■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ6■


“苦しい時こそ見せ場だぜ
ピンチがチャンスだ チェンジマン”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第31話「暴け!バズーの謎」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 てっきり曽田さんかと思ったら藤井先生が3連投で、見所は、念力獣士に操られ、凄いスピードで地面を走る土偶人形。
 「おお、まさしくスペースドール」
 かつてバズーの誕生を知った予言者が、その正体を記録して宇宙に放ったスペースドール(見た目は遮光器土偶) ――それが地球にある事を知ったバズーは、自らの正体発覚を防ぐ為に、宇宙獣士にドールの確保を命じる。一方、偶然にも、 昔から家にあった人形としてそのドールを所持する少女と知り合ったさやかは、獣士が奪った人形を追いかけ、ダッシュ。
 獣士の念力で吊られるとかなり高い位置から凄い勢いで地面に叩きつけられ、更に電信柱に押し潰されるという、 歴代でもなかなか見ないレベルの生身ダメージ。
 「スペースドール……スペースドール……」
 「ただの人形。バズー様は何を怯えているのです?」
 「スペースドールは、バズー様の正体を知っておる。その正体の中に、バズー様の弱点があったとしたら?」
 悪い顔になってチラリと牙を覗かせるギルークに、しっかりブリッジを盗聴しているバズー様のお仕置きビームが炸裂。
 「ギルーク……貴様も儂の正体を知りたいのか!」
 「ひぃ! 滅相もございません! わたくしは、そのような、大それた事は、考えておりません! ハイ!」
 貫禄たっぷりのバズー様と、ひたすら低姿勢で情けなく許し請うギルーク。
 「……バズー様の正体と、弱点」
 そして星の荒野にミステリアスに佇むアハメスと、三者の描き方は絶妙。ギルーク司令も、 このまま小物路線とは思いたくないのですが……頑張れ。
 地球では、獣士の攻撃の余波を受けた少女が高熱を出して病院に運び込まれ、バズーの秘密を隠したスペースドールは、 少女にとっては“家族のように大事な人形”である事が強調されるのですが、いくら大事といっても、宇宙獣士(ゴズマ) に狙われているとわかりきっている人形を、預けっぱなしでいいのか。
 それとも、また囮に使うつもりなのか。
 「スペースドールは地球にあったのか」
 そして、重々しく呟く伊吹長官は勿論、スペースドールの存在と秘密を知っていた(笑)
 ……改めて、後の『超力戦隊オーレンジャー』の三浦参謀長は、伊吹長官の正統後継者であった事に思い至ります。
 バズーの正体がわかれば倒す方法も判明するかも、と盛り上がる電撃戦隊だが、さやかは少女への情を見せ、 呼吸器つけて意識不明レベルの少女が元気になるまでは、大事な人形としてそっとしてあげてほしいと具申。
 生死の淵にある(描写としては曖昧ですが……)少女を勇気づける為に人形が必要、という理由付けはわかる事はわかるのですが、 同時に、持っているだけでゴズマに命を狙われるので、命の危険レベルがほぼ一緒の為、どうも無理のある展開に。
 だがあくまでも、ドールを遠隔念力で入手しようとする獣士、子供には優しい人なのかもしれない。
 (守らなきゃ、ゆかりちゃんのお人形を。バズーを倒す為にも)
 一旦はヒドラ兵に奪われかけるドールだが、それを奪い返した飛竜が戦隊恒例の雑なパスを送り、ドールを抱えてさやかは逃走。
 “少女を元気づける為のお守り”を“獣士から守る為に結局は病院の外へ持ち出す(少女の身辺から遠ざける)”事になっており、 その場しのぎのチェンジマンの対応が、話の混迷に拍車をかけていきます。
 「はははは! スペースドール、地球の女には似合わないわ」
 そこに現れたアハメスがマジカルビームでさやかを攻撃し、ゴズマ側の思惑が入り乱れているのは、面白いのですが。
 ドールへと手を伸ばすアハメスだが、左手に新装備の杖を握り、本当に魔法中年にクラスチェンジしたギルークがシーマを従えて登場。 アハメスに対抗して高い所から姿を見せ、久々に貫禄ある物言いの一方、右手で柱にしっかり掴まっている姿が若干間抜けなのですが、 これ、きちっと捕まっていないと本当に怖いところなんだな……というのが伝わってきます(マントとか、風をはらむ衣装でもありますし)。
 バズー様の正体を知ってどうするつもりだ、と自分の事を棚に上げたギルークの恫喝にアハメスは引き下がり、 首尾良くドールを入手しかけるギルーク陣営だが、目を覚ましたさやかがブレスレーザーで奇襲をしかけ、レッツチェンジ。 念力獣士と4人も追いついて乱戦に突入する中、パワーシンボルの光に反応したのか、 ドールの中に隠されていた予言者のビデオメッセージがホログラフィで浮かび上がる。
 「バズーと戦う勇者よ。その正体は――」
 隠蔽するどころか全国に公開されかけたバズーの正体だが、勿論いいところで予言者が自爆、じゃなかった、念力獣士のビームにより、 ドールは木っ葉微塵に砕け散ってしまう。
 怒りのチェンジマンはゴズマに報復の刃を向け、“一人の少女の人形への思い”も、“大宇宙にはびこる悪の打倒”も、 どちらも大事にしてこそヒーロー、という姿を描く狙いだったのかとは思われるのですが、ドールの秘密より少女の気持ちを優先したい、 と言っておきながら、いざビデオメッセージが流れ出すと固唾を呑んで見守ってしまい、それが原因で人形を破壊されるので、 優先順位を貫けない上に、ヒーローとして敗北してしまうという、どうにも締まりの悪い展開。
 マーメイドが少女の為に、ドラゴンがバズー打倒の願いを託した予言者の為に、それぞれ怒りを見せるというのも、 ミクロとマクロを共に守ろうとするヒーローというよりも、少女のドールを守る事を最優先にしていなかったように見えてしまい、 スペースドールを守る事の意味と、それにまつわるヒーローの志を巧く重ねる事が出来ないままで、 そこから繋がるバトルの盛り上がりを欠いてしまいました。
 念力と透明化、瞬間移動に加えて分身までする獣士に苦戦するチェンジマンだが、全員の電撃フラッシュ (パワーシンボルが浮かび上がって、閃光を放つ)により分身を破ると、マーメイドビートウェイブからパワーバズーカでフィニッシュ。 巨大戦でも獣士の多彩な攻撃に苦しむが、サンダーボルトで撃破するのであった。
 人形の欠片を拾い集めたさやかは服を着せてなんとか修復すると、車椅子で出歩けるようにまでなった少女にそれを返し…… 重症の少女を勇気づける為のアイテムだった筈のドールが壊れても少女が快復している為(その後の経過にはプラスに働くだろうとはいえ)、 物語中で二つの意味を持ったドールの役割さえ見失われ、終始、ドールに与えた二つの意味が物語の展開と噛み合わないまま終わってしまうという、 残念な回でした。
 次回――まさかの天才少女再び。

◆第32話「ナナ! 危険な再会」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 テクノ惑星のリゲル人(13−14話に登場した天才種族)の少女が生涯に一度だけ放つリゲルオーラを浴びた者は、 スーパーパワーを得られるのだ! と突然明かされる追加設定。
 「そうだな。もはやおまえ自身の力ではチェンジマンを倒せそうにないからな」
 マグネシャワー作戦失敗の責任を取っての即時解雇は免れていたギルークは、スーパーギルークになりたい、とバズーに申し出るも、 ふーん、やりたいならやってみれば? とドライな反応を受け、予告の映像からは既に色々とダメそうなのですが……が、 頑張れ!
