■『五星戦隊ダイレンジャー』感想まとめ5■


“Fly high my Destiny
逃げ出さない
気力を集めて 旋風起こすのよ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『五星戦隊ダイレンジャー』 感想の、まとめ5(33〜40話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔総括〕

                

◆第33話「アイドル初体験」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
 ある日リンは、怪我した小鳥を助けた縁で、 ハイパー メディアクリエイター・高村翔一郎という青年と出会う。
 「その笑顔、僕に貸してもらえないかな?」
 (出会いはあまりにも突然、ちょっぴり少女マンガしてました。
 私の小さな胸、ときめいちゃったみたいです)

 自 虐 ネ タ ?
 高村翔一郎を演ずるは、レッドマスクを演じた海津亮介。
 中国から来た素朴な留学生をオーラーパワーで華麗に転がします(おぃ)
 しばらく後のある日、裏返った声でアジトに駆け込んでくる男衆。道士に向けて広げてみせたのは、 セーラー服姿のどう見てもリンが写った、カップラーメンの広告ポスター。
 「リン……?」
 それが間違いなくリンであると、確認しあう男達。
 「……これもやはり、正真正銘のリンか?」
 道士、おもむろに写真集を取り出す(笑)
 リンの写真集は、スチールさんにお願いしたのでしょうが、かなりそれらしい写真をちゃんと本の形にしてあり、 かなり凝った小道具……か、よく考えると、演じている女優さんがれっきとした写真集を出していたという可能性もありますか。
 「どうやらリンは、アイドルになってしまったようだ……」
 一応、日本での保護者の筈なのに、おじさん、泣くゾ。
 荒川脚本のアイドルネタという事で鉄板で組み込まれると思われた歌ですが、意外と(失敬)上手。この手の女性戦士挿入歌としても、 悪くない出来となりました。
 かくて、人気アイドルの階段を駆け上がるリンだが……ハードスケジュールに徐々に体力をすり減らしていく。 マンションの前で膝をつくリンはしかし、心配する高村に笑顔を向ける。
 「私、高村さんとのお仕事、絶対頑張ろうって決めたから」
 「嬉しいよ」
 「大好きです。………………高村さんの写真。優しさが伝わってくるから、高村さんの」
 高村に好意を寄せていくリン……しかし。
 「俺が優しい……? 馬鹿な女だ。俺が写真を撮るたびに、気力が吸い取られているとも知らずに」
 高村の正体は、ゴーマ怪人・メディア魔術師であった!
 メディア魔術師はガラの命令により、リンから吸い取った気力を、写真やポスターを通して一般人に浴びせ、 ゴーマの下僕として洗脳する作戦を発動する。リンがフラフラして様子がおかしいし、気力が感じられない、 とコウと白虎神剣から相談を受けた男衆はTV局に向かおうとするが、その途中で、凶暴化し気力を振るってビルなどを壊して暴れ回る一般人を目にする。
 更に、メディア魔術師がわざわざ出てきてネタばらし(ここは事件の裏を伝える為にこうするしか無かったのでしょうが、 完成度の高いシナリオだっただけに、惜しい)。「メディア拳・一時停止」などに苦戦するも手傷を負わせ、TV局へ急ぐが、 その前に今度はガラが立ちはだかる。
 一方、気力の消耗により限界が近づきながらも、右手に怪我をして現れた高村を気遣うリンは、その傷にハンカチを巻き、 高村と二人で撮った写真を手渡す。
 「リン! どうして、笑顔でいられるんだ。君はもう……フラフラの筈なのに」
 「だって…………だって、高村さんが好きだからっ」
 「リン……」
 収録開始される歌番組。TVカメラを通してリンの気力は全国に広がっていき、各地で人々が凶暴化する。
 「俺は何をしているんだ……」
 手当を受けた傷、二人で写った写真、リンの笑顔……惑う高村。
 外では男衆を食い止めるガラが哄笑する。
 「もう歌が終わる……ホウオウレンジャーの死ぬ時だ!」
 だが、高村は写真を手にすると立ち上がり、強引に番組を中断すると、リンをさらって夕陽の海岸に逃げ出す。
 「俺は君を騙してた……俺はゴーマの人間なんだ!」
 高村の告白を聞き、しかしそれでも、高村は高村、とその背に頬を寄せるリン。
 「俺は……俺はどうして、ゴーマになんか生まれたんだ!」
 「高村さん! 例えゴーマだって、高村さんは高村さんよ!」
 「リン……」
 抱きしめ合う二人
 そのまま唇が近づき……どこまでいくのかと思った所で、しかし爆撃。
 「メロドラマはもう終わりよ」
 「ガラ……」
 「愛する心に目覚めた時、おまえは既に死を選んだのだ」
 「高村さんは渡さないわ!」
 だが、気力を失ったリンは転身する事ができない。ガラの攻撃からリンをかばった高村は、メディア魔術師の正体を見せてガラに挑むが、 反撃を受けて倒れる。
 「リン……今度は人間に生まれ変わって、君の笑顔に、もう一度、会いたい……」
 高村の姿に戻って今際の言葉を遺したメディア魔術師が、また正体に戻って、そのメディア魔術師の姿にリンがすがりついて、 頭に指していた花を捧げる、というのは良かった。
 怒りのリンは、気力を振り絞って転身、動揺したガラの襟を掴んで、顔面パンチ。
 平手打ちなんて生ぬるい事はいいません。拳骨です。
 吹き飛んだガラはメディア魔術師の死体に巨大化爆弾を投げつけ、メディア魔術師は巨大化(特殊仕様の爆弾?)。 駆けつけた仲間達とともにホウオウレンジャーは大連王に乗り込むと、哀別の疾風怒濤。 爆散したメディア魔術師の体からこぼれた思い出の写真は波にさらわれ、リンはただ海を見つめるのであった……。
 次回予告から、アイドルネタの軽いギャグ回かと思わせて、敵との交流ネタと、ゲストキャラと戦隊メンバーの恋愛ネタも交えて、 このレベルでまとめた技量は、さすが荒川稔久。
 全体的にキラキラとした監督の演出も楽しそうで、思わぬ秀逸回でした。
 リンは劇中での扱いを見るに不幸体質なのですが、“ピンクの扱い”としては全体通して可愛く撮ってもらっている印象。 扱いが不幸な分、という事かもしれませんが(^^;

