- ☆総括☆
忍者バンザイ!
……と書いて終わるのかと思ったのですが、終盤、実に思わぬ熱さ。
メギド王子、カー将軍、そして夢野博士!
多くの登場人物が予想を超える姿を見せ、実に熱く美しくまとまりました。
何度か本文でも繰り返しましたが、とにかく、終盤の曽田脚本はキレキレ。
改めて曽田戦隊は全てしっかり見て、比較検討したくなるなぁ、というぐらいの出来。……実際にやるのは、 少々きついかもとは思いますが(^^;
(『フラッシュマン』はむしろ終盤ぐだぐだでしたし)
もちろん忍者(ダイナブラック)もやはり格好良く、まあ幼時にこれを見たらそれは、「忍者最強!」 と洗脳を受ける筈だな、と(笑)
あと改めて見て思ったのは、本文でも書きましたが、メンバーのビジュアル的レベルの高さ。
コメディリリーフの南郷でもそこそこ格好いいですし、レイさんのお美しさは言わずもがな。なにより弾北斗の正統派美男子ぶりは、 特筆もの。もちろん顔の好みは人それぞれではありますが、戦隊シリーズというくくりで見ても、かなりの上位に位置する、 正統派二枚目だったと思います。
その分、字が汚かったり、デザインセンスが微妙だったりしますが(笑)
総司令を務める夢野博士も、暢気な発明おじさんと落ち着きのある総司令という二面性を島田順司が見事に演じ分け、 またそれが、最終盤にその正体が解き明かされる事で一つに繋がる、というのは実に絶妙。
夢野博士の“妙に表に出たがらない”“やたらに発明おじさんにこだわる”が物語の核心に関わる伏線だったのは、 素直に驚きました。
伏線といえば、ジャシンカ帝国サイドの設定は、おおまかには考えていたにしろ、実際にはけっこう後付けが多いのではないかと思うのですが、 それらが見事にピースとしてはまっていったのは、実にうまく転がりました。
「有尾人一族は兵力が少ない」
「十数年以上、地上侵攻の為に地道にスパイ活動を行っていた」
「有尾人の尻尾の数は不変」
辺りは全て、シナリオの流れに合わせた後付けのような気が(笑)
しかしそれらが全て、物語の一部として説得力を持った、というのが今作が名作といえる所。
80年代前半の作品という事で、現在ではお馴染みの“2号ロボ”も“追加戦士”も存在せず、中盤、 ジャシンカ側の作戦がチープになると、それに合わせて少々だれてしまいましたが、後半、メカシンカの登場から、 ダイナマンが新必殺技を編み出すのに3話かけたのがうまく効果を発揮し、持ち直しました。
後のシリーズ作品で試行錯誤されていく必須イベントの少なさが中だるみを生んだものの、自由度の高さが上手く転がった作品、 と言えるかと思います。
好きなキャラクターは、何はともあれ忍者(星川竜)、そしてレイさん、なんだかんだで北斗さん。北斗さんは結局のところ、 完璧超人というわけではなく、案外ツッコミ所だらけなところがいい。
本文から何となく察せられるかとは思いますが、島はびみょー(笑) まだ南郷の方が好き。
ジャシンカ側では、メギド王子とカー将軍。特にメギド王子の残念ぶりは今作の大きな武器でもあり、 非常に楽しませていただきました。
そしてその王子があの形で帰還するからこそ実に輝く、クライマックス!