 その頃、地球。善良な八百屋夫婦の元で暮らしていたナナだが、そこにヒドラ兵が強襲。 電撃基地ではナナの残していったイヤリングが激しく明滅し、5人は異変を感じた長官の指示で手分けしてナナを探す事に。
 イヤリングの反応を確かめながら駆け回る飛竜だが、飛来した謎の宇宙生物(ミニドラゴン)にイヤリングを持ち去られてしまい、 それを追いかける内にナナを発見。
 ギルーク達に囲まれたナナを助けるべく、飛竜は歩道橋から颯爽と飛び蹴りを決め、
 −−−−−
 「ナナちゃん、困った時や辛い時、寂しい時には、必ずチェンジマンに会いに来てくれ。俺達は、いつだって君の力になるんだからね!」
 「その時になったら、必ず俺が教えに来よう!」
 「新平くんは地球の子供として元気いっぱい生きていく。俺達はそれを見守り、いつでも力になってやるんだ」
 −−−−−
 という、前半戦で積み重ねてきたチェンジマンのヒーロー像が凝縮される、大変格好良い一蹴り。
 ブーバとシーマを同時に相手取り二対一で戦うドラゴンだが、両者のコンビ攻撃、更にギルークの二刀流を受け、 追い詰められた所にクルーザーで仲間達が駆けつけ、ナナを救ってなんとか一時撤収。 謎のミニドラゴンはテクノ惑星で一緒に暮らしていたナナのペットだと判明するが、ナナは飛竜の問いかけにも、 リゲルオーラの秘密を隠す。
 そこへナナを探す八百屋一家の声が聞こえ、家族の元に戻ろうとするナナと、危険を諭すチェンジマンのやり取りの中で、 本来の家族も故郷も失ったナナの幼さが描かれ、力強く地球で生きていこうとするも、公園で行き倒れていたところを拾われた、 というナナの回想が壮絶。
 世間の冷たい風を浴びるも、人の優しさに触れて生きながらえたナナの、せめて一家にお別れを言いたい、 という願いを聞き入れたチェンジマンは、八百屋に戻ったナナを物陰からそっと見守るが、このままでは上官更迭、 副官の地位も先行き不明という、遠征軍解体の危機に余裕の無いブーバとシーマが間断なく八百屋を襲撃し、 またもヒドラ兵に連れ去られてしまうナナ。
 テンポの速い展開の中で幹部クラスの殺陣が連続するのは見応えがあり、炸裂するシーマのハイキック!
 「ナナちゃんは俺達が守る!」
 ギルーク一党と再び正面から激突するチェンジマンだが、その時、二つ首の怪鳥ジャンゲランにまたがり、 高笑いするアハメスが雷鳴と共に登場。毎度毎度ですが、アハメスの高笑いは下品さが無く、「おほほほほ」が実写に落とし込まれている、 というのが実に好キャスティング。
 「アハメス! いったい何の真似だ?!」
 「ギルーク! おまえにリゲルオーラは勿体ないわ!」
 アハメスは怪鳥の上でヴァルキリー感あふれる白銀の鎧姿に変身し、BGMもあいまってこれがなかなか格好いい。そして、 予告で見せていたこのモードがスーパー化でなくて良かった、ギルークの為に本当に良かった。
 「貴様ついに本性を現したな!」
 「リゲルオーラを浴びるのは、この私」
 「俺に取って代わろうとしても、そうはいかんぞ!」
 この二人がすっかり仲が悪いのは残念ですが、これも全ては星王バズーの仕掛けた非道なサバイバルレースのなせる業なのか。
 「リゲルオーラ? 両方で奪い合おうとしているリゲルオーラとは、いったいなんなんだ?」
 そしてチェンジマンは、目の前で展開される痴話喧嘩からすっかり置き去りにされていた(笑)
 アハメスは上空から怪鳥のガスと火炎放射による攻撃を仕掛け、更にそこに、ギザン・ジェラー・ダブン、のアハメス三銃士が登場。
 ジェラーのカラーリングが、後の『重甲ビーファイター』ジャマール3幹部の1人ジュラそっくりなのですが、名前といい、 元ネタだったりするのでしょうか。そう見ると、ダブンも、髪型がシュバルツと一緒(こちらデザインは、 次作のレー・ガルスに継承される感)。
 三つ巴のナナ争奪戦が展開し、ギルークへ向かって飛んできた巨岩を身を挺して防ぐブーバが変に格好いい(笑)  怪鳥による上空からの攻撃は思い切った俯瞰の映像が迫力たっぷりで、三銃士は逃げたナナを追い詰めるが、 そこに突っ込んでくるミニドラゴン。アハメスによる足止めを食うチェンジマンとギルーク一党は、 怪鳥の巻き起こす嵐で仲良く崖を転がり落ち、ギルーク司令がどんどん、別の方向で面白い事になっていきます。
 違う、そっちじゃない、ギルーク。
 吹き付ける暴風に身動きもままならず、このままではナナは三銃士に確保されてしまう……追い詰められるチェンジマンだがその時、 ただでは崖を転がり落ちない事には定評のある転落の匠は、起死回生の一手をキラッと閃く。
 「シャトルベース、発進!」
 直後、テーマソングと共に稲光と黒雲をかき分けて登場するシャトルベースが滅茶苦茶格好良く、 パイロット版以来となる掘監督のスピード感溢れる演出と、力の入った特撮班の映像がガッチリ噛み合って盛り上げてきます。
 シャトルからのビーム攻撃で怪鳥がひるんだ隙に合体したチェンジロボは、暴風雨をものともせずにアハメスに迫り、近い、 火炎放射が近い。
 「アハメス! 地獄に落ちろ!」
 ガスと炎をシールドで防いだチェンジロボは、チェンジロボビームを浴びせ、アハメスは撤退。その勢いのまま、 ロボでナナの元へ急ぐと、三銃士を空襲。そして、掟破りのダイレクトパンチ。
 ナナはその隙に付近の洞窟に駆け込むが……その体には異変が。
 ナレーション「何をナナはこんなに怯えるのか? リゲルオーラの前兆であろうか」
 何故、ナナはリゲルオーラについてチェンジマンに説明しないのか? そして、チェンジマンからも姿を隠そうとするのか?  をサスペンスとして、つづく。
 次回――二刀流構えて特攻モードのギルーク司令、ラストバトル?! サブタイトルに「?!」とついているので、 多分大丈夫だと思う大丈夫じゃないかなまちょっと覚悟はしておけ。
 ギルークはかなり好きなので、ここでリタイアだと寂しいですが、アーマーアハメスが思ったより格好いいのも悩ましい。

◆第33話「ギルークの最期?!」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「怖いか? 宇宙の墓場、そんなに怖いか! ぬはははははは……」
 ナナ確保に失敗し、おめおめと戻ってきたギルークを宇宙空間に放り出したバズーは、ダークネビュラ送りをちらつかせてギルークを恐慌状態に陥れ、 改めてその強大な力と、恐怖によって他者を支配する姿を強調。
 地球では怪物に怯えながらもナナを探し続けていた八百屋一家が、ナナのハンカチを加えたミニドラゴンを拾うが、そこにギルーク一党、 更にはアハメスが出現する。
 「またしても邪魔を! 何故だアハメス? かつては共に手を組んで戦った仲ではないか?!」
 忘れられてそうで心配だったので、拾ってくれて良かった。
 「ギルーク、おまえの力はもはや私以下」
 だが、フられた。
 「私の故郷アマゾ星を再興するためには、私一人で存分に力を振るった方が早いと覚ったのさ」
 なんとなくギルークの方が未練がある(じっくり話せばわかり合える筈と思っている)節が見えるのに対し、 アハメスがばっさりと切り捨てつつ、両者も一面的にはバズーの犠牲者である、と後半戦に向けて再確認し、 この辺りが本当に今作の手堅い所。
 高いところから悠然とした微笑でギルーク一党を見下ろし(あくまで下品にならないのが本当に好キャスティング)、 怪鳥に攻撃を命じるアーマーアハメス様は前回に続いて貫禄の格好良さを見せつけるが、 そこへ初手からチェンジメカで攻撃を仕掛けるチェンジマン!
