■『烈車戦隊トッキュウジャー』感想まとめ3■


“遮断せよ悪を 切り払え影を
フミキリケンで 一撃だぜ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『烈車戦隊トッキュウジャー』 感想の、まとめ3(13〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第13駅「走れ消火器」◆ (監督:加藤弘之 脚本:大和屋暁)
 脚本に、ジャスタウェイの大和屋さんが参戦。……あ、いや、大和屋さんの脚本作品ほとんど見た事が無い為、 むしろ職業:馬主として認識気味というか(おぃ)
 冒頭、クライナーロボを吹っ飛ばす超トッキュウオーの勇姿で前回のおさらい? と思ったら、 超トッキュウオーは次々と出現するクライナーロボ狩りの真っ最中。 圧倒的な力で3体のクライナーロボをまとめて消し飛ばす超トッキュウオーであったが、 連戦によるパワーの出し過ぎで大きな負荷がかかり、各烈車のメンテナンスが必要になってしまう。
 ……と、超トッキュウオーの使い過ぎ注意に車掌から一言、メタ的にも使用制限の理由付けを早めに明言してきました。
 ライト、全く聞いてませんが! (車内に置かれたピンボールに夢中)
 緊急停車を余儀なくされるレインボーラインだったが、不幸中の幸い、付近でサポートレッシャーの反応が感知され、 次のクライナーロボ襲撃の前に、そのサポートレッシャーを探し出そうという事に。だが、 街の名物に夢中で全く調査に本腰の入らないライトの姿に、イライラを募らせる委員長。その時、 5人は街をペンキで黒く染めているシャドーラインと遭遇する。
 ルーペーシャドーは、顔が鳥系で頭部に角に見えるパーツという悪魔っぽいベースに、顔の右半分に巨大なレンズがあしらわれ、 体には虫眼鏡の握りの意匠が入っている、という面白いデザイン。格好良さといびつさのバランスが、うまく取れていて秀逸。
 ミオは逃げ出したルーペシャドーを追おうとするが、今度は「俺はサポートレッシャーを探す」と離脱してしまうライト。 ヒカリがカグラをライトについていかせ、委員長組(2・3・4号)はルーペを追い、 キチガイ組(1・5号)はサポートレッシャーを探す事になる。
 と、まとめ役と自由すぎる男が方針で衝突しての分割展開。そういえば、ライトとミオの絡みはまだでした。
 再び街を黒く塗るシャドーラインに遭遇し、撃破する委員長組。 果たしてシャドーは何を考えているのか……高層ビルまで黒く塗られているのを発見した頭を使う組は、 小学生の時の理科の実験を思い出す。そう、ルーペシャドーは収束した太陽光で黒く塗った街に大規模火災を起こそうとしていたのだ!
 一方、野生の勘組ではキチガイが巨大な消火器に登っていた。ミオはルーペシャドーの作戦を阻止しなくてはとカグラに連絡を取るが、 ライトは合流を拒否。
 「こっちはこっちの用事を終わらせる。だからそれまで、そっちの事はおまえに任せる」
 「私に……任せる?」
 その言葉をきっかけに、過去を思い出すミオ。
 「虫眼鏡って面しれぇな」
 「なんか……ライトみたいだね」
 「え? なんで?」
 「ライトって、そうやって、一つの事に集中すると、他の事、何にも見えなくなっちゃうでしょ」
 「……でも、ミオは違うよな」
 「え?」
 「もしも、俺がそんな風になっちゃったら」
 「任せといてよ。ちゃんと面倒みてあげるから」
 「うん、任せる。頼んだぞ、ミオ」
 他人に頼られる事で充足を得るタイプなのでありましょうが、その記憶と今の状況を繋げて、イライラから一転、 嬉しそうな笑顔を浮かべるミオ。
 なんというか、若かりし日に大きな地雷を踏んでしまった気がするのですが、 ミオは無意識に男転がす系だと思っていたけど、むしろダメンズキャプチャーの素質もあるのか。
 ルーペを見つける3人だが、わずかに遅く、充填されたエネルギーが放射されて、炎上する街。街の消火を優先するべきか、 ルーペを撃破するべきか、あちら立てればこちらが立たない状況に動揺するトカッチだが、ミオは余裕の笑みを浮かべる。
 「だってあっちには、ライトがいる。あたしはライトに任された。ライトがあたしを信じて任せてくれたみたいに、 街の事はライトに任せる」
 この言葉にトカッチとヒカリも強く頷き、3人はルーペと戦闘。街ではライトが巨大消火器の入り口を発見し、 消火器が消火器レッシャーもといファイヤーレッシャーに変形。火災の鎮火に成功する。
 「ルーペシャドー、覚悟!」
 「ちなみに……覚悟なんてしたくありません!」
 踏切剣攻撃でやられるルーペシャドー、正直でいい(笑)
 巨大化したルーペは今度は森を燃やすが、消火器レッシャーがディーゼルオーと合体し、ディぜールオーファイヤーによって消火。 最後は、正式名称が「ファイヤー」だから火も出る筈、と右腕の火炎放射で撃破(笑) 後始末にきちんと消火。 ルーペシャドーは最初の戦闘で5人相手に収束太陽光線を放ち、巨大戦では、 ルーペに映して大きく見えるようになった石が実際に巨大化するなど、能力と物語を繋げる描写も秀逸でした。
 かくてシャドーの企みは阻止され、5人は新たなサポートレッシャーも入手。ミオは自由すぎる人への認識を、少し改める事にする。
 「あたし、ライトの事、勘違いしてたから」
 「勘違いって?」
 「まあ……なんていうか、頭より胃袋でものごと考えてるとか」
 いやそれ、間違っていなかったで、オチ。

