■『科学戦隊ダイナマン』感想まとめ5■


“みんなの夢を砕くもの
悪のジャシンカ打ち破れ
夢をかなえて ダイナマン”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『科学戦隊ダイナマン』 感想の、まとめ5(41〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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まとめ1 ・ まとめ2 ・  まとめ3 ・ まとめ4 ・ 総括


<主な登場人物>
☆ダイナレッド/弾北斗:オートレーサーにして、内燃機関などの研究者。剣道家であり、また、OPを見る限りではボクシングなどの 格闘技にも長ける模様。知勇兼備の二枚目だが、センスが残念。
☆ダイナブラック/星川竜:宇宙人と会うことを夢見る、自称、伊賀忍者の末裔。生身で宙を舞い、手から糸を出し、 分身の術を操るなど、圧倒的な戦闘能力を誇る超人。
☆ダイナブルー/島洋介:海を愛する海洋研究者。水中戦を得意とする。
☆ダイナイエロー/南郷耕作:ラーメンを愛してやまない、植物と農業の研究者。射撃と運転が得意な模様。
☆ダイナピンク/立花レイ:動物と会話する研究を行っている、ダイナマンの紅一点。フェンシングの使い手。
☆夢野久太郎:科学戦隊の総司令。普段は冴えない発明おじさんだが、ジャシンカ帝国の侵攻を予期し、ダイナロボなどを開発していた、 謎多き人物。
−−−
★帝王アトン:ジャシンカ帝国を統べる、9本尻尾の帝王。
★カー将軍:ジャシンカ帝国の参謀にして進化獣の開発者である、7本尻尾の将軍。
★メギド王子:アトンの息子で、5本尻尾あらため4本尻尾。地上侵攻作戦の指揮を執るが、度重なる失敗で遂に更迭される。
★キメラ王女:メギドの従妹で、4本尻尾。ジャシンカ一の幻術の使い手。
★女将軍ゼノビア:反乱の罪で千年洞窟に幽閉されていた、7本尻尾の女将軍。カー将軍と並ぶ、知謀と戦闘力の持ち主。

◆第41話「闇に消えた暴走族」◆ (監督:堀長文 脚本:松本功)
 見所は、北斗さん、おじさんと呼ばれる。
 「おじさんは無いだろう……弾っていうんだ」
 抵抗する(笑)
 様々な研究所へ侵入し、新開発の超高速エンジンを盗み出す暴走族「黒鷲」。 その背後にジャシンカ帝国の気配を感じたダイナマンは調査にあたり、その最中に弾は、 「黒鷲」の暴走で怪我をした父の復讐に燃える少年、ひろしと出会う。ジャシンカ帝国の目的は、 メカシンカ・ドリルホースに強力なエンジンを付ける事で飛行能力を持たせ、空から陸から世界各地をドリルミサイルで爆撃する、 ジャシンカ・ペガサス作戦!
 力強く提唱するゼノビアですが……あー……えーと…………ドリルホースにちゃっちゃっと飛行能力付けないの、 カー将軍の嫌がらせ、ですよね?
 擬装の為に暴走族になりきる尻尾兵という、地上を研究しすぎなジャシンカ帝国、の図は面白いのですが、 夢野司令に一発で「ジャシンカの手の込んだ作戦じゃね?」と看破されるので、色々と台無し(笑)
 ひろし少年をきっかけに暴走族のトラブルに関わり、探っていたら実はそれがジャシンカ帝国の作戦だった…… という順序なら普通に面白かったと思うのですが、どうして開始1分でネタ割れしてしまったのか。
 お陰でひろし少年の存在意義も限りなく薄いですし、後半、父の復讐の為に「黒鷲」のバイクに攻撃を仕掛けてジャシンカの人質となって捕まり、 「助けてー! 助けてくれよー!」とか勝手な事を叫んだり、正直、面倒くさい(^^;
 そんなひろしくんを救出するも尻尾兵のバイク軍団に囲まれ、小学生を後ろに乗せたままバイクで高速スピンターンする北斗さん、 超鬼畜。
 未来工学研究所のスーパーマッハエンジンを入手したドリルホースペガサスは飛行能力を手に入れるも、つい先日、 飛行系メカシンカと戦ったばかりなので、どうにもタイミングも悪い。
 ドリルホースペガサスは「マッハダッシュ・マシンガン攻撃」という謎の光弾攻撃(全くダッシュしない)を受けた所に、 スカイハイからのダイナロッドを受け、ニュースーパーダイナマイトで爆散。巨大化後はダイナロボにかなりのダメージを与える健闘を見せるも、 ダイナフラッシュを浴びて(以下略)
 全体に漂う、どうしてこうなった感。
 その一方、ジャシンカ帝国では一つの異変が……
 「メギド様が、メギド様が千年洞窟から脱獄いたしました!」
 大・脱・走
 「おのれメギドめ……我が息子ながら何という呆れ果てた奴! 見つけ次第、処刑せよ!」
 激怒する王様ですが、いやここは、息子の思わぬ根性を誉めてもいいのでは(笑)
 いや、上に立つべき王族が治世に逆らうのは筋論としては非常にまずいですが。
 「いずこへ逃げても、野垂れ死ににの運命が待っているだけです」
 そして、ざっくり酷いカー将軍。
 あの優しかった将軍はどこへ!!(涙)
 (ただし、それとなく、追っ手に兵を裂くほどの事もないでしょう、と進言しているようにも取れる)
 ところで今回の、東映Youtubeによるあらすじ文。
 「ドリスホースは高性能エンジンを盗んでパワーアップ。空から襲い掛かる。」
 ……もうなんか、担当者が考えるの面倒くさくなってますよねこれ(笑) 1行でクライマックスまで説明されているとか、 逆に感動するレベル。そして誤字。

◆第42話「挑戦ダークナイト」◆ (監督:堀長文 脚本:曽田博久)
 王様、寝起きドッキリで大事な帝王剣を盗まれるの段。
 「帝王剣は、いただいた……!」
 帝王アトンの寝所まで忍び込む、謎の黒ずくめの正体や如何に……?!
 その頃、南郷は女子高生をストーキングしていた。
 もとい、有尾人一族に両親を殺された松山家の姉弟のもとに、こっそりと鉢植えを届けていた。
 何故かこそこそと、玄関に鉢植えを置いては身を隠す南郷。

 おまわりさん、こっちです。

 鉢植えにはそれぞれ、花言葉により南郷からのメッセージが託されて……との事なのですが、何故か仲間にも黙っていたりと、 甚だ不審です。
 というか、定期的に見ず知らずの人から花言葉によるメッセージの託された鉢植えが玄関先に置いてあるとか、

 凄くサイコ。

 今捕まると、ニュースに住所不定・自称植物学者とかテロップ出ちゃうぞ、南郷。
 そんな日課を終えた南郷は、帰り道で突如、空から降ってきた大ぶりの剣を拾う。それこそが、帝王剣……!  何者かの通信によってその場に導かれたキメラ王女とメカシンカ・マサカリベアと行き会う南郷だが、 帝王剣の圧倒的な力でジャシンカの兵達を蹴散らす。
 果たして、誰が何の為に南郷に帝王剣を入手させたのか? ジャシンカ帝国に謎の通信を送った者の正体は?
 そして、「マサカリ」はメカなのか?!
 謎が謎を呼ぶ中、帝王剣の力にテンションがクライマックスになった南郷は、ゼノビアへ果たし状を送る。ゼノビアこそが、 松山家の両親の、直接の仇。通信機を切り、単身で決闘に赴いてしまった南郷を探す仲間達は、 南郷がストーカー行為を働いていた事を知ってしまう。
 南郷が持ち出した植木鉢の行方を追う内に、松山姉弟と出会った北斗は、その日松山家に届けられた鉢植えの花言葉を知る。
 「今日は、ミヤコグサです。花言葉は……敵討ち」
 松山家の両親が殺された万年山の戦国が原で、ゼノビアと対峙する南郷。しかし、決闘をモニターしていた王様が帝王剣に念力を送り、 そのエネルギーを吸われてしまう。アトンの呪いの力により、帝王剣を手放せなくなってしまった南郷、 その解除手段は一つ――人間の血を剣に吸わせる事。このままでは遠からず狂い死ぬ、と宣告を受けた南郷は、 その前にできる限りジャシンカ帝国を血祭りに、と走り出すが、朦朧とした状態で弾を尻尾兵と誤認し、斬りかかる。
 「尻尾兵、仇だぁ!」
 あえてその南郷に腕を切らせ、血を吸わせる事で帝王剣の呪いを解く弾。
 ……そのぐらいの量でいいのなら、呪いが発動した時に誰か適当に斬られても良かったのでは、という感はあるのですが、 いざ斬られるとなると怖いし、ダイナマンは未だに苗字で呼び合う関係なので、仕方ない。
 今回は全体的に、尺が間に合ってないというか、説明不足で表現不足。
 当然、ダイナマンも“どれぐらい斬られれば南郷が治るのか”はわからないわけですが、ここは先に北斗が「南郷、俺を斬れ」→ 仲間に止められる→南郷「そんな事はできない」と走り去る、みたいなシーンがあってこそ、自ら斬らせる北斗が栄える、 と思うわけです。……期待値の高い堀監督演出回だけに、ハードルが上がっているというのもありますが。
 弾の決死の行為により帝王剣は南郷の手を離れ、それを奪い返すゼノビア。ゼノビアはそのまま二人を抹殺しようとするが、 そこへ、謎の仮面の人物が現れる!
 「弾北斗……ダイナレッドの命は俺がちょうだいする」
 「なにもの?!」
 「闇の使者……ダークナイト」
 漆黒のスーツと仮面に身を包んだ、謎の男、ダークナイト。
 ここに来て、更なる新キャラ登場。

 ……というか、被り物来たぁぁぁッッ!!