カー将軍との擦れ違いが、なんとも切ない情感まで漂わせてしまう辺りも、実に良かった。
☆好きなエピソード・ベスト3上位は拮抗しているのですが、一つ選ぶとすると、デンライト回。メカシンカに連敗中のダイナマンがマジックアイテム入手寸前まで 辿り着くも、そこでお約束に流れると嫌だなぁ……という幾つかのポイントを見事に回避し、爽やかに落着。
- 第35話「新必殺技を求めて」
- 第31話「スパイ有尾人の罠」
- 第48話「夢野博士の大秘密」
「俺たちを支えてきたのは、いつも5人のチームワークだ。武器に頼ったのが間違っていたのだ」
ダイナマンというヒーローらしさが前面に出て、うまくまとまったエピソード。
31話は、堀長文初登場回。新しい面を切り拓くと共に、脚本も力の入った傑作回。もしかしたら、この回があったからこそ、 終盤の方向性に舵が切れた、というのもあったのかもしれません。
48話は、博士の名台詞「許してくれるかな……こんな男でも。戦ってくれるかな……こんな男のもとでも」、これに尽きます。
3つに絞ったら、王子エピソードが入らなかったのですが、王子3部作的にチョイスするなら、
8話「王子、花の世話をおおせつかり、キメラ王女に馬鹿にされまくる」
28話「王子、ピエロに扮装して、人間社会で情報収集に励む」
33話「王子、最強最後の進化獣を解き放つも、全方位から袋叩きに遭う」
という所でしょうか(笑)
これらがあって、ラスト2話に繋がるのが、実に映える。
あと番外として、29話「キメラの呪いの服」(竜はキメラを覗き、レイは何故かその服を着る、の巻)は、 本編屈指の(男達が)最低な回として、忘れられないエピソード(笑)
終盤の構成は、それまでの積み重ねを踏まえた上で本当によくまとまっています。特に、当時の物語構造として、 非常に大雑把に戦隊となった5人と、割とブラックな勧誘だった博士の関係が、新必殺技の開発編と博士の正体判明を経て、 改めて組み立てられる。その一方でゼノビアの復帰とメギドの更迭によりジャシンカでは内部紛争が起きている…… という対比をそれとなく組み込んでいったのは秀逸。
そしてその対比を受けて最終的に、ダイナマンとメギド&キメラが、それぞれの種族の「明日」を託された「若者」として、 重ね合わせられつつも対立する。
またそこに至る流れとして、スパイ有尾人が地上人として生きていく事を選ぶ31話、それはそれとして北斗さんが卵投げを敢行する39話、 などがしっかりと踏まえられています。
で、そういった形で前向きに「若者」「明日」というキーワードを置いてまとめつつ、夢野博士の「若かったんだよ」という台詞が、 それらを絶対視しない。若さの尊さを認めつつ、若さ故の過ちを物語の中心に置いた、これが「重大な発明(発見)と科学者のモラル」 というテーマとも重なり、絶妙なバランスを作品にもたらしました。
そしてその流れを受けて、“人間の成長”というテーマが、メギド王子を持って語られる。
お見事。
物語の都合上、基本へたれていかざるを得ない敵幹部、という約束事を逆手に取ったウルトラC。
テンポのいいアクション面の出来の良さも含め、まさしく、名作でした。
- ☆構成分析☆
- リストは省略。
〔演出担当/東條昭平:20本 山田稔:17本 服部和史:10本 掘長文:4本〕
〔脚本担当/曽田博久:32本 鷺山京子:5本 松本功:5本 寺田憲史:5本 吉田竣売:2本 三木考祐:1本 山中伊知郎:1本〕
(※劇場版再編集の32話含む)
演出陣では、80〜90年代の戦隊シリーズを支えた東條昭平が、パイロット版と最終3話を含め、最多演出。 大きなトピックとしては、なんといっても掘長文の参加。戦隊初演出の31話は気合いの入った脚本もあり、 シリーズ屈指の傑作回となり、戦隊シリーズに新たな演出ラインを持ち込みました。掘長文の参加は、 後の『電撃戦隊チェンジマン』での長石多可男の参加にも繋がり、ベテランの山田稔を含め、 演出陣に80年代戦隊の主力が揃う形となりました。
脚本は、全体の6割を、メインライター曽田博久が担当。初期〜中盤は単発エピソード中心という事で多くのライターが参加しましたが、 29〜40話の12連投(劇場版再編集の32話を含む)を皮切りに、後半の重要回は全て執筆。 27話以降でいえば曽田博久以外が書いているのは5話に留まり、後半戦を見事に盛り上げました。
ダイナマン各メンバーの、メイン回数は以下。
弾北斗:13〔3,7,9,14,21,25,31,33,34,39,41,44,45〕
星川竜:8〔9,10,15,17,24,29,40,43〕
島洋介:5〔6,11,18,26,43〕
