■『地球戦隊ファイブマン』感想まとめ1■


“1・2・3・4・5!
ファイブマン!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『地球戦隊ファイブマン』 感想の、まとめ1(1話〜8話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「五兄弟戦士」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ……頭に、語。
 ナレーション「銀河系には、命の宿る星が、沢山ある。だが、それらの星が、次々と滅んでいくという、謎の現象が起きていた。 そんな星の一つ、辺境惑星シドンに、死の星を生き返らせようと、対策に取り組む、地球人の一家があった」
 銀色の宇宙服に身を包んだ親子が、一面の砂漠と化した異星で、 リトルグレイ系の現地の子供たちと共に星川緑化試験農場で植物を育てており、おおおおお、SFだ。
 異星の知的生命体の存在が認識されていたり、異星にさらわれたりはあるものの、 地球人が外宇宙に進出している事が明確に描かれる世界観は、シリーズ史上でも初でしょうか。
 地球から持ち込んだ植物にシドンの地で花が咲いた喜びを分かち合っているところに、 カプセルに入った双子の新生児を連れて人型ロボット・アーサーG6(声優は、 前作で当時20代だったのに何故か老婆声の怪人を担当させられていた松本梨香)が姿を見せ、「地球を出てから8年」……という事は、 子供達全員、地球を離れてから作った……?
 一家は花をバックにしてシドン星人と共に記念写真を撮るが、そこに赤文字のサブタイトルと深刻なジングルが入り、 不吉すぎます(笑)
 その直後、それぞれの表情が静止した4つのカットで描かれ、何かに気付いた父博士がスローモーションで驚愕の表情を作る演出が、 えぐい……!
 一同が見上げた空には、巨大な赤い宇宙戦艦の偉容が浮かび、その砲撃によって農場は無惨に破壊され、咲いたばかりの花は薙ぎ倒され、 シドン星人の子供たちは死亡する(自分の命を省みず、不毛の母星に甦った花を守ろうとした末なのが実に痛切)。
 「何故、何故こんな事を……!」
 星川博士の悲痛な叫びがこだまする中、戦艦から降り立つ割とカラフルな一団。
 「余計な真似はやめてもらおう」
 はくちょう座の聖闘士を彷彿とさせる青い兜を輝かせ、多分この軍団の二枚目ポジションの銀河剣士ビリオン!(ブルー)
 「この星は、この私たちが滅ぼした。生き返る事は許さん!」
 カニレーザー、ならぬカニ頭だが多分この軍団の参謀ポジションの銀河博士ドルドラ!(イエロー)
 「なんだと?! じゃ、今この銀河で、次々と星が滅びてるというのは……」
 「銀帝軍ゾーンの偉大なる支配者、銀河皇帝メドー様の作戦や!」
 大黒様のような頭巾を被り、多分この軍団のコメディリリーフの銀河商人ドンゴロス!(レッド)
 その背後では卵ヘッドの女が無言で頷き、多分この軍団のクールポジションの銀河の牙・ザザ!(パープル)
 「メドー様の狙いは、全銀河の命を抹殺する事。いわんや一度滅ぼした星を甦らせようなどというような者は、絶対に許されん!」
 最後に髭面の男が剣を振り上げ、多分この軍団のリーダーを務めるガロア艦長!(ブラック)
 五人揃って――ギンテイジャー!!
 過去数年を踏まえると、『マスクマン』や『ターボレンジャー』で生じた幹部多すぎ問題が脳裏をよぎりますが、商人除いて顔出しの、 彩り豊かな幹部陣の活躍は期待したいです。
 剣を振り上げた艦長に向けて、震える手で星川少年(長男)が光線銃を放ち、顔に傷を負うガロア。 その隙にアーサーフラッシュが放たれて一家は逃走するが、空飛ぶ怪物ガメルギンが召喚され、その豪腕は、 一家の逃げ込んだ宇宙基地の扉を易々と切り裂く。
 星川夫婦はアーサーに子供たちを託すとバリケードを作って必死に時間稼ぎを行い、オーソドックスではありますが、 亀怪人の造形の良さに、緊張感を保ったハイテンポな見せ方は迫力があり、ぐいぐいと引き込まれます。
 子供たちを連れたアーサーは、なんとか宇宙船マグマベースに乗り込むが、その眼下で、両親を飲み込んで基地は爆発。 涙を呑んでアーサーは発進レバーを引き、弦楽器の悲痛なメロディに乗せて惑星シドンを飛び立つマグマベース……
 「子供だけでどこまで飛べるやら」
 ギンテイジャーはそれを見上げて厭らしく嘲笑い、1年間の大河ストーリーの導入として、冒頭8分、 滅茶苦茶面白いぞ……!
 「学、もうお休み」
 「アーサー……!」
 漆黒の宇宙を行くマグマベースの中で涙を流す少年がアーサーに抱きつくと、 たまたま押したスイッチにより最後の家族写真がプリントアウトされるのがまたえぐく、 『マスクマン』から4年連続のパイロット版担当となった長石監督の演出がキレキレ。
 「博士……お母さん……! 子供達は、この僕が必ず、立派に育ててみせます」
 アーサーは写真の中の星川夫妻に誓い、地球を離れ異星で生まれ育った5人の子供が悲劇的な運命の結果、 意志と感情を持ったロボットに育てられるとか、これは、もう、スペオペだ……!!
 年端もいかない幼い子供たち、それを託されたロボット、一連の出来事を胸に刻み込んだ少年、幸せな瞬間の写真、 そして全てを飲み込む漆黒……それぞれの姿が映された後、宇宙空間をゆく巨大なマグマベースの姿が大変叙情的で、 この間合いが掴みとして大変沁みます。





ナレーション「こうして、アーサーG6が、5人の子供達を地球へ連れ帰ってから、20年の歳月が流れた」






 ――1990年・春。
 マグマベースの食卓には朝食が並び、フライパンを叩いて5人を起こすアーサーと、消防士のようにポールを伝って降りてくる5人。 日常と非日常が混ざり合う空間で、成長した5人は揃ってニュータウン小学校の先生になっており、音楽を教えるレミ、体育を教える健、 算数を教える数美、書道を教える文矢、理科を教える学、それぞれの授業風景が描かれる。
 前作は色のイメージからなんとなく属性に基づく(赤→炎、など)ネーミングでしたが、今作はそれぞれの得意科目に紐付けられており、 長男の学(がく)だけ、総合する形。
 兄妹5人が同じ学校に就職とか、下の二人は何歳で教員になったの?! とか、疑問は幾つか湧きますが、 そもそも1962年に星川夫妻が地球から惑星シドンに出発した世界なので、恐らく、 二度に渡る世界大戦が起きずに原子核物理学とロケット工学とオーラパワーが宇宙開発分野で発展したとかそんな感じのアース−14なのです。
 (一応軽く調べたところ、短大卒で小学校教諭二種免許状の取得が出来るので、現実に20歳で教職につくのも可能?ではある模様。 また、シドン→地球間に数年かかっていると思えば、年齢の違和感は薄くなりますが、その場合、学が30越えになる可能性があり、 どれを取るのがいいのか(笑))
 もしかして:三十路、が浮上した学は屋外での授業中、学校の花壇に、あの白い花が咲いた事を生徒から報される。
 「とうとう咲いたか……」
 「先生はどうしてこの花がそんなに好きなんですか?」
 「ん? いろんな思い出が、一杯詰まってるんだよ……」
 花を見つめる学の脳裏には、遠いシドンの日々が思い浮かび……現在と過去を交錯させた切ない感情の見せ方が実に長石監督の得意技ですが、 物思いにふける学の耳は近付く轟音を捉え……えええええ、なにこれ、面白すぎるのですが!!