 戦いは、ダイナマンvsジャシンカvsダークナイトの乱戦に。尻尾兵を蹴散らしたダークナイトはダイナレッドと剣を合わせ、 ぶつかり合う両者の必殺技。
 「ダークナイト、闇の舞! ダークハリケーン!」
 「ダイナ剣、夢の翼! ゴールデンスパーク!」
 戦場に漂う、どこか残念な空気。
 ダークナイトは恐らく、宇宙刑事を意識したっぽい立ち回り。特にダークソードが光る演出は、明らかにライトセーバーないしレーザーブレード。 マスクの額についている石?がピカピカ点滅しているのは、なにかの伏線っぽいですが、現時点では謎。
 「邪魔が入ったか……この次会う時まで、生きていろよ、ダイナレッド」
 「ダークナイト……」
 マサカリベアが出現し、ダークナイトは撤退。改めて名乗りを上げたダイナマン、
 ダイナロッド・稲妻スパーク(5人合体技)
 ↓
 イエロースクリューボンバー
 ↓
 竜巻剣
 ↓
 ニュースーパーダイナマイト
 一切何もしない内に連続攻撃で完封抹殺される可哀想なマサカリベア(笑)
 ダイナロボにもさくっとやられ、久々にカー将軍のやる気の無さが炸裂しました。たぶん、そろそろ転職を考えている。
 「田舎に引っ込んで、発明おじさんとして暮らすのも、悪くない……」
 なお今回、ビッグバンビームによる巨大化の演出が変更され、地割れから出てくる超メカシンカを、 ダイナマンが手前から見上げる形になりました。これまでの演出(ミニチュア)が今ひとつだったので、嬉しい改善。
 かくて、帝王剣はアトンの元へと戻ったが、ダークナイトの目的は依然不明のまま…… 果たしてダークナイトは盗んだ帝王剣をダイナマンに持たせる事で、何をしたかったのか? そして、その正体は?!
 「闇の使者ダークナイトには尻尾がなかった……有尾人でないとすると、人間か……」
 「しかし人間ならここまで忍び込む事はできません。ジャシンカ内部の事に詳しい者のようです。敵か味方か、 ダークナイト……いったい何者!」
 妙に格好つけてマントをばさっと翻す将軍。
 しかし、これだけ雁首揃えて、誰もあの人の事は眼中にないのか……(笑)
 …………いやまあ、あれがあれだけに、むしろ近しい人ほど、盲点なのかもしれませんが。
 とっくに野垂れ死んでいて、純然たる新キャラ、という可能性もあり得ないとは、言い切れないのが怖い。
 ダークナイトの行動理由については、全く謎のままで、匂わせる伏線も無し。偶然の要因も多いですが、 北斗の血を吸わせるのが目的だった、と考えるのが妥当な感じですが、果たしてどう転がすか。大きな物語としては 「ジャシンカ殲滅せよ」というだけだった中に、最終盤、戦いの趨勢に関わるかもしれない謎要素を盛り込んできました。
 ところで、本作でキャラクターデザイン(主にジャシンカ側)を務めた出淵裕がメカデザインとして参加していた 『聖戦士ダンバイン』に、割と似た感じの「黒騎士」というキャラクターが登場するのですが、出淵氏がインスパイアされた、 という事はあるのでしょうか。放映時期は完全に重なっている(1983年2月〜1984年1月)のですが、登場話数としては、 黒騎士の方がやや早い。“仮面の復讐者”というのは古典的テーゼですので、オリジンがどうこうという話ではなく、単純な興味。 何が似ているって、中の人(多分)が残念という所が、凄く似ている(笑) 必要以上に、 残念二乗で見てしまうので、なんとかしてほしい(おぃ)

◆第43話「島!君は青い稲妻」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 燃料の運び屋をする島は、メカシンカ・ロケットタイガーに狙撃され、ハイオクト燃料のサンプルを奪われてしまう。 もし、これまでの燃料の倍のスピードを出せるハイオクト燃料を、ロケットのパワーアップに使われたら大変な事になるだろう…… 任務の失敗に落ち込む島。
 「島の動きを持ってしてもかわせなかったなんて……こりゃ凄いロケットでござるよ」
 と、忍者が言っても厭味にしか聞こえません(笑)
 この程度の任務、島で大丈夫でござろう? え? 失敗した? まじ? みたいな(おぃ)
 というか島、潮の香りがする所でないと、本気出せないから。
 海を愛しているから!
 思い悩んだ島は、「竜さん、ブラック分身の術を教えて下さい」と弟子入り志願。
 その前のシーンで、修行中の竜を物陰から不意打ちするのですが、分身の術で飛び道具を回避した忍者、 襲撃者(島)を殴り飛ばした後で、「なんだおまえかぁ」……ていや今、明らかに島だと確認してから殴ったような。
 そんな中、改良ロケットの攻撃を受けて倒れるピンク。
 ロケットタイガーを追う黒の前にゼノビアが現れると新しいロケット弾を補給し、黒は分身の術で回避を試みるが失敗、負傷する。
 「分身の術が、破られるとは……」
 ……いや、ロケット発射された後に分身したからだと思います(笑)
 その敗北を知らず、竜を追いかけてきた島は
 「分身の術、教えてくれますね?」
 と土下座を敢行。
 足を負傷した竜は島の特技を活かして、分身の術以外でロケットのスピードに対抗する技を生み出すしかないと腹を決め、 二人はスパルタ特訓開始。
 「島ぁ! 立て、立つんだ!」
 「竜さん、本当にこれが、分身の術を極めるための特訓なんですか?」
 「なにぃ?」
 「とてもその為の特訓とは思えません」
 「黙れぃ。そんな生意気な台詞はな、空中三角飛びが出来てから言ってもらおうか」
 「空中三角飛び?」

 俺、だ ま さ れ た?

 「これが空中三角飛びだ、島、やってみろ!」
 森の木々をジャンプ台に使い、華麗に空中を舞う竜、おまけに島にキック。よくわからないけど忍者すげぇ、 というかこれ以上逆らうと危険が危ない、と特訓を続ける島だったが、そこへ現れ、竜に襲いかかるダークナイト。竜を助けなくては、 と無我夢中の島は見事に空中三角飛びからのキックを炸裂させる。
 「空中三角飛び、楽しみにしているぞ、はははははははっ」
 いきなり弱体化したかと心配されたダークナイトでしたが、どうやらダイナマン各員をストーキングしていたらしく、 分身の術を破られた竜が怪我をおして島に逆転の秘策を授けようとしていた真意を説明、残り3人が追い詰められているぞ、 と情報を提供。
 全力で謎の人物をアピールする努力に感涙を禁じ得ません。
 ロケットタイガーに追い詰められる仲間達の元へ青と黒は駆けつけ、戦闘開始。特訓の成果を見せようとする青だったが、 そこへ高い所からダークナイトが現れる。
 闇「ロケットタイガー! 平地で戦え。そこでは空中三角飛びにやられてしまうぞ」
 虎「なにぃ、三角飛び?」
 青「貴様ぁ!」
 闇「ははははっ、俺は悪魔よ」
 ……
 …………
 ………………うわぁぁぁぁぁ、これが、中の人の、精一杯の、 悪魔的奸智なのか(涙)

 全 地 球 号 泣

 これまでと違った方向で、全く新しい切り口の“残念”を描き出す、曽田脚本、この終盤に来てミラクル!
 周囲に足場になるもののない平地で、ダイナマンと向き合うロケットタイガー。果たしてここでロケットをかわす事が出来るのか?!  その時、
 「ブルー、俺の方に飛べ!」
 空中にジャンプし、自ら三角飛びの踏み台となるブラック。即座にその思惑を読んだレッドもジャンプして踏み台となり、 ブルーは特訓の成果を見せて空中で青い稲妻となる!
 「ブルー稲妻キック!」
 追い打ちのニュースーパーダイナマイトを受け、ロケットタイガーは爆死。ここで巨大化後にジャシンカ会議室にスポットが当たる、 という珍しい展開。余裕の表情を崩さないゼノビアが地上に送り込んだもの、それは、対ダイナロボ用の大型ハイオクトロケットだった!
 「ダイナブルーはハンドロケットへの対抗手段を開発しましたが、ダイナロボットにはありません」
 ところがそれを見たダイナロボ、「このままでは危ない。三機に分かれるんだ」と、ダイナミックジャンプから空中で分離。
 タイガー「おぉ?」
 ゼノビア「照準が定まらない」
 そもそも、ダイナロボにはわざわざ、対抗策など練る必要がなかった、という恐ろしいオチ。
 ロケットタイガーはさくっとずんばらりんされ、ダイナマンはまたも難敵を打ち破るのであった。
 戦い終えて、
 青「ねえねえ竜さん、やっぱり俺、分身の術、教えてほしいな」
 黒「え? また?」
 桃「私も!」
 黄「俺にも!」
 黒「ダメダメ、あれは秘密」
 赤「そんなこといわないで、教えてやれよ」

