■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ5■


“涙を感じるぜ 叫んでるぜ
優しい心に 翔んでいくぜ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ5(25話〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第25話「歌え! 大きな声で」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 その日、電撃基地では隊員の親睦を深める為のカラオケパーティーが行われており、麻衣の熱唱シーンからスタート。
 「チェンジマンで歌ってないのはおまえだけだぞ。さあ歌った歌った。さあ!」
 カラオケをやり過ごそうとテーブルの下に隠れていた勇馬は伊吹長官に引きずり出され、嫌々マイクを握らされると壮絶な音痴を披露し、 顔が必死なのでギャグになっておらず、だいぶ可哀想な光景に。
 勇馬の音痴ぶりに戦士団が大笑いする一方、最初は煽っていたチェンジマン4名は、飛竜が身をのけぞらせたり、 さやかが思わず「耐えるのよ」と口走ったりはしつつも、決して勇馬を笑う事なく見守るモードで描かれたのは、 戦友としての関係性が見えると同時に、他人を軽々しく笑い物にしない姿が、ヒーローの節度として一線が意識された感じで良かったです。
 「なに言ってんだ! 良かったぞ!」
 半泣きで歌い終えた勇馬が爆笑の渦の中をしょぼくれて戻ってくるとその肩を叩く伊吹長官も、最初は大変嫌なノリの上司でしたが、 やらせたのは俺であり、おまえはよくやった、という対応が、良くも悪くも実に昭和の親分気質。
 まあこういう無礼講では、階級上位の人間がちょっと笑いの種になるぐらいが兵卒のまとまりが良くなるものなので、 その後の拍手の強制を含め、団結を高めるという目的通りに事が運んでしてやったりなのかもしれませんが…………もしかしてこれ、 さやかと麻衣から勇馬は音痴であるという情報を入手した上で、何もかも長官の仕込み通りなのでは。 (※と考えると、さやかの「耐えるのよ」という言葉の意味が大きく変わってきて、えぐい、電撃戦隊の頭脳担当班、え・ぐ・い)。
 大恥をかいたと公園で黄昏れていた勇馬は、他人の歌声と自分の歌声をシンクロさせる事で、強力な破壊音波を発生させる宇宙獣士、 オペレッタ星のゾノスと遭遇。
 ブーバと一緒に前線に出てきたゲーターは何をするのかと思ったら、破壊音波の素として唄う役でした(笑)
 「まーた音楽責めか! ますます歌が嫌いになったぜ!」
 チェンジマンと一当たりして撤収したオペラ獣士は、公演で唄う子供達や、音楽番組の収録に会わせて各地で歌唱テロを行い、 破壊行為と歌そのものを恐れさせる、物理と心理の両面から人間社会を恐怖に陥れる、というのが良く出来た作戦。
 ナレーション「人々は、超音波破壊を恐れて、歌を唄わなくなり、TVから、歌番組が消えた」
 ところが、ゴーストタウンのように静まりかえった街をパトロールしていた勇馬は、超音痴の少年が元気に唄い歩いている姿を目撃。 ゾノスの姿を見て咄嗟に少年の口を塞いで隠れるが、あまりにも酷い歌はゾノスの聴覚にむしろダメージを与える事が判明する。
 (あの子は自分が音痴とは知らなかったんだ。だからあんなに楽しそうに歌っていた。……それなのに、こんなに傷付けてしまって)
 勇馬、そしてゾノスから立て続けに「音痴」と言われてショックを受けた少年が、本気で歌手を目指していた事を知った勇馬は、 心ない言葉をかけてしまった事を反省し、少年を励まそうと調子っぱずれの大声で音痴のテーマを熱唱。
 「俺も音痴なんだ。今までずっと自分が音痴だって事が恥ずかしかった。でもね、君と会って、 君みたいに腹の底から歌えたらいいなーと思ったんだよ」
 「ほんと?」
 「ああ。君は俺に歌の心を教えてくれた。歌は腹の底から思い切り唄えばいいってね。 音痴を恥ずかしいと思っていた自分の方こそ恥ずかしいよ。ありがとう」
 勇馬と少年は固い握手をかわすがブーバと獣士が迫り、二人はダブル音痴攻撃。そこに4人が駆けつけ、チェンジペガサス。
 「宇宙獣士ゾノス! チェンジペガサスの歌で地球を守ってみせるぜ!」
 「ほざくな音痴!」
 「電撃戦隊!」
 「「「「「チェンジマン!!」」」」」
 の流れで主題歌バトルにボーカル入ったら何やら複雑な気持ちになるところでしたが、使用されたのはインスト……と思ったから、 そこから滅茶苦茶なリズムで主題歌を唄い始めるペガサス(笑)
 チェンジペガサスの逆音波攻撃に藻掻き苦しむオペラ獣士に容赦なくパワーバズーカを叩き込み、 ここまで屈指の酷い死に様(笑)
 そして視聴者の耳に平穏をもたらす為か、チェンジロボのテーマ曲にはボーカル入ってホッと一息。
 急げ合体! アースコンバージョン!