 シャドーライン側では、今週もグリッタ嬢がヒロイン道を疾走。

 「目だ。目がいいぜぇ。キラキラでな。なんでそんなに光ってるんだろうなぁ。なぁ、グリッタちゃん」
 陛下はすっかりグリッタを気に入り、ノア夫人は大喜び。一方、ネロ男爵はクライナーロボ波状攻撃によりトッキュウジャーを攪乱しながら、 更なる闇を集める事で、陛下の歓心を引こうとしていた。そしてシュバルツ様は、前回拾ったハンカチを改めてグリッタへと渡し、 思わせぶりな発言と、なにやら含みのある気配を見せる。
 シャドーライン本拠の暗さをうまく利用し、シルエットを活かしながら影絵のような世界でそれぞれの思惑が交錯する、 というのが印象的。個々の動きはまだ、この先どう転んでもいいように、という段階でしょうが、 シャドーライン側は非常に面白くなって参りました。
 初期はネタとインパクトに走りすぎにも見えた、グリッタ嬢のデザイン×日高のり子が、ここまで面白いポイントになるとは(笑)  シャドーライン側はグリッタ嬢が居ないとただの悪役達の泥仕合になってしまうのですが、そこにグリッタ嬢が加わる事で、 変な宮廷ロマンス風味になっているのが、素晴らしい。
 しっかり見るのは多分初の大和屋脚本でしたが、敵方の作戦及び怪人の特性と、 今作のキーである過去の記憶とキャラクター性を結びつけ、物語の軸に繋げて展開する、という、 ヒーロー物のお手本のような見事な構成。わかっていても繋がりきらない事が多いのですが、鮮やかに一本の芯が通った好編でした。
 また、前半の戦闘シーンで青い人が凄い格好良く飛び降りた上にひねり入れたり、クライマックスの黄・青・緑のトリオ攻撃など、 アクションも充実。
 ところで剣玉ガール以降、それとなく緑が桃をかばう描写が目立っているけど(今回で言うと、前半、太陽光線を喰らった後)、 ヒカリ、剣玉扱いをちょっと反省しているのか。
 ヒカリといえば今回、分割パーティの関係でヒカリとトカッチが並ぶ機会が多かったのですが、 2人並ぶとトカッチのすらっとした長身が目立って、あの変な眼鏡外して真面目な顔すると、トカッチはたぶん格好いいのだろうなぁ(笑)
 引き続き扱いの苦慮が窺える車掌ですが、今回は、顔芸路線。……正直、面白いとか面白くない以上に鬱陶しいので、出来ればやめてほしい(^^;
 車掌の存在には慣れてはきたけど、面白くするには扱いが難しいなぁ……慣れてきたのでむしろ、 余計な事をしないでくれた方が流せるというのが本音なのですが、まあ、そういう訳にもいかないだろうしなぁ。もういっそ、 顔に巨大なチケットくん被せて、関根勤がアクションを担当し、山口勝平が喋る、でいいのでは(おぃ)
 すっかり好き放題のパート分割ですが、51分で切れてCM入るとは思いませんでした(^^;
 次回、
 「カグラはとりあえず黙秘して」
 に深く頷く(笑)
 消防の次は警察と、えげつなく攻めてきますが、こうなるとその次は、ショベルカーかブルドーザーか。

