■『地球戦隊ファイブマン』感想まとめ4■


“人は愛と勇気という ナイフを持った
戦士だから闘わずに 生きてゆけない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『地球戦隊ファイブマン』 感想の、まとめ4(25話〜32話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第25話「友情の桜島」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「見よ、銀河闘士ライオギン。あれが桜島だ」
 ……本当に、桜島大噴火作戦だった。
 ライオン闘士が咆哮すると桜島に次々と隕石が降り注ぎ、飛行機で鹿児島へ調査に向かう星川兄妹、窓の外を飛んでいく青年を目撃(笑)
 星川兄妹は、謎の青年が降り立ったグリーンピア指宿へと向かい、観覧車の上に立ち、 軽々と跳ね回る青年を追う内に作戦行動中のビリオンを発見するが、ライオン闘士の一撃で、まとめて海落ち。
 更に、次元を引き裂いての隕石落としというワルド怪人ばりのとんでもない攻撃に追い詰められるが、 そこに謎の青年が飛び込んでくるとまさかの隕石キャッチを見せ、5人は青年を連れて一時撤収する。
 「愚か者め。またもやファイブマンに気付かれおって。こうなったらからにはこの私自ら隕石を落としてやろう」
 メドー様が身も蓋もないことを言い出し、桜島の大噴火まであと10時間――
 星川兄妹を助けた謎の青年・ジーグは銀河サーカスの団員であり、
 「時給700円で、てめえらに愛想笑いの切り売りが出来っかてんだよ!」
 ……じゃなかった、
 「サーカスを見る奴なんて、もうどこの星にも居やしないじゃないか! サーカスの時代は、サーカスの時代は……もう終わっちまったんだ!」
 とサーカス団を離れてゾーンに転職したライオギンを連れ戻す為に、地球まで飛んできたのだった。
 ゾーンによって荒れ果てた銀河でも、生き残った子供たちにサーカスを通して笑顔を届けようとするジーグと意気投合する兄妹だが、 桜島が鳴動。長崎鼻でライオンと激突するファイブマンは、銀河サーカス殺人技の一つ・超次元シーソー殺法に大苦戦し、 今週も飛び出すファイブくん人形。
 このままファイブマンが倒れ、桜島が有史以来最大の噴火を起こすかと思われたその時、ピエロの化粧をしたジーグが決死の説得を試み、 ライオンの胸に甦る華やかな銀河サーカスの思い出。
 「あの時の笑顔、笑い声……銀河に取り戻そうよ。それが出来るのは僕たちだけなんだよ」
 「ジーグ……」
 かつての心を取り戻したライオンに不意打ちをあっさりと受け止められたビリオン(どう見てもライオギンの方が強い)は、 ゴルリン21号を召喚すると、強制融合処置。
 「フフ、巨大化すればパワーも増すぞ! 桜島大噴火まであと一歩! トドメの隕石を落とせぇ!」
 剣を振り上げてのこういった台詞回しは似合い、悪の剣士としてはそれなりに格好いいのですが、どうして無様イメージが強いのか。
 ファイブマンはスターファイブでライオンの口を封じるが、メドー様が参戦して隕石の雨は止まず、迫る地球最大の危機。 そこにファイブロボにピエロの衣装を着せたアーサーが駆け付けるとジーグに操縦を任せ、再びの説得。
 ファイブくん人形による、TVの前のみんなも応援しよう、的な一幕が入り……70年代作品などでまま見られる、 劇中の子供達から急に声援を送られるなど“子供たちのヒーロー”である事が強調される系のテコ入れを、より直接的に行っている感じ。
 ファイブロボの奇抜な使用法など、なんとか新しい面白さを、というスタッフの苦慮が見えますが、急な方向転換に困惑が先行します。
 ジーグが説得に成功するとライオンがゴルリンから排出され、残った21号はスターファイブが射殺。振り続くメドー様の隕石だが、 ライオンが虹のバリアでそれを防ぎ……能力が桁違いすぎて唖然。
 銀河闘士というよりはもはや、「サーカスの力が、充ち満ちてくるぞー!」ですが、 ジーグとライオギンは生身で飛翔すると地球を去って行き……たぶん、ウル○ラ一族だったのかもしれない、でつづく。

◆第26話「九州だョン」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 指宿市に自ら操縦するヘリコプターで降り立つガロア艦長! は、幹部陣とバツラー兵に癇癪をぶつけるが、 突如としてバツラー兵の態度が豹変。
 「ガロア、よう来たな。待ってたぜ」
 「な、なんだ?」
 なんとその日は、銀帝軍の福利厚生として定められた20年に一度のさかさまデイであり、銀帝軍における全ての地位が逆転、 すなわちガロア艦長が軍団最下級となり、バツラー兵が軍団最上位の権利を得るのであった。
 「何事も全てバツラー兵に従え」
 ごくごく平然と説明するメドー様……この人、ちょっと思いつきで作ったな。
 テニスに興じる星川兄妹の様子を、使い捨ての兵隊として前線に送り込まれたガロア艦長が物陰からじっと窺い、 それをニヤニヤと見つめるその他の幹部たちにも、結構ストレスが溜まっている事が窺えます(笑)
 「ファイブマンの黄金像を、メドー様に捧げてみせよう!」
 ガロアは地球人の姿に大変身すると、銀河闘士コガネギンの金粉入り料理を兄妹に食べさせる作戦を立案し……予告時点では、 キャラ崩壊系のギャグでもっと白けるかと思ったのですが、ガロア元艦長が凄く真面目に下っ端の自分を演じていて、変な面白さが(笑)
