■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ8■


“見果てぬ自由の大地 見上げる若さの青空
突き進め 舞い上がれ 時間は 止められない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ8(43話〜48話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第43話「スーパーギルーク」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「宇宙螢は、エネルギーを吸い込むと体当たりして自爆する恐ろしい宇宙生物」
 やはり宇宙的に、昆虫とは、自爆・特攻する戦闘生命体なのか。
 電信柱に取り付いた宇宙螢により街を無差別爆撃するゴズマだったが、ギルークが宇宙螢を集合させ、 宇宙獣士ゴーダを作り出してしまう。宇宙螢の性質を利用してナナからリゲルオーラを絞りだそうと考える悪霊ギルークは、 女子校の屋上に出現! さやかと麻衣がガードについていたナナの身柄を奪おうとするが、そこにブーバとアハメスが乱入し、 今回も激しい権力闘争が展開。
 ブーバにナナ抹殺を指示するアハメスだったが、意外にもバズー様まで介入し、アハメス一味はまとめてキャプチャーされてしまう。
 「ナナを殺す事は許さん!」
 かつてなく声を荒げるので、色香に迷った養子が墜落した後釜として、「ナナは私の養女にする」と言い出さないかドキドキしました。
 「バズー様はギルークをお許しになるのですか?!
 「飽くなきギルークの執念を見直したのだ。果たして如何なる結果となるか、静かに見守ってみよ」
 バズーがアハメスに静観を命じていた頃、地球では飛竜がナナを電撃戦隊にスカウトするも、拒絶を受けていた。
 「ゴズマが悪事を働く限り、俺達は戦うしかないんだ!」
 「戦いは嫌なんです!」
 職業軍人である飛竜(チェンジマン)と、宇宙の孤児であるナナの立場の違いを含めた心のすれ違いが描かれ、 物語に都合良く行方不明になっている所はあったナナが、「戦いから距離を取ろうとしている」事が台詞として明示されたのは良かったです。
 ここではチェンジマンが「現実」(侵略戦争とその過程におけるナナへの対応)で、ナナが「幻想」 (自分が狙われているという脅威から目を逸らして日常生活を送りたい)を担っており、チェンジマン視点からするとナナの言行は “子供の我が儘”なのですが、元よりナナは精神的に未成熟な子供である以上、その「幻想」を守るのがヒーローの努めである、 という構造になっているのが、今作らしい美しさ。
 走り去ったナナの落とした定期入れの中に、フォークダンスで飛竜と踊った際の写真が挟み込まれていた事により淡い想いが仄めかされ、 直後に襲われたナナを助けようとした飛竜は、獣士に拘束されて人質になってしまう。
 ……そう、君を護る為に俺は、君よりヒロイン力を高めよう!
 白熱するヒロインレースにとんだダークホースが出現し、さやかさん辺りがえげつないスキャンダルを準備しそうになる中、 宇宙獣士はナナと飛竜の交換を要求。ヒロインが飛竜なら、ヒーローは俺だな、と飛び出そうとする疾風だが、 獣士のエネルギー拘束リングを打破しなければ飛竜を救出できない、と麻衣に止められる。
 物語としては、同席しているナナを追い詰めて行動を促す展開なのですが、基本的にチェンジマンが、 敵の能力に対応して戦術的に行動する戦隊なので、今回の話の都合、になっていないのが巧いポイント。
 思い詰めたナナは基地の一室に飛び込み、そこで指先が青白い光を放つ事に気付く……。
 (これはリゲルオーラの前兆? そんな……もう出ない筈なのに)
 閉じこもったナナを追いかけた疾風達は扉の外から呼びかけ、
 「心配しないで。剣さんは私たちの手で、必ず助け出すわ」
 「君が望んでいる、地球での楽しい生活がいつまでも出来るように、俺達は頑張る。ナナちゃん、だから、安心してほしい」
 電撃戦隊だけに、
 「あのリングをどうにかしないと剣さんを助けられないわー」(ちらっ)
 「我々の科学力ではどうする事もできん!」(ちらっ)
 例の如く例のように未成年を容赦なく焚き付けてないかこの人達、という空気が出てしまった所で、 それを払拭するチェンジマンのヒーロー宣言として大変良かったです。
 戦いを厭うナナが、飛竜の為に立ち上がる、というのもここまでの描写の積み重ねから納得が行って双方のバランスが取られ、 基地内部に転がっていた銃を魔改造したナナは、それにより拘束リングを破壊。だが飛竜救出の代償として、 ギルークに連れ去られてしまう。
 「今日こそリゲルオーラを出してやる」
 ナナの元へ急ごうとするチェンジマンの戦いと、悪霊ギルークによる黒ミサの儀式が交互に描かれて切迫感を高め、 クロスハリケーンで螢獣士(なお見た目はクトゥルー系で、色合いは白・黒・赤で、悪霊ギルークと同じ) の脳細胞を破壊したチェンジマンは大リーグバズーカ2号で爆殺。巨大戦も急ぎ足で片付けるが時既に遅く、 ナナから絞り出したリゲルオーラにより、悪霊ギルークはスーパーギルークへと変貌してしまう。