◆第14駅「迷刑事、名探偵」◆ (監督:加藤弘之 脚本:大和屋暁)
 読書中のヒカリを残して昼食に向かった4人、逮捕。
 続発する連続窃盗事件の容疑者として逮捕された4人だが、逮捕した刑事に根拠は、全く無し。 髪の先から足の爪先まで完全なるダメ刑事により前科一犯の危機に陥った4人の無実を証明する為、 ヒカリはけん玉刑事として捜査に向かう!
 ひっどい展開(笑)なのですが、警察関係者を潔く純粋なるダメ集団とする事で、警察周りの理由付けをすっぱりと省き、 物語をスッキリさせた省略の技術は巧み。
 捜査シーンでは、ヒカリ、車掌、ワゴンさん、脚本、演出、超ノリノリ。
 そして留置場では、パニック状態になったトカッチとカグラがちょっと頭おかしくなる一方、胃袋でものを考えている人が、 カツ丼につられて自白していた。
 裁判イラストが面白かった(笑)
 「これにて一件落着」
 だがそこへ現れる救世主――けん玉探偵ヒカリ! は、 犯人は街で人間界のキラキラを集めまくる掃除機シャドーだと推理を披露するがダメ刑事に完全にスルーされる。 あわやヒカリも面倒だから逮捕、というその時、別の場所で新たな事件が発生し、釈放される4人。 逃げ足の速い掃除機シャドーを追い詰める為に、ヒカリの指示で5人は次の目的地に先回り。 寿司屋で光り物を盗み出した掃除機シャドーを尾行し、その盗難品の隠し場所を突き止める。
 カグラがいつの間にやら探偵コスプレしていて、ヒカリと同じ仕草をしているのが、妙に可愛い(笑)
 掃除機シャドーを撃破した5人は、シャドーが集めたお宝の中に、最速のサポートレッシャー・ポリスレッシャーを発見。 巨大化した掃除機に対し、トッキュウオーポリスで立ち向かう。
 高速烈車、そして合体時は、右手に銃、左手に手錠の射撃タイプというポリス。凄く豆鉄砲だったトッキュウオーの通常飛び道具は、 もはやお役御免でしょうか。強引に戦闘、というか相手を殴り飛ばしていた従来のサポートレッシャーと比べ、 ポリスはストレートに戦闘向けの感じ。クライナーロボを射殺し、掃除機も手錠で動きを封じた所に銃弾を叩き込むポリススマッシュで滅殺。 盗まれたお宝の場所を警察に連絡し、5人はまた次の駅へと向かうのであった……。
 トンデモ話なのですが、ギャグアニメを書き慣れている(&戦隊経験もある)脚本家という事で、 今回ここまではOKというリアリティの線引きがしっかりしており、“こういう話”として楽しめる出来になっているのは、 さすが。演出の加藤監督も、うまくそのラインを汲み取りました(「おぃ〜」はやり過ぎたと思いますが、もはやこれ、 ドリフなのか『銀魂』なのか)。
 その流れで、サポートレッシャーがほぼたまたま拾われる、というのも今回のエピソードの中には収まっています。
 ヒカリはだいぶ高い所まで飛んでしまいましたが、少々崩しにくくなっていたので、幅を広げるという点では良かった面もあるか。 “結局はライトの友達”とは言えるし(笑) 後まあ、「推理小説を読んでテンション上がった」というのは、 今作の世界観においてはイマジネーションの暴走と肥大化に繋げられるので、 レインボーライン乗車中にフィクションにはまってしまった事で一時的にカグラ状態(トランス状態)に陥っていた、 という解釈も一応は成り立ちます。カグラもその余波で影響受けていますし。
 「任侠映画を見た後に、映画館を出てきた客がみんな肩で風切って歩いている」というのが今作の一つのベースだとすれば、 吹っ飛ばしているようでその実、肝心のツボは押さえている、そんなエピソードとも言えましょうか。
 レインボーラインそのものに、ある種の触媒的効果もありそう。
 ……で、今更だけど、「カグラ」って割と明確に「神がかり」を意識したネーミングだったのかしら。
 ライトが珍しく食われ気味でしたが、前回もたまたまミオのツボを突いたから良かったものの、 自由すぎるを通り越して身勝手になりかけていましたし、サブライターだとライトの扱いは少し難しい所はあるのか。
 次回、シウマイ……よりも、薔薇をくわえたシュバルツ様が超気になります。

