■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ2■


“Never Stop チェンジマン
5人の戦士に明日はいらない”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第7話「悲しき宇宙獣士!」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 バズー肝いりで地球遠征部隊に派遣された宇宙獣士デモスは、バズー様の光線を受けると、 地球人そっくり@ただし全身銀色タイツの姿に。
 戦闘員がホテルディナーを襲撃するなど夜の大都会で大暴れして子供達をさらい、 立ち向かうチェンジマンだが陽動作戦にはまったドラゴンが本日も分断されてしまい、デモスと一騎打ち。
 「貴様、名はなんと言う?」
 と確認したのが
 「チェンジソード!(射撃)」
 の直後だったので、武器を打ち合わせて戦士の誇りを認めたとかそういう格好いいやつではなく……え? なに、地球人、この、 戦闘外道民族?! という動揺の現れが疑われます。
 子供達を人質にされて武器を捨てたドラゴンはデモスにぐっさり刺されて、屋上から投擲される落下ダメージ(3話ぶり3回目)。 バズーはデモスを銀色タイツ男に変身させ、さすがに銀色タイツを脱いだデモスは、地球人の青年・タロウとして、 通りすがりに飛竜を助けた青年を装い、電撃基地への侵入を目論む……とシンプルながら、なかなか面白い二段構えの作戦です。
 プロデューサー気質のバズー様は演出にこだわって飛竜&タロウが基地へと向かう車を戦闘員に襲撃させ、 その集団に生身で立ち向かう飛竜。
 「俺は必ず、地球を守ってみせる! 負けて、たまるか!」
 飛竜の地球を守る強い意志が改めて強調されながら激しい生身バトルが続き、仲間達が駆けつけて戦闘員は撤収。自分を救った上に、 体からアースフォースを感じるタロウを電撃基地へ招きたいと主張する飛竜だが、4人のクールな反応に断念し、 二人の男は沈みゆく夕陽を並んで見つめる。
 「綺麗だ……本当に綺麗だな」
 「ああ。俺は、この夕陽をいつまでも見ていられるように、地球を守る!」
 基地に戻ってもタロウの事が忘れられない飛竜は、長官のアドバイスでドラゴンに変身する事で、 アースフォースに宿った残留思念?をホログラム映像化し、タロウの宿すフォースの中に古代の地球の記憶を見る。
 タロウの正体は、遠い昔に地球を訪れ文明を与えたアトランタ星人の子孫であり、飛竜が感じた「アースフォース」を 「アトランタフォース」と称する事から、宇宙の数多の星に、それぞれ星の力が宿っている事が示唆されるのは、 後の『星獣戦隊ギンガマン』に継承された気配を感じる要素。
 作戦であった筈の飛竜との接触により、かつて祖先が訪れた地球には今も故郷を同じくするアトランタ星人の血を引く子孫が生きている事、 そして星を守る戦士の強い意志と誇りを思い出したタロウだが、バズーによりデモスの姿にされてしまう。
 デモスとシーマに挟み撃ちを受けながらもタロウの意識に呼びかけ続ける飛竜だが、 一度は足を止めたデモスはバズーの言いなり光線によって凶暴化。仲間の危機に飛竜はやむなく変身し、 哀しみを振り切る連続攻撃からパワーバズーカでフィニッシュし、本日の巨大化担当はチェンジマンの射程範囲の外という高い所に登場だ!