 ……がそれはトラップであり、ペガサスはロボのコックピットでも声を張り上げ、調子っぱずれのチェンジロボのテーマを歌い上げ、 苦しむ獣士をサンダーボルトで一刀両断し、ホント酷い……(笑)
 かくして恐怖の音波テロ作戦は、歌を愛する心の前に敗れ、勇馬と少年は大合唱。
 「なんて気持ちよさそうに歌ってるんでしょう」
 「お腹の底から歌えば、楽しいものなんだな」
 歌を唄うってなんだろう、という本質を問いかけ、子供の頃に音楽の授業があまり得意でなかった身としてはなんだか身につまされるエピソードでありましたが、 己の分をわきまえていく、という事も大事ではあるが、今はまだ、夢を見る事、楽しむ事、それが一番、というのは好きな落としどころです。
 そしていつか壁にぶつかりどうしようもなくなる事があった時、そっと手を差し伸べてくれる存在が、 積み重ねられてきたチェンジマンというヒーロー像であるといえます。
 ラストは、ゲストの少年少女合唱団も加わってなんかカオスな事になりつつ、花や自然の風景を挟み込んで、 歌とはどこから生まれたのか、人が自然に歌を口ずさむ時、それそのものが地球の自然を讃える強さなのだ、と映像的に綺麗にまとめて、つづく。
 「歌えペガサス! この青空に!」
 ギルーク二刀流回に続き、勇馬が子供ゲストに寄り添い、他の4人が「お兄さん・お姉さん」であるのと比べ、 子供と精神年齢が近く距離感も近めというポジションを確立。一緒に肩を組んで少年と唄うところに、飛竜とはまた違う、 “勇馬らしさ”が出てきたように思えます。総じてチェンジマンが、音痴である事そのものを笑いの対象にはしない、 というのは良かった点。勇馬が歌をポジティブに捉え直す、というのもキャラクターの「変化」として劇的かつ題材として明るくなり、 後味の良いエピソードでした。
 次回――これはきっと、藤井先生が本気出す。

◆第26話「麻衣20歳の初恋」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 90年代に入ると、「ああこれはきっと扇澤さんだな……」というのが予告でなんとなくわかる脚本家筆頭ですが、80年代は、 藤井先生がそのポジション(笑)
 そして藤井先生の趣味全開のエピソードに長石演出が加わると、物凄く昭和のメロドラマになるのでした。
 いやまあ、『チェンジマン』昭和ですが。あと、昭和のメロドラマにも詳しくはないのでイメージですが。
 ランニング中に知り合った、やたら渋い声の青年に、転んだ怪我の手当てを受けた麻衣は、ときめきゲージがぎゅいーんと急上昇。 ところがそんな二人の前に落ちてきた小型UFOの中から、小さな竜と妖精を掛け合わせたような奇妙な生物が姿を見せる。
 「こいつはプレアデス星雲系の宇宙動物だな」
 「プレアデス星雲系の、宇宙動物?」
 「うん。昔一度見た事がある」
 「……あなたは?」
 いやホント、あなたは?
 疑問を解消する間もなく、どうやらその宇宙動物を追ってきたらしい鳥型の宇宙獣士ホーグルとヒドラ兵の襲撃を受け、 麻衣さん生バトル祭。チェンジマンが揃って反撃に転じ、青年に託されて逃げた動物の追跡を優先する鳥獣士は一時撤収。 バズーから宇宙動物の抹殺を念押しされたギルークは納得が行かない様子で首をひねるが、今回の段階ではこれ以上掘り下げられない為、 果たして今後の展開に関わってくるのかどうなのか。
 宇宙動物の正体は、大星団ゴズマの攻撃を受けているリンド星の生物・ギギであり、滅亡に瀕するリンド星人からのメッセージと、 リンド星を壊滅状態に陥らせた、鳥獣士のばらまく伝染病の病原菌を携えていた。
 救援を求めるリンド星人の必死の訴えかけが真に迫るのですが、地球の科学で……行けるのかプレアデス星雲系?
 アースフォース発現前からチェンジロボが存在していた事を考えると(起動できたのかは別にして)、 特定のオカルトパワーに頼らずとも、地球人のテクノロジーレベルが侮れないのは間違いないのですが…… スーパーパワーに付随して出現(完成)したのではなく、スーパーパワーを見越して事前に建造されていた、 というのが割と謎のメカニック、チェンジロボ。
 リンド星の生物を電撃基地に運び込んだのは、麻衣が生物を託して逃がした青年……その正体はなんと、高名な宇宙生物学者にして、 地球防衛隊アメリカ支部に所属する、ドクター東郷であった。
 予告の時点でゲストキャラが基地の中に居たので、セキュリティに厳しい電撃基地にどうやって……? と思っていたのですが、 実は関係者でした、というのはスッキリ納得。
 ギギの運んできた病原菌を分析し、ワクチンが開発可能である事を請け負った東郷は、飛竜を制して自らリンド星行きを志願し、 そうか、行けるのか、プレアデス星雲系。
 東郷の決意に複雑な面持ちになった麻衣は、研究所へ向かう東郷の後を追いかけると思いあまって「私もリンド星に連れてって下さい」 と同行を願い出るが、アンテナが女心の方には向いていない感じの東郷に、正論で諭されてしまう。
 「リンド星が俺を必要としているように、地球は君を必要としているんだ。わかるね」
 ネバーストップ! チェンジマン! 5人の戦士に安らぎいらない!