 幸福と悲劇、そして家族――を象徴する思い出の花が咲いた時、20年(以上?)前の父と、 成長した学の行動が重なるのが実に劇的で、死を運ぶ深紅の銀河戦艦バルガイヤーが地球に出現するとその巨影が地上を覆い、 書道の授業で校庭に散らばった半紙に書かれた「夢」の文字が、暗闇に沈んだ世界で叩きつけるような風に煽られるのが、 破壊者の到来を示すサインとして、これまた鮮烈。
 (来た! 遂にあいつが来たのか!)
 学は白い花を見つめ、アイキャッチ映像無し(画面右下にタイトルのみ)でBパートへ進み、地球へ辿り着いた銀帝軍は、 銀髪に包まれた黄金の瞳の巨大な女性の顔、という銀河皇帝メドーに跪く。
 銀河皇帝メドー、『デンジマン』のへドリアン女王以来となる女性(型)首魁に驚きましたが、 星王バズー(『チェンジマン』)に倣いつつ、どこか猫めいた雰囲気の幻想的なデザインは面白く……今見ると、 『牙狼』感もちょっとあり(笑)
 「私は既に、命溢れる星を、999個、滅ぼした。あと一つ、1000個の星を滅ぼした時、私は永遠の命を得るだろう。全銀河の、 永遠の支配者となる事が出来る。ガロア艦長、この地球こそ、まさに最後の1000個目を飾るにふさわしい星だ。死の星と化して、 私に捧げよ」
 「ははー。地球を滅ぼせー! 銀帝軍ゾーン、しゅつげーーき!」
 オカルト寄りの人だったメドーの命令により、地球が銀帝軍の目標として定められ、テントウムシ+クモ、 的な戦闘機が出撃すると地球を爆撃し、職場(小学校)、吹っ飛んだ(笑)
 「子供たちは、子供たちだけは絶対に守るんだ!」
 すがりつく子供たちの姿にかつての自分たちがフラッシュバックしながらも、星川兄妹は生徒を無事に避難させるが、 市街地は爆炎に飲み込まれ、学校もその中で崩壊してしまう……。
 「ふふふ、1000個目の星も、もうすぐ銀帝軍ゾーンのもの!」
 「ガロア、この星はつまらん。あっという間に滅ぼす事が出来る。俺の腕と剣が泣いているわ」
 バトルジャンキー系の発言が出たギンテイブルーは、この後、手にしていた酒瓶を地面に叩きつける描写があり、 きっと独自の美学も持っていそうなので、あれこれ盛られていて楽しみです(笑)
 果たして地球は、このまま銀帝軍ゾーンに攻め滅ぼされ、死の星としてメドーに捧げられてしまうのか……?!
 悲しみと怒りの嵐が吹き荒れる中、近付く轟音に気付いたギンテイジャーが目にしたのは、 地平線の彼方から姿を見せた3台の巨大マシン!
 ヒーローの変身をスキップし、第1話のクライマックスがメカ戦になる変化球で、 赤い戦闘機がドッグファイトでゾーン戦闘機を次々と撃墜。青い車型マシン(共に二人乗り)もアクロバットな動きで敵機を叩き落とすと、 マシンから降り立ち、ギンテイジャーの前に並んだのは、赤青黒桃黄の五色の戦士。
 「何者だ?!」
 「地球戦隊!」
 「「「「ファイブマン!!」」」」」
 名乗りを決め、銀帝軍が動揺している内に有利な高所を取ったところにナレーションが入って、つづく。
 ……まあ、「地球戦隊・ファイブマンとは何者」かは、サブタイトルで実質宣言されているわけですが(笑)
 第1話でヒーローの直接戦闘シーンが無いのはやや物足りなかったですが、物語の発端となる過去シーンが大変面白かったので、 プラマイでいえば、プラス。
 今作と同じくAパートを過去の前振りに用いた『ライブマン』では、ヒーロー苦戦のまま続いて第1話が消化不良になっていた面があったので、 メカ戦で大暴れ→名乗った所でつづく、のはその反省を活かしたといえそうでしょうか。実際、 『ライブマン』に比べるとせわしなさも少なく、ニューヒーロー登場の勢いを保ったまま、 盛り上がりのあるつづくになったと思います(『ライブマン』はその後、第3話で傑作回を放り込んできますが)。
 3話かけて真の覚醒からチームアップを描いた『マスクマン』、完全に前後編構造だった『ライブマン』、 シンプルな作りにしつつ第3話(第1話が特別編だったので実質第2話)で変身パワーを失わせた『ターボレンジャー』、 と80年代後半の長石パイロット版には、シリーズのマンネリ打破の為の工夫が色々と持ち込まれているのですが、 前半を物語の背景に費やしつつ、メカ戦先行で第1話を派手に締めてつづく、のもまたその流れを感じます。
 ところで今作に関してはかねがね、「地球戦隊」とはあまりにそのまますぎるのでは、と思っていたのですが、かつてその存在を知り、 その到来に備えていたからこそ、地球を守る強い決意が「地球戦隊」の名前に込められているのは、 非常に劇的となり、ゾーンの野望を打ち砕かんとする「地球(の)戦隊」なのだ、というのがとても良かったです。
 また、少年学の射撃の傷がガロア艦長の顔に残っており、20年の時を繋ぐ強烈な因縁になっているのは、素晴らしい。
 シリーズ史上初の兄妹戦隊、掴みとしては、『フラッシュマン』(異星で育ち、メンバーがかなり家族的)+『ライブマン』 (強烈な過去の因縁が物語の発端で、第1話で色々と吹き飛ぶ)といった印象ですが、そこにまぶされた時間と空間のスケール感が好みで、 シリーズ歴代でも、第1話としては、かなり好きかも。
 ED映像は、OP映像や本編クライマックスに続いて巨大メカへのスポットが強く、 その合間に兄妹の成長とそれを見守ってきたアーサーの姿が節目の記念撮影の形で挟み込まれ、 物凄くツボなのですがこれ……現時点でちょっと、終盤にアーサーに泣かされそうな気配があるというか、 そういう盛り上がりを期待。
 次回――いきなりの出・入・り(実家のような安心感)。

◆第2話「父の仇! 母の仇」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「久しぶりですね、ガロア艦長」
 銀帝軍を見下ろす高所を取ったファイブマンは、敢えて慇懃に語りかけたレッドが光線銃を構える仕草を見せつけ…… 憎悪が深い。
 「ガロア、その顔に傷をつけた子供、まさか忘れちゃいないでしょうね」
 「なんだと? ……まさか、あの時の小僧が!」
 ここで傷をなぞるガロアの目元のアップが挟まるのが実に長石監督で、合わせてふんだんに前回の映像を差し込む事で、 胸に抱える過去への思いを強調していく演出。
 「そうだ! あの時の5人の子供は、地球へ帰っていたんだ!」
 「父さんと母さんの顔も知らず!」
 「ぬくもりも知らず!」
 「でも、兄妹5人、助け合って生きてきた」
 「そして、待っていたんだこの日を!」
 銘々が宣戦布告を叩きつけ――
 「おまえたちがいつの日か、必ず地球を攻撃してくる事を予想し、俺たち兄妹5人、地球を守る為の戦士となる事を誓った。 それが地球戦隊! ファイブマンなのだ!」
 地球戦隊ファイブマンとは何かを力強く告げ、これまで見てきた戦隊シリーズの中でも、かなり震える滅茶苦茶格好いい名乗り。
 「俺たちは忘れはしない。あの日の事を。みんなの夢を踏みにじったおまえ達を、絶対に許さん!」
 「笑わせるな! 銀河無敵999個の星を滅ぼしてきた、ガロア艦長に勝てると思っているのか!」
 飛び降りる5人にサブタイトルがかかり、20年の間にたっぷりと熟成された復讐という名の美酒にまみれ、 史上屈指の殺意の高さから、集団戦に突入。
 開幕戦という事で吊りも交えた大変気合の入ったバトルにBGMも盛り上がり、飛び回る赤の連続攻撃を受けて、 割とダメージを受けるガロア(笑)
 黄が銀河の牙ザザと互角の格闘戦を演じ、青が亀怪人を殴り飛ばす中、銀河剣士ビリオンが黒と桃を切り裂いて高い戦闘力を見せるが、 艦長は赤に押し込まれており、大丈夫なの銀河無敵999個の星を滅ぼしてきた(自称)ガロア艦長!?