 「今甦ったぞスーパーギルーク! 悪魔のスーパー能力が秘める、スーパーギルーク!」
 表は漆黒、裏は真紅、というど派手なマントを翻し、吸血鬼の親玉のような姿へとスーパー化したギルークは哄笑と共に闇の中に消え、 メカニカルヤクザ→岩石怪物→吸血鬼帝王、と物凄い紆余曲折。この辺り、2年前のダークナイトの二番煎じにならないよう、 試行錯誤があったのかとは思われますが、異形のフォームチェンジを繰り返す事により、独自の存在感を持つに至りました。
 それにしても強烈で危なっかしいリゲルオーラですが、生体が秘めているアースフォース的な力(ギルークならギランフォース、 アハメスならアマゾフォース?)を刺激・強化する作用を持っているみたいな感じなのでしょうか。
 思えば、家畜化光線を放つ種族も居ましたし、大宇宙には神秘がいっぱいなのです。
 戦いを嫌うあまりに飛竜の言葉に耳を貸さず、スーパーギルークという新たな脅威を誕生させた事に責任を感じたナナは、 謝罪の手紙を残して姿を消してしまう。
 (すまないナナちゃん……君を助ける事が出来なかった。君の気持ちをわかろうとせず、あんな戦いをさせてしまうなんて)
 ナナを乗せて走り去る電車を見送る事もかなわず、激情を飲み込む飛竜の表情にモノローグをかぶせる演出が渋く、 スーパーギルーク誕生という結果の後、「戦わなかった」事を悔やむナナに対し、「戦わせてしまった」事を悔いる飛竜というのが、 一つの敗北の中でヒーローを引き立てる、鮮やかな対比。
 「……みんなが戦いは嫌だという気持ちになれば、宇宙は平和になるのよね」
 「でもなぁ……俺達は戦うのが宿命なんだ」
 「ナナちゃんだってわかってくれるさ。俺達の使命を」
 「ああ。ナナちゃん……心配しなくていい。スーパーギルークなんかに、決して俺達は負けはしない」
 地球守備隊がその気になれば電車の一本や二本、簡単に止められるとは思いますが、むしろテクノ惑星リゲル人の科学力を戦争に利用してはいけない、 その為にこそ戦わなくてはいけないんだ、とナナを見送ろうとしたチェンジマンの心境の変化にもスムーズに繋がり、 ナナの心を救うためにも打倒スーパーギルークを誓う、というのが美しい着地。
 ヒーローに部分的敗北を喫させつつ、新たな決意を持って前へ進んでいく姿で、爽やかに締まりました。
 終わってみれば次回予告見せすぎ案件でしたが、実質的な新幹部登場という派手なインパクトの一方で、 職業戦士と民間人の心のすれ違いが終始ドラマの縦糸を成す、という渋いエピソード。 ナナへの対応の変化で飛竜の精神的成長を描くと同時に、元々の志に濃淡の差はあっても、 今は地球を守る為に心を一つにするチェンジマンの姿が改めて描かれ、 最終章を控えた再確認のエピソードになっているのが今作らしい手堅さです。
 次回――魔界都市ギルークシティ! そして、飛ばされた麻衣回があって良かった。

◆第44話「麻衣におまかせ!」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 いきなり「死ね!」と放たれるアハメスのマジカルビームを片手で悠然と受け止めるスーパーギルーク格好いいー!
 前回の今回で、ギルークとアハメスの関係はどうなるのか&スーパーギルークの格好いい所、 を出し惜しみせずに見せてくれるところから始まる、サービス満点の導入。
 「待てアハメス。今もう一つの命が復活するところだ」
 アハメス恨めしや〜、は悪霊になる事で怨念が肥大化していたのか、或いは力を手に入れた事でいつでも追い落とせる余裕が出来たのか、 復讐に逸る事なくアハメスを押しとどめたギルークは、足下に視線を落とす。そこで目覚めたのは、宇宙獣士ザドス。 ギルークが魂を現世に縫い留める為に憑依していた器であるザドスもまた、スーパー化の影響により、 ギルークと分離して甦ったのであった。
 「星王バズー様! 宇宙の墓場から戻ってきた、我ら二人の力をご覧ください」
 スーパーギルークはマントを翻してバズーにひざまづく姿も優雅で格好よく、 ヤクザの親分気質の司令官モード・怨念で動く怪物であった悪霊モード、からのスタイルチェンジを、 演出と演技でしっかりと見せてきます。
 「ザドスまで甦らせるとは、大したものだ。よかろう」
 「バズー様!?」
 「悔しければ、おまえも早く地球を征服してみせよ」
 相対的に立場の弱くなったアハメスは悔しげに俯き、終始、表情の見せ方が良いアハメス様ですが、 スーパーギルーク誕生→即座にアハメス失脚、とせず、並存を続けるというのは中盤の構成も踏まえているのでしょうが、嬉しい展開。
 ……その頃地球では、麻衣がさやかの服を着てはしゃいでいた(笑)
 「ちょっとぐらいいじゃないの! 私だってたまにはこーんな恰好してみたかったんだ!」
 ところが、麻衣を追いかけていたさやかが不穏な目つきの市民達に前後を塞がれ、突然ナイフで襲いかかられる。 その正体はかつて倒した筈の宇宙獣士であり、スーパーギルークは亡霊獣士達の魂を市民に憑依させる事で、 魔界都市ギルークシティを作り出そうとしているのだった!