◆第34話「トゲトゲ少女狩」◆ (監督:小林義明 脚本:高久進)
 クジャクさんが出てこないと藤井邦夫は力が湧かないのか、大五さん回だけど脚本は高久先生。
 迷彩服姿でオカマ口調という、120%変態のゴーマ怪人・サボテン将軍(人間体)を演じるは、斎藤暁!
 「可愛いお子さんですこと、食べちゃいたいわ。あっははは!」
 ガソリンスタンドの店員に扮たサボテン将軍は、幼女をさらい、その父を攻撃。休日にドライブにでも出ていたのか、 ジープで走っていたダイレンジャー5人が倒れる父親を見つけ、ガソリンスタンドの様子を探った大五は、絶命した店員と、 サボテンの鉢を見つける。
 「これは、俺の部屋にあったサボテンだ……」
 突然、サボテンに出会った冬の寒い日の回想(笑)
 ある日の晩、ゴミ捨て場にかがみ込む謎めいた少女と、鉢ごと捨てられていたサボテンと出会う大五。
 「お兄ちゃんは、サボテンが好き?」
 「俺は、植物も動物も、この世に生きているもの全部が好きだよ。どんな命だって、尊いからね」
 相変わらずの主人公としか思えない台詞とともに、大五はサボテンの手当を少女に約束。 ミチルと名乗った少女は、踏切を通り過ぎた電車とともに、姿を消す……。大五の世話の甲斐もあり、生気を取り戻したサボテンだったが、 春になって突然、部屋から無くなってしまう。
 そのサボテンを何故かガソリンスタンドで見つけた大五は、スタンドの外にミチルちゃんを発見してその後を追うが、 奇妙な人形の置かれた工事現場に迷い込み、人形から攻撃を受ける。
 またも目の前に現れるサボテンの鉢、そしてサボテン将軍。
 「おたくは……植物や動物がお好きなようね」
 将軍の横に姿を現すミチル。
 「おたく、この子の正体を知りたい? さーーーあ、ミチル、正直に話しなさい、私は多肉植物のサボテンです。このおじさんと、 同じ仲間ですってね」
 むしろサボテン将軍のアイデンティティがサボテン寄りというのがビックリなのですが、結局のところゴーマ怪人は、 器物仙人(妖怪)の類い、という事なのでしょうか。
 着飾らせた少女を人形のようにしてアジトに飾っている変態ではあるが、 ゴーマきっての武闘派らしいサボテン将軍の攻撃を受けて倒れたミチルは、少女達が将軍に捕まっている事を大五に告げる。 そこへ更にガラの攻撃が放たれ、砕け散るサボテン(ミチル)と鉢。
 どうやらミチルは大五をおびき寄せる為の罠として将軍に利用されていたらしいのですが、辻褄は意味不明。単発の高久脚本なので、 正直もう、考えても仕方ない。
 怒りの大五さんが超格好良く変身し、サボテン将軍と激突。駆けつけた仲間達が雑魚を蹴散らし、囚われの少女達を助け、 シシレンジャーは天幻星・霧隠れから幻戦車でサボテン将軍を撃破。最後は、早くも忘れかけていたスーパー気力バズーカが炸裂。
 更に帳尻合わせにキバレンジャーが登場し、牙大王の飛翔剣・木っ端微塵で巨大サボテン将軍を滅殺。
 にしても、ウォンタイガーの曜日ボールによる気力攻撃は、初登場時以来、んまっっっっっったく、 使わないなぁ(^^;
 今回はサボテン将軍の攻撃を反射するアクションがあったので、そこで例えば「金」をシールドに使うとか、細かく入れてくれると、 面白いのに。
 戦闘を終え、ミチルのサボテンを探した大五は、砕けた植木鉢の残骸のみを見つけ、ぐっと涙をこらえる。
 一歩間違えなくてもおかしな人ですが、大五さんだから、許す、私は許す(笑)
 ラスト、ドライブの続きか、ジープでひゃっはーする4人+大五。何故かそれを見つめる、通りすがりの道士カク。
 「大五……おまえの心の優しさが、ゴーマの悪に勝ったんだ」
 いきなり出てきて、強引に綺麗っぽくまとめた!
 前回以来、心配してリンを尾行しているように見えなくもありません、が。
 歩み去る道士にかぶさるナレーション。
 「――大五は信じた。あの妖精は、きっとどこかに生き続けているだろうと。全ての命を守ってくれ、五星戦隊ダイレンジャー!」
 そして通り過ぎる道士の脚元には花の咲いたサボテンが……でエンド。

 妖 精 だ っ た の か

 ……えー、以前から大五さんには主人公補正勇者回路と同事に、メルヘン乙女回路 が内臓されている疑惑がありましたが、サボテンの妖精という事で納得したのか、大五さん。
 たぶん大五さんは、右半身が勇者回路、左半身が乙女回路、で出来ている。
 正直なところ、シナリオの方は、純粋に意味がわからなかったのですが(辻褄を無視すれば解釈は出来ますが)、
 奇妙なオブジェ・変わった音楽の使い方・戦闘員に凝る
 など、小林義明らしい演出を楽しむ回。
 という事で。
 高久脚本だから仕方ない。
 後まあ、大五さん格好良かったからいいか、みたいな。
 次回、筋肉祭。
 ……というか、後半戦を前に各キャラの単発話を1本ずつやっておくのかと思っていたのですが……亮&将児、リン、大五、 と来て…………あ、あれ?! また知さんはスルー?!
 まあ、鳥カゴ回を将児回と見て、次回が亮のターンで、次々回が知さんのターン、という可能性も微量ながらありますが……。