 ドラマパートがやや長めだった影響で巨大戦はいきなりミサイルから電撃剣でずんばらりんするのが、 図らずも、一度決断すると割り切りの早い、当時のヒーロー性を加速します(笑)
 「タロォォォォォ!!」
 それだけに、最後にコックピットでドラゴンの絶叫が入ったのは良かった。
 侵略の尖兵とされていた悲しき宇宙獣士の真実を知ったチェンジマンは、形見となったペンダントを宇宙葬。
 「さよなら太郎。バズーは必ず倒す。君はアトランタに帰るんだ」
 揃って「敬礼!」で見送るのが凄くチェンジマンで、今作は軍人戦隊という基本設定を置く事により、 こういった描写のスタンスが物語として非常にハッキリしている為、要所要所でビシッと決まるのが、気持ち良い。
 ナレーション「チェンジマンは知った。星王バズーに地球が征服されたら、自分たちが、悲しい宇宙獣士にされる事を」
 ……強そう。
 ナレーション「戦え! 電撃戦隊・チェンジマン! 大星団ゴズマを、打ち破れ!」
 戦隊の尺だと話がまとまりきらない事が多い印象の藤井さんですが、事情と心を持った怪人(ポジション)との悲劇的な決着、 というプロットがそつなくまとめられ、ある意味では視聴者に向けた語りである飛竜の意思表示がタロウの心を揺り動かす要素となり、 『チェンジマン』の根幹にある、被征服者側の悲哀と綺麗に繋がったのは秀逸でした。

◆第8話「お嬢さんは吸血鬼」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 演出のローテ制が確立していない時期ではありますが、山田監督、既に6連投。
 痴漢と誤解されて剣道少女に竹刀で叩かれた勇馬は、その汚名を晴らそうと少女を探すが、 少女はコウモリ獣士に吸血された事で宇宙吸血鬼と化していた! 獣士の遠吠えによる超音波を浴びると正気を失ってしまう女性達を、 超音波シールドをかけた部屋に保護する電撃戦隊だが、それでは根本的な治療方法にはならない……。
 勇馬は悔しがる剣道少女を、「悔しいなら俺たちと一緒に戦うんだ」と囮に指名する(おーーーぃ)
 ……前回は、銀河を超えた戦士同士の交流が比較的綺麗にまとまっていたのですが、今回は、戦隊×女性ゲスト、 というものの見事に藤井脚本が明後日に羽ばたくパターンが炸裂!
 勇馬は、敢えてシールドの外で超音波を浴び、吸血鬼化した少女がコウモリ獣士に呼び出されるのを尾行してアジトに突入し、 わかった事は、ペガサスが一人で戦闘員に囲まれながら戦うと、画面が、激しく青い。
 怪人と吊られながら取っ組み合っている所に4人が合流し(ペガサスの無謀な単独行動っぽいのですが、その辺りも酷く曖昧)、 激しい空中戦の末、パワーバズーカでフィニッシュ。巨大戦では、バルカン・ミサイル・謎のビームから電撃剣のフルコースで成敗し、 一応チェンジロボの飛行戦闘もあるのですが、なにぶん、一番最初に空を飛んで出てきた事もあってか、 初の空中戦闘とは思えないざっくりぶり(笑) まあこの時代は、ドッグファイトは分離時にやるから、というのもあるでしょうが。
 ゴズマの吸血鬼作戦は失敗に終わり、平穏を取り戻す少女と笑顔を交わすチェンジマン……ですが、 吸血ビールスは地球の科学では治療不能であり、コウモリ獣士を倒したらビールスが消えたといった言及もないので、 ビールスを発症させる超音波の発信源(コウモリ獣士)が倒されたからきっとOK、というのは戦隊史上でも割と珍しい解決手段でしょうか。
 次回――誓いの魔球。

◆第9話「輝け!必殺の魔球」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「ごめんよ。悪いけど、俺はもう、野球は辞めたんだ」
 なにやらアマチュア野球界で知名度があるらしい飛竜が、パトロール中に出会った野球少年に“ドラゴンボール”をせがまれるもバイクで走り去り、 必死に呼びかける少年が背後で転んでも気付かぬままにその場を後にする、というのが印象的な導入。
 一方、ゴズマからは自らを悪魔の電気に変えるタコ型宇宙獣士オーズが地球に送り込まれる。 本日も部下へのプレッシャーに余念がないバズーの、金色の瞳に映るギルークが作戦を語る、という変化をつけた演出で、 70年代は主に助監督として、80年代〜00年代まで戦隊とライダーを股に掛け、 足かけ約30年に渡り東映ヒーロー物を最前線で支えてきた長石多可男監督が、戦隊初参戦。
 「今度こそ必ず、地球を征服してご覧にいれます」
 「その言葉、そろそろ私も聞き飽きたからな」
 早い、早いですよバズー様!!