 ……まあこの後、鼻にティッシュを詰めたガロアが、リヤカーに乗せたコガネギンをえっちらおっちら運ぶ羽目にまで行くと、 さすがにやり過ぎ感ですが。
 作戦失敗してビリオンにまで蹴りを入れられたガロア三等兵は単独でファイブマンに戦いを挑む羽目になるとコンビネーションアタックで大地に転がり、 本格的に不憫枠。
 ガロアはスライディング懇願でコガネギンに助けを求め、ファイブマンを狙う一撃必殺の金粉ミイラ攻撃。
 海に潜ってファイブマンがこれを回避すると、観光タイアップ回の事情により、 黄金エネルギーの枯渇したコガネギンを連れたガロアはゴールドパークを目指す事となり、兜を被ったまま自動車に乗り込む為に、 必殺・車斬りで屋根を切り飛ばす捨て身のセルフパロディ。
 ゴールドパークへ先回りしようとしていた星川兄妹と激しいデッドヒートを繰り広げていきなりのカーアクションに突入し、 かたや屋根無し、かたやドア無しで激走する、あまりのエキサイトぶりに再び発生する変な面白さ(笑)
 なんでもオッケー免許証を所有する銀河のスーパーマルチドライバーだったガロア艦長は皆川亮二作画になると星川兄妹を競り落とすが、 すっごい故障で足止めを食っている内に星川兄妹は自転車に乗ってゴールドパークへと辿り着き、コミカル成分の増量と、 タイアップ回名物・強引な名所巡りとが渾然一体となって九州の地にえもいわれぬ味わいのカオスを生み出します。
 基本、腰砕け系のギャグと、ガロアの間の抜けたリアクションで笑わせようとするので、笑えるかと言われると難しいところですが、 長石監督による全編ここまでストレートなコメディ演出は珍しい印象で(後には『超光戦士シャンゼリオン』などありますが)、 ゴールデンパークを舞台に加速するドタバタ喜劇の末に、バツラー兵の策謀により、ガロアもろとも爆殺されそうになるファイブマン。
 ……人望が、無い。
 「ファイブマンは不死身だ!」
 だが5人はなんとか脱出に成功し、幹部揃って雑兵扱いのこんな展開で久方ぶりにオールスター主題歌バトル。 艦長も復活して――「不死身でござる」は恐らく、『忠臣蔵』が元ネタ(「天野屋利兵衛は男でござる」)――ゴルリン22号を召喚するが、 巨大コガネギンはスターファイブの二丁拳銃の露と消え、超次元ソードが格好良かった事もあって、どうにもスターファイブは冴えない印象。
 後に禍根を残しまくってゾーンのさかさまデイは終わりを告げ、 投げやりなサブタイトルは何かアクロバットな接続がされるのかと思ったら、本当に投げやりのまま終わって、 ファイブマンは南国鹿児島を去って行くのであった……。

◆第27話「眠れば死ぬ」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 「九州だョン」の衝撃から1週間経って気付きましたが、第22話「光る美青年」辺りから、 TV欄の都合によるサブタイトル5文字縛りが発生していたのでしょうか。……まあそれにしても、 「九州だョン」は投げやりに過ぎましたが(笑)
 Vサターン星から銀河小包でやってきた宇宙一の暗殺者・カマキラーギン。 小さな虫の姿から人間大になるや「頭が高い」とわめき出してビリオンと一悶着を演じるとあっさり蹴り倒されるが、その真の能力は、 眠りに落ちた標的を夢の世界に連れ込んで一方的に攻撃する事で…………なんか、凄くあっさり、 マグマベースに潜り込んでいるのですが。
 コウモルギンとは、本当になんだったのか。
 それはそれとして、学、そしてレミが死を呼ぶ夢の世界に取り込まれ、夢の中で受けたダメージが現実の肉体にもダメージを与える、 恐るべき敵のスタンド能力に気付く星川兄妹。
 「この次眠った時、それがファイブマンの最期!」
 最初にカマキリが「俺様を誰と心得る」とかパロディやり始めた時はどうなる事かと思いましたが、 カマキリを招聘したドルドラは割と真面目に作戦を展開し、睡眠不足のファイブマンを襲撃する銀帝軍。
 ドルドラの投げつけた催眠ガス弾により路上で眠り込んでしまったファイブマンは、 夢の世界でカマキリの攻撃を受けて絶体絶命の窮地に陥るが、学と一緒に虫取りをしていたゲスト少年がスタンド攻撃中のカマキリ本体 (虫モード)を発見すると、むんずと鷲掴みにした上で地面に叩きつけ……なんだか、 解決手段も第3部ぐらいの『ジョジョの奇妙な冒険』っぽいノリ(笑) (※ちなみに、放映時期と第3部の連載時期が重なっていたり)
 スタンド使いがダメージを受けた事で夢の世界から解放された5人は、小型カマキリを揃ってつつき回すと、 学アニキのやたら気合の入った「地球戦隊!」で揃い踏み。
 「夢の中ではいいようにいたぶってくれたな。今度は俺たちの本当の力を見せてやるぜ!」
 さすがに虫モードのままぷちっと潰される事はなく、主題歌に乗せてブラザーコンビネーションが炸裂すると、 アースカノンでファイヤー!
 ゴルリン23号が召喚されて巨大カマキリが誕生するが、本体の戦闘能力は弱い設定なので巨大化しても盛り上げようがなく、 初使用のシールドを手にしたスターファイブが適度に殴り飛ばしてから、ハングビームエンド(やっと聞き取れた)。
 ファイブマンの窮地を子供が救う → (為に)虫取り少年をゲストで出す → (登場の説得力を上げる為に) 環境問題を絡めてテーマ性をまぶす、と逆算で要素が組み込まれているのはテクニカルなところで、最後も、 ようやく見つけた蝶を捕まえるがすぐに逃がす、と手堅いオチ。
 安心して眠れるようになった兄妹が家路につくほのぼの大団円から、次回――宇宙から来たのど自慢?

