■『地球戦隊ファイブマン』感想まとめ2■


“Wow wow wow wow マイ・ブラザー
Wow wow wow wow マイ・シスター”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『地球戦隊ファイブマン』 感想の、まとめ2(9話〜16話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第9話「登場ギンガマン」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 その後の歴史を知っていると、衝撃的なサブタイトル(笑)
 ドルドラの指揮の下、銀河闘士ガガーギンが商店街でバイオテロを決行し、結構な数の被害者を出した後で、 唾液を浴びると「たちまち腐り果てて死ぬ」とか恐ろしい事を言い出して戦慄しましたが、この後の展開を見ると、 作戦をスムーズに進める為の誇大広告だった模様。
 執拗に市民を追い回す銀帝軍だが、それを妨げて突き刺さる複数の銃弾。
 「おのれ、何ものだ?!」
 「「「「「銀河戦隊・ギンガマン!」」」」」
 高いところでポーズを決めたのは、5人のエイリアンの、ニューヒーロー……?!
 「私たちは、宇宙の平和を守る、愛と正義の、エイリアンです」
 「宇宙の平和を乱す銀帝軍ゾーン、今日こそ許しませんぞ」
 5人のエイリアンはキレのいい動きでそれぞれ名乗ると、一斉にポーズを決めて力強く爆発を背負い、すっかり出遅れて、 茂みの中から様子を窺うファイブマン(笑)
 「俺たちの真似なんかしやがって」
 「ホント、俺たちより派手だぜ」
 めらめらと嫉妬の炎を燃やすファイブマンの前で、ちょっとコミカルなBGMとSEで戦闘が始まり、 銀河炸裂!!
 〔エイリアン=ゾーン=悪〕
 と凝り固まっているファイブマンは、特に協力するわけでもなく困惑しながらこれを見つめ、君たちは君たちで、それでいいのか。
 ……まあ、わざとらしすぎる台詞に、各担当色をマフラーで表現していたり(偽ライダーオマージュと思われます)、もう、 すっごく露骨ではあるわけですが(笑)
 ギンガマンの猛攻にゾーンは一時撤退し、更に呼ばれる医療班が、ガスの被害にあった人々を治療。
 人々に喝采を持って迎えられるギンガマンだが、ファイブマンは、疑いの目しか向けていなかった。
 すっかり妬みと嫉みから猜疑心の塊みたいになってしまったファイブマンですが、 台詞の上では「ゾーンのエイリアン」と言っているので、星川兄妹的には、ゾーン所属の異星人かそうでないかの分類があるのかもしれません。 それが映像からは伝わってこず、ヒーローが言っているからそういうもの、で押し切るような形になってしまったのは残念。
 ギンガマンはすっかり商店街の人気者となってTV局の取材まで受け、あやかったぎんが団子の大ヒットを見て、 作るならファイブ団子にしろよ?! と思わず飛び出す文矢と健だが、ギンガマンを信じる人々から非難囂々。
 「やめてよ! エイリアンはみんな悪いと決めつけるのは間違ってる!」
 「そうだそうだ! 姿形で判断しちゃなんねぇ! 俺たちはみんな、ハートで付き合ってるんだ!」
 人畜非道の復讐鬼どもめ! と言葉の刃がグサグサ突き刺さるが、突如として銭湯に乗り込んできたガガーギンが、 ギンガマンと一番親しい少年をさらっていくと、ガガーギンの放つ閃光を浴びた人々は「メドー」「メドー」と大合唱を始め、 少年を連れ去ったバルガイヤー内部で、ゾーンの手先であった正体を現すギンガマン。
 「ここからが私たちの真の作戦なのよ」
 ガガーギンによるバイオテロ → ギンガマンによる阻止 → マスコミの飛びつきそうな話題作り → 一番仲の良い少年をさらう → ギンガマンvsガガーギンの対決を煽る → 中継カメラを利用して全世界に洗脳フラッシュを放つ → ざっと10億人がゾーンの下僕だ!
 と人類のメディアを利用してドルドラは地球の実効支配をもくろみ、始まる茶番の決闘劇。
 一方、まんまと蛾フラッシュを受けて戦闘不能に陥っていたファイブマン男衆は電気ショックによって回復し、 いつでも捕虜を尋問する準備は整っています!
 ゾーンの目論見を見破ったファイブマンは、間一髪で全世界洗脳中継を阻止すると、救い出した少年の口から真実が明らかになり、 形勢逆転。
 「さすがファイブマン! よくも見破ったわね!」
 凄いスピードで北極から来たなドルドラ(笑)
 「本当の戦士の姿を見せてやるぜ!」
 真のヒーローの主題歌バトルが中継され、現場からレポートを続ける突撃レポーター(演じるは、 『爆走兄弟レッツ&ゴー』の星馬烈など、声優としての活躍も多い渕崎ゆり子さん)が大活躍。
 ギンガマンは次々と物言わぬ屍と化し、残った蛾闘士には、ブラザーズフォーメーションからのハイパーファイブキック! そして、 ブラザーアタック!