 東郷の覚悟と、自らの使命……地球守備隊の一員としてそれを受け入れようとする麻衣だが、 二人はギギの幻影を用いたアハメスの罠にかかってしまう。ギルークに変わってギギ抹殺を買って出たアハメスは、 二人を人質にしてギギとの交感を要求し、倉庫の窓の外から高笑いで見下ろしているのが、凄く、性格悪そうで良いシーン(笑)
 「ギギは渡さん。――しかし、二人も救出するんだ」
 伊吹長官は電撃戦隊に厳命し、与り知らぬといってもいい遠い星の出来事とはいえ、 ゴズマの侵略により不条理に命が脅かされているのならば、 全力を尽くして手を貸そうとするスペースワイドな物の見方は今作の一貫した姿勢であり、特に藤井脚本では、 この要素のクローズアップが意識されているように思われます。
 一方、囚われの麻衣は宙吊り状態から、振り子運動で扉にまさかの体当たり。
 今回はアクション女優としての麻衣さんもフィーチャーされているのですが、宙吊りにされながら自分の体をハンマー代わりに叩きつけて脱出を図る、 というアクションは初めて見た気がします(笑)
 扉の外では、アタッシュケースを手にした4人のチェンジマンが姿を見せ、上下を影で潰して、その間の白い光の中に4人が並ぶ、 というのが凄く長石監督らしいカット。
 人質交換の筈が獣士がチェンジマンに奇襲をかけた事からどさくさ紛れに殴り合いとなり、 身動き取れないまま炎に巻かれる麻衣とドクター。麻衣は宙吊り状態から体を反転させると、 その炎で両手を縛るロープを焼き切ろうとする、という必死の行為で懸命にドクターを救おうとするが、外では、 アタッシュケースの中身が空っぽである事がバレていた。
 ……作戦、無かった(おぃ)
 今作、基本的にチェンジマンが作戦を立ててミッションに望む事が多いので、 何の工夫もせずに正面から乗り込んできた上に無策のまま人質の命を危険にさらした、というのは大変残念で、 この後のラストが割と良かっただけに、非常に勿体ない展開でした。
 人命軽視の無理無茶無策の罰として、獣士の火球により哀れ焼死の危機に陥る麻衣だったが、 すんでのところでロープを焼き切る事に成功するとドクターを助け起こし、 アースフォースを纏って炎の中からドクターと脱出してくるその姿、まさに不死鳥!
 というのは、ブーバ驚愕のアップが挟まったのも効果的で格好良かっただけに、つくづく無策が残念。
 「おのれぇっ!」
 「おのれブーバ! チェンジマンの作戦にはまるとは!」
 責任をレンタル部下(節操が無いのか怖くて逆らえないのか)になすりつけるアハメスですが、作戦要素はどこにあったのか(笑)
 復帰したフェニックスのファイヤーで鳥獣士の毒の羽を焼却し、フェニックスアタックからパワーバズーカでフィニッシュ。 工場の闇の中から扉を開けて台車に乗ったギョダーイが現れる、という変化球から巨大戦となり、 獣士の火球攻撃に苦しむチェンジロボだったが、相手が飛び上がるや否や空中戦に持ち込んで撃墜し、 大概の飛行型怪人より空中戦に強い(笑)
 そしてさくっとサンダーボルト。
 追っ手の魔手を退け、完成したワクチンと、道案内を務めるギギを抱えたドクター東郷は、いよいよリンド星へ出発する事に。
 「お体に気をつけて」
 「うん。麻衣くん、色々ありがとう」
 麻衣はあくまでも、一兵士に徹して別れの言葉をかわし、電撃戦隊と戦士団の敬礼を受けたドクターは、遙か深宇宙へと旅立っていく……。
 そして……地球へ戻るシャトルベースから遠ざかりゆくロケットを、独り舷窓から見つめる麻衣の目から堪えきれずに零れ落ちる涙。
 麻衣の気持ちに気付いていたさやかが寄り添って声をかけると、麻衣の頬に伝う涙をぬぐってそっと抱きしめ、 こういう形でのドラマの見せ方は、シリーズとしてもかなり珍しい印象。
 戦闘後の尺も通例より長めに思えますが、その判断も含めて藤井先生のメロドラマ指向と長石監督のロマンチックな部分が巧く重なり、 淡い恋の物語と戦友との信頼関係、幻想と戦争、青春と戦場、という『チェンジマン』の持つ二面性が映像的にも美しく濃縮。
 「いいわね……麻衣の初恋、いつも星空の中にあるんですもの。ね?」
 「…………うん!」
 麻衣は瞳にまだ涙を残しながらも笑顔を浮かべ、余韻の美しいエピソードとなりました……
 ナレーション「麻衣の、淡い初恋は、宇宙の彼方に消え去り、終わりを告げた」
 て、酷いよナレーションさん!
 ナレーション「だが、ゴズマとの戦いは続く。負けるなチェンジマン! 負けるな地球守備隊! 宇宙の未来は、君たちが、守るのだ」
 別れの余韻の台無し感がナイトダイナミックでしたが、BGMとナレーションの節回しが妙にテンポ良く重なって現実に引き戻されるのでありました!
 ネバーストップ! チェンジマン! 嵐を超えてどこまでも!
 次回――え?! そ、そこ拾うのですか?!
 場合によっては大変な惨劇が待ち受けていそうですが、どんな心構えをしていればいいのか。

◆第27話「ゲーター親子の夢」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 熱海後楽園ホテルに謎の招待を受けるチェンジマン。そこで待ち受けていたのは……
 「ゲーター!」
 と一斉に躍りかかるが5人だが、実はそれは女装したゲーターではなく、ゲーターの妻・ゾーリーであった。
 「いったい俺達を呼んで、なんの真似だ?!」
 ゾーリーは、ゴズマに単身赴任してもう3年になるゲーターを、子供に再会させる為になんとか協力してくれないか、 と床に頭をこすりつけんばかりにしてチェンジマンに頼み込み、歩み寄るとその頭を上げさせる疾風。
 「戦争で犠牲になるのは、いつも女と子供ってわけか」
 「はぁ……女だと宇宙人でも甘いんだからな〜」
 「簡単に信用はできない。ゴズマの卑劣なやり方は、いやというほど見てきたからな」
 ゲーター似の宇宙人相手でもフェミニストぶりを発揮する疾風だが、一気にほだされるのかと思いきや、 他のメンバーの反応は割とドライ。
 立ち位置や表情からすると、麻衣は比較的同情寄りに見えますが、さやかに至っては、基本的に終始無言。まあ、 下手に喋らせるとシビア過ぎて印象が悪くなるか、この後の展開により頭脳派ポジションを損ねてしまいかねないので、 良い判断だったとは思います。
 対応を苦慮する5人だが、地球守備隊エネルギー研究所がゴズマの襲撃を受けているという急報がもたらされ、 新開発のプラズマエネルギー発生装置が強奪される寸前に駆けつけると、戦闘開始。
 研究所の救援に向かった筈が、背景がどうも熱海に思えるのですが、つまり熱海にあるのか、研究所(笑)
 カタツムリ顔の宇宙獣士ギロムが最近恒例のゴム鞠爆弾を放つと、続けてギロムホールによってグリフォンのズーカを奪い取り、 火力に頼る傾向があるチェンジマン、割と最大のピンチ!
