■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ7■


“Never Stop チェンジマン
嵐を越えてどこまでも”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ7(37話〜42話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第37話「消えたドラゴン!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 鬼軍曹の殺意と戦士団との絆により、自分たちを信じ抜きアースフォースの全てを引き出したチェンジマン。 その生み出した殺人魔球・大リーグバズーカ2号により精鋭三銃士とスーパーパワーを破られたアハメスは、 巨大頭脳でチェンジマンの戦闘記録を分析し、あらゆる魔球に対応する宇宙獣士バルルカを召喚。
 定番のデータ型怪人ですが、特撮ヒーローの悪役以前にもルーツは存在しているだろうとした上で、 本邦特撮ヒーロー作品におけるはしりは何になるのでしょうか……ぱっと思いつくのは『ウルトラセブン』のガッツ星人ですが、 今回のバルルカの見た目は、どこからどう見てもメトロン星人。
 守備隊の基地を攻撃しチェンジマンを誘き寄せた頭脳獣士は、チェンジソード(射撃)をかわし、 グリフォンアタックとドラゴンアタックを無効化するという実力を見せつけ、そこに飛来するアハメス。
 「チェンジマン! 三銃士の恨みを晴らしてやる! ここが貴様達の墓場だ!」
 マジカルビームが炸裂し、形勢不利と見たチェンジマンは、三十六計逃げるに如かず。だがアハメス怒りの猛攻を受け、 仲間達の撤退を支援していたドラゴンに突き刺さるマジカルビーム。大爆発が収まった時、 そこに残っていたのはチェンジスーツの燃え滓……?!
 仲間達を支援して、という形でリーダとしての存在感を強めつつ、チェンジドラゴン戦死?! という強烈な映像で、 チェンジマンは前々回の前回の今回でまたも空前の危機に陥り、アハメスはEDで身につけていた赤い陣羽織を着てバズーにこれを報告。
 電撃基地では負傷姿も痛々しい4人が打ちひしがれ、必死の捜索も虚しく剣飛竜はMIA(作戦行動中行方不明)に。
 「どこに行く?」
 「じっとしていられません! 捜しに!」
 「待て! それは許さん」
 飛び出そうとした疾風は長官の制止を受け、考えたくない現実に涙をこぼす。
 「……長官……ひょっとしたら……剣は……」
 「そうだ。倒された可能性もある。……だから残されたお前達までやられるわけにはいかんのだ」
 長官はじめメンバーの判断のシビアさが実に軍人戦隊であるチェンジマンらしいところで、疾風達4人は剣の生存を信じつつも、 現有戦力での徹底抗戦を改めて誓う。
 涙を飲み込み飛竜不在でも戦い抜く決意を語る疾風、飛竜は絶対に生きていると熱く信じる勇馬、 と男性陣にもだいぶコントラストがついてきて、特に中盤以降、飛竜と疾風の戦友の絆が強まっているのですが、 赤黒のツートップ化というのは曽田戦隊では2年前の『科学戦隊ダイナマン』のキャラ配置を思い出すところ(『ダイナマン』は、 赤黒の戦闘力がより抜けていましたが)。一方で、メンバー間の横の繋がりが薄めだった『ダイナマン』と比べると、 女性コンビの強化や、飛竜と疾風の関係性の変化などに、戦隊作劇の変遷も見て取れます。
 正直、麻衣は単独だとキャラ薄めなのですが、さやかとのコントラストにより存在感が出せていますし(裏を返せば、 個別の掘り下げが多少弱くても他者との関係性でキャラクターは成立できるわけで)、前年からの女性メンバー2人体制が上手い形で活用され、 激情家揃いのメンバーの中で、さやかだけは感情を抑え込んで涙を見せない、というのも細かく良い色分け (反重力ベルト回で飛竜×さやかの絡みがあったので、そうしていても冷たく見えないのもポイント)。
 「……そうだな。剣は必ず帰ってくる。それまで俺達が戦うんだ」
 一方その頃、墜落ダメージには強いが爆破ダメージには弱かった飛竜は、血まみれの手で何とか瓦礫の下から這い出していた。
 「勝てない……ドラゴンであり、剣飛竜である限り、バルルカに全てを読まれ、倒す事はできないのか」
 蘇生を喜ぶよりも早く雪辱に燃える飛竜は、飛んできたフクロウの姿を目にして電流走る。
 「昼間はぼんやり眠り……夜になると……は?! そうだ。夜になると獰猛な鳥に代わるフクロウ。……変わるんだ!  ドラゴンである事を捨てて変わるんだ!」
 まずは基地に連絡しよう、とか、とりあえず傷の手当てをしよう、より前に、殺意の滾る飛竜の姿が、なんだか大変面白い事に(笑)
 「……俺は今までの全てを捨てる」
 一夜明け、ゴズマは改めて地球全土に宣戦布告を行い、総攻撃を開始。
 「剣の居ないお前達に出来るのは、そこまでよ!」
 「黙れぇ! 俺達は地球を守る戦士だ! たとえ一人になっても貴様達と戦うぞ!」
 「ふん! ほざけぇ!」
 「無駄な事だ。ははは」
 「剣の分まで戦うぞ。――レッツ・チェンジ!」
 疾風の指揮で変身する4人だが、頭脳獣士の演算能力を打ち破る事が出来ず、またも大ピンチ。……それはそれとして、 チェンジソード(射撃)を瞬間移動で避けるバルルカの、横に立っているブーバを不意に撃ったら当たりそうな気がしてなりません(笑)
 「貴様達がチェンジマンである限り、その考えと技は、俺の頭脳で全て分析してあるんだ」
 倒れた4人にトドメが迫ったその時、不意に高所から転がり落ちてくるヒドラ兵。一同の視線が集まった倉庫の上に立っていたのは―― 正義のシンボル・コンドールマン!
 ……じゃなかった、白い仮面で顔を覆い黒いマントと帽子で全身を包んだ謎の怪人であった!  怪人はチャクラムを投げつけると姿を消し、ここでアイキャッチからBパートに入ると黒マントの怪人に翻弄される獣士の主観に切り替わり、 獣士がビームを放って怪人を倒したかと思うと、マントの下は身代わりのヒドラ兵! という展開が三連発。
 「何者だ?! 誰がヒドラ兵を利用してるんだ」
 獣士がマントをめくる度に、激しい不協和音が鳴り響くショック描写が重ねられ、 頭脳派の宇宙獣士が神出鬼没の怪人に心理的に追い詰められていくという、大変面白演出(笑)
 視聴者には怪人の正体はわかっているわけですが、飛竜がこの為にヒドラ兵を狩り集めていた(飛竜にとって都合の良い事に、 ゴズマの大攻勢によりヒドラ兵はそこら中に居た筈)のかと思うと、三途の川を渡りかけた恨みの深さに鳥肌が立ちます。
 つまり……これぞ、悪魔的奸智!