 怪鳥に次々と機銃やミサイルを撃ち込み、五人の戦士に遠慮は要らない!
 たまらずアハメスが撤退すると、続けてCメカ(地上用)でギルーク一党のヒドラ兵を轢きに行き、 五人の戦士に躊躇は要らない!
 そしてトドメとばかりに、ひるんだ一党めがけてミサイルを放ち、五人の戦士に慈悲は要らない!
 前回の学習を活かし、開幕から怒濤の連続攻勢を仕掛けるチェンジマン(メカ)ですが、手前にどーんとCメカを置き、 着弾したミサイルの白煙が画面奥で盛大に噴き上がるちゅどーん感が、なんとも言えない笑いのこみ上げてくる火薬大好き人間にはたまらない合成カット。
 八百屋一家を救出したチェンジマンは、やむなくナナの事情を説明。それを聞いた八百屋兄弟は、以前にナナと洞窟探検した思い出を語り、 「本当は妹が可愛かった」と前回の憎まれ口をフォロー。チェンジマンは洞窟に隠れていたナナを発見するが、 「もう構わないで下さい」と5人を拒絶するナナは、洞窟を飛び出してしまう。
 「私……私は、もう今までの自分ではなくなってしまうの。楽しかったあの時代に、もう決して戻れない!」
 涙ながらに駆けるナナを追うチェンジマンだが、ギルーク一党、そしてとアハメス三銃士に挟み撃ちを受ける事に。
 「来たかアハメス! よってたかってこんな小さな子供を! ――レッツ・チェンジ!」
 「「OK!」」「「おう!」」
 「「「「「チェンジマン!!」」」」」
 飛び交う閃光、弾け飛ぶ岩壁、三つ巴の大争奪戦が開幕し、ドラゴンとマッチアップするブーバは相変わらず、 一対一では遅れを取らないのが武闘派幹部としての良いところ。シーマvsマーメイド、三銃士vs青桃黒、 がそれぞれ一対一でぶつかり合うも苦戦を強いられている間に、逃走するナナを追うギルークとアハメス@怪鳥。
 怪鳥と遜色ないスピードで地上を走るギルーク → 超足速い
 そのギルークに差を詰めさせないナナちゃん → 超足早い
 こ、これが、覚醒しつつあるリゲルパワーの力なの……?!
 アハメス視点の空撮で、前方をダッシュする小柄な人影を、あの衣装でダッシュして追いかけるギルークの図、 はしっかりとスピード感が出ており、共にに吹き替えだとは思うのですが、上手く足の速さを揃えたなぁとか、 撮影時の指示はどうやって出したのだろうとか、フレームの外が思わず気になってしまいます(笑)
 足止めを食うチェンジマンは三銃士ごとゴズマ戦闘機の空襲を受けるが、逆にその隙を突いてシャトルベースを召喚し、 アースコンバージョン。
 電撃剣燕返し(この流れるような立ち回りが格好いい)でゴズマ戦闘機を撃墜すると、勢いに乗って「お前達も許さないぞ!」 とブーバ・シーマ・三銃士にチェンジロボミサイルをぶちこみ、前回今回と通常の巨大戦(エピソード宇宙獣士の巨大化) が無い中でロボの出番確保を工夫した結果、アクセルのベタ踏み具合が大変な事に。
 次回以降、全ての宇宙獣士にチェンジロボミサイルを叩き込みそうな勢いですが、 どんな能力を持っているかわからない宇宙獣士に最初から虎の子のチェンジロボを繰り出すのはリスクが大きすぎますし、 小回りが利かないという難点もあり、地球を守る戦士には周辺環境への配慮もまた求められるのであります。
 「ナナよ、リゲルオーラを出せ。さあ、出すのだ」
 ナナを追い詰めるギルークだが、寸前でチェンジマン、更にアハメスが襲来し、ギルークに容赦なく怪鳥ファイヤーを浴びせたアハメスは、 遂にリゲルオーラを浴びる事に成功。陶然とした表情を浮かべると怪鳥の背に乗ったまま飛び去り、一方オーラを放ったナナは、 予想はつきましたが、急成長。
 リゲル人の短い子供時代を終えると、八百屋一家に「とても幸せでした」と伝えてほしいとチェンジマンに頼み、走り去ってしまう。
 「……貴様達を倒す! チェンジマンさえ倒せば、バズー様は許して下さる!」
 すっかり取り残される形になったギルークは、二刀流を構えるとチェンジマンへ向けて最後の突撃。白桃のコンビ攻撃、 男衆のズーカ一斉射撃のいずれも弾き返す圧倒的な戦闘力を見せるが……
 「パワーバズーカだ!」
 一撃必殺の切り札が放たれ、辛くもそれを防いだかと思われた二振りのギラス剣が砕け散ると、派手な斬られ役ぶりを見せ、 その場でぐるぐるとよろめき回るギルーク司令。
 「おのれ、チェンジマンめ……」
 一歩を踏み出すかと思われた時、その体はどうと倒れ伏し、そのまま木っ葉微塵になるかと思われたギルークだが、 宇宙からの閃光にキャプチャーされると、バズーによりダークネビュラへと放り込まれてしまう。
 「宇宙の墓場へ行け! 冷たく暗い死の世界で、地獄の苦しみを味わいながら朽ち果てろ」
 戦死すら許さずあくまで自らの手で処刑を下し、瀕死のギルークに残された最後の尊厳すら徹底的に奪うバズーですが、 サブタイトルは「?!」だったり、これは、後々の復活フラグだと思いたい……
 ナレーション「ギルークは葬られた」
 な、ナレーションさん?!
