■『五星戦隊ダイレンジャー』感想・総括■


“転身だァァッ”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた 『五星戦隊ダイレンジャー』感想の、総括&構成分析。

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☆総括☆

 グダグダだァァッ

 一言でまとめると、そんな感じで(^^;
 本文中で何度か触れましたが、作品として最大の問題は、個々のエピソードの繋がりの無さと、 それにともなう人間関係の変化の描写不足、総じて物語を積み重ねる事の意味の決定的な欠落となります。
 その為、後半になればなるほど物語が破綻していき、物語を積み重ねていく事で成立していく筈の面白みが生じなくなってしまった。
 特に致命的となったは、なんといってもシャダムと道士カクの扱い。
 双方とも一番最初から登場しているレギュラーキャラであり、片や敵幹部、片や戦隊の総司令という立場でありながら、 最終的に大きく変化した立ち位置に、全く説得力が生まれませんでした。
 立ち位置が変わる事も、設定が追加される事も、構わないのです。
 問題はそこに説得力がまっっっっったく無い事。
 突然、実力者扱いになるシャダムにも、突然、メンバーと篤い信頼関係で結ばれている事になったカクも、 それぞれ全く説得力がありませんでした。
 そこを描けなくて、物語を積み重ねる事に何の意味があるのか。
 この2点が、最終的に完全に連続的な物語としての面白さを失わせてしまいました。
 特に、話の流れの都合で浮沈が激しくなりがちな敵方であるシャダムはともかく、戦隊の長官ポジションという、 身近かつ重要な立ち位置でありながら、道士カクをしっかりと描写できなかったのは、痛恨の極み。この一事をもっても、 物語としては最低ランクと言わざるを得ません。
 他にもとにかく、陣が魔拳士モードになろうが亮が全身赤タイツに変身しようが会話はつつがなく進み、 クジャク編では大五さん以外の4人はほぼモブキャラとなり、コウが行方不明だろうが東京が大神龍の攻撃で大被害を受けようが、 休日は草野球……など、万事が万事、全体の連携と連続性が無さ過ぎます。
 なんとも残念。

 好きなキャラは、なんといっても大五さん。
 子供と動物を愛し、ロマンスを展開し、圧倒的な主人公属性を持つ大五さんの存在が居なければ、今作は完走できなかったかもしれません(^^;
 亮が正統派ヒーローとは言いがたい、というのは本作の仕込みの一つなのではありますが、しかし結局脇の大五さんがヒーロー属性すぎた為、 それほど意味が無かったというかなんというか。
 まあ、そこまで冒険できる時代では無かったのでしょうが。
 道士はなー、ルックスだけなら好きなんだけどなー(笑)
 あと前半、あれだけ面白くなりそうな気配を漂わせていたシャダム事務長が、まるっきり面白くならなかったのは、 かえすがえすも非常に残念。しつこいけど、本当に残念。
 阿古丸とか、本当に、何だったのか。
 阿古丸といえば、今作の大きなガンの一つであるコウ。
 もう、コウに触れるのは止めた方がいいのではないかというレベルの存在ですらある、コウ。
 第三勢力ではない本格的な追加戦士、というのが模索期であったという弁護は出来るにしても、全く好感の持てない初登場に始まり、 メインになるエピソードが基本グダグダ、引っ張った末にさしたる活躍無しというか、そもそも劇中での存在の必然性があまりに薄すぎました。
 巨大ロボは全く苦戦の気配も無いし、戦隊としては、なぜか連携しないし。
 本当に、どうして正体を秘密にしたのか。
 ウォンタイガーとは何だったのか。
 結局、杉村升は、1話完結形式のエピソードにアイデアを詰め込むならともかく、最初のはったりで仕掛けた要素を、 流れでまとめる能力が低いのだなぁ、と言うほか無い。

 長所を挙げると、音楽、アクションの格好良さ、そして、名乗り。
 名乗りの格好良さは、戦隊シリーズ歴代屈指、といって良いでしょう。
 天に輝く五つ星!
 惜しむらくは、物語が、それについていけなかった……。
 

★構成分析★
〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。記憶と感想を 読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。

