■『侍戦隊シンケンジャー』感想総括&構成分析■


“天下御免の侍戦隊!
シンケンジャー、参る!”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた 『侍戦隊シンケンジャー』感想の、総括&構成分析。

戻る

〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・  〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔まとめ9〕 ・ 〔まとめ10〕 ・ 〔劇場版他〕


☆総括☆
 前作『炎神戦隊ゴーオンジャー』が、00年代戦隊の集大成にして、正道を走り抜けた戦隊もののニュースタンダード像であったとすると、 やや極端に言えば今作は、次の10年の為に敢えて裏街道を選んで駆け抜けた戦隊という事ができるかな、 と思います。
 そしてその裏街道ゆえに、転じて“戦隊とは何か”というテーマを吸い尽くしたという点において、 メンバー間の恋愛という要素を持ち込んだエキセントリックな展開と表現が目立つものの、その実、恋愛という生臭いスパイスを散りばめる事で、 人間、正義、仲間、狂気、悪、という命題に真っ正面から取り組み、「ヒーローとは何か?」という本質を突き詰めていった、 『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)に通じるものがあるともいえるかもしれません。

 基本的に今作は、 “主人公であるレッドが実は本物のレッドでは無かった”という戦隊フォーマットにおいてアンフェアといえる大ネタを遂行する為に作られているのですが、 そのフォーマットの破壊に際して、まず初期設定においてメンバーの関係を「仲間」ではなく「殿と家臣」の1対4にするという小さな破壊を行い、 その上で終盤、もっと大きな破壊を行うという仕掛けが秀逸。
 そしてまた、約3クール分の物語を「殿と家臣」から「仲間」になっていく、という結局は戦隊フォーマットに準じた流れだと見せておきながら、 実はその“「仲間」になっていく事”そのものが丈瑠を追い詰めていた、とする実に三重の仕掛けとなっています。
 ここで今作が優れていたのが、姫が登場し、丈瑠を巡る影武者計画の真相が明かされる第44話以降、 “主人公であるレッドが実は本物のレッドでは無かった”という衝撃を物語として補強する為に、 様々な戦隊ものの王道要素を“ひっくり返し”に使っている事。
 特に、戦隊において団結の象徴といえるロボットに乗り込みながら、姫レッドと4人のメンバーがそれぞれバラバラの事を考えている、 という表現は優れた演出であり、戦隊であるが故の衝撃を描いただけで満足するのではなく、 戦隊である事を使い尽くす事でその衝撃を出来る限り鮮烈に研ぎ澄ました、というのが今作最大の長所であるといえます。
 初期作品において「スクラム」という言葉が主題歌に頻出するのは、チームヒーローであるスーパー戦隊の一つの特徴といえますが、 その「団結」が高まれば高まるほど苦しむ主人公を設定する事により戦隊の基本構造そのものをひっくり返し、 でも……
 「丈瑠……志葉家の当主じゃなくても、丈瑠自身に積み重なってきたものは……ちゃっんとあるよ」
 というところに、スーパー戦隊というヒーローの本質があるのではないか。
 そんな物語。……しかし、私が割と姐さん推しなのはありますが、改めて茉子は今作の本質にあたる最も良い台詞を貰っている感。
 で、その本質を一言に集約するならば、第四十七幕のサブタイトルでもある