 地獄の闇からやってきた、闇の怪人の悪魔の謀略に翻弄され、前後を黒マントに挟まれた頭脳獣士は困惑しながらも双方を射殺するが、 やはりこれも、その正体はヒドラ兵。もはや相手にしていられない、と頭上に姿を見せた悪魔的怪人を無視して去ろうとする獣士だが、 その時、今度こそヒドラ兵ではなかった怪人の放った新魔球・ファントムチャクラムが獣士の後頭部に突き刺さる!
 「おのれ〜! 何者の攻撃か読めん?!」
 混乱が頂点に達した獣士はとうとう巨大頭脳がオーバーヒートを起こして藻掻き苦しむが、 そこへ襲いかかろうとする怪人にカバーリングには定評のあるブーバが躍りかかって仮面が切り裂かれ、 外連味たっぷりにマントを脱ぎ捨て帽子を外して現れた怪人の素顔は――復活した剣飛竜!
 「ブーバ! 貴様達が地球を狙っている以上、俺はやられるわけにはいかないんだ! みんな! バルルカの脳細胞は完全に破壊した。 俺達の攻撃は読めない! 見ろ!」
 なんか、我々よりエグい戦術を使っている民間人?が居るんだが……と状況を遠巻きに見守っていた疾風たち4人が歓喜の合流を果たし、 ID野球を打ち破るどころか、もはや人格さえズタズタに引き裂かれ、記憶に異常をきたして暴れ回る獣士を前に、レッツチェンジ。
 5人の揃い踏みから久方ぶりにスッキリした形での主題歌バトルも美しくはまり、いやこれは、名作回。
 データ派の怪人にデータに無い技で逆転するというのは定番の攻略法ですが、 アハメスの脅威を示すピンチ表現としての生死不明を活用し、勝利の為にヒーローである事さえ捨てるという離れ業により、 謎の助っ人プロットを茶番にならない必然性を持ってミックス。ヒドラ兵の死体を積み上げる心理戦で敵を徹底的に追い詰め、 データを無効化する為に精神を崩壊させる(そこまでやる為に、一度死ぬ事に必然性が生まれ、実際、 帽子を脱ぎ捨てる際の仕草などにはズバッと快傑しそうな別人格へのなりきりぶりも窺えます)という結末への連結は、お見事。
 また、獣士主観の心理的圧迫感とその背後に横たわる薄暗さ・ドラゴンを失い追い詰められるチェンジマン、 という二つの状況を赤ジャケットの剣飛竜復活により同時に吹き飛ばす事で、 揃い踏みから主題歌というクライマックスバトルにおける「ここからはヒーローのターン!」というのが二重の意味を持つに至り、 常以上のカタルシスを生み出すというのも鮮やかにはまり、ここに来て脚本演出ともに会心の出来。
 敵味方も認識できずにビームを撃ちまくる獣士にブーバはやむなく撤退し、 ドラゴンは錯乱状態の頭脳獣士にドラゴンアタックを叩き込むと、大リーグバズーカ2号で爆殺。
 新バズーカの破壊力の上昇は、前回に続きミニチュアの陶器人形のような獣士を、木っ葉微塵に粉砕する事で表現 (ウルトラ怪獣の爆殺演出のエコノミー版とでもいいましょうか)。
 巨大化した頭脳獣士にビーム攻撃を受けるチェンジロボだったが、空襲からスーパーサンダーボルトで成敗。
 難敵を打ち破り、無事に飛竜も生還したチェンジマン……だが、疾風達4人は歓喜にむせぶ、事はなく、 それぞれ不満げにそっぽを向き、そんな4人の間を歩き回りながら懸命に作戦を説明する飛竜(笑)
 「おい! 聞いてくれよ! バルルカを倒す為にチェンジマン以外の人間になり」
 黒「あー腰いてぇな」
 「違う戦法で戦い」
 白「ふぅ」
 「やつの頭脳を破壊するしかなかった」
 桃「はぁ〜あ」
 「だから、やられたと思い込ませて接近したんだ」
 最初は明るい笑顔だった飛竜が、皆の反応に段々と眉が落ちていきつつ、少しずつ離れた場所に立ったり座ったり寝転んだりしている4人に、 誰か俺の話を聞いてくれ、と次々アピールする姿が台詞のテンポも良く、大変面白い事に。
 青「…………それにしたって一言いってくれりゃいいのになぁ」
 「いやぁ。……みんなの顔を見ると別人にはなりきれない」
 桃「あっち行って」
 勇馬が態度を軟化?! と喜ぶと再び言い訳を始め照れ笑いで麻衣の肩に手を置いてみるが、払われるのが素晴らしかったです(笑)
 「仲間に甘える気持ちが、さき」
 白「ふん」
 「先に立つだろ? な?」
 黒「なるほど。いつもの剣とは違う、非情な男に成り切る為だっつうのか?」
 「……ああ」
 黒「格好つけるんでないよ、ホントに! え!」
 困り顔の飛竜のコミカルな芝居も良く、飛竜の頬をつまむ疾風。
 白「さっすがドラゴン……と言いたい所だけど、ねぇ〜麻衣」
 桃「ほーんと。本っ気で悲しんだこっちの身にもなってよね、うん」
 白桃「「このー!」」
 最後は笑顔の4人に一斉に手足を掴まれ、土手の斜面に向けて投げ落とされる高所転落のプロフェッショナルであった、でオチ。
 正直予告からは、死んだと思ったが実は……パターンにあまり期待していなかったのですが、 上述したように「生死不明だから出来た作戦」である部分を徹底して追求した事が演出も合わせて劇的な面白さを生み、 あっさり喜んで大団円としないラストのやり取りも気持ち良く、大変面白かったです。
 また今回、「アハメスの攻撃によりドラゴン生死不明」という史上空前規模の危機をチェンジマンに与え、 そこからの逆転劇を描く事により、言ってみれば女王アハメスのスーパーパワー編の構造そのものを定型エピソード1話の中に凝縮。 そこから『チェンジマン』の“お約束”である主題歌バトルにいつも通りに持ち込む事により、今回ばかりでなく、 苦戦に苦戦を重ねてきたこの数話分のカタルシスを戦隊フォーマットに則りまとめて爆発させているのが非常に良く出来ており、 勝利の後に仲間達の関係性を再確認するラストまで含めて、冴え渡る構成でした(前回は長官や戦士団、 電撃戦隊全体の結束の高まりに比重が置かれたので、その部分も補われている)。
 敢えて難を言えば、大口叩くもスーパーパワーを破られたアハメスに対して特にバズー様からお仕置きがなく、 アハメス側の切迫感が見えなかった点ですが、尺の都合でカットされたのかもしれず、 またそこまで手を伸ばすと藤井先生の悪い詰め込みすぎパターンに陥った気もするので、総合的には致し方なかった部分でしょうか。
 もはや、バズー様はアハメスの隠れファン、という事でいいのではないか(ギルークを遠征軍司令に任命したのも、 反乱分子の芽を摘む為ではない意味で、アハメスとの接触を期待していたのでは…)。
 次回――野球。……これだ! この回が映像だけ知っていて、凄く見たかったんです! どう転ぶにせよ、楽しみ。

◆第38話「幽霊ベースボール」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「ふふふふふふふふ、恨み重なる剣飛竜よ。地獄の底から迎えに来た。恨みを晴らしてやるぞ。剣飛竜よ、殺してやる!」
 主観映像で真っ暗な電撃基地に入り込む不吉な影と滴り落ちる血? そして呪いの声、というホラー演出でスタートし、 ベッドでうなされていた飛竜が跳ね起きると、そこに見えたのは岩の塊の中から人の顔だけが覗いている、 とでもいったような不気味な怪物。
 悪夢の具現のような怪物は尾を引く笑い声を残すと亡霊のようにかき消え……一方、どういうわけかゴズマの宇宙獣士ドロンは、 高校球児の幽霊を生み出していた。
 「野球がやりたい……ドラゴンボールが打ちたい……」
 そしてパトロール中の飛竜を襲う燃える魔球!