◆第15駅「心の中にあるもの」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:會川昇)
 ヒカリ少年、小学生にして紳士度高い。
 というか、今作の男性陣の紳士レベルの平均が低すぎて小学生に負けているというか。
 レインボーライン特製イマジネーション検査装置により、改めて「イマジネーションレベルが低い」と、劣等感に塩を擦り込まれるミオ。
 なお装置によるとイマジネーションは高い方から、
 ライト、カグラ、トカッチ、ヒカリ、ミオ
 と妥当な順序。
 この世界では、狂気に近づけば近づくほど、高く評価されます。
 シャドー城では珍しくグリッタ嬢に話しかけるシャドー怪人が登場。どうやらグリッタの下に配属されているらしいハンマーシャドーの能力は、 人が心の内に秘めている大切なものを実体化させ、それを破壊する事で心の重しを取り除く事。
 人間の場合はそれが、悲嘆から闇を生み出す事に繋がるのですが、最初は忠心からグリッタ嬢の心の憂いを吹き飛ばそうと、 薔薇をくわえた妄想シュバルツ様を実体化させたように、ハンマーはそこはかとなく善意のつもりらしいのが、 なかなか、人の世にある厚意の擦れ違いを思わせて趣深い。
 地獄への道は善意で舗装されている、というアレです(笑)
 予告から期待もとい心配されたシュバルツ様ですが、グリッタ嬢の乙女フィルターによる想像の産物でした。 前回の勢いでシュバルツ様まで崩されるとさすがにやり過ぎだと思ったので、これは一安心。同時に、 グリッタ嬢からシュバルツ様がどう見えているのかわかったのは、なかなか面白かったところ。
 陛下の要請でグリッタ嬢がハンマーシャドーを連れて作戦の指揮を執り、闇を生み出す事に。怪人の戦いを、 オペラグラスで観戦しているのがお洒落。そこへやってきたトッキュウジャーだが、ハンマーの攻撃を受け、 ミオの「大切なもの」が実体化してしまう。それはシュウマイ似のゆるキャラ……に見える着ぐるみ、マイッキー。 小学生の頃のミオが親友として大切にしていた、人形であった。
 かつて、毎日話しかけるほどに人形を大事にして空想に遊びながらも、自分の柄では無いと、それを仲間達にも秘密にしていたミオ。 ミオのイマジネーションがいっけん低いのは、その抑圧の為であった……と、繋げたのは綺麗なところ。
 マイッキーを守って戦うトッキュウジャーだったが、ミオをかばったマイッキーはハンマーシャドーに破壊されてしまう。しかし、 それによってミオから生まれたのは闇ではなく、大切な記憶を取り戻した事で輝きを増した正義の光だった!
 ヒカリが、「当然だ!」と解説するのですが、何が当然かはよくわからず、

 「正義の光」=悲しみすら消し去る怒りの炎キレているだけ

 となってしまったのは、話のコンセプトが面白かっただけに、残念。
 終わってみれば、ミオのイマジネーションというより、ヒカリのモテ度だけが上がりました(^^;
 ハンマーは撃破される寸前、その能力に目をつけたシュバルツの乱入によって回収される。シュバルツ様は一撃で合体武器を破るなど、 相変わらずの強さ。トッキュウジャーは足止めに放たれたクライナーロボを、トッキュウオーポリス(1・2・5号搭乗) とディーゼルオーファイヤー(3・4号搭乗)で破るが、果たして、シュバルツは何を企むのか……。
 次回、最近メインの回ってこなかったカグラ話。&トカッチ。果てしなく脱線していきそうなこの二人で、果たして無事に済むのか。