 真面目な話としては、この時点では処遇が決まっていなかったのでスポーツ新聞の見出し的扱いになったのかもですが、 このまま退場させるのはあまりに惜しいキャラなので、復活を期待したいです。まあこの流れで復活すると、 某キャラと丸被りの感もあるので、そこをどう工夫してくるのかが見たいというのも含め、カムバック司令。
 夕陽が沈む中、ナナを探し続ける八百屋一家の横を、セーラー服姿のナナが通りがかり、 声をかけようとするも心の中に留めて去って行く……という苦い光景を見つめるチェンジマン。 残されたナナのイヤリングに視線を落とす飛竜の手の平を握り、様々な想いを込めて「剣……」と呟く疾風が滅茶苦茶格好良く、 00年代以降が取りざたされる事が多いですが、東映任侠ものの残り香が漂う時代というのも含め、 曽田戦隊における男同士の関係性というのも、なかなか濃厚だと思うわけです。
 再び前を向く飛竜の突き出した拳に、5人はそれぞれの手を重ね、スーパーアハメスとの戦いの予感に、 闘志をたぎらせるチェンジマンであった、でつづく。
 ギルーク退場編、というよりは、アハメス強化編、といった形で、 怪鳥からコスチュームチェンジから三銃士までつぎ込んでアハメスが根こそぎ持っていってしまいましたが、頑張れギルーク、 と思いつつも、新コスチュームもばっちり着こなすアハメス様が素敵すぎて、アハメス派に鞍替えしそうです(笑)
 成長後のナナが八百屋一家とすれ違う所まで盛り込まれたのは、何やら再登場の気配も窺わせますが、そういえば重傷のペット (ミニドラゴン)が電撃基地での治療シーン以降に放り投げっぱなしなので、ここからの戦いの中で、拾われてくれる事も期待したいです。
 次回――いよいよギルークを追い落としたアハメス怒濤の大攻勢!

◆第34話「恐ろしきアハメス」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「ギルークのものを横取りしたくせに」
 リゲルオーラによるスーパーパワーを手に入れた事を報告してくるアハメスをほいほいと認めるのではなく、 おまえそういう事する奴が簡単に信用されると思うなよ? と牽制球を投げるのが実に星王バズー様らしい呼吸で、 引き続き隙の無いラスボスぶりを見せてきます。
 「ギルークより、我が身に付けた方がお役に立つと思ったからでございます」
 「自惚れ屋め。よかろう。新司令官にしてやろう」
 実力と美貌を兼ね備えた女王の足下に存在する陥穽もまたバズー様から指摘されるも、 アハメスが母星復興の為に首尾良く遠征軍司令官の座に収まった頃、電撃基地では飛竜がミニドラゴンを抱きながらうつらうつらしており、 忘れられていなくて良かった。
 「徹夜で看病してたの?」
 「ああ。もう、こうして励ましてやるしかないと思ってね」
 尽くせる手は尽くせたが容態の思わしくないミニドラゴンを心配する電撃戦隊だが、そこに、 街で奇妙な交通事故が続発しているとの急報が入る。それは、スーパーパワーによりアハメスが作り出した見えないエネルギーの壁 ――ハードウォール――によるものであり、いきなり、幼稚園バスが壁と衝突事故を起こし、車内で大量の園児が倒れているという大惨事。
 「新司令官アハメスの、総攻撃を受けてみろ!」
 急行したチェンジマンはスーパーアハメスと三銃士、更にはブーバとシーマに取り囲まれる。
 「ブーバ! シーマ! お前達もアハメスの配下に成り下がったか!」
 「顔面金色の中年男と大浴場で語り合うより、女王様の鞭にしばかれる方がいいに決まっているだろうが!」
 「今は力こそが全てなのだ!」
 処遇を心配……する事もなさそうと思っていた副官2人は、以前から気軽にレンタルされていた事もあり、 案の定すんなりとアハメス配下として登場。
 ドラゴンの言葉は、元上官への義理立てとか無いのか見下げ果てた連中め、というニュアンスなのでしょうが、 “成り下がった”もなにも、やっている事は1ミリも変わらないと思います!
 副官コンビ&三銃士に手も足も出ず追い詰められたチェンジマンは、更に見えない壁の迷宮で行動を制限され、 上空から怪鳥の炎に炙られる事に。
 こんな時はパワーバズーカだ! と壁に対しても火力勝負の力押しを敢行するチェンジマンだが、 衝撃! パワーバズーカ通用せず!
 「なんという事だ! パワーバズーカはチェンジマンの必殺武器! それが効かないなんて!」
 「はははは、わかったか、スーパーパワーの恐ろしさ」
 伊吹司令は狼狽し、アハメスは艶然と笑い声を響かせ、幹部交代をともない2話かけて入手したスーパーパワーが、 「壁を作る」はどうなのかと思ったところで、これまで数々の危難を一発逆転してきたパワーバズーカが通用しない事で、 これ以上なく見せつけられるスーパーパワーの恐ろしさ!
 「新司令官の門出に、まずお前達から血祭りにあげてやる!」
 チェンジマンは不可視の壁でいたぶられながら火炎を吹きかけられるという、なかなか見ないレベルのエグい手段で徹底的に追い詰められ、 辛くも分散して撤収。だが基地への退却途中、壁に突っ込みかけた医療用の車を止めようとして、なんか被害を広げてしまう飛竜。
 ……ニュアンスとしては、止めようとしたが間に合わなかった、であったのでしょうが、映像的には、 急に飛び出してきた飛竜に驚いてハンドル操作を誤った末に壁にぶつかったようになってしまい、 飛竜が出てこなかったら出てこなかったでどちらにせよ壁にぶつかったとはいえ、やや演出が派手にやり過ぎた感。
 冒頭で発生した、幼稚園バスの事故にともなう臨時救護所へ、輸血用血液を運ぶ途中だった救急隊員から血液を託された飛竜は救護所へ急ぎ向かうが、 三銃士黒と出会ってしまい、必死の逃走。血液を守りながら黒獣士に嬲り者にされる飛竜だが、 そこへ飛竜の退却失敗を知り現場へ駆け戻っていた疾風が辿り着き、会心のフライングクロスチョップ!