 ……なんかもう、今回はここまででだいぶ満足しました(笑)
 「剣飛竜、会いたかったぞ。おまえと戦いたかったんだ」
 ユニフォーム姿の野球戦士は次々と飛竜に火の玉ノックを打ち込むが、疾風達が駆けつけるのを見て獣士と共に撤収。
 「また……幽霊が出たんだ」
 剣さん、あなた、 度重なる高所転落で頭を打ちすぎ 疲れているのよ……。
 ――炎と共に今、黙示録の幕が上がろうとしている。
 ……はさておき、幽霊野球戦士の弟と接触した飛竜達は、その正体が甲子園で飛竜と対戦する事を夢見ていたが、 若くして病死した球児だと知る。
 「妙だな……。たとえ幽霊だとしても、俺と野球をしたかった者がバットやボールで俺を襲ったりするか?」
 それは……ええと……飛竜がもはや野球を捨てた事を知り、別の形で勝負を挑もうとしているのでは。
 「じゃあゴズマの陰謀ってわけか」
 「恐らく」
 第9話の一件はともかく、元球児としての野球魂から幽霊の行動に疑念を持った飛竜は、兄のような野球選手になる事を夢見る少年の為、 幽霊野球戦士の触媒となっているユニフォームを取り返す事を約束。
 一方、宇宙ではアハメスとドロンが、甲子園で飛竜と対戦する事を夢見ながら死んでしまった若き高校球児達の無念を集め、 亡霊野球チームを作り出していた。
 「今度こそ必ずチェンジマンを倒してみよ!」
 脚本上でねじ込む隙間が無かったのか、度重なる敗北で追い詰められつつあるアハメスの切迫感を、 物凄く真剣な表情のアハメス様の演技力だけで表現しているのですが、その結果、 真顔でバズーに「亡霊野球チームを作ったのです」と説明するアハメス様の、打席から3塁へ向けて走り出した感が大変面白い事に(笑)
 チェンジマンは、亡霊野球チームにやられたように見せかける事で背後で暗躍していたドロンを誘い出すも、 アハメス監督のビーム攻撃から形勢不利となるが、そこに轟く雷鳴と不吉な声。
 「……恨み重なるアハメスよ。地獄の底から迎えに来たぞ」
 スモークの立ちこめる中に姿を見せたのは、飛竜の前に現れたのと同じ、強い怨念を纏った不気味な怪物であった!
 「あれは俺の見た幽霊だ!」
 「よこしまな女アハメスよ。この恨み、晴らさでおくものか」
 「何者?! 何者だ?!」
 「ふふふふふふははははは」
 顔面蒼白となったアハメスは八つ当たり気味に幽霊獣士を攻撃し、哄笑とともに謎の存在が姿を消すと、怪鳥に乗って撤収。
 「いったいあの幽霊は……何者か」
 登場タイミングに加え、言動や声からすると、十中八九ダークネビュラ送りにされたギルークの怨霊と思われますが、 見た目に全く面影が無い、という予想外の復活(仮)。そして、本当に、あれで一度は死んでいた扱いなのか。
 「剣を呪ったのと同じ幽霊が、アハメスをも呪ったというのか」
 宇宙オカルトの権威(※独自の研究です)である伊吹長官は、幽霊の存在はすんなり受け入れつつも、 「伝説」とか「神秘」とかが絡んでこない為か、いつもの調子で「あれは宇宙伝説に語られているスペース幽霊!」 と解説を始める事もなく、少々困惑気味。そこへ野球のユニフォームに身を包んで現れた飛竜(と戦士団の一部?)の姿を見て、 亡霊野球チームと勘違いしたさやかと麻衣が、疾風を突き飛ばして長官に助けを求めるという一幕。
 「な、なんだよ?! 野球なんかしてる場合かよ?!」
 「そう。やるのさ野球を!」
 飛竜は、野球の無念を野球で晴らす事により亡霊野球チームを成仏させようと提案し、 襲撃してきた亡霊野球チームをグラウンドへと誘い出す。
 「さあ! 野球やろうぜ!!」
 飛竜が元高校球児である事が明かされ、ドラゴンボールに焦点が当たったのが第9話の事なので、 前振りと言うには昔すぎる事もあり大変バカっぽい展開なのですが、野球戦士達はあくまで幽霊獣士による被害者であり、 その無念と真摯に向き合った上で彼らを救おうとする飛竜(たち)のヒーロー性がこの一言に集約され、やたらと格好いい。
 無念の対象であるドラゴンボールを餌にする事で、真の野球魂を取り戻した亡霊野球チームと電撃野球軍の試合が始まり、 この日の為に特訓を積んだのか、ドラゴンボールをキャッチしてみせる勇馬!