 負傷したさやかを救出する赤黒青だが、足止めを買って出た麻衣が、球形のエネルギードームの中に取り残されてしまう。 目の前でリアル西部劇が展開する謎の街を、麻衣が次々とコスプレをしながら調査していると、ドレス姿のシーマに、 用心棒スタイルのブーバとゲータまで現れる、サービス精神溢れた展開。
 「ブーバ、シーマ、アハメスに伝えておけ。うろうろ嗅ぎ回っても無駄だとな」
 潜入したシーマ一行はまとめてギルークに叩き出され、今のところ引き続きアハメス派として行動している様子。 その騒動の合間にシスター姿で教会に潜り込む麻衣だが、背後を獣士に塞がれ、 祭壇の奥からスーパーギルークがぬっと立ち上がって姿を見せる、というのがまた面白い映像で、大車輪の山田監督が、 手を変え品を変え様々な工夫を凝らしてくれるのが、今作のアベレージを上げる大きなポイントの一つになっています。
 「いつまでもおまえの変装に気付かぬ、スーパーギルークと思っていたのか」
 麻衣を追い詰めたギルークは、ザドスホールの力により麻衣に獣士を憑依させようとするが、 その危機に教会に飛び込んでくる一発の銃弾。隙を突いた麻衣が教会の外へ飛び出すと、 挿入歌イントロに合わせてガンマンスタイルの飛竜達が屋根の上に次々と姿を見せる! というのがメリハリの利いたヒーロー演出で、 山田監督がホント絶好調。
 しばらく飛竜達のガンアクションが続き、麻衣もガンマンスタイルで合流するとさやかと一緒にコンビ射撃で再生獣士を撃退し、 この2人の友情関係もきちっと拾い続けてくれて手堅い。
 「おのれチェンジマン、いつの間に!」
 「トンネルを使って潜入したのさ!」
 「麻衣、よく頑張ったわね。あなたの一番素敵な姿を、見せてやって!」
 「OK! ある時は、さやかルック。ある時は、ウェディングドレス。ある時は、フラメンコ・ダンサー。ある時は、 インディアンの娘。そして、ある時は、シスター。――でも私が一番似合うのは、チェンジフェニックスよ! レッツ・チェンジ!  チェンジ・フェニックス!」
 そういえば弱かったコスプレ成分を補いつつ、東映濃度120%から揃い踏みすると、 ザドスはフェニックス連続攻撃から大リーグバズーカ2号で速攻爆殺。
 ところで、ギルークシティで撃った人達の肉体は、一般市民だったのでは……と思ったら、 ザドスの死でドームが崩壊すると憑依していた亡霊が消え去って人々も正気を取り戻し、どうやらガンマンスタイルの時に用いていたのは、 なんらかのショック弾だった模様です。
 ギルークシティ計画を台無しにされたスーパーギルークはデビルパワーで隕石?を召喚するとチェンジマンめがけて落とし、 爆発・爆発・大爆発……が、心配になるレベルの炎なのですが、配置された火薬の空白地帯に回避アクションで逃げ込んでいるにしても、 なんか、爆炎が10メートルぐらい上がっている感じなのですが。
 恐らく一回の爆発を、俯瞰と横からの2つのカットに分けて見せているのですが、物凄い勢いで5人が爆炎に包まれている上に、 後ろ→前、と爆発する事で、横からのカットのラストで、チェンジマン5人の姿が完全に炎に隠れて見えなくなる、 というのがインパクトの強い映像。
 レンタルギョダーイにより巨大化したザドスは、ザドスホールから幽霊獣士で攻撃を仕掛けてくるも、 電撃剣フラッシュでホールを塞ぐと、サンダーボルトでずんばらりん。
 鳴り物入りで復活したザドスが一回限りでやられてしまったのは残念でしたが、軽快なテンポの中に映像的な面白さを詰め込んで、 楽しいエピソードでした。ラスト、麻衣に痴漢する疾風と、公道の真ん中で互いの顔面にソフトクリームをなすりつけ合うチェンジマン、 はちょっとやりすぎた感じでしたが。
 次回――電撃基地の壁を体当たりでぶち破る少女!
 「あのー、剣飛竜さんは居ますか?」
 果たしてこれは、モテ期なのか、女難の相なのか。

◆第45話「虹色の少女アイラ」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 地球守備隊、謎の宇宙人少女に、基地の壁を物理で突破される。
 所在地も筒抜けだし、電撃基地に比べると、職場としてのリスクが高すぎて辛い。
 「あのー、剣飛竜さんは居ますか?」
 宇宙人少女・アイラが唖然とする隊員達に微笑んでいる頃、 まさか自分の身に親方!空から女の子が!現象が起きているなど夢にも思わない飛竜は、宇宙獣士ダロスの襲撃を受けていた。
 ダロスは冒頭、宇宙船から降り立ったアイラの体中に走る極彩色のペイントを吸収して地球人に偽装すると、 物腰柔らかに送り出しており、その一方で飛竜にダロスエネルギーを浴びせると即座に姿を消す、という謎めいた導入。
 ひとまず守備隊の基地に向かったドラゴンは、飛竜の幼なじみを名乗るアイラが守備隊を大混乱させている現場を目撃。
 「冗談じゃない。知らないぞ、あんな女の子」
 アイラを演じているのは次作『超新星フラッシュマン』で、サラ/イエローフラッシュを演じる中村容子。またここで、 突きつけたアサルトライフルをねじ曲げられておののく守備隊の隊員は、同じくレー・ワンダを演じる広瀬和久で、 次作へ向けたカメラテストも兼ねたエピソードであったのかと思われます。
 「おい待て。俺が剣飛竜だ」
 変身した姿のままドラゴンが割って入り、「涼しい目……ニヒルな顎……凜々しい眉……はぁ〜……チェンジドラゴン様」という、 まさかのレッドレーサー案件発生かと身構えましたが、顔を見せろと普通にツッコまれてホッとしました(笑)
 ところが何故かチェンジドラゴンはスーツを解除できず、不信を募らせたアイラは、ジープを奪って逃走。……全ては、 ニジン星人アイラの持つ色素エネルギーをダロスが吸収し、それをチェンジドラゴンに放つ事でチェンジスーツの解除を不可能にしてしまうという、 アハメスの回りくどい謀略だったのだ!
 「このまま強化服が脱げなくなったら、剣さんは一体どうなっちゃうの?!」
 私も知りたいです!