 更にギロムの必殺攻撃で5人まとめて謎の球体に吸い込まれてしまうチェンジマンだったが、それを目にしたゾーリーに助けられる。 チェンジマンの信頼を得るべくゴズマのアジトに案内すると申し出るゾーリーに対し、「待て。どうも信じられない」 と飛竜は厳しい視線を向け、割って入った疾風との対立が続く。
 「どうして信じてやらないんだ。宇宙人だって家族一緒に暮らしたいと願う気持ちは俺達人間と変わらないだろう?!  それはいつも剣が言ってる事じゃないか!」
 今回、ゲーターをショッキングピンクに塗りたくったような宇宙人ゲスト、という絵面がギャグ寄りの一方、 その必死の懇願とチェンジマンの対応が至極シリアスに描かれる事により、ギャグとシリアスの境界線が混濁し、 一種酩酊状態に似た幻惑効果を生んでいるのですが、それがメタ的な視点も含め、この異星人を信用できるかどうか (今回はギャグなのかシリアスなのか?)、を視聴者に問う形になっている、というのがなかなか秀逸な構造。
 コミカルなゲストを軸にした人情小話、みたいなのはあまり好みではないので捻り方が良かったのですが……なんだか、 単なる野球好きに見える怪人は敵のスパイなのか? というサスペンスが、 路線変更を繰り返してきた作風と渾然一体となってギャグとシリアスの境界線を高速で走り抜ける奇跡のドライブ感を生むに至った 『ジャッカー電撃隊』第21話を彷彿とさせます(笑) (※総合評価は高くできない『ジャッカー』において、 大変印象深いエピソードなのです)
 ……ジャァック!!
 遂に飛竜は疾風の言葉を聞き入れ、ゾーリーの案内で5人が向かったのは、入り口の両サイドにモアイ像が立ち、 壁面に獅子のレリーフが刻まれた方形ピラミッドのような建造物……で、さすがに今回の為のセットには見えないのですが、 「伊豆シャボテン公園の高原竜」的なオブジェクトのでしょうか、これ。
 ゾーリーの情報通り、奪われたプラズマエネルギー発生装置がグリフォンズーカに組み込まれそうになっているのを目にした疾風は内部に突入するが、 ここでゾーリーが裏切り、閉じ込められた疾風は、哀れ建物ごと木っ葉微塵の大爆発。
 「星王バズー様、遂にチェンジマンを罠にかけ、倒しました。ゲーターの女房を呼び寄せ、一芝居打たせた私の、作戦が、 まんまと図に当たったのです」
 「そう願いたいものだ」
 「は?」
 「果たしてあのチェンジマンがそう簡単に倒せるものかどうか」
 “私の作戦”を強調するなど、最近どうも演出が小物寄りになっているギルークは、アハメスに人気面で押され気味なのかどうか、 先行きがちょっぴり不安(笑) 頑張れぼくらのギルーク指令! いざとなったら魔法中年にクラスチェンジだ!
 熱海ではゲーター夫婦がホテルの一室で仲むつまじく乾杯しており、卑劣な策略を裏打ちする描写がえぐい。
 そこに乗り込む疾風を除いた4人のチェンジマン。タイミングを考えると、 爆発跡での疾風の捜索よりも卑劣な裏切り者の抹殺を優先したと思われ、慌てて逃げ出す夫婦を取り囲むが、今度はゲーターが、 全てはギルークの指示であり、家族の事は真実であると泣き落とし。
 (駄目だ……出来ない)
 涙を流し抱きしめ合う2人の姿に真の愛情を感じた飛竜は、拳を握りながらも処刑執行を躊躇うが、そこに獣士の攻撃が突き刺さる。
 「5人揃わぬチェンジマンなど、敵ではない!」
 「今日こそ貴様等を全滅させてくれるわ!」
 ブーバも現れて遊園地でのバトルに突入し、アトラクションを活用しながら、高度を活かした映像が大変面白いシーンに。
 ヒドラ兵を蹴散らすも、獣士の吸い込みホール攻撃にチェンジソードを奪われてしまったチェンジマンは窮地に陥るが、 そこに飛び込む黒い影。
 「疾風!」
 ヒドラ兵を蹴散らしてチェンジソードを取り返し、櫛で髪を整えながら振り返ったのは、爆発の瞬間、 グリフォンに変身する事で九死に一生を得ていた疾風翔。
 チェンジマンが再び5人揃う一方、作戦失敗の罰としてゾーリーはゴズマの宇宙船に回収され、嘆き悲しみ膝を付くゲーターの姿に、 疾風は複雑な表情を浮かべる。
 「ゲーターもゾーリーも、本当に哀れな立場なんだな」
 「許せないのは、そういう宇宙人を戦いに仕向ける、星王バズーと大星団ゴズマだ!」
 地球に対するゴズマの尖兵もまた、侵略被害者の一面を持つ、という今作の大枠の基本構造が改めて確認されると共に、 背後に存在する真の敵の存在を強調。あまり突き詰めすぎると、毎回の獣士にも家族が居るのでは…… と戦いにくくなってしまうので掘り下げは程々にとどめそうですが、序盤から今作の一貫した世界観が、 明確に言語化――チェンジマンに認識されたといえます。