 ゴルリン8号が召喚されると巨大蛾に空中からビーム攻撃を受けるファイブロボだが、 カウンター気味に投げ飛ばしてからの超次元ソード。
 「正義の剣を、受けてみろ!」
 外した切っ先を投げつけてから手持ちの刀身を伸ばす二段攻撃で蛾を倒し、前作に続き、 巨大戦のフィニッシュに一工夫が施されているのは、嬉しいところ(後続作品では『電磁戦隊メガレンジャー』が継承している要素といえます)。
 ドルドラの卑劣な作戦は水泡に帰し、ファイブマンが少年と握手を交わす姿が全世界に中継されて突撃レポーターの挨拶で締めとなり、 予告からサブタイトルまで、掴みのインパクトは強烈だったギンガマンですが、終わってみると、 どういうわけか突撃レポーター回。
 “悪の戦隊”のアイデアはともかく、普段、 意図的に見ないフリをしている“報道”という要素を取り込む事でセルフパロディが行きすぎてやや露悪的な領域に足を突っ込んでしまっており、 素直に楽しみにくい部分が出てしまったのですが、名もなき「レポーター」(役名)がやたらめったら台詞も出番も多くて暴れ回った結果、 最終的に、戦隊パロディというよりも、劇場型犯罪だったり突撃リポーターだったりに対する社会風刺劇めいた内容に着地し、 当時なにか、そういう流行や問題でもあったのでしょうか……(前年の宮崎事件の関連?)。
 次回――昔の男?!
 ところで、第2話ではアーサーに酷い言葉を投げつけた上に妹弟を危機に陥らせ、 第7話では助けを求める通信とか罠に決まっていると切り捨て、これといって良いところのないまま、 未だに単独メイン回のない健の扱いが割と酷いのですが、次男のメイン回はいつだ!

◆第10話「俺の血を吸え!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)
 サブタイトルは脚本家が付けているとは限りませんが、クレジットに「井上敏樹」と出ると、あ、やっぱり感があります(笑)
 星川兄妹が河川敷でバーべーキュー中、突然転がってくる、巨大な岩。
 「ファイブマン! 食後には休息が必要なようだな!」
 なおこの岩については、この後全く触れられないのですが、多分、銀河闘士のパワー見せ。
 盾と鎖鉄球を構え、正統派の強そうな銀河闘士カブトギンは、大地を割り、ファイブラスターを弾き返す高い戦闘力を見せ、青兄さん、 弟の落ちた亀裂に戦闘員を放り込まないで下さい。
 かくなる上は、と余裕を見せて高笑いするドルドラを直接殴りにいく黒だが、横合いから何者かに撃ち落とされ、そこに現れたのは、 青いシャツに白いマントを羽織った、ちょっと怪傑な感じの人。
 「ドルドラは俺の獲物。――誰にも渡さん!」
 その正体は、ゾーンに最初に滅ぼされた第8銀河系ロマノ星王家の生き残り、レイ・ゾーバ(昔の男では無かった!)。
 前回のギンガマンへの対応とは打って変わって、打倒ゾーンの為に同志として手を組めるかもしれない、と考える星川兄妹だが、 復讐の為にドルドラを付け狙うマント王子は自らをサイボーグ化しており、そのエネルギー源として人間の血を必要とするのだった!
 (もう少し凝った衣装でも良かったのでは……? と思うキャラなのですが、シンプルな衣装は、 体内の機械部品を見せたい都合だったのでしょうか)
 「馬鹿な! 復讐の為には他人を傷付けてもいいというのか」
 「なんとでも言え。このレイ・ゾーバ、体を捨てた時……心も捨てた」
 「嘘だ! あんたは今でも愛している。滅ぼされた星を、妹を、両親を。だからこそドルドラに復讐しようとしてるんじゃないのか?  あんたは心を捨てたわけじゃない!」
 情念の内に潜む二律背反を真っ正面から突きつける文矢だが、そこへドルドラが現れると、 奴隷として生かされていた妹ララーを救いたければファイブマンと戦え、とゾーバをけしかける。
 「今日からおまえもあたしの操り人形。死ぬまでたっぷり可愛がってやる」
 サディスティックな表情を見せるドルドラだが、ゾーバはファイブマンではなく、偽の妹を攻撃。
 「ふん、これが銀河博士と言われたドルドラの策か! ララーは王家の血を引く、誇り高き女。本物のララーならば、捕まる前に、 自害するはず!」
 見破った理由が戦国(笑)
 ここまでで最強クラスの銀河闘士を投入したにも拘わらず、いきなり殴られそうになる、滅ぼしたと思っていた星の生き残りに襲われる、 基地に帰ったらその件で怒られる、偽物作戦があっさり見破られる、とビックリ顔を連発する羽目に陥るドルドラを、 残念淵の向こう側でビリオンが手招きしています。
 復讐の銃弾をカブト闘士に防がれたサイボーグ王子は、反撃の鎖鉄球から文矢にかばわれるもエネルギーの消耗が激しく、 血を求めて少女を襲おうとしたところを、文矢に止められる。
 「俺は、俺たちは、復讐の為だけに戦っているんじゃない。宇宙の命を守る為に、愛の為に戦っているんだ」
 「愛などいらぬ! 愛があるから、悲しみがあるのだ」
 文矢は、俺の血を吸え、とゾーバに促し、エネルギー補給の為に少し貰えばいいのかと思いきや「自らの命も捨てるというのか」 と吸い尽くす気満々なのですが……ゾーンに最初に滅ぼされた星出身という話なので、最低でも20年以上、 恐らくは数十年に渡ってドルドラを追っていたと思われ、とんだ銀河単位の連続殺人鬼なのでは (吸血剣士改造がここまで進んだのは、ここ数年の事かもしれませんが)。