話数監督脚本メインキャラ備考
小林義明杉村升―― 〔ダイレンジャー結成〕
小林義明杉村升将児
坂本太郎杉村升大五
坂本太郎杉村升大五 〔ダイレンジャー6000年前の戦いについて知る〕
小笠原猛荒川稔久リン
小笠原猛荒川稔久リン 〔天宝来来の珠入手、気伝獣復活〕
渡辺勝也杉村升
渡辺勝也杉村升 〔大連王登場〕×
坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編1〕
10坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編2〕
11小笠原猛荒川稔久将児
12小笠原猛高久進 ×
13東條昭平杉村升―― 〔老道士グホン来日〕×
14東條昭平杉村升―― 〔〃〕
15坂本太郎荒川稔久 〔3バカ編1〕
16坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編3〕
17渡辺勝也杉村升リン 〔コウ編1、阿古丸登場〕×
18渡辺勝也杉村升リン 〔コウ編2、キバレンジャー誕生〕×
19小笠原猛荒川稔久将児 〔コウ編3〕×
20小笠原猛荒川稔久―― 〔コウ編4、ゴーマ十五世登場〕
21東條昭平杉村升―― 〔コウ編5〕
22東條昭平杉村升―― 〔コウ編6、ウォンタイガー誕生、牙大王登場、亀夫初登場〕×
23坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編4〕
24坂本太郎荒川稔久将児 〔3バカ編2〕
25小笠原猛高久進 ×
26渡辺勝也井上敏樹 〔陣編1〕
27渡辺勝也井上敏樹 〔陣編2〕
28小笠原猛杉村升 〔亀夫編1、総登場祭〕
29東條昭平杉村升―― 〔コウ編7、グホン再来日〕
30東條昭平杉村升―― 〔コウ編8、気力バズーカ登場〕
31東條昭平杉村升 〔亀夫編2、超気伝獣ダイムゲン登場、スーパー気力バズーカ完成〕
32小林義明杉村升亮×将児
33渡辺勝也荒川稔久リン
34小林義明高久進大五 ×
35渡辺勝也井上敏樹 〔陣編3〕×
36坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編5〕
37東條昭平杉村升―― 〔コウ編9、大神龍降臨、阿古丸再登場〕
38東條昭平杉村升―― 〔コウ編10、コウ失踪、停戦協定締結、大神龍帰還〕
39小笠原猛井上敏樹 〔陣編4、陣落日に散る〕×
40東條昭平荒川稔久将児 〔3バカ編3、さらば3バカ〕
41坂本太郎藤井邦夫大五 〔クジャク編6,クジャク大昇天〕×
42小笠原猛杉村升―― 〔コウ編11、大神龍再臨〕
43渡辺勝也杉村升―― 〔コウ編12〕
44渡辺勝也杉村升―― 〔コウ編13、コウ母死亡、阿古丸死亡〕×
45坂本太郎杉村升―― 〔道士ゴーマ帰還、ダイレンジャー解散命令〕
46坂本太郎杉村升―― 〔ダイレンジャー解散〕
47小笠原猛荒川稔久―― 〔ダイレンジャー復活〕×
48小笠原猛荒川稔久―― 〔道士カク死亡、ザイドス消滅〕×
49東條昭平杉村升―― 〔ゴーマ十五世消滅、シャダムがゴーマ十六世に、ガラ消滅、大神龍三度〕×
50東條昭平杉村升―― 〔シャダム消滅、ゴーマ宮崩壊〕×

(演出担当/小笠原猛:12本 坂本太郎:12本 東條昭平:12本 渡辺勝也:10本 小林義明:4本)
(脚本担当/杉村升:26本 荒川稔久:11本 藤井邦夫:6本 井上敏樹:4本 高久進:3本)

 演出陣は、パイロット版をベテラン・小林義明が担当した後は、基本、4人でローテ。 中盤以降はこれもベテランの東條昭平が話が大きく動く回を担当し、実質的なメイン監督になりました。 中盤の転機となる陣編1・2を任されたり、前年の『ジュウレンジャー』でデビューと考えると、 渡辺勝也はかなり重用されていると見てよいでしょうか。終盤のよくわからない点は、陣編のラストを何故か小笠原猛が撮り、 3バカ編のラストは東條昭平が撮っている事。クジャク編だけは最後まで坂本太郎が撮りましたが、どうして最後だけ、 変にローテがずれたのか。
 脚本陣は、約半分をメインライター杉村升が執筆。サブ&3バカ編を荒川稔久、クジャク編を藤井邦夫、陣編を井上敏樹、 スポットで高久進、というメンバー。……まあこう色々と巧く生かし切れなかったというかなんというか、 藤井邦夫だけは好きなものを好きなように書いていましたが(^^;

 メイン回配分は
 〔赤:8 緑:9 青:6 黄:4 桃:5〕

 驚愕、大五さん大勝利。
 これには理由がありまして、大抵の戦隊シリーズだと、苦戦→パワーアップなど物語全体が動くような回では、 なんとなく赤に焦点が合ってメインぽい扱いになる事が多いのですが、今作ではそういった時に5人の扱いが比較的フラットな場合が多く、 それほど亮にスポットが集中しません(終盤はなんとかリーダーシップを取り出しますが)。その為、メイン回としてカウントしにくい(^^;  純然たる個人メインの話の回数、という点では、他戦隊と、それほど、大きな差はないかと思われます。
 逆に、単独で二桁近くまで伸ばした大五さんは明らかに多いですが。
 やはり、陰の主役だったのか。
 正直、一回ぐらい知さんに分けても、誰も怒らないと思います(笑)
 散々ネタにしてきた知さんは、回数どうこうよりも、初メイン回が遅い・次のメイン回までが長い・軒並み面白くない、 と中身が酷い。
 将児は、回数・タイミング・内容、と揃って標準的。
 カウントしたら意外と少なかったリンは、主に絡む相手がコウ、という事になっているのがネック。今作におけるコウ編=物語が動く回、 なので、そうするとリンばかりに焦点を合わせるわけにはいかなくなり、結果、個人としては目立つ機会が少ない。
 で、そのコウ編が、カウントしてみたらなんと13回で、全体の4分の1。
 真の主役はコウだったのか(愕然)
 というかまあ今作のグダグダの象徴ともいえるコウ編がそれだけのウェイトを締めていたなら、それは終盤に向かって、 どんどんグダグダしていく筈だな、と(^^;

 星取りとしては非常にわかりやすく、とにかく後半が駄目駄目。
 単独で駄目というよりは、流れとして駄目、という回が多いですが。
 前半は、名作、という回があるというよりも、平均して面白いという印象。それだけに後半の失速が悔やまれます。結局、 ベスト回を上げるとしたら、リンのアイドル回か(笑)
 最終回後に振り返ると、道士カクが親しめる一面を見せたという点でも、貴重な回となりました。

(2013年8月13日)

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