◆第35話「新奥義クモの舞」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹)
 相変わらず他流の師範を襲っている陣、「魔性降臨」で、魔拳士化。ヒョウガ流の新奥義、クモの舞を炸裂させる。一方、 道士に連れられ、日舞師範の舞を見学するダイレンジャー。道士は「日本舞踊の動きを拳法に取り込むのだ」というが、 5人にはどうもピンと来ない。その帰路、亮と大五(意外と珍しい取り合わせ)は、クモの舞を受けた空手師範と遭遇する。 それは受けたものの腹部からクモの形の痣が上へとせり上がっていき、のど元に達した時に被害者の息の根を止めるという、 恐るべき暗殺拳であった!
 飛んでくるメダル、亮に借りを返しに現れる陣。
 「魔性・降臨」
 「気力・転身」
 「祈れ、俺を恐れながら死ぬがいい」
 陣の「魔性降臨」に対し、凄く普通に転身する亮。
 …………前回の交戦時、気力で吹き飛ばしはしていたけど、陣の前で変身した事はない筈なのですが……。
 いやまあかつて、ダイレンジャーが他人の前で転身するのに躊躇した事はないのですが。
 ないのですがしかし、認識的に(一応)一般人の筈の相手に、転身して襲いかかるというのはどうなのでしょう(笑)
 まあ、魔拳士化した時点で、妖力を身に纏うようになり、それを感じ取ったので容赦なく転身したとか、色々と理由はつけられますが。 そもそも「魔性降臨」に対して全く驚きもしませんし、その辺りの描写が完全に抜け落ちていたのは、 よろしくない。
 亮は一応、魔拳士モードを見てはいますが、それはゴーマ四天王の作り出した幻像と認識している筈なので、 その辺りひっくるめた台詞なり描写なりは欲しかった所です。とにかく総じてみな、どちらも状況に対して驚かなさすぎ(^^;
 というか、四天王の幻影攻撃やってしまったのが大失敗、というか。
 対峙する二人、開幕早々、炸裂するヒョウガ流奥義・魔道妖拳“クモの舞”! 直撃を受けたリュウレンジャーは地面に転がり、 陣はその場を去って行く。
 「先生、遂にヒョウガ流は完成しました。この私の手で。……私こそ、史上最強の拳士」
 師匠の墓に線香を供え、直後に正拳突きで墓石を砕く陣。
 ここは陣の屈折が短時間で表現されて、面白かった所。
 そこへ、亮を助ける為に陣に“クモの舞”を解除させようと4人が現れ、やはり容赦なく転身。 対して魔性降臨した陣は4人を蹴散らすが、ザイドスとゴーマ怪人・大筒軍曹が乱入し、ダイレンジャーは一時退却。 ザイドスを嫌う陣もその場を去って行く。
 どうすれば陣を破り、亮を救う事が出来るのか……亮の前では負傷を隠す4人は日舞の師匠のもとを訪れるが、師匠は不在。 なぜかそこで踊っていた陣の攻撃を受ける4人。
 一方、師匠は道士カクに乞われ、ベッドで苦しむ亮の元を訪れていた。
 「踊りの先生なんかに、拳士の気持ちがわかってたまるか……!」
 料理人、拳士の魂を騙る。
 そんな亮の前で、地面に落とした杖の上を渡ってみせる日舞師匠。
 道士「これが日本舞踊の奥義、平常心だ」
 例えこの杖が千尋の谷にかけられていたものだとしても、冷静にそれを渡る心……それこそが、舞踊の極み。恐怖心を押さえ、 平常心で物事を見つめれば、見えなかったものが見えてくる筈。道士に うまいこと丸め込まれた 諭された亮は、 自分の右手に、血の跡がある事に気付く。それは苦しむ自分を元気づけれてくれた将児が、負傷を隠していた流血…… 仲間達の思いに応える為、今、亮は裸ジャケットで立ち上がる!
 陣の魔道破壊波を受け、変身が解除されるほどのダメージを受ける4人。そこへ飛び込んでくる、ビューティマッスル!
 今回、えらく筋肉押しなのですが、なんなのか(笑)
 再び陣と対峙した亮は、道士と日舞師匠の教え、そして仲間達の言葉を胸に恐怖と重圧を払いのけ、“クモの舞”の一撃を受け止める。
 「見たか! これが舞踊の心、そして武闘の心、平常心だ!」
 そして恐怖を乗り越えた事により、消え去るクモの痣。
 どうもクモの舞は一種の暗示というか、打撃そのものよりも、精神的に相手を絡め取り、死に追いやる拳法であった模様。
 にしても、中盤から参加の井上敏樹が、内容はさておき一番真面目に修行展開をしているという不思議(笑)
 当初、今作は基本的にこーいう展開なのかと思っていたので、2話と陣編以外、ちっとも修行しないとは思いませんでした(^^;
 陣「見事! だがな、勝負はまだ終わったわけではないぞ」
 亮「臨むところだ、陣!」
 こっちは5人だけどな!
 大五「俺たちのチームワーク、今見せてやるぜ!」
 亮「みんな、転身だァッッ!」
 「気!」
 「力!」
 「転!」
 「身!」
 「しょう!」(?)
 一人ずつ叫ぶ、という新機軸。
 ただ最後に一文字足りなかったリンが、何と叫んでいたのかは聞き取れず。「よう!」とか「しょう!」とか聞こえるのですが。
 連係攻撃で陣とぶつかりあうリュウレンジャー。その時、物陰から戦闘の趨勢を注視していた大筒将軍の切り札、 雷撃拳(頭の大砲から繰り出すロケットパンチ)が、隙だらけのリュウレンジャーに迫る! それに気付き、 リュウレンジャーをかばって雷撃拳の直撃を受けて吹き飛ぶ陣。
 「勘違いするな! 貴方の為なんかじゃないんだからね! ……そ、そう、餃子よ! いつか生まれるかもしれない、 世界一の餃子の為なのよッ?!」(※注:9割虚構)
 陣、気絶(笑)
 横槍を許さないライバルキャラというのは数多くありますが、横槍を防いだ後に退却できないで気絶してしまったキャラは珍しいよーな。
 一発限りの切り札である雷撃拳を防がれた大筒軍曹は、巨大化。しかしこんな日に限って、キバレンジャーは来るわ、ダイムゲンは来るわ、 ロボット総登場で、見事な瞬殺。
 ……まあ、何が出たって瞬殺ではあるのですが。
 そして気絶した陣は、ザイドスに拾われていた。
 「オレの操り人形として、貴様は生まれ変わるのだ! ふぅーはっはっはっは!」
 陣を担いだまま、いずこかへと歩み去るザイドス。はたして陣はどうなるのか……事態は風雲急を告げようとしていた。
 新奥義はあっさり破られ、一匹狼キャラも崩れそうな陣ですが、まあむしろこれは、 あまりに心ともない3事務員サイドへの戦力テコ入れと見れば、妥当な展開でしょうか。今回の話の出来はともかく、 前回ラストからゴーマ側へ組み込まないで、ワンクッション置いたというのは、構成としては良かったと思います。
 話の出来は残念の部類でしたが。
 気力転身にしろ魔性降臨にしろ、お互い全く驚かないために、関係の変化みたいなものが生まれず、 うまく盛り上がりの波が生まれませんでした。
 「変なコスプレしやがった……!」「真っ赤な全身タイツを身に纏っただと……?!」みたいな認識の変化が表現される事で、 物語性が加味されていく筈なのですが。
 修行(教え)の内容が意味不明なのは、微妙にわざとっぽいですけど。

