■『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・劇場版■


“そうさ 激気! 激気! 過激に
ガンガン行こうぜ
燃えよ 明日を変える為に”


 ブログ「ものかきの繰り言」に書いた、 『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想、劇場版その他のHTML版まとめ。

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◆『電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦』◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
 夏の劇場版。

 冒頭からぶつかありあう、メレ様&リンシーズと、格下ーズトライアングル。
 「自分たちが強くなる為に、みんなの平和を奪うなんて、絶対に許さない!」
 「ふん! 愚かで弱い人間どもを痛めつけて、何が悪いの? 悲鳴と絶望こそが、臨獣拳にとって最高のエネルギーなのよ」
 「ふざけるな! 獣の力は、いい事だけに使うべきなんだ!」
 「そうだ! おまえらなんか俺たちが、激獣拳で、ぶっとばしてやる!」
 と、TV本編を確認する形で激獣拳と臨獣拳の対比をくっきりさせたところでOPイントロが入り、ジャンの新規映像に重ねてナレーション。
 ――獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法、獣拳。
 獣拳に、相対する二つの流派あり。
 ここからストーリー上の映像にナレーションを重ね、それぞれ構えを取る両者。
 一つ、正義の獣拳、激獣拳ビーストアーツ。
 一つ、邪悪な獣拳、臨獣拳アクガタ。
 戦う宿命の拳士たちは日々、高みを目指して、学び、変わる!
 に合わせてバトルスタートし、本編OP映像を物語に取り込む形でワイヤーアクションに突入、と劇場版でも最高に痺れるOP。 個人的に『ゲキレンジャー』は、ここの入りさえ格好良ければそれだけで+10点です!
 ところがその戦いを、監視装置ごしにチェックする怪しい視線があった。トライアングルとメレ、 更には臨獣殿で瞑想中だった理央までもが謎の装置によって香港に強制転移され、早速、理央に殴りかかるジャン。だが、 たまたま両者の間に転移してきた女性拳士・ラオファンが二人の攻撃を受け止め、「同じ獣拳」扱いに「「違う!」」シンクロ。 ペースを乱された両者が拳を収めたところ、更に次々と様々な武術家が召喚され、究極最大の武術家を決める、 乾坤一擲武術会の開催が告げられる。
 彼らを集めたのは、世界経済を裏で牛耳るとさえ言われている、香港のメディア王・ヤン。妖艶な女秘書の説明を受けた獣拳勢は、 胡散臭さを感じつつも成り行きで参加する事になり、始まる異種格闘技戦……。
 メイン5人の生身バトルが、それぞれの個性を活かしながらテンポ良くダイジェスト風味で挿入され、 キャプテンの根性ラッシュは普通の人間に打ち込んでいいのか、やや心配になります(笑)  どじっこ属性だったラオファンも何とか勝ち上がり、ポシェットを棒に引っかけて行動を制限されながらの戦いと勝利、 というのはゲストヒロインにして、カンフー映画におけるコミカル成分担当、という事の様子。
 一回戦の勝者は晩餐会に招かれ、姿を見せる主催者のヤン(石橋雅史!)。九官鳥を片手に持っているのは『ドラゴン危機一発』 オマージュかと思われますが、他にも色々と、散りばめられていそう。
 ヤンが姿を見せると、ラオファンはそそくさと席を離れ、意気投合していたジャンは好奇心からその後を追いかける。 椅子に座るとふんぞり返らずにはいられない理央様が何故かヤンを挑発すると、晩餐会を彩るステージ上の踊り子達が気持ち悪く蠢き、 不穏な雰囲気がいや増す一方、ラオファンを追ったジャンは地下のボイラー施設でその正体が香港警察の潜入捜査官だと知る、 べったべたな展開。
 「この大会は我らを集める為の口実」
 「奴の本当の目的は……」
 「そう、拳法による世界征服だ」
 ……すみません、こういうネタ、大好物です(笑)
 スーパー戦隊×カンフー物、という『ゲキレンジャー』の土台にあるジャンル作品としての設計が、 夏の劇場版と思わぬ化学反応を起こして発熱し、本編と全く切り離された別の面白さが発生(笑)
 今度の敵は宇宙野武士超人だ! とか、今度の敵は未来から来た改造人間軍団だ! とか、今度の敵は空飛ぶサメだ!  とか劇場版の勢いで2、3人死んでも、次の劇場版にはごく普通に出てきそうな時代のノリとでもいいましょうか(例は適当です)。
 激獣拳サイドの従来型フォーマットと、臨獣拳サイドの連続ドラマ形式を組み合わせて展開していた『ゲキレンジャー』 (前半〜中盤にかけてその噛み合わせが巧く行かなかったのがTV本編のもたつきになったわけですが)が、 ある意味でドラマ的な縛りを外れた時に、こんな斬り口で輝きを見せるとは思いもよりませんでした。
 まあ裏を返せば、本編寄りの『ゲキレンジャー』を期待していたり、ネタがツボから外れていた場合、 逃げ場の無い劇場で当たり外れの大きいこのノリを見せられるは辛いものがあるかもしれませんが……
 「世界征服の為、ヤンは科学力を結集して、究極の拳法を作り上げた。それがメカンフー」
 ……すみません、こういうネタ、大好物です(笑)
 「メカンフーの前には、獣拳など、他愛ない子供の遊びにすぎん」
 踊り子達の奇妙な踊りと、その音楽の不安を誘うボルテージが最高潮に達し、音楽と舞いが止まったところでメレに炸裂する、 女秘書のメカンフー・M字開脚!