 (※余談ですが、今作から丁度10年後の『重甲ビーファイター』の中盤以降において、侵略者の尖兵を一概に「怪人」としていいのか、 という問題が描かれており、今作への意識があったのかはわかりませんが、興味深い点です)
 改めて主題歌インストでバトル再開するも、ギロムホールに吸い込まれて干物にされかけるチェンジマンだが、 シンボルパワーで脱出し、パワーバズーカでファイヤー。巨大戦でもホール攻撃に苦しめられるが、ギロムの急所をミサイルで破壊すると、 サンダーボルトで一刀両断するのであった。
 かなりの強敵だった今回の宇宙獣士、終わってみれば下手に爆殺をはかるよりも、奪ったズーカを隠して力押し (パワーバズーカを失ったチェンジマンの戦力は大幅減)が正解だったように見えますが、 よくよく考えてみると予備のズーカが電撃基地から熱海に小包で届けられる可能性もあり、 互いに戦力を把握しきっていない状況での戦闘ゆえの敗北だった、とも言えるでしょうか。
 岸壁に落ちていたゾーリーのペンダントを拾ったチェンジマンは、その中に収められていたゲーター一家の写真を目にする。
 「幸せそうじゃないか」
 「ゲーターもナビ星にかえれば普通の宇宙人だったんだな」
 ……長らく、「アリゲーター」?にしては、緑色以外はワニモチーフには見えないな……と思っていたゲーター、 「ナビゲーター」だったのか、と深く納得。
 「ああ。奥さんや子供、家族を大切にする生物は、みんな人間と同じさ。……いけないのは星王バズーだ!  宇宙で平和な暮らしをしている者達を、戦争に駆り立てている。許せない、絶対に許せないぞ!」
 改めて、真の敵への怒りを駆り立てられるチェンジマンであったが、ゾーリーはどうなってしまったのか、さすがに気になります。 ゲーターの立ち場を考えると、まだ人質として利用価値があるという扱いかもしれませんが、割とゲーター、 有能な航海士だったりするのか。
 そしてこれまでコメディリリーフ要員だったゲーター、今後はあまり間抜けなノリでは描きにくい気もしてきて、 描写に変化を付けてくるかは気になるところです。……案外、憎しみの方向がチェンジマンに向いて復讐鬼として覚醒し、 広瀬匠に変身したらどうしよう!(待て)
 物語も折り返しを過ぎ、そろそろ刺激的な新展開が欲しくなってくる頃合いですが……次回、何故か続けて疾風回。

◆第28話「呪われたクレヨン」◆ (監督:山田稔 脚本:鷺山京子)
 星王バズーは、かつて自分の暗殺をもくろみ、宇宙漂流刑に処していたレジスタンス闘士・ペインを宇宙獣士として地球に送り込む。
 「人間どもよ、俺の憎しみの血が染み込んだ呪われたクレヨンを受け取るがいい」
 シーマと共に地球へ現れたペインは性格が様変わりしており、遡れば見た目から変貌して理性を失うタロウの例もありましたが、 どうやら宇宙獣士は、もともと好戦的で残虐な性格か、或いはバズーによって人格改変を施され、 敵として戦うしかない存在になってしまっている、という事で前回から巧く接続。
 ゴズマの尖兵たる宇宙人にも家族の愛があり侵略の被害者であるるならば、それを毎回の「怪人」として倒してしまっていいのか、 という問題に対して、現段階で素早く一定のエクスキューズを与え、なおかつバズーの邪悪さも引き立てられ、抜かりがありません。
 ペインの血には、それを用いて愛を込めて描いた絵の対象に呪いをかける効果があり…………という事はレジスタンス時代、 愛を込めて星王バズーの絵を描いていたのか。
 そういえばバズー様、アハメス配下の樹木獣士にも暗殺を試みられていましたが、歴代トップの、暗殺を計画されたボスキャラなのでは(笑)
 ペインの生み出した呪いのクレヨンをシーマが配り歩いている頃、スケッチブックを拾おうとして川で溺れかけていた少女を救った疾風は、 それがきっかけで仲良くなり絵のモデルになる事に。
 対象となる呪いの絵の中に疾風を発見したシーマは、疾風の絵を完成させようと少女をアジトにさらい、 嫌がる少女に洗脳光線を浴びせて絵を描かせ…………あ、愛は?
 敵サイドが適当に描いた絵では呪いは発動しない、という理由付けとして「対象への愛」を持ち込んだのですが、 物語の都合で扱いが雑になり、この後も含めて色々しっちゃかめっちゃかな事に。
 疾風の絵を描き進めていた少女は真心から洗脳に抗い筆を止め、洗脳を強めようとするシーマ。一方、 少女の所持品の分析からクレヨンの異常を察知した電撃戦隊では、疾風が敢えて呪われたクレヨンで自分を描かせる事により、 獣士のアジトを逆に割り出そうと目論み、まんまとこれに釣られたシーマと獣士は呪いを発動……なお絵を担当したのはさやかなのですが、 この作戦に基づいてさやかの描いた絵に……愛?