 文矢の首筋にがぶりと行こうとする吸血王子だが、カブト闘士の攻撃で吹き飛ばされて再び乱戦に。 安定して役立たずになりつつあるボディガードに代わって自ら武器を構えたドルドラが思わぬ強さを発揮するが、 トドメを刺そうと踏み込んできたドルドラに組み付いたゾーバは、体内の自爆装置を作動させる。
 「一緒に地獄に行くのだ、ドルドラ!」
 ドルドラが本日5回目の顔芸を余儀なくされる一方、上官の危機に全く気付かずファイブマンを追い詰めていたカブト闘士だが、 それを目にしたゾーバは、自らの復讐よりもファイブマンを守る事を選び、カブトムシに特攻するとダイビング自爆。 決死の選択に救われたファイブマンは瀕死のカブト闘士にブラザーアタックを叩き込み、巨大戦では超次元ソードでのフィニッシュ時に、 黒がセンターに。
 「正義の剣を、受けてみろ!」
 尊い犠牲により強敵カブト闘士を打ち破ったファイブマンは、東映特撮名物:勝手にお墓を見つめ、ゾーバに託されたものの重さを想う。
 「奴は俺たちに自分の希望を託したんだ。明日への希望を」
 割と気軽に霊魂がフワフワしている世界なのか、自爆スイッチを発動した死の間際に及んで、昔の心を取り戻したのだ、 と語ったゾーバの魂は母星へと帰っていき……一応美しく落着するものの、どうにも漂う、この人との共闘は無理だったんじゃないかな感。
 ナレーション「戦えファイブマン。この世の命を守る為に!」
 戦隊史としては、『ジェットマン』前年に井上敏樹が、復讐の孕む狂気をストレートに描いたエピソードを書いていたのは、 注目点でありましょうか。
 次回ようやく次男のターン。

◆第11話「あぶない宝探し」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:藤井邦夫)
 宝くじが当たったと大喜びする健だが、その額面は……
 「100円でも当たりは当たり!」
 ……いやそれ、連番で必ず当たる分では。
 1クール目の終了も間近になってようやくメイン回の巡ってきた健は、いっかっーくせんきーーんを夢見るちょっと浮かれた次男坊となり (目的はニュータウン小学校の再建資金とされてはいますが)、以前から少々気になってはいたのですが、滑舌、というか、発声、 が余り良くない感。
 その頃、半分に割れた宝の地図を手にした銀河商人ドンゴロスは、太古の昔、 古代宇宙人が地球に残したとされる宝物をモグラルギンに捜索させており……果たしてその正体は、 魔人兜なのか、パコなのか。
 いずれにせよ地球人大迷惑案件の可能性が高いお宝を探すドンゴロスとモグラ闘士は日本の大鷲連山にその在処を絞るが、同じ頃、 健の教え子である新太郎少年が、残り半分の地図を手に大鷲連山に向かっていた。
 かくして地球侵略そっちのけで、お宝を巡る争奪戦が開幕し、動機の核は「少年の夢を守りたい」なのですが、 「宝の地図を渡せ!」とかやっていると、ヒーローサイドも欲に目が眩んでいるように見えて困ります(笑)
 新太郎少年が宝探しに懸命になるのも大好きな小学校を再建したいからであり、とかく取り込みの難しい職業設定ですが、 必然的な拘束時間の発生する場所=学校を第1話で木っ葉微塵に吹き飛ばす一方で、折に触れ、その職業(教師)に基づく “繋がりと精神”を描く事で、教師である事を物語の通奏低音として取り込んでいるのは、お見事。
 また、「教師と生徒」の関係が「ヒーローと子供(大衆)」を投影しているのは、良く出来た設計です。
 手当たり次第に大鷲連山を掘って掘って掘りまくるモグラルギンだが、何やってんのあいつら……?  とドンゴロスの動向を報告したザザにより、宝物の正体に心当たりのあったドルドラが現場に合流。
 「古代宇宙人の残した宝物とは、反重力鉱石だ!」
 「ほんじゃ、ファイブマンの手に渡ったら……」
 「空飛ぶファイブマンとなろう」
 超シリアスな言い回しに合わせ、やたら格好いいイメージイラスト(アメコミ的マッスル体型)が入って変な面白さが発生し、 ゾーンの見立てとしては当然なのですが、小学生が探し求めるお宝を横から掠め取り、 自分たちの強化に利用するファイブマンが誕生する洒落にならない風評被害。
 STOP! 炎上案件! とゾーンに立ち向かうみんなのヒーロー・ファイブマンだが、モグラファイヤーで結構な規模の爆発が起こり、 落石に飲み込まれている内にドンゴロスがいち早くお宝の間に辿り着いてしまう。
 ところがそこにあったのはなんの変哲もない石ころで、無造作に放り投げるドンゴロスだが、 それこそが多分バー○星人が地球に不法投棄していった反重力鉱石。 投げ捨てられた鉱石がまばゆい光を放って宇宙の彼方に飛んでいった際、 大事なサングラスを失ったモグラルギンは目がくらんだ隙にブラザーアタックを叩き込まれ、ゴルリン10号召喚。
 最初からブルーがセンターに座るも地中と地上を自在に出入りするモグラに苦しめられるファイブロボだが、 お約束のハンマーを取り出すと、モグラ叩きから超次元ソード。
 「子供の夢は、俺たちの、宝!」
 お宝の入手には失敗する星川兄妹だが、先生が戻ってきた事の方が嬉しい、と新太郎少年が無邪気に笑い、 そんな生徒は先生にとって宝だ! と綺麗に収めて、つづく。
 セオリー崩しへの意識が強い『ファイブマン』としては優等生的なエピソードで、 〔教師−生徒〕の関係性を補強してくれた点は良かったですが、星川兄妹の基本要素なので、 特に健ならではのエピソードにならなかったのは、物足りず。
 次回――ア、アーサァァァァァァァーーーーーッ?!