 「ガロア、今度は顔の傷だけじゃすまんぞ!」
 「小癪なぁ……!」
 徹底して挑発していくスタイルが少し古めのヒーロー像を思わせる赤に対して、艦長は範囲攻撃を放つと、幹部を引き連れて、 逃・げ・た(笑)
 なおこの際、銀河剣士が艦長の横でやたらジタバタしているのですが、 艦長の範囲攻撃の威力を表現する為のリアクションを大げさにやりすぎたのでしょーか(単純に、 演者さんが爆発慣れしていなかった可能性もありますが)。
 「ファイブマンとやら、生かしておくと必ずや災いを残す。なんとしても、この星もろとも抹殺せよ」
 再び虚空に浮かび上がったメドーがファイブマン抹殺を命じる一方、 崩壊したニュータウン小学校の子供たちは近隣の学校にバラバラに転校する事になり、寂しがる子供たちを元気づける星川兄妹。 教室跡の床には鉢植えに咲いたあの白い花が転がっており、頭上を飛び交うゾーン戦闘機の巻き起こす風に無情にも吹き飛ばされる事で、 銀帝軍ゾーンとは何か、も徹底的に強調されます。
 アーサーから連絡を受けてゾーンの前線基地を偵察する兄妹だが、復讐の念に燃える健(次男)は遮二無二突入を図ろうとし、 それを諫める学とアーサー。
 「頭を冷やせ。そんな無鉄砲な行動をして、父さんや母さんが喜ぶと思うか」
 「そうだよ。君達の一番の使命は仇討ちじゃない。もっと大切な事がある事を、教えてきた筈だぞ」
 「アーサー、もう君の説教は聞き飽きた。俺たちは人間なんだ。ロボットじゃない。学兄貴、俺はあいつらを許すわけにはいかない!」
 兄妹を突き動かす強烈な復讐心がしっかりと保持された上で、個人の怨恨か、もっと大きな正義か――価値観の衝突が素早く盛り込まれ、 前回Aパートにおいて、ロボットのアーサーも幼い学も、あの日の出来事を胸に刻み込んで深い悲しみを抱えている上で、 敢えてそれを押さえ込んでいるのがわかるからこそ、弟妹との対立が極めてドラマチック。
 「とうとう行っちゃったよ……僕は、母親代わりになって、一生懸命育ててきたつもりなのに……やはり、ロボットの僕は、 本当のお父さんお母さんには、なれないのかな……」
 健を筆頭に下4人は基地へと駆け出してしまい、ロボットゆえの悲嘆を掘り下げてくれたのは嬉しかったですが、 もう少し人間関係の基礎が明示されてからでも良かったのではとは思い、ここは少々、忙しく詰め込んでしまった印象。
 以前から知っていた主題歌はかなり好きだったのですが、映像付きで聞いたEDが、 ファイブマンの歌である以上にアーサーの歌だと思うと大変沁みるので、真のチームアップの犠牲として8話ぐらいで退場しないといいなぁアーサー ……そんな事になったら、EDの映像がメガトン級の重さに。
 健たち4人は警備兵のマスクを奪うと、「俺は言語学の天才。伊達に国語の先生はしてませんよ」を自称する文矢(三男) の謎宇宙言語を駆使して基地内部への潜入に成功し、潜入作戦のサスペンスを描くのは、ここしばらくの作品には少なかったアプローチ。
 基地内部には様々な被り物をした異星人兵士が配備されており、 如何にも『スター・ウォーズ』以後なエキゾチック宇宙観といった感じですが、 東映特撮では80年代前半〜中盤に《メタルヒーロー》シリーズで小林義明監督が積極的に行っていた見せ方の取り込みといえるでしょうか。
 数美(長女)とレミ(次女)を捕虜と称してガロアの居場所を探ろうとする4人だが、待ち受けていたギンテイジャーに囲まれ……と思ったら、 助けを求める姉妹の「文矢!」の叫びに揃って驚いているので、別に罠を張っていたわけでもなんでもなく、ただ無駄に高い所から笑いながら現れたり、 幹部総出で捕虜の確認に来たのでしょうか。
 暇なのか、君たち。
 ドラム缶の中に隠れていた健も見つかって万事休すの状況で、ガロア艦長も高いところから笑いながら現れ、被ってる、 部下と被ってるよ艦長……!
 「おまえ達の泣き叫ぶ顔を見てから殺してやりたくてな。待ち構えていたのだ」
 全て計画通りです、偶然ではありません、と主張する艦長ですが、そもそもこの時点では、 名前や顔を聞いても星川兄妹=ファイブマンとわかる筈がないので、構成の詰めが甘くなってしまったのは残念ですが、 艦長は、1000個の星を滅ぼした暁に取れる筈だった念願のバカンスの予定が大幅に狂いそうで、ちょっと錯乱しています。
 俺は地球を滅ぼし、『ドラクエ3』休暇に入るのだ! と艦長の号令一下、4人に銃殺の危機が迫ったその時、 「オヤジと姐さんの仇じゃーーー!」とサブマシンガンを肩からかけた学兄貴が、怒りの広島死闘編。
 アーサーも飛び込んできて兄妹を救出し、腰だめに銃を構えた学の姿に改めて少年の面影を見るガロア。
 「おまえがあの時の……」
 「星川学!」
 ガロアの呟きに名乗り返すのが格好良くはまり、先の「それが地球戦隊! ファイブマンなのだ!」に続き、 見せ場の約束事としての名乗りに物語内部での意味を持たせようとする工夫が非常にはまったパイロット版で、 こういう仕掛けは大好物です。
 学はブレスレットから取り外せるVの字型のキーを掲げてファイブマンへと変身。
 「ファーイブレッド!」
 「健! ファイブブルー!」
 「文矢! ファイブブラック!」
 「数美! ファイブピンク!」
 「レミ! ファイブイエロー!」
 兄妹たちも続いて名乗って変身し、銀帝軍ゾーン全体に、「これが貴様らを地獄へ落とす顔と名だ」 と叩きつける姿勢が、早くもファイブマンの基本スタンスを感じます(笑)
 「地球戦隊!」
 「「「「「ファイブマン!!」」」」
 「おのれー! 銀河無敵、不敗の神話を誇る銀帝軍ゾーンの恐ろしさを思い知らせてやる!」
 艦長は亀怪人を召喚し、まとめて吹き飛ばされる5人だが、すたっと着地(強い)。 先代ターボレンジャーのTマークを胸に白く抜いたスーツデザインはスマートでかなり好きだったのですが、 ファイブマンの3段Vマークも、かなり格好いい。
 「兄妹戦士! 必殺! ブラザーアタック!」
 5人はフォーメーションを組むと、それぞれの個人武器を用いた連続攻撃を放ち、最後はVソードでフィニッシュ!