 いやあれ、ござる語尾にしないと、使えないから。

◆第44話「爆発!マグマ爆弾」◆ (監督:山田稔 脚本:松本功)
 地下の電話ケーブルを切断して回るショベルコングにより、都内は大混乱。現場の調査に向かったダイナマンの前に、謎の老人が姿を見せる。
 「災いの元はもっと北の方角じゃ。へへへへへ」
 その地では、ショベルコングがマグマエネルギーを封じ込めた強力なマグマ爆弾を作成していた。
 マグマ爆弾の威力を見せるため、またいたずらに殺されてしまう尻尾兵。
 大事に使おう、貴重な兵力!
 単独で偵察に向かった弾は、キメラ王女とショベルコングと出会うが、コングの光線でブレスを破壊され、岩石投げで吹っ飛ばされる。 負傷した弾は山で出会った少女みつこに助けられるが、薬を取りに行こうとしたみつこはキメラらに捕まってしまう。
 「弾、この子がどうなってもいいの?」
 (残念だ……こんな時に変身ができないなんて)
 尻尾兵に囲まれ、窮地に陥る弾。
 というか、変身できたら強行突破する気マンマンなのが恐ろしい。
 だがそこへ飛んでくる杖、そして謎の老人。老人はみつこを助け、弾も囲みを突破。キメラは撤退し、 弾は礼を言ってみつこと去ろうとするが、その背に急に殴りかかってくる謎の老人。そこへ通信不能となった弾を追って4人が駆けつけ、 替えのブレスを貰った弾(2回目)はみつこを4人に任せ、走り去った老人を追う。
 「貴様、いったいなにものだ!」
 「地獄の闇からやってきた……闇の使者、ダークナイト!」
 老人の変装を解いたメ……じゃなかった、謎の男はダークナイトの正体を見せると、キメラ達が洞窟で爆弾を作っている事をバラし、 退散。爆弾を積み込んでトラックで逃げようとするキメラ一行を追うダイナマン、ダイナロッドでトラックを消し飛ばす。 そこへどうも劇場版の再利用っぽいジャシンカヘリ部隊が救援に飛んでくるが、やっぱりダイナロッドで消し飛ばす(笑)
 必死に逃げるキメラ達を容赦なく追い詰めるダイナマンはショベルコングを撃破し、 東京をマグマ爆弾で壊滅させようというジャシンカの作戦は失敗に終わるのであった…………て、あれ?  電話線切った意味は?
 第三勢力プレイが盛り上がってきたダークナイトは、変なコスプレでジャシンカ帝国の作戦を妨害。 たぶん中の人が“悪魔みたいな俺”に酔っている。今が最高に楽しい時。
 単純に子役が老人の扮装に慣れなかっただけかもしれませんが、みつこがジャシンカから助けられたシーンでも終始、 老人に気を許した感じで無かったのは、意図的な演出だったとしたら、面白い。

◆第45話「ママはゼノビア?」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 北斗によるモノローグ、という珍しいスタート。
 パトロール中にスケッチブックを拾った北斗。中にあったのは、幼い子供が描いたと思われる母親の絵。 母を知らない北斗は少し感傷的になるが……その内の一枚に秘められた恐ろしい事実に気付く。 絵の中の母親がぶら下げたペンダントがなんと……
 「このペンダントは、ジャシンカのマークだ!」
 王子のヘルメットにも付いていたけど、それ、ジャシンカのマークだったのか。
 スケッチブックを落とし主の少女・みどりの家に届けに行くと、彼女の母親は病死したという。居間に飾られた母親の写真は、 なんとゼノビアそっくり! ある日、母親にそっくりの女性を見つけてこっそりスケッチしたというみどりに連れられた北斗が 公園で見たのは、人間に変身した女親衛隊員と一緒に地上視察中のおめかしゼノビアであった。
 「もうじきあの空に、悪魔の虹をかけてみせよう」
 みどりをとりあえず家に帰し、ゼノビアの前に躍り出る弾。
 「弾北斗!」
 「ゼノビア、ここで何をしている?!」
 あんまりビックリしたのか、一切誤魔化さない、おめかしゼノビア。変身する弾だったが、 メカシンカ・レインボーカメレオンの眩惑攻撃に苦戦し、逃亡を許す。ゼノビアの作戦……それは、マグマエネルギーを虹に変換、 東京上空にかけた巨大な虹を再びマグマに戻す事で東京を大炎上させるという、恐るべきものであった!
 「なぜ弾北斗は私に気付いたのだろうか……なぜ……」
 「これを見ろ!」
 ゼノビアに向け、みどり一家の写真を投げつけるダークナイト。
 悪魔的奸智!
 ダークナイトはゼノビアに「本当にアトンに忠誠を誓っているのか?」と水を向け、激突する二人。
 なんとダークナイト優勢勝ち!
 マグマエネルギーの異常を察知して悪魔の虹作戦のアジトへ向かうダイナマンだったが、 ダークナイトの入れ知恵でみどりに接触したゼノビアは、彼女を懐柔して人質に取っていた。 「みどりの命を助けたければ、峠小屋へ行きなさい」というキメラの言葉に、やむなく一時撤退を余儀なくされるダイナマン。
 司令「君たちは救出に全力を尽くしてくれ、後は私に任せて」
 ……なにを(^^;
 この状況で一体何を司令に任せればいいのか……と思ったのですが、あれ、もしかして、闇の使者?!
 そういえば、出自不明で微妙に怪しげかつ剣の使い手である重要人物を、一人すっかり忘れておりました。
 これは盲点だった。
 夢野総司令は、天狗仮面にしてダークナイトだったのか!!
 一方、峠小屋へ急ぎ向かった弾は、おめかしモードでみどりちゃんの母代わりを演じるゼノビアを前に歯がみしていた。が、 みどりちゃんがゼノビアからほんのちょっと離れた隙に、攻撃。そこを伏兵に撃たれるが、駆けつける仲間。正体を現すゼノビア。
 「子供の心を踏みにじるなんて……許さん!」
 ……いや、えーと……待って北斗さん、貴方今、ぐりぐり踏みましたよ。
 基本的に弾は、“人質とはより強大な力で取り戻すものだ”と考えていて、危険。
 みどりを救出したダイナマンだが、悪魔の虹がかかるまで、あと30秒。はたして東京を守る事が出来るのか?! その時、 総司令の操るダイジュピターが、敵アジトをミサイルで攻撃。さすがにもう、最初から撃てば良かったのにレベルでアジトは吹き飛び、 悪魔の虹作戦を阻むのに成功するのであった。
 レインボーカメレオンは、レインボーカクテルでダイナマンを眩惑、ステルス能力で、ダイナキック・ロッドを回避、更に爆弾攻撃、 と今までで最強クラスの戦いぶりを見せるが、最後はレッドファイヤー(火炎放射)であぶり出されたところに、 ニュースーパーダイナマイトを食らって巨大化。ダイナロボも苦戦させるが、やはりダイナフラッシュから以下略。
 なおここにきてビッグバンビームのポーズがパワーアップ。というかカー将軍、ここしか仕事していない……(^^;
 最後は「お兄さんもね、お母さんがいないんだ」と弾がみどりをなぐさめて、大団円。冒頭モノローグだったのですが、 特に最後で効くというわけでもなく、重そうなプロットも特に広がらず、水準、といったぐらいのエピソード。まあ、 メギドやキメラと違って、私服モードでもゼノビアは崩しにくい、という要素もあったかと思われます。

◆第46話「愛を貫くサーベル」◆ (監督:東條昭平 脚本:鷺山京子)
 赤目山で地震が発生。たまたまハイキング中だった兄弟は、赤く光る謎の石を発見する。それはなんと、 ジャシンカ帝国に伝わるメドゥサの首の目。5000年前に片目がなくなり魔力を失っていたが、 この地震でそれが地上に現れた事を知り、再び首に魔力を取り戻すべく、ジャシンカは片目の回収に動き出す。 尻尾兵に追われていた兄弟を助け出したレイの前に突き刺さる矢文、そして姿を見せるダークナイト。矢文に結ばれていたのは、 メドゥサの首が描かれたジャシンカの古文書であった!
 悪魔的奸智!
 ……まあ単に、両陣営に情報をばらまいているだけなのですが(^^;
 ジャシンカに実在するマジックアイテムと地上の神話が重なっている、というのは、遊び半分程度だとは思いますが、 仕込みとしても面白いといえば面白い。
 胸部にメドゥサの首を装着したメカシンカ・ジェットムササビは、片目を入手。復活した首の魔力で次々と街の人々を石化させていく。 少年との約束より任務を優先した事で、少年を石化させてしまった事を悔やむレイ。 相手を正面から見られずにまともに戦う事のできないダイナマン、いったいどうすれば、メドゥサの魔力を打ち破れるのか……?!
 でBパートになったらいきなり、テニスウェア姿で囮になっているレイ。近づいてきたジェットムササビの姿を手鏡で確認し、 油断した所をサーベルでぐっさり。
 …………コスプレの意味は?
 いや、百歩譲ってジェットムササビをテニスウェアで眩惑する為だったとしても、物陰で隠れている男達もどうして 同じコスプレ(笑) ジェットムササビの趣味がわからないので、レイが囮として機能しなかった時用に、 待機でもしていたのか……! とりあえず皆で、「スマッシュ!」でテニスボールぶつけて攻撃しましたが。
 「おのれぇ、どうして俺様の弱点を!」
 「ギリシャ神話を忘れたの?」
 ……いや、知らなかったのでは(^^;
 と、地上ルールで、強引に魔力を破るダイナマン。
 本当に、悩む→Bパート入っていきなり、なので、さすがにもうちょっと前振り欲しかった(^^;
 太陽光線を受けてサンシャインサーベルマジックが再び炸裂したりで、ダイナマンはジェットムササビを撃破。 メドゥサの目を拾った兄弟も無事に助かり、大団円。前回から、落ち葉を振りまくのがダイナマンの中で流行っているのですが、 それ多分、かけられる方、あまり嬉しくないゾ。
 ところでいわゆる「ロボットプロレス」という言葉がありますが、 ダイナロボって毎度丁寧に敵の攻撃を受け止めてから反撃して完膚なきまでに叩きのめす、まさにプロレス。
 というか今更気付いたけど、もしかして……風車の理論?
 あと3話か4話だと思うのですが、ゼノビア登場→メギド勘当→ダークナイト登場させつつ一通り個別エピソード、と来て、 カー将軍本格参戦で、次回からいよいよ最終展開か。