◆第12話「アーサー超変型」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 いきなりの巨大戦からスタートする変化球で、銀河闘士デンキウナギンの作り出した幻影に苦戦するファイブマン。 巨大な幻影ウナギの放出した電気エネルギーによりファイブロボは倒れ、投げ出されたファイブマンにはビリオンの刃が迫る大ピンチで、 この後の流れでは大きく扱われませんが、さらっとロボ敗北。
 すんでのところでビリオンの斬撃を受け止める赤だが、弱った敵には戦闘力が上昇する残念悪役体質なビリオンの猛攻を受け、 引き続き窮地。
 追い詰められた5人はブラザーアタックを放つがデンキウナギン本体に全てのアタックを弾き返されてしまい、その間、 ずっと背後に隠れて勝ち誇っているビリオン。
 ファイブマン壊滅の危機に駆け付けたアーサーは、 身を挺して5人をかばうと自ら高圧回路のエネルギーを放出する自爆技でビリオンとデンキウナギを退かせるが、 引き起こした大爆発の反動で行方不明になってしまう。
 大きく破損したアーサーは、スクラップ置き場に転がっていたところを、 スクラップを集めて様々なメカを自作している少年・太郎に拾われ、改造修理によりぽんこつ次郎として覚醒すると、 まさかの「ともだちんこ」。
 2021年現在に見るとだいぶ困惑しますが、マンガ『おぼっちゃまくん』(小林よしのり)の連載が、1986〜1994年。 アニメ版の放映が1989年〜1992年で、人気絶頂期でありましょうか(なおアーサー役の松本利香は、 貧保耐三役でアニメに出演との事)。
 記憶を失い何故か茶魔語を修得してしまったアーサーと太郎少年のほのぼの触れ合いタイムがしばらく展開するが、 死体を確認してこないのはトーシロの仕事、と皇帝陛下のお叱りを受けたビリオンがデンキウナギとと共に姿を見せ、 報復とばかりにアーサーを攻撃。
 更なる電気ショックを浴びたアーサーは空中を浮遊しながら駄洒落を連発し、話の行き先が五里霧中になってきたところで、 学がアーサーを発見。
 「俺たちを助ける為、自分の体を投げ出したアーサー、こんな姿になってしまうなんて……」
 雑ないじめっ子や、アーサーの醜態に呆れて姿を消すビリオンなど、太郎パートは基本ギャグ寄りで展開していたのですが、 学視点では、行方不明になっていた育ての親を探し当てたら完璧にボケていた超ヘビー級の展開で、 一貫してシリアスなファイブマンパートと、愉快な太郎/アーサーパートのアンバランスが、面白いというよりは、 とっちらかってしまった印象。
 ……作品としては、ファイブマンの思考が基本的に重くなりがちなので、アーサーの記憶を失わせる事により、 太郎パートは思い切ってコミカルに振ったのではありましょうが。
 学はひとりぼっちの寂しさから弟が欲しかった太郎の事情を知るが、ファイブマンにトドメを刺そうと巨大ウナギが再び現れ、 モニターでそれを確認した弟妹が合流。
 「次郎こわいよー」
 「助け天丼」
 「飛んで火に入る夏の虫」
 勢いでビリオンまで駄洒落を言ったらどうしようかと思ったのですが、崖っぷちでブレーキが発動したのを感じます。
 絶体絶命の窮地に陥る7人だがその時、巨大ウナギの激しい攻撃が、 アーサーの記憶回路に眠っていた忌まわしい惑星シドンでの出来事をフラッシュバックさせ、 すがりつく太郎少年の存在が決定打となって芋づる式に記憶が甦る、突然の美しい接続!
 ――「アーサー! 子供達を、子供達を頼みましたよー!」
 自分はなんの為にこの20年を過ごしてきたのか……
 「健、文矢、数美、レミ!」
 太郎少年をしっかりと抱えながら記憶を取り戻す姿がやたら劇的で、数分前まで数分前だったので、やや狼狽するレベル(笑)
 育ての親が正気に帰った事で星川兄妹も気力を取り戻し、ファイブマンに変身。
 「貴様等に何が出来る。ここが貴様等の地獄よ!」
 ウナギ本体に挑みかかるも激闘のダメージの蓄積した5人は追い詰められるが、度重なる電気ショックの影響と奇行の果てに、 アーサーの内部に隠されていた設計図が開放。太郎少年の協力により新たなプログラムを打ち込まれたアーサー、飛翔! (駄洒落飛行は伏線だったの?!)