 「これじゃ飯も食えなきゃ水も飲めねぇ。飢え死にしちまうよ」
 確かにそれは、深刻(勇馬らしい視点が良い台詞)。
 「この強化服のエネルギーには、戦士しか耐えられないの。でも、いくら剣さんだって、長時間は無理だわ」
 爆発的な戦闘力をもたらすチェンジスーツだが、長時間の着用は装着者に害をもたらしてしまう…… ヒーローに戦う力をもたらす強化服が、脱げなくなる事で逆に牙を剥く、というのは面白いアイデア。
 激しく消耗しながらもジープで暴走するアイラを助けようとするドラゴンだが、「ドラゴンを倒すのはこの俺だ!」 と大変悪い形で横槍を入れてきたスーパーギルークの攻撃を受け、まとめて川落ち。
 しかしそれがきっかけで、12年前――不時着した地球で地元の小学生に追いかけられていたアイラを、少年時代の飛竜が助けていた、 という出会いの思い出を知る事になる。
 ……いくら柿泥棒とはいえ、見た目少女を棒きれで打ち据え激しい投石を浴びせ 最終的に川へ転落させる地球の小学生、ヤバい。
 そう、《投石》は地球星人の基本スキル。
 まあ、飛竜も飛竜で、止めに入って「柿泥棒の肩を持つのか?」と言われた途端、思い切り右ストレートをぶちこんでいるので、 地球人の闘争本能は発達しすぎている!
 そして、結構な高さの崖からアイラと共に川へ転落した飛竜少年は、いち早く立ち直ると少女の為に火を起こし食べ物を集めており、 高所墜落のプロフェッショナルは、少年時代から筋金入りのプロフェッショナルであった!
 ……まさかこのネタが、ここまで繋がるとは思いませんでした(笑)  アイラの話に12年前の覚醒を思い出したドラゴン――剣飛竜はこの時、 生命の危機に瀕したアイラが放出した微量のニジンオーラを浴びた事で後にドラゴンボール修得に至ったのではないか――は、その時、 アイラの髪に挿したのと同じ黄色い花をそっと挿す事で同一人物である事を伝え、匠は転落直後だと脳細胞その他が活性化するので、 こんなイケメンムーヴも自然に出来てしまうのです!
 「あなたが! あなたが剣さんね!」
 遂にドラゴン=飛竜と認識するアイラであったが、そこにブーバとダロスが姿を見せ、謀略を種明かし。 消耗著しいドラゴンはヒドラ兵を蹴散らすも絶体絶命の危機に陥るが、アイラが銃を撃つとダロスの内臓していたエネルギーが逆流して変身が解除され、 しかし全身縞模様の姿に戻ったアイラは恥じ入るように姿を隠してしまう。
 逆転の発想でドラゴンを追い詰めていただけに、その危機を脱するくだりが大変雑なのは残念でしたが、 咄嗟に身を隠すアイラの描写で、思い出の君に会うに際して地球人の姿を真似ていた乙女心が鮮明に浮かび上がり、 これまでのハイテンションが可愛げに転換されるのは劇的で巧妙。
 「ダロス! よくも苦しめてくれたな! だが! ひとたび新鮮な空気を吸い! 太陽の光を浴びれば! この体は、すぐに甦るぜ!」
 太陽を背に両手を力強く広げる飛竜、「野球しようぜ!」以来のテンションの高さ(笑)
 「あれが、剣さん……夢にまで見た人」
 ……今の飛竜さんは、半日トイレに閉じ込められていてようやく脱出した人、みたいな精神状態なので、 少し割り引く感じで見てあげて下さい。
 「レッツ・チェンジ!」
 駆けつけた仲間達と共に飛竜は再び変身し、恒例の主題歌バトルに雪崩れ込むのですが、
 涙を感じるぜ 叫んでるぜ 優しい心に飛んでいくぜ
 背中を向けたりはできないのさ 勇気の We'reチェンジマン 愛を抱いて
 戦いを見守るアイラの表情を挟み込みながら2番の歌詞で雰囲気を少し変える事で
 「やっぱり、私が、信じていた通りの人だったわ」
 と飛竜に貰った黄色い花を見つめて微笑むアイラの想いがチェンジマンの戦いを彩り心情を掘り下げ、 総合的には割と荒っぽいシナリオなのですが、定番の構造を十二分に活かしながら、 演出で撥ねるのが実にお見事。
 チェンジマンはダロスを勢いよく撃破し、巨大戦では針攻撃を全身に受けるも、ざっくりスーパーサンダーボルト。飛竜は、 宇宙船に走り込もうとするアイラを追いかける。
 「来ないで! 子供の頃は、地球人と同じでも、大きくなると私たちは変わってしまうの」
 背を向けたままのアイラの髪に、再びあの黄色い花を挿す飛竜。
 「姿形は違っても、俺達は同じ宇宙に生きる仲間じゃないか」
 テーマやドラマ的には、思い切って、着ぐるみ→地球人美少女→着ぐるみ、ぐらいすると更に対比が鮮やかだったのでしょうが、 目一杯の縞ペイントで異形感を出し、“変身”が解けた事で逆に離れようとするアイラに正面から距離を縮める事で、 飛竜の男前度とヒーロー度がぐっと上がって締まりました。また以前の、宇宙電波ジャック回を要素的に拾っているのも、 今作らしいところ。
 飛竜の優しさにアイラは振り返って微笑み、2人は手を握り合う。
 「約束しよう。ゴズマを倒し、必ず宇宙に平和を取り戻す。またいつか必ず会える日が来る」
 「剣さんも、戦っているんですものね。たとえ、離れていても……。私も頑張ります。いつか、会える、その日まで、待ってます」
 アイラは地球を飛び立ち自らの星を守る戦いへと戻っていき、 次作ヒロインポジションのヒロイン力を淡い初恋エピソードで引き出しつつ飛竜のヒーロー度を上げ、 それを星の海を越えた絆という今作らしい広がりに巧く接続して、つづく。

◆第46話「美しきシーマ!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 祝・スパナ剣、直った。
 宇宙獣士ガルガと共にスーパーギルークを暗殺しようとするシーマだが、反撃を受けた際のショックで、なんと記憶を失ってしまう。 洋服姿で街を彷徨うシーマにパトロール中の疾風が……気付いた!