◆第36話「恨み節6千年…」◆ (監督:坂本太郎 脚本:藤井邦夫)
 定休日の中華料理店で、今日も餃子パーティ中の、ダイレンジャー。
 「おまちどう……おかわり焼けたぞ。どんどん食ってけな」
 厨房から亮が餃子を持ってきた所で、立ち上がる大五。
 「大五! ……俺の餃子、まずいのか?」
 「ああ」
 「ええっ?!」
 「いや、輝くクジャクが幻覚ではなく本当だったら……」
 山を滑落した青年が、唐突に現れた美しい花園で輝く孔雀に助けられたというニュースを見た大五は、 そこに聖なる孔雀の涙があるのでは? と山へと向かう事を決め、仲間達もそれに同行する事に。同じくそこを訪れ、 凶暴化した植物に襲われていたクジャクを大五が助け、一行は合流。
 冒頭のこれまでのクジャク編あらすじナレーションに加え、改めて、聖なる孔雀の涙ってなんだっけ?  について確認するダイレンジャー。
 「聖なる孔雀の涙は、地球上のありとあらゆる病原体と汚れを消し去る、奇跡の力を持っている」
 ……えー、聞けば聞くほど、禁忌のマジックアイテムとしか思えないのですが。
 その影響?で自然がバイオハザードしているみたいですし(笑)
 山中を探る6人は森の木々に襲われ、更にその前にガラが姿を見せる。
 そしてクジャクの口から明かされる衝撃の事実。
 「昔……私とガラは、同じダイ族の娘として、仲の良い友だった」
 6千年前……工事現場で落ちてきた瓦礫からクジャクを助けたガラは頬に深い傷を負い、それが原因でひきこもりに。 ガラの傷跡を消す力を得ようとしたクジャクは孔雀明王のもとで修行し、孔雀明王の力を得る。だが、 俗世に戻ったクジャクを待っていたのはゴーマの反乱、そしてゴーマ一族の一員となってしまったガラの姿だった!
 前回のクジャク編(23話)で、ガラに頬の傷を見せられて「おまえが私を恨む以前から、私はおまえを憎んでいた」 と言われたのに対し、「私がおまえに何をしたというのだ」と返したクジャクさんでしたが、
 よくよく考えてみると、もしかして、あの件……?
 と、思い出した模様。
 山中で一夜を過ごし、翌日。岩場を行く一向に襲いかかる崖崩れ。しかしそこに、道士カクが現れ気力で岩を止める。
 「花も木も今の岩崩れも、全てはゴーマ怪人・万華鏡伯爵の幻術だ!」
 輝く孔雀もバイオハザードも、全ては聖なる孔雀の涙を探すクジャクをおびき寄せる為のガラの罠だった。 大五達とはぐれたクジャクは迷い込んだ洞穴の中で聖なる孔雀の涙を発見するが、それも幻で、正体は毒蛇のからんだドクロ。 クジャクは間に合った大五に助けられ、6人は気力を集中し、幻術を打破。そこへ、クジャクへの怨念に凝り固まったガラが現れる。
 「全てはこの傷のせい。クジャク、おまえを助けた事に悔いはなかった。だが、この醜い傷は私を戸惑わせた。人前に出る事も、 何もかも。……私は辛くはなかった。おまえという友が居る限り。しかし、おまえは私を裏切り、いつの間にか私の側から姿を消した」
 「それは!」
 「わかるかクジャク……たった一人の友と信じていたおまえに、裏切られた私の気持ちが。私は初めて傷跡を憎んだ、消したいと願った。 傷跡を消すためなら何でもすると誓った。たとえゴーマに魂を売ってでも!」
 「違う、ガラ、私は!」
 「黙れ!」
 互いの思いが擦れ違い、6千年の時を経てねじれた憎しみを生み出す、と、予想外にガラとクジャクが密接に絡む展開となりました。
 当初はクジャク→ガラへの憎悪だったのが、いつの間にやらひっくり返っておりますが、クジャクさん、 かつての親友を瀕死まで追い詰めた上で命乞いを聞き入れ「まるで女神」とおだてられて罠にかかり 手段を選ばず復讐してやる事に決めたという、なかなか壮絶な歩みです。
 これ絶対、クジャクはクラスで中心的存在の人気者で、ガラは地味で大人しい取り巻きの女の子 という、構図だよなー(笑)
 ガラはようやく背景が出来て面白くなりましたが、明らかに最初から考えてなかったあおりにより、 クジャクのトンデモ度が上がったような気がします(笑) ヒロインレースが、ちょっと混沌としてきた気がするぞ……ッ!
 大がかりな幻術攻撃など、なかなかの実力派だったとおぼしい万華鏡伯爵ですが、気力全開シシレンジャーの霧隠れから 「戦え、幻クジャク!」でなぜか自転車に乗るクジャクの幻影攻撃を受けた所を、スーパー気力バズーカで巨大化。
 大連王めがけて刀振って襲いかかってくるので、1回ぐらい斬られてあげるのかと思いきや、受け流して反撃、そして疾風怒濤により、 本日も無傷瞬殺でした。
 ご来場、ありがとうございました。
 本当に、酷すぎる。
 ガラの罠を脱したクジャク……しかし、その生命力はますます衰えていく。
 「クジャク……聖なる孔雀の涙は、俺が必ず!」
 「可哀想なガラ……」
 「クジャク……」
 果たして、クジャクは聖なる孔雀の涙を手に入れる事はできるのか……そしてガラの心を溶かす事が出来るのか。
 なんとなく、大五を軸にクジャクとガラの構図が逆転し、復讐を捨て優しさを取り戻したクジャクがかつての友を想う…… という流れに持ち込みました。
 クジャクさんがコスモクリーナー出来るかどうかだけではやはりドラマは弱かったので、新しい要素が加わったのは良かったと思います。
 次回あたりからコウ−阿古丸ラインと絡みそうですけど、しばらくお休みしている内に、シャダム事務長が一番影が薄くなっているので、頑張れ事務長!