 「銀帝軍の力はこんなものではないぞ」
 だが、全身が真っ白なスポンジめいた巨大なのっぺらぼうメカ・ゴルリンが出現すると、 爆発した亀怪人に光線を照射する事で巨大亀怪人へと変貌し、今作の巨大化は、コピージャイアント型式。
 ナレーション「ゴルリンは、細胞活性エネルギーを、放射吸収することによって、自らの体を核にして、銀河闘士を、巨大銀河闘士に、 再生復活する事ができるのだ」
 「見たか! 銀帝軍ゾーンの、銀河科学の恐ろしさを! はははははは!」
 カニ博士が博士らしいところを見せて、前回冒頭で描かれた「科学による死の星の再生」と、 「死を振りまく為に使われる銀河科学」が対比され、前作では距離を置いていた「科学とそれを使う者」という、 「青春」と並んで曽田戦隊の中核にあるテーマが再浮上。
 マグマベースから、スカイアルファー(戦闘機)・キャリアベーター(大型車)・ランドガンマー(小型車)が発進すると、 巨大銀河闘士へと砲撃を浴びせてから空中で人型へと変形合体し、コックピット移動は潔くワープ(笑)
 「完成! ファイブロボ!」
 「あのような科学を持っていようとは!」
 「相当銭がかかっとるでぇ。ファイブマン、これまで戦ってきた相手とは違いまっせ」
 経理担当の銀河商人ドンゴロスの声優は、『マスクマン』のアナグマスが印象的だった神山卓三さんで、今回も非常にいい味。
 巨大亀のウルトラ団子アタックを受け止め投げ飛ばしたファイブロボは、飛び蹴りをお見舞いすると、超次元ソードを召喚。
 「銀河に一つのこの星を!」
 「「「「「守りたまえ!!」」」」」」
 格好いい決め台詞から、地球を背中に浮かべて放つ必殺剣で巨大亀を撃破し、これもちょっとした新機軸。
 緒戦で思わぬ敗北を喫した銀帝軍ゾーンは、戦艦バルガイヤーを北極に着陸させ、 細長い戦艦が地面に縦に突き刺さる事で要塞基地となるのが、格好いいデザイン。亀怪人も迫力のある造形でしたし、前作に引き続いて、 デザイン・造形面には期待ができそうです。
 ナレーション「この美しい星を滅ぼそうとする者。守ろうとする者。地球の運命を賭けて、野望と夢が激突する。戦えファイブマン。 兄妹の熱き絆で、地球を、銀河を守るのだ!」
 暮れなずむ海に両親の面影を見る、星川兄妹とアーサーの姿で、つづく。
 復讐心にかられて無謀な突撃を行った結果、死地に陥った4人の反省や、健からアーサーへの謝罪が描かれなかった (救出時に「アーサーありがとう」「いいってことさ」という、やり取りはあり)のは気になりましたが、 第2話もなかなか面白かったです。
 両親の復讐か、もっと大切な事か……今回で片付けた事にせず、 キャラ回が一巡した辺りでヒーローチームとしてのジャンプアップが描かれてくれるとかなり好みなので、ちょっと期待したいところ。
 今作に関しては、「シリーズ初の兄妹戦隊」という事しか知らなかったのですが、驚いたのは、 “両親から力と使命を託される”わけではなく、強烈な復讐心を動機付けにした構造。
 その点で、前作『ターボレンジャー』と比べると少し古いタイプのヒーロー像に戻っている部分があるのですが、 ナレーションの言い回しなども含め、曽田さんの書きやすいノリに寄せたところはあるのかもしれません。
 それもあってか、新味に溢れるヒーロー像へのチャレンジというよりは、シリーズ過去作を彷彿とさせる要素が散見されるのですが、 その一方で、源流(歌舞伎や時代劇)の文化文脈を離れ、形骸化した「約束事」だけが継承されていた要素に改めて意味を与えようとする、 《スーパー戦隊》フォーマットの再構築への試みの一歩が踏み出されており、 特に「それが地球戦隊! ファイブマンなのだ!」には“80年代戦隊”と“90年代戦隊”を繋ぐ中継地点としての輝きを感じました。
 戦隊シリーズ史において、一つの時代の区切りといえる今作が、どのような物語を紡いでいくのか、楽しみに見ていきたいと思います。

◆第3話「挑戦! 銀河の虎」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 前回までのおさらいも兼ねたメドー様の説教タイムで始まり、跪いて平伏する艦長・博士・牙の背後で、 段差にどかっと腰掛ける剣士の存在感と、思わぬ障害となったファイブマンの登場にむしろ笑みを浮かべる温度差の見せ方が格好いい。
 お説教の終了後、てんやわんやで駆け込んできた商人の体内から飛び出したのは、銀河闘士トラルギン。
 「ファイブマンを倒す為に、俺が呼び寄せたのだ」
 古なじみのビリオンは、他者の肉体に入り込んで自在に操る能力を持つトラ闘士とがっちり握手。
 「銀河剣士と、銀河の虎。最強コンビの復活だぜ!」
 「固い絆で結ばれた、銀河最強コンビ――」
 ……昔の仕事仲間が出てくるとろくな目に遭わないのはシリーズ伝統というか(実際に統計取ってみないと正確なところはわかりませんが)、 悪役サイドを用いて割と世知辛い現実を突きつけがちなので強調されるほどに今後の成り行きが見えてきますが、 星川兄弟の前職に目を付けたビリオンは、トラを戦力に、子供を標的にした作戦を立てる。
 その頃学は、ニュータウン小学校への愛着から新しい学校に通おうとしない腕白小僧のタケシ少年に手を焼いており、 廃墟と化した教室の一部が十字架を模しているのは凄く『ライブマン』ぽいのですが、 蓑輪監督によるオマージュの意識があったりしたのかどうか。
 大人の事情で吹き飛ばされた学校ですが、通い慣れた教室や友達など、 子供たちにとってはそう簡単に割り切れるものではない気持ちがしっかり抑えられるのと共に、 星川兄弟が先生として慕われていた事が改めて示され、復讐鬼ばかりではないヒーローとしての土台が構築されていくのが、熟練の技。
 廃校舎を飛び出していったタケシ少年を追う学だが、トラルギンに憑依された少年は、驚くべき身体能力を発揮すると猛獣のごとく学に噛みつき、 小学生を、思い切り吊る現場(笑)
 縦横無尽に飛び回り、鋭い牙と爪を振るうトラタケシの攻撃を一方的に受けざるを得ない学の姿を物陰で確認して銀河剣士はほくそ笑み、 学が十分に消耗した所でおいしい所を持っていく気満々で、美学とかはあまり無いタイプでした。
 途切れ途切れに正気を取り戻し、学を攻撃する事に苦悩する少年が崖から足を滑らせ、辛うじてダイビングキャッチに成功する学だが、 トラは思わず緊急退避。
 少年を操っていた銀河闘士の存在に気付き、トラルギンに怒りの眼差しを向ける学の頭上には銀河剣士が迫り、 気絶した少年を抱えた学と崖の上に姿を見せたビリオンをあおりの画で一つに収め、 頭上のビリオンが飛び降りるところまでカット割らずに見せる事で非常に迫力が出て、 ビリオンの落下攻撃としても格好いいのですが……あっさりかわされた(笑)
 「俺の剣をかわすとは……銀河剣士ビリオンの必殺剣、銀河真空斬りを!」
 しかも、大げさな名前ついていた(笑)
 「地球は全銀河に生命を甦らせる為の最後の砦! 地球を守る戦士、そう簡単にやられるわけにはいかんのだ!」
 ……出来上がってる、出来上がってるな、学アニキ!