 「おい、パワーバズーカが効かないって事はな、地球の危機なんだぞ!」
 「わかってる! だが幼い命を見殺しには出来ない!」
 基地に戻ってハードウォール対策を練るはずが、大事の前の小事に命がけで関わる飛竜を咎める疾風だが、 もちろん事情を聞けば小事を捨てるという選択肢は採れる筈もなく、2人で協力して血液を守る事に、 というのが前回ラストからの流れも汲んだ熱い展開。
 「しかし、ハードウォールを突破しない限り、その血液を届けるのは無理なんだぞ!」
 「ああ。今度ばかりは俺達は無力だ。それでもやってみせるのがチェンジマンじゃないのか!」
 「……よし! やろう!」
 スペースドール回で上手く行かなかった、マクロとミクロの重ね合わせ、地球も守る、子供の想いも守る、 両方やってこそチェンジマン(ヒーロー)ではないか、というテーゼの再挑戦ともいえますが、 目の前の幼い命を見殺しにしたらもはやヒーローではない以上、飛竜の選択肢が正しい一方で、 チェンジマンは本気で宇宙規模の戦争における地球守備の最前線に居る為、小事を優先する事で広がる大事の被害規模が大きすぎて、 ややこのテーゼとは相性が悪いな、というのが正直。
 大なり小なり、このテーゼはそのジレンマ、葛藤こそが焦点ではあるわけですが、作劇的にはせめて、○○を守る方、○○を急ぐ方、 とメンバー分割をしたい世界観ではあり、当時の尺ではそこまで収めるのは苦しい、というのはその後の課題になっていく部分、 といえるでしょうか。
 必死の逃走を続ける飛竜と疾風は、地下までは壁が届かない事に気付くと、下水道をくぐり抜けて救護所の間近まで辿り着くが、 後一歩という所でアハメスに見つかり道を閉ざされてしまう。
 「この向こうには、血液を待ってる子供が居るんだ」
 体当たりを繰り返すも無情に弾き返され、集結した三銃士と副官コンビに退路も断たれて絶望的なその時、青白桃がなんとか合流し、 赤黒もレッツチェンジ。だがアハメスの作り出した壁に完全に閉じ込められたチェンジマンは、 ハードウォール無差別電撃デスマッチにより散々に痛めつけられ、バックで主題歌が流れているのに、 ひたすらチェンジマンの苦闘が続くという、執拗なピンチの描写によりスーパーアハメスの恐ろしさが刻み込まれます。
 もはや、チェンジマンも、地球も、大星団ゴズマの前に屈してしまうのか……だがその時、黒獣士に投げ飛ばされた際のショックで、 脳の回路に電撃が走る墜落の匠。
 「……そうだ! このハードウォールを逆に利用するんだ!」
 ドラゴンはかさに掛かる黒獣士の突撃を回転ジャンプでかわすと、その勢いを利用して壁に叩きつける事に成功。 間髪入れずにパワーシュートをたたき込み、サンドイッチ状態で零距離からウォールの追加ダメージを与える、という凶悪な反撃を決め、 叩き落とされれば叩き落とされるほど、それだけ匠はでっかく強くなる!
 弱った黒獣士をパワーバズーカで爆殺し、遂に三銃士の一員を撃破するチェンジマン。いつものようにギョダーイがやってくるが、 壁に阻まれて巨大化光線を撃てず、慌てたアハメスが壁を解除した隙に、ドラゴンは血液を届ける事に成功。後は必殺サンダーボルト…… かと思われたが、なんとスーパーアハメスのアシストにより、チェンジロボは球体状のハードウォールの中に閉じ込められてしまう!
 ハードウォールは電撃剣さえ歯が立たず、チェンジマンは苦戦してもチェンジロボは無敵だろう……と思っていたら、 チェンジロボまで苦戦する、という衝撃の展開。1話にして、チェンジマンの切り札が二つも通用しない、 という思い切った展開は非常に驚きました。
 巨大黒獣士によってボールのように転がされるチェンジロボは、文字通りに手も足も出ないままエネルギーを消耗していき、 活動限界まで後わずか。今度こそチェンジマン最期の日かと思われたその時――基地で治療を受けていた瀕死のミニドラゴンが目を開くと、 ナナのイヤリングをくわえて飛び立ち、アハメスに体当たりを仕掛けると巨大な炎のドラゴンとなり、チェンジロボに迫る黒獣士めがけて、 特・攻。
 先日ペガサス特攻があったばかりですが、まさかのドラゴン特攻により大爆発が起こると、それが巨大な地割れを生み、 マグマを噴出させ、更に地球の内部から放射されたエネルギーがアハメスを怪鳥から転落させる。
 「なんだ今のエネルギーは?!」
 かなり高所から落下したにも関わらず、何事も無かったかのように立ち上がるアハメス様、チェンジドラゴン、 真のライバル誕生の瞬間であった。
 一方、エネルギーの余波で高々と吹き飛んだ黒獣士とチェンジロボは次々と地表に叩きつけられ、その衝撃で砕け散るハードウォール。
 「みんな、起きろ! 頑張れ!」
 いち早く意識を取り戻した高所墜落のプロフェッショナルの檄に応え、満身創痍で立ち上がったチェンジロボは、 いつもより溜めを効かせたスーパーサンダーボルトでカウンター気味に黒獣士を切り裂き、辛うじてこれに勝利する。
 だが、チェンジマンも、チェンジロボも限界寸前……電撃剣を支えに立つのが精一杯で、前進もままならずによろめくチェンジロボ、 の姿を大写しにしながら、つづく。
 ラスト、チェンジロボが極めて人間くさい芝居を行うというのは、自律型ではないロボの描写としては割と思い切った演出に思えますが、 一種の掟破りを行う事により、かつてないチェンジロボの苦境が劇的に描き出され、非常に印象的なシーンとなりました。
 本編の8割ほどチェンジマンが苦戦し通し、ラストでは宇宙動物が犠牲となり、黒獣士を撃破して一矢報いたものの総合的には判定負け、 といった感がありますが、そう考えて振り返ると、マクロ(星間侵略戦争)でほぼ敗北しつつ、ミクロ(人命救助) においてヒーローが踏み留まる、という構成になっていたのだな、と。
 ミニドラゴンは、拾うにしてもまさかの特攻という犠牲となりましたが、思えば壊滅したテクノ惑星の生き残りであったので、 ミニドラゴンなりの、ゴズマへの報復でもあったのか、否か――果たして、チェンジマンの窮地を救う事となった謎のエネルギーは、 地球の起こした奇跡なのかそれとも……次回も絶体絶命の危機が続くチェンジマンにアースフォースは救いの光を見せるのか?!
 そうだ、今こそ、アグトルニーーーック!!
