、リタイア回ではなくリタイア前振り回となり、まあ今回の一騎打ちのように、 盛り上げようとしても因縁が薄すぎる点は懸念通りだったので、強い怨恨を剥き出しにしたのをステップに大輪のラストジャンプを改めて期待したいです。
 前回−今回と、他の幹部陣がほとんど登場せずにビリオンにスポットを集中したのは、 初回から登場しながら活躍しきれずにいたビリオンへの配慮も感じますが、宿敵はガロア、最強の敵はシュバリェ、 で既に予約が一杯になっているのはつくづく辛いところで、なんとか巧く、満足の行く最期を迎えてほしいところ。
 次回――数美に迫るデート商法の罠。「乙女の怒りが悪を討つ!」(と予告ナレーションで本人が言いました)

→〔その6へ続く〕

(2024年10月2日)

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