南郷耕作:4〔4,6,19,42〕
立花レイ:6〔13,23,28,29,38,46〕
初期作品は赤のメイン率が高めの傾向がありますが、ジャシンカの作戦に苦戦するも反撃して……というような展開の場合は、基本、 弾が中心になる為、弾の数字が突出。後年のシリーズに較べて、ダブルメインというような回がほとんど存在せず、 単独で非常に多くの回の中心になっています。
星川は居るだけで存在感が強い為か、単独メイン回は遅め。しかも、謎の円盤と遭遇するという今ひとつしまらないエピソード(^^; その一つ前で、赤回と見せかけて実質メインみたいな乗っ取りは敢行していますが(笑) その後は、星川回=アクション祭、 という使われ方になり、また、忍術/幻術の関係で、キメラ王女とよく絡む事になりました。服も盗みました。 おまわりさん、痴漢です。
島は非常にわかりやすく、11・18・26は、海。6話は、南郷に山に連れ込まれて毒にやられる(笑) と属性が明確。43話はサブタイトルからして島メインだった筈なのに、終わってみたらまたも忍者凄い話に。
南郷は実は弾の次にメイン回が回ってきているのですが、ラーメン食べていたら石化してしまったのをメイン回といっていいのか。 まあいいか。出だし快調だったものの、中盤以降は特に目立った話はなく、終盤ではストーキングに走る事に。やはり扱い微妙に悪い(^^; かえすがえすも、九州編での幼なじみエピソードを、何故か忍者に持っていかれたのが痛かったです。
レイはスポットが当たるのが1クール最後と非常に遅かったのですが、島や南郷とは逆に、後半に巻き返し。 特に、若さを取り戻した天才科学者との束の間の青春デートを演じる38話は名作回でした。
後年のシリーズ作品ほどバランスを取っている感じはなく、メイン回数は概ね、序列通り。 ゼノビア登場後に個人エピソードをそれぞれ入れたのは意図的だと思いますが、それにしても弾が連続していたり、 島と忍者回は一つにまとめられていたりで、あまりこだわりは感じられません。また大きな特徴として、メンバー同士が横に絡む、 ダブルメインといえるエピソードが非常に少なく、せいぜい、6,9,43話ぐらい。そして9話と43話は、どちらかというと、 忍者によるメイン乗っ取り。
まあ、最後の最後まで苗字で呼び合う仲だったから仕方ない。
ダイナマンは非職業戦隊で一見フラットな関係の割には、メンバー間のヒエラルキーがはっきりしていて劇中でも描写が徹底しており、 基本、赤と黒が兄貴分で、下に残り3人、といった構造。
ゆえに下の3人の赤と黒への呼びかけは「弾さん」「竜さん」で、赤と黒だけがお互いをそれぞれ「弾」「星川」と呼称。 上から下へは、基本苗字呼び捨て。レイだけ下の名前。
また、弾と星川が上位扱いの理由は、物語の流れを落ち着いて考えると、リーダーシップとか人格とかいうよりも、 戦闘力でなんとなく自然に、というのが深く考えるとちょっぴり恐ろしい戦隊です。
弾北斗vs星川竜!とかドリームマッチですが、基本戦闘力は忍者の方が高いけど、爆発力と総合力(知力など含む)では、 北斗が上とかそんな感じか。
主なイベントは、
8話:新幹部(キメラ王女)、登場
16−17&20話:九州ロケシリーズ
26話:夏休みだよ熱海後楽園スペシャル
34話:メカシンカ誕生
35−36話:新必殺技開発編
37話:新幹部(ゼノビア)、登場
38話:メギド王子、更迭
42話:ダークナイト登場
47話〜:レトロ遺伝子の廃液漏れから最終決戦編
9〜33話の間に物語の大きな動きが無い、というのが、近年のシリーズ作品と較べると、最大の違い。現在ではこの間に、 追加戦士が登場したり新ロボが出てきたりと色々ありますが、一切なにもなく、地方ロケでちょっと派手にしてみるぐらい。 3年後の『超新星フラッシュマン』で初の2号ロボが登場するわけですが、こういった、イベント増加の流れというのも、 きちっと追ってみると面白いかもしれません。
ただ34話のメカシンカ誕生以降は激動と呼ぶにふさわしい、怒濤の展開。メギド更迭からラスト1クールの濃縮具合は、 近年の作品と較べても大差ないといえます。
また、クリスマス話や正月回想編のようなエピソードが無い事で、年末年始にかかるラスト5話を全てクライマックスとして使えたのは、 作品の構成として非常に良い方向に働きました。
以上、『科学戦隊ダイナマン』総括でした。
感想お付き合い、ありがとうございました。
「大切なのは己を鍛え、自ら強くなる事なのだ!!」
(2013年7月6日)
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