◆第47話「悪の願い十本尻尾」◆ (監督:服部和史 脚本:曽田博久)
 遂に自ら前線に立ったカー将軍、メカシンカ・ドクガスイタチにより、バイオテロを決行。 こうらくえん遊園地でラーメンを食べていた南郷、巻き込まれて普通に死にそうになる(笑)
 「ふはははは、大人さえも童心に帰る、夢と楽しさに充ち満ちた場所こそ、地獄の門出にふさわしいのだ」
 カー将軍は、事前に台詞を用意しておくタイプ。
 ところが、毒ガスで苦しんでいた人々はそのまま死にはせず、かわりになぜか次々と耳が巨大化したり角が生えたりと、 体の各部に異常が発生する。これはいったいどういう事なのか……? ひとまず退却するカー将軍。
 一方、耳の巨大化した南郷はアジトに運び込まれ、即死こそしなかったものの、重体に。その治療は任せてくれという夢野司令に、 医学の心得もあったのか、と驚く島。司令は4人に毒ガスの元を突き止めるようにと、大滝山周辺の探索を指示する。
 北斗「手がかりを、見つけられたんですか?」
 指令「ん……ちょっとな」
 どうも歯切れの悪い司令は、北斗の追求も誤魔化し、「今は私の言葉を信じてほしい」と4人を送り出す。
 と、ジャシンカへの対策を用意していた事とか資金力とか、“発明おじさん”へのこだわりとか、それとなく謎めいていた夢野総司令が、 一気に胡散臭く。
 「ジャシンカに戻れ、参謀長ユメノ!」とかだったらどうしましょう(笑)
 一方、バイオテロに失敗したカー将軍であったが、有尾人一族の運命に関わる大変な事実に気付いていた。 ドクガスイタチの吐き出すガスの原料となったマグマガスの採取場所へ向かうカー将軍と、それをこっそりと尾行するゼノビア。 将軍にまかれたゼノビアの前に、ダークナイトが姿を見せる……悪魔的奸智!
 「ゼノビア、10本尻尾になりたくないか」
 「馬鹿な、我らは生まれながらに尻尾の数は決まっている」
 帝王アトンすら尻尾は9本止まり……だが……。
 ダークナイトはゼノビアに取引を要求し、元より忠誠度20ぐらいのゼノビアは、その誘いに乗って再び帝王アトンへの反攻を決断。 そこへ通りすがったダイナマンに密談の一部を聞かれるが、合体攻撃で撃退すると、二人はカー将軍の後を追う。
 この事態に本部へ通信を送るダイナマンだが、何故か総司令は不在。
 「おかしい……やっぱり博士はおかしいぞ!」
 北斗さんのニュアンスが「(頭が)おかしい」に聞こえて、危険。
 というか、本当に闇の使者?!
 ゼノビアらを追ったダイナマンは、途中で耳の治った南郷と合流。だが南郷が目覚めた時には、 人々の為の治療薬と伝言が残されていただけで、既に夢野博士の姿は無かったという。いったい、博士はどこへ消えたのか……?
 そして、カー将軍が辿り着いた大変な事実……それは、毒ガスの原料となったマグマガスに、 レトロ遺伝子が含まれているという事だった。
 「レトロ遺伝子」……それは体内の細胞をどんどん増やし、最終的には宿主を死に至らしめてしまうという、 15年前に発見された恐るべき遺伝子。人間には毒性が強すぎるが、有尾人一族ならば、それを利用して 尻尾を増やす事が出来る!
 レトロ遺伝子が、マグマガスの中に流れ落ちる水滴に含まれていると見たカー将軍はそれを集めるが、ボトルを一杯にしたところで、 外からダークナイトとゼノビアに奪われてしまう。水筒抱えて逃げ出した二人だったがそれをダイナマンに奪い取られ、 背後から追いついてきたカー将軍一行を見て、とっとと逃げ出すダークナイト。
 成り行きで強盗犯人となるダイナマン。
 ドクガスイタチは各種ガス攻撃でダイナマンを苦しめるが、毒ガスを反射されて、ニュースーパーダイナマイトで爆死。
 「おのれぇ、ダイナマン! ビッグバン・ビーム!」
 いつの間にか基地に戻って、兜も脱いでいる将軍(笑)
 巨大ドクガスイタチのガス攻撃は、通気性の良いダイナロボをも苦しめるが、科学剣でずんばらりん。 こうしてジャシンカ帝国を撃退し、ボトルの確保に成功したダイナマンは念のために洞穴の中を確認するが、 レトロ遺伝子を含んだ水滴は止まっていた。果たしてその水源はどこなのか? そして、夢野総司令はどこに消えたのか?
 かつてない大きな謎を孕みつつ、物語は終局へと向かう!

◆第48話「夢野博士の大秘密」◆ (監督:服部和史 脚本:曽田博久)
 ゼノビアさん悪い顔。
 前にも口にしていたかもしれませんが、改めて帝王アトンの目的は、10本尻尾になりジャシンカの神として超魔力を振るう事。 地球征服をその為の手段と考えていた王様だが、科学の力で何とかなるかも、という急報に胸がドキドキ。しかし10本尻尾を狙うのは、 帝王アトンばかりではなかった……。
 一方、持ち帰った水を分析し、その中にレトロ遺伝子の存在を確認したダイナマンは、15年前、 人工的にレトロ遺伝子を作り出した生みの親、遠山博士の存在を突き止め、行方を追う。だが、 完成したレトロ遺伝子と共に姿を消した遠山博士は自分の足跡を完全に消し去っており、居場所はおろか当時の写真一枚すら見つからない。
 「駄目ねぇ、やっぱりこういう事は女でなくっちゃ」
 情報収集判定のダイス目が悪かった男達をあざ笑うレイさん。
 レイは、遠山博士も若い頃は色々あった筈、と過去の交友関係を探り、博士のかつての恋人に辿り着いていた。 女性は既に死亡していたが、絵描きの卵であった彼女の描いた、遠山博士の肖像があるという……女性の実家に向かうダイナマンだが、 開いた蔵の中から飛んで出てくるダークナイト(笑)
 案内してくれたお母さんもビックリ。
 梱包された絵を抱えて走るダークナイト、追いかけるダイナマン、そこへ現れて横から絵をかっさらうメカシンカ・ ブーメランジャッカル。絵を巡って激しい三つどもえが発生し、更にカー将軍が登場。「ダークナイト、ダイナマン、 まとめて片付けてやる」と強力な電光が炸裂し、ボール紙の包みをめぐって争うという絵面ながら、なかなか熱い攻防。 そして押したり引いたりの挙げ句に梱包が破れ、中から曝されたキャンバスに描かれていたのは……
 「夢野博士?!」
 とにもかくにも絵を奪い、スカイハイで逃走するダイナマン。若き日の遠山博士の肖像は、 別人というにはあまりに夢野博士に酷似していた……遠山博士が、夢野博士という事なのか?!
 南郷「なんてこった……俺たちはこれまで騙されていたのか」
 ………………まあそもそも、「研究費を出す」というのが嘘だったから。
 南郷「信じていたのに……そんな人だったなんて。俺たちは裏切られたんだよ」
 北斗「なんてことを言うんだ。南郷の耳を治したのは、博士だろう」
 南郷「「わからなくなったよ、夢野博士っていう人が。みんなから聞いた、遠山博士とは一致しないし……。 いったいどっちが本当の博士なんだ」
 北斗「決まっているじゃないか。俺たちの知っている夢野博士こそが本当の姿」
 南郷「じゃあどこへ行ったんだ?!」
 まさかこんな形で、この終盤に『ダイナマン』と『ダイレンジャー』が被るとは(笑) 東映Youtubeによる配信タイミングも被った為に、 妙に面白い事になってしまいました(^^;
 で、10年前の作品の方が良く出来ているという。
 南郷の博士への不信はやや唐突ではあるのですが、5人の中では一番人が良いですし、命を賭けて戦う同志であるからこそ、 名前を偽り別人になりすましていた、という事自体が許せない、というのはわからないでもない話。そこで、 博士の治療←耳の巨大化←コメディリリーフの南郷だから多少酷い事になってもOK、と前回から計算されて繋がってもいます。
 そして正統派ヒーローとして博士を信じ続ける北斗は、レトロ遺伝子の混ざった水滴は、博士が止めたのでは、という事に気付く。 もう一度、大滝山へと戻ったダイナマンは忍者イヤーで水脈をさぐり、山肌に人の手が入った洞穴を発見。その奥で夢野博士と再会するが、 落盤によって洞穴の中へ閉じ込められてしまう。
 「これだけは信じてくれ……私は15年前、レトロ遺伝子を処分したんだ」
 毒ガスによる人々の変貌を見た夢野博士は、それがレトロ遺伝子の影響であると即座に察知。治療薬を作るとすぐに、 レトロ遺伝子を処理したこの洞穴に赴き、廃液の流出を食い止めていたのであった。
 南郷「なんでこんな恐ろしいものを造ったんですか」
 「若かったんだよ……世界中をあっといわせるような、生命工学の発明をしたかったんだ」
 だが、レトロ遺伝子を開発した夢野(当時:遠山)はスパイ組織に襲われ、かけがえのない恋人を失ってしまう。
 「私のような研究一筋の男に、初めて愛するという事を教えてくれた人を、自分の作った遺伝子で殺してしまったんだ」
 遠山はレトロ遺伝子を大滝山の奥深くに処分すると、それまでの人生を捨て「夢野久太郎」という新しい名を名乗る。 そしてスパイ組織を背後で操っていた地底の有尾人一族、ジャシンカ帝国の存在を知ると、それと戦う決意を固めたのであった。 また同時に、発明センターを造り、子供達と楽しい夢のある発明に取り組む道を選ぶ…… それは功名心から禁忌の発明を行ってしまった自分自身と、それによって失ってしまった愛する女性への、 夢野なりのせめてもの罪滅ぼしであった。

