■『侍戦隊シンケンジャー』感想まとめ9■


“人のために強く 戦う気持ち
振り返りはしない がむしゃら道中”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『侍戦隊シンケンジャー』 感想の、まとめ9(41〜45話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第四十一幕「贈言葉」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:小林靖子)
 外道衆総大将・血祭ドウコクの恐るべき強さを目の当たりにし、まともに戦っては勝ち目が無いという現実を噛みしめるシンケンジャー。 これまでの戦いを経てきた事により、「正直、それなりに何とかなるんじゃないかと思っていた」 というのはメンバーのリアルな実感として納得でき、それを打ち砕かれた事でドウコクが如何に脅威か、というのも巧く強調されています。
 重傷の丈瑠を見舞い、思い悩むことは。
 (殿様……あんな無茶しはるなんて。やっぱり、なんか違う……茉子ちゃん、なんか気付いてはるみたいなのに、 なんでうちに言ってくれへんのやろ)
 大丈夫、野郎共にも言ってないから!
 ことはは彦馬から姉よりの手紙を受け取り、自分を心配する文面に目を通す。そこへ4人がやってきて、 源太は初めてことはの姉の存在を知り、「もしかしたら年上のお姉様が居たかもしれないのか……」と妄想にふけるが、 千明につつかれて、慌ててフォロー……はいいけど、断然ことはちゃん良かった派って、なんか危ないぞ、源太。
 ちなみにここの千明のアクションは、「ことはの姉の件に安易に触れるんじゃねえよ!」なのか 「姐さんの前で滅多な事言うんじゃねえよ!」なのか、どちらとも取れて解釈にちょっと悩みます(笑) 両方、かもしれないけど。
 源太は時折、思い出したように“綺麗な女性に弱い”みたいな面を見せるのですが、割と適当。よくよく振り返ってみると今作、 女性ゲストの出てきた記憶がほとんどなく、男性陣と女性キャラクターとの絡みそのものが少ない。
 流ノ介は、姐さんに魂を背骨ごと折られて以来、女に近づかなくなったし。
 そういう点でも殿:総受けという作品構造なのですが、思えば『未来戦隊タイムレンジャー』(2001)は タツヤ:総攻めだったので、えー……これ、意図的なのか?(笑)
 ゴールド寿司で食事を取りながら、自分はやはり味噌っかすではないのか、 もしも自分ではなく姉がシンケンイエローだったら茉子も殿様の事を相談するのではないか、とますます思い詰めることは。
 (うち、甘えてるわ……)
 ところでそろそろ、外で寿司食べるのが辛そうです(笑) 今作、私服戦隊なので野外シーンでは皆がっちりコート着ており、 リアルに寒さが見て取れます。特にことは。若さにも限界があると思う。
 その頃、シタリは六門船の床を磨きながら「へっへっへ、アクマロ様の為にピカピカにしときやしたぜー」と這いつくばって……いなかった。 前回シタリを思いっきり後ろからはたこうとしていたアクマロですが、ドウコク抜きでは相手をする必要も特にないと考えているのか、 シタリの事は歯牙にもかけず、配下のアヤカシに指示を下す。
 「地獄というものが本当にあるのか……あるのであれば、どれほどの絶望や嘆きなのか。それを味わいたいのでござります」
 「な、なんだって?」
 「ほほほほほほほほ」
 (こいつは頭がおかしいよ……ドウコク、おまえさん、このまま、終わりじゃないよね)
 シタリさん、豪速球。
 アクマロの命を受けたアヤカシ(ヤマアラシ+象?)は地上で人間に砂をかけ、 その砂を浴びた人々は幾ら飲み食いしても飢えが満たされないという飢餓地獄に苦しむ事になる。アクマロがこれまで繰り返してきた、 シタリ曰く「地獄ごっこ」、その真の目的は、人間の苦しみを土地に刻み込む事にあった……と、いよいよ見え始める、アクマロの野望。