 「ふふふ……苦しみの果てに、我が力となるがよい」
 踊り子達は一皮剥くと全員がメカンフーロボであり、割とざっくり刺される、その他参加者達。 ラン・レツ・メレはそれぞれ変身しながらメカダンサーと戦い、理央様だけは変身せずに次々とダンサーズを破壊していく格の違いを見せるが、 女秘書の正体であるメカンフー・アネモネにより、臨気を奪い取られてしまうメレ。
 ヤンの陰謀の証拠を掴むべく屋敷の中枢に辿り着いたジャンとラオファンは、戻ってきたヤンに軽々と吹き飛ばされ、 晩餐会場では黄と青も激気を吸い取られて変身解除。
 「……後は、あなただけですね」
 「……――臨気、鎧装」
 理央様が、脱いだーーー!
 そしてそのマントが倒れ込むメレの体にふぁさっとかかり、きゃーーー、理央様ーーーーー!!
 脱ぎ癖から紳士アクションへの絶妙なコンボに、あくまでもただの偶然かもしれないから勘違いするな! というへたれ成分を振りかける完璧な芸術点を叩き出し、この映画、導入・「そう、拳法による世界征服だ」 ・臨技紳士脱着の3点セットで概ね満足(笑)
 地下ではジャンとラオファンがダブルヌンチャクでヤンに立ち向かい、カメラを離しての激しいアクションはさすがに吹き替えでしょうが、 空手有段者でもある石橋雅史さんが、折り目のぴしっとした構えを披露。メカンフーにより様々な武術家の気を取り込んで自らを強化していたヤンだが、 2人がかりでなんとか手錠をかける事に成功する。
 「俺たち、ネイネイでホウホウで勝ったんだ!」
 通訳のランママが不在なので、ラオファンにより「一緒に力を合わせて」と翻訳されるのですが、劇場版でもジャン語縛りが少々苦しい。
 一方の晩餐会場では、黒獅子が花弁ミサイルによるオールレンジ攻撃を全て撃墜すると、 かすり傷一つ追わないまま圧倒的な技量の差を見せつけてアネモネロボを粉砕。しかし余裕かまして勝利のポーズを決めていたところ、 バラバラになりながらも稼働していたアネモネのパーツにより、臨気を吸収されてしまう(笑)
 「嘘……!」
 「そんな……!」
 女性陣からの視線が、ちょっと厳しい!