 「許してくれるかな……こんな男でも。
  戦ってくれるかな……こんな男のもとでも」

 いやぁ正直、今作にトータルな物語による盛り上がりはあまり期待していなかったのですが、ここに来て、 夢野博士がこんなに格好良くなり、物語がこんなに盛り上がるとは。
 特に絶妙なのは、ダイナマン5人もまた、彼等なりの野心に溢れる若き研究者であり(一部微妙)、夢野博士の渾身の苦さを含んだ
 「若かったんだよ」
 という言葉が、この上ない実感を持って、彼等を絶句させる事。
 パワーガン、デンライト、ケタゾンガス、とこれまで幾つかあったエピソードの流れを汲み、重大な発明(発見)と科学者のモラル、 という部分も物語の中で繋がりました。
 また、天狗仮面の秘密(ジャシンカから身を守る為に自らも体を鍛えていた)、“発明おじさん”へのこだわりも、納得できるレベルに。
 そしてやっぱり、ジャシンカは昔からせせこましくスパイ活動を頑張っていた。
 資金源は謎のままですが、博士が復讐の為に心血を注いで作り上げたのだと思うと、ダイナロボの圧倒的な力も、なんとなく納得です。
 博士の告白を聞き、改めて打倒ジャシンカへの思いを強くする5人。ニュースーパーダイナマイトの高熱なら レトロ遺伝子を完全に消滅させられるだろう、とダイナマンはレトロ遺伝子の入ったボンベを抱えて、洞穴を脱出。
 それなら先にやっておけば……という気もしますが、夢野博士もわざわざジャシンカと交戦中に藪をつつく必要はないと判断したとすれば、 確かに妥当か。
 ……て、博士が「爆発!」にこだわっていたのって、 レトロ遺伝子を完全に破壊するだけの高エネルギーを求めていたのかもしかして、と考えると、これまた納得(笑) 
 クライマックスの戦闘は、待ち受けていたジャシンカ帝国とボンベを奪い合うアメフト風バトル。こういう演出は、伝統といえば伝統か。
 前半を重くしたバランスを取る為か、このバトルはコメディ風味に進むのですが、えー……気軽に敵を殴るのに使ったりしているけど、 そのボンベが破裂したら、割と大変な事になるのでは(笑)
 最後は、仲間割れを誘発させて一般兵が居なくなった後で、故意にブーメランジャッカルにボンベを渡し、しめしめと逃走した所を、 背後からニュースーパーダイナマイト(おぃ)
 ブーメランジャッカルはレトロ遺伝子ごと爆散消滅し、見物していた偉い人達は撤退。
 今回、「おのれぇ、ダイナマン! ビッグバン・ビーム!」の前に、将軍が基地へワープしてくるシーンが演出で入りました(笑)
 ブーメランジャッカルは、ブーメランでダイナロボのコックピットを突き破るなど善戦するが、ダイナブーメラン→竜巻パンチ→ 科学剣稲妻重力落とし、のコンボで死亡。この終盤戦なんとなく、メカシンカがダイナロボに与えるダメージが大きくなっているような気がします。
 こうしてレトロ遺伝子は地球上から消滅したが、ジャシンカ帝国はレトロ遺伝子を作り出せる人間(夢野博士)の存在を知ってしまう。 一方、カー将軍はゼノビアの動きに不審をいだいていた。果たして10本尻尾に辿り着くのはアトンかゼノビアか。 そして暗躍するダークナイトの真意とは。キメラ王女の見せ場は、もう二度と無いのだろうか……?!
 次回、レトロ遺伝子を巡って、狙われる夢野博士。そして何故かゼノビアより先に王様に斬られそうになっているカー将軍。
 いよいよ最終決戦の時、迫る。
 ラスト、改めてダイナマンと司令が、がっちり手を合わせる無言の芝居(ナレーションかぶせ)のところで、 ちゃんと南郷だけいじられる辺りが、細かくて良い。