 そして、変形・アースカノン!
 アーサーG6は平べったいデザインの必殺バズーカへと変形し、サポートロボがそのまま必殺バズーカになるという、 これは全く予想外の展開でありました(後、「アーサー」=「アース」も成る程)。
 ファイブマンは、育ての親が破壊兵器になった事実を、父さんが仕込んでいたに違いないと受け入れると、 デンキウナギンに向けてファイア!
 直撃を受けたデンキウナギは大爆発……せずになんか次元の彼方に消滅し、何この思ったよりヤバい兵器。
 「やるじゃねぇか。そう来なくちゃな。おまえ達との戦い、ますます楽しみになったぜ!」
 砲口を向けられたビリオンは、100%チンピラの捨て台詞を残してそそくさと撤収し、1時間後には多分、 (ヤバいヤバい何あれヤバい?!)と酒に逃げています。
 1クール目の締めに投入された必殺バズーカを、アーサーメインで描いて第1話と繋げる趣向は面白かったのですが、 太郎少年を間に挟んだ結果、星川兄妹との距離が(クライマックスに戻ってくるまで)遠くなりすぎてしまい、必殺バズーカ誕生回は、 素直に星川兄妹がもっと隣接したエピソードで見たかったかな、と。
 それでも、アーサーが記憶を取り戻すくだりの劇的さは曽田さんらしい鮮烈さでしたが、直後の設計図開放が雑になってしまい、 太郎少年の要素を使い切る為とはいえ、パッとせず。……というか、 アーサーの繰り返していた駄洒落は父さん秘蔵の駄洒落コレクションで、それを全て聞く事が、設計図の開放条件だったの?!
 アーサーはたまに太郎くんにレンタルされる事になって大団円となり、次回――ファはファイト(死合い)のファ!

◆第13話「ドレミファイト」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 真っ黄色のカンフー道着に身を包み、テンション高く跳ね回りながら合奏の指導をするレミ……そういえば、格闘家ではなく、 音楽の先生でした。
 一方、銀帝軍ではメドー様がバルガイヤーまるごとお仕置きビームを放ち、北極の空に浮かんで巨大戦艦を見下ろすスケール感が素敵。
 「お待ち下さい! 部下の不始末は全てこの私の責任! 罰ならばこの私が受けましょう!」
 更なるお仕置きビームを放とうとするメドー様だが、両手を広げて前に進み出るガロア艦長。
 「さあ罰をこの艦長に!」
 ………………M?
 「さあ、はやぁく!!」
 むしろ、罰してほしい。
 ……地球侵攻が遅々として進まないのはこいつの秘めた性癖が原因なのでは、と若干引き気味になった陛下は罰を取りやめ、 艦長の態度に侠気を感じたドンゴロスは、自ら作戦を任せてほしいと進言。
 「なんだと?」
 ちょっと嫌そうな顔をする艦長だが、ドンゴロスは身も心も凍らせる冷気を吐き出すトドルギンと共に出撃し、 初夏だというのに強烈な寒波に襲われた地球では、物質のみならず、人の感情までが凍り付いてしまう!
 「人間共は、ぬくもりを忘れ歓びを忘れ愛を忘れ、氷のように冷え切った、ただの生きる屍と化す!」
 パトロール中に会敵した学と文矢は変身するが、氷の世界を示すモノトーンのフィルターで、戦士の色もハッキリしない大胆な演出。 二人がトドブレスを受けて苦戦する一方、相変わらずレミはハイテンションで踊り狂っており、凍り付きかける赤黒と、 レミの纏う黄色の差異が鮮烈になって成る程、と思う内に赤黒の方をカラーが侵食。
 青桃も救援に駆け付けて戦闘は水入りとなり、響いてくる明るい歌声に気付く4人。ところが音楽室をザザが襲撃し、 それを追ったレミと生身アクションを挟んで(安定して格下になってきたザザ……)、兄妹が合流。
 入院した親友に代わり音楽部の指導をしていたレミと4人はひとまず音楽室に戻り……すっごく器用に教卓の影に隠れている女子2名(笑)
 ザザの工作により楽器という楽器が無惨に破壊され、トドルギンが活動を再開。世界が氷点下に包まれていく中、学は、 この冷たい闇の中に暖かい光を当てた音楽の力に気付く。
 「みんな、音の出るものは、なんだって楽器なんじゃないのかい?」
 こういった言い回しが、学兄貴は大変格好いい。
 陽動と足止めの為にトドルギンに挑むも冷気を浴びて全滅寸前に陥る赤青桃黒だが、レミと子供たちが草笛やタライなど、 即興の楽器でメロディを奏で始め、響き出す「ドレミの歌」。
 「な、なんやあの音楽は?! この街ではもう音楽はならん筈やのになぁ……!」
 レミが「凍り付いた花の葉を手にして草笛にする」=「不毛の世界で新たに芽吹く命の象徴」であり、 星川一家の最大目標とエピソードにおけるキーアクションがマクロとミクロで重ねられているのが、 実にお見事(草笛から音が出るまで少し時間がかかる、のもそれを鮮やかに補強しています)。
 レミを先頭に子供たちの合奏団が街を練り歩き、シンプルで軽快なメロディと、レミの持つ陽性の空気がしっくりと噛み合い、 子供達の手作りの(自然に隣接した)合奏の楽しさがヒーローと世界を救う――音楽が活路となる展開は、 リアクションの描きやすさや演出効果などからアニメ向きの題材だと思っていたのですが、 生命−自然−死に閉ざされた冬の世界に雪解けをもたらす光、を繋げる事で十分な説得力を与え、実に名シーン。
 またここで、如何にも戦隊な真っ黄色のカンフー道着というレミの衣装が、(通常は赤が擬せられますが)“太陽の光”を思わせるのも、 非常に綺麗にはまりました。
 凍り付いていた赤青桃黒が立ち上がり、ドンゴロスが激しく動揺すると、 草笛を奏でるレミが木の陰から姿を見せるのがやたらに格好良く、兄姉、完全復活。
 「おんどれ! 星川レミ!」
 「本当に音楽を愛する者は、身も心も、決して凍り付くことはない。そしてその演奏は、どんな冷え切った世界をも暖め、 みんなを勇気づけるんだ!」
 「星川レミが、ドレミのレミだって事を教えてあげるわ!」
 「黙れ、黙れ! ドーはドンゴロスのドーだってんねん」
 響いてくる「ドレミの歌」に合わせて巧く切り返すドンゴロスだが……
 「レーはレミーのレー ミーはみんなのミー」
 「「「ファーはファイトのファー!」」」
 「ファ!」
 さあ、音楽の次は死合いの時間だ!