 今作に関して付きまとう「マンネリ」の問題を言うならば、 “こういったヒーロー像そのもの”が「代わり映えの無さ/形骸化の象徴」になってしまった面があったのかとは思われ、 次作『ジェットマン』では“ヒーローの行動原理そのもの”に深くメスが入れられると、 “ヒーロー以前”のより濃密な掘り下げを行いながら記念碑的な第18話に到達するわけですが、今作は今作で、 パイロット版における「地球戦隊ファイブマン」とは何か、に続いて、亡き両親の志と繋がる形で「地球」とは何か、 が鮮やかに意味づけられているのは、注目点。
 「子供の体を利用するなんて卑劣な奴らめ! 許さん!」
 バイクから砲撃しながら兄妹が駆け付け、第3話にしてずたぼろのアニキが変身すると、ビリオンは戦闘員を召喚。
 赤が剣技、黒と青が格闘戦、桃と黄がコンビネーション射撃で戦闘員を蹴散らすが、 ビリオンが続けて呼んだ戦闘機の吹き起こす突風に攪乱されている内にトラが再び少年の体に乗り移り、 そのまま戦闘機を操縦させて市街地を攻撃させ、やり口がえぐい。
 ビリオンは少年の身柄を人質に取ると、変身せずに単独で指定の場所へ来い、と学を呼び出し、罠とわかっていてそれに応じる学。
 「俺を信じてくれ。身を捨ててこそ、活路は開けるんだ」
 ……出来上がってる、ホント出来上がってるな、学アニキ!
 金のオーラを背負った学は呼び出しの場所に向かうと、ビリオンの思惑通りトラの憑依を受け、 学の自由を奪ったビリオンは中に入っているトラごと一刀両断!
 このダメージでトラの憑依が解け、ビリオンの攻撃に耐えきった学は、状況の飲み込めないトラに、 ビリオンは最初からトラを切り捨てるつもりだったと丁寧に説明。
 「悪の絆なんて所詮その程度のもの」
 「教え子を救う為、命を懸けた、兄さんの師弟の絆のほうが強かったのさ!」
 前半の一当たりの際に、ビリオンとトラの間の意識差に学が気付いているような描写があったので、 てっきりそれを利用して逆転するのかと思いきや、単純に気合で耐えただけになってしまったのは非常に残念でしたが、 伏線の見せ方からすると、脚本も演出もその気だったのに、いざやってみたら思ったより説明がややこしくなって、 ここだけ別の成り行きに変更したのでしょうか……と勘ぐりたくなるような流れ。
 「……へへへへへ、ビリオン、おまえ出世して変わったな。だが、俺はおまえといつまでも、一緒に戦いたいぜ」
 銀河最強の絆が紛い物だった事を突きつけられたトラの、心に抱えていた闇が噴出!(笑) ……いや、 ただの皮肉の可能性もありますが、真相は銀河の藪の中。
 「おまえの体、借りるぜ!」
 「たわけ! 誰が貴様如きに!」
 ビリオン、ひねりを入れて飛んだ!
 バイクに乗って、走り出した!(え)
 「逃がさん!」
 てっきり斬り掛かるのかと思ったら、まさかの一目散にバイクで逃走を始めたビリオンの背中に捨てられた男の執念でトラが貼り付いて曲芸走行し…… あまりにも予想外の展開(笑)
 銀帝軍の先陣を切って凄腕ぶりを見せつけるのかと思いきや、銀河真空斬りを回避され、卑劣な罠による一撃でも致命傷にはほど遠く、 挙げ句の果てに切り捨てた手駒に追い回されて醜態をさらし、これぞまさしく、銀帝軍の残念ブルー。
 まんまと虎に乗っ取られたビリオンはバイクで反転すると、ファイブマンと激しいバイクスタント。走行しながらの斬撃も披露するが、 調子に乗りすぎて背後から射撃を受けるともんどりうって吹き飛び、出だしというのもあるでしょうが、爆発はかなり派手め。
 地面に転がったビリオンから分離したトラは、心の闇が晴れたのか単独でファイブマンに立ち向かうも、 負傷した赤をかばう兄弟の絆の前に形勢逆転され、リボンで簀巻きにした標的に集中攻撃を仕掛ける地獄行きの寝台列車だぜブラザー!
 「最後まで1人で戦ってもらおうか」
 気を取り直して高いところに立ったビリオンはゴルリン2号を召喚し、瀕死の銀河闘士は、巨大トラルギンに。
 マグマベースから、Aメカ・Bメカ・Cメカが連結したファイブトレーラーが発進し、ロボとは別の合体形態があるのは、おお、 と思ったのですが、5人が3つのメカに乗り込んで一度分離してからトリプルジョイントしないとロボになれないのは、設計ミスなのでは(笑)
 右膝の「語」がチャームポイントのファイブロボは、両腕に搭載されたカノン砲の連射から超次元ソードを召喚し、
 「思い知れ……!」
 「「「「「俺たちの恨み!!」」」」」」
 「「「「「兄弟の絆!!」」」」」
 土手っ腹に風穴を開けると高々と持ち上げ、オヤジたちの仇じゃぁぁぁ!!
 たけしくんは腕白坊主に復活し、子供たちの為にも、はようゾーンの野郎どもをいてこまさにゃあかんのう、 と改めて誓う星川兄妹であった。
 次回――末っ子、初メイン回にして、酔拳。

◆第4話「地球を酔わせろ」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 「愚か者はみんな、酒で身を滅ぼします」
 サン・○ルバ(ぐさっ!)
 スーパー○ルーク(ぐさっ!)
 ガイ○ーク三大臣(ぐさっ!)(ぐさっ!)(ぐさっ!)
 バルガイヤー内部の退廃的な銀河酒場において、前回の今回で飲んだくれているビリオンが全視聴者の期待に応え、 猥雑な酒場の様相は、宇宙刑事シリーズ及びその直接後継作における小林義明風味を感じますが、 後にその小林監督がパイロット版を担当した『激走戦隊カーレンジャー』におけるボーゾック本拠地の描写との間に今作が存在していたのは、 面白いところ。
 「ましてや、これは悪魔の銀河酒。地球を酔わせてご覧に入れましょう」
 ゾウルギンの力でただの水を美酒へと変えた銀河博士ドルドラは艦長に向けて艶然と微笑み、格好は黄金のカニアーマーながら、 丁寧な口調でどこか妖艶な言い回しのキャラ付けがなかなか面白い。
 地球に赴いたドルドラは、ダム一杯の水を酒に変える古典的な(故にそこまで頻繁でもない)水源地狙いの作戦を決行し、 水道水が悪魔の銀河酒に変わった事で、老いも若きも街中は酔っ払いだらけに!
 厳密にチェックしているわけではないので断言は出来ませんが、自分の感想を検索した限りにおいては、 『光戦隊マスクマン』第24話における人類総アメーバ計画以来2年半ぶりのダム攻撃でしょうか。
 近くの山中でアーサー(意外とスパルタ)と特訓中だったレミが現場に先行し、ドルドラ一行を見つけるや、いきなりの飛び蹴り!
 「こんな小娘、ザザで十分よ」
 どうやらドルドラの護衛ポジションらしき銀河の牙・ザザが両手持ちの短刀を武器にルミへと躍りかかり、攻撃の間合いの近い者同士、 第2話のイエロー戦に続くマッチアップ。
 「……やるわね。私も新しい技を試したくて、うずうずしてたのよね」
 蹴り飛ばされたレミは臆するどころか実戦の興奮に血湧き肉躍らせ、リングの上の殺しは事故として処理されます!