 「絆」

 であろうと。
 「愛」とか「希望」とか「勇気」とか、実態は曖昧なのに何となく聞き心地が良くて安易に理由付けにされてしまうマジックワードの一種どころか、 存在して当たり前にされてしまう事もある「絆」ですが、1年間を通してそれを描き出そうとしたのが『シンケンジャー』ではないか、 と思います。
 そしてその「絆」を、仲間同士の関係や、何やら力の源泉とだけするのではなく、一種の鏡像である丈瑠と十臓の対決を通して、 “世界と向き合った時、「人間」は何をもって「人間」なのか?”という所に繋げたのが、お見事。
 同時にそれを、丈瑠だけではなく、源太を用いて姫にも与えた、というのがまた絶妙で、 第43話で十臓の踏み台にしてしまった源太の存在を、物語の中に美しく回収。そしてこれによって最終話、姫の言葉が、 侍として頑なでありすぎるが故に修羅に入りかけていた丹波の心を動かすだけの説得力を持つに至る。
 「丹波なぜわからぬ! ……志葉家だけが残っても意味はないのだ。……此の世を、守らなければ」
 世界の中で人間であるという事は、世界を見失わないという事ゆえに。そして本質的に「人間」であるが故に、 ヒーローはヒーローとして戦う事ができる。「人間」である事を捨ててしまえば、それはもはや、外道となんら変わりはない。 なればこそ、今作における悪=外道衆とは、ある意味では人間的感情に“執着するもの”であったといえます。
 かくして裏街道をひた走っていたシンケンジャーは、戦隊の正道に姿を現し、何もかもを更にひっくり返してみる。
 すなわち、「策ならある。――力尽くだ」。
 よりヒャッハーな方が勝つのです(え)

 前後の小林靖子メインライター作品でいうと、『仮面ライダー電王』(2007)と今作が、 いっけんアンチヒーロー的な(シリーズ従来作の約束事を破壊するような)設定から、むしろ「ヒーローとは何か?」を非常に丹念に描き、 一方で『仮面ライダーオーズ』(2010−2011)が、如何にもヒーロー的な造形の主人公を置きながら、 アンチヒーロー的な作風であったというのは面白い所です。
 また、宇都宮孝明プロデューサー作品というくくりでは、恐らくかなり「ヒーローの本質」に意識の強い方だと思うのですが、 後に同コンビの『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)でも描く、「戦えば戦うほどヒーローと怪人は本質的に近づいていく」 というテーマ性が、より絶妙にはまった作品であったかな、と。

 というわけで、テーマ性と物語がガッチリ噛み合った1クール目と4クール目は非常に面白かったのですが、今作の欠点は、 「絆」というテーマを描き切る為の“ひっくり返しの戦隊”をやり切る為に、中盤の第2・第3クールを犠牲にしている事。
 特に、中盤の追加ギミックの数々を「源太が天才だから」で強行突破したのは、雑としか言いようがありません(^^;
 その為、前半と後半は面白いし愛着もあるけれど、年間の完成度はやや減点、というのが個人的な総評。
 天才無双もですが、追加幹部として登場したアクマロ及びその一味が過去のシンケンジャーと面識がある様子、 という思わせぶりな台詞は全く拾われませんでしたし(^^; 折神とアクマロの術の関連性なども若干見えただけに、 この点が完全に切り捨てられたのは残念だった部分です。
 変に拾って大ネタを棄損するよりはとにかく大ネタが大事、というのは今作の方針であったのでしょうが。

 好きなキャラ……の話はだいたい感想本文で書きましたが、今作を特徴付ける点として、着ぐるみから無機物まで、 女性キャラクターの存在感の強さ、というのは外せないところ。最終盤に最も「運命と戦っている人物」として登場するのが姫であるという点も含め、 これもまた“ひっくり返しの戦隊”としてメインライターの力が入った部分だったのではないか、と感じます。
 後ここまでいくと牽強付会ですが、赤い鎧の働かない飲んだくれ、という如何にも終盤に足下をすくわてリタイアしそうだったドウコクが、 凄まじい戦闘力と貫禄のラスボスとして最終回を迎えた、というのもひっくり返しといえるのか(笑)
 ドウコクはホント最初、デザイン格好いいのに駄目そうだなーとガックリ来ていたのですが、段々と西凛太郎さんの演技とシンクロしてきて、 ただのゴロツキでも筋肉馬鹿でもなく、薄皮太夫を相手に見せたあのダンディズムは、 歴代戦隊の中でも独特の立ち位置に上り詰めた悪役として印象深いです。
 組織としての外道衆の、ヒャッハーすぎて作戦が単調、というのは残念だった部分の一つですが、幹部クラスはそれぞれ、 個性的で良い悪キャラでした。