 ……まあバズー様は、潜在的抵抗勢力の可能性を持つギルーク司令を辺境で暴発させようという意図が見え隠れしているので、 敢えて強いプレッシャーをかけている面があるのでしょうが、ゴズマ内部の駆け引きがどう転がっていくのかは引き続き楽しみです。
 少年を家に送った疾風ら4人は、飛竜が高校時代に野球部のエースピッチャーであり、 打者の視界から消失した後に急上昇してストライクゾーンに吸い込まれていく魔球ドラゴンボールの使い手であった事を知る。 熱烈な飛竜ファンである少年の為、飛竜にうまく話を通してやると安請け合いする勇馬だが、突如、少年宅の冷蔵庫が暴走。 電子レンジは火を噴き、掃除機は人間を襲い、カーンデジファーの仕業だ! じゃなかった、 悪魔の電気となって電化製品を自在に操る宇宙獣士オーズが、コンセントから出現。
 4人は逃げたタコ獣士を追って外へ飛び出し、四つ辻で獣士を探す4人をロングで撮ったり、 道の向こうからゆったりとブーバが歩いてくるシーンが、凄く長石多可男!(堪能)
 電撃を受けた4人の危機にドラゴンが駆けつけるが、オーズの回転触手ガードにより、 弱点の目を攻撃する事が出来ずに逃げられてしまい、揃って野球少年の家に戻ると、気を失って譫言を繰り返す少年をソファで休ませる。
 「剣さん……ドラゴンボールを……ドラゴンボール……剣さん……」
 「こんなに言ってるのに……どうして投げてあげなかったの?!」
 仲間達からの詰問はすぐに拷問に変わるんだぜの視線に飛竜は重い口を開き、夏の甲子園予選直前、 ドラゴンボールによって親友のキャッチャーに重傷を負わせた過去を明かす。
 「その時から俺は野球を辞めた。もう二度と、ドラゴンボールは投げないと誓ったんだよ」
 オーズは悪魔の電気を駆使して街を大混乱に陥れ、それを追うドラゴンはチェンジソード(銃撃)が通用せずに苦戦。 くるくると横回転するオーズの触手ガードがデザインを活かして面白いのですが、これは、長石監督がOP・EDを演出し、 公式な監督デビュー作でもある『ザ・カゲスター』の風呂敷マント回転のセルフオマージュだったりするのかしないのか(笑)
 びゅっびゅーん びゅっびゅーん カゲスター!
 『ザ・カゲスター』OPは、どこからどう見ても不審者であるところのカゲスターを、 なんとかヒーローらしく撮ろうという苦心惨憺が窺えるのですが、空を飛ぶ飛行機の入れ方とかが凄く長石多可男で、 ファン的には見所の多いOPであったり。
 本日も足止めを担当する副官ブーバの横槍によりオーズを逃がした飛竜が基地に戻ると、4人の仲間がはしゃいだ歓声をあげており、 一瞬流れる気まずい空気。七並べでもやってたのかよ?!とつかつかと歩み寄った飛竜に差し出されたのは、勇馬が作成した、 本物と重さも感触も寸分違わぬ爆弾入り野球ボール。
 勇馬は「爆発物の専門家」を名乗り、そうか、本当に……弁当箱の中に……おむすびに偽装した爆弾が……。
 「オーズの目に命中させるには、ドラゴンボールしかないと考えたの」
 BGMが深刻なものに変わり、電撃戦隊にトラウマは要らない、と飛竜に迫る悪魔の策士・渚さやか。これはもう完全に、 試合の映像を取り寄せて実際のドラゴンボールについて確認済みです!