 反撃体勢を取ると、飛び蹴りから追い打ちのジャンピング貫手で明らかに喉を狙いに行くレミだが、 ザザの銀河移動能力で緊急回避されるとダムに叩き落とされ、水中からは復帰するも酒に酔って足取りがおぼつかなくなってしまったところをザザに攻め立てられる大ピンチ。
 そこに学たちが駆け付けて銀帝軍は撤収するが、銀河酒には、社会に混乱を巻き起こすばかりではない恐るべき罠が仕掛けられていた。
 「ゾウルギンの酒に酔った者は、やがて永遠に眠り続ける事になるのだ!」
 「俺たちはこうやって、銀河の沢山の星を酔っ払わせて、滅ぼしてきたのさ」
 「5人揃わぬファイブマンなど敵ではありません。後はただ地球が酔いつぶれるのを待つのみ」
 銀帝軍の皆さんは大変真面目なのですが、変な面白さが発生しています。
 「酒で地球が滅べば安いもんやで」
 「そう願いたいものだが、果たしてそう易々と永遠の命を得て、全銀河不滅の支配者となれるものやら。とくと見せてもらおう!」
 そしてメドー様は、宿願の一歩手前で思わぬ障害が発生するドラマチックな展開が、ちょっと楽しくなり始めていた。
 パトロンもとい銀河皇帝からの、もっと派手に盛り上げろ、という無言のプレッシャーを感じたドルドラは、 再出撃すると水ばかりでなくガソリンさえ酒に変えて自動車を酔っ払わせ、第4話にして魔術の領域に入る銀河科学(笑) ……まあ、 メドー様はオカルト寄りの気配ですし、ゴルリンの時点で発想は依り代めいていたので、必然といえるのかもしれません。
 酔った自動車に振り回される運転手の姿はコミカルながら、自動車二台を潰して吊って、更に一台の屋根の上にもう一台を乗せて走らせ、 爆発炎上で始末を付ける、だいぶ派手な演出。
 酔っ払って戦闘不能のレミを欠くファイブマンは、ゾウルギンの圧倒的アルコールパワーに苦戦。 4人を助けようとするレミは死中に活ありメディテーションの心意気でピンチがチャンスだ! と《酔拳》を閃き、 浴びるようにワインを飲みながら赤ら顔で拳を振るう、戦隊ヒーローとしてはかなりギリギリ感のある映像(設定年齢はともかく、 レミが成人しているように見えないのも輪を掛けていますが……演者の早瀬景子(現:成嶋涼)さんは、当時18歳との事)。
 レミが生身でゾウとザザを圧倒する姿に倒れていた4人も立ち上がり、地球戦隊・ファイブマン!
 本日は簀巻き無しの連続攻撃でブラザーし、ゴルリンは生真面目にこのままカウントしていくのでしょうか(笑)
 巨大戦では、メインパイロットを代わってのファイブロボ酔拳から、超次元ソードを召喚。
 「命に懸けても!」
 「「「「「この地球を守る!!」」」」」
 切っ先を分離させての超次元二刀流でフィニッシュし、今作も巨大戦に工夫を凝らしながら、祝勝会エンドで、つづく。
 レミを欠くファイブマンが特に策もなく正面から突撃を仕掛け、残ったレミは突然の酔拳覚醒で勝利を収め、一応、 冒頭の特訓で修得した足捌きが酔拳の動きに繋がった……と説明はしているのですが、だいぶ強引。
 倉田プロに所属し、前作では山口先生妹役でゲスト出演してカンフーを披露した早瀬さんの、 特技ありきエピソードだったと思われますが、一発目のキャラ回としては、カンフーが得意です!  以上のキャラの広がりが無かったのは残念でした(メタ的にはカンフー得意なのは丸わかりですし(笑))。
 次回――予告担当は、まさかの銀河商人ドンゴロスで通すの?!

◆第5話「みなしご銀河卵」◆ (監督:新井清 脚本:曽田博久)
 どうしてここまで悪夢的な……という、超凶悪なデザインと造形のコンドルギンが次々と赤ん坊を巨大な卵に変えてしまい、 現場に駆け付けたファイブマンに突き刺さる黒い羽。
 卵を回収して姿を消した銀帝軍の目的は、卵の中で赤ん坊の細胞を変質させる事により、 ゾーンの尖兵としてコンドル人間軍団を作り上げる事であり、現地人を戦力として利用しようとする作戦は悪の組織サイドの株を下げがちですが、 指揮を執るのをドンゴロスにする事で、節約を旨とする経理担当の性格と掛け合わせたのは、秀逸なアイデア。
 鳥と卵は繋げやすいモチーフでありますが、赤ん坊の怪人化というと『超人バロム・1』第26話「魔人ハネゲルゲが赤い月に鳴く」 (こちらの怪人は始祖鳥の羽より作られた悪のコウノトリ)を思い出すところで、あれも悪夢的なエピソードでありました。
 親から幼子を奪う作戦を、親の顔も覚えていない末の双子の心情に繋げ、文矢とレミは囮作戦を決行。 またも見る側の心を抉ってくる第1話回想が挿入される中、首尾良くコンドルを誘き出すと、 カウンターパンチから逆襲のターンで軽快な集団戦に突入するが、そこに飛来する謎の銀河卵。
 ドンゴロスの子供を名乗るが追い払われた喋る卵は凄い勢いで転がっていき、卵を追った文矢とレミは……撃たれた(笑)
 卵は、フィーリングで父ちゃん母ちゃんを探す銀河の孤児で、ゾーンは悪い連中だと説得しようとした兄妹を、 またも光線で攻撃(笑)
 「僕はねー、僕は、父ちゃん母ちゃんに抱いて貰いたいんだ。抱いて暖めてくれたら、僕は生まれるんだ。この卵から出られるんだ。 父ちゃん、母ちゃん!」
 明らかに危険な生命体の銀河卵は両親を求めて飛び去り、コンドル卵作戦に「親と別れた子供の気持ちが、 俺たちにはビンビン伝わってくるんだ」と怒りを燃やしていた文矢がシンパシーを抱くのかと思いきや、 追いかけていけばそこにゾーンのアジトがある筈、と凄くドライに切り替えました!
 両親の気配を感じ、銀帝軍がコンドル卵を温めている洞穴に飛び込んだ銀河卵は、ドルドラ、 ザザを次々と母ちゃんに指名するが……
 「よしてよ! そりゃあ私は卵から産まれたけど、私もまだ独身よ!」
 さらっと爆弾発言が飛び出し、ザザの衣装モチーフは本当に卵だと判明しましたが、これはいずれ、 頭の殻が取れるとスーパーザザになる布石でしょうか(笑)
 銀河卵を追って洞穴に潜り込んだ文矢とレミは、邪険にされる銀河卵を見ていられず、 「この中に親が居るなら名乗るべきだ」と謎の銀河語で交渉するが、場の勢いに飲まれたドンゴロスは、 恐らくゾーンが滅ぼした星の生き残りでは無いか(だから気配を感じるのでは)、と残酷な推測を口にする。
 怒りの銀河卵はビームを放ち、洞穴から転がり出すコンドル卵の大パニックで、無数の巨大卵が転がっていく映像は面白い。
 兄妹揃って主題歌バトルに突入し、黒黄による双子のツインアクションから、怒濤の連続攻撃でブラザー!