 最初に前作『炎神戦隊ゴーオンジャー』と対比しましたが、『ゴーオンジャー』が王道を進んで「これが戦隊だ」と示したのに対し、 『シンケンジャー』は破壊をもって「これが戦隊だ」に辿り着いた、 ヒーロー番組を巡る状況の激変と様々な変革のあった00年代の作品群から、次の10年への架け橋として、 表裏をなす2作品であったように思います。
 そういう意味で今作は、型を破る為に型にこだわり抜いた作品であり、そのひっくり返しの果てに辿り着いた最終章は、 非常に素晴らしい出来でした。


★構成分析★
 〔評〕は、大雑把な各エピソードの5段階評価。高〔◎>○>−>△>×〕低。
 ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。 記憶と感想を読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。

話数監督脚本メインキャラ備考
中澤祥次郎小林靖子―― 〔当代シンケンジャー、集う〕
中澤祥次郎小林靖子―― 〔シンケンオー登場〕
諸田敏小林靖子赤×緑
諸田敏小林靖子青×桃 〔天使センサー発動〕
竹本昇小林靖子 〔兜折神入手/カブトシンケンオー登場〕
竹本昇小林靖子黄×緑
中澤祥次郎小林靖子 〔舵木折神入手/カジキシンケンオー登場〕
中澤祥次郎小林靖子青×桃×太夫 〔腑破十臓登場〕
渡辺勝也小林靖子赤×青 〔虎折神入手/トラシンケンオー登場〕
10渡辺勝也小林靖子 〔大天空誕生〕
11諸田敏小林靖子――
12諸田敏小林靖子 〔天空シンケンオー誕生〕
13竹本昇小林靖子桃×黄
14竹本昇大和屋暁
15渡辺勝也石橋大助
16渡辺勝也大和屋暁黒子
17諸田敏小林靖子寿司 〔シンケンゴールド参上/烏賊折神登場〕
18諸田敏小林靖子赤×寿司 〔イカシンケンオー登場〕
19竹本昇小林靖子青×寿司
20竹本昇小林靖子 〔海老折神誕生/ダイカイオー誕生〕×
21加藤弘之小林靖子桃×緑 〔『ディケイド』コラボ編〕
22加藤弘之小林靖子赤×黄 〔イカダイカイオー登場〕
23渡辺勝也小林靖子――
24渡辺勝也小林靖子 〔印籠丸完成/スーパーシンケンレッド誕生/ダイカイシンケンオー誕生〕×
25中澤祥次郎小林靖子桃×太夫
26中澤祥次郎小林靖子赤×十臓 〔腑破十臓、一時リタイア〕
27竹本昇小林靖子緑×黄 〔薄皮太夫、三途の川を離れる〕
28竹本昇小林靖子寿司 〔筋柄アクマロ登場/ダイゴヨウ誕生〕
29加藤弘之大和屋暁桃×提灯
30加藤弘之石橋大助 ×
31中澤祥次郎小林靖子―― 〔恐竜折神登場〕
32中澤祥次郎小林靖子―― 〔牛折神登場〕
33中澤祥次郎小林靖子 〔腑破十臓、再登場/十臓、太夫、アクマロに雇われる/猛牛大王登場〕
34長石多可男小林靖子
35長石多可男小林靖子 〔サムライハオー誕生〕
36竹本昇大和屋暁黄×寿司
37竹本昇石橋大助青×緑
38加藤弘之小林靖子赤×爺 〔猛牛バズーカ登場〕
39加藤弘之小林靖子赤×桃
40渡辺勝也小林靖子ドウコク
41渡辺勝也小林靖子赤×黄
42竹本昇小林靖子――
43竹本昇小林靖子寿司×十臓 〔筋柄アクマロ死亡〕
44加藤弘之小林靖子―― 〔志葉薫、登場〕
45加藤弘之小林靖子――
46柴崎貴行小林靖子――
47中澤祥次郎小林靖子―― 〔腑破十臓、死亡/裏正、消滅〕
48中澤祥次郎小林靖子―― 〔薄皮太夫、死亡〕
49中澤祥次郎小林靖子―― 〔血祭ドウコク死亡〕