 飛び蹴りからの連続パンチでドンゴロスを昏倒させたレミは生身のままトドルギンと拳をぶつけ合うと、 流れ出した挿入歌に合わせて連続の回し蹴りから空中で変身し、大変、いいキャラ回。
 ファイブイエローはメロディータクト、そしてリボン部分を引っ込めてのドレミ剣でトドに猛攻を浴びせ、 怒・練・眠・破・壮・羅・死・怒!
 「アーサー、アースカノンだ!」
 「ラジャー!」
 コールを受けたアーサーは、胸のVマークが光り輝くとマグマベースから打ち出され…… 話の勢いと挿入歌のテンションに乗せて当たり前のように行われていますが、結構凄い扱いだ……!
 アースカノンの直撃を受けたトドルギンは盛大に吹き飛び、巨大化の都合で引き続き爆発しないのがややカタルシスに欠けますが、 ゴルリン11号登場。ロボ挿入歌初使用で合体トリプルジョイントしたファイブロボは猛烈な冷気を浴びて戦闘不能の危機に陥るが、 両腕にエネルギーを集めて飛び道具からのパンチを放ち、黄がセンターに入っての「正義の剣を、受けてみよ!」で、フィニッシュ。
 温もりを取り戻した世界で、兄妹も加わっての青空演奏会で、響け、歌え、いつも心に音楽を!
 集中すると周囲の事が目に入らなくなる短所があるが、 目の前の誰かを助ける事に懸命になるレミの行動が巡り巡って打倒ゾーンに繋がる、 という形で八百屋回からレミのキャラクター性が一貫した上で、「トドの冷気と音楽の力」に「ゾーンの侵攻と銀河の復興」を照応させ、 音楽室襲撃(学校木っ葉微塵のリフレイン)を挟んで、瓦礫の中から立ち上がる少年少女が世界を甦らせる力になる構成が素晴らしく、 脚本・演出ともに冴え渡る、秀逸回でした。

◆第14話「可愛いウソつき」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 他人の興味を引くためについついウソをついてしまう少女マコは、「ファイブマンの基地を知っている」と口にするも同級生には取り合われないが、 それをコウモルギンに聞かれてしまう。適当な湖にコウモリ闘士を案内した少女は、 たまたま釣りをしていた文矢に助けられるとマグマベースに運び込まれ、これ幸いと基地の内部をうろつき回るが…… やっぱりあったぞ危なげなセキュリティ。
 レーザー照射3秒前、の雰囲気で、あと一歩踏み出していたら、基地内部に身元不明の黒焦げ死体が誕生していたかもしれません。
 (私、またウソをついてしまった……)
 自身の性格に悩んでいる一面も描写され、基地を抜け出そうとした少女はCメカを発進させてしまい、またも一騒動。
 少女に疑いの目を向ける健と、少女に優しく接する文矢が衝突する事になり、何かと損な役回りの多い健は、理想主義のきらいがある学、 脇の甘い末っ子に対して、シビアな視点の持ち主、といった位置づけなのかもですが、学兄貴が締めるところは締めるタイプなので、 いまひとつ差別化しきれていない感(加えて第2話の暴言&突撃が、どうも短慮なイメージを強めています)。
 「まあ、二人とも落ち着けよ。俺たちは戦士である前に、まず先生の筈だろう」
 「公私を、混同するな。俺たちは戦士だ。それが全てに優先するんだ」
 ……すみません、今何か、時空を超えてノイズが。
 「そうだよ。先生ならどんな子でも信じてやらなきゃな。信じる事から、心も通い合うんじゃないか」
 「自分のへまを棚に上げて、説教をする気か?!」
 「へま?」
 「こんな子をしょいこんできたのは誰だ? おまえこそ戦士としての自覚が足りないんじゃないか!」
 健が一番、復讐心に基づく敵視傾向が強い、と見るのがふさわしいのかもしれませんが、 学兄貴が「戦士」よりも「先生」にアイデンティティの重きを置いているのは大変興味深いポイント。
 “青春”の象徴性を重視する80年代戦隊においては、職業・非職業を問わず、 “一般人としての青春”を“戦士としての青春”が上書きするような構造が存在していたのですが、 ここで星川兄妹はヒーロー性と社会性の共存を意識的に行っており、結果としてそれが、“青春”からの切断を発生させています。