◆第28話「地獄の合唱(コーラス)」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 地球に突如として飛来した謎の宇宙船から大音量で歌声が響き渡り……迷惑さ加減が、なんだかボーゾック。
 だが市民は何故かその歌声に聞き惚れ、地上に降り立ったのは、鎧姿の男とコオロギ型の異星人、そして、 ギ、ギンガマン?!
 「わぁ〜、格好いい!」
 「ほんと……なんて素敵な歌なんでしょう」
 レミと数美までうっとりした視線を男に向け、女性陣には投げキッスを、男性陣にはトランプを飛ばす、謎のキザ男。
 「ウェルカム、ファイブマン」
 「俺たちを知っているとは、何者だ!」
 「バルガイヤー初代艦長、シュ〜バ〜リェーーー」
 キザ男は朗々と美声を響かせ、これは、つまり、ジュリーなのか……?
 「バックコーラスを務めるのは、ギンガマーーーン」
 そして、本当にギンガマンだった(笑)
 開幕からフルスロットルで奇天烈が絨毯爆撃されていき、銀帝軍の第一次銀河遠征作戦で得た褒賞を手に、 故郷の星において優雅でただれた生活を送っていた初代艦長は、ひたすらマイペース。
 「美味い酒に美しい女。まさに薔薇色の日々であった。だが、そんな生活にも、退屈した。 そこで銀河の歌手にでもなろうかと思ったという説明では、いかがかな〜〜〜」
 星川シスターズが敵意を全く見せずに熱視線を送り続ける中、 銀河闘士コオロギンのバイオリンに合わせてシュバリェが美声を響かせると星川ブラザーズの脳に激しい痛みが走り、 変身する赤青黒だが地獄のコーラスにより近付く事も出来ずに叩き伏せられ…… 色々出鱈目・イメージカラーが白・手持ち装備がステッキ・キザ……ともしかして、 かの“白い鳥人”ビッグワンがモチーフだったりするのでしょうか。
 つまり、ビッグワン=宮内洋=歌が……=じ、地獄のコーラス?!(手記はここで途切れている)
 近い作品では、キロス→ヤミマル、の流れを感じますが、いまひとつ上手くはまらなかったキザ系悪役へのこだわりがあったのか、 或いは“鎧もの”の取り込みのように、当時の流行が何かあったのか(この点では、キロスもヤミマルも、 ヤンキー要素を持っていたのですが、今のところシュバリェは、そこから離れた感じ)。
 バルガイヤーではザザとドルドラも骨抜きに魅了され、最近なにかとストレスの溜まりがちなメドー様は、 歌の力でコオロギを巨大化させたシュバリェに洗脳ソング大作戦をプレゼンされると歓喜の涙をこぼし、俺、 会社辞めて歌手デビューするんだ、と言い出したOBの帰還で銀帝軍に走る大激震。
 とりあえず、新たな強敵なのか、猛暑が生んだ夏の幻なのか判断に悩みますが、シュバリェは巨大コオロギの肩に乗って 「HERO(ヒーローになる時、それは今)」(甲斐バンド)を熱唱し、それを阻止するべくスターファイブを発進させるファイブマン。 コックピットでは赤青黒の後ろに座る数美とレミが、相変わらず両手を組み合わせてシュバリェを見つめ続けているのが、 なかなか突き抜けた演出。
 「シュバリェ! 地獄の歌など歌わせるものか!」
 「……折角いい気持ちで歌っていたのに、邪魔をするか。無粋な奴め!」
 殴りかかるスターファイブだったが、音波攻撃に行く手を阻まれた上、シルクハット攻撃を受け、スーパー合体も失敗。 その際の衝撃でシスターズが正気に戻るもスターファイブのダメージは大きく、代わりに立ち向かうのは、アーサーが乗ったファイブロボ!
 なんだかもうすっかりファイブロボを操縦してしまえるアーサーですが、おそらく星川博士は科学アカデミアに在籍していた事があり、 星博士の下でプロトコロンさんの開発プロジェクトに参加していたに違いありません。
 「兄弟ロボットのチームワークを見せてやるんだ!」
 スーパー合体不能の危機に、学アニキがファイブロボに乗り込むと二大ロボの物量で逆襲を目指すが、地獄のコーラスの前に立ち往生。
 「歌だ! 歌には歌で対抗するんだ!」
 近距離でナパームを浴びて脳細胞がエマージェンシーの学アニキは矢継ぎ早に対抗策を思いつき、コックピットで始まる主題歌の大合唱。 劇中人物による主題歌の歌唱はメタすぎて少々乗りにくく(以前に『チェンジマン』でもやってますが、 ストーリー上の重要回では無かったですし)、この辺り、ドレミファイト回は改めて選曲が良かったな、と。
 他に何を歌うのか、と考えると難しいですし、既に、5くん人形(第四の壁を越え気味)が居るといえば居るのですが。
 兄妹コーラスvs地獄のコーラス、もはや音量勝負の歌合戦に勝利したファイブマンは、主題歌2番の歌詞をバックに、 スターファイブがキャリアに変形すると、その上にファイブロボが乗るライディングファイブロボを発動し、 兄弟ロボフライングアタックでコオロギ闘士を一刀両断(これは面白いアイデアでした)。
 「見たか! たとえ合体できなくても、二つの力を一つに合わせる事ができるんだ!」
 「……ふふっ、ファイブマン、帰ってきた甲斐があったぞ。おまえたちとの戦い、面白くなりそうだ。ふっ」
 パラボラアンテナ型宇宙船に乗ったシュバリェはギンガマンを背に従えて離脱していき……どうやら銀帝軍に新戦力登場! なのですが、 勢いに任せてギンガマン復活! のインパクトが(今見ると)かなり大きく、初代艦長とコーラス部分のハッタリに加え、 サー・カウラーとエイリアンハンター部隊(『超新星フラッシュマン』)みたいなイメージもあったのでしょうか。
 なお、シュバリェを演じるのは、その『フラッシュマン』で、ダイ/グリーンフラッシュを演じた植村喜八郎さんですが、 衣装と化粧があるにしても、全く同じ役者さんに思えなくて凄い。
 九州の地で解体寸前となったギンテイジャーに濃いめの味付けの追加戦士が助っ人に現れ、 故事に則り宿敵強奪は発生してしまうのか?! 果たしてガロア艦長は20年越しの因縁を活かしきる事が出来るのか、 それともスーパーマルチタクシードライバーへの転職を余儀なくされてしまうのか……予断を許さぬ緊迫した状況の一方で、 合間合間に挿入される5くん人形の気の抜けた感じが如何ともしがたいですが、次回――更なる衝撃?!