◆第37話「必見!!でけェ奴」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升)
 地球へ迫る巨大な龍……それに反応するかのように、亀になったり人間になったりを繰り返す亀夫。
 「恐怖の大王が来る……」
 そして10歳の誕生日が近づくコウは妖力による謎の発光現象を起こす。「外からゴーマが妖力を送り込み、夢の中で操っている」 とコウの意識の中へダイブした白虎神剣は、そこでコウとともに復活した阿古丸と出会う!
 「久しぶりだね……コウ」
 再登場時に大きくなったりするかと思いましたが、ままでした。
 その代わりに、頭飾りを外すと、なんかぐろい跡が。
 「今の私は昔の私とは違う。地獄の霊力を得て、何十倍にも強くなったんだ」
 なんかもう、ゴーマの人達は一度まとめて地獄に落としてしまえばいいのでは状態(笑)
 更になんでも見通せる千里眼を手に入れた阿古丸はコウの体の秘密を知り(というか、 今まで一切知らなかったらむしろ不自然なのですが、その辺りの何を知っていて何を知らないかを、面倒くさいので一括して、 “何でも知っている”事にしてしまったぽい)、ゴーマになるその日まで、コウを意識不明に留めようとする。その目的は、 コウをゴーマに引き込む事でダイレンジャーを壊滅に追い込み、ゴーマの中で確かな功績をあげる事。
 「父上は失脚。私に許しを請わなくてはならないというわけです」
 …………まあなんかその人、既に左遷状態としか思えないですけど。
 その頃、将児と大五は、パチンコに突っ込んでいた。
 そこへ現れたて大当たりを出しまくるパチンコ大名人の正体は、ゴーマ怪人。
 「私はパチンコの下手な人間とは戦いたくないのです。ほな、さいなら。フィーバー、フィーバー」
 とやる気のないパチンコ大名人だったが、妖力は高く、実力は本物。阿古丸の脚元をすくいかえそうとするシャダムは、 パチンコ大名人の妖力と自分の妖力を合わせ、コウを洗脳。街で暴れるパチンコ大名人を迎撃に向かったダイレンジャーに、 キバレンジャーが襲いかかる!
 シャダムと阿古丸の絡みは、面白そうなのにどうにも面白くなりません。
 延々、お互いに嫌がらせと足の引っ張り合いをしているだけ(^^;
 キバレンジャー、ガラ、ザイドス、と交戦するダイレンジャー。巨大化したパチンコ大名人に挑む龍星王。その時……暗雲が漂い、 出現する巨大な黒い龍。黒い龍はダイレンジャーもゴーマも、もろともに攻撃。
 「その名は、ダイジンリュウ」
 って、いきなりナレーションで(笑)
 とにかく大きい、黒い龍。
 比率としては 人間:巨大化怪人 に対して 巨大化怪人:ダイジンリュウ といったところ。
 果たしてダイジンリュウとは、なにものなのか?!
 うーん……ダイレンジャーvsゴーマがそもそも割とぐだぐだなので、更なる存在が…… と出てきてもどう盛り上がっていいか反応に困るというか、さて次回、どう転がしますか。

◆第38話「えーッ!! 停戦!?」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升)
 地上へ降り立った大神龍、二足歩行モードになると、凄まじい威力の光線を放ち、