 割と面白いエピソードだったのですが、疾風が見ただけでシーマと認識するのは納得が行きませんでした(笑)
 シーマを尾行する5人は、ブーバから逃げるシーマに助けを求められ、とにかくレッツ・チェンジ。何とかこれを撃退し、 宇宙医学研究所での検査の結果、シーマが完全に記憶を失っている事を知る。
 「記憶を失っているシーマは、大星団ゴズマの地球侵略軍副官ではない。ただの女の子だ」
 女の……子?
 「それも、とっても優しい女の子。シーマは、本当はこんな女の子なのかしら」
 「彼女も自分の母なる星を再興する為にバズーの命令に従い、侵略者になった悲しい宇宙人なんだよ」
 「じゃあ……今のシーマが、本当のシーマ、てこと?」
 飛竜は動物とたわむれるシーマの姿を優しく見つめ、“被征服者側の悲哀”という、今作の根幹に位置し、 特に藤井さんが初参加のタロウ回から掘り進めているテーマを、イカロス回に続けて強調。
 「そいつは甘いぜ剣。冷酷非情なシーマの事だ。ひょっとしたら、記憶喪失なんて芝居でバズーの罠かもしれん。 さっき……長官に聞いたが、シーマを直ちに連行しろとの命令だ!」
 一同に加わっていなかった疾風が非常な通告を伝え、無邪気な様子のシーマに近づいていく飛竜。
 「どうするの、剣さん?」
 「……今のシーマには、ゴズマも地球侵略も関係ない」
 「剣……どうする気だ剣?!」
 「疾風、すまん!」
 四国で鍛えた渾身の右ストレートを疾風に叩き込んだ飛竜はシーマと逃避行。
 いや、記憶喪失はともかく、身柄の確保は当然で、いくら何でも対応が過激すぎるのでは、と思ったの、ですが……
 (処刑も追放もさせん。誰が好んで戦う、誰が好んで侵略者になる。記憶を失った事で、 シーマが優しい心を取り戻しているのなら、俺はそれを信じて守ってやる)
 地球守備隊及び伊吹長官に対して、迸る負の信頼感(笑)
 電撃基地では伊吹が司令部の説得を買って出る懐の深いところを見せていたが、ひとり疾風は状況の危険さと剣の迂闊さを訴える。
 元来どちらかというと、疾風の方が情に脆く感情で動くタイプだったのですが、 飛竜と衝突(のち和解)して見栄えするのは立ち位置としてやはり疾風、という事もあってか、 飛竜が甘さを見せた時は疾風がドライになる、という形にスライド。
 ややキャラクターにぶれが見えるのと、序盤にあった疾風とシーマの因縁が拾われない形になったのは残念でしたが、 飛竜だと「心を信じた」ように見えるけど、疾風だと「結局女に弱い」ように見えてしまうので、 テーマ的にも致し方なかったところでしょうか。
 ……また考えてみると疾風、
 飼い猫捜しを請け負ったら授乳プレイ寸前の上に身内から囮にされる → シーマに騙されて異空間に閉じ込められる → 恋した美少女は家畜化光線を操る危ない宇宙人だった → アハメスに騙されて海の藻屑にされそうになる → ゾーリーに騙されて木っ葉微塵にされそうになる → 溺れていた少女を救ったら呪い殺されそうになる → 保育園の先生に粉をかけようとしたら痴漢に間違われ魔空空間に飛ばされる
 という華々しすぎるメモリーで、さすがにトラウマになってきたのか。
 なお、冷静な判断力と思考という点で飛竜との対比が本来最もスマートになりうるさやかさんは、内心で考えている事がえぐすぎて、 この時間には放送できません!
 「……まったく、あいつは何考えてんだ」
 「確かに危険だ。しかし、剣が自ら選んだ方法だ。君たちが剣を仲間と認めるなら、協力してやり、 その危険をカバーしてやったらどうだ」
 伊吹長官が珍しくチームをまとめるフォローを入れている頃、当の飛竜はすっかりシーマとデート状態で、 疾風が見たら問答無用で「チェンジソード!(射撃)」されそうだった。
 海岸で耳に貝殻を当てるシーマの脳裏には幼き日の記憶が僅かに蘇り、映像でウーバを拾ってくれたのが、手抜かりなし。
 (シーマ……君は記憶を失った事が悲しいかもしれない。しかし、俺は君がいつまでも記憶を失い、 大星団ゴズマの一員である事に気付かないでほしいと……願わずにはいられない)
 飛竜とシーマは砂浜であははうふふダッシュを決め、誰が主導したのかはわかりませんが、アハメス様の登場後、 だいぶ影の薄くなっていたシーマを拾ったと思ったらあっという間にこの有様で、藤井先生は本当にブレません!!
 今作はこの、藤井先生の趣味というかこだわりが割と良い形に転がっているのは、非常に大きいところ。
 そこへ飛竜の選択を信じようと4人がやってきて、なんか、こう……ちょっと気まずい。
 ブーバの報告を受けたバズーは、記憶を失ったシーマを利用してのドラゴン抹殺を命じ、宇宙獣士ガルガの催眠電波 (今回の獣士の扱いは非常に適当)に操られたシーマが、突如として運転中の飛竜の首を締め上げる!