 「剣さん、投げて! ドラゴンボールなら、必ず命中させる事が出来る筈よ!」
 「いいこと。これはタケシくんがヒントを与えてくれてたようなものなのよ。投げて。消える魔球を」
 台詞に少しセイラ・マス(『機動戦士ガンダム』)入っていて、怖いよこの人……!
 「みんなを助ける為に」
 さやかは黙り込む飛竜に使命感という駄目押しを入れて完全に退路を断ち、地球を守る為、 過去のトラウマを乗り越える事を余儀なくされた飛竜は、爆弾ボールに手を伸ばす。
 そう、もはやこれは、十代の汗と涙を注いだ野球のボールではない……!
 エイリアンどもをぶち殺す為の兵器なんだ……!!
 …………二重三重に酷いよ、さやか。
 覚悟を決めた飛竜を中心に状況を立て直したチェンジマンは、電気と化して飛び回るオーズを発見すると高圧電線にミサイルをぶちこみ、 地上に叩き出されたオーズの前に立ったのは、高校時代の野球部のユニフォームに身を包んだ剣飛竜!!
 過去を乗り越えようとする戦士の姿といえば姿なのですが、どちらかといえばシュールギャグに踏み外しかけた扮装なのに、 至極真剣な役者さんの表情と、至って真面目に決闘の雰囲気を醸し出すカット割りにより、格好いいシーンになっているのが凄い(笑)
 「馬鹿め! そんなボールで何が出来る!」
 敵味方の見守る中、オーズの電撃を飛び上がってかわした飛竜は、 そのまま空中でスピンし更に縦回転を加えた新投法によりドラゴンボールinアースフォースを投げつけ、オーズの眼球にストライク。
 「見たか! これがドラゴンボールだ!」
 かつて親友に大けがを負わせたトラウマを抱きながら投球フォームに入った飛竜だが、命の危機に咄嗟に空中に飛び上がり、 体から余計な力が抜けた事でスムーズに肩を振り抜く事が可能となり、戦士の本能と球児の魂が結びついた、 もはや新たな必殺魔球が誕生したのだった!
 電気化能力を失ったオーズ&構成員とチェンジマンの戦いになり、絶好調のドラゴンはブーバの鎌を破壊。 ズーカの個別発射でオーズの腕を破壊すると、パワーバズーカでフィニッシュ。 巨大オーズのスタン攻撃を受けるチェンジロボはそもそも電気属性であり、電撃剣でオーズの腕を切り飛ばすと、 スーパーサンダーボルトで勝利するのであった。
 トラウマを乗り越える、というよりも、地球を救う為の殺人野球を割り切って戦士として一歩成長した飛竜は、 少年の前でドラゴンボールを披露。
 「ねえ、俺にも投げられるようになるかい? ドラゴンボール」
 「ああ、大きくなったらな。好き嫌いしないで何でも食べて、たくましい体になったらね。その時になったら、必ず俺が教えに来よう!」
 導入で少年の叫びを無視して走り去ったヒーローが、夢を夢として傷つけぬまま、少年の成長を促しエールを与えて去って行く事で、 ヒーローもまたヒーローとして成長を見せ、互いの関係性において少年の道しるべとして完成する、という美しい着地。
 特に、「その時になったら、必ず俺が教えに来よう!」というのは、 少年の側からするといつか忘れてしまう約束であろう事を前提に含めた上でエターナルなヒーロー性が濃縮されており、 その言葉と共にヒーローは“去って行く”、だが、いつだって“必ず来る”というのが絶妙でした。
 キャッチャーを務めた勇馬はドラゴンボールのあまりの衝撃に気絶して地面に転がり、ミットに収まったボールがナレーション 「チェンジマンは、これからも、この星を、しっかりと守り抜く事を、心に誓った」に被せる形で地球の映像と重ねられる、 というラストシーンも秀逸。
 過去のトラウマ克服のくだり(に、かつての親友が影も形もない)の荒っぽさが今日的な視点で見ると惜しいところですが、 ハイテンポと力技で荒馬を御して格好良く見せてしまう、というのが実に80年代戦隊作劇、という感で楽しかったです。
 そして今回明かされた、飛竜はかつて高校球児だった、というのが、 カラオケで『チェンジマン』を歌うとどういうわけか野球をしている、という謎映像の布石になるのか……! と長年の謎が解決(笑)

◆第10話「恐怖の無人車軍団」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 屋根に玩具の人形(機械仕掛けでシンバルを鳴らす猿など)の乗った無人の車が夜の街を進んでいくという、不気味映像からスタート。 それは、凄く円谷っぽい見た目の宇宙獣士の念動力に操られたものであり、ジープ5人乗りを初披露したチェンジマンも、 ジープを操られて苦戦。
 念動力に操られた無人の暴走自動車は、他の車に激突したり、踏み切りに侵入して列車と衝突事故を起こしたり、 自動車テロで街を恐怖に陥れ、人々は外出を避けるようになってしまう……と、ゴズマの作戦で日本経済に大打撃だ!