 ところで、文矢と子供たちによって愛情を込めて作られたのは同じながら、 “悪役”の人形であったが故に悪として振る舞う事を余儀なくされ、 毎度5くん人形に折檻を受ける羽目になるガロアくん人形の扱いがなかなかに不条理で気になってしまうのですが、 風よ、雲よ、太陽よ、心あらば教えてくれ。なぜこの世に産まれたのだ!
 どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!

◆第29話「合身vs合体」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 今回は格好いいサブタイトル。
 「ふふふ、貴様等も、このバルガイヤー初代艦長シュバリェ様にかかれば、敵ではない。ここにまた一つ、不敗の神話が生まれるのだ」
 初代艦長シュバリエは、無重力シャボン玉を吐き出すカニギンを星川兄妹にけしかけ、さすがにオペラ調は継続しなかったものの、 ちょっと抑揚に癖を付けて独特の台詞回しは維持。
 ファイブマンが変身すると、「抹殺」の声に合わせてギンガマンが5人に襲いかかってコーラス要員だけではないアクションを見せるが (同時に、シュバリェとの直接戦闘を安売りしていないのが上手い)、そこに現れたアリギンが何故かカニに溶解液を浴びせると、 弱ったカニをバルガイヤーへと拉致していき、冒頭から早速、内輪もめ。
 「帰ってきたぜ、バルガイヤー」
 それを追ったシュバリェが歌いながら基地内に現れてガロアと睨み合いつつ、 背後にウインクを飛ばすとドルドラとザザがメロメロになり、ドルドラさんは、ちょっと可愛い路線でも許せます(笑)
 「シュバ様〜」
 その一方でシュバリェとガロアの無言の対峙は格好良く、現役艦長はシュバリェの投げたタロットカードを目にも止まらぬ剣の一閃で両断し、 強烈な存在感を放つ悪役の登場により、それと衝突する艦長の株価が急上昇するミラクル(笑)
 ……いやホント、無能な負け犬として徹底的に情けなく描かれたりしなくて良かったです。
 「そんな怖い顔してると……女にモテないぜ」
 シュバリェの挑発をいなしたガロアは、ファイブマン殲滅の為の最後の作戦に取りかかると宣言し、 生み出される合身銀河闘士カニアリギン!(意識していたかはわかりませんが、左右非対称デザインは、 『デンジマン』のベーダー怪物を思わせるところ)
 「既にマグマベースの位置はわかっている! 行けカニアリギン! 総攻撃だ!!」
 あ、カマキラーギンの情報が、役に立っていた(笑)
 「お手並み拝見と、いきますかな」
 名前の語呂も良くなったカニアリギンは、合体能力・強酸シャボン玉を使ってマグマベースを強襲し、溶解していく内部機構。
 「「もはやこれまでの銀河闘士とは」」
 「違うガニー!」「アリー!」
 見た目は凶悪になるも微妙にギャグの抜けない合体銀河闘士だが、そのパワーにファイブマンは大苦戦。 辛うじて基地の外に叩き出すも、待機していたドンゴロスがゴルリン24号を召喚し、早くも巨大化。
 「マグマベースを溶かしたれー!」
 巨大カニアリを迎撃しようとするファイブロボだが超次元ソードを折られてしまい、 その間にマグマベースに侵入したドンゴロス部隊の破壊工作により、スターキャリア発進不能。
 「銀河皇帝メドー様ぁ! ファイブマンの基地の運命はもはや時間の問題。銀帝軍ゾーンの勝利間違いなしです!」
 「これまでの賭け金、返してもらわねばな」
 ここまでがAパートに詰め込まれる怒濤の展開で、史上最大の窮地に追い込まれるファイブマンだが、 ドンゴロス部隊の前に立ちはだかったのは、アーサーG6!
 「こっから先は一歩も通さないぞ! アーサーフラッシュ!」
 飛び道具、仕込まれていた(笑)
 ま、まあ、子守ロボットとしては、不審者への威嚇・迎撃用に銃火器を携帯しておくのは、世紀末TOKYOでは当たり前ですね!