 幽霊達の想いに応えるべく、ドラゴンボールを投げ続けるも飛竜は連打を浴び、 最後は火の玉ノックを浴びせてきた球児の満塁ホームランがスタンドに突き刺さり、 歓喜の輪の中で亡霊野球チームは揃って成仏する……のですが、ここ数年はあまり真面目に見ていないものの、 野球ファンの末席としてどうしても気になったのは、やたらポンポン打たれるドラゴンボールと、それで無念を晴らしてしまう野球戦士達。
 勇馬が取れる程度に球威を抑えている疑惑はまだともかく、それも加味した飛竜が亡霊達に気持ち良く打たせてやろうとしているように見えてしまい、 果たしてそれは、「野球やろうぜ!!」なのか? 飛竜自身のブランクというのも考えられますし、 映像上の盛り上がりや話のテンポを考えると妥当ではあるのでしょうが、導入の格好良さに比べると、 真剣勝負の末に無念を晴らして成仏していった、という印象が弱くなってしまったのは残念な部分でした(除霊の儀式と思えば納得はできますが)。
 ベースを一周した野球戦士が歓喜の中で弟にエールを送ってかき消えると、 ホームベースの上に残されたユニフォーム一式に弟が駆け寄り、情報提供役だった弟が視聴者に対する感情の導線として機能する、 というのは巧かったですが。
 「おのれぇチェンジマン! ドロン! もう一度幽霊を作り出せ!」
 「出来るものか! みんな思い残す事なく野球をやったんだ! 野球選手の無念の想いを悪用した事、許さん! ――レッツ・チェンジ!」
 変身した5人に襲いかかるヒドラ兵は、大リーグ仕込みの殺人スライディングからアクロバットな蹴り技を繰り出し、 どういうわけか強化仕様。更に殺人ゴズマ投法でチェンジマンを苦しめるが、バットを握ったチェンジマンは、 電撃ピッチャー返しでホームラン。
 ドロンの霊体化能力に苦戦するも弱点を見切ると、空中に飛び上がったドラゴンがきりもみ回転から放つ新必殺魔球・ドラゴンソード (ドラゴンボールと同じ軌道で飛んだチェンジソードが敵の眼前で消失してから突き刺さる)が放たれ、 野球選手の想い、とは。
 そんなものは既に、第9話で渚さやかに破壊されたのだ! と地球を守る殺人野球が炸裂し、 霊体化不能になったドロンを大リーグバズーカ2号で爆殺。リリーフのギョダーイがマウンドからドロンを巨大化し、前回今回と、 テーマ曲入りでアースコンバージョンして定型フォーマットへ戻った印象を強めつつ、スーパーサンダーボルト。
 最後は野球少年の活躍に歓声を送るチェンジマンの姿に、ナレーションさんが「チェンジマンは謎の怨霊の事を考えているんだよ!」 と映像と全く噛み合っていない深刻な調子で語って、つづく。
 30話越しの野球ネタ(幽霊の正体が、飛竜のドラゴンボールによる負傷で引退を余儀なくされた元キャッチャーとかだったら凄かったのですが……)に、 待望のギルーク復活(仮)の大ネタが挟まるという大変不思議な取り合わせのエピソードでしたが、 2年前の『科学戦隊ダイナマン』は初期設定では野球モチーフであったという話を聞いた覚えがあるので、 いつかやろうと暖めていた本格野球回……だったの、でしょうか?
 出来の方はぼちぼちといったところでしたが、スーパーアハメスの賞味期限が切れる前に、電撃戦隊とアハメス、 双方に関わる存在を投入してくれたのは面白く、フラれ男の怨念が何処に行くのか、大宇宙アハメスファンクラブの運命や如何に?!

◆第39話「恐怖のかくれんぼ」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 見所は、激しく回転するドアを直接ぶつけてくるという、問答無用すぎる宇宙獣士の攻撃(笑)
 怪人ポジションの攻撃手段として、近年屈指のインパクトでした、ハイ。
 タコ、というか、いっそ旧支配者めいた宇宙獣士ダムスによる、「悪魔のドア作戦」がスタート。 疾風とかくれんぼしていた保育園の子供の一人が、ボート小屋のドアを開けた途端に何処とも知れない海岸に飛ばされてしまうという、 定番の魔空空間ネタ。
 「ミユキ先生、あなたを見逃すような疾風翔ではありませんよ」
 一方、やはり先生狙いだった疾風は、髪を整えながら一人で盛り上がっており、最近こういうエピソードが無かったのでなんだかほのぼの……も束の間、 人違いから痴漢疑惑をかけられた疾風メンバー(グループ内2人目)は逃走中に開けたドアから少年同様に別の場所へと飛ばされてしまい、 それは、チェンジマンの各個撃破を目論むアハメスの罠であった!
 「悪魔のドアからは逃げられないわ!」
 ヒドラ兵を蹴散らすも飛び回るドアの連続攻撃を受けたチェンジグリフォンは駆けつけた4人になんとか救出されるが、 撤退をはかるクルーザーの前に立ちはだかる悪魔のドア。ところが開いたドアからは苦しみ呻く獣士が転がり出し、 その背後からはあの不気味な怨霊が姿を見せる。
 「おまえは……ギルーク!」
 えええ(笑)
 まあこちらとしては、すぱっと断定してもらえると面倒くさくはないのですが、一体どこにギルークの面影を見たのだ剣飛竜。
 「ギルーク?! 生きていたとは!」
 「如何にも。宇宙の墓場から戻ってきたのだ」
 「信じられぬ……いったいどうして?!」
 「恨みよアハメス! おまえへの恨み、チェンジマンへの恨み。俺は同じ墓場で、死にかけていた宇宙獣士の体に、乗り移ったのだ」
 「ギルーク! 野球やろうぜ!!」
 タイミング的に再登場の可能性が高そうだったギルーク、指揮官交代劇そしてリストラからの復活、がどう描かれるか注目していたのですが、 流刑先で死亡した末、都に祟りをなす怨霊と化すというのは、全く予想外でありました。
 「覚えていろ。この恨みは、必ず晴らしてやるぅぅぅ!!」
 チェンジマンとアハメス、双方に怨念ビームを放つギルークだったが、実体を保持し続ける事が出来ずに撤収。 物凄く動きにくそうなスーツは気になりますが、ギルーク割と好きなので、状況を引っかき回す存在として、今後の活躍が楽しみです。
 「星王バズー様! ギルークのあのような振る舞い、許してもよろしいのでしょうか?!」
 「フフフ、宇宙の墓場から戻ってくるとは、大した奴ではないか。半分幽霊とはいえ、凄い力を身につけておる。 ちょっとギルークを見直したところだ。その事よりまず自分の本分を尽くす事ではないのか?」
 アハメスから報告を受けたバズー様は相変わらず圧倒的強者の余裕を見せる懐の深いラスボスぶりで、 この状況で「ちょっとギルークを見直したところだ」は、ラスボス史に残したい名台詞(笑)
 一方、悪霊ギルークの乱入により結果的に危地を脱したチェンジマンは、 かくれんぼしていた子供の一人が行方不明になっているという連絡を受けて捜索に戻り、再びドアの向こうへと飛び込む疾風。
 ……はさすがに、何が待ち受けているか想像つくのだから事前に連絡するなり二人一組で連携などしてほしかったところですが、 疾風はメンバーで一番知力低いからな……。
 「早く見つけだしてやらなくちゃ……アキオくんのかくれんぼはまだおわっちゃいないんだ!」
 ドアの向こうで久々にタイマン勝負となったシーマのハイキックを食らったり、 悪霊ギルークに襲われながらも仲間に助けられた疾風だが、妙に格好いい言い回しとともに、またも単身でドアに突入。 ……長崎の頃より、格好つけて単独行動を取った末に危機を招く、のは疾風の仕様ではあるのですが、 「少年を早く助けたい焦り」とは別に(これは勿論、そうであってこそのヒーローなのですが)、疾風が単独行動を取る理由に、 激情以外のもう一工夫欲しかった部分です。
 飛び出した先の海岸で遂に少年を発見する疾風だが、そこにはまたもアハメス・シーマ・獣士が待ち構え、 アハメス様もアハメス様で「ドアFに反応が!」「よし行くぞ!」とかやっているのだろうと思うと、遠征軍の司令も大変なお仕事で、 ギルークの言動にどんどん余裕が無くなっていった事情も窺えます。
 早くリゾート惑星でバカンスが取りたい!