 呪いにより今週も大爆発に飲み込まれる疾風だが、準備していたロープによりこれを回避。 そしてさやかの謎装置によりクレヨンのエネルギーを逆流させると、獣士のアジトが結構な爆発(笑)
 危うく床に倒れていた少女が巻き込まれて爆死するところで、実に大雑把な展開なのですが、映像的には大変面白かったです(笑)
 爆発の反応をキャッチしたチェンジマンはアジトへ乗り込み、死を偽装した疾風が別行動で少女を救出、というのはらしい展開。 『バイオマン』劇場版で見たような記憶がある工事現場?での戦闘シーンにおいて、 もうもうと砂煙を立てながら斜面を転がり落ちるヒドラ兵、のシーンが格好いい。
 ペインがグリフォンを集中攻撃している間に、シーマ(初期衣装が暑かったのか、 気がつくと胸元の開いた夏服仕様になっている気がする)が残り4人のチェンジマンを1人で相手取る立ち回りを行い、 最近あまりいい所のなかった副官ポジションの見せ場として良かったです。
 止め→止め、という殺陣を見るに動けるキャストというわけではなさそうですが、衣装デザインとスラリとした体型が相まって、 キックの線を強調する演出が巧くはまっています。
 一方、触手攻撃に苦戦し、ペインスモッグに包まれたグリフォンだが、マグマギャラクシーで反撃し、それを見たシーマは撤退。 残ったペインをバズーカでファイヤーし、巨大戦では電撃剣を取り出してから珍しく攻撃を受けるが、それを反射してサンダーボルト。 疾風は少女に新しいクレヨンとスケッチブックをプレゼントし、チェンジマンは揃って少女に自分の絵をせがむのであった、でオチ。
 オーソドックスなヒーローと子供の交流エピソードという、90年代まで続く鷺山さんらしいシナリオなのですが、 『チェンジマン』的には「大量に配られた呪いのクレヨンにより、子供達の描いた絵で街が呪いの大パニックに」となりそうな所を、 早々と疾風と少女の関係に焦点を絞り込んだ結果、「段ボール一箱分配った筈の呪いのクレヨン」 (成分追跡から地球守備隊が回収したとは思いますが)という要素が全く拾われない事に。
 それならそれで、肝心の少女が呪いのクレヨンを受け取る→それで絵を描くシーンがあればまだ良かったのですが、 そこが抜け落ちている為に、少女の絵による呪いの発動も随分と唐突になってしまいました。
 途中でプロットの変更でもあったのか、或いは尺の都合で色々カットした際の編集が悪かったのか、
 〔疾風、川で少女を救う→(数日間以上の交流タイム/この間に少女は呪いのクレヨンを入手)→ 公園で疾風の絵を描いている時にペインの呪いが発動〕
 という想定だったと思われる事の成り行きが、
 〔疾風、川で少女を救う→同日、公園で疾風の絵を描いている時にペインの呪いが発動〕
 と見えてしまったのも、唐突さ加減に輪を掛ける事になってしまいました。
 そんなこんなでストーリー的には残念でしたが、後半のアクションは良かったです。
 次回――宇宙海賊の登場で、久々にブーバが飛竜と絡んでくれそうなのは期待。 副官キャンペーンという事で今回のシーマぐらいには見せ場があると嬉しいですが……取り戻せ、ライバルの座!

◆第29話「花を守れ! 幻の蝶」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 「私が欲しい物は宝石ではなく――黄金の蝶」
 アハメスは自分に求婚してくる宇宙海賊ギガラに、全ての命を甦らせ不老不死をもたらすという伝説の蝶を要求して地球へと送り込み……そ、 それはどう考えてもセントパううっ、頭が……。
 毎度お馴染み昆虫魂ネタはさておき、その頃、飛竜はどういうわけか風光明媚な高原に居たが、 昼間っからいい若い者が一人でハイキングしている姿を蝶泥棒と誤解され、凶器を振り上げた少年に襲われる事に。
 「違う! 俺はこの高原にUFOが現れたと聞いて調べに来たんだ!」
 五十歩百歩ですね!
 そこに、黄金の蝶を求めて口から毒ガスを撒き散らすギガラが姿を見せ、容疑の晴れた飛竜はレッツチェンジ。 初使用の挿入歌をバックに一騎打ちとなり、ゴズマ配下の宇宙獣士ではなく、一匹狼の宇宙海賊を名乗るギガラは、 金銀の鎖を取り出しての連続攻撃でドラゴンを追い詰め、ひと味違う戦闘力を見せつける。
 仲間達が駆けつけるもギガラの皮膚はチェンジソード(射撃)さえ弾き返し、ズーカを構えるチェンジマンだが、 通りすがりのブーバに攻撃を邪魔されてしまう。ヒドラ兵を連れて休暇にハイキングに来ていた(としか思えない)ブーバは、 かつてギガラと無敵の宇宙海賊コンビを組んでいたのだ!
 がっちり握手を交わした海賊二人は華麗なコンビネーション戦法でチェンジマンを一蹴し、強烈なビームの一撃! とかではなく、 目に見えて説得力のあるアクションにより、無敵の海賊コンビの強さを示してくれた立ち回りが非常に秀逸。
 そして毒ガスを浴びたドラゴンは、久々にスキル《転落の匠》を発動する。
 「ドラゴーーーン!」
 「「「ドラゴン!!」」」
 残された4人はドラゴンを助けるべく退避し、ブーバもまた、負傷したドラゴンを追い詰めるべくヒドラ兵を山狩りに向かわせる。
 「負けてたまるか……。絶対に、地球は荒らさせはしない」
 傷だらけの飛竜は冒頭に襲撃してきた少年に助けられ、山のほこらに祀られる黄金の蝶の伝説を聞くと、仲間と無事に合流。 今回から爽やかな夏服姿となった伊吹長官に、宇宙海賊の目的を伝える。
 「長官、黄金の蝶は本当に居るんでしょうか?」
 「うむ!」
 長官は力強く頷いた!