 げふんごふん、なんか混信しました。
 当方『ウルトラマンガイア』感想をお読みで無い方は、気にせずスルーして下さい。
 今回からEDにギルークの代わりにアハメスの姿が入り、名実ともにスーパーアハメス編に。 果たしてチェンジマンがこのピンチをどう乗り越えるのか、楽しみです。

◆第35話「地球よ! 助けて!」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「あれはアースフォースだったんだ……俺達にはアースフォースがあるんだ! 苦しい時には、 必ず俺達を助けてくれるアースフォースが!」
 「こんなところでやられて、たまるか! 俺はアースフォースを、浴びるんだ! アースフォースさえ浴びれば、 アハメスなんかに、負けないんだ!」
 「アースフォースが呼んでる! アースフォースが俺を呼んでるんだー!」
 ミニドラゴンの尊い犠牲と、地殻から噴出した謎のエネルギーにより辛くも黒獣士を撃破したチェンジマンだったが、 勝利の余韻に浸る間もなくアハメス軍団の攻撃を受け、アハメスもう一つのスーパーパワー・ハードアタックにより、 変身不能になってしまう!(詳しく説明はされないのですが、反アースフォース――星の力――的な作用があるのか)
 チェンジマンはまたも散開しての逃走を余儀なくされ、うち続く地震により絶体絶命の死地を逃れた勇馬は、 自分を守る力の存在を感じ取り、アハメス軍団の追撃を振り切りながら山へと駆ける。
 しかし――
 「大空! それはアースフォースではない! 聞こえないのか大空?! アースフォースじゃないんだ!」
 「うわぁぁぁぁ! アースフォース! アースフォース!」
 前回ラスト、そして次回予告からてっきり、追いアースフォースによるアグトルニックで強化逆転劇になっていくのかと思っていたら、 謎のエネルギーは火山活動による地殻変動に過ぎないと結論が出され、もはや「狂奔」と言って差し支えない状態の勇馬を、 残りの4人が必死に止めようとする、という予想外の方向に転がっていく事に。
 「なぜ信じないんだ?! アースフォースの不思議な力を……」
 「完全に、アースフォースの虜になっちまってるぜ」
 誰のせいだ。
 アースフォースの御加護を否定された勇馬は虚ろな表情で座り込み、しばらく鳴りを潜めていた「幻想」が再び顔を出すのかと思いきや、 地球の起こす奇跡に飛びつこうとする勇馬の姿が、精神的に追い詰められた末の逃避行動扱いされるという、物凄い展開。
 散開から焦点が勇馬に絞られた時は、ギルークピラニア回のように、 強引に個人回要素を持ち込んでまた中途半端な事になってしまうのでは……と危惧したのですが、 5人の中で精神的な弱さを徹底的に突いても話が成り立ちやすいのは勇馬だな、となるほど納得。また、 勇馬が若干割を食う形にはなっていますが、前回の赤黒コンビとの対比が成立する事で、その姿により強烈なインパクトが与えられています。
 麻衣とさやかは、この際、アースフォースにすがれるものならすがりたいという内心をわずかにこぼし、 ここで女性メンバーを精神的に脆く描いてしまうとどうしてもニュアンスが変わってしまうのでそれを中心にする事を避けつつ、 勇馬だけが弱いわけではない事を示す、というのが丁寧なバランス。
 「アースフォースだぁぁぁ!」
 「大空ー!」「大空さーん!」「目を覚ませーーー!」
 一度は足を止めた勇馬だったが、再びの地震にやにわに立ち上がると走り出し、何かを求めるかのように虚空に手を差しのばす、 ゾンビのような姿勢が凶悪で、私まだまだ『チェンジマン』を侮っていました!!
 ひたすらアースフォースの救いを求める勇馬は、危険も顧みず遂に山腹に辿り着くが、 見上げた山の赤い輝きがアースフォースではない事を認めざるを得なくなってしまう。
 「アースフォースじゃないなんて、そんな馬鹿な……! 俺が試してやるぅぅぅ!」
 それでも火山に向けて走っていこうとする勇馬を、遂に殴り飛ばして止める飛竜。
 「未練がましいぞ!!」
 「……そんな事言ったって……アースフォースがなきゃ勝てねぇじゃねぇか!! どうして……どうして出ねぇんだ!? どうして?!  ……どうして出ねぇんだ!」
 自分たちはもはや地球に見捨てられたのではないか……勇馬は駄々をこねるように地面に拳を打ち付け、その姿に言葉を失うさやか。 疾風は何かを飲み下すような仕草の後、引き返せない一言を、絞り出す。
 「……たぶん……一度しか出ないんだろ!」
 「そうだ。アースフォースは、二度と出ないんだ。苦しい時に頼っていたら……俺達はいつまで経っても!  真の戦士になれないだろう!?」
 今作は、第1話において“奇跡”から始まっている戦隊なのですが、“奇跡”によって力を得た戦隊だからこそ、 困った時にはまた“奇跡”が起きて助けてくれるのではなく、もはや“奇跡”は起きないものとして―― 自分たちの存在が“奇跡”の賜物なのだから――真の戦士は自分たちの力で立ち上がらなくてはいけない、と高らかに宣言。
 正直、予告の時点では、これで奇跡の地球パワーで強化というのはもう一つ面白くないし、 サブタイトルも随分情けないな……と思っていたのですが、そのサブタイトルはヒーローの陥った弱気の象徴であり、それを乗り越え、 「助けを求める」のではなく「助ける」んだ! というのが、改めてのチェンジマンのヒーロー宣言として放たれるのは、お見事でした。
 まあ、前回ラストで特攻したミニドラゴンは本当に特攻しただけだし、チェンジロボの逆転勝利は偶然の積み重ねに過ぎなかったという、 遡ってやや首を傾げる部分は出ましたが、奇跡の先へ突き進もうとするヒーロー像の勢いが、その問題点を上回る形に。
 アハメスの空襲を受ける5人だが、飛竜の檄に自分を取り戻した勇馬を中心に、レッツチェンジ。 そこに再び放たれるハードアタックだが、5人は積み上げてきた「今の自分達の力」でその苦痛を乗り越え、変身に成功する。
 「電撃戦隊!」
 「「「「「チェンジマン!」」」」
 とはいえ、奇跡の助力を否定したチェンジマンは急激にパワーアップしているわけではなく、 不断の訓練と鋼の精神を持ってしても乗り越えられない壁は壁として存在。アハメス軍団の猛攻にまたも苦境に陥る5人だが――しかし。
 「例の作戦だ、みんなに伝えろ!」
 チェンジマンにはもう一つの武器、知恵と勇気もとい戦術があるのだった!
 逃げてばかりと思うなよ、としっかり対策を検討していたチェンジマンは、ヒドラ兵の包囲を切り抜けるとパワーバズーカをセット。 だが砲口を向けた緑獣士の前にウォールが張られ、またも無駄弾に終わるかと思われたその時、くるっと反転(笑)
 無防備に立っていた背後の赤獣士を鮮やかに爆殺し、5人の戦士に騎士道はいらない!!