 そんな遠征軍に頻繁に内政コマンドで様子を見にくるバズー様もバズー様なので、ゴズマ上層部は、全体的に割とマメ。
 疾風を追いかけてきた4人が合流するも、悪魔のドアによる空間攻撃を受けたチェンジマンは、 フェニックスファイヤー・ペガサス稲妻スパーク・マーメイドなんとかウェイブ、 と各自のパワーシンボルアタックを次々と繰り出して状況を打破。
 展開が単調になると思われたのか、合間に鎧武者との立ち回りが挟まれ、4人の仲間が斬り合いに敗れた後、 おもむろに「チェンジソード!」(銃撃)で撃ち殺すドラゴン、さすがドラゴン。
 グリフォンマグマギャラクシーとドラゴンサンダーも放たれ、最後は悪魔のドア(物理)に苦しめられるチェンジマンだったが、 勢い余った獣士が自らドアに正面衝突した所を、ズーカ一斉射撃から大リーグバズーカ2号で爆殺。
 ワープや異空間の作成など、かなり強力な特殊能力を持った獣士でしたが、終わってみると、 物理でドアを叩きつけるのが最強(そして敗因)だったというのは、 ハードウォールと通じるものがあるのかないのか(笑)
 巨大戦においては、物理ドアを失った獣士はもはやチェンジロボの敵ではなく、風車斬りからサンダーボルト。 悪魔のドア作戦は打ち砕かれ、再び保育園の子供達とかくれんぼを楽しむ疾風だが、またも痴漢に間違われてドタバタ騒ぎ、で大団円。
 飛竜の女好き設定を久々に持ち出しつつ、少年の為にも必死になる姿を描いたのは正攻法で良かったのですが、 悪魔のドアに対して無謀な突入を繰り返し、結局後から4人が追いついてくる、というパターンが繰り返しになってしまい、 もう一ひねりが欲しいシナリオでした。
 ところで急にブレスレーザーが連発されたのは、いったい何故だったのか(疾風が2回使用し、4人も一斉に使用)。

◆第40話「おかしなお菓子」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 ある夜、流れ星に祈った少年が、翌日になって星の落ちた辺りを探っていると、願い通りにお菓子の家が目の前に現れる…… という子供視点のメルヘンな雰囲気でスタート。
 ところがそれは、バズーによって遙か昔に滅ぼされたシガール星のお菓子製造ロボットによるものであり、 シガール星の菓子に含まれた成分を食べる事でチェンジソードすら溶かす腐食性ガスを吐き出す宇宙獣士ゾルテのエネルギー源として、 アハメス一党はそのお菓子ロボットを血眼になって捜していた!
 お菓子の家から飴玉などを持ち帰るも、獣士に襲われたところをチェンジマンに助けられた少年は、 兄の誕生日の為に願ったお菓子の家が本当に見つかった、と兄を誘うが、子供っぽい夢だ、と相手にされずに追い返されてしまう。
 「どうしてみんな、信じてくれないのかな? 流れ星にお祈りしたら、願いがかなうって、教えてくれたのは、兄ちゃんじゃないか。 お菓子のうちの話をしてくれたのも、兄ちゃんじゃないか」
 「それはな……お兄ちゃんが大人になったからさ」
 「大人?」
 「でもね、大きくなっても、俺みたいにそんな話を信じる人間だって居るぞ?」
 そんな少年に優しい言葉をかけて接触する大空勇馬さん……普段なら、子供っぽい所を残し食い意地の張った勇馬が、 少年と同じ目線で夢を追いかける適役、というところですが、なにぶんチェンジマン、地球に墜落した未確認飛行物体 (問題のお菓子メカ)の追跡中だったので、甘い言葉で近づいて、少年から情報を得ようという 下心が背中からダダ漏れです。
 ……まあ、勇馬なので、50%ぐらいは本気なんだろうな……というのがクッションになっていて、これがさやかだと、 「本当はお菓子の家なんて信じてなかったんだな!」と惨劇再びになってしまうので、 勇馬回で良かったのでしょうが(笑)
 少年の案内でお菓子の家に辿り着く勇馬だが、そこに再び宇宙獣士が出現。横に大きく裂けた口でお菓子の家にかぶりつこうとし、 つまり今回の獣士も円谷路線で、カシゴン、という事なのか。
 ブーバまで姿を見せて動きを封じられてしまう勇馬だが……更に更に、書き割りのメルヘン空間を突き破り、 おどろおどろしい音楽と共に悪霊ギルークが登場し、数秒前まで『おかあさんといっしょ』だった世界は、 すっかり極道ものVシネマの麻薬取引を巡る抗争シーンに突入。
 「どけぇ! この菓子を食うのは俺だ!」
 そして組長は、腹が減っていた。
 「この菓子を食えば、俺はずっとこの世に居られるかもしれんのだ」
 悪霊ギルークに、実体化を保持する為のエネルギー源を捜している、という理由付けが与えられ、繰り返すと面白くない典型である 「強敵が腹痛により早退パターン」を明確に弱点として設定した上で、その克服を行動目的として連結する、というのは巧妙。
 獣士とギルークは両サイドからお菓子の家を食い荒らし、お菓子の家の屋根から手掴みでビスケットを口にするギルーク、 という凄い絵で完全に司令官時代のイメージが破壊され、悪霊としての説得力も増す事に。
 シガール星の菓子に入っている成分とはいったい……と冷や汗が滲んでくる中、お菓子の家を作り出していたシガールメカが、 メルヘン空間を消滅させて浮上。
 「その機械は儂が貰う」
 「待てぃ! メカを渡すわけにはいかぁん」
 「ブーバ! 貴様儂に逆らうのか」
 かつての上司と今の上司、どちらを取るかを悩んだ中間管理職のブーバは、さすがに多少は躊躇したものの結局は獣士に攻撃を指示し、 渡世の仁義も月給の前には無力なのです。
 副官コンビは忠義や信念とは無縁というか、ゴズマの支配する宇宙とはそういうものであり、 雇われ者の傭兵に過ぎないというスタンスがハッキリしていますが、最終盤にもう一つ跳ねる事があるのかないのか、 チェンジマンのアースフォース覚醒により既にやられる準備は出来ているので、どんな散り様になるのか楽しみです (シーマは序盤の伏線がどう活用されるのか)。
 結局、お菓子ではエネルギーを得られなかった悪霊ギルークはあの世に引き戻され、そろそろ足下の鉄板が熱くなってきたのか、 怪鳥に乗って自らメカを回収しにくるアハメス様だが、メカからビームを撃たれて動揺した際に、怪鳥の翼でメカをはたき落としてしまう。