 別働隊のベース突入を知った赤は、単身で基地へ向かうとアーサーを助けてドンゴロスを叩き出すが、続いてザザとドルドラに襲われて、 変身解除。
 アーサーをスターキャリアーへと向かわせた学は、咄嗟に落とし穴のスイッチを発動し、基地の中にダストシュートを用意しておくのは、 スーパー戦隊では当然のセキュリティです!
 手動でロックを解除してキャリアーは発進するも、学は気絶。青黒桃黄はスーパ合体を発動するが、必殺の高速パンチを回避され、 内も外も続く大ピンチ。
 「俺を忘れてもらっては困るな」
 意識を取り戻した学の前にはビリオンが現れ、ゾーン幹部総出の波状攻撃で、一難去ってはまた一難!  と畳みかける危機は盛り上がるのですが、最後の難敵! というよりも、一番弱ってから出てきた! になるのが、 ビリオンとてもビリオン。
 「無駄な抵抗はよせ。潔く刀の錆になったらどうだ」
 「黙れ! マグマベースをただの基地だと思っているのか」
 「なに?」
 「父さんと母さんの作った基地を、けがした奴は許さん!」
 ここでベース(星川兄妹にとっては「ホーム」でもある)と両親の思い出を接続するのは手堅く、学、 怒濤の反撃に説得力がしっかりと乗り、飛び蹴りからの猛ラッシュをビリオンに食らわせた学は、 体勢を入れ替えると可燃性の極めて高いガスをビリオンに浴びせて爆発と共に排出し、身内を殺さんばかりのセキュリティは、 東映では当たり前!
 ブリッジに辿り着いた学はマグマベースの武装を解放してファイブロボを砲撃支援。そして……
 「合体! マックス・クロス!」
 ……唐・突。
 せめて、ブリッジに辿り着いたら緊急システムが発動したとか、シュバリェの登場に戦力強化を思案していたら隠しプラグラムを見つけたとか、 このエピソード内でも良かったので、前振りは欲しかったところ (合体にSFロボが必要=第20話以前の星川兄妹はこのシステムについて知らなかった筈なので)。
 ビリオンに向けた「マグマベースをただの基地だと思っているのか」が、気持ちの問題ではなく火力の問題だった、 というのも随分と身も蓋もなくなってしまいましたが、気持ちで勝てるならスーパー合体なんていらないですよね!  と浮上したマグマベースが分離変形して上半身パーツと下半身パーツに分かれると、その間にSFロボが収まって、 ゴーグルロボ似の顔が飛び出し――
 「完成!」
 「「「「マックスマグマ!!」」」」
 …………とっても、箱だった。
 忘れた頃にやってきた圧倒的箱感・マックスマグマは、戦艦がそのまま巨大ロボに、のノリで肩の46センチ砲をカニアリに撃ち込むと、 続けて全身の砲門を開いての一斉発射で、アリカニギンを木っ葉微塵。
 20年前、星川博士は学んだのです。
 そうだ、私の植物再生プロジェクトを邪魔する者が現れたなら、圧倒的火力で消し炭にしてやればいいんだ!
 「おのれぇぇ……」
 乾坤一擲のマグマベース突入作戦に失敗したガロア艦長の頬を、シュバリェの投げたタロットカードが薄く切り裂き、交錯する、白と黒。
 ナレーション「シュバリェの出現で、ガロア艦長の闘志は、いやが上にも、燃え盛る。今と昔、二人の艦長が競い合い、 地球を巡る戦いは、いよいよ、風雲急を告げるのだった」
 前作のスーパーターボビルダーの流れと思われますが、登場時点からそれらしいデザインであったマグマベースの変形により、 スーパー合体を越える3体合体ロボが誕生。ロボといっても箱ですが、 内蔵した箱に顔があって手足が付いていれば十分に3体合体の人型ロボだよね! という理屈で……いいのか……?
 基本的に要塞ロボの系統は好きなだけに、肝心の合体のところでえらく唐突になってしまったのは、物語としては残念でした。
 一方で、シュバリェに引っ張られてガロアが浮上し始めたのは好材料。ナレーションもそれを補強してくれたので、 ガロアの奮戦には期待したいです。

◆第30話「黒ゴルリン」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 星川兄妹は子供達とドッジボールを楽しみ、超人的な跳躍から大回転ボールを小学生に思い切り叩きつけた健は、 日頃の恨みとばかりに学と文矢に超変化球を投げつけ……ドッジボールで、蹴りを、使うな。
 元体育教師として色々ギリギリな健は、「ドッジの帝王」と呼ばれていた過去が明らかになり、激しく大人げないが、 小学生には大人気だった。
 そんな折、増殖を続ける卵爆弾が街を次々と破壊していき、今回も「HERO」を口ずさみながら、シュバリェが登場。
 「では紹介しよう、悪魔の卵の生みの親、合身銀河闘士、イカタマギン!」
 どうしてそうなったのーーー?!