 「おのれぇ! 小癪な真似を!!」
 複数の強敵による包囲攻撃という苦戦の要因を逆手に取り、最大火力を囮に使う事で標的の意識を逸らして裏をかく・ ハードウォールのクールダウン時間などは恐らく既に把握済み・戦の常道は囮と伏兵・「気持ちで勝てるなら、 スペシャル○リスなんていらないですよね」、というのが物凄くチェンジマンらしい一方、 突然背後を向いて必殺攻撃という行動そのものはシンプルゆえに若干間抜けなのですが、それを見たアハメス様の、 標的が赤獣士に変わった瞬間の目が点になる表情と、(こんな作戦に引っかかったーーー!!) という屈辱の叫びが真に迫って大変素晴らしく、アクションの印象はリアクション次第でどうにでも変わる、 という基本を忠実に反映する、見事な演技と演出でした。
 巨大化した赤獣士の、ハードウォールで攻撃を防ぎつつ、自らはそれを透過する能力に苦戦するチェンジボロだが、 不意打ちの目からビームでスタンさせたところを、スーパーサンダーボルトでフィニッシュ。
 「チェンジマンの力はあれが限界。この次こそ、必ずチェンジマンを倒してご覧に入れます」
 「――その言葉に偽りはあるまいな」
 「ははーっ」
 「今度こそ、スーパーパワーの全てを見せてみよ!」
 撤収したアハメスは、チェンジマンにもはやアースフォースの助力は無い事をバズーに報告。地上では、 弱気を見せて神秘体験に救いを求め、少々気まずい勇馬を仲間達が改めて迎え入れ、麻衣とパンチをかわすのは怖いので、 土下座を敢行する勇馬だが、ミニスカさやかさんが前に立っていた為、若干以上に変態ぽくなってしまうのであった。
 かくして高まる、アハメスとの決戦の気配――通常フォーマットで進行すると満を持してのスーパーアハメスが必然的にへたれていってしまいかねないところを、 怪鳥! 苦戦! スーパーパワー! 苦戦! 三銃士! 苦戦! 知恵と勇気で逆転! と一気呵成の連続エピソードにする事で 「かつてない脅威とその打破」が鮮明になり、怒濤のままに惜しみなく決着へ持ち込もうとする、というのがかなり面白い構成。
 逆にここで引き延ばされるとガッカリになってしまいそうなので、このまま一気の展開を期待したいです。
 だが次回、気合い充実のチェンジマンの前に、あの男が立ち塞がる。鬼軍曹再び?!でこいつは凄いぜ!

◆第36話「見たか! 俺達の力」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「地球が危機の時、地球自らが発するという謎の力、チェンジマンを見出した、アースフォースはもはや出ないという事がわかりました」
 「所詮その程度の星だったのだ。小さな星のくせに手こずらせおったが、それも今日までの運命だな」
 何やら、“星の持つ力”に対して含みを感じさせるバズーの言葉の後、地球を襲うアハメスの大攻勢に対し、 決死の覚悟で出撃するチェンジマンだが、本日もハードアタックで大爆発から変身解除。揃って転落から追い打ちの崖崩れに飲み込まれ、 生身のヒーロー達が顔だけ出して土中に埋まっているという、冒頭から強烈な映像。
 「起きるんだ! 起きろー!」
 勝利を確信したアハメスは怪鳥と飛び去り、そこへ走ってきた伊吹長官は、チェンジマンを次々と土砂の中から引っ張り出すと熱く抱擁、 なんてするわけなく、疾風の顔をはたき、飛竜に裏拳を叩き込み、最近鳴りを潜めていた鬼畜生ぶりが爆発(さすがに、 さやかと麻衣の顔は殴らず、ホッとしました)。
 「みんな起きろぉ!」
 「長官……」
 「自分で立て!」
 「……無理ですよ……こんな、体じゃ……」
 「甘ったれんじゃない!」
 伊吹長官はしれっと懐から光線銃を取り出すと全員に威嚇射撃を撃ち込み、 120%期待に応える展開なのですが、あなたは何故、自分の武器だけバージョンアップしているのですか(笑)
 テクノロジー的には、13−14話のナナ初登場編で熊沢博士が用いていたゴズマ製の密輸品がベースになっているのかと思われ、 ナナちゃんが地球の軍隊(守備隊)への協力を拒む理由がそこはかとなく透けて見えます。
 「立てぇ!」
 「長官!」
 「起きるんだ!」
 生身に対する至近距離からの熱線射撃に、さすがに怯える5人を容赦なく追い立てるべく、続けざまに引き金を引く鬼軍曹。
 「殺す気ですか!」
 死ぬような目に遭わせれば、もう一度、アースフォースが出るかもしれないからな!(※独自の研究です)
 「やめてください! 長官!」
 「おお、立てるではないか」
 銃撃を止めようと食らい付いてきた飛竜に笑顔を向けると、あっさり背負い投げ。
 「立てぇ! ……君たちはまだ自分たちの力の全てを使い切っていない。持てる力の限界まで出し切ってないんだぁ!」
 「……うぁぁ! いい加減にしてくれ!俺達は必死に戦ったんだ……鬼だ……貴様は鬼だぁ!」
 「そうよ!」
 「鬼よ、鬼だわー!」
 前回ラストの決意はどこへやら、ハードアタックの恐ろしさにすっかり心の折れている5人から一斉に非難を浴びる長官だが、 基本的に鬼軍曹ロールプレイをしているので、この反応にむしろご満悦。
 「アースフォースは君たちに戦士としての力を与えてくれた。その力を信じ、自ら引き出すんだ!」
 そして勿論、勇馬より遙かにガンギマリなので、人の話は全く聞いていないのであった。
 今回通して思うのは、伊吹長官は、「チェンジマンを信じている」のではなく、 「チェンジマンを選んだアースフォースを信じている」事(笑)
 例えるなら、
 −−−−−
 「信頼して、くれますか」
 「俺たちはさ、坊やをXIGに入隊させた、コマンダーを信頼してるんだよ」
 (『ウルトラマンガイア』第13話)
 −−−−−
 というやつで、作劇としてはスポ根物の構造を継承し(引きずり)つつ、いっけん選手を信じる鬼コーチの猛特訓モチーフのようでいながら、 その実態は、オカルトへの強烈な傾倒であるというのが、伊吹長官を独自の狂気の高みへと至らせています。
 ……確かにこれ、「アースフォースは一回限りの奇跡」という認識にさせておかないと、伊吹長官が「走れ!  アースフォースが出るまで走るんだ!」と世界各地にチェンジマン養成キャンプを作り続け、人的損耗が酷い事になりそうで地球が危ない。
 一方、チェンジマンを仕留めたと思い込んだアハメスは、電撃戦隊そのものを活動不能に追い込むべく、地球守備隊日本支部を強襲。 その連絡を受け取る伊吹だが、傷ついた5人の戦士には立ち上がる力が無い……その時、伊吹とチェンジマンの前に、 黒服&黒マスクで武装した、謎の兵団が姿を見せる。
 「君たちは……」
 「伊吹長官! マシンをお借りします!」
 兵士達はチェンジマンのマシンに乗り込むと日本支部の救援に急行し、クルーザーと実弾兵器でアハメス軍団へ奇襲攻撃を仕掛けるという、 この時点で正体は察せられるので、なかなか熱い展開。