 「おのれ……」
 理央までもが変身解除してがくっと膝をついてしまい、その膨大な臨気の吸収に成功したヤンは、ジャンとラオファンを振りほどくと、 究極拳士メカンフー天へと変身。不動明王をベースに、各所にメカ要素とアリジゴク要素(両肩や口部など) を配したと思われるマスター・メカンフーは、アントライオン拳によりラオファンを倒すと、 ビーストオンした怒りの赤も一撃で吹き飛ばす力を見せる。
 「全世界の人間どもの気を吸い取って、儂は最強の存在になるのだ!」
 そして敷地に立つ巨大仏像を通して、人々の精気を吸い取っていくマスター・メカ。
 「だが案ずるな。あの3人を信じておればよい。激獣拳の真髄をな」
 スクラッチでこの邪気を感じ取った猫がトライアングルをちーんと鳴らしてシーン変わると、 崖の上からトライアングルがメカジゴクにジャン語を交えて啖呵を切る、という物凄く唐突な繋ぎ。
 あまりに唐突なのですが、話の流れやタイミングを考えると、他人の上前をはねて強さを手に入れたつもりになっているヤンに対し、 自ら学び鍛えて手に入れた“真の強さ”でトライアングルが再び立ち上がる、 みたいな「修行」にまつわるテーゼが脚本あるいは撮影段階では存在していたのが、尺の都合のカットされたのでは、という感じ。
 なにしろこの映画、あれだけ本編でこだわっていたゲキレンジャー側の「修行」要素が、皆無に近いのです。
 まあ本編でも「修行」に関する転換期ではあったでしょうし、劇場版としては修行要素に追加戦士、追加装備に過激気から、 猫以外の拳聖まで削ぎに削いだ結果、カンフー戦隊劇場版として独立した面白さに至ってしまっているわけですが(笑)
 フル名乗りを決めた3人は、トンファー・ロングバトン・ヌンチャクと初期ガジェットを駆使して(やはりバトンは不使用) メカジゴクを追い詰め、ラオファンを倒した巨大蟻地獄も百歩神拳で打ち破ると、トライアングルダイナマイトで大勝利。
 ……本編での3人の戦績を考えると、物凄く弱かったメカンフーですが、これも本来は、 事前に“強さの違い”を示しておく事で説得力を増す設計だったのかな、と思えます。
 「これで勝ったと思うな。究極の仕掛けは、最後の最後に待っているのだ」
 だがしかし、メカンフー拳士は生命の危機に陥ると細胞が活性化してビッグバン・プログレスして超巨大メカンフー拳士になるのだ、 じゃなかった、しぶとく生き延びていたマスター・アリジゴクが最後の切り札を起動し、 巨大仏像の外装が剥がれるとその下から姿を見せる、6つの腕を持つ乾坤一擲巨大ロボ。
 「見よ! これこそが科学の粋を集めた、メカンノンだ!」
 突き抜ける所まで突き抜けたメカンノンは香港市街を襲撃し、それを止める為にゲキトージャがバーニングアップ。 ブルース・リーの像を画面手前に収めつつ、バエの実況で始まる、100万ドルの夜景バトル。
 「どうしますか、理央様? ほっといて帰ります?」
 トライアングル同様にいつの間にか立ち直っていた理央メレは、不覚を取った事は無かった事にして臨獣殿に帰りかけていたが、 ゲキトージャの苦戦を目にし、メカジゴクの傲慢を耳にする。
 「究極の科学が生み出した、メカンノンは、あらゆる生物の動きを越えた、超機械生命体なのだ。獣拳如きが、勝てるわけがなかろう」
 石橋雅史さんもノリにノってくれて、悪のボスキャラ演技が最高です。
 「お願い、貴方たち。力を貸してあげて。同じ獣拳同士でしょう?」
 激獣拳の戦いぶりを目にしていたラオファンは臨獣拳の二人に助力を要請し、これまで書いてきたように、 本編のテーゼや要素はやや切り離された所で面白さが構築されている作品なのですが、この台詞には本編最終盤における、 「獣拳が一つになる」という着地点への芽が見て取れます。
 「馬鹿じゃないの! 一緒にしないでって言ったでしょ? あんな情けない奴ら、助ける気なんて――」
 否定するメレだが、おもむろに、理央様が、脱いだーーー!
 「理央様?」
 「……獣拳を馬鹿にした奴に、真の力を見せてやるだけだ」
 理央メレは変身してリンライオンとリンカメレオンが参戦し、戸惑うゲキレンジャーだが……
 「ネイネイ、ホウホウ、だよね!」
 あ、ちゃんと繋がった。
 まさかのジャン語ミラクル(劇場版でも強引極まりないな……と思っていた事を反省)から、呉越同舟・獣拳合体により、 ゲキリントージャ、バーニングアップ!