 前作『ターボレンジャー』は、時空間として客観的な“青春”と接続する事で、 “一般人としての青春”と“戦士としての青春”の同一化が行われていたのですが、 良くも悪くも「学生である事」と「戦士である事」の相克が無視されてしまっていたのに対して、 今作では「教師である事」と「戦士である事」を星川兄妹(個々の認識に差はあるでしょうが) が別々のものと捉えた上でどちらもやろうとしているのは、後継作品へのブリッジといえる部分でありましょうか。
 となると、第1話において、学校爆破により強制的に“社会の成員としての場”(青春の先) から切り離される事でヒーロー性を高められたのは、話の利便性と共に一つの必然であったのだな、と。
 揉める健と文矢が掴み合いの喧嘩に発展したのは男兄弟らしさが出て良かったところで、 止めようとした少女の靴に発信器が取り付けられていた事が発覚。透視能力や高感度ソナーを持っているのに、 発信器をまともに追跡できない上、少女の言動に振り回されるコウモリ闘士&ドルドラ&ザザの間が抜けすぎて緊迫感が全く出ないのは通して残念でしたが、 少女がウソを謝罪・反省し、主題歌バトル。
 青黒がきっちりと兄弟コンビ攻撃を決め、アーサー射出からアースカノン!
 直撃を受けたコウモリは派手に吹っ飛ぶと腹から火花を上げ、ゴルリン12号が召喚されるが……
 「急げ! 早くしろ!」
 慌てるドルドラという今までにない一幕が入って……転んだ。
 「なんとぶざまな……!」
 「ふん、ゴルリンも、走れば岩につまづくか」
 そして、ゴルリンが現場に間に合わない内に、コウモリ爆死(笑)
 「おのれ!」
 「人生いろいろでございます」
 アースカノン販促キャンペーン中という事もあってか、巨大戦無し、という思い切った構成で、ファイブマンは勝利を収めるのであった。 ……まあ、コミカル要素を挟んだ為に、アースカノンで気持ち良く爆殺という形になりませんでしたが、これをきっかけに次回以降、 ゴルリンも強化されたりするのかしないのか。
 エピソードとしての出来はいまいちでしたが、80−90年代戦隊を繋ぐ星川兄妹の立ち位置が垣間見えたのは興味深く、 次回――艦長、本気?

◆第15話「レッドが二人!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「俺が咲かせたのさ」
 ガロア艦長はシドンの花を餌にして学を倒そうと誘い出し、「粋な演出だろう」……って、自分で言ってしまうのが、こう、ちょっと、 なんというか……ビリオンと同じ匂いを感じます。
 それはそれとして、もはや用済み、と花を切り飛ばすのは格好良く、その光景に学は、20年前の惨劇と、学校の崩壊を重ねて思い出す。
 「一度ならず二度三度……」
 「ふふふふふふふ、ははははは!」
 「許さん!」
 飛び上がった学はファイブレッドへと変身し、パイロット版以来となるガロア艦長との激突という事もあって、ここは大変、格好いい流れ。
 「どうやら、腕を上げたな」
 「おまえを倒す為に!」
 「教えてやろう。――みんなそう言いながら死んでいったんだ!」
 艦長の立ち回りと台詞回しも、第2話で醜態を曝したのと同一人物とは思えない強敵感に溢れ、 大技ガロアハリケーンの直撃を受けるレッド。ガロア艦長の更なる一撃は迫力満点の映像で車の屋根を吹き飛ばし、 追い詰められる赤だが、飛び道具にガソリンが引火して大爆発を起こした事で、戦いは無効試合に終わる。
 「来るな!」
 赤を倒し損ねた艦長は洞窟で体育座りしており、そこを訪れる部下たち。
 「……医者を連れて参ったのです」
 「無駄だ。戦う男は、己の受けた傷など、見られたくないものだ」
 序盤からビリオンと艦長は他のメンバーよりも距離感が少し近いのですが(直々にスカウトされた凄腕剣士みたいな予定だったのかもですが……)、 高まり通じ合う残念パワー!