 東京・大壊滅

 ……いやもうこれ、駄目じゃないですかね、東京。
 というレベルの大破壊で、もはや完全にゴジラ映画の世界に(笑)
 特撮班は、そうとう気張ったっぽい。
 混乱の中で、姿を消してしまったコウを探すリン。そして超気伝獣でもある亀夫は、本能的に大神龍の存在について知っていた。
 それは、愚かな戦いを続ける人間達を滅ぼし、全てを無に還す事で宇宙の秩序を守ろうとする、超存在であった。
 ダイレンジャーの正義も、ゴーマの野望も、大神龍の視点からは何の意味も持たない。
 争いを続けるものを、ただ消し去る。
 それこそが大神龍の行動目的であり、地球を滅亡から救う手段はただ一つ――ゴーマとの戦いを止めるしかない。
 “ヒーローの戦いを支えるテーゼを根本的に無視する”という、戦隊シリーズとしては、 そうとう傾いたと思われる危険球。
 なおここでアジトの謎TV(気力アンテナ?)に映るニュースのシーンは、初代『ゴジラ』のパロディ。
 これを聞き、面々に街の人達を助けコウを探せ、と指示を出した道士カクは、アジトの奥にある秘密の通路を開く。 その先にあったのは浮遊する輿……そししてそにれ乗った道士は、ゴーマ宮へと向かう!
 非常ベルと銅鑼が鳴り響き、ゴーマ本社で災害のような扱いを受ける道士(笑)
 群がる社員達を、身に纏う青白い光で蹴散らす道士カク――その力は「なぜゴーマでもないのに、妖力を」?!
 「ほっほっほ、道士カク、久しぶりじゃのう」
 「休戦協定を結びに来た」
 大神龍による地球滅亡を防ぐべく、驚愕の提案を申し出る道士カク。だが、ゴーマ15世はそれを拒否し、 むしろこの機会に一挙に地球侵略を、と盛り上がる。
 出てくる度にゲームに興じている15世でしたが、地球侵略、意外にやる気があった模様。
 「おまえたちが負けを認め、許しを乞わない限り、戦いは、絶対に、やめぬぞよ」
 力強く宣言する15世だったが……ゴーマ宮、大神龍の攻撃を受ける(笑)
 凄まじい威力のブレスを受け、飴細工のように崩壊する本社ビル。社長の椅子から転げ落ち、 奈落へ真っ逆さまになりかけた15世に手を伸ばしてギリギリで掴む道士。
 「休戦協定に同意するんだ!」
 「やじゃ! やじゃ!」
 道士、脅迫。
 一方、街を破壊して回るパチンコ大名人を止める為、大神龍に襲われる危険を冒してでも、大連王に合体するダイレンジャー。
 亀夫によると「争いがあると、外国からでも超スピードで戻ってくる」そうなのですが、 パチンコ大名人が大暴れしていてもスルーという事は、一方的な破壊ならOKという事なのか?(^^;
 ゴーマ宮を破壊して満足したのか、戦場に現れた大神龍は、パチンコ大名人を踏みつぶす(笑)
 大名人はもう、“不謹慎と言われそうなネタをやってみたかった”以上の意味がなさそう(^^;
 そして、遂にクリティカルヒットを受けた大連王、合体解除。
 もうこれだけで、大神龍が如何に恐ろしい存在かがわかります(笑)
 残された龍星王は武人変化した亀夫/ダイムゲンに救われるが、容赦なく踏みつぶされそうになるダイムゲン。しかしその時、 大神龍は唐突に活動を停止し、浮上、宇宙へと去って行く。
 「ゴーマと休戦協定を結んだ?!」
 間一髪、ゴーマ15世がカクの脅迫に屈したのであった。
 ……て、世界規模で大破壊をしているのに、ダイレンジャーとゴーマが休戦したら満足して帰る、 という大神龍さんの基準はさっぱりわかりませんが(^^;
 これは放っておくと、テンション上がった大連王が世界を滅亡に追い込みかねないとか、そういう判断だったのか。
 「道士カク! ちょっと待ってくれよ! あんた……何か隠してるな」
 いったいどうして、ゴーマと休戦協定を結ぶ事などできたのか? ここに来て、今更ながら、一斉に道士に不審の目を向ける男衆。 道士はその疑問に答える事なく、ゴーマが協定を裏切った時の備えをしておくようにと皆に告げるのであった。 そしてコウを探し続けるリンは瓦礫の間で白虎神剣を発見して回収するが、コウは行方不明となり、ひとり廃墟を彷徨っていた……。
 暴れるだけ暴れて、あっさり帰宅してしまった大神龍。敵味方の戦闘の構図に乱入して好き勝手に暴れ回るという点では、 広義のバイオハンター系でしょうか。だいぶ、大きいですが。
 ゴーマとダイレンジャーが休戦しただけで帰るなら、世界各地で暴れ回っている、という状況設定は必要なかった気はするのですが、 それを加えた事で、かつてないトンデモさんぶりが印象づけられた所はあり、難しい所。 かつてないトンデモだからこそ、もっと暴れても良かったとは思いますが。……まあそれをやるには、最初に派手に破壊しすぎたか。
 色々と、インパクトだけだった感もありますが、デカい・強い・大連王を倒した!!!!!!!! とやりきってくれたので、面白かった事は面白かったです。
 大連王がここまで無敵だったのが、結果として凄く効きました。
 休戦協定は結んだものの野望を諦めたわけではないゴーマ15世、怪しさ全開になってきた道士カク、 そして復活の次の回に空気と化した阿古丸。果たして、戦いはどうなっていくのか……

 次回、同・棲

 というか、サブタイトルで散った?!

◆第39話「魔拳 落日に散る」◆ (監督:小笠原猛 脚本:井上敏樹)
 ゴーマに囚われていた陣は牢獄を脱出するが、既にその体には、ザイドスによってある仕掛けがほどこされていた。
 コウの行方不明も、東京大破壊も、さっぱり脇に置いておいて、仲間達と草野球に興じていた亮は、 公園で倒れていた陣を発見。(なぜだ……なぜあの時、陣は俺をかばった……)。陣が雷撃拳から自分をかばった事に戸惑っていた亮は、 重傷を負っていた陣を助け、思わず家に連れ帰ってしまう。
 「どうやら、俺とおたくは切っても切れない縁があるようだな」
 急速に上昇するドキドキゲージ!
 陣の怪我の手当をした亮は、嫌がられるのも構わず、甲斐甲斐しく世話を始める。

 おかゆを作ってふーふーしてみたり
 (当然、嫌がられてレンゲを弾き飛ばされる)