◆第49話「カー将軍の最期」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「なんとしても夢野を捕まえろ」と帝王アトンの命を受けたカー将軍は、メカシンカ・コンピュータードラゴンを連れて横浜(多分)に繰り出す。
 コンピュータードラゴンって、なんか「ワープロアルマジロ」が凄く台無しなんですが。
 ごく普通に空が飛べるし。
 これが、一切の手抜きも嫌がらせも排した、カー将軍の本気か……!
 ジャシンカの伝説獣と全てを解析するスーパーコンピュータを組み合わせたコンピュータードラゴンの猛威に、ダイナマンは大苦戦、 街も大爆発。
 「見ているか夢野博士!」
 カー将軍は戦闘の映像をダイナステーションに送りつけると、これ以上の被害を防ぎたければ「レトロ遺伝子を作ってもらおう」と、 夢野博士を脅迫する。
 もしアトンが十本尻尾になれば、それによって得る超魔力は月をも覆い隠し、大地や海を我が物のように操るだろう…… そんな事を許すわけにはいかない。
 「さようなら……」
 悲壮な覚悟を胸に秘めた夢野博士は一人で呼び出しの場所に向かおうとするが、そこで一時退却してきた弾とぶつかる。 倒れる博士の服の内ポケットからこぼれる爆弾……夢野は咄嗟に当て身で弾を気絶させると、目的地へと車を走らせる!
 北斗さん専用と思われたあの格好いいテーマが、夢野博士の出撃に!
 ダイナマンは基地のモニターに残った情報から、カー将軍の真の目的が横浜大爆破でなく、夢野博士の脅迫だった事を知る。 そして博士が、レトロ遺伝子を作るぐらいなら、と敵の中枢を巻き込んで自爆をはかろうとしている事も……!
 前回から、夢野博士の株価上昇が、とどまる所を知りません。
 慌てて博士を追うダイナマンだったが、博士はコンピュータードラゴンに連れ去られてしまい、 ダイナマンの前にはカー将軍が立ちはだかる。レッドはなんとかドラゴンに通信機を取り付ける事に成功するが、追撃には失敗。 そしてその成り行きを見守る3つの影。
 「コンピュータにはコンピュータだ」
 ダークナイトは誘導電波を送ってコンピュータードラゴンを操り、ドラゴンは夢野博士を捕まえたまま、ゼノビア達の元へ。
 たぶん、休日に秋葉原のラジオ会館とかに足繁く通っていた。
 「ほほぅ! これが人間の電波装置というものか!」
 「おぅ兄ちゃん、こういうの好きかい?」
 みたいな。
 人類の科学力を利用したと考えないかぎり、メ……じゃなかった、残ね……えー、ダークナイトがカー将軍を出し抜ける理由が思いつきません。
 「では、打ち合わせ通りに」
 一足先に帝国アジトへ戻ったゼノビアは、カー将軍が謀ってアトンに偽の夢野ロボットを差し出し、 自分が真っ先に10本尻尾になる為にコンピュータードラゴンに命じて夢野を別の場所へ隠そうとしている、 と証拠映像付きで将軍の裏切りを捏造。
 「はかったなゼノビア!」
 「裏切り者めぇ!」
 連敗続きで少々短慮になっていた王様は帝王剣で将軍に斬りかかり、将軍は咄嗟にそれを受け止めて見せるも、 追撃の「アトンビーム!」を食らう。
 ……まあ、「キメラ光線!」とかもありますし、優秀な有尾人は、皆それぞれ、自分ビームを放てるのでしょう。
 カー将軍も心の中では「カーサンダー!!」とか叫んでいるのかもしれない。
 「アトン様、誰が本当に忠実な家来であるか、お見せいたしましょう!」
 ゼノビアの策にはまって進退に窮したカー将軍は基地からワープし、自らの汚名を雪ぐべく、地上へと跳ぶ!
 どこまでも真面目で忠誠心の高いカー将軍でしたが、それ故に、ゼノビアを疑いつつも、身内同士の策の掛け合いには脇が甘かった模様。 ここに来て、キメラがすっかり将軍の忠実な秘書状態になっているのまた、悲劇を引き立てます。
 ドラゴンに取り付けた通信機の反応を追っていたダイナマンは夢野博士を捕らえるダークナイトに追いつき、 努力の結晶である誘導電波発生装置を無残に破壊。自我を取り戻したドラゴンはダークナイトに襲いかかり、 その間に博士の救出に成功する。しかし、ダークナイトにずんばらりんされるコンピュータードラゴン。そして、 夢野博士を取り戻すべく、背水のカー将軍がダイナマンの前に爆炎とともに現れる!
 「アトン様、ごらんあれ! カーの忠誠を!」
 ダイナロッドさえ弾くバリア、レッドの、ブラックの、ブルーの、必殺技を次々と打ち破り、 圧倒的な力でダイナマンを蹴散らすカー将軍。追い詰められたダイナマンだったが、 必殺のニュースーパーダイナマイトが僅差でバリアを突き破り、致命傷を負ったカー将軍は基地へと退却。 満身創痍の体で何をするのかと思ったら、
 「ビッグバン・ビーム!」
 そ れ か (笑)
 カー将軍、最後の仕事。
 そして装置は爆発し、カー将軍の死を確認したゼノビアは、ダークナイトと共に帝国への反旗を明確にする。
 「アトン、ダイナマン、よく見るが良い、博士は私のもの!」
 「おのれぇ、ゼノビアっ!」
 なお、カー将軍が最後の力を振り絞って巨大化させたコンピュータードラゴンは、ダイナロボにざっくりやられました。
 むしろ後年の作品だったら巨大メカ戦そのものが無しにされそうな展開ですが、しかしよく考えると、 ビッグバンビームの装置が壊れてしまったので、ロボ戦はこれが最後でしょうか?
 メカシンカを作ってくれる人も居なくなってしまいましたし、カー将軍が居なくなると、 思った以上にぼんくら集団なジャシンカ帝国……(笑)
 終盤ちょっと面白かったのは、前々回の夢野総司令の台詞に「カー将軍が動くとは大変な事だ」という台詞があったり、 今回、カー将軍が夢野博士を名指しで呼び出したり、カー将軍の対応相手が、ダイナマンではなく、 夢野博士に設定されているという事。思えば二人とも、自分の研究の成果で代理闘争を行っていたわけで、 心の奥底では一個の科学者として何か相通じるものがあったのかもしれません。
 ……二人とも、体鍛えてるし(笑)
 みたいに考えると、カー将軍が最後の力で行ったのが「ビッグバン・ビーム!」であった事にも、なんとなく納得できるような気もするわけです。
 「許せよカー将軍。おまえこそ本当の勇者、真の武人であった。七本尻尾に恥じない、有尾人中の有尾人であった。 この仇、アトン自ら果たしてやる。そして必ず十本尻尾になってみせるわ!」
 棺に収められたカー将軍の遺体を前に、自らの過ちを悔いる王様。
 よくよく落ち着いて考えると劇中での直接的な活躍はさほどではないのですが(間違いなくジャシンカの柱石ではあるが、 基本的に負け戦)、キメラも滂沱と涙を流し、やたらに良い扱い。
 重鎮・石橋雅史を配したという事もありますが、有能なのにあちら立てたりこちら立てたりで能力を発揮しきれず、 ある意味ではその忠誠心と誠実さによって脚元をすくわれ、最後は前線で圧倒的な武勇を見せながら、 身内の奸計にはまって悲劇的ともいえる最期を迎える、と中国の戦記物に出てきそうな老将軍のようで実に格好いい存在でした。
 惜しむらくは、ダークナイトとの絡みが無かった事。この二人の絡みは見たかったです。
 カー将軍が格好良かった分、前科のあるゼノビアにあっさり騙された王様がちょっと間が抜けてしまいましたが、 息子はぼんくらだわ予算は下りないわダイナマンは凶悪だわで、王様も疲れていたのです……。
 次回、サブタイトルに異論は山ほどあるが、なんだか超熱そうだ!!