 右半身が焼きイカ、左半身が手足の生えた卵、という二体目にして随分と珍妙な見た目のイカ玉闘士の放つ悪魔の卵に対抗心を燃やすドッジの帝王だが、 敢えなく敗北。卵は爆発する度に2倍に増えていき、2つの卵は4つの卵に、4つの卵は8つの卵に……
 「「「「2ばーい! 2ばーい!」」」」
 なんだか、こんなCMが、あったような……と思ったら、高見山でしょうか。
 ねずみ算式に増えていく爆発卵を前に苦戦するファイブマンの元へ自ら飛来するアースカノンだが、 イカ玉はアースカノンのダメージをものともせずに再生し、イカスミ爆弾で吹き飛ばされるファイブマン。
 「ガロア艦長、ぼやぼやしていると、バルガイヤー艦長の座、シュバリェに返すことになるぞ」
 「ぬぅ……」
 「心配するな。その時は雇ってやるぜ」
 これは、ム・カ・つ・く(笑)
 「おのれぇ、言わせておけば!」
 シュバリェの絶妙な挑発にガロア艦長はまなじりを吊り上げ、 シュバリエの登場によって摩擦の発生する対象が生まれたガロアがキャラクターとして彫塑されていくのは思わぬ化学反応となりましたが、 ここでファイブマンよりもむしろガロア艦長が面白くなってしまうのが、曽田先生らしさでありましょうか(笑)
 逆にいえばこれは曽田戦隊の限界であったのでしょうが、悪役サイドは今でも十分に魅力的な一方で、 今日的な視点からはヒーロー側の個性が足りない印象は(中盤以降になるほど)どうしても足を引っ張る部分はあり、そこには勿論、 当時の“求められているヒーロー像”の問題もあったのでしょうが、シリーズとして突破しなくてはいけない壁になっていたように思われます (個人的に、曽田戦隊で戦隊メンバーの個性が一番印象的なのは、初期作品の『ダイナマン』)。
 そう考えると、次作『ジェットマン』から90年代の戦隊ヒーローの描き方の“変化”の質が見えてくる気がしますが、 特に『ジェットマン』において「恋愛」という要素を一種の劇薬として持ち込む事により、 “否が応でも人間性を剥き出しにせざるを得ない”状況を作り出したのは、けだし慧眼であり、 ロジカルであったなと(「恋愛」という感情は、誰かの前で格好つけたいと思ったり、その逆に、 弱さをさらけ出してもいいと思う事なので)。
 マグマベースに一時撤収したファイブマンだったが、ドッジの帝王のプライドに懸けて単独で悪魔の卵に挑んだ青は、あっさり敗北。 ……した後、子供達にも敗北して帝王の座を剥奪されるが、それがきっかけで学と健は悪魔の卵の攻略法を見出す。
 「健、やっぱりドッジだったな」
 「いや、兄貴の言った通りさ。やっぱりチームワークだったんだ」
 子供たちとのドッジ対決への流れなどは強引極まりないのですが、二人のかわす爽やかな笑顔もあって、妙にいいやり取りに(笑)
 反撃の活路を見出したファイブマンに対し、今回もシュバリェは「抹殺!」コール(合体闘士合わせで、 そもそもこれが『デンジマン』オマージュの意図かもしれません)でギンガマンをけしかけ、一当たりのあと、イカ玉への雪辱戦。
 「見せてやるぞ。ドッジボール兄妹の必殺技」
 からスーパーファイブボールを取り出すと、どこかで見たような恒例のパス回しが始まって、 5人のパワーを込めたボールを叩きつけてイカ玉は大爆発。……もともと、これまでの曽田戦隊の残像が見え隠れする作品ではありましたが、 この辺りはテコ入れ策の一貫として、シリーズ過去作品の要素を意図的に盛り込んだ形でしょうか。
 シュバリェは勝手にゴルリン25号を召喚すると巨大イカ玉を誕生させ、更に姿を見せる、パワードアーマーめいた姿の、 黒ゴルリン! 二対一で追い詰められるスターファイブだったが、アーサー搭乗のファイブロボが救援に駆け付けると、 鉄球ドッジボール勝負に持ち込んで、主題歌をバックにしたエンドボールで巨大イカ玉を倒すのであった。
 シュバリェは、今日のところはほんの挨拶代わり、と黒ゴルリンの肩に乗って去って行き……やたら強調されたドッジボール要素ですが、 マンガ『ドッジ弾平』(こしたてつひろ)の連載が、1989−1995年、アニメ版の放映が1991−1992年であり、 どうやらスーパードッジボールのブームたけなわだった模様。
 でも、蹴りは使うな。

◆第31話「あぶない母」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 狸の像だらけの寺で宇宙人に襲われる母・みどりの悪夢を見たレミは、夢に見た通りの光景に出くわして母と思われる女性を助けるが、 その前に現れる道着姿の宇宙人たち。
 「おまえも、カンフーを使うらしいが大人しくその女を渡さぬと命はないぞ」
 かくして宇宙カンフー対決が始まり、大暴れするレミだがトラバサミの罠で宙吊りにされてしまい、そこに現れたのはドルドラとザザと、 合身銀河闘士タヌキツネギン!
 母みどりに銀河カンフー軍団、更には現場に現れたドルドラ、ザザ、銀河闘士そのものまでもがタヌキツネの作り出した幻術であり、 タヌキとキツネが真っ二つ、な名前からデザインから何もかもストレートすぎるのが“面白い”の領域に入っていて、 戦隊の突破口の一つは怪人の面白さだな、と改めて。
 兄妹が助けに駆け付けて幻影ドルドラらは一時撤退するが、幻影みどりがそこに姿を見せ、 感動のあまり20年の時の流れを忘却しすぎではあるのですが、別れた当時の年齢の違いなどから、 母から名前を呼ばれるのと距離の詰め方にそれぞれ差があるのが、丁寧な演出。
 再会の喜びに声を震わせるも弟妹の気持ちを慮り、数美と健が駆け寄るのを見守る長兄の学(二人の姿に、 一歩踏み出すもそこで止まるのが素晴らしい)、そして記憶に残らぬ母の姿に、 最後まで距離を取って無言で佇んでいる末弟の文矢の芝居が凄く良くて沁みます。
 「……文矢……文矢なのね? ……文矢……あの、赤ちゃんだった?」
 「…………母さぁん!!」
 文矢は感極まって母に抱きつき……丁寧な描写であればあるこそ、これは全て銀河闘士の作り出した幻影です、 とこの時点で仕掛けが割れているのが、えっぐい……!!