 学は学で打倒ガロアの為に闇雲に剣を振るうと、鬼気迫る表情で車斬りに挑戦しては失敗を繰り返しており、 弟妹4人が物陰から見つめるのも気付かずにひたすら訓練に打ち込むとシャツを脱ぎ捨て勢い余って半裸になり………… この人から「教師」成分を抜くと、本格的にヤバい人である事が視聴者の胸に突き刺さります。
 皇帝陛下は嫌がらせとして悪魔の銀河植物シドンデモンを作り出し、襲われる人々。
 「わかったぞ。メドー様の御意志が! 我に休む間も与えず、戦えとおおせられるか!」
 報告を受けたガロアはやおら立ち上がり……そう、艦長は、筋金入りのMなのです。
 学が狂気の特訓を続ける中、レッドに成り代わった健がガロアとの電流爆破シドンデスマッチに挑み、 どうしても車斬りを達成できない学は、スーツのリミッターとか解除すれば、 着用して3分経過すると木っ葉微塵に爆発する代わりに無尽蔵のパワーを得られたりするんじゃないか? とマグマベースに一時帰還。
 「パワーだ……ガロアに打ち勝つパワーを身につけるには、どうすればいいんだ?!」
 子供と関わらず「教師」成分が取り除かれた事で力のみを求める戦鬼と化した学は、自分の身代わりとして健が戦っている事に気付くが、 その健レッドはガロアの斬撃でお面を割られて正体がバレて……死ぬほど雑な偽装手段で、どうしてここをサブタイトルにしたのか!
 ただ、怒りのガロアの連続攻撃を受けながらも立ち上がり
 「必ず……必ず兄貴はおまえを倒す方法を見つけてきてくれる。……それまで、俺は頑張るんだ」
 は格好良く、苦節第15話にしてようやく、健が良いところを見せてくれました。
 学が駆け付けて正真正銘ファイブレッドに選手交代するも、Mパワーが全身に漲るガロアの豪剣の前に苦戦を強いられるが、 アーサーから受けた柔よく剛を制すのアドバイスに閃いた赤は、敢えてガロアハリケーンを受けるとその勢いを利用した反撃でガロアの額を断ち割り、 古傷から血を垂らす艦長は、ゴルリン13号を召喚。
 13号はシドンデモンと合体してファイブロボが出撃し、ロボに乗り込むまで桃黒黄が変身なし、という変化球。
 ゴルリンの存在は、80年代後半に顕著だった、巨大戦の為にやられ役怪人をねじ込まなくてはならない問題を解消してはいる一方、 のっぺらぼうのスポンジボディは巨大戦の相手としての迫力不足は否めず(能力と紐付けられたデザインそのものは秀逸なのですが)、 マンネリ打破の為に色々と手を変え品を変えしてはいるものの、どうもこの辺り、手を変え品を変える事に振り回されている感もあります。
 体に蔦と花を巻き付けたプラントゴルリン13号により拘束されてしまったファイブロボの頭上に仁王立ちした赤は、 宇宙刑事もかくやの秘剣を一閃すると、巨大なシドンデモンの花を切り落とし、学兄貴から「教師」成分を抜くと、 大変ヤバい。
 「いつの日か、必ず俺たちの手で、正しく咲かせてみせる」
 地上の赤が巨大シドンの花をぶったぎると蔦の拘束が弱まり、残ったゴルリン13号は「正義の剣を、受けてみろ!」で成敗。
 ようやく艦長の見せ場、迫力のある一騎打ち、と導入は面白かったのに、話の流れがどんどん雑になっていってしまったのは残念でしたが、 久方ぶりに学兄貴の狂気満載で、そこは大変楽しかったです。
 次回――地球ハンガー作戦!

◆第16話「腹ぺこヒーロー」◆ (監督:東條昭平 脚本:渡辺麻実)
 「ドンゴロス! 俺の酒をどうした!」
 超高速で動き回り、ありとあらゆる食糧を食い漁る銀河闘士ゴキラーギン、モチーフは勿論アレなわけですが、 ドンゴロスが宇宙宅急便で呼んでおり、そこはかとなく後の『カーレンジャー』ノリ(笑)
 その高速移動は星川兄妹でさえ捉える事が出来ず、深刻な食糧難に陥った街では、人々がゴミ箱を漁り、 ハトを捕まえて焼き鳥にしようとするまで追い詰められ、小学校ではなけなしの乾パンと塩スープだけの給食もあっという間に食べ尽くされてしまい……なんか、 とんでもない強敵(笑)
 かつてない地球壊滅の危機が迫る中、祖父に憧れカメラマンを目指す少年・一樹の撮った写真を元に敵の能力を分析したファイブマンは、 捕獲作戦をスタート。巨大野菜の中に隠れて不意打ちを仕掛ける卑怯極まりない戦法から主題歌バトルとなり、 エネルギー切れしたところにアースカノンを叩き込み、ゴルリン14号。
 ビームを消化してしまうG闘士に苦戦するファイブロボは、イエローがセンターに入ってカンフーアタックの鉄拳制裁。 超次元ソードさえヒラヒラかわすG闘士だったが、二刀流を発動すると、敢えて長剣部分を受け止めさせた上で、 至近距離から短剣部分を土手っ腹に突き刺すえげつない戦法で、「正義の剣を、受けてみよ!」。
 ゾーン側の描写はコミカルながら、食糧難で心を荒ませ、他者への思いやりを失う地球人の姿が正面から描かれるのは東條監督らしい見せ方でしたが、 エピソードとしては、その要素とゲスト少年のカメラマン要素がこれといって繋がらず、一応メインだったレミも、 少年と顔見知り(元教え子?)ぐらいの意味しかなかったのは残念。
 ……そして、多分に偶然の産物とは思われるものの、自ら出張った艦長が惨敗した次の回で、 お笑いノリで人類文明壊滅カウントダウンまで行ってしまって良かったのでしょうか(笑)

(2024年5月24日)

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