 事態を打開すべくパトロール中だった疾風は、そんな無人の街で車に追われていた女性を助け、バイク担当として軽くバイクアクション。 疾風(河合宏)は、バイクスーツ系の上下黒革の衣装を着こなしてみせるのが、ホント二枚目度高い。
 助けた女性を家まで送り、コーヒーをご馳走しますと言われてやに下がる疾風だが、開いた扉の先に広がる、 謎の空間に囚われてしまう!
 ……だってその女の人、どう見てもシーマ(笑)
 女好きのキザ担当である疾風と、見た目女性幹部のシーマの因縁継続は嬉しいですが、先日シーマの変装に気付いたのは、本当に、 声が太かったからだけだったのか!
 シーマが早くも変装2回目なのは、女優さんに飯田道郎声で喋らせてばかりなのもな……というスタッフ側の配慮もあったりはしそうであり、 視聴者には顔からシーマに見えますが、実際の劇中では、声も顔も幻術によってカモフラージュしているという事なのかもしれません、 というかそう思っていないと、疾風の脳が不安ですが、疾風はどんどん、知力に問題あり疑惑が濃厚になっていきます(笑)
 逆に、調子のいいコメディリリーフである勇馬が武器開発技術持ちなのは、全体のバランス取りでありましょうか。
 疾風は変身不能の念動ボールに閉じ込められ、ゴズマの罠にはまった残りの4人も次々と念動ボールに閉じ込められてしまう。 だがドラゴンの奮戦でチェンジマンはこの死地を脱出し、逆転劇になんの関与もできなかった疾風、 キャラ回としては美人局に引っかかっただけの残念な人に。
 解放後、まずは乱れた髪を櫛で直す、というキャラの掘り下げから疾風は怒りの変身。 強烈な念動力で崖崩れまで起こす獣士に苦戦するチェンジマンだったが(なお、緑のマスオさんが、 チェンジマンを誘き寄せる罠の一貫として初の地上戦闘で、結構な威力のビームを発射)、グリフォンズーカのカウンターから、 パワーバズーカでフィニッシュ。
 巨大戦ではバルカンを念動力で跳ね返されるも、チェンジロボフラッシュで目をくらませた隙に、電撃剣で一刀両断。 疾風は電撃戦隊の女性隊員に花を配り、シーマに騙された事を誤魔化そうとするのであった……でつづく。

◆第11話「SOS ココとキキ」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 ある夜、巨大な隕石が地球に落下。 新たな開業資金を求めて その調査に向かった勇馬だが、 隕石の正体はポロ星人の宇宙船であった。ゴズマの尖兵、惑星ゴーストの宇宙獣士により攻撃を受けるポロ星を救う為、 決死の覚悟で包囲網を突破してきたポロ星人ココの目的は、地球のダイヤモンドを手に入れる事。 だが対ゴースト兵器にはダイヤモンドともう一つ、地球に向かう途中で別れ別れになってしまったココの仲間、 キキの存在が不可欠なのであった……。
 君は、出会い頭にビームを撃ってくる宇宙人を信用する事が出来るか? という、 異星人とのファーストコンタクトにおける対応の難しさを問われるエピソード。
 冒頭のバズー様の言行により、視聴者に対してはポロ星人が被害者側である事が提示されてはいるのですが、 とりあえずビーム→スペース翻訳機により交渉を試みる、という順序のポロ星人の言い分を鵜呑みにしていいのかどうか少し悩みます(笑)  やたら声が可愛らしいのも、翻訳機の効果による「相手を油断させて信用を得やすい声音」ではないのか!
 それとも勇馬、服が青いので戦闘員に誤認されたのか。
 バズーの命令によりポロ星人を追うブーバの軍団が来襲し、鎌の修理が終わっていないのか、 巨大なスパナの様な剣を振り回すブーバはペガサスを叩き伏せ、良かった、ドラゴンとのライバル関係がいきなり剥奪されなくて本当に良かった。
 遠征軍に加わった宇宙獣士ゴーストの透明化攻撃に苦戦するチェンジマンは、 当面の利益の一致と敵の敵はたぶん味方理論によりココを庇護するが、もう一人のポロ星人キキは孤独に都会を彷徨っており…… 藤井脚本の傾向からすると、異星を彷徨う二人ぼっちの宇宙人(カップル)の心情、の方に主眼があったのではと思われるのですが、 勇馬とココの星を超えた友情が強調されるわけでなく、ココとキキの関係性が軸となって劇的な展開があるわけでもなく、 当時の戦隊の尺×藤井脚本の相性の悪さが、今回も出てしまう事に。
 前者に関しては、飛竜×タロウ回と似通うのを避けた可能性はありますが、それならそれで、 全然別のアイデアを持ってきて欲しかったなと思うところ。
 ……まあ尺があったらあったで、チェンジマンの友誼に応える為に命がけでゴーストの透明化を打ち破ったココが死亡し、 ココの想いとダイヤモンドを胸に、キキはポロ星へと帰るのであった……という悲恋物一直線になった気がしないでもないので、 二人が無事に母星へ戻れたのは、尺が短かったお陰かもしれません(笑)
 これといって勇馬ならでは、という要素も無かったりで、あまり面白みはないエピソードでしたが
 〔大星団ゴズマ→支配下にあるゴースト星→宇宙獣士ゴーストの攻撃→ポロ星→伝説の素材を求めて地球へ→ 母なる星を守る戦士としてチェンジマンとスクラム〕
 という大宇宙規模の連動が描かれているのは、『チェンジマン』の世界観を示していて良かったです。
 あと、浄水施設?の戦闘シーンにおいて、通路の上を走るようにカメラを移動させながら、チェンジマンvs戦闘員のバトルを、 カット割らずに次々と収めていく、という長回しは格好良い映像でした。

◆第12話「ママはマーメイド」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「私は幸せな親子が大嫌いなのさ! だから、子供達から母親を奪ってやる!」
 シーマの送り込んだ宇宙獣士バンバの吹き矢を浴び、母親達が次々と、母の心を失って子供を襲う凶悪なヒトバンバへと姿を変えられてしまう。
 シーマの台詞はそれだけ取り出すと悪の組織の類型的なものなのですが、以前に乳母怪人が登場している事で、 シーマの背景をにじませているのが、上手い。
 「シーマは、アマンガ星の姫となる為に、幼くして、母親から切り離され、愛よりも憎しみを、平和よりも戦う事を、教え込まれて、育ちました」
 「不幸せな生い立ちやなぁ」