 「何者?!」
 「地球の戦士は、チェンジマンだけではないぞ!」
 だが所詮は一般兵、黒い兵団は奮闘むなしく次々と傷つき倒れていくが、 逃亡した地球守備隊首脳部の情報を得たアハメスはその追撃を優先して去って行き、その後にチェンジマンが駆けつけてくる。
 「おい! なんてことをしてくれたんだ?!」
 「あんた達が、だらしないからだぜ!」
 兵士のマスクを剥ぎ取った飛竜が目にしたその正体は――これまで共に戦ってきたサポート部隊、電撃戦隊の戦士団。
 「驚く事ないわ! あたし達だって、戦うんです!」
 「今日ばかりは、俺達がチェンジマンになれば良かったと思ったぜ! ……でも……でも俺達はチェンジマンに選ばれなかった」
 「……どういう事だ」
 「かつては、俺達もチェンジマンを目指し……」
 地雷網を突破しながら、サブマシンガンで撃たれていた。
 「アースフォースは、真の勇者にのみ出現すると信じていた。俺達は、アースフォースを浴びるにふさわしい勇者になろうと、 頑張った。……だがしかし……俺達には、アースフォースは現れなかった!」
 まさか、敵襲を受けて残り5名になる事が発生フラグだとは、さすがの伊吹長官も気付いていませんでした!  気付いていたら多分、身内の暗殺部隊に訓練キャンプを襲撃させていた(え)
 「……知らなかった。チェンジマンにそんな歴史があったなんて」
 「剣さん達は、私たちの代表なんです! 私たち大勢の仲間から選ばれた、最強の戦士なんです! 私たちの、誇りなんです……だから、 だからくじけないでほしい!」
 もともと戦士団、チェンジマン誕生以前から電撃戦隊に参加していた(プロジェクト〔チェンジマン〕を知っていた)メンバーなので、 元チェンジマン候補生という事に驚きはなく、むしろ飛竜達の反応が鈍く見えてしまったのは、少し残念だったところ。
 そこに存在する、“思えばわけもわからないまま地獄のキャンプに招集され、そこで生き残ったらチェンジマンになってしまった5人” と“使命感を持ってチェンジマンを目指すも果たせなかった戦士達”との温度差がポイントではあるのですが、序盤の一時期を除くと、 基本的に飛竜達は力強くヒーローしていたので、その「心構えの弱さ」を説く、というのはもう一つしっくり来ませんでした。
 これは今日的な作劇・構成に慣れている、というのもありますが、“ヒーローとしての濃淡”を描く、という要素は、 90年代に入ってより洗練された形で抽出される部分になるのかな、と(80年代後半の作品で何かあるのかもですが)。
 流れとしてそこの弱さはある程度自覚的だったのか、戦士としての心構えを見つめ直すに際して、今の自分達が立っている場所には、 そこに至る過去の積み重ねがあるんだ、という事――その重さを感じ取る事――を、 メタファーも含んだ「歴史」という言葉に象徴させたのは好きな部分。
 チェンジマンと戦士団、それぞれのアップを交互に映し、選ばれなかった者と、選ばれなかった者の想いが交差する中、 地球守備隊上層部がアハメス軍団に捕捉されてしまった、という急報が入る。
 上層部の護衛に回っていた伊吹長官はヒドラ兵を光線銃と素手の格闘術で迎撃するとパワフルな飛び蹴りまで披露し、 鬼軍曹は伊達では無いところを見せつけ、噎せ返るような昭和の男臭さがストレートな格好良さ。
 「さすがは電撃戦隊長官ね。だが抵抗もそこまでよ!」
 振り下ろされるブーバの剣さえサバイバルナイフでガードしてみせる長官だが、シーマとの挟み撃ちからフラッシュ攻撃を受け、 連続攻撃でピンチに陥った所に駆けつけるチェンジマンと戦士団。
 これまで、影に陽に戦いを支えてくれた戦士団の思いを受け止め、5人のチェンジマンに至る道のりに、 積み重ねられてきたものの重さを知った飛竜達は、レッツチェンジ。連続のハードアタックに耐え抜いたその時、 5つのパワーシンボルが浮かび上がる。
 「そうだ! それがアースフォースが与えてくれた、まことの力だ!」
 前回、“再度のアースフォースの発現”を否定してどうするのかと思ったら、“5人はまだアースフォースの全てを引き出していなかった” という展開は、個人的にはもう一つしっくり来ませんでしたが、そこに戦士団の存在を繋げて、 サポート要員なども全てひっくるめて電撃戦隊なんだ、と打ち出したのは今作序盤からの見せ方を活かしてくれて良かったです。
 チェンジマンは5つのシンボルパワーを弾丸に込めた真パワーバズーカでハードウォールを突破し、かつてなく派手に吹っ飛ぶ青獣士。
 「負けた……私のスーパーパワーがことごとく負けるなんて! 退けぃ!」
 超越の力にすがる事なく自らの力で困難な壁を遂に打ち破ったチェンジマンに対し(ただ結局は、 最初に得た超越の力がベースにあるので、“それを自らのものとして育てる”というニュアンスはわかるのですが、 もうワンステップ欲しかったな、とは思うところ)、アハメスは終始、リゲルオーラによって得たスーパーパワーを振り回していただけであった、 という対比がなされ、最初は「か、壁……?」と思ったハードウォールは、案外と意味のある名前の特殊能力でありました。
 後年になると新兵器が投入されたり戦隊自体が強化される所で、そこまでにかけられる時間の自由度が比較的高い一方、 ビジュアル的な説得力は弱くなってしまう、という面が見えますが、シンボルパワーをパワーバズーカの弾丸に込める、 という演出そのものはわかりやすくて格好良かったです。
 勢いに乗るチェンジマンは、巨大化した青獣士をさくっとサンダーボルトし、拍手と敬礼に迎えられながら、電撃基地に帰還。
 「みんな、チェンジマンは遂に自分の持ってる力の全てを、自らの力で引き出してくれたよ」
 「思い出します。俺達が初めてチェンジマンとなってここへ来た時、こうして迎えられました。でも今俺達は、 本当のチェンジマンになったような気がします」
 かくして割と成り行きからアースフォースに選ばれた5人は、過去を知り、そこに積み重ねられてきた人々の思いを受け止め、 自らの道のりと現在地を確認する事で、今こそ真の戦士となって強大な壁を乗り越えたのであった!
 ……という意味の部分を抜き出すと、2クール目の締めぐらいの方が納得感が高かったとは思うのですが、 これは約30年前と現在との「求められている作劇」及び「1年間の物語における情報量とそれを処理するスピード感の差」 が出ているところだろうとは思います(実際には、1クールの締めぐらいでここまでやるのが近年のスタンダードですし)。
 次回――えらく情報量の少ない予告で、果たしてどうなる?!

→〔まとめ7へ続く〕

(2020年8月22日)

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