 悪側のバリエーションの弱さは今作の欠点の一つなのですが、ひたすらヒャッハー系のドウコク達に対し、 アクマロがマッド系の面を見せてきたのは、今更ながら差別化されて面白くなって参りました。出来ればこの、 アクマロの頭おかしい感じは、もう少し早く入れて欲しかったなぁ。
 飢えた人々がゴールド寿司を襲い、アヤカシに立ち向かうシンケンジャーだが、焦るイエローが単身でアヤカシに挑んで苦戦。 変身解除級のダメージを受けたことはをかばって青と桃が砂を浴びてしまい、続けて緑と光も砂をかけられてしまう。 傷を負ったアヤカシは一時退却するが、シンケンジャー4人が飢餓の呪いによって戦闘不能に陥ってしまう。
 俺にカレーを食わせろーーーーー状態となり、屋敷で縛られる4人ですが、姐さんは別に縛ってあげてください、と痛切に思う(笑)
 まあこういうのはどうしても、一緒にしないと映像的にまとまりが悪くなってしまうのでしょうが(^^;
 「気に病むことは無い。逆の立場であれば、おまえも誰かをかばったであろう」
 縁側で横笛を吹くことはを励ます彦馬。
 「でもうち、お姉ちゃんの代わりが出来てへん。殿様や、みんなが優しくしてくれるのに、甘えてたんです」
 「どうかな。皆がそれほど、おまえを甘やかしているとは思わぬが」
 「……うち、最近、殿様の様子が変やなって思ってて、でも、茉子ちゃんも気付いてはるみたいなのに、うちに心配かけへんように、 なんも」
 笛の音に目覚めた殿が、この会話を立ち聞きしている表情がいちいち映るのですが…………殿、もしかして、ことははともかく、 姐さんに何も気取られてないつもりだったのだろうか(笑)
 「きっと、今までにもこんなんが沢山あったんです。うちが、気付かへんだけで。でも、今日気が付けて良かった。 みんなについていくだけじゃなくて、お姉ちゃんやったらしてた事、うちも」
 姉の代わりにシンケンイエローとなった自分は、姉なら出来たであろう事をしなくてはならない……とことはの抱えている、 憧れと入り交じったコンプレックスが、ここに来て大きく浮かび上がります。
 また、姉大好きの延長線上にある茉子の理想化が、かえってことはを苦しめている、というのは面白い構造。
 姐さんはことはに気を遣っているというより(ゼロではないでしょうが)、明らかに独りで抱え込むタイプなのですが、 ことはにはそこが見えない。ことはの持つ劣等感と入り交じった茉子という身近な存在へのやや盲目的な美化を描く事で、 ことはの姉に対する過度の憧憬が感じ取れる、というのは絶妙な案配。
 今作は正直、中盤もたついていた印象があったのですが、ここに来て色々と、仕込みが綺麗に繋がってきた感じがあります。
 一方、自室に戻った丈瑠は彦馬の言葉を思い出していた。
 ――「志葉家18代目を背負うとは、その全てを呑み込んでこそ」――
 (――中途半端な覚悟ほど、みっともないものはないな)
 翌日、砂かけアヤカシが先日御大将がカーニバルした海岸に出現し、怪我をおして丈瑠は出陣。それに続こうとすることはを、 彦馬が呼び止める。
 「良いか、いつまでも、姉上の代わりだとは思うな」
 「でも、うちはほんまに……」
 「姉上の手紙、悪いが目を通させてもらった。姉上は一言も、自分の代わり、などと言ってはおらんぞ。おまえがそう思うから、 そう読めるだけだ。どの言葉も、代わりではない、おまえ自身を思っての事だ」
 彦馬に諭されたことはは、手紙の文面を思い返し、そこに込められた思いを見つめ直す。
 「頑張ってる、シンケンイエロー……うちの事や」
 「誰の代わりでもない、おまえにしかなれない、シンