■『電撃戦隊チェンジマン』感想まとめ1■


“みてみぬふりなんて 出来ないのさ
誓いの We're チェンジマン
愛が力”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『電撃戦隊チェンジマン』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「出現! 秘密の力!」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 迷彩服姿の若者達が、
 サブマシンガンをぶっ放し
 ヘリコプターから降下して拳銃を構え
 機銃掃射の間を駆け抜けて手榴弾を放り投げ
 空中前転からナイフ二刀流を構え
 それをアサルトライフル構えた中年の軍人がヘリから見下ろす
 というのが、主題歌の格好良さもさる事ながら、2018年に見ると凄まじいパンチ力のOP。
 ……だがそれは、これから始まる血と硝煙のカーニバルの、ほんの幕開けにすげなかったのです。
 地球を守る国際組織・地球守備隊――その過酷な訓練において景気良く噴き上がる爆発!  そして爆風で転んだ隊員に容赦なく浴びせられる、ヘリコプターからの銃弾!
 「何をぐずぐずしている! 前進するんだ! もたもたするな!」
 逃げる奴はベト○ンだ! 転んだ奴は弾の当てやすいベト○ンだーーー!
 「伊吹軍曹! 殺す気か!?」
 「走れ! 走れぇ!」
 仲間をかばった隊員の抗議の声には全く耳を傾けず、手元のスイッチをぱちっと入れると、 仕掛けていた爆弾が立て続けに爆発(笑)
 ……思えば80年代作品を見るのも久々ですが、OPから冒頭1分で、満腹すぎて腹が張り裂けそうです。
 その後も伊吹は、地獄の訓練に苦しむ隊員達の頭上をヘリで飛び回りながら威嚇射撃を浴びせ、 食事休憩さえ許さない横暴ぶりに反発した隊員の一人が除隊を宣言して立ち去ろうとすると、その背中に発砲。
 士道不覚悟は死あるのみ!
 それをきっかけに隊員が次々と離脱していき、当然のごとく部隊は崩壊。 疲れ果てた体を引きずりながら人里求めて彷徨い歩く脱走兵達は、道中で一抱えもある明らかに異常な大きさの卵を発見すると、 「みんな! 卵よ!」と喜び群がり、人間性を奪われすぎて、既に正気が失われてしまっています。
 ところがその卵は、宇宙全てを侵略しようとする大星団ゴズマが送り込んできた尖兵であり、 謎のガスと共に卵の中から青い肌で粘液まみれの気持ち悪い怪物(今作における戦闘員ポジション)が誕生。 HPもMPも削り尽くされていた隊員たちは次々とその毒牙にかかり、生き残ったのはたったの5人。
 「このまま、こんなとこで死んじまうのか俺達?!」
 「へこたれるな! 俺達はあの地獄の訓練に耐えたじゃないか! 頑張るんだ!」
 耐えてないぞ。
 だがその時、 丁度良い人数に絞られた事で 最後まで諦めない5人の強い意志に腕のブレスが反応し、 目もくらむような青白い光が5人を包み込む。
 「おお……! これはアースフォース! 遂に出たぞ! やっぱりアースフォースはあったのだ!」
 ヘリからその光を目撃した伊吹は歓喜の声をあげ、不思議なスーツをまとった5人は怪物を蹴散らすと、 突如現れた巨大母艦に回収される。そこで5人を待っていたのは――
 「「「「「伊吹軍曹?!」」」」」
 「それは仮の姿。――本当は地球守備隊電撃戦隊長官である。君たちは、電撃戦隊チェンジマンとなったのだ」
 「「「「「チェンジマン?!」」」」」
 「大星団ゴズマの侵略から、地球を守るのだ」
 「「「「「大星団ゴズマ?!」」」」」
 「星王バズーの名の下に、宇宙を支配しようとしている恐ろしい宇宙人組織だ。 私は宇宙からの襲来がいつか必ず来ると考え、地球守備隊の中に電撃戦隊を作ったのだ。 君たちをチェンジマンにしたあの不思議な力を――アースフォースという」
 「「「「「アースフォース?!」」」」」
 「地球が危機にさらされた時、地球自身が発するといわれている、不思議な力だ。私はその力の存在を信じ、 この時を待っていたのだ!」
 「じゃあ、あの地獄の訓練は」
 「今まさに宇宙人との戦いが始まろうとしている時、真にチェンジマンになれる戦士を選ぶ為のものだったのだ」
 有無を言わせぬ攻勢で怒濤の説明を放り込み、つまり、戦わなければ生き残れない!
 『太陽戦隊サンバルカン』以来の軍人戦隊という事で、民間戦隊との色彩を強調する意図もあったのでしょうが、 境界の向こう側へ行ってしまっているプロ軍人、という伊吹長官の濃縮120%な振り切れ具合が凄まじいインパクト。
 謎のブレスが都合良く5人だけに与えられていたとは思えないので(アースフォースに認められた事でブレスが“生じた”のかもしれませんが、 演出的には最初からはめていたように見える)、参加した訓練生全員に与えられた上で、 生き残った5人のブレスだけに力が宿ったのだと思われ、この人、もしかしなくても宇宙人が襲来するまで訓練を続けるつもりだったのでは。
 「よーし、俺はやるぞ!」
 守備隊の航空基地が襲撃を受けている、という報告と映像に、赤を皮切りに5人はチェンジマンとして戦う事を決意。
 「俺もだ!」「俺もだ!」「私も!」「……私も!」
 「うん! ……ありがとう」
 長官が、航空部隊(赤)・レンジャー部隊(黒)・陸上部隊(青)・作戦部隊(白)・諜報部隊(桃)、 それぞれの所属と名前を合わせて呼んでから辞令を発する、というのが軍人戦隊らしいギミック。
 「只今をもって、電撃戦隊隊員を命ずる!」
 その言葉に合わせて主題歌が流れ出し、長官の前に並んだ5人が揃って敬礼、長官がそれに敬礼を返す、というシーンが、 ついさっきまで滅茶苦茶頭おかしい展開だったのにそれら全てを吹き飛ばす格好良さで、 THE・戦隊という劇的な魅力が凝縮。
 裏を返すと、この瞬間にほとんど許せてしまうというのが、私にとっての「戦隊の魅力」なのであろうなと。
 宇宙戦闘機部隊の攻撃を受けるも敵機を撃墜する母艦の映像を挟み、変身済みの5人はバイクで地上へ降下。
 「貴様等、何者だ?!」
 「チェンジドラゴン!」
 「チェンジグリフォン!」
 「チェンジペガサス!」
 「チェンジマーメイド!」
 「チェンジフェニックス!」
 「電撃戦隊!」
 「「「「「チェンジマン!!」」」」」
 戦隊のみならずその源流まで遡る古典的なやり取りですが、一度説明シーンを挟んで5人が自分たちの所属を把握しているのが明らかなので、 定番のやり取りにストーリー上の説得力がプラスされているのがポイント(何が「電撃戦隊」って、 上官が「電撃戦隊」と言ったからには、黒かろうが白かろうが「電撃戦隊」なのです)。
 5人は戦闘員を蹴散らすと、5人のズーカパーツを合体させて放つパワーバズーカで、怪人を文字通りに瞬殺。消し飛んだ怪人は、 巨大化用怪人の巨大化光線で巨大化復活し、それを見た長官が母艦で自らパネルを操作すると、いきなりどこからともなく飛んでくる、 とチェンジロボが豪快な初登場。
 5人が胸のハッチから乗り込むと、とんがり頭系のチェンジロボが起動し、 電撃剣スーパーサンダーボルトで巨大怪人を一刀両断するのであった。
 ナレーション「地球を守る、5人の戦士。電撃戦隊チェンジマンが誕生した。遂に地球は、帝王バズーの眼に止まった。 大星団ゴズマの攻撃を、果たして地球は、跳ね返す事が出来るであろうか」
 OP・ED除くと、本編は正味17分程度、という時代なのでとにかく全てがハイスピードで進んでいくのですが、その中で、 軍人戦隊らしさの象徴にして、全ての説明役でもある伊吹長官が強烈な存在感。 様々なアブない司令官ポジションを生んできた戦隊シリーズですが、背後から部下にセミオートで発砲するという、 実に鮮烈なデビューを飾りました。
 とにかく、脳をもう少し80年代モードに切り替えないと、伊吹長官に対応しきれない……(笑)
 次回――星王様、いきなり怒る(不安になる早さ)。

◆第2話「星王バズーの怒り」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「地球、なんという素晴らしい星だ」
 両腕と下半身が存在せず、全身が複雑な装飾に覆われた巨大な姿が宇宙空間に投影される、という星王バズーは、 後のメガオーム様(『重甲ビーファイター』)の源流とも思えますが、「星王」を名乗る大宇宙レベルの巨悪として、納得の存在感。
 ギルーク司令官率いる遠征部隊それぞれの母星も、かつてゴズマに征服された事が示唆され、 バラエティ豊かな構成員達を力と恐怖で従える姿が描かれます。
 設定としては真新しいものではありませんが、“被害者が加害者に変わる”という構造は、 侵略者集団の最初のスパイスとして機能しており、後々、広がってくれると面白そう。
 一方、地球では電撃戦隊チェンジマンとなった5人が、レッドマフラー隊ならぬイエロースカーフ隊といったていの軍服(礼装?) に身を包み、電撃戦隊の一員として秘密基地に迎えられていた。男性陣は銀色のジャケット、女性陣は真っ赤なスーツで、 共に黄色いスカーフを巻いているという派手な色彩の衣装は、未来感を漂わせつつなかなかお洒落で格好いい (女性2人の着こなしが違うのも良い)。
 ……黒い人はこの隊服写真の掲載された「君も特殊部隊に入ってモテモテだ!」という募集広告に騙されたのでしょうか(笑)
 「よろしく」
 秘密基地のサポート要員と握手をかわす5人だが、いきなり放たれた背負い投げを回避。そんな5人に今度はナイフが突き立てられるが、 5人はそれも華麗に回避すると、襲ってきたサポート要員達を押さえつける。
 「よーし、歓迎式はそれまで!」
 伊吹長官、高倉健の映画を見て任侠の徒に成り切っている人、みたいな感じで、 自分を戦争アクション映画の登場人物だと思い込んでいるのでは……? 表向きの階級を明らかに違和感のある「軍曹」に留めているのも、 「鬼軍曹」と呼ばれたいだけに見え、なんだか、猫師匠(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)が人格者に思えてきた……!(正気に戻れ私)
 電撃流の挨拶で面々は意気投合し、それを満足げな笑顔で見つめる伊吹長官、高速道を200キロで走るのは当たり前。私は、 一般道を300キロでぶっ飛ばす!というブレーキ無用ぶりに脳髄が溶けそうです。
 地球に大星団ゴズマから新たな宇宙獣士(怪人ポジション)が送り込まれ、今のところ怪人は、特定モチーフの改造や融合ではなく、 粘液・触手・一つ目などを強調した、異形の奇っ怪生物路線。
 戦闘員のリトルグレイ×ミイラ×粘液もですが、ゴズマの戦力はかなりスリラー&グロテスクが強調されています (映画『エイリアン』辺りが背景にあるのかなと思ったら、初代は79年で『2』は86年だったので、そういうわけでも無い模様)。
 宇宙獣士の溶解液により市民が次々と溶かされ、出撃したチェンジマンは謎の建物を発見。早々に突入すると内部でナマコのような獣士と副官シーマに遭遇し、 いかにも出渕女性幹部なデザインのシーマは、女性キャストに飯田道郎(ハンターキラー!)が声をあてる、というかなりの変化球。 宇宙人混成軍団らしさを表現する狙いがあったのでしょうが、顔出し幹部ゆえに、独特の迫力を持つに至っています。
 眼前で展開するチェンジマンと戦闘員達の戦いを、命のエキスを吸いながら余裕で見つめる、というのも上手い印象づけとなりました。
 地球人から奪い取った生命エネルギーが還元される建物内部では戦況不利、と一時撤退したチェンジマンは、 ヘリメカからぶら下げたロープに掴まって脱出。特殊部隊らしいアクションを見せて、さらばだゴズマの諸君ワハハハハハ、 とやろうとするがそうは問屋が卸さずゴズマ戦闘機部隊の攻撃を受け、ロープに掴まっていたレッドドラゴン、第2話にして、 敵戦闘機の直接攻撃を受けて転落、高所から地面に叩きつけられる、というハードなダメージ。
 下手な戦隊のスーツだと防御力不足で、いきなり尊い犠牲として二階級特進になりそうな案件でしたが、 アースフォースのご加護により何とか生きていたレッドは他の4人に回収されて基地へと帰投。――しかし、そこで待っていたのは、 明日も安らぎも要らない鬼軍曹。
 「何をしてる! すぐ反撃するんだ!」
 既に第1話の反乱行為については忘れ去っているようですが、伊吹長官にはブレーキも反省も要らない!
 「チェンジマンがこれぐらいの事でへこたれてはならん! 君たちが浴びたアースフォースを信じろ!」
 ヤ・バ・い。
 「選び抜かれた勇者にもたらされる不思議な力を! 私の研究によると、古代からこんな事は何度かあったのだ!」
 ヤ・バ・い。
 「大昔から語り伝えられた、スーパー能力を持つと信じられた五つの伝説獣は、このアースフォースを見た人達が、名付けたのだ。 チェンジマンのシンボルには、この星を守ってほしいという人々の願いが込められているんだ!」
 遠くを見ながら信念を持ってオカルトを語る軍人というキャラ造形が危なすぎる伊吹長官ですが、 ちょうど10年後の軍人戦隊(80年代回帰的な作風でもある)である『超力戦隊オーレンジャー』の三浦参謀長が同じくオカルト軍人であり、 キャラクターとして意識があったのでしょうか。偶然の一致かもしれませんが、サポート部隊の青を基調とした軍服も超力戦隊を彷彿とさせなくも無いですし。
 「そして今、地球は最大のピンチを迎えている。大星団ゴズマと死力を尽くして、戦わねばならんのだ!  それが出来るのは…………君たち電撃戦隊チェンジマンしか居ないんだ!」
 ここで長官は5人に強い眼差しを向け、叩き込め、地球守備隊魂!!
 OPが象徴するように、職業軍人vs宇宙からの侵略者、という構図がストレートな今作、〔正義のヒーローvs悪の組織〕 というオブラートによる寓意要素がやや薄れているのに対して、ファンタジックな能力源設定が作品全体のバランスを取っている面があるかと思われるのですが、 なぜヒーローの象徴が幻獣なのかの理由付けを明らかにした流れから、息もつかせぬ一気の出足で「戦わねばならんのだ!」 と魂に焼き付け、「戦争」と「幻想」という今作の二大要素を強調。
 無茶な命令 → 精神論 → 流れるようにオカルト → ※独自の研究です → 現実認識 → 我々に残された道は、 「死ぬ」か「殺す」かの二つに一つだ!
 という思考経路が伊吹長官脳内では違和感ゼロで繋がっており、聞いている内にハートに火が点いてしまう恐るべき説得力により、 再び立ち上がる赤。
 「レッツチェンジだ!」
 変身した5人は戦闘母艦シャトルベースに乗り込んで再び死地へと出撃し、ジェットチェンジャー1(赤)・ヘリチェンジャー2 (黒白)・ランドチェンジャー3(青桃)、がゴズマ戦闘機とメカニック戦を展開。 敵基地を破壊すると戦闘員との戦いではそれぞれスーパーパワーを発揮し、単独飛行からの対地攻撃により次々と撃破。
 怪人は今回もバズーカで瞬殺するとゴズマの巨大化担当が登場し、巨大化担当が割と目の前までやってきて巨大化光線を放ち、 一発撃つと疲れ果ててしまうという仕様は、早晩「とりあえずあいつ殺っちまおうぜ」とならないか大変不安です(笑)
 「合体・アースコンバージョン!」
 3つのメカが変形合体してチェンジロボとなると、敵の猛攻に苦戦しながらも肩からチェンジバルカンをぶっぱなし、 弱った所に電撃剣で成敗。戦いを終えた5人は、伊吹長官も交えて、基地の入浴施設でくつろぐのであった。
 「まあ俺達にとって、安らぐのは風呂だけだからな」
 ハードだ! ハードすぎるぞ電撃戦隊!
 ナレーション「鬼の伊吹長官も、裸になれば、優しい男だった。今、5人の若者は、戦いの汗を流しながら、 本当の戦士になった気分がした。大星団ゴズマの魔の手から、この地球を守るもの。それは、電撃戦隊チェンジマンだ」
 焼肉説得ならぬ大浴場完備により5人はあっさり懐柔されてしまい、伊吹長官、恐るべき人心掌握術! 風呂さえあれば大丈夫、 5人の戦士に明日はいらない!

◆第3話「スクラム! 戦士団」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 肉体に対して異常に発達した上腕部と、釣り合いが取れないほど巨大な頭部を持つという、人体のフォルムを残しながらなるべく離す、 という意欲的なクリーチャーデザインの窺える、新たな宇宙獣士が遠征部隊に着陣。
 「こいつは、星王バズー様に、俺の星、惑星ギラスが滅ぼされるまでは、ギラス一の宇宙獣士として、俺と共に暴れ回っていた」
 心中は測りかねますが、ギルーク司令は自分の母星がより大きな力によって滅亡に追いやられた過去をにこやかに語った上に、 迎え入れた獣士の頭部を一刀のもとに切り飛ばし、敵も味方も現場のトップが突き抜け気味。
 「俺の首はどこだぁ……?」
 その状態でも生きている獣士が地球に送り込まれ、頭を失ったまま無差別な破壊を繰り返す怪人、といういきなり凄い展開で、 1−2−3話と、どこにもブレーキが見当たりません!
 立ち向かうチェンジマンだが、同時刻……
 「俺の体はどこだ? ぞびぃーーー! 体、体は!」
 なんと住宅街では、獣士の空飛ぶ首が出現していた!
 宇宙獣士ゾビーは、切り離された頭部と胴体が互いを探し求め、胴体は頭部を呼ぶ為に破壊の限りを尽くし、 頭部は幻覚能力で母星の幻影を撒き散らして人々を混乱させる、という習性を持っていたのだ。民間人を救う為、 単独で首の元へと向かったチェンジドラゴンは幻覚攻撃を受け、今回も落下ダメージを受けてしまう。
 更に、ゾビーを暴れ続けさせる為に首と胴体の合流を阻む副官ブーバを追うが、 元宇宙海賊でありあらゆる乗り物のプロフェッショナルであるブーバにバイク対決で破れ、いいところなし。
 基地に戻った飛竜は、ブーバに勝つためにチェンジバイクを勝手に改造しようとしてメカニックと揉めた末に負傷退場。 だが治療を終えて戻ってきた飛竜が目にしたのは、悪態をつきながらも飛竜の注文通りにバイクを調整しているメカニックの姿であった。
 「こいつは俺にしか出来ない芸当なんだ」
 「そうだったのか!」
 「ただし、フルパワーは一回しか使えないぜ」
 チームワークとはそれぞれの役割に敬意を払う所から生まれ、地球を守る為に組織力で戦う電撃戦隊において、 最前線の暴力担当であるチェンジドラゴンがサポート要員との連携を学ぶこのシーンに主題歌アレンジBGMを流し、 そこからオペレーションルームでの獣士の発見に繋げる演出が渋い。
 ブーバへの雪辱に挑んだドラゴンはいきなりのフルパワーアタックでブーバに打ち勝つと直接対決に臨み、ぶつかり合う剣と鎌。 ドラゴンの斬撃で鎌を弾き飛ばされるブーバーだが続けざまの一撃は軽やかに回避すると、 チェンジソード(銃撃)を片手で受け止めてみせる、という戦闘力を披露。
 会話が少ないのでライバル関係になっていくのかはなんともですが、序盤の内に一当たりして因縁を作っておいてくれるのは嬉しい作劇で、 今後の激突も楽しみです。
 ドラゴンがブーバの妨害を食い止めた事で合体したゾビー&戦闘員とバトルとなり、幻覚を地球フラッシュで打ち破ると、 トドメは必殺パワーバズーカ。巨大化担当が地球に降り立ち……1−2話より、素早く帰るようになりました(笑)
 3−4話はパイロット版の完成品を見る前に撮影している筈だと考えると、これは監督判断によるリアリティなのかと思いますが、 1−2話が「巨大化には膨大なエネルギーを消耗する」という要素を重視して巨大化担当の消耗と疲弊を強調するというリアリティを取ったのから巧い形で繋がって、 消耗はしているけど撃たれる前に逃げる、という事に(笑)
 巨大獣士のパワーに苦戦するチェンジロボだったが、シールドで光線を跳ね返すとミサイルで反撃し、電撃剣でフィニッシュ。 帰還した5人は戦士団(電撃戦隊サポート要員)の喝采を受け、和やかに食事を――上座に上司が座っていて、 周囲の壁に起立した戦士団が並んでいるというこの状況は、祝勝会というよりなにかの集会……――するのであった、でつづく。
 現代まで続く《スーパー戦隊》の基本フォーマットを完成・確立したとされる『電子戦隊デンジマン』から数えても6作目、 という事で、作劇の成熟の一方で、マンネリに陥らない為の試行錯誤が色々あったのかと思われますが、 第3話にしてヒーローと一般構成員の関係性が描かれ、あくまでも組織vs組織である事を強調してきたのは、 近作まで見渡しても意外と例が少ない気がします。
 ……伊吹 組長 長官が、オペレーターやメカニックを先に揃えた上で実働部隊を選抜していた事を考えると、 本当に替えが効かないのは技術者であり、電撃戦隊は代替可能なのではないかという考えが胸をよぎるのですが、 風呂と食事で懐柔です。
 人間の根源的な欲望を巧妙に操り人心を掌握する伊吹長官、恐ろしい男……。

◆第4話「キスは戦いの後で」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 見所は、早くも地球人コスプレを披露して電撃戦隊の攪乱を目論むが、声が太くてバレてしまうシーマ。
 「お嬢さん、何が悲しくて泣いてらっしゃるんですか? 女性の涙は、僕の心を暗くします。泣かないで下さい」
 芝居がかった調子で幼女に声をかけた疾風は、フェミニストとして見過ごせないと居なくなった飼い猫探しを請け負うが、 その背後にはゴズマの陰謀があった! ミルクを与えた動物をヒューマノイド化する獣士ウーバが猫人間を次々と作り出しており、 凶暴な猫人間の、街で人々を襲っては雑踏に紛れて姿を消す、というゲリラ戦法にチェンジマンは苦戦を強いられる。
 元作戦部隊ナンバーワンだったさやかが、人間社会に密接に入り込んでいる動物として、猫の次は犬に手を広げると推測。 それぞれ張り込みを行うメンバーだが、既に大量の犬人間が生み出されており、疾風が逆に罠にはまってしまう。
 「ウーバ、私考えたんだけど、地球の人間におまえのミルク飲ませたら、どうなると思う?」
 第4話にして、大変文字にしにくい衝撃のプレイが決行寸前、靴のつま先に仕込んだ隠し武器で反撃し、 窮地を脱する疾風。
 「ははー! 元レンジャー部隊で鍛えた技があるぜ!」
 それぞれの旧所属を活かした展開が、いかにも精鋭選抜チームという感じで格好良いのですが(まあ、あまり盛りすぎると、 伊吹長官はどれだけ貴重な人員を尊い犠牲にしたのか、という問題が出ますが伊吹長官なので仕方ない)、選抜特訓の受講理由が 「モテたいから」だったり、あまり知力の高くなさそうな疾風、前に所属していたのは“本当にレンジャー部隊だったのか” 少し不安になります。
 髪型セット用のクシで戦闘員を叩きのめし、ますます、前に所属していたのは公にできない実験的暗○部隊とかだったのでは疑惑 (疾風は気付いていない)が募りますが、心優しきフェミニストでもある疾風は元地球の犬である犬人間を蹴り殺すのにしのびなく、 その場を逃走。土管置き場(この時期、割と使われるロケ地だと思われますが、昨今見ない風景であり)で猫人間にも囲まれるが、 そこに投げ込まれた網が犬猫人間をそれぞれ捉え、4人の仲間が姿を見せる。
 「犬猫人間を助ける為に、待ち構えていたのよ! 疾風さんは、いわば囮ってわけね」
 「あっそー」
 どうや聞かされていなかったらしい疾風ですが、作戦立案が女性なので、ぐっと耐えるのであった!(笑)
 「ウーバ! シーマ! 地球の生命を弄ぶのは許さんぞ!」
 「たっぷりお礼してやるぜ!」
 変身して土管の上に並んだチェンジマンは、「チェンジソード!(今日は斬撃)」で戦闘員を蹴散らし、獣士に火炎放射であぶられるも、 パワーバズーカで木っ葉微塵に。巨大化後は今回もシールド反射からバルカン、そして電撃剣でサンダーボルト。
 獣士が死亡した事で、犬猫は元に戻り、疾風はその中に居た幼女の飼い猫を連れ帰ると、報酬としてほっぺにちゅーを受け取ってご満悦。
 「そういえば……シーマもウーバのミルクで育ったと言ってたな。という事は、今のシーマの姿は、本当の姿じゃないって事なのかな」
 今回の獣士は、シーマの乳母だったからウーバ、という凄いネーミングだったのですが、きちっとツッコまれたので、後々、 怪物の本性を見せたシーマの登場などがありそう。
 「まったく気味の悪い連中ね」
 「ああ、この宇宙には、俺たちの知らないエイリアンがまだまだ沢山潜んでるんだ」
 それに比べて地球の生命って儚くも美しい! とナレーションさんがプロパガンダでアジテーションし、侵略者は絶対に許さない! (と同時に、怪人がグロテスク路線である意味を、敵性ミュータントの象徴であると補強)
 次回――早くも司令の片腕と副官の乳母を失ったゴズマは如何なる戦力を繰り出してくるのか! 大空勇馬、 キャラ回一発目で銃殺刑の危機?! にレッツ・チェンジ!

◆第5話「ペガサス逮捕指令」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「チェンジマンの剣飛竜! 大空勇馬を帰してもらうぜ!」
 地球守備隊最高司令官から召喚を受けたチェンジペガサス・大空勇馬が尋問の末に不条理な逮捕命令を受けた事に激昂した飛竜は、 バイクで味方の基地に突撃……(ノーマル)
 そのまま廊下を爆走……(レア)
 そして会議室へ突入(Sレア)

 最高のシーンでした!(笑)

 「乗りなよ」
 超爽やかな表情で勇馬を回収した飛竜は、居並ぶお歴々に向けて堂々、所属と姓名を名乗るとバイクで走り去り、 第5話にして身内に追われる身となった2人は仲間と合流。たとえ最高司令部が相手でも納得いかなければ反抗する、 という独立愚連隊ぶりを見せつける電撃戦隊ですが、元諜報部員の麻衣が勇馬の隊服に盗聴器を仕掛けてきた事を笑顔で明かし、 前回−今回と、女性陣が濃い。
 ところが当の勇馬は上層部に問い質された「結晶X」について覚えがあり、 仲間の為に銃殺覚悟で日本支部を強襲した電撃戦隊の殺意は裏返って身内に向けられるが、そこに起こる激しい爆発が近い!
 一当たりして退却する宇宙獣士は、出自からすると水晶怪人なのでしょうが、造形の関係で折り紙のやっこさんに見えます(笑)
 「冷静になって考えてみりゃ、総司令官がなんの根拠もなくあんな事するわけないもんな」
 5人は基地に帰投し、ゴズマよりも前に、身内の処断を検討。
 兵士が指揮に一丸でないと、軍隊は万全の機能を果たさないのです!
 「さあ、何もかも正直に喋ってもらおうか。おい、大空」
 既に口調が仲間へのそれではなくなっている、拷問開始5秒前な皆の視線に囲まれた勇馬は仕方なく口を割り、 空から降ってきた奇妙な水晶を拾い、将来の資金源にしようと隠していたという、どうしようもなさすぎる真相を白状。
 「俺、電撃戦隊を辞めたらトンカツ屋やりたいんだ!」
 勇馬に呆れつつ、話が出来すぎている事に飛竜と長官は疑問を抱き、 もともと日本には孫娘マリアと観光に立ち寄っただけの筈の総司令官を尾行。ゴズマが巨大水晶焦熱作戦の為に結晶Xを必要としており、 総司令官の孫娘を人質に取る事で上層部から圧力をかけようとしていた真相が明らかになる。
 「トンカツ屋を開くのは諦めるか」
 宇宙から落ちてきた水晶を売り飛ばそうとして上層部からの詰問にもしらを切り通していた、 という実に最低な行動原理だった勇馬ですが、いたいけな少女が人質になっていると知るやさくっと切り替え、憎めないキャラ付け。
 電撃戦隊は勇馬が総司令を水晶の隠し場所に案内、敵の目を引きつけている間に手薄になったアジトを叩いて人質を救出し、 誘い込んだ敵も殲滅するという作戦を立て、敵のアジトを奇襲。
 今日も「チェンジソード!」(射撃)が炸裂し、正面から派手にツッコんだドラゴンがブーバらを囮として誘い出している間に、 マーメイドの操縦するBメカから元レンジャー部隊のグリフォンがアジトに降下してマリアを救出する、 という流れるような連携が滅茶苦茶格好いい。
 初期戦隊の見せ方にはスパイアクション物の要素がありますが、ここでは特殊部隊物の魅力が、戦隊の作劇と見事な結合をしています。
 人質救出の連絡を受けた勇馬は結晶Xを隠した洞窟に獣士を誘い込むと変身し、フェニックスの操るCメカに乗り込むと、 洞窟を爆破して結晶ごと生き埋めを図り、トンカツ屋の恨みを思い知れ!
 辛うじて這い出した水晶獣士はペガサス稲妻スパークでダメージを与えてからパワーバズーカで撃破。 初お披露目の挿入歌で各メカの攻撃からアースコンバージョンしたチェンジロボは、プリズム光線に苦戦するも、 肩からバルカンで吹っ飛ばし、スーパーサンダーボルトでフィニッシュ。
 かくしてゴズマの陰謀は阻止され、孫娘と共に電撃戦隊の基地を訪れた総司令は、 全世界の地球守備隊による電撃戦隊へのバックアップを約束し、伊吹長官は大きなコネクションを手に入れた!
 孫娘と挨拶を交わす際、1人だけ腰をかがめて視線を合わせる女(の子)好きの疾風、という演技が細かいですが、 明確な二枚目ポジション(三枚目要素もありますが)を演じている時の河合宏さんは、実に二枚目で眼福 (総司令を尾行して真相に気付き、アジトの前で相談している時の表情とか非常に格好いい)。
 一方でどこか抜けた雰囲気を持ち合わせているので、後の八荒(『超人機メタルダー』)にしろジョージ (『特捜ロボ ジャンパーソン』)にしろ、話が進むにつれへたれ成分が上昇していく事になりましたが、果たして疾風はどうなるのか、 というのは個人的な今作の注目点の一つです(笑)
 第5話にして、ゴズマが高官の家族の誘拐に手を染めた時は不安がよぎりましたが、
 バイク!
 トンカツ!
 生き埋め!
 と、畳みかけてくる80年代の勢いを堪能できて、大変楽しいエピソードでした。

◆第6話「狙われた女子高生」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「宇宙獣士マーゾ!」
 「生きておったのか! わーはははははは!」
 遠征部隊を訪れた植物獣士(ワイアール星人似)の肩を叩き、笑顔で握手をかわすギルーク指令はホント、昭和の親分気質というか、 昭和のプロ野球界に沢山居そうで……は?! それで、野球回なの?!
 「はははは。ギルーク様こそよくご無事で」
 「うむ。バズー様のお許しを得てな。今は遠征軍司令官よ」
 獣士と親しげに言葉を交わしていたギルークだが、顔を寄せると表情を改めて声を潜める、という変化の見せ方が渋く、 これまで顔面金色中年だったギルーク指令に、一気に深みが増したのが鮮やか。
 「……アハメス殿はどうした。女王アハメス殿はどうした?」
 「わかりません。どこへ行かれたのか。生きておられるのかも」
 「そうか……しかし、何故おまえがここに」
 疑問を呈したその時、高笑いと共に姿を見せた星王バズーにより、ギルークはかつて、 女王アハメスと共に大星団ゴズマに抵抗を続けた一大勢力の首魁だった事が明かされる。 盟友アハメスの忠臣であるマーゾと共に一度はバズーの暗殺も目論んだギルークだが、それに失敗。 今やゴズマに従う尖兵となった両者に、かつて自分の暗殺未遂に用いた呪術により、地球を征服せよとバズーは命じる。
 遠征部隊の士官が、いずれも過去に大星団ゴズマに屈した被征服者側であった事は第1話時点で示されていましたが、 その中でも有力な指導者であったギルークは今もバズーに心から忠誠を誓っているわけではなさそうな事が暗示され、 ゴズマ側に波乱の一石が投じられる事に。
 バズーはバズーで、辺境で再び牙を剥くも良し、忠節を証明するも良し、 とギルークの腹の底を承知した上で敢えて遠征部隊を任せているようで、ギルークが早々に右腕を戦線に投入したのも、 バズーが事あるごとに遠征部隊にプレッシャーをかけてくるのも、互いの駆け引きの産物であったという、 第6話にして実に濃厚な敵勢力の掘り下げ。
 成功しても失敗してもバズーの得、と地球に送り込まれたマーゾは乙女座の女子高生に次々と憑依し、 両手から伸びる植物のツタをひらひらとたなびかせた制服姿の女子高生が、幻想的な夜の街を駆け回りながら赤い種子をばらまく、 というのが強烈な映像。
 事件を調査する電撃戦隊は被害者の誕生日が一緒という共通点を割り出し、
 「次に襲われる女の子もわかるはずだ。誕生日の同じ若い女の子なんて、もうそんなに居ない筈だ」
 と宣う長官が物凄い丼勘定なのですが、本当に残り一人だったぁ!
 ガード対象が通う「名門女子校」の響きに大興奮する疾風だが、 女子寮にこのレンジャーを送り込むとグリフォン逮捕指令が出て怒りの飛竜が女子寮にバイクで突入しかねない為、 女性2人(設定年齢は幾つなのだろうか)が護衛として女子高生コスプレで潜入する事となり、セーラー服と虚無僧は東映の伝統芸です。
 「お前達スケバンか……?!」
 丁度この年、メインライター杉村のぼる(杉村升)、演出陣に坂本太郎・田中秀夫・小西通雄という、ドラマ版『スケバン刑事』 (第1作)が放映されており、ほぼ内輪ネタでは(笑)
 「よしてよ。この顔、よく見てよ!」
 「まさか知らないとは言わせないわよ!」
 「は?! おまえ達は!」
 「渚さやか! チェンジ・マーメイド!」
 「翼麻衣! チェンジ・フェニックス!」
 から、2人が名乗りを上げて変身! というのは格好良かったです。
 男衆と合流して戦闘開始、白桃コンビによるダブルハリケーンソード(射撃)で痛めつけてから、パワーバズーカ。
 前回−今回は、巨大化した怪人が即座に攻撃を仕掛けてくるので巨大化担当に攻撃している暇がない、とそこはかとなく理由付けを増強し、 巨大植物獣士のツタ攻撃を受けるチェンジロボであったが、腹からチェンジミサイルで反撃するとさくっとスーパーサンダーボルト。
 「アハメスよ……私はそなたが、生きておるものと信じておるぞ。この広い宇宙のどこかに、きっと必ず、いつか会えると」
 星の海に向けて呟くギルークの人間的な面が掘り下げられ、予想外に早い時点で、 それぞれ事情を抱えた侵略勢力というゴズマ側の暗闘に触れられたのは、ここからどう転がっていくのか大変楽しみです。
 戦い終えた電撃戦は基地内のプールで一休みしており、どうして唐突に水着なのかと思ったら(まあ第2話は風呂でしたが……) 体のあちこちにアザが出来ても、チェンジマンを辞めるわけがない、と女性陣が宣言し、 近作ほど劇的なチームアップが描かれるわけではないものの、メンバーそれぞれの自発的な決意を補強し“青春を捧げる場” としてのチェンジマンを強調する、という構造。
 基本的には、軍隊に所属している上に、アースフォースという特殊な力に「選ばれた存在」ではあるわけですが、 軍人だろうが戦場だろうが、そこに居るのはあくまでも「人間」である、というフラットな視点で戦士像が示されているのは面白く、 「青春と戦い」というのは曽田さん(或いは鈴木プロデューサー)にとって思い入れのあるテーゼなのかもしれません (次作『フラッシュマン』は「奪われた青春」の物語とも見て取れますし)。
 次回――どう見てもスーパージャイアンツ。

→〔その2へ続く〕

(2020年2月29日)

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