 墜落したメカを拾った少年は、ゴズマの目的判明によりメカの破壊を指示された勇馬から逃げ出したところを残りの4人に囲まれ、 よってたかって「地球の為にそのメカを渡せ!」と少年に迫る、というなかなか酷い絵。
 地球を守る使命と少年の夢が天秤にかけられ、見かねた勇馬は「せめてお兄さんに見せる間だけでも」と4人を説得。 舞い戻ってきたアハメスの浴びせかける火炎放射に対し、飛竜達4人が囮になって飛び出している間にメカニック技能を発揮してメカの故障を直そうとする勇馬だが、 特に何もしない内に煙を噴き上げたメカは、その衝撃で電子頭脳の機能を回復。
 「頼む! お前にもし心あるならば、地球の子供に夢を与えてやってくれ!」
 再び獣士とアハメスの襲撃を受けた勇馬は、少年を逃がすと思い切りマシンを空に放り投げてレッツチェンジし、ここは格好良かったです。
 「アハメス! 一歩も通さないぞ!」
 4人も合流して主題歌バトルに突入し、絶好調のペガサス、バック転による蹴り上げから背後のヒドラ兵の首に足を回し、 その状態から上半身を持ち上げて前方のヒドラ兵の肩に手をかけると前転で包囲を突破するという凄まじいアクションを披露すると、 逆立ちからの蹴り技を連発。
 ソードとシールドを盾に接続したチェンジマンはそれを星形に組み合わせ、機刃の逆鱗、じゃなかった、 チェンジソード・クロスハリケーンを獣士に浴びせ、混乱に陥った獣士は腐食ガスをブーバに浴びせてしまう。
 フォーメーションが格好いい割に直接ダメージは無い新技ですが……つまりこれはあれか、 チェンジドラゴンを捨てて悪魔の使いオウルナイト時代に編み出した戦法を5人の合体技として昇華した、 脳細胞破壊攻撃なのかドラゴンさっすがドラゴン。
 ブーバは愛用のスパナ剣を無惨に溶かされて退却し、なにか剣の名前を叫んでいたのですが、残念ながらよく聞き取れず。 一つ判明したのは、ブーバも、剣と会話するタイプだった、という事です。……まあ、話し相手、ほぼ居なさそうですしね、遠征軍母艦。
 残った獣士は脳細胞のみならず全身を粉々に破壊され、巨大化。腐食ガス攻撃はチェンジロボシールドさえ溶かすが、 中距離からのミサイル攻撃でひるんだところを風車斬りからサンダーボルトのコンボで、成敗。
 電子頭脳は回復するも、故障により製造能力を失ったお菓子ロボは、残ったわずかな機能で空から綿菓子の雲を降らせ、 これを目にした兄弟仲も丸く収まり、大団円。
 ナレーション「人は、いつか夢を忘れて、大人になる。だが、心のどこかに、子供時代の夢は、持ち続けたいものだ」
 勇馬の言葉に応え、余力を振り絞って子供達に夢を与え地球を去っていくお菓子ロボですが、己の本分(お菓子製造能力)を失った今、 宇宙広しといえども遙か昔に滅びたシガール星のメカを直せる技術者がそうそう居るとも考えにくい以上、 地球を去っていくという行為そのものが、子供達の夢を守り抜く為に大宇宙へ姿を消すという選択であったのかもしれないと思え、 ロボ目線ではちょっと切ないエンド。
 果たして最後に、電子頭脳の機能だけが回復したのは、ロボにとって幸せだったのかどうなのか…… 孤独な宇宙へ旅立っていくロボの頭脳にあったのが、最後まで役割を果たし抜いた満足感であってほしいと思ってしまうところです。
 ……まあ、大気圏を突破する前に力尽きて道ばたに転がっていた所を、某天才少女に拾われて修復され生まれ変わる、 という可能性もありますが。
 「私も自分のやるべきことが、今はっきりとわかった。ありがとう。ナナ、君のお陰だ」
 「シガールソン、これは、あなた自身がつかみ取った、あなた自身の新しい命よ」
 「私自身の、命」
 シガールソン・フォー・ジャスティス!
 次回――風を切るSGスイーツ! あらゆるエイリアンを殲滅する、悪魔のお菓子を、君は見たか!
 激しく縦回転する板チョコに殴打されるブーバとか少し見たいですが、本当の次回――なんか、 大変ワクワクする感じの人が!!
 最終章を前にキャラ回を一巡りする構成になるようですが(麻衣が飛ばされない事を祈る)、 ゲストキャラの醸し出すオーラが気になって仕方ありません(笑)

◆第41話「消えた星の王子!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 「貴様は、誰だ!?」
 「はっははははは! 星王バズーの王子、イカルス!」
 荘厳なクラシック調のBGMを背に、宇宙獣士ボーラをともなって遠征軍を訪れた翼を持った美青年イカルスは、 アハメスから指揮権を奪い取るとチェンジマンに挑み、変身する間も与えない強襲を仕掛ける。混戦の中、 思い切りイカルスの細剣に突き刺された飛竜を救うべく、体当たりで組み付いたさやかの顔を見たイカルスは、 驚愕の表情を浮かべると空に飛び上がり、戦闘を中止して全員に撤収を指示。
 「渚さやか…………母上」
 なんとさやかは、イカルスの亡き母に瓜二つだったのだ!
 開始3分で、期待に応える「残念」に突入したイカルスですが、 やはり王子か、王子の肩書きがいけなかったのか。
 2年前の『科学戦隊ダイナマン』にレギュラー幹部として登場するメギド王子が、 素晴らしい残念王子ぶりで大好きなキャラだったのでどうしても彷彿とさせるのですが、『ダイナマン』は名作(定期)。
 残念もといイカルスはチェンジマンの個別撃破を指示すると、防衛隊の基地を襲撃して誘い出したチェンジマンを分断し、 アハメスvs赤、獣士vs黒、ブーバvs青、シーマvs桃、そして、イカルスvs白、がマッチアップ。
 シーマの鮮やかな回転ハイキックがフェニックスに炸裂したりする中、イカルスはマーメイドをさらって戦場を離脱。
 「イカルス! 私をどうするつもりなの?!」
 「私の妻になってもらう」
 ネーミングからの印象もありますが、この、目をつけた女をとりあえずさらうのが凄く、ギリシャ神話の中の人っぽい(笑)
 「私はいつか必ずイカルス星を再興する。その為に子孫が必要なのだ」
 そして、直球だな!!