 「黄金の蝶の伝説は地球だけではなく宇宙伝説にもあり、そのエキスを飲めば不老不死、つまり永遠の命と美しさを与えられるという。 まさか、この地球に居るとは……!」(※独自の研究です)
 もう30話も近いですが、改めて、この人、信用していて大丈夫なのか(笑)
 一応、専門家のお墨付きを得たチェンジマンは、黄金の蝶を海賊にもゴズマにも渡してはならない、と状況を確認し、 海賊に踏み荒らされた草花を整え直す少年の姿を挿入して、霧ヶ峰高原の美しい自然をアピール。
 ところがその少年が海賊に襲われ、明らかに狙ったタイミングで、祠の影から飛び出して少年を助けるチェンジマン(笑)  幾ら何でも、ヒーロースキルでは言い訳の効かない飛び出し方ですが、電撃戦隊が子供を囮に使う事にはすっかり慣れてきてしまい、 しかし、それでいいのかチェンジマン。地球の為だチェンジマン。
 そこへ、黄金の蝶を確保後、邪魔なギガラを抹殺せよと密命を帯びたブーバが乱入して少年を人質に取り、 無抵抗でヒドラ兵の攻撃を受けるチェンジマン、どこぞのエージェントと違い人質への配慮があって大変素晴らしく、 その少年を囮に使っていたのは、多分、気のせいです。
 絶体絶命のその時、少年の祈りに応えるかのように、祠に祀られていた蝶の像が光り輝くと黄金の蝶が羽ばたいていき、 混乱の隙を突いて少年を救出した5人はレッツチェンジ。
 「宇宙海賊ギガラ! ブーバ! これ以上地球の自然を、貴様等の自由にはさせん!」
 から主題歌バトルに突入し、
 「負けてたまるか! 俺達は美しい自然と、黄金蝶を守る!」
 と、今回は霧ヶ峰ロケで繰り返し強調。
 ヒドラ兵を蹴散らすも、またも海賊殺法に手も足も出ないチェンジマン。そろそろ雑に逆転しそう、 という頃合いで放たれた渾身のドラゴンキックも弾き返されるが、前衛に立ったギガラがその防御力で攻撃を跳ね返した直後、 背後のブーバが飛び上がり、ギガラを踏み台に空中攻撃を仕掛けてくる、という海賊殺法のパターンを掴むと、 ブーバがギガラをジャンプ台にしようとした瞬間を狙い澄ましてギガラの足を撃つ事で両者の体勢を崩し、海賊殺法を打ち破る!
 一度、これでも駄目か、と海賊コンビの強さを存分に描いた上で、 単純な力技ではなく戦術能力と鍛え上げた戦闘技術でそれを打ち破るという流れが大変素晴らしく、形勢不利と見たブーバの撤退後、 主題歌をバックにドラゴンアタック→パワーバズーカへ繋げる所までスピード感も溢れて、非常に良いバトルシーンでした。
 巨大ギガラは風車斬りで武器を破壊してからスーパーサンダーボルトで真っ二つにし、黄金の蝶は何処ともなく飛んでいってしまったが、 霞ヶ関高原を守り抜くチェンジマン。地球が生んだ戦士は自然と共に生きるのだ! とナレーションも重ねて強調して、つづく。
 霧ヶ峰ロケでしぜんをだいじに、という半ば企画回のようなエピソードでしたが、最後にチェンジマンの力の源である 「アースフォース」と「地球の自然」を関連づける事で、そもそもチェンジマンは何の力で何を守るために戦っているのか、 を手堅く再確認してくるのが、今作らしさ。
 藤井脚本という事を考えると、友情を取るか命令を取るか、脚本段階では後半に若干ブーバのドラマがあったのでは?  とも思えるのですが、そこは特に広げられず。悪女ムーヴで余裕を見せ続けるアハメスに対しギルークの小物ムーヴが止まらないのが少し心配ではありますが、 ブーバのアクション的見せ場がたっぷりあったのは良かったです。
 次回も、引き続き霧ヶ峰?

◆第30話「走れ! ペガサス!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 乗馬倶楽部で見かけた馬の名が「ペガサス」だと知り親近感を覚えた勇馬は、 高齢のペガサスが怪我をして廃馬処分にされると聞いて思わず引き取りを申し出……また一つ、トンカツ屋の夢が遠のきました。
 それはそれとして、実は土地持っていたのか勇馬。それとも電撃戦隊から便宜が図られたのか。
 その頃、東京上空に降り注ぐ謎の金属片によりガスタンクや新幹線が次々と爆発、 全ての機械装置が異常を来して大災害が発生するという久々の大規模攻撃で、今回は特に霧ヶ峰ではなかった。
 挿入歌をバックにヒドラ兵相手に生アクションが続き、ここ数話、軽めのエピソードが続く中でアクション面で色々と見せてくれるのは嬉しいところ。
 レッツチェンジする5人だが、そこに巨大な眼を持つ宇宙獣士デリカルが現れ(目を大きく開いた際のデザインが怖くて秀逸)、 その吹き出す粒子を浴びたチェンジマンは、スーツの内部メカを狂わされてしまう!