(演出担当/中澤祥次郎:12本 竹本昇:12本 渡辺勝也:8本 加藤弘之:8本 諸田敏:6本 長石多可男:2本  柴崎貴行:1本)
(脚本担当/小林靖子42:本 大和屋暁:4本 石橋大助:3本)


 演出は、中澤・竹本が12本ずつで最多。中澤監督は夏冬の劇場版で途中抜けつつも、パイロット版とラスト3本を担当して、 まさしくメイン監督という位置づけ。
 同期の『仮面ライダーディケイド』でいわゆる《平成ライダー》第1期が一段落した事で東映内部でも色々と動きがあったのか、 次作『天装戦隊ゴセイジャー』でパイロット監督を務める事になる長石多可男が、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』以来の戦隊参加。 また、『ディケイド』の『シンケンジャー』コラボ編で監督を務めた柴崎貴行が終盤にスポット参戦。 諸田監督は前半参加して『ダブル』に移動し、中盤からは若手の加藤監督がローテ入りするなど、 ある程度のシャッフル及び2010年代への布石が打たれていく事に。
 脚本は、全体の約85%を小林靖子が担当。書けるだけ小林靖子が書いて、合間に3回、 サブライター参加による一休み(劇場版執筆期間?)が入る、という非常にわかりやすい作り。なお、小林靖子は『シンケン』本編と並行して、 『仮面ライダーディケイド』の『シンケンジャー』コラボ回も自ら担当。

 メイン回の配分は、以下。()内は、単独メイン回。
 〔赤:12(4) 青:8(3) 桃:8(1) 緑:7(2) 黄:8(2) 寿司:6(2)  太夫:2 十臓:2 爺:1 ドウコク:1(1) 提灯:1 黒子:1(1)〕
 基本的に殿総受け戦隊であり、最終盤も殿中心のエピソードではあるのですが、 姫の登場以降はシンケンジャーも外道衆もそれぞれ怒濤の群像劇的展開となっていくので、特に誰をメインとは置きませんでした。
 殿以外の初期メンバーは大体数字が揃っている中、殿に次ぐ単独メイン3回を数えた流ノ介ですが、 その内の2回が釣りとシンケンブラウンという微妙な出来だったので、こんな所も残念ブルー(笑)
 改めて確認すると、メイン回8回中、実に半分の4回が1クール目に集中と偏っているのですが(5回目も第14話)、 忠義一徹で今作の特徴を明確に現せて侍としての力量が高くイケメン枠なのにコメディリリーフでヨゴレをいとわない万能さ、 という振り返ると便利すぎます(笑) 第35話で、 そんな流ノ介の“私”の部分に焦点を合わせてぐっと内面を掘り下げる事で、あまり前半に偏った印象を与えていない辺りは上手い。
 唯一、単独メイン回が1つだけとなっている茉子ですが、これは第29話で提灯をダブルメインに数えている為。
 リスト化してみて一つ明確になった特徴は、作品の特色を出しやすい流ノ介、成長要素の明確な千明、という男子2人が前半を引っ張り、 対して女子2人は後半型になっている事。わかりやすい2人(青・緑)は作品を特徴づけた後に寿司屋と融合して3馬鹿トリオを形成するに至り、 根っこで屈折していた女子2人は、丈瑠の心情の掘り下げと繋げながら大奥の形成に至る、という構造になっています。
 この中で特に、長らく伏せられていた“ことはの姉”カードが、「身代わり」というテーマ性を持って最終章の丈瑠の布石になる、 というのはお見事でした。
 バランスとしては、各キャラの内面をもう一つ掘り下げた30話台において千明のエピソードが一つ欲しかった所ですがねじこみ切れず、 青とお手手を繋ぐ回でお茶を濁されてしまったのは惜しかった部分(^^; また、 家業にこだわる源太のエピソードもカレーを巡るギャグなってしまったのは残念さがありました。
 両エピソードともサブライター回であり、物語やキャラクターを精緻に組み上げすぎる小林靖子メインライター作品の短所が出てしまった、 とはいえますが。