 ギルークはバズーにシーマの生い立ちと作戦の主旨をプレゼンしており、 ゴズマ内部の感覚においても幸せとはいえない幼年期である事が示されると同時に、シーマの出自も明かされ、 序盤からゴズマ側も個人の内面に関わる情報をドンドンと積み重ねてくるのが、今作の面白いところ。
 シーマとバンバは次々とヒトバンバを増殖させ、突然、母親が黒い毛だらけの化け物に変わってしまう、 というのはストレートに怖い表現。
 ナレーション「街は途方に暮れ、母を求めて嘆き悲しむ子供達で溢れた」
 先日の自動車回に続いてゴズマの作戦が市民生活に大きな打撃を与え、電撃戦隊が「税金泥棒」として罵声を浴びる可能性が増していく中、 パトロール中のさやかは公園で嘆き悲しむ子供達を元気づけて回る明るい姉弟を目にする。
 「この街のお母さん達は、みんな居なくなったっていうのに……」
 首を傾げるさやかだが、同じ光景を目にしたシーマは、更なる怒りを瞳に宿らせていた。
 「何故泣かない?! あの子達は」
 ここでシーマが亡き乳母怪人を思い出す、というのがまた上手く、怒れるシーマを目撃したさやかは、 シーマに目を付けられたかもしれない、と姉弟をガードする事に。恒例の後楽園ゆうえんちで姉弟と接触したさやかは、 二人の母親が既に亡い事を知るが、その背後に迫るシーマは大人しめコーデのさやかを姉弟の母親と勘違いし……もしかして、 電撃戦隊側(疾風)もゴズマ側も、互いに異星人なので細かい顔の違いとか区別がついていないのか?!
 むしろチェンジマン変身後の方が、色の違いでゴズマ的に認識しやすくなっている疑惑(笑)
 姉弟と親しくなったさやかは、男の子から求められて「一日ママ」をやる事になり、しばらく、 正統派アイドルルックスのさやかさんフィーチャー。予告からも、今回はシンプルなさやか推し回なのだろうなぁと油断していたのですが……。
 「お前達の母を奪ってやる」
 さやか&姉弟の前に逆恨みに燃えるシーマ(今回も尾行中は地球人コスプレ披露)が立ちはだかり、 背後に立った怪人から毒針が放たれると、それをハンドバッグでガードしたさやかママは、くるっと回って早変わり。
 「シーマ、まんまと罠に引っかかったわね」
 …………え、あの、さやかさん? 得意満面のところ大変申し訳ないのですが、その言い方だと、 シーマを罠にはめる為に姉弟を利用した事になりませんか。
 聞かされた背後の姉弟も、開いた口が塞がらずに愕然と固まっているのですが。
 珍しくロングスカートのファッションの時点で、勘違いさせる気満々の策略だったの?!
 と、シーマばかりか視聴者も凍っている不意を突き、後背の高所に陣取った仲間4人が銃撃を仕掛けるのが凄くチェンジマン。 両陣営入り乱れての戦いとなり、その場を走り去る姉弟の後を慌てて追いかけるさやか、だが……振り向いた少年と少女は、 率直な思いを叩きつける。
 「嘘つき!」
 「酷いわ! あんな小さい子に嘘つくなんて。利用してただけじゃないの! いくら悪い奴を捕まえる為だからって」
 おお、切り込んだ!