 ……こ、これは、運転操作を誤って車ごと崖から転落 → 高所落下のショックによるイケメンムーヴが2話続けて発動?!  かと思ってドキドキしたのですがそんな事はなく、路肩にぶつかって車は停止。 ガルガの存在に気付いたさやか達が一斉にブレスレーザーを放って催眠電波を停止させ、 シーマの洗脳が解けたところにブーバらが来襲して戦闘へ突入。
 アハメスも久々の空襲を仕掛け、ドラゴンはシーマを守りながらジャンゲランと獣士の集中攻撃を受ける事に。その途中、 シーマはアハメスのマジカルビームから身を挺してドラゴンをかばい、アハメス様、「あ、やっちゃった……?」という顔になる(笑)
 アハメス様、時折、ドジっ子疑惑が浮上するのが、あざとい。
 だが結果として、シーマはそのショックにより記憶と姿を取り戻すと、ドラゴンを攻撃。
 「シーマ! 思い出せ、君の優しい心を!」
 「優しい心? そんなものアマンガ星を取り戻す為、とっくに捨て去っているわ!」
 今回のサブタイトル「美しきシーマ!」は、容姿以上にを指しており、ゆえに記憶喪失による精神退行という要素も含め、 「ただの女の子」という表現には、イノセントな状態に戻ったシーマ、というニュアンスが含まれていた事が見えてくるのですが、 ではそんなシーマを汚したものはなにかといえば、それは第41話で明確に言語化された
 「強いものだけが生き残る……それが、それがバズー様の作った宇宙の掟だ!」
 であり、目の前の怪物や、目の前の侵略組織ではなく、その背後に君臨する巨大な“悪”の存在が濃厚に浮かび上がってくるのが凶悪。
 では、その“悪”とは何か?
 というと、それは他者を道具にする存在ひいてはそれを良しとする“世界”そのものであり、 星王バズーとは、そんな世界を作り出そうとする存在であると同時に、その象徴である、という描き方が、徹底していて素晴らしい。
 今作の悪の組織は、大星団ゴズマ−ギルーク遠征軍、という二重構造を特徴とするのですが、それはまた、目前の侵略者 (ギルーク遠征軍)−それを生み出した世界(バズー)という二重構造にもなっており、究極的にチェンジマンが立ち向かうのは、 悪の組織の大ボスではなく、“哀しみを繰り返す世界”の摂理そのものであり、シリーズの中でも、 これだけハッキリと“そんな世界(を作り出したもの)”に立ち向かう戦隊、というのはかなり珍しい気がします。
 そしてそれを、婉曲な隠喩にとどめるばかりでなく、構造的に成立させた上で、違和感なく物語と結合させているのがお見事であり、 今のところ星王バズーは、傑作といえるキャラ造形。
 シーマとブーバの撤収後、怒りのドラゴンアタックが獣士に炸裂し、大リーグバズーカ2号で爆殺。 巨大戦はバルカン風車斬りサンダーボルトで一刀両断し、2話続けてあっさりめ。
 「……夢。私は地球で楽しい夢を見ていたような気がする。……まるで、子供の頃のような」
 母艦に戻ったシーマは、地球を見つめながらどこか陶然と呟き、地球では飛竜達5人が暗い星空を見上げていた。
 ナレーション「チェンジマンは信じた。明るくて優しい、シーマの姿を。そして、いつか再び、シーマが本当の姿になって、 自分たちの前に、現れる事を、願わずには、いられなかった。その時が来るのを信じて、戦え、電撃戦隊・チェンジマン!」
 一貫して藤井先生が追求してきた今作のテーマ性を更に深め、シーマにまさの救済フラグが立ちましたが、 果たしてどんな落としどころになるのか楽しみです。合わせて、ここに来てヒロインレースが大変白熱してきましたが、抜け出すのは、 ナナちゃんか?! アハメスか?! 急浮上のシーマか?! 一歩後退したさやかに反撃の機会はあるのか?!  それとも麻衣にミラクルが起きるのか?! 大穴はギョダーイだ!
 次回――ゲーター一家もヒロインレースに参戦!

◆第47話「ゲーター親子の涙」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ナレーション「誰が吹くのか、不思議な笛の音が流れると、地震に似た、不気味な謎の震動が、起こり始めた。チェンジマンは、 手分けして、その原因調査に取り組んでいた」
 笛の音をバックに、薄暗い映像、霧の掛かった暗闇の中に浮かび上がる影、と70年代ぽいスリラー調でスタート。 笛の吹き手を追い詰めた勇馬だが、それはなんと、ゲーターの息子・ワラジー。
 「僕はこの笛で父ちゃんを探しに来たんや!」
 ゲーターが作ってくれた笛を吹けば父が戻ってくれるのではないか……その純粋な思いに笛を取り上げられない勇馬だが、 笛は突然現れたブーバにより強奪されてしまう。
 そして伊吹長官の分析により、観測される謎の地震波は超破壊兵器ゼロスターが起動する際の振動音と波長が一緒である事が判明。
 「ゼロス星というとても科学の進んだ星で作られた、星一つを完全に破壊してしまうと云われている、悪魔の兵器だ」
 ※独自の研究です。
 相変わらず謎の宇宙伝説に詳しい伊吹長官だったが、ゼロスターが地球にあるのは真実であった!  ワラジーが吹く笛の音がゼロスターに反応している事を突き止めたアハメスは、笛を奪い、 ゼロスターを起動させて地球人類全体を脅迫しようと目論んでいたが、ゼロス星出身の宇宙獣士も、シーマも、笛を吹く事ができない。
 貸してみろ、とシーマから笛を受け取ったブーバ、いざ吹こうとしたところでちょっと考え、咳払いの末に口を付けずにゲーターを問い質し、 何故あなた、この終盤にきて萌えポイントを稼ぎますか(笑)
 その笛はワラジーしか吹けない作りである事を知りゲーターを恫喝したアハメス様は、床に落ちた家族写真を目に留めると、 妖艶にして邪悪なスマイル。
 「ゲーター、子供に会いたいだろうなぁ」
 何故か地球に眠っているゼロスター、それと反応するゲーターの作った笛、 後楽園ゆうえんちで再会したゲーター親子の背後を平然と通り過ぎていく人々(遊園地のキャラクターだと思われている……?)、 と展開はかなり強引なのですが、強大な征服者の都合に振り回される民衆の悲劇、を引き裂かれた親子の姿で象徴する、 というのが物語の積み重ねによりしっかり機能しているのは今作の強み。
 「思い出すなぁ……あの頃は、我が家も幸せやった」
 ゲーターはアハメスの指示によりワラジーに笛を吹かせ、それを止めようとする勇馬は、ブーバの妨害を受ける。
 「久しぶりの親子の再会じゃないか。野暮な真似をするんじゃないぜ!」
 しゃれっ気のある小悪党ぶりを見せ、本日のブーバは絶好調!