 「おのれ……麗しい光景もそこまでだ!!」
 再登場した幻影ドルドラもノリノリで煽り立て、予告時点でこの母は偽物だろうと思わせ、早めの種明かしをしながらも、 感動の再会を情感たっぷりに描く事で、茶番ではなく悲劇に仕立て上げるスタッフが邪悪だ!
 「母さんには指一本触れさせんぞ!」
 「行くぞ!」
 「「「「「ファイブマン!!」」」」」
 テンションマックスでカンフー軍団を蹴散らした5人のブラスター攻撃は幻影をすり抜け、 慌てた幻影ドルドラらは幻影みどりをさらって撤収。
 「ドルドラ! 口先ばかりで、またもや失敗を見せつける気か!」
 皇帝陛下にお叱りを受けたドルドラは偽みどりを人質に使い、ブラスターの一件と20年の歳月を指摘する学だがレミは飛び出してしまい、 合間に入る5くん人形のターンが、空気台無しで大変辛い。
 罠にはまったレミは再びカンフー大作戦となるも多勢に無勢で追い詰められるが、アーサーの放った妨害電波により幻影が消滅し、 そのショックで気が狂ってしまう(としか思えない描写をされる)タヌキツネ。
 「……幻……母さんも幻……」
 ガックリと崩れ落ちるレミだが、アーサーが電波の発信源を特定し……さあ、オトシマエの時間だ。
 ドルドラ一行が邪魔に入ってレミが単独先行し、タヌキツネのアジトに乗り込むと、幻影の資料映像の中に、 これまで見たことのない母の姿を発見。フィルムを回収すると兄妹揃ってタヌキツネとの戦いとなり、 感情の流れとしてはレミ回である事よりも、5人でカチコミをかけた方が盛り上がったので、 ドルドラの邪魔は余計だった気がして惜しい(作戦放棄後に、タヌキツネを守るように動くのも説得力が薄いですし)。
 怒りのイエローの猛攻から、SFボールを取り出し……あ、アースカノン?!
 前回編み出した必殺技は勢いの産物では無かったようで、タヌキツネに叩き込まれるエンドボール。 ゴルリン26号が召喚されて巨大タヌキツネが誕生し、うどんもそばもパスタヌキ攻撃に苦しむファイブロボだったが、 超次元ソードにより拘束を切り裂くと、久々な気がする「正義の剣を、受けてみよ!」でフィニッシュ。
 レミが回収したフィルムを再生した兄妹は、日時も場所も不明ながら、 母みどりが銀帝軍に捕縛されている姿――少なくとも惑星シドンで死亡していなかった事実を発見し、新たな希望を得て、つづく。
 偽物騒動からレミのアクション祭でお茶を濁されるのかと思ったら、視聴者には虚構とわかった再会劇の描写でぐっと引き締まった秀逸回でした。

◆第32話「学、死す!」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹)
 今日は学アニキの誕生日……だが、弟妹からのプレゼントを開こうとしたその時、5人を襲う、爆発!
 「Happy Birthday〜 ファイブレッド〜」
 「シュバリェ!」
 「俺からもプレゼントを贈ろう。受け取れ。ワニカエルギン!」
 凄く嫌な感じの、出てきた。
 さすがに頭部の形が違いすぎて真っ二つには出来なかった結果、ワニの頭部に割れたカエルの頭のような腫瘍が出来ている、 といった風情のこれはこれでグロテスクな合身銀河闘士が登場し、お役御免かと思われたアースカノンを発射すると吹き飛ぶが、 その能力により、なんと時間を巻き戻す!
 時間を自在に操るワニカエルの時間停止能力により一方的にシュバリェの攻撃を受けた赤は、 全身を切り刻まれた末に崖から落下していき……学、死す!
 「安らかに眠れ、ファイブレッド」
 心停止と弟妹たちの慟哭、そしてファイブレッドを貫いたシュバリェの血まみれの剣が克明に描かれ、 内部で更なる路線修正の指示があったのか、前回今回と、東條監督と長石監督が振り切れてきました!