 どうして私なのか、と問われるとさやかと瓜二つである母のメモリーを見せ……どん引きですね!!
 ある意味、ここまでで一番ヤバいやつが出てきました。
 「渚さやか、私と共にイカルス星を甦らせるのだ」
 「そんな事、できないわ」
 「何故だ!」
 「母親そっくりという理由で粉かけてくる男とか(以下、不適切な表現の為、削除)」 「私はチェンジマンよ! 仲間と一緒に、地球を守る使命があるわ」
 「私が他のチェンジマンを倒し、地球を征服し、ここを第二のイカルス星にすれば問題はない! これから奴らを倒す!」
 その頃、指揮官が真っ先に姿を消した為か、緩んだゴズマの包囲を抜けた飛竜達はさやかを捜していたが、 そこに姿を見せる悪霊ギルークの、大変お呼びでない感。
 「チェンジマン……宇宙の墓場で味わった苦しみ、お前達にも味わわせてやる」
 眼球エフェクトの気持ち悪い光線を放ったギルークは唐突にマーメイドの話を始めるが、 そこへ飛んできたイカルスにより宇宙の墓場へと送り返され、悪霊ギルークを出さなくてはいけない、という縛りがあったのでしょうが、 今回は割り切った感じでかなり強引に。話全体の内容とバランスからすると、今回は仕方なかったかな、と。
 状況をこっそりとステルスで窺う、という史上最も情けない姿のアハメスの前で、 獣士と共に放ったWイカルスビームでチェンジマンを吹き飛ばしたイカルスは、監禁場所へ戻ると再び熱烈なアプローチ。
 「チェンジマンは私が倒した。やつらは木っ葉微塵に吹っ飛んだ。もうお前に仲間は居ない。私と一緒に、イカルス星を再興するのだ」
 「……イカルス星の悲劇や、あなたの気持ちはわかったわ。でも仲間を倒したあなたを、私は許さない!」
 それはそうだ、なのですが、さやかの返答に驚くイカルスの姿を見るに、自分と同じ境遇になれば自分を受け入れてくれる、 という身勝手な思い込みは、全てを失い他者への思いやりを学べず、奪う事でしか欲しい物を手に入れる事の出来なかったイカルスの、 不器用で悲劇的なアプローチという面があったのかもしれません。
 「あなたは、イカルス星や、イカルス星人が恋しいかもしれない。でもそんなあなたが、様々な星を侵略し、 自分と同じ哀しみを持った人々を、作り出しているのよ!」
 「強いものだけが生き残る……それが、それがバズー様の作った宇宙の掟だ!」
 「間違っているわ。……どんなに小さな星でも……どんなに弱い星でも……命の重さは変わらないわ。イカルス、 あなたのお母さんだって、そう教えてくれた筈よ」
 お得意の悲恋物をプロットの基盤にしつつ、今作において特に藤井さんが繰り返し描いてきた “地球を攻撃してくる獣士も広い意味ではゴズマの犠牲者である”という今作を貫く背景から、 だからこそ悲劇の再生産を食い止める想いで、バズーの作る宇宙の否定へと昇華するという、 『チェンジマン』藤井脚本の集大成といった内容で、作品終盤らしいまとめ方がお見事でした。
 (この辺り、やはり積極的な侵略者の一団としては使いにくくなってしまったゲーターが、夏のゲーター回(曽田脚本)以降、 台詞が激減してしまったのは、やや残念な点ですが)
 趣味の偏向や戦隊作劇との相性があって、波の荒い印象の藤井先生ですが、ここに来て、秀作を連発。
 「イカルス、その女を処刑するのだ」
 だが、さやかの言葉によろめきかけたイカルスは、 中央から辺境まで小まめに配下の忠誠度チェックを欠かさない事には定評のあるバズーの御前に呼び出されてしまう(恐らく、 こそこそしていたアハメスからの連絡があったのか)。処刑命令を拒否したイカルスは、バズー様のお仕置き光線(出力90%) からさやかをかばうと2人まとめて地球に弾き飛ばされ、大地へと叩きつけられる。
 「母上……」
 瀕死のイカルスはさやかに手を伸ばすが……届く前に力尽き、物凄い藤井節だな!
 「イカルス、さらばだ」
 バズー様はその死体を何故かキャプチャーし、ギルーク同様ダークネビュラ送りかと思われますが、 わざわざ回収する行為が意図的な伏線だとすると、宇宙獣士墓場にもなにやら秘密がありそうです。 実母を通したイカルスとさやかの関係に焦点を合わせた分、バズーが何故イカルスを養子扱いしていたのか、 という点は特に掘り下げられませんでしたが、何か理由があっても面白そう。
 イカルスの忠実な従僕であったボーラはブーバにそそのかされてさやかに牙を向けるが、そこに生きていた4人が合流し、 チェンジマーメイドで揃い踏み。イカルスの死に泣き叫ぶボーラの悲痛な姿が描かれるも、怒りにかられた宇宙獣士は抹殺するしかない、 というシビアな判断が重く、マーメイドの連続攻撃から大リーグバズーカ2号で爆殺し、巨大化。
 ……ところである時期から、ドラゴンの「チェンジロボ、発進!」の時に背後で黒がポーズ決めながら「ふん!」と力んでいたのですが、 最近それに青も参加するようになったのは、数々の死闘を繰り広げて絆LVが上がったのでしょうか(笑)
 三叉槍を持ちだしたボーラに電撃剣で対応し、珍しく近接武器での殺陣をちょっと挟んだ後で、サンダーボルトでスマッシュ。 戦い終わり夜空を見上げるさやかに、そっと寄り添う麻衣と飛竜。
 「イカルスも、可哀想な人ね……」
 「イカルスは宇宙の孤児となり、星王バズーに育てられたのが悲劇だったんだ」
 (……私は、もっと平和な時に、イカルス星の王子、イカルスに会いたかった)
 主題歌ピアノアレンジをバックに、母の胸に飛び込んでいくイカルスの幻影が夜空に映し出され、切な
 ナレーション「さやかは、思った。平和な時に、イカロスに会えたら、きっと、友達になれただろうと」
 ナレーションさんの残酷な一言に、切なさが一刀両断された!