 TV本編の忠臣蔵エピソードで先に見ており、あまり評判かんばしくなかったとは聞きましたが、確かに、 合体したと思ったらコックピット内部で理央メレが3人の後ろに立っている、というのは嬉しくないかもしれません。 デザイン的には好きなのですが、カット割が面倒にはなっても理央メレのコックピットは別の方が良かったのかも。
 ゲキリントージャの猛攻に追い詰められたメカンノンは、全世界の皆の元気をちょびっとずつ分けて貰おうと高層ビルを登り始め、 デザインが蜘蛛も想起させるので、スパイダーマン(マーベルヒーローではなくパフォーマーの)ネタでしょうか? (当時なにか話題になっていたのか?)
 対抗してゲキリントージャもツインタワーを登り始めたのは、ご当地観光名所ネタか?
 と、ここはネタありきといった感じで、高層ビルをよじ登っていく巨大ロボ、という絵面は正直間抜け(笑)
 屋上に立ったゲキリントージャとメカンノンは互いの必殺剣(拳)を放って交錯し、 ゲキゲキリンリン斬によってメカンノンを細切れにした呉越同舟チーム、WIN!
 「死ぬものか……! 儂は……儂は……ぬぼぉぁぁぁぁぁ!!」
 それこそ劇場版の勢いでままありますが、ヤンは人間を辞めた怪人扱いという事でいいのか、キルマークは微妙(笑)
 理央メレコンビは、全ては劇場版の戯れよ、と去って行き、実質的に密入国者であるトライアングルは、暮らしの中に修行あり、 と日本まで泳いで帰……る事になるかと思われたが、恐らくラオファンが色々と手を回してくれて空港から帰路につく事に。
 本人の全く意識しないところで、義侠心から力を貸し、 なんか命も助けてくれた風な印象になっているジャンとラオファンの間に若干ストロベリーな空気(一方通行)が漂ったその時、 入国ゲートをくぐり抜けてやってきたのはなんと、貴重な私服姿の美希と、いつも通りの猫。
 「なに貴方たち、もう終わっちゃったの?」
 「はい、無事野望を、打ち砕きました」
 「そんな事は当然じゃ。しかし折角駆けつけた儂等の立場はどうなる」
 「そう、おっしゃられても……」
 暗に接待を要求し、最低だな、猫(笑)
 最後の最後で、TV本編と最も同調する要素が、拳聖への乾いた視線、になるとは夢にも思いませんでした!
 「仕方がない……こうなったら」
 「うむ」
 「おいしいものいっぱい食べにいきましょー! ね、なつめ」
 「うん、マンゴープリン食べたーい!」
 カートの陰からなつめまで顔を出し、香港観光EDに突入。 いつものようにEDイントロは美希おかあさんもといおねえさんのおまけコーナーとなり、香港観光映像(人物は合成か) に乗せてスタッフロールが流れて、まさかの、真咲母娘によるED乗っ取り。
 なお、ラオファンに手を引かれて街へ繰り出すジャン、美希となつめ、猫とラン、がそれぞれセットで扱われ、 余り物になったエースが放置されたカートを押す係となり、パワハラ要素もしっかり補完されました!
 獣拳は正義の拳!
 率直にあまり期待をせずに見始めたのですが、
 「そう、拳法による世界征服だ」
 がツボに突き刺さり、予想外に楽しめた一作でした。
 結果としての追加装備を含めて本編における「修行」要素をほぼ排除したら、スッキリしたトンデモ拳法活劇として成立したというのは、 TV本編がはまっていた袋小路を考えるとやや複雑ではありますが、劇場版スペシャルとしての楽しさを追求した作りは、 個人的には好印象。満足でしたメカンフー。

◆『劇場版 炎神戦隊ゴーオンジャーvs獣拳戦隊ゲキレンジャー』◆ (監督:諸田敏 脚本:香村純子/荒川稔久)
 『ゴーオンジャー』冬映画への、コラボ出演。

 見所は、なんかすっかり激気を出せるようになっている、なつめ。
 あと、ゲキバズーカの横でなんかもう全くよくわからないけどポーズを取る前座ーズ。
 なつめの誕生日を祝う為に集まったゲキレントライアングルだが、ヌンチャクバンキに襲われ、臨獣トータス拳によって異世界へ飛ばさされてしまう。 遅れて駆けつけたゴーオンジャーも見た事のないヌンチャクの拳法に苦戦している内に逃げられた末、 トライアングルを襲ったと勘違いしたゲキレン前座ーズに殴りかかられる羽目に。