 ◎をつけたのは、最初の山場である第12話、茉子を一気に掘り下げた第34話、 最終クールを前に各人の心情の変化を盛り込んで物語を展開したながら新装備を用いての殺陣が素晴らしかった第38話、 御大将が最高に格好良かった第40話、激動のラスト5話。
 逆に×をつけたのは、外道に関するピントがずれてしまい小林靖子としては珍しいレベルのミスとなった第20話、 今作の追加ギミックに関する雑さの悪い部分が全て出てしまった第24話、あまりにも内容がなかった第30話、の3本。
 流れとしては、前半は安定で第12話できちっと一山盛り上げた後、第14−15話は、 サブライターが微妙に世界観を掴みきれなかった感。ゴールド登場〜ダイカイシンケンオー誕生までの成り行きの合間に『ディケイド』 コラボ編(とそれにともなう小林靖子の『ディケイド』出張)が挟まる所は進行の忙しさもあってか、やや雑になった印象があります。
 そこから、パワーアップ前後編を踏み台にして、幹部退場前後編をやるという荒技を放った第25−26話で一山作った後、 アクマロが登場して猛牛大王が誕生するまで(第27〜33話)が、個人的には最も面白くなかった時期。 追加戦士とそれに付随する強化展開が一段落した所で悪い意味で落ち着いてしまったパターンといえますが、その後、 終盤前に個々のキャラクターの掘り下げを行っていった第34話以降の脚本のアベレージを見ると、やはりこの期間は、 とにかく猛牛大王まで出せばいい、という形で総じて省エネ気味であったと思わざるを得ません(^^;
 その分、第34話以降は枷が外れたような勢いを得るのですが、サブタイトルにもなった「十一折神全合体」によるサムライハオー誕生が、 流ノ介を掘り下げるエピソードのツマとして、「こういうのは勢いです!!」で処理されるのが良くも悪くも『シンケンジャー』といえます(笑)
 そういう点では、猛牛バズーカ回が巧くはまったのは、貴重。

 ロボの強化ギミックに関しては、『百獣戦隊ガオレンジャー』以降の大きな流れである換装形式を取っており、 第5話という早い段階から小刻みに登場。このパターンはどうしても序盤の展開が忙しくなりがちなのですが、 シンケンジャーは数百年に渡って戦い続けてきた、という設定の中に折神を取り込む事により、比較的説得力を持って処理しました。 ……その分、海老折神における天才無双が悪目立ちしましたが(^^;
 上述してきたように強化ギミックの取り込みと取り扱いにはこだわりが薄めの作品ですが、初期の換装アイテムが合体して飛行ユニットになり、 後に大型火器になる、という流れは物余り感が無くて良いアイデアで、シンケンオーそのものは良いロボットであったと思います。
 ロボ以外ではちょうど折り返し地点というやや早めのタイミングで、印籠丸によるスーパー化。使い回し可能なアイテムで個人が強化、 というのは商業的な展開のしやすさがあったのかなと思う所ですが、物語との絡め方はもう一つ、という形になりました。 翌年の『天装戦隊ゴセイジャー』、翌々年の『海賊戦隊ゴーカイジャー』は今作とはまた違う形になっており、 メンバーそのものの直接強化、は以後も色々と試行錯誤されていく事に。
 個人的には、強化あるなら全体強化が好みなのですが、アイテムを用いての個人強化というのが、玩具展開としてはやりすやすいのだろうか、 と身も蓋もない事は思ってみたり。

 総評としては繰り返し気味になりますが、1年間の総合で見ると中盤の減点が目立つものの、 第1クールと第4クールは抜群に面白い作品。キャラの魅力を出し切った上でのテーマ的な完成度は素晴らしく、 最終章の集約は実にお見事でした。


「侍戦隊シンケンジャー、これにて、一件落着!」


(2017年9月19日)

戻る