 ところで、必殺フォーメーションの都合により全員を近接武器にしなくてはいけなかった為か、個人武器の押し出しがもう一つ弱い今作、 特徴的なリボンの黄はともかく、赤桃が剣で被るなど苦しさが見えるのですが、鉄アレイでぶん殴る青は、 ホント凄い(笑)
 大地を蹴立てるゴルリン4号により巨大コンドルギンが誕生すると、飛行体当たりに苦しむファイブロボだが、 カウンターパンチを叩き込むと、超次元ソード。
 「「「「「銀河の子供の、怒りを知れ!!」」」」」
 かくしてコンドル人間作戦はファイブマンによって阻止され、両親を求める銀河卵は、再び宇宙へ……
 ナレーション「果たして、本当にゾーンの中に、親は居なかったのであろうか?」
 え、えーーーーー?!(笑)
 洞穴のシーンで、ゾーン構成員の一人が思わず卵を抱き止めてしまうもなんか気まずい、みたいな思わせぶりな描写があった後で、 そんなオチを付けないで下さい……。
 思い込みが激しい上に、割とアグレッシブかつ攻撃力が高くて危険度高めの銀河卵、銀河闘士の幼生ではないかという気がしてならないのですが、 デザインからすると、父親は、ガメルギンですかね……。
 「抱いて暖めてくれたら、僕は生まれるんだ。この卵から出られるんだ」が自己申告ばかりではなく、そういう生態の生物だとすると、 意識も行動力も持ったまま卵の中で生き続ける悲劇的な未来しか思い浮かばず、 どうしてここまで重い挿話が持ち込まれたのか困惑するところもあるのですが……2クール目の終わりぐらいに 「父と母の仇だファイブマン!」と、成長して地球に帰ってきたらどうしよう(藤井先生だったらやりかねない)。
 次回――またもレミ回。

◆第6話「働き者は嫌いだ」◆ (監督:新井清 脚本:渡辺麻実)
 『超電子バイオマン』〜『高速戦隊ターボレンジャー』まで6年連続で続いていた、曽田博久→藤井邦夫のパターンが崩れ、 前作にも参加した渡辺麻実が、サブライター一番手として登板。
 地球人類の勤勉さに目を付けたドルドラが、実験闘士エノキラーギンを作り出し(銀河キノコを貼り付けられた黒いシルエットの人間が、 闘士に変貌する新パターン)人類総仕事行きたくない計画を発動する!
 「あいつは働き過ぎだ! 許せん!」
 エノキ胞子を浴びた人間は働く事を辞めて怠け者になってしまい、エノキ怪人の抱える謎のルサンチマンに、 若干の扇澤延男テイストを感じます(笑)
 人間のやる気エネルギーを吸い取って体内に根を伸ばす銀河エノキに寄生され、怠惰になってしまった父親に代わり、 健気に働く八百屋の亮太少年。その姿を見たレミはエノキ追跡を中断して配達を手伝い……電撃戦隊なら、 この少年を囮に使うところですね!!!
 「ふふふ、この星の運命も、時間の問題。ふっはははは、ふっはははは!」
 「……例のファイブマンの方は大丈夫なのか」
 酒杯を傾けるドルドラに対し、淡々と剣を磨きながらビリオンは厭味を飛ばし、ガッシュ(『マスクマン』)や後のブラックビート (『ビーファイター』)など、黙々と武器を磨く姿でストイックな戦士のイメージを出そうとする系譜なのですが、 初の作戦が初の作戦だけに、現実逃避して剣に話しかけているようにしか見えません。
 飲酒=失敗フラグ、とメドー様からお小言を頂戴したドルドラだが、神出鬼没のエノキパニックは拡大する一方で、世界中が大混乱。
 手の打ちようが無い星川兄妹だが、レミは八百屋の手伝いを続けており……電撃戦隊なら、 この少年を囮に使うところですね!!!
 ところが、懸命に働く息子の姿に反応を見せた八百屋父が、キノコワルド……じゃなかった、 エノキラーギンの「働き者は嫌いだ」という言葉を口にした事から、 ゾーンの目論みに気付いたレミは自ら囮になってエノキを誘き寄せる事に成功し、ザザを叩き伏せる。
 「なんだ……この底知れない力は? なぜだ?! なぜそうまでして?!」
 「人間はね、ただ我武者羅に働いてるだけではないのよ! 家族や、愛する者の幸せを願ってるからこそ、一生懸命働くのよ!」
 ドルドラの着目した「働く」の意味を、今作の主要テーマである「家族愛」へと綺麗に繋げ、ここまで見た渡辺脚本の中では、 一番の出来。
 戦闘員を相手の大立ち回りからレミが変身した所に兄姉も駆け付け、まあ今回の作戦に関しては、 事前に相談していてもなんの問題も無かったとは思いますが(笑)
 今回も主題歌バトルから兄妹戦士・ブラザーアタック! 巨大化システムの都合でトドメを刺しきれず、 毎度怪人が全身から火花をあげるばかりなのがやや爽快感を欠きますが、いずれ合体兵器と、新巨大化システムがあるのかどうか。
 キノコの傘がどこか甲殻めいて、キノコ×カニ、のハイブリッド感あるデザインが格好良いエノキラーギンは巨大化し、 マシン攻撃を浴びせてからのトリプルジョイントで、手早く超次元ソード。
 「銀河に一つのこの星を!」
 「「「「「守りたまえ!」」」」」
 さすがに毎回考えるのはハードルが高かったのか、或いは、脚本家への連絡ミスだったのか、決め台詞が第2話のものに戻って、 超次元二刀流で滅殺。世界は元の活気を取り戻し、次回――逆襲の長女。

◆第7話「45mの小学生」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 掟破りのいきなり巨大生物・サイラギンが出現し、地球は大パニック。
 マグマベースから発進するファイブメカだがそれはドンゴロスの罠で、スペース地雷に吹っ飛ばされたCメカが操縦不能に陥ってしまう。 そこへ戦闘機が空襲を仕掛ける巧妙な作戦で、冒頭からのメカ発進が仇となり、あれよあれよと危機に陥るファイブマンの図は、 パターン崩しでなかなか面白い展開。
 BメカがCメカを回収、Aメカが変形して地上でトレーラーモードに合体するのもギミックを活かしたアイデアで、 なんとか砲火を切り抜けるファイブマンだが、ファイブロボは起動不能。更には逃走中にメカから投げ出された数美がサイラギンに襲われ、 何故か巨大な鉛筆を投げつけてくるサイが、超シュール。
 そして、巨大な鉛筆が地面に落下して砕け散る映像が、地味に結構な迫力。
 数美を助けに向かった黒がバイクで攪乱すると、巨大鉛筆を踏みつけて怪我をしたサイは座り込んで泣き出し、数美はその様子から、 サイが巨大宇宙人の子供に違いない、と判断。
 便利な文矢がサイの叫びを通訳すると、学校をサボっていたらドンゴロスにスカウトされた宇宙の悪ガキであったと判明し…… 地球の子供が悪の組織に利用されるパターンの変奏曲になっているのは、洒落と捻りが利いています。
 教師根性を出した数美が学校が嫌になった理由を聞くと算数が苦手であると判明し、規格こそ巨大宇宙人なものの、 その悩みは地球の子供と等身大。
 「地球の子供だろうと、宇宙の子供だろうと、算数のわからない子を放っておけないわ」
 数美は教師を買って出て巨大宇宙人との交流が始まり、勉強しないで学校をサボっている悪い子は、悪い大人に騙されてしまうぞ、 という寓意になっているわけですが、それを教育で正す、のも巧いまとまり。……現実にはデリケートな問題も孕みますが、ここでは、 サイは本当は学校が好き、と言及があるのが、一つの目配りにはなっています。
 「この、馬鹿者めが!」
 その頃、打倒ファイブマンに成功して特別ボーナスでがっぽがっぽや、と有頂天で酒を飲むドンゴロスに思い切り突き刺さる艦長のヤクザキック!