 弟の台詞に合わせてBGMを消すのも、面と向かって糾弾されたさやかが(後ろ暗いので)顔を逸らすのも絶妙にはまり―― つまり誤解ではなく本当に得意満面の罠だった――というのを正面から突きつけてくる痛烈な展開。
 疾風を囮にする・飛竜の退路を断って野球ボールを握らせる、と身内を割とえげつなく利用してきたこれまでのエピソードも効いて、 地球を守る使命に青春を捧げた電撃隊員はまだともかく、勝利を掴む作戦の為なら他者の感情を二の次にしてきたさやかがその横っ面をはたかれる、 というヒーローの暗黒面の取り上げと批判に、説得力を持たせた展開は実にお見事。
 そして改めて、民間人の女子中学生を囮にするの、いけない(笑)
 さやかを拒絶して走り去った少年がシーマに捕まったところで主題歌アレンジが流れ出し、 少年を抱えたまま滑走していくシーマを追おうとするさやかは、少女に真っ正面から約束する。
 「信じて! 一日だけママになってあげるといった気持ちは、本当よ! トシオくんは、必ず助けてみせるわ」
 ここから追跡シーンまで、BGMの使い方も非常に盛り上がって秀逸なのですが、
 シーマを罠にはめて得意顔 → 姉弟からの拒絶 → ヒーロー株大暴落 → ヒーローとしての再起
 という、この1分あまりに盛り込まれた、さやかを中心とした四者四様(さやか・姉弟・シーマ)の感情のメリハリが実に鮮やかで、 これが“劇的”だ!という素晴らしい構成。
 シーマを追うさやかだったが、戦闘員と獣士に囲まれ、触手攻撃により大ピンチ。
 「子供を助けたいあまり、焦ったな、渚さやか」
 ここでも、単独行動で突出してしまったさやかの「焦り」が、常の冷静さを失っている事を示唆して、キャラの肉付けに繋がって上手い。
 「私は、一日だけ、ママとなる約束をしたわ」
 「うん!」
 「我が子を見捨てる、親は居ないわ。母親というものは、どんな事をしててでも、我が子を、助けようとするものなのよ」
 「黙れ黙れ!」
 追い詰められても目の光を失わないさやかの姿に激昂するシーマだが、そこに4人が駆けつけ、獣士の触手を破壊。 さやかはチェンジブレスからブレスレーザーを撃ち出してシーマを退けると少年を救出し、ここで機転を発揮するのではなく、 語りモードから救援の力技、というのは少々残念でしたが、愛の奇跡よりは銃弾のリアリティなのが電撃戦隊ではありましょうか(笑)
 「シーマ! あなたは母の愛や幸せとは、ほど遠い生き方をしたようね! 可哀想な人だけど、許さないわ!」
 さやかはチェンジマーメイドし、今作、悪の側にも重ねて、環境や侵略の犠牲者という側面が描かれているのは面白い特徴ですが、 これらの要素が上手く集約されていくのを期待です。
 びしっと啖呵を切ったところで、5人揃ってフル名乗りから主題歌バックの戦闘に雪崩れ込み、曽田博久×山田稔、抜群のコンビネーション。
 忘れかけていた黒もじゃも乱入させてしっかり拾い、マーメイドの連続個人必殺技で獣士にダメージを与えると、元に戻る母親達。 満を持してのパワーバズーカで獣士を撃破後、巨大戦もアースコンバージョンを入れた上でそれなりの尺を使い、 ドラマ性と80年代戦隊の様式美がほぼ完璧レベルで融合した1本。
 非常にメリハリの利いた劇的な構成の中に、戦隊としての要点を不足なく盛り込み、 正統派ヒロイン回としてさやか推しのみならず仇役のシーマもきっちり掘り下げてみせるという充実の内容で、 総合的な意味で、傑作でした。
 メインライター4年目、戦隊作劇を手の内に入れた曽田脚本の真髄を、まざまざと見せつけられた感(それ故にか重宝されすぎて、 精魂涸れ果ててしまう80年代後半になってしまうわけではありますが……)。
 事件は解決し、後楽園ゆうえんちで遊ぶ、さやか達5人と姉弟。メリーゴーラウンドに乗っている最中、 男衆の誰かが少女の名前を叫んでいるのですが、これが疾風だったら(疾風のような気がするけど……)募る疑惑が、ますます危ない。
 そして、組み分けの結果、3人でティーカップに乗る成人男子3名の絵が酷い(笑)
 大仕掛けの話ではないながら、1クール目の締めに、名作回でした。
 次回――こ、これは、悪の天才?!

→〔まとめ3へ続く〕

(2020年5月19日)

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