◆第16駅「危険な臨時烈車」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:會川昇)
 列車の扉をくぐるとそこは、スパリゾートアイランドでした。
 子供達の願望がちょっと中年ぽくないかと思ったのは、私のイマジネーションが荒んでいるからでしょうか。
 シュバルツはハンマーシャドーをクライナーに接続する事で、乗せた者の願望を具現化する“夢の烈車”を作り出し、 子供達をさらっていく。その目的は、願望を叶えさせるだけ叶えさせた後でそれを破壊し、一挙に大量の闇を生み出す事!
 15話にして初の、シュバルツ様主導の作戦だけに、えぐいハンマーシャドーの能力を、よりえぐく利用。 先頭車両で待ち構えるハンマーシャドーが、とてもホラー。
 車輌を移ると別の空間に、という形で、伝統と信頼の魔空空間ネタと電車を綺麗に接続。 ボタン一つで侵入者を屋根から排除できるクライナーの仕様には、シュバルツ様の割と濃い趣味性を感じます。
 後半、カグラを追い詰めるも助けにきた3人の銃撃を受けるシーンで、撃たれっぱなしになりそうな所を、 途中から剣で弾いているのが、シュバルツ様格好いい。
 なおこの時の、助けを求めるカグラの「ミオちゃん! ヒカリ、ライト!」という叫びには、 カグラ内部のリアルな序列を感じずにはいられません。
 ライトはサブライターからするとどうも動かしにくいようですが、大和屋さんがとりあえず腹ぺこキャラを強調した結果、 この4話ですっかり、胃袋脳になりました。脳が二つあるので、イマジネーションが強いのかもしれない(あれ?)
 以前に、“イマジネーションを失った少年”を描きましたが、今回は“夢見るばかりでいられない年頃の少女”が登場。 少女視点だとトカッチとカグラは「え? なに? この駄目な大人の人達」という気がしないでもないでもないのですが、 その辺りは、「イマジネーションって素晴らしい!!」でやや強引に誤魔化しました。
 ただ、このアプローチなら単純にイマジネーション礼賛するよりも、現実と折り合いを付けだす年頃だけど、 大人になっても夢を見続ける心は大切……という感じでも良かったと思うのですけど、 カグラとあまり身長が変わらない為に女の子の年齢設定が今ひとつ掴めなかったのですが、どのぐらいの設定だったのだろう……?
 個人的には中学生ぐらいに見えたので少し違和感を覚えたのですが、小学校高学年ぐらいなら、今回の展開で納得なのですが。
 作品コンセプトなのでデリケートな所もあったのでしょうが、もう少しポジティブすぎない部分にも踏み込んで欲しかったかなぁ。
 滑り台を降りたらポリスレッシャーが見えた、という展開そのものは、カット的には好きですが。
 一方で、
 「アオイちゃん。……イメージして。私達の勝つところっ」
 というのは、トッキュウジャーというのはやっぱり、そういう戦隊なのだな、と。
 ヒーロー物の根源的な部分を意識的に設定に取り込んだところで、今作の好きな部分であります。
 その流れで見ると、少女は“大人と子供の端境期”というより、“まだまだ子供でいいんだよ”という年齢設定で、 トカッチ夕陽に死す回のアレンジと見た方がいいのか。
 今回は、前半でクローズ相手の戦闘シーンはあったものの、作品として初の乗り替え変身無し。前回、 真っ正面からトッキュウジャーを打ち破ってなかなか強かったハンマーシャドーは合体攻撃であっさり撃破するも、 超トッキュウオー相手にも善戦。最後は分離再合体空中攻撃からの必殺技で撃破しましたが、 ここまで割とイマジネーション無双だったトッキュウジャーが、新展開を前に苦戦を強いられる形となりました。
 というわけで次回、トッキュウ6号登場。
 予告見る限りワイルド&クールという感じですが、トッキュウジャーになれるという事は、 立派に頭の配線が狂っているのか。
 レインボーパスを強調した所で、5人と新戦士の“トッキュウジャーになれる”理由をどう合わせていくのかなど、色々と注目。
 あと今回、新しい変身アイテムがらみで、レインボーライン上層部の存在が匂わされたのは気になるところ。……まあ、 その辺りの組織的背景はすぱっと無視される可能性もありますが(^^;

 余談:OPでライトが線路の上に立っているシーンで、背後の電柱?に桃・青・黄・白・緑・橙の色がついていて、 美術による伏線か、単にもともと付いていたものかと考えていたのですが、6号がオレンジ色なので、どうやらこれは意図的な仕込みか。
 黄色と近いので橙はどうかと思っていたのですが使ってきたので、いよいよ、桃色のカグラがピンチ(笑)
 まあ、ピンクはRGBで言えばグリーン落とせば紫になるので、 レインボー的には紫担当であったという解釈は成り立たない事もない事もないかもしれないまちょっと覚悟はしておけ。

◆第17駅「雨上がりの空に」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 降りしきる雨の中、ブルースハープを震わせる安全帽の男……と、少々変わった雰囲気の入り。
 「出来た。――俺のレクイエム」
 ……ん?
 予告から、シリアスで格好良い系かと思われたトッキュウ6号(候補)ですが、ちょっと微妙な雰囲気に(笑)
 これはあれか、あれなのか。
 皇帝陛下が遠隔操作するクライナーロボの強襲を、トッキュウオーとディぜールオーのダブル烈車スーパーコンビネーションで何とか退けたトッキュウジャー。 線路点検で一時停止中、6人目のトッキュウジャー用の変身アイテム、アプリチェンジャーの説明を受ける。 そこへブルースハープの響きと共にやってくる、安全帽の保線作業員。
 男の名はザラム。今はレインボーラインで働いているが、実は元シャドーであった。
 雨が降っているのは、シャドーとしての特殊能力だった模様。
 シャドー時代の罪を償う為にレインボーラインで働いているというザラムの履歴を聞き、4人が少し腰が引け気味になる中、 にこやかに接触しに電車を降りるキチガイ(笑)
 ここ数話、サブライターが動かしにくそうで活躍少なめだったキチガイが、さっそくの本領発揮。 キチガイから逃げ回るザラムは固い態度で何とか遠ざけようとするが、何やら因縁のあるらしいシュバルツ様がそこへ登場。 ザラムを守ろうと変身した1号が追い詰められたのを助ける為、ザラムはシャドーの姿になると豪雨で目くらましして逃亡する。
 「まったく……シャドーを捨ててもこの力だけはつきまとう。この力で、俺はどれだけ残酷な事をしてきたか……」
 「残酷……残酷って、まさか人を……?!」
 「雨天……中止」
 かつてザラムはシャドーラインの怪人として、雨を降らせるその能力により、 数々の遠足や運動会などあらゆるイベントを中止に追い込み、闇を集めていたのだ!
 ザラムの正体はクローズをベースに、ゴシック+ウェスタン+獣耳、みたいな感じのデザインなのですが、なにシャドーなのだろう。 ボディの青光沢は『仮面ライダーキバ』のガルルさんも少々思わせますが。雨と関係のある獣……キツネノヨメイリシャドー?
 超ポジティブ男のライトは「それ、本当に闇出てた?」と言っていますが、いや、スポーツ観戦とかコンサートとか、 チケットによってはダメージ深刻なので、割と生まれると思います、闇。
 そんなある時、ザラムは雨上がりの空に、虹を見た。
 「美しかった……初めて何かを美しいと思った。あれを消す闇は二度と作れない。……だからシャドーを抜けた」
 ここは今作全体のキーワードである虹と、物語が綺麗に繋がって良かった所。
 「勿論、それで罪が消えるなんて思っていない。虹を守って、静かに消える。そんな死に場所を探している。ずっと」
 「……だから大袈裟すぎるよ。全然死ぬ必要ないって」
 ライトのフォローを無視して、ザラムは自らのレクイエムを奏で始める(笑)
 うん、これは、あれだ。