 獣士の攻撃に追い詰められる勇馬は、地球へ来ていたゾーリーの特殊能力に助けられ、 ゾーリーからもゲーターを止めてほしいと頼まれるが、遂に海底から浮上を始めるゼロスター。
 「わいは! わいはどないすりゃええねん!」
 命令と家族への愛の間で揺れるゲーターだが、ゴズマを裏切る事は出来ず、苦悩する着ぐるみ宇宙人(正直、不細工)と、 それを見つめて立ち尽くすしか出来ない勇馬の姿が滑稽にならないのが、1年間の積み重ねの大きさです。
 ゼロスターを手に入れようとした獣士はさっくり爆殺し、巨大戦は、ゼロスターを挟んでの水中戦。 獣士を水中サンダーボルトで成敗したチェンジロボは、ゼロスターを抱えると単独で平然と大気圏を突破し、 ゼロスターを宇宙に投棄して地球爆発を免れるのであった!
 アハメス様が脅迫に使おうとしていたゼロスターが、途中から爆発寸前の扱いになったり色々と滅茶苦茶なのですが、 伊吹長官の「このままでは爆発するぞ!」みたいな情報シーンがカットでもされたりしたのでしょうか。
 ゲーターはいつの間にやら宇宙船に戻り、ゾーリーとワラジーは家族を取り戻せる日まで地球に残る事を選び、 ゲーターの事情に再びスポットを当ててくれたのは良かったのですが、ゲーター離脱などキャラクターの立ち位置を変えるところまでは進められなかった為に、 悲劇性の再演に留まって、その先の「劇的な変化」が生じなかったのは、残念。
 家族への愛情を繰り返した上で、それでもゴズマの為に戦う事を選ばざるをえないゲーターの悲哀は増しましたが、 ヒーローがそこに関与できないのも含め、やや中途半端な印象のエピソードになってしまいました。
 次回――今回の活躍は諸々フラグだったのか?! 宇宙海賊ブーバに、リストラの危機迫る!!

◆第48話「海賊ブーバ愛の嵐」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「ブーバ! 貴様を宇宙獣士にしてやる!」
 「なにぃ?!」
 山上で激突するギルークとブーバ! ブーバを吹き飛ばすスペースメテオ! という急展開。
 「バズー様! スーパーギルークのあのような所業を……お許しになるのですか!」
 この内ゲバに、「所業を」と「お許し」の間に溜めを入れかぶりをふって訴えかけるアハメス様の芝居はホント素晴らしい(笑)
 「チェンジマンさえ倒せれば、ブーバだろうと、お前達だろうと、宇宙獣士にされても一向に構わんわ」
 だがバズー様の反応は冷たく、ギルークのスーパーパワーを浴びたブーバは両手両足が獣の様に変貌してしまう。
 「ひゃーはははは、あははははは!」
 それを見て哄笑するギルークの表情がまた、素晴らしい怪演。
 だがそこに、「ブーバーが強力な宇宙獣士になるという情報をキャッチしたドラゴン」が駆けつけ、 タイミング的にアハメス一味からのリークというのも無理がありすぎるため、もはやドラゴン的ヒーローセンサーの反応としか思えず、 凄まじい勢いで跳ね上がるブーバのヒロイン力!
 介入を嫌ったギルークはドラゴンと大技をぶつけあって一時撤収。満身創痍のブーバはドラゴンに切りかかろうとするもその場で倒れたところを、 突如現れた宇宙船によって身柄を回収される。
 「あの旗は……夢だったのか。……は?! 宇宙海賊・ブーバの旗! なぜ、こんなところに……」
 船内で目を覚ましたブーバの視線の動きから、床に突き立てられる剣、そこに現れる人影、をじっくり映していくのが、 長石監督らしい見せ方。
 「ジール……女海賊ジール!」
 「ブーバ、会えて嬉しいわ。ずっと貴方を探していたの」
 「……ジール、この旗は?」
 「この旗はね、貴方が星王バズーに敗れた時、打ち捨てられていたのを私が拾ったの。いつか貴方に渡そうと思ってね」
 船内の壁に掛けられていた真紅の海賊旗がブーバの瞳の中で翻り、甦る栄光の日々。
 「ブーバ、また2人で暴れましょうよ」
 だがその誘いに、ブーバは首を左右に振る。
 「今の俺は! ……大星団ゴズマの副官ブーバ」
 「でも心まではゴズマではない! 心は、宇宙海賊ブーバ!」
 「云うな! おまえにはわからんのだバズー様の恐ろしさが! チェンジマンを倒さねば、自由にはなれん……!  ……だが宇宙獣士なんぞにされてはたまらん! 剣は俺の力で倒す。自由はこの手で取り戻すしかないのだ!」
 追い詰められたブーバは、宇宙海賊の矜持を甦らせ、電撃基地へと挑戦状を叩きつける。 負傷しながらもそれを受けて立った飛竜は基地を飛び出すが、挑戦状を叩きつけるだけ叩きつけて、 ブーバは宇宙船の床でもがいていた(笑)
 愛するブーバの為、代わりに飛竜に襲いかかるジールだったが、援護に入った部下の足軽獣士の槍が誤って突き刺さって重傷を負い…… 運命の悲劇にしても間抜けすぎて、ここはさすがのどうにかならなかったものか(この後の展開を考えると、 この時点で足軽獣士がジールを裏切っている筈が、話の組み替えで描写に混乱が生じたりあったのかもしれません)。