 サイラギンの戦線離脱を叱責されたドンゴロスは慌てて現場へ向かうと、戦闘員に輿で担がれながらバズーカ砲を放ち、 いきなりゴルリン6号を召喚。サイラギンを強制的に取り込んで巨大銀河闘士にしてしまおうとするが、 間一髪でファイブトレーラーの修理が間に合い、ファイブロボvsゴルリン6号、のまさかすぎるマッチアップ。
 70年代や90年代には、サブライターとして数々の怪作を送り出している曽田先生ですが、フォーマットを守りつつのセオリー崩しの中で、 魔球投手としての顔がチラリと覗きます。
 ファイブロボに阻まれ、サイラギンの巨大闘士化に失敗したドンゴロスは戦闘機部隊を出撃させ、 サイを守りながらすくっと立つファイブロボ。
 「サイラギン、さあ、算数の授業の始まりよ! 命がけでやる気になれば、やれない事ってないわ!」
 これまで、ガチガチの武闘派である妹レミの陰に隠れ、なんとなく落ち着きのある長女ポジションの雰囲気を出していた数美ですが…… やはり、星川家の娘でありました(笑)
 「さあ数えるのよ、わかったわね!」
 ファイブロボは迫り来る戦闘機を次々と撃墜し、戦場のど真ん中で、散った命の数を数えさせられるサイ(笑)
 「さあ、4機もやっつけたわ。7+4は?」
 死中に活ありメディテーションの心意気で脳細胞がトップギアに入ったサイラギンは、なんとか11を正解。
 「敵ははじめ12機攻めてきたわ。12−11、残りは?」
 問1:シンゴくんの愛銃は、コルト・パイソン357マグナムです。今、シリンダーには6発の弾丸が入っています。これを使って、 襲い来る12人の特殊部隊を処理する方法を答えなさい。
 (予備の銃弾は所持しておらず、拳銃は特別な改造を施されていないものとする)
 「……何をもたもたしてるの!? やられてしまうわよ!」
 地獄に墜ちても忘れない、実践的すぎる算数の授業で命を賭けて正解に辿り着いたサイにも助けられ (ちゃんと手助けをするのが実に手堅い)、最後の一機を撃墜したファイブロボは、
 「悪の計算通りには、いかないわ」
 と初のソロ台詞で、残るゴルリン6号を、一刀両断するのであった。
 ドンゴロスはビリオンに鼻毛を引っ張られ、数美から100点を貰ったサイラギンは無事に母星へと帰り、 あまりにも便利な文矢の通訳能力(まあ、いずれ銀河に打って出る時の為に、資料から学んだと理屈は通りますが)・ 銀河共通規格のランドセル・サイの星はスルーしたのゾーン?! など、荒っぽいツッコミどころは山ほどあるものの、 パターン崩しの変化球から、悪ガキプロットの反転、教師ヒーローの志と狂気といった工夫と飛躍がインパクトをともなって絡み合い、 見応えのある一編でした。
 次回――激しく漂う藤井先生の気配ですが……

◆第8話「輝け!一粒の命」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 「俺にはあの助けを求める必死な声が、罠だとは思えないんだ」
 ゾーンの捕虜、クリスタル星人のサーヤからのテレパシー通信をキャッチした学は、 最後の力でテレポーテーションを敢行するというサーヤから助けを求められ……今季もブレない藤井先生でした!!
 藤井邦夫も、個人的にここ数年で大きく印象の好転した脚本家でありますが、とにかく得意技を繰り出し続けるスタイル (時代劇も書いている方なので、その流れもあるのかと思いますが)は、ここまで来ると痺れます(笑)
 ゾーンに滅ぼされたクリスタル星最後の命を守りたい、と弟妹の反対を押し切って単身で指定されたポイントに向かった学はサーヤを無事に発見するが、 その背後には銀河闘士随一のハンター・オオカミルギンが迫っていた。
 捕虜として、生体コンピュータの部品にされていたというサーヤの壮絶な過去に怒りを燃やす学だが、 サーヤのデータを8oCD(!)で学習した狼ルギン、そして、ニート生活を脱したビリオンがその前に立ちはだかり、今回は、 ビリオンの攻撃が、当たった!
 ビリオンの利き腕が左に変更されているような気がするのですが、つまり第3話ではまだ本気出していなかっただけなの?!
 「ここまでだ」
 「やめて! やめてください!」
 「邪魔をするな! 廃棄物め!」
 ゾーンによる生命の尊厳の剥奪が容赦なく描かれ、弟妹が駆け付けて窮地を脱する学だが、 サーヤの生命力は既に限界を迎えようとしていた。
 「私は、宇宙捕虜のまま死にたくなかった。だから、最後の力を振り絞って、脱出してきたんです。私は、学の優しさのおかげで、 自由なクリスタル星人として……死ねる」
 前作『ターボレンジャー』では、いまいち曽田さんと呼吸が合っていなくて心配だったのですが、ゾーンの非道さの強調と、 それに抗う命の輝きの尊さを描いて作品世界の奥行きを広げるのは、さすがの筆致。
 「私に残っている力は、もう、このクリスタルパワーだけなのです」
 サーヤのこぼした涙は一粒のクリスタルへと形を変える。
 「サーヤ諦めるな! 生き抜いてクリスタル星を復活させるんだよ!」
 「……クリスタル星を復活させる?」
 「そうよ。ゾーンの犠牲になった、多くのクリスタル星人のために」
 「……クリスタル星人の為に!」
 星川兄妹に励まされ、弱々しくも、うっすらと笑みを浮かべるサーヤ。
 「出来るよサーヤ。希望を捨てるな」
 「……学」
 太陽の光を鱗状に反射して、美しく輝く海の揺らめきから、 その陽光を覆い隠して崖上にシルエットで立つオオカミルギンへと繋がるのが長石監督らしい情景美の取り込みで冴え渡り、 迫り来るオオカミに対して、レミのカウンターパンチが炸裂。
 「ふっふははは。愚か者め!」
 爛々と目を剥く表情がいい感じになってきたビリオンが戦闘員を引き連れて現れると主題歌バトルへと突入し、 ロマンス逃避行をプロットの軸に据えつつ、善と悪の対比からヒーローフィクションのど真ん中へと収束するのが、 80年代戦隊作劇の一つの精髄といえる、匠の業前。
 もちろん藤井脚本なので、狼ルギンによって窮地に陥った赤を救う為にサーヤが最後の力でクリスタルパワー!  クリスタルサーヤに絡まれる狼ルギンにブラザーアタックが放たれ、ゴルリン7号によって生み出された巨大オオカミは、
 「サーヤとクリスタル星を」
 「「「「「守りたまえ!」」」」」
 と超次元ソードで両断されるが力を使い果たしたサーヤは消滅してしまい、学は残されたクリスタルを空へ――遙かなる宇宙へと向けてかざす。
 「サーヤ……クリスタル星に帰り、クリスタル星を甦らせる種になれ」
 光を放ったクリスタルが空の彼方へ飛び去ると、サーヤの姿が浮かんで言葉が響き、なんとなくメルヘンに幕を閉じて、つづく。
 次回予告からラストシーンまで噎せ返るような濃縮藤井脚本成分でしたが、 十八番のロマンスプロットを軸にしつつ、他者の命を踏みにじるゾーンの侵略行為の非道さ、それに立ち向かう星川兄妹の命を守る意思、 荒廃した銀河を甦らせるという、復讐ばかりではない強い目的意識を描いて物語全体を巧みに掘り下げ、さすがのお手並みでした。
 次回――ぎんぎんがぎーん!?

→〔その2へ続く〕

(2024年5月11日)

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