 ロ ー ル プ レ イ 系 だ

 大きな伏線と関わる過去の因縁持ちの幼なじみ5人、に如何なる6人目を絡めてくるのか注目していましたが、いやこれは面白い。
 今作のコンセプトが“なりきり”にあると思えば、常時ロールプレイ(役割演技)状態の、自分に酔っ払っている男、 というのは実にピッタリです(笑)
 ライトを探す4人がシュバルツ様と遭遇して危機に陥り、ワゴンから連絡を受けたライトは救援に向かおうとするが、 先程の戦闘で負傷していた。
 「その傷じゃ無理だな。奴の狙いは俺。これは俺の死に場所だ」
 代わりにそこへ向かおうとするアルコール分過剰なザラムを止めるライト。
 「待てって。虹を守りたいなら、そんなんじゃんくてさ! ――俺たちと一緒に戦ってよ」
 「一緒に……?」
 「ザラムって物凄い見えてるだろ……自分がどうしたいか、ここにはっきり」
 設定あるからな!
 「だからぴったりだと思う。トッキュウジャー6人目に」
 シュバルツに追い詰められる4人だったが、その時、響き渡るブルースハープ、そして降りしきる雨。 ザラムはアプリチェンジャーを起動し、トッキュウ6号への変身と共に、降り止む雨、空に掛かる虹。
 今ここに、ガテン系戦士、トッキュウ6号が誕生する!
 「ザラム。完全にシャドーを離れたか」
 「ああ。――虹を守って消える。俺の死に場所は、まさにここだ!」
 「うっそぉ。……俺の話、通じたんじゃないのか」
 まあ、「見えた、おまえの終着駅」と、「見つけた、俺の死に場所」で、 話を聞かない者同士、凄く噛み合ってはいるのですが(笑)
 6号は武器を放り投げるとまさかのサブミッション。シュバルツと互角の戦いを見せると必殺のドリルセイバーでシュバルツの必殺剣と相討ちし、 シュバルツは「ザラム……貴様、あの烈車を……」と意味深な台詞を残して撤退する。
 激闘を生き延びたザラムはライトに変身アイテムを返し、安全帽を格好良くいじろうとして……悪戯していたカグラに返してもらい 「生き恥をさらしたな」と言い残して、今度こそ安全帽で決めポーズを取ると去って行く。
 この安全帽の縁をいじるポーズは、クローズが帽子を触る仕草と被せていると思われるのですが、シャドー怪人はクローズが素体だったりするのか、 そこまで設定に絡めているわけではない演出上の洒落なのか。なぜか人間体を持っており、謎めいたザラムですが、 “シャドー(怪人)とは何か”という部分も、少しずつ触れていくのかもしれません。
 表向き陽気だけど実態は狂気、という『トッキュウジャー』の世界観に、 元シャドーであった罪を償おうとしている、というストレートに重めの背景をどう噛み合わせていくのかと思いましたが、 本人はどっぷり入り込んでいるけど周囲から見るとそうでもない、というズレを用いる事で、ズレとズレで綺麗に収めてきました。
 性格矯正するとイマジネーションが不足しそうなので、当面このままの性格になりそうですが、使いやすそうな性格ではあります(笑)  常に雨が降っているのは撮影が大変そう(お金もかかりそう)ですが、いつまでやるのでしょうか。
 心配なのは6号の初舞台の勢いでシュバルツ様が少し弱体化してしまった事ですが、フォーローはあるのか無いのか。まあ、 シュバルツ様はトッキュウジャーの成長を現す指標になっているので、じわじわ負けモードになっていくのでしょうが。
 というわけで非常に面白い新キャラ登場編でしたが、合わせてシャドーライン側の伏線も幾つか展開し、要素山盛り。 怒りの皇帝陛下はネロ男爵とノア夫人を吹き飛ばし、
 男爵「陛下も我々も闇あってこその存在。一体いつからそのように、キラキラの事ばかり」
 陛下「なんでかなぁ……闇の中で本物を見た、のかもなぁ」
 果たして陛下の求めるキラキラとは何なのか。上層部の軋轢も表面化し始め、どう転がるか。
 そしてシュバルツ様は「闇ではなく烈車の力で地上を制圧する。貴様と話した事だったな! 忘れたか!」と、 真の目的というか趣味的な野望が判明。
 また、車掌がトッキュウ6号に変身しようとしてチケットくんだけ変身してしまうなど、ギャグ部分も面白かったです。
 次回、6号登場編の後編にして、久々に陛下も大きく動きそうで、楽しみ。