 食費と治療費の為に残業増やしてみたり

 車椅子を押して散歩してみたり

 ……えー、何があったのでしょうか、亮。
 古来から、「命を助けるイベント」はフラグを一気に進める効果があるとはいえ……て、そうか、 遺産か?! 遺産目当てなのか?!
 そして、わざとでしょうが、車椅子+広瀬匠、という画は『ジェットマン』的にえぐい。
 途中で、駅の階段で困って周囲の人に助けを求めるも誰も手を貸してくれない……というシーンが入るのですが、その後、 陣を背負った上で後ろ手に車椅子を掴んで階段を上がってしまうので、そもそも助けを求める必要があったのかどうかは、 ちょっと悩ましい。
 こうして亮が陣をほだしている頃、街では夜な夜な、ゴーマ怪人・餓狼鬼が人々を襲っていた。そしてある日、 陣は自分の右手に見覚えのない血痕と不思議な白骨化の跡があるのを見て、自分の体に何らかの異変が起こっている事に気付く。
 亮の餃子拳・尽くす妻の連続攻撃を受け、ときめきゲージがぎゅんぎゅん上がっていく二人は、 ある日の散歩中……
 「なぜだ……どうして俺にここまでする」
 「おまえだって……俺を助けた」
 「違う。前にも言ったはずだ。俺は貴様を自分の手で倒したい。だから貴様を助けた。それだけの事だ」
 「そうだったな。本当言うとな、自分でも、よくわからないんだ。……ひょっとしたら、俺はおまえと同じ理由で、 おまえを助けたのかもしれない。おまえを倒すのは、俺だ――! そう思っていたのかもしれない……
1,一人の、料理人として
2,一人の、拳士として  
3,一人の、天使として
 「一人の……拳士として……?」
 陣・個別ルートに入る亮(そろそろ、いい加減にして下さい)。
 「亮、頼みがある。もし俺が拳士でなく、心を無くした……怪物となった時、その時は、おまえの手で、俺を殺してくれ。 急所は……ここだ」
 胸の真ん中を示した陣は、突如苦しみだし、車椅子から転がり落ちる。
 「忘れるな……俺との約束」
 よろけながらもその場を走り去る陣、亮は慌ててその後を追うが見失い、そして公園に出現する餓狼鬼。駆けつけた4人との戦闘になり、 テンマレンジャーの大輪剣が炸裂。右腕に傷を負って餓狼鬼は逃走し、陣を探していた寮は、右腕に深傷を負った陣を発見する。 将児が傷跡の一致に気付き、5人の前で苦しみだした陣は、餓狼鬼へと姿を変える!
 「もはやそいつは陣ではない……奴が脱走する前に、奴の体に餓狼鬼の細胞を埋め込んでおいたのだ」
 待ってましたとばかりに登場するザイドス。
 ………………えーと、あれ、魔拳士にした意味はいったい……?
 餓狼鬼自体がそもそも、魔拳士の肉体が触媒に必要とか、そういう事なのでしょうか。拾ってきた陣が全く言う事を聞かないので、 魔拳士のまま利用するのは諦めた、とか理由は付けられそうですが、それにしても全く、伏線も描写も無いので、 ザイドスが何をしたいのかさっぱりわかりません。餓狼鬼の強力描写が無いので、手間暇かけた理由も皆無ですし。
 結局、暗躍してみたけどザイドスの知略は1でした、みたいな。
 酷い事に。
 「ザイドスぅ、停戦した筈じゃなかったのか?!」
 「んん? 何だってぇ?」
 ……あ、見ている方も忘れていました(おぃ)
 餓狼鬼と激突するダイレンジャー。陣はもう完全に、ザイドスの操り人形になってしまったのか……?  覚悟を決めたリュウレンジャーは、陣が告げた急所へと剣を突き刺す――が、その一撃は浅い。
 しかし、
 「俺は拳士……貴様の思い通りにはさせんぞ、ザイドス!」
 意志の力を振り絞り、自らの手で、急所に剣を深々と押し込む餓狼鬼/陣。泡を食ったザイドスは餓狼鬼と陣を分離し、 肉体を取り戻した陣は、亮とともにゴーマへと立ち向かう!
 亮と陣の生アクション合わせ技は、さすがに格好いい。
 魔性降臨した陣はザイドスと激突し、ジャシン風拳を放つが、完調で無かった為か反撃を受け、倒れる。 餓狼鬼はその間に気力バズーカで瞬殺され、駆け寄ってくる亮の前で立ち上がる陣。
 「拳士として……」
 「拳士として……」
 お互いの想いを胸に、ぶつかり合う二人。互いの拳の打ち合いはわずかに亮が勝るが、亮はその一撃を陣の眼前で寸止めする。軽く、 その拳を脇へ払う陣。
 「甘いな……どこまでも甘いやつだ、おまえってやつは。これだけは覚えておけ。拳士は、私情を乗り越える時も必要だと」
 敗北を受け入れた陣は微笑し……深傷を負った体を引きずってその場を離れていく。
 「どこにいくんだ? その体で」
 「寄るな! 俺は俺でいたい。これ以上おまえのそばにいたら、俺が俺でなくなってしまう」

 的場陣、逆転満塁ホームランで、ヒロインの座に躍り出る(待て)

 しかも、逃げ切り体制に入った!
 「世話ばかりかけちまったな……亮。ありがとう」
 最後に一瞬、足を止めて振り返ると、急に清々しく笑って陣は姿を消す。
 陣の性格がねじれた原因は師匠との一件にある筈なのですが、その辺りは完全にすっ飛ばしたままで吹っ切れてしまうという、 さすがにこれは、魔拳士の踏み台的に殺された(?)亜紀さんが可哀想すぎて酷い(^^; 魔拳士そのものに、 全く意味が無かったのも含めて。
 夕陽の中を独りよろよろと歩く陣は、ゴーマ雑魚の大軍団を引き連れたザイドスと接触。 夕陽をバックに雑魚を蹴散らしていく陣であったが、そこへ降り注ぐ銃弾の雨……銃声は幾重にもこだまし、 砂地に落ちた金色のメダルがただ、風と砂にさらされる……
 と、『明日に向かって撃て!』的ラスト。
 うーん……魔拳士とは、いったい、なんだったのか。
 いや一応まだ、最終盤で「実は生きていた!」展開が出来る見せ方にはなっていますが。
 それはもう、あっても最終盤のお祭りであって別枠として、ゴーマ側にとっての魔拳士が、 「ザイドスが独力で手柄を立てる為に都合のいい戦力が欲しかったけどうまくいきませんでした」以上のものに全くならなかったのは残念。
 どうにも腰の据わらない主人公の腰を据わらせた、という点で、登場回は中盤の転機となるエピソードであり内容も面白かったのですが、 その後の使われ方はどうにもおざなり。
 亮のライバルとしてもっと時間をかけて使ってもいい筈なのに、登場回だけやたらに話がハイペースで進みますし(^^;
 脚本や役者のスケジュールの問題もあったのかもしれませんが、杉村回が1.5話分ぐらいの内容を2話に引き延ばしているとしたら、 井上回は1.5話分ぐらいの内容を1話に強引に圧縮しているというか。
 ダイレンジャーの個々のメンバーと絡んだキャラの連続エピソードで物語が展開していく、という構成は、 前半はこういうのもありかと思ったのですが、後半に至っても各個のエピソードが一切横の繋がりを持たないというのは、 物語全体に奥行きと広がりが生まれず、どうにも苦しい。
 この魔拳士編は特に、今作の構成のデメリット部分が大きく出てしまったように思われます。
 ……次回、3バカもタイトルで殺される(笑)