 ……いやま、主要視聴層を踏まえて作品メッセージ的には妥当なスライドですし、さやかの心情としても(恋愛関係は……無い) という方が納得度が高いのですが、あまりに容赦ないぶった切り具合に、吹き出さずにはいられませんでした。
 ナレーション「いつの日か、様々な宇宙人と、友達になれる事を信じて。戦え、電撃戦隊チェンジマン」
 ラストシーン、さやかに麻衣が寄り添うというのは、以前の麻衣の初恋回を意識的に踏まえたのかなと思われるので、 そちらに流れたらどうしようかと若干ドキドキしたのですが、やはり宇宙のイケメンでも、告白の理由が「母に似ている」は、 生理的に無理。
 それはともかく、イカルスの陥った悲劇とは、この世界に蔓延る悲劇であり、チェンジマンの最終的な目標とは、 そんな悲劇の再生産を繰り返す世界の根治にある、と地球を守る使命感ばかりでなく、チェンジマンの戦いそのものを宇宙的視野に広げて、 つづく(勿論これは、現実世界のメタファーを含み、バズーとは概念的悪の具現化されたシンボルといえるわけですが、 この辺りのテーマは次作『超新星フラッシュマン』に部分的に継承されてもいたり)。
 次回――本当にナナちゃん再登場! をギルークと絡めるのは面白そうですが、やはり麻衣回は飛ばされる運命なのか。

◆第42話「セーラー服のナナ」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「蝶よ花よと育てられたこのシーマが、なんの因果か落ちぶれて、今じゃゴズマの手先。笑いたければ笑えばいいさ。だがな!  てめえらみてぇにフォースまで薄汚れちゃいねえんだぜ!」
 長石監督が、第26話以来となる復帰(Wikipadiaによると、TVドラマのメイン仕事があって、離れていたとの事)。
 パトロール中に名門女子校の学園祭を目にした疾風は、渋る飛竜を口説き落とし、食べ物に目のくらんだ勇馬と共に学園祭に入り込むが、 そこでバッタリ、ナナと再会。すっかり地球の女子校ライフを満喫しているナナと和やかに笑顔をかわすのだが、 そこに突如現れた悪霊ギルークが、ナナをさらってしまう。
 「ナナよ、リゲルオーラを出せーーー」
 悪霊ギルークが完全な実体化の為のエネルギー源を求めていた→再びリゲルオーラに目を付ける(怨霊の執着込み?)、 というのは巧く繋がり、不気味な儀式の祭壇にナナの身を横たえたギルークは、ナナからリゲルオーラを絞り出す為の黒ミサの儀式を開始。 闇に包まれた空間で、どこからともなく現れた白装束が不気味に踊り狂い、その影響は遠征軍の母船にまで及ぶ。
 「私の目の前で、あの死に損ないのギルークに勝手な真似はさせるものか!」
 当初の予想からはだいぶ外れましたが、アハメスとギルークの因縁浅からぬ関係も面白く、 チェンジマンのズーカ一斉発射により黒ミサ空間は破壊されてギルークは退散するが、アハメスの送り込んだ宇宙獣士カーゲがナナの影に入り込み、 びゅっびゅーん! びゅっびゅーん! かげすたー! と、影の魔人ならぬ獣士に操られたナナは、おもむろに目からビーム。
 思えば第14話でも少女ナナがビームを放っていましたが、基本的に、光線技が使える種族なのか、テクノ惑星リゲル人。
 「ふふはははははは。何を言っても無駄よ。ナナはゴズマのセーラー服の少女戦士となって、お前達チェンジマンを倒すのだ!」
 だいぶネジの歪んだ事を言い出すシーマさん、この当時の「セーラー服」のアイコン性は現代から見ると割と謎ですが、 或いは東映が「スケバン」的なるものにこだわりすぎなのか(「女番長」と書いて「スケバン」と読ませたのは、 東映の映画『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』(1971年)が初との事)。
 もういっそ、シーマもセーラー服で登場していたら物凄く面白かったんですが。
 「ゴズマといえども、ナナちゃんの心の奥までは操れない筈だ! 剣飛竜という一人の男として、ナナちゃんの心の中に訴えてみる。 ゴズマなんかに、俺達との仲を引き裂かれてたまるか!」
 状況を確認した長官の助言を受けて飛竜は決死の説得に臨み、シーマとヒドラ兵を食い止める疾風達。
 《説得》ロールに失敗する度に目からビームを受ける飛竜だが、爆発の余波で倒れてきた電信柱からナナをかばった際、 防御判定にクリティカルした事から、倒れた電信柱が影に潜んでいた獣士を直撃(笑)
 そして身を挺したカバーリングが、かつて幼いナナをトラックから助けた時の記憶を甦らせる。
 正気を取り戻したのも束の間、再び影獣士に操られてしまうナナだが、何者かの存在に気付いた飛竜はナナの影にドラゴンキック。 だがそこに悪霊ギルークが再来して三つ巴の様相を呈し、ぎゅいーーーんと上昇する、ナナのヒロインパワー。
 「私はもう普通の女の子なのよ……リゲルオーラなんて、出ない」
 「失せろギルーク! ジャンゲラン!」
 セーラー服などに頼らずとも、ヒロインの座は渡さない!とアハメス様が勇躍乱入し、ギルークめがけて火炎放射。
 「死に損ないの幽霊め! 宇宙の墓場に戻れ!」
 「おのれアハメス〜……」
 「ナナ、ギルークからは逃げられても、女王アハメスからは逃げられるものか!」
 女に迷ったイカルス王子の処刑によって失脚の危機を免れたアハメス様が絶好調で、やはりアハメス様は、 高い所で調子に乗っているのが似合います。
 全員合流し、チェンジドラゴンから主題歌バトル。影獣士は青と黒を次々と操るが、 ドラゴンが大ジャンプからパワーシンボルで太陽を覆い隠すという荒技で獣士の特殊能力を封じると、 怒りのドラゴンサンダーから大リーグバズーカ2号で爆殺。巨大戦では影分身攻撃を受けるが、フラッシュでかき消し、 スーパーサンダーボルトの錆とするのであった。
 結晶生物+ヤマアラシ+ニンジャ、とでもいったモチーフ混合感のあるデザインが印象的で、なかなか良い宇宙獣士でありました。
 チェンジマンはナナを連れて学校へと戻り、文化祭のフォークダンスに参加。なにやら飛竜がナナにモテている気配が漂うが、 ほのぼのはそこまで。
 ナレーション「剣飛竜は、普通の女の子だと言い張ったナナの気持ちが、痛いほどわかっていた。しかし、 ナナが普通の女の子で居られるのも、今夜限りであると確信していた。ギルークと、アハメスに見つかった以上、 せっかく人間の世界に溶け込んでいた、ナナの生活は、もはや、平穏である筈がないのだ」
 次回――豪速球のサブタイトルで、なんか凄いものが!
 いよいよギルークが本格的な戦線復帰を成し遂げそうという事で、落ち目加減のアハメスとの因縁がどう転がるかなど、楽しみです。 アハメス様には出来る限り、派手に、転げ落ちて最期を迎えていただきたい。そして副官コンビは、 節操なく長い物に巻かれて尻尾を振ってほしい(笑)

→〔まとめ8へ続く〕

(2020年9月22日)

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