◆第18駅「君の名を呼べば」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 見所は、エンディング前のおまけシーンで、いまひとつ格好良くならないアプリチェンジャーでの変身ポーズを皆が真似する時の、 ミオの腕のキレ。
 前回ザラムに勝手にアプリチェンジャーを渡したライトに対し、そんな簡単に信用していいのか、と怒るヒカリ。ライトもまた、 そんなヒカリの態度に怒りを見せる。
 これまで、叩かれて頭に来たとか、腹が減って頭に来たとかはありましたが、ライトが感情的行き違いで怒りを見せるのは初か。
 すかさず止めに入るミオとか、少しずつ別の面を出しながらキャラクター描写を転がしていくのは実に巧い。
 ザラム、そしてトッキュウ6号の扱いを巡って不穏な雰囲気になる中、烈車はシャドーに乗り込まれた駅に辿り着く。 そこではリングシャドー(オカマ)が、名前を呼ぶと激しい頭痛に苦しめられるというリングを街の人々に取り付け、 闇を生み出していた。
 通りすがりのザラムがリングシャドーと接触し、怪人には人間の姿でもザラムだとわかるようなのですが、 ザラムがそういう特殊なシャドーなのか、そこは深く考えない事にしたのか。トッキュウジャーが現れて戦闘になり、 リングシャドーに組み付いたザラムは頭痛リングをはめられてしまうが、リングシャドーが名前を呼んでも、平然とした顔で立ち上がる。
 「無駄だ。俺はシャドーの名前は捨てた」
 「そんな事無理よ。口でどう言おうと、名前は頭に刻み込まれているんだから。ザラム」
 「俺は絶対的にシャドーを捨てた」
 「はぁ、凄い思い込み……」
 「あいつの想像力凄いんだよ。ヒカリ、トッキュウジャーにピッタリだろ?」
 恐るべし、ロールプレイ防御!!
 だがそこへ、ザラムに興味を持ったゼットが姿を見せる。
 「シャドーがそんな簡単にキラキラになれるのか?」
 陛下によりザラムは強引にシャドー怪人の姿に戻されてしまい、再び降り出す雨。それでもザラムを信じ続けるライトだが、 皇帝陛下にさらわれてしまう。取り残される4人+ザラムであったが、ライトの姿を見たヒカリは、ザラムに対する考え方を変える。
 「1ミリだって疑ってない。そんな顔してたよ。あんたに殺されでもしない限り、ライトは疑わないんだ」
 キチガイだからな!
 通常、こういった場合は主人公属性として「人が好いから」というのが相手を信じる理由になる事が多いわけですが、 とてもそんな感じがしないのが、ライトの恐ろしい所です。
 「まったく……どうしたらいいのか、もうわかんないよ。だからもう諦めた。俺も、信用とまでは行かないけど、 裏切られる前から疑うのはやめる」
 ヒカリ、飛んでいく風船を捕まえるのを諦める(笑)
 そしてこの成り行きに、舞台が目の前にせり上がってくるのを感じ取るザラム。
 「わかった……俺がトッキュウ1号を助ける。これこそ、俺にふさわしい死に場所だ」
 「「「「え?」」」」
 「人知れず戦い、人知れず消える。それが俺だ――」
 信頼と証明、命を懸けた戦い――テンション上がった劇場体質のザラムは待ち受ける皇帝の元へと向かう。 “シャドーであった自分”の姿を思い出してしまった事でザラムの名前に縛られて頭痛に苦しめられるが、その時、 リングシャドーへの対策を練っていた4人が駆けつけ、合体武器を放つ。
 それが生み出したのは――虹。
 そして、名前を捨てた男の、新しい名前。
 その名を、虹野明。
 トッキュウジャー、本人に一言の断りもなく、勝手に名前を付ける(笑)
 「そうか……てめぇが見たのは、虹か」
 ザラムの見たキラキラの正体を知った陛下だが、日射病による立ちくらみで早退。久々に出番の多かった陛下ですが、 溜めを効かせた台詞回しと、粗暴さと鷹揚さを行き来する演技が面白く、役者さんも好キャスティング。幹部クラスが宮廷風なのに対し、 ゼットだけは王というよりギャングのボスなのですが、それが非常にいい味を出しています。