 ブーバと共にゴズマの手を逃れて静かに暮らしたかった、というジールの真の望みを聞いた飛竜は、 仲間達とともにジールを宇宙船まで運び、ブーバに魂の鉄拳制裁。
 「ジールは動けない……おまえの代わりに戦おうとしたんだ!!」
 ジールの願いを知り衝撃を受けるブーバだが、そこへ再び、卑劣な悪のライバルキャラが板についてきたスーパーギルークが姿を見せる。
 「ブーバ! やはりおまえは宇宙獣士にしなければ駄目だ!」
 「黙れぇスーパーギルーク! たとえ無様な姿をさらそうと、心は宇宙海賊! 貴様さえも俺の海賊魂は奪えなかった事を見せてやる!」
 よろめきながらもスーパーギルークに立ち向かおうとするブーバだが、必死のジールが足にすがりつき、 そこにギルーク配下に鞍替えした足軽獣士と、ヒドラ兵の一団が登場。飛竜達は成り行きでブーバとジールを守る形でレッツ・チェンジし、 「獣士化」という形で“他者を道具にしようとする”ギルークすなわち、ミニマムなバズー、にチェンジマンが立ち向かう、という構図。
 宇宙船で逃げようとする海賊2人だがギルークに追い詰められ、遂に全身のほとんどが獣と化してしまったブーバが、 藻掻き苦しむ内に壁の海賊旗を引きはがしてしまう、というのが実にドラマチック。
 駆け寄ったジールはブーバをかばってギルークの光線を受け、反撃を放った衝撃で宇宙船は墜落。ギルークは脱出に成功するが、 無惨に砕け散った宇宙船の中でブーバとジールは死亡したのか……? しかしその時、 真紅の海賊旗をマントのように体に巻き付けたブーバが、瓦礫の山を押しのけて復活する。
 「俺はジールに誓った。この旗をいつかまた宇宙に翻してやるとな!」
 海賊旗を外して放り投げると、その下から現れたのは、いつも通りのブーバ!
 「俺はやっぱり、骨の髄から宇宙海賊よ!」
 渾身の見得を切りやたらと格好良いブーバはスーパーギルークへと躍りかかり、副官ブーバ、 かつての上司に海賊の矜持を見せつけて散る、という思わぬ決着?!
 と両サイドからダッシュで切り結ぼうとするギルークとブーバがスローモーションで描かれて盛り上がったのですが……
 「やめろ!」
 お・こ・ら・れ・た(笑)
 決闘BGMをぶちっと切断した星王バズー様は、キャプチャービームで二人を引きはがし、勝負は水入り。
 残った足軽獣士は電撃・ビクトリービーム(ジャンプしてVの字に並んで放つ空中一斉射撃) で鎧を失うと大リーグバズーカ2号で爆殺され、剣&盾vs槍、の立ち回りが少しあった後、スーパーサンダーボルト。
 ブーバはジールの遺体を海賊旗で包み込むと、抱え上げて歩み去って行き、チェンジマンはひととき戦いを忘れ、 その背を見送る事しか出来ないのであった……。
 「ゴズマの掟には、ブーバほどの男でも逆らえなかった。……悲しい男だな、宇宙海賊・ブーバ」
 ここまで小悪党ぶりを積み重ねてきたブーバがその芯に残っていた海賊の矜持を見せるにあたり、 真紅の海賊旗というビジュアル的にわかりやすい象徴を繰り返し劇的に見せる事で、 台詞だけでは生まれえない説得力を持たせたのが、好演出。ドラゴンセンサーとか突き刺さる槍とか話そのものは割と雑だったのですが、 情感を重視する長石監督らしい演出がはまり、後半の盛り上がりの印象深いブーバ回となりました。
 この3話、シーマ・ゲーター・ブーバ、とゴズマ幹部陣に1話ずつスポットを当て、シーマ回はともかく、 前回今回は完全にチェンジマンがおまけ扱いという大胆な展開。
 ゴズマ上層部それぞれの事情を改めて描いた事により、今作の根底に存在する“侵略者もまた侵略の被害者である” というテーゼが深められ、副官らを単純に抹殺しにくくなっていたのですが……そこで、宇宙獣士なら仕方ないよね、 という今作の基本ルールが顔を出して落としどころをほのめかし――「バズーによる宇宙獣士の作成」 「宇宙獣士になると理性を失ってしまう」事は既に物語上で描かれている――、しかもそれを遊撃戦力であるスーパーギルークが行う事で、 アハメス一味とスーパーギルークの主導権争いと、その狭間で道具にされる者達の悲劇性、 そしてその全てを黙認するバズーという“悪”の存在、までを今作全体の構造と重ね合わせているのが実に良く出来た作り。
 更にギルークは、一度は宇宙墓場で“獣士と一体化する”事で生きながらえた過去を持ち、 打倒チェンジマンの非情な作戦にかこつけてアハメス一味に意趣返しの怨念をぶつけているという嫌がらせの手段としても納得が行き、 宇宙獣士を作り出す力を得たギルークをミクロ・バズーとする事で「他者を道具とする悪」のより具体的な提示もしてみせるという、 要素の連動が実にお見事です。
 次回――シーマにも迫る獣士化の危機にワラジーも関わってくるようで、どう転がるか大変楽しみ。

→〔その9へ続く〕

(2020年9月27日)

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