◆第40話「さらば! 3バカ」◆ (監督:東條昭平 脚本:荒川稔久)
 将児の前に姿を見せる3バカ(神風大将、電話先生、墓石社長)。
 「ゴーマはおろか、コットポトロにも見放されたんだ!」
 固有名詞覚えてないのですが、たぶん、ゴーマ一般兵の事っぽい。
 挑戦を受けた将児は、墓石社長と相撲、電話先生とプロレスで戦い、最後は天馬スーパー回転蹴りで3人を蹴散らすが、 神風大将からバイク勝負を持ちかけられる。一応仲間に相談するが、まともに付き合わないでみんなで倒しちゃおうぜ、 と仲間の態度は淡泊。表向きはそれに合わせる将児は、勝負には行かない、と告げてひとり先にファミレスを出るのだが、 その後を追いかけるリン。
 「ホントは行くんでしょ?」
 「へっ……どこへだよ」
 「どうして独りで行くの?」
 「っ……わかんねぇよな。わかんねぇけど……俺が片を付けてぇんだ」
 将児と3バカの関係性を知るリンが将児を気遣う、というのは拾ってくれて良かった。将児は独りで走り去り、 それを待ち受ける3バカ……とザイドス。
 「おぅ、ゴーマに見放されたとはいえ、おまえらは俺の可愛い部下だ。あいつを倒せば、命だけは助けてやる」
 「本当か! 俺が勝ったら、幹部の椅子をたのむぜ」
 会話、成立してない(笑)
 これまで、野球だのサッカーだの、3バカに無茶なセッティングを用意してきたザイドスさんですが、割と真面目に気にしていた模様…… 言う事聞いてくれる相手が3バカしか居ないのかもしれませんが。
 将児は約束の場所に特攻服で現れ、レーススタート。バイクが停止すると爆発する、という爆弾を付けた状態で、 船と路線バスに取り付けた鍵を入手してゴールへ辿り着くというチェックポイントレースで、 爆弾はチェックポイントとゴールの3つの鍵を使う事でのみ、解除可能。
 「俺達はもう、ノンストップって事だぜ!」
 墓石社長や電話先生の妨害行為をくぐりぬけ、神風大将とデッドヒートを繰り広げる将児。そして4人の仲間は陰からそれを見守り、 電話先生の妨害行為を止める。
 「将児は……男と男の勝負がしてえんだ!」
 しかしこう、電話先生の能力は使い方次第でけっこう強力な気がします。……まあゴーマの場合、 指揮官が怪人の能力を利用するというより、特殊能力を持った怪人が自分の裁量で行動するスタイルなので、 能力以外の要素も必要な組織なのですが(^^;
 「社長……なんだか楽しそうね、神風くん」
 「せやなぁ。まじやでぇ、二人とも」
 観戦モードに入った先生と社長のもとへザイドスが姿を見せ、先生の電話を神風大将へと繋ぐ。
 「バカめぇ! こんな時に限って張り切りやがって。貸せ! もういい、神風……おまえは勝たなくていいんだよ!  バイクにしかけた爆弾はダミーだ!」
 本当の爆弾は、実にゴールに仕掛けられていた! つまり、このレースの勝者こそが、超強力爆弾の餌食となって吹き飛ぶのだ。
 「おまえはいつも通り負けりゃいいんだ。いまさら気張ったってしょうがねえんだよ。落ちこぼれは落ちこぼれらしくしろってんだ!」
 3バカの為にわざわざ周到な作戦を用意してくれたザイドス……むしろ気遣いを感じるレベルで、口は悪いけど、いい人?
 「落ちこぼれだと……ぉっ!」
 その言葉に反発を感じながらも神風大将はバイクのスピードを緩め、高笑いするザイドス。
 「いいぞ……そのまま負けろぉ! はははぁっ!」
 「そういう事だったのね!」
 「卑怯な真似……しやがってぇ」
 だがそこへ、4人の仲間が姿を見せる。そして、神風隊長もまた……自分の内側で燃え上がる炎に従おうとしていた。
 「この勝負は……そんなんじゃねえ。男と男の、勝負なんだ。勝つ! 俺が絶対に、勝つ!」
 神風大将は最後の直線で将児を殴り飛ばすと、ゴールへ向けてフルスロットル。その前に両手を広げて立ちはだかるザイドス。
 「やめろぉ神風! やめろぉ! 裏切り者ぉ!」
 爆弾に突っ込もうとする部下を体を張って命がけで止めるとか、ザイドスさん、 なんていい人(笑)
 神風大将はバイクを食い止めようとしたザイドスを引きずったままゴールへと直進し、更に止めに入った先生と社長もまとめて、 ゴールへ突入。

 全員、大爆発。

 そして爆発に耐えたものの、転がってきた3人の巨大化爆弾で、ザイドス、まさかの巨大化。
 成り行きで巨大化してしまったザイドス、しかし幹部の意地を見せ、大連王を後退させる!!!

 大金星。

 だがそこへ駆けつけてくる、ウォンタイガーとダイムゲン。大連王は分離合体して、重甲気殿に。
 ……えー、なんだろう、39話にして初めて、大連王がちょっと苦戦してからパワーアップという、展開に(笑)
 そしてもはや完全に存在意義を失ったキバレンジャー。
 「神風と……電話と……墓石の分まで怒りを込めて、てめぇをぶっ潰してやる! 大圧殺!」
 重甲気殿に押し潰され、ザイドス、まさかのリタイア? ……かと思われましたが、プレスされた状態で退却、無駄にしぶとい。 正直ここで勢いで始末しても、それはそれで良かったような(笑)
 凄惨な爆発跡で見つけた神風大将のホイールの残骸を、ゴールへ向けて転がす将児。
 「おまえの勝ちだぜ……神風」
 3バカとかつての自分とを重ね合わせていた将児は、3人を思って絶叫するのであった……ところがある日、 将児の家に届く差出人不明の宅配便、そして鳴る電話。
 「宅配便は届いたか、ベイビー」
 それは間違いなく、神風大将の声であった。
 「ふっ……地獄でも落ちこぼれちまってなぁ……」
 生き残った3人は、ゴーマと完全に関係を切り、どこかで細々と罪を償う生活を送る事に。
 「心の中で、これからずっと、アニキって呼ばせてもらうぜ」
 届いた荷物は……友情と中央に大書された3人からの寄せ書き、と……こちらは予定調和で(笑)
 3バカはキャスティングのはまり具合で転がった部分は大きかったかと思いますが、檜山修之のヤンキー演技は本当に素晴らしい。 実は登場3回ですし(お祭り回も含めれば4回)、最初に絡んだ相手は亮だったので将児回としては2回だったのですが、 登場回数以上の存在感を残し、連続エピソードとしても巧くまとまりました。
 そして次回、クジャクさんの命も危ない。
 この調子だと、次々回は「コウ(亀夫)、永遠に眠れ」とかか。

→〔その6へ続く〕

(2013年7月14日/7月20日)
(2019年11月24日 改訂)
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