 「闇の中で見た……おまえの目ん玉にあるキラキラによぅく似たやつだ。それからずっと取り憑かれている」
 「だったらもう、闇作るのやめろよ」
 「闇がなくて俺たちが存在できるかよぉ」
 果たして陛下は、引きこもり中に何を見たのか。レインボーラインとシャドーラインは対立し続けざるを得ない存在なのか。 少しずつ見せている本筋の今後も楽しみです。
 「俺はザラムじゃない。虹野明だ」
 新しい名前を得たザラム改め明は、頭痛リングの縛めを破るとトッキュウ6号へと変身。ドリル誘導灯により、 リングシャドーを撃破する。ロボ戦では、トッキュウオーが明の所持していたドリルレッシャーを左手に換装し、 新技ドリルトルネードによりシャドーを粉砕。
 なおこのドリルレッシャーはもともとドリルクライナーであり、前回、去り際のシュバルツ様が口にしていた「ザラム……貴様、 あの烈車を……」というのは、明が持ち逃げしていたこのドリルを指すと判明しました。……えー、あー、た、 退職金?
 これにより、シュバルツを退けリングシャドーを個人で撃破した6号の強さは明の個人能力もありますが、一応、 業務上横領してきたドリルのお陰でもある、という理由も付きました。それは、シュバルツ様もわざわざ自分で取り戻しにくるわけです。
 新たな名前を得る事で、本人の強い思い込みばかりでなく、完全にシャドーではなくなった虹野明。 その名前はアプリチェンジャーにも登録され、正式なトッキュウ6号が誕生する。
 「名前、気に入った?」
 「ああ。俺の墓に刻むのに、ちょうどいい」
 前回から徹底して、明の「死に場所」台詞には周囲がずっこけリアクションを続けており、一種のギャグ扱い。そしてそれにより、 明のキャラクターを作り出しています。同じ台詞でも、周囲がシリアスなリアクションを返すと真面目で重い話となっていき、 また別のキャラクター性が生じるわけで、演出の面白さ、というのを感じる所です。
 「俺の仕事は、虹を守る。レインボーラインのレールを守る事だ。――人知れずな」
 烈車への同乗を断った明は、保線作業員として陰ながらレインボーラインを守り続けるべく、ブルースハープを吹きながら去って行く。
 桃「行っちゃった……明くん」
 黄「やっぱり自由」
 緑「つか、面倒くさい」
 青「けど、なんかいいメロディだよね。あのハーモニカ」
 赤「これからは、6人でうまく行く……俺には見える」
 新戦士の加わったトッキュウジャー、6人目は常に同行はしないというパターンに。これは基本が、 “幼なじみ5人”というパーティ設定なので、良かったと思います。常に同行しない理由が“仕事があるから” というのも納得が行きますし、説得力を持った上である程度好きなタイミングで出せる、という保線作業員という設定は秀逸。
 名前を持つ事で形を持つ、というのは魔術的約束事ですが、新しい名前を得る事で新しい存在になる、というザラム→明の新生を、 敵シャドーの能力と絡める事でわかりやすく表現。
 本人に何の相談もなく名前を付けるのは人道的にいかがなものかとは思ったのですが、今作の性質を考えるとむしろ、 4人に名前を付けられる、というのが“仲間に入る”為のイニシエーションという事か。
 サブタイトルの「君の名を呼べば」というのは存在の認証であり、この場合は他者からのそれなのですが、 トッキュウジャー5人の自己承認を描いた第2話「俺たちはここにいる」と、意識的に繋げたサブタイトルなのかな、と思われます。
 基本設定や5人のいい雰囲気から、追加戦士はかなり心配していたのですが、非常に面白い、そして物語に馴染むキャラクターとなり、 今後どう転がっていくか楽しみです。
 ……次回、トカッチまたも爆死寸前。

→〔その4へ続く〕

(2014年9月17日)
(2019年10月20日 改訂)
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