 「……なんか、違くね?」
 「んー……」
 「「参ったぜ」」
 誤解が解けた一行は状況の整理の為にスクラッチに招かれ、
 「若いおなごのほっぺも、やわっこくて良いの〜」
 早輝に肉球を触られた猫は、劇場版でも安定して最低だった。
 ケンが早輝にちょっかいをかければ、範人にはかつて既婚者と知らず美希をナンパして玉砕した過去が付け加えられ、 両戦隊の女好きキャラをフォーカスする事で親和性を強める狙いだったと思われるのですが、 範人のナンパキャラは本編途中で実質的に消滅しているので、もうひとつ効果的にならず。
 またその流れで白(ケン)が黄(ラン)にやたらと抱きつきボディタッチを繰り返そうとするのがやりすぎ感あって、 つくづくハラスメントから逃げられない戦隊です。
 敵の狙いはジャンの守る慟哭丸にある……ボンパーと猫の協力により7人はトライアングルの閉じ込められた異世界に突入し、 正義のパワーが半減する空間で、10人は合流。
 「どんな世界でも、こっちは正義10人分!」
 突撃からOPに入ってウガッツとの戦いにキャラ紹介を重ねていき、見事にヌンチャクを撃退する10人であったが、 臨獣殿残党の亀の不意打ちを受け、炎神ソウル、そして慟哭丸を奪われてしまう。
 ガイアークと亀が慟哭ソウルを作って無幻龍の力をほしいままにしようとする一方、 獣拳への弟子入りを志願したゴーオンジャーは次々と変態的な修行を見せつけられ……どうして、 「説得力の薄いインスタントな修行」と「おまえが修行している間に俺達が戦うぞ!」という、 『ゲキレン』本編の悪いところを踏襲してしまったのか。
 ゴーオンジャーが修行を通して激気を身につけ、相棒をオーラとして放つ炎神拳を修得する、というアイデアも、 コラボ戦隊のギミックを利用するのはともかく、コラボ戦隊と同質の能力を身につける、というのは個人的にあまり面白く感じず。
 また、修行よりも「仲間を助ける」事を優先した走輔と、修行をこなした他の4人が共に激気を身につけてしまうのは、 だいぶちぐはぐ。4人の修行も統一感が無いですし、突き詰めると暗に「本当に大切なのは「修行の内容」そのものではない」 という事を描いてしまっているのですが、『ゲキレン』本編とは齟齬を来す為にひどく宙ぶらりんな表現となり…… 重要なキーワードである「修行」そのものが作劇のネックになる『ゲキレン』の悪い部分をそのまま取り込んでしまう事に。
 即席師弟コンビはそれぞれ炎神ソウルを取り返し、W赤はヌンチャクバンキを撃破。慟哭丸の事を完全に忘却しているけど大丈夫……?  と思ったら案の定甦ってしまったロンは、ビリヤードの球扱いで小突かれた恨みで、物凄く、怒っていた。
 復讐するなら、まずゾウから!!
 一方、あぶれて川に倒れていた須塔兄妹が、理央メレの声を聞く、というのは上手い展開。
 ……とはいうものの、“夢の共演”というよりは、色々台無しというのが正直な感想で、 個人的にノりにくい番外編のタイプ、にドンピシャではまってしまいました。
 それはそれとして、『ゲキレンジャー』の主題歌は、ホント好き。人間大バトルを『ゲキレン』主題歌、巨大戦を『ゴーオン』主題歌、 というのは綺麗に締まりました。
 ロンバンキは二大戦隊の最強ロボット一斉攻撃で再び封印され、なつめの誕生パーティでほのぼのEND。
 巨大戦の実況でバエが登場したのは嬉しかったですし、両戦隊の要素を丁寧に拾ってはいるのですが、 丁寧に拾いすぎて全体的に淡々としてしまい、そう持ってくるのかという意外性の驚きや、 ぐいぐい引きずり込まれるようなスピード感に欠けていたのが残念。
 当時の香村さんの引き出しの問題もあるでしょうし、『VS』シリーズの条件の悪さもありますが、なんというか、 入れた方が良さそうな要素を生真面目にみんな投入した結果、のっぺりとペースト状になってしまっており、この映画に必要だったのは、 どこかを削ってどこかを尖らせる事だったのではないか、という、そんな一作(ファンサービス的には、 これはこれで正解だったのかもですが)。

(2020年5月19日)
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