 「……兄貴? 目を開けて? 兄貴ぃ!」
 「兄貴……兄貴が死ぬなんて……どうすりゃいいんだ? 俺たち一体どうすりゃいいんだよ?!」
 支柱を失った兄妹は激しく動揺し、遂に数美が、敗北を宣言。
 「戦いは終わったのよ。あたし達はゾーンに負けたのよ!」
 「な、なに言ってんだ姉さん! そんな事で兄貴が喜ぶとでも思ってるのか!」
 「……あたしは死にたくない。あなた達にも死んでほしくない。学兄さんが死んで、始めてあたしわかったの。 あたしにとって一番大切なのは兄妹なの! 地球の平和なんてどうだっていい!」
 この時点でだいたい真意はわかりますが、学の死という強烈な揺さぶりを発火点として、これまで精々「単独行動しようとする」 「それを止めようとする」ぐらいの違いだった兄妹のリアクションに大きな差を付けたのは新鮮になり、それを単純な絶望ではなく、 別の優先事項を持ち出す形で表現したのも、鮮やか。
 「硫酸の雨で、地球全土を、覆い尽くせ〜〜」
 マグマベースを飛び出した数美は、地球全土に攻勢を仕掛けようとするシュバリェに頭を下げ、命乞い。
 「この美しい顔がやつれ果てるまでこき使ってやるのも、また一興」
 裏切り防止の爆弾首輪をセットされた数美は、そこに現れた健たちにゾーンの支配下でひっそりと生きよう、と提案するも拒絶されると、 シュバリェに殴りかかる文矢を止め、平手打ち、そして裏拳。更に勢いのついた鋭い飛び上段蹴りを顔面に見舞う残虐ファイトから、 健とレミの鳩尾に拳を叩き込み、星川家に代々伝わるスピンキックの直撃を受けた3人は、海へと落下。
 「愚かな。ファイブレッドを失い、兄妹の絆まで失ったか」
 ワニカエルの願いを聞き入れたシュバリェは数美を奴隷として与えるが、それをきっかけにワニカエルはすっかり増長し (この後の展開を見るに、数美が色々と吹き込んだ可能性大)、数美を侍らすと、どこかの誰かさんのような薔薇色の日々に耽溺。 硫酸雨による地上壊滅作戦を放棄して美人奴隷付きニート生活を満喫すると、怒鳴り込んできたシュバリエに反抗し、 自ら宇宙の帝王になると宣言する。
 「おまえはダイヤがなければ何も出来ない。……その事を忘れるな。一度だけチャンスをやろう。頭を冷やせ」
 ステッキの一撃を受け止められるシュバリェだが、すぐに冷静さを取り戻し、 絶大な特殊能力と引き換えに燃費の悪いワニカエルの致命的弱点を指摘。余裕を見せて下がっていく事でキャラの格を保ち、 ワニカエルへの忠誠を装う数美は、ダイヤを集めてくると称すると黒ずくめの姿で宝石店を襲撃!
 「もう……もうあんたなんか姉さんじゃない。ゾーンの手先、俺たちの敵だ」
 数美を止めようとするもバイクで蹴散らされた文矢らの前にはシュバリェが立ちふさがり、直接戦闘を解禁したシュバ様はステッキを剣、 そして銃へと変え、今ならプレミアムバンダイから玩具が出そうです(笑)
 ダイヤ禁断症状に苦しむワニは宝石店に駆け込むが、ダイヤを根こそぎ強奪した筈の数美は、 付近のダイヤモンドは全てシュバリェに持ち去られたと嘘を報告。
 「過去へ、過去へ戻りましょう、ご主人様」
 数美の裏切りは芝居な上で、そこからどうやって過去へ戻らせるのか、が肝心のポイントでしたが…… ここで“開かれなかったプレゼントの箱”が持ち出される、鮮やかな一撃!
 学の誕生日プレゼントは極上のダイヤだった、と吹き込んだ数美にそそのかされるままワニカエルは時間を巻き戻し…… シュバリェの攻撃が無かった事になり、ゾーンの襲撃直後の時間で、甦る学。
 「大成功! 時間よ! 時間が過去に戻ったのよ!」
 兄妹は過去の時間で合流を果たし、必死のワニカエルが開いたプレゼントはまさかのびっくり箱(笑)
 「馬鹿者め! なぜ過去へ戻した!」
 「みんな! 本当の戦いはこれからよ!」
 復活したファイブマンはダイヤエネルギーの尽きたワニカエルに100倍返しの連続攻撃を叩き込み、Vソードアタック!
 ゴルリン27号が召喚されて誕生した巨大ワニカエルは、シールドと銃を駆使したスターファイブにあっさり撃破され、 夕暮れの海をバックに開かれる仕切り直しの誕生会。
 「でも、凄かったな。数美の演技」
 「ね!」
 「でもほら、よく言うでしょ。敵を欺く為にはまず味方から、って。でも学兄さん、今度死んだら、もう絶対助けてあげないんだから」
 「ああ、約束する。俺は死なない。ゾーンを倒すまではね」
 妹からの軽い冗談に、真顔で返す男、星川学。
 新しく用意されたプレゼントは、びっくり箱どころか中に火薬が仕掛けられており、腰を抜かす学に弟妹は揃って大はしゃぎ。 打ち上げられた落下傘にぶら下がっていたのは……の、呪いの人形?!
 ナレーション「数美の働きにより、学は甦った。ファイブマンは死をも乗り越え、地球の平和の為に戦うのだ」
 さらっと凄い内容でナレーションさんがまとめましたが、一切の誇張が無いのが、恐ろしい。
 井上脚本×身内バトルというと、『光戦隊マスクマン』第13話「アイドルを追え!」(監督:東條昭平)、 『高速戦隊ターボレンジャー』第20話「暴魔族 はるな」(監督:東條昭平)に続き、4年で3回目となりましたが、 尻上がりに出来が良くなったのは、お見事。
 「メンバーの一人が欠ける」「その救出の為に敵に接近する」「仲間と敵対関係になり本気バトル」 の要点は『ターボ』第20話と同じ上で、過去へと戻る際のキーが冒頭にさりげなく配置されていたのが実に綺麗に決まり、 またそれが“家族の象徴”になっている事で、『ファイブマン』としての完成度が高まるのが、会心。
 ちなみに井上敏樹は、『超新星フラッシュマン』第38話「ジンが死ぬ日」(監督:長石多可男)でも、 誕生日にレッドが酷い目に遭う話を書いており、「フラッシュ星、本当に酷い星だった……」。
 今回の被害者となった学アニキ、劇中で心停止が確認される戦隊ヒーロー、はシリーズ史の中でも割と珍しいと思われますが、 更にそこから甦ったヒーロー、として歴史に名を刻む事になりました(もしかすると、 クローバーキング以来か……?)。
 次回――またちょっと緩めの雰囲気ですが、予告の映像で、某不憫枠の人が宙を舞っているらしき姿があったのが、 大変気になります(笑)

→〔その5へ続く〕

(2024年7月31日)

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