◆第50話「よみがえる強敵」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ……強敵?
 「博士を死なせてはならない! どんな事があっても博士を助けるんだ!」
 ダイナマンはさらわれた博士を探し、ゼノビアを追うジャシンカ帝国では、カー将軍の遺言ビデオが発見される。 将軍は自分に万が一の事があった場合、最後の切り札となるメカシンカを製造する手段を、そこに遺していたのだ!
 将軍(泣)
 ビデオでも大仰にポーズを決めるカー将軍の声に反応し、メカプログレッサーが起動、文字通りに最後のメカシンカ、 ファイヤースフィンクスが誕生する。
 どうやら声紋認識だったらしいメカプログレッサー。もしかしたら、格好良くポーズも決めないと動かないのかもしれません(笑)
 誰でも使えるマニュアル無いのか……という気もしますが、まあ確かに、あの人とかあの人に勝手に弄らせるとトンデモない事になりそうですし、 セキュリティを考えたり、あくまで万が一の措置と考えると、さしものカー将軍も致し方ない所か。 尻尾の数による厳密なエリート主義が裏目に出たともいえます。
 今更ですが上層部の尻尾の数が9−7−7−5−4で、以下その他雑兵、尻尾の数は生まれつきで能力はそれに準ずる、となると、 根本的に戦争に向かない国家のような気もしますジャシンカ帝国(^^;
 多分、3本尻尾とかだと、本国のそこそこ出来る内政担当とか、そんな感じ。
 その分、尻尾の数が多くなると飛躍的に有能になるようですが、ある意味では、 “9本尻尾の帝王”と“7本尻尾の軍神”が同時代に揃ってしまった僥倖が生んだ悲劇なのか。
 「まことカー将軍こそ、忠実な家来であったわ」
 ファイヤースフィンクスはピラミッドパワーによる超透視力(いわゆる千里眼の類の模様)でゼノビアのアジトを発見。 帝王アトンは遂に自ら起ち、ジャシンカ戦艦をそこへと向かわせる。
 ゼノビアのアジトでは、絶賛首輪プレイ中の夢野博士が、レトロ遺伝子の作成を強要されていた。隙をついて自爆しようとするが失敗し、 催眠術をかけられてしまった博士は、レトロ遺伝子シャワーカプセルをあっという間に作り出す。ゼノビアはカプセルの中に入るが、 そこへ迫るジャシンカ戦艦、それを見つけて後を追うダイナマン、そしてアトンを迎え撃つダークナイト。
 「敗れたり! 帝王アトン」
 「なに?!」
 「たかが尻尾一本増やすため、我を忘れてのこのこと出てきたその行動が貴様の命取りだ」
 「黙れぃ! 尻尾を侮辱するのは許さん。尻尾は我らの命だ」
 遂に直接対決する、ダークナイトvs帝王アトン!
 戦場が砂漠というのが、実に格好いい。
 ぶつかり合う、帝王剣とダークソード。ダークナイトはどうも、ダークソードで限定的な魔空空間を生み出せるらしく、 アトンに炸裂する闇の舞・ダークハリケーン。しかし王様も幻術でお返しし、一進一退の攻防が続く。が、 痛み分けとなった斬撃の交錯のあと、ダークナイトが投げつけたダークソードが、アトンの胸に突き刺さる!
 崩れ落ちるアトンに駆け寄るキメラ達。
 「おのれダークナイト!」
 「慌てるな! これからが見物なのだ!」
 なんだかんだでキメラにすぐ攻撃しない辺りの甘さが残っているのが、中の人のいいところ。
 その頃、地下のアジトでは、レトロ遺伝子の効果によりゼノビアの尻尾が増殖を始めていた。だが、 カプセルが急ごしらえだった為なのか爆発が生まれ、ゼノビアを止めようとしていた女親衛隊はカプセルに吹き飛ばされて爆死。
 ……親衛隊は、事故死する運命なのか。
 爆発は大きく広がり、その影響で正気を取り戻す博士。
 なのですが、その手前のシーンで、まだ洗脳状態とはいえ、一瞬画面奥に入った、カプセルを見つめている時の表情がマッドで素晴らしい。
 アジトは大爆発するがカプセルは地上へ浮上し、遂に十本尻尾となるゼノビア。
 「十本尻尾の、ゼノビア! 見たかアトン! これが十本尻尾じゃ」
 「おのれぇぇ」
 まだ生きていた王様に向けて、勝ち誇るゼノビア。しかし……
 「世界の支配者になるのじゃ、あはははは――?!
 ゼノビアは急に苦しみだし、協力者であった筈のダークナイトは愉悦の笑い声をあげる。
 「ふふふふふふふ、苦しめ。……もっと、もっと苦しんで、地獄に堕ちろ! それがおまえの末路にふさわしい。ふふははははは」
 「もしや……おまえは……はかったなぁ」
 ゼノビアは急激に老化してそのまま白骨化し、リタイア。
 「ふふははは、ははははは、ははははははは!!」
 「わかったぞ、今その正体を暴いてやる!」
 ダイナレッドに変身し、ダークナイトに斬りかかる北斗。交錯の後、ダークナイトの仮面が割れ、 遂にその正体が白日のもとに明かされる――!
 「メギド!」
 「やはりメギド!」
 「メギドっ?!」
 「メギド……!」
 「いかにも四本尻尾の王子、いや、もはや尻尾などないメギドである!」
 すっかり鎧の色がくすんでしまったけど、マントはつけたままなのが、お洒落。
 千年洞窟に閉じ込められたメギドは、そこにうち捨てられていた古文書を発見していた。古文書に書かれていた、 有尾人一族のものが十本尻尾になると死ぬ、という衝撃の真実を知ったメギドは、復讐の為に敢えてゼノビアを十本尻尾にするように暗躍。 同時に、その事から一つの考えに辿り着いていた。
 「わからぬか! 有尾人は生まれつき尻尾の数は決まっている。尻尾に頼って偉くなろうとしたり、 強くなろうとしてはならんのだ」
 「ぬぅ」
 「大切なのは己を鍛え、自ら強くなる事なのだ!!」
 王子、アイデンティティの喪失を乗り越え、一回りも二回りも大きくなる!
 「そうなのか……」
 メギドの言葉に呆然と呟くアトン。そしてメギドは宣言する。
 「冥土の土産に聞けアトン!! ダイナマンも聞けぇ! これから俺がジャシンカを支配し、世界を征服するのだぁ!」
 有尾人一族の尻尾絶対主義を覆し、帝国の在り方そのものをも変革するメギド!
 そう、生まれが全てを縛るわけではない。
 努力が、人を変えるのだ!
 ……て、なぜか敵側にメッセージ性が……!
 凄いのは、残念王子の急な強化が、鎧に付いていた意味ありげに光る石のパワーとかでもなんでもなくて、 どん底から這い上がった努力の賜物、ただそれだけである、という事。
 まあ、メギドの場合もともと、尻尾5本分の素質はあるわけですが。
 しかし尻尾の数、王子という立場、それらを失う事で、逆にその枷を突破している。
 てっきり千年洞窟の奥で拾ったマジックアイテムの鎧の力でひゃっはーしているだけかと思ったら、驚愕の精神的成長。
 ああ、この姿を、カー将軍に見せたかった……!
 そこへ地下を脱出してきた夢野博士が姿を見せ、ダイナマンは博士を守って変身、逃亡。復活したメギドはそれを追って姿を消す。
 「メギドぉ……! メギドぉ! 我が息子……よ」
 「アトン様、アトン様!」
 「……キメラか。」
 「はい」
 「よいか、メギドに伝えよ。まさにメギドこそ、余の息子じゃったと! メギドのやり方で、ジャシンカを継げと!  良いかキメラ……これからは……おまえたち若い者の時代じゃ。二人で協力して、余の出来なかった地上征服の事業を、 成し遂げるのじゃ……よいな! 頼んだぞ……ぉ!」 」
 アトンは帝王剣をキメラへ託し、爆死。
 いやここで、父殺し/王殺しのテーゼまで盛り込んでくるとは。
 ダークナイト(メギド)がアトンを倒すという展開はあるかもとして、ここまで物語の中に、しっかりと組み込んできたのは予想外。
 1年の物語として、きちんと大河(神話的)展開していて、素晴らしい。
 一方、メギドに追われるダイナマンは博士を岩陰に隠してメギドと対峙するが、そこは千年洞窟の入り口近く。 巧みにダイナマンを追い込んだメギドの元へ、帝王剣を抱えたキメラと尻尾兵がやってくる。
 「若き帝王メギド様、共に戦います」
 「なに?!」
 「アトン様は、父を倒すまでに成長されたメギド様を、お喜びになったのです。これからは、メギド様をお助けして、 若い者の力で新しいジャシンカ帝国を築けとおっしゃいました」
 「そうか、父上が……」
 メギドは手にした帝王剣を振り上げる。
 「ダイナマン、千年洞窟へ堕ちろぉ!」
 その力により、洞窟の中へ吹き飛ばされるダイナマン。
 「勝ったぞダイナマン!」
 ジャシンカの牢獄であり処刑場、最近立て続けに脱獄された気がするけど、基本誰も出てこられない筈の千年洞窟へダイナマンを閉じ込め、 メギドは勝利に酔いしれる。
 「キメラ、俺についてこい、明日は俺たちの物だ!」
 正体明かした途端に駄目な感じになるかと思いきや、まさかのメギド無双!
 ……だったのですが、尻尾兵に称えられながらの帰り道は、ピクニック状態。
 あっという間に残念空間に。
 意気揚々と山道を行くメギドの後を「いーっ!」「いーっ!」と叫びながら尻尾兵がずらずらと歩いて行くという、 どうにも締まらない絵なのですが、そんなシーンなのに、かつてない数の尻尾兵動員(笑) 撮影班以外の現場の人が、 総出でスーツの中に入ったようなというか、そもそもそんなに尻尾兵スーツあったんだ、みたいな。
 そしてダイナマンを倒した喜びのあまり、夢野博士の事はすっかり忘れている王子改め帝王メギドであった。
 ……フィーバータイム終了?
 岩陰に身を潜めて外に残っていた夢野博士は、千年洞窟の入り口に向かう。
 ナレーション「果たしてダイナマンは、千年洞窟から脱出する事が出来るのであろうか。頑張れ、ダイナマン!」
 映像的には頑張っているのは、博士(笑)

◆最終話「明日をかけた戦い」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 明日を掴むのは、果たしてダイナマン(地上人)か、ジャシンカ帝国(有尾人)か?!
 キャスト表記が
 若き帝王メギド
 若き女王キメラ
 と、細かいお仕事。
 「ところが、意外やダークナイトの正体は、メギド王子であった」
 と冒頭のナレーション、何かをフォロー(笑)
 千年洞窟に閉じ込められ、電波不良の為か変身も解けてしまったダイナマンは、出口を探そうともがく。
 桃「本当にもう出られないのかも」
 赤「何を言うんだ! メギドだって抜け出したんだ! 俺たちに脱出できない筈がないじゃないか!」
 北斗さん、正論すぎて酷い(笑)
 洞窟の入り口では博士が、扉に一抱えもある岩をぶつけ、無駄だと知ると上段から放りすてていた(笑)
 どれだけ鍛えているのか、博士。
 「どうしたらここを開けられるのか……」何かを思いついた夢野は、洞窟の入り口を離れる。
 一方、若き帝王としてジャシンカ戦艦へ帰還したメギドは、もはや邪魔者は居ないと、地上への総攻撃を宣言。その手段として、 ダイジュピターとダイナロボを奪って先頭に押し立てる事を思いつき、ファイヤースフィンクスのピラミッドパワーでその位置を探らせる。 すると、なんと夢野博士の操るダイジュピターが、千年洞窟を外部から破壊しようと迫っていた! メギドは攻撃を指示し、 空中戦を展開するダイジュピターとジャシンカ戦艦。
 戦闘の余波は地上の千年洞窟にも及び、地震で噴き出したガスから必死に逃れるダイナマン。
 迎撃を受けた夢野司令は、必死に体勢を立て直しながら、5人の戦士を救い出すべくダイジュピターを千年洞窟へと向かわせる。
 「ここで倒れるわけにはいかん。弾くんたちが待っている……」
 ここから、各メンバーの洞窟での姿→夢野博士のモノローグによる活躍シーン回想、を5人分。
 洞窟のカットは、島と南郷が噴出したガスで死にそうになっていたり、レイは天井からの水滴を手に集めてすすっていたり、 実に酷い(笑) というか、弾と竜がちょっと人間として規格外というか。
 そして司令本人も意識朦朧としている為か、回想シーンのモノローグがポエム入って凄く面白い事に(笑)

弾北斗――
君はどんな困難な状況にあっても、常にリーダーとして、仲間を引っ張ってくれた。
ニュースーパーダイナマイトを編み出せたのも、血を吐くような君の努力、君の剣のお陰だった。
ダイナレッド、燃えたぎる情熱のレッド!
赤い血潮のレッド!
星川竜――
君の忍びの技が、どれだけ危機を救った事か。
鍛え抜かれた肉体、超人的な生命力、君は不死身の戦士だ!
ダイナブラック、君は影。
音も無く、悪に迫るブラック!
闇の狩人。
島洋介――
青い青い南の海から、君はイルカに乗ってきたかと思わせた海の申し子。
その若さ、その激しさ!
新しい技を開発した事もあった。
ダイナブルー、一瞬の煌めきは、稲妻のブルー!
永遠の輝きは、海のブルー!
南郷耕作――
純情素朴、土に生きるたくましい若者。花を愛する、優しい若者だった。
君ほど、生命の尊さを知っている者はいなかった。
その強さは、大地に根ざした者の強さだ。
ダイナイエロー、泥まみれのイエロー。
不毛の大地に、戦いの大地に、一輪の花を咲かせるイエロー!
立花レイ――
紅一点、女ながらよく戦ってくれた。
君は本当に輝いていた。
戦っている時が、一番美しかった。
ダイナピンク、怒りの顔がピンクに染まる。
涙が光った時もある……真珠色の、ピンク!
華麗な舞い姿は、バラのピンク!