 「見たかチェンジマン! 宇宙獣士デリカルのマグネシャワー攻撃!」
 これこそが、都心部に大被害をもたらした謎の金属片による電波攪乱攻撃の正体であり、チェンジソードさえ撃てないチェンジマンは一時撤退。 増幅装置によりデリカルの能力を強化し、地球全土をマグネシャワーで覆い尽くす事により、 分断された地域を各個撃破していくという大規模侵攻作戦を決行に移すギルークだが、バズーからは最後通牒を受けてしまう。
 「ギルーク! この作戦が貴様の運命を決める。もはや失敗は許されん!」
 予告から、霧ヶ峰ロケ第二弾! 今度は馬だ! ぐらいの軽い気持ちで見始めたら、怒濤の展開で司令に迫るリストラの危機!
 「俺達は機械が駄目になると途端にギブアップだからな……戦えないチェンジマンなんかどうしようもないぜ! まったく……。 ……ペガサス、残念だけどおまえの力じゃどうにもならないんだ。心配するな。俺は自分に腹が立ってるんだ」
 ペガサスと勇馬の語らいが挟み込まれ、ただ愚痴るばかりでなく、状況を覆せない無力さに歯がみする、 というところに勇馬のヒーロー(戦士)としての成長が見え、短い尺の中で手堅く描写を積み重ねてくるのが今作の良いところ。
 電撃基地は増幅装置の所在を突き止め、まともに変身できないのを承知で決死の破壊ミッションへと趣く事となる5人。 これでお別れになるかもしれない、と勇馬はペガサスにお守りのペンダントを託し、嵐山の麓で生身の5人を待ち受けていたのは、 ブーバ率いるヒドラ兵の軍団。
 「このままでは全員やられてしまう! バラバラになって、嵐山の頂上に行くんだ!」
 散開する5人だが次々とヒドラ兵の追撃を受け、一縷の望みを賭けた変身からペガサスアタックを放つも、 ブーバに軽々と迎撃されてしまう青。
 「馬鹿め! おまえの動きは亀よりも鈍いわ!」
 だがその時、宙に浮かんだパワーシンボルに主の危機を覚ったペガサスが走り出し、 勇馬をなぶり殺しにしようとするヒドラ兵の輪に躍りかかると、炸裂する馬キック!
 ペガサスは次々とヒドラ兵を蹴散らし、強いぞ馬!(身も蓋もない解釈をすると、勇馬のお守りを媒介に、 一時的にアースフォースの強い影響を受けているのかと思われます)
 「ペガサス……俺と一緒に戦う気か! よし、デリカルを倒して地球を守ろう!」
 勇馬はペガサスにまたがり、騎兵突撃すると仲間を助けながら山頂へと向かい、凄いぞ馬!
 しかし、増幅装置に爆弾を投げつけようとした勇馬は伏兵シーマの妨害を受け、落馬。続けての攻撃で装置に近付けないでいる内に、 取り落とした爆弾をくわえたペガサスが、主に代わって増幅装置へと特攻を仕掛け、装置を道連れに大爆発してその命を散らす……。
 王道といえる展開ですが、地球の生物の突撃に腰の引けたシーマが、思わず道を空けてしまう事に頷ける迫力ある映像。
 「ペガサス…………。シーマ! デリカル! よくもペガサスを……許さん!」
 怒りのチェンジペガサスは、天狗流螺旋シュートでマグネシャワーの発射口を破壊し、強力獣士の攻撃モーションを印象的に描き、 そこを突いて攻略する、という映像演出も手堅い。力を取り戻したチェンジマンは集合するとヒドラ兵を蹴散らし、 獣士に対してはペガサス稲妻スパークからパワーバズーカでフィニッシュ。巨大戦は空中攻撃からさくっとサンダーボルトで、 恐るべき獣士を打ち破るのであった。
 「バズー様……どうかお許しを……!」
 「愚か者! 貴様の顔など二度と見たくもないわ!」
 ギルークはお仕置き光線を受けて床をのたうち回り、ここ数話の小物演出の果てに、遂にリストラ?! 満を持して前線で大暴れした後、 一度も再出撃しない内に遠征軍司令の椅子から転がり落ちそうになっていますが、思えばあのエピソード(宇宙ピラニア大作戦) も勇馬回だったので、もしかして勇馬と相性が悪いのか。
 地球では、仲間達と共に夜空の星を見上げながら勇馬がペガサスとの思い出を振り返り…………やはり、牝馬だったのでしょうか。
 「……ペガサス、おまえは本当のペガサスになるんだ」
 残されたお守りを星空に向けて投げると、それが天馬のイメージとなって星の海を駆けていく、というのは綺麗なオチでした。
 前回は「美しい自然を大事に」、今回は「動物との交流」、といずれも定番プロットですが、 前回は「美しい自然はアースフォースの象徴」、今回は「地球に生きる動物たちも共に戦う仲間」と、 『チェンジマン』の作品世界と融合する事で、『チェンジマン』の1エピソードである独自の意味、を獲得しており、 世界観とそこに内包されたテーゼの一貫が、重ねて今作の長所です。
 今作の藤井脚本は基本的に、その部分を意識したエピソードで世界観の補強を繰り返し続けており、 藤井さんがサブライターとして明確な立ち位置を持って参加しているのが、今作の完成度を底上げしてくれています。
 次回――東映的に、大変危ない感じのする老人が!
 見るからに、思わせぶりな事を口にして途中で爆死しそうな風貌ですが、大丈夫なのか?!
 ギルーク司令の処遇も気になりますが、物語は星王バズーの秘密に迫る?!
 あ、ギルーク司令は、力を奪われて地上のゴミ捨て場に転がっていた所を、アハメスに拾われるで是非(どれだけ、 そのシチュエーション好きなのだ私よ)。

→〔まとめ6へ続く〕

(2017年8月10日)

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