 「私は、君たちを、助けなければ……!」
 後このポエム、博士の心の中の言葉ではなく、口に出して言っている、という演出になっているのも面白いところ(笑)  気絶するのを避けようとしている、という理由付けが出来なくもないですが。
 回想シーンのチョイスは概ね満足のいくものなのですが、南郷だけほぼ1エピソードからの抜粋だったり、 変身後の決めポーズの後に1カットなかったり、OP同様に扱いがちょっと悪い(^^;
 ジャシンカ戦艦の猛攻がダイジュピターを追い詰め、洞窟の中では5人が精根尽き果てかけていたが、弾がかすかな風の音に気付く。 先ほどの地震で洞窟にわずかな裂け目が生まれ、空気と光が漏れていたのだ。その裂け目は小さく、とても人間が脱出する事はできない (ここで珍しく忍者が弱気を見せ、最後に弾のリーダーシップを改めて強調)。しかし、それが外部に通じているのなら、 通信が出来るかもしれない。ダイナマンはダイジュピターの自動操縦装置に呼びかけ、届いたその電波によりダイジュピターは急旋回。 ジャシンカ戦艦の砲撃をすんでの所で回避すると、戦闘の衝撃で気絶していた博士も目を覚まし、 ダイジュピターのミサイルで千年洞窟を破壊。ダイナマンはとうとう地獄の底からの脱出に成功する!
 ここで、5人の為に命を賭ける博士、と、5人の呼びかけがダイジュピターの予想外の回避を生んで結果的に博士の命を救う、 という部分が偶然の要素も含め、繋がっているのも上手い。
 「降りてこいメギド! 今日こそ決着をつける時だ!」
 「望むところだ!」
 空に向けて叫ぶ北斗、真っ向からそれを受けるメギド!
 「「「「「ダイナマン!」」」」」
 敢えていつものBGMは無しでの変身バンクから、爆発!

「ダイナレッド!」
「ダイナブラック!」
「ダイナブルー!」
「ダイナイエロー!」
「ダイナピンク!」

「爆発! 科学戦隊!」

「「「「「ダイナマン!!」」」」」

 最後のバトル開始。
 ダイナマンは尻尾兵を蹴散らすと、個人必殺技乱舞からニュースーパーダイナマイトに繋いでファイヤースフィンクスを撃破。
 カー将軍もさすがに、「ビッグバン・ビーム!」のビデオは遺していなかった様子(笑)
 この局面でキメラを多人数で取り囲むのは幾ら何でもと思ったのか、男衆vs帝王メギド、ダイナピンクvs王女キメラ、 の分割マッチアップ。結果的には、メギド@帝王剣の強さを印象づける形ともなりました。 ピンクとキメラのマッチアップは中盤まではあったけど途中でむしろ相手がブラックになったので、むしろブラックvsキメラでいいのでは、 と微妙に思うのがあれですが。
 監督がしっかりと尺をとってくれて、キメラもピンクも最後に見せ場有りで良し。
 メギドは帝王剣の力で4人を圧倒するが、前回、地位も尻尾も失い、どん底から努力で立ち直った姿があれだけ格好良かったのに、 すっかりマジックアイテムに依存(笑)
 追い詰められるダイナレッドだったが、斬撃を回避し、ダイナ剣を繋ぎ合わせる。
 「ダイナ剣・マッハアロー!」

 北斗さん、まさかの飛び道具

 放たれた剣がメギドの左腕を貫き、ピンクとの一騎打ちに敗れたキメラは、そこに駆け寄る。
 「メギド、メギド!」
 「キメラ、おまえは戻れ!」
 「え?」
 「地底へ戻るのだ!」
 「嫌です! メギド様と最後まで戦います! 連れていってください」
 もともとメギドとキメラの対立は本格的なものというよりじゃれ合いの範疇でしたが、かといってフラグ的な展開があったわけでもなく、 いきなりといえばいきなりですが、まあキメラの場合、急に愛情に目覚めたというよりは、王様の遺言に忠実、といった感じ。
 「よーし、最後の戦いだ……行くぞ」
 二人はジャシンカ戦艦に戻ると戦闘機を出撃させ、それを迎え撃つダイナロボ。遂に今ここに、ダイナロボとジャシンカ戦艦が最終決戦。
 「ダイナミックジャンプ!」
 「ダイナロボがあんなに高く!」
 戦闘機を破壊し、ジャシンカ戦艦の猛攻をしのいだダイナロボは、最大出力でダイナミックジャンプ。
 ここで戦艦の中のメギドとキメラだけでなく、ダイジュピターの夢野博士も、その勇姿を見上げるカットが入っているのが素晴らしい。
 「科学剣・稲妻重力落とし!」
 様々な想いを乗せて、炸裂した渾身の一撃がジャシンカ戦艦を真っ二つ、墜落していく戦艦の中で、 帝王メギドと女王キメラは互いの名を呼びながら爆死。
 かくて戦いは、人類の勝利に終わる――。
 ダイナロボ、圧倒的。
 メギドのダークナイト状態の時もそうですが、“復讐”の生み出すパワーとはかくも凄いものか、と。
 王子はある意味、王様に認められてしまった事で、怨念のパワーを失ってしまったのだな、と。
 つまり作品の結論は、

 「最も強い力は愛……なんてものではなく、復讐である」

 と(おぃ)
 最後は、発明センター常連の子供達と再会。

「夢溢れる楽しい科学の未来を切り拓くのだ。
夢が、大きな夢が、もっと大きな夢が持てる世の中を作るのだ。
明日は君たちの物だ。
さらば、素晴らしき若者達よ。
さらば、科学戦隊ダイナマン!」

 と、ナレーション大平透の名調子で、幕。
 最終的に二つの種族の生存闘争として、ダイナマンとジャシンカ側(メギド&キメラ)にそれぞれ「若者」を掛けている辺りも、上手い。
 やはり「本国」が別に健在であるという事が最後に言及されたジャシンカ帝国ですが、国王以下多くの人材、膨大な人口(兵力)、 莫大な資源と国家予算を失い、これから、長い「戦後」が待ち受けているのでしょう……。
 途中で、人間として生きていく事を選んだ有尾人スパイ一家のエピソードを入れたのは気にしていたのか、 有尾人一族を根こそぎ殲滅するわけではなく、タカ派を全滅させる事で終戦を迎える、という形になりました。
 エンディング映像は、ジャシンカ上層部のカットが省かれていたり、微妙にいじってあって細かい。

 ……いやぁぁぁ、面白かった!
 勿論、後年のより洗練されていったシリーズ作品と較べると大雑把な所も詰め足りない所はありますが、 時代のパワーと荒削りの魅力に加え、思わぬ展開の妙で最終盤しっかりと盛り上げてくれて、大満足。
 特に終盤の曽田脚本はキレキレ。
 多分それほど細かく詰めていなかったであろう諸設定が、後半、思わぬ形でパズルのピースがはまっていき、いい方向に連鎖。 ジャシンカ側の背景に妙な辻褄が合ってしまった事と、夢野博士が素晴らしく格好良くなったのは、 全体の構成として非常に秀逸となりました。
 気になる抜け落ちとしては、ダークナイトが帝王剣を盗んで何をしたかったのかが、結局わからなかった事ぐらいか。
 まあ単純に、ジャシンカ側に自分の存在を印象づけるとともに、 それをダイナマンに渡す事で状況を混乱させつつ闘争を煽りたかっただけなのかもしれませんが(^^;
 もう少し何か仕込みがあるのかと思ってしまいました。
 或いは、「王様の寝室まで忍び込むとは……まさか?!」とアピールしたかったのに、
 王様「いや、それはない」
 将軍「はっはっは、勿論、小粋なジョークでございます」
 とあっさり却下されてしまった為、作戦変更したのかもしれませんが。
 最終回を見せ場アクション祭メインにする為に、テーマ性の一部が1話前でジャシンカ帝国を使って語られる、というのは、 狙ったのか偶然かわかりませんが、お見事。
 その分、そこで格好良かったメギドが最終回で残念王子に戻ってしまったのは、ちょっと勿体なかったですが(^^;
 これが後年の作品になるとメギドが王権を手に入れてから数話使われたりとかもあったかもしれませんが、 それはそれでまたボロが出そうですし、鳴り物入りで登場→残念化→勘当→被り物!→悪魔的奸智!→革命! と、 やり尽くしてくれて、素晴らしい存在でした。
 最終回は空中戦から個人戦、ロボット戦までアクション要素は全て入れて、バトル的にも満足の内容。
 後年のシリーズ作品に比べて必須イベントが少ない為、中盤一時、さすがにだれましたが、シンプル故に完成度の高い作品。
 様々な要素がいい方向に転がった、名作でした。
 1−2話の感想に際して、「最大公約数的な“戦隊もの (特撮ヒーローもの)”のイメージをそのまま具現化したような作品」 と書きましたが、終盤の展開まで合わせて、まさしく、

 戦隊of戦隊s!

 素晴らしい作品を、ありがとうございました。

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(2013年7月6日)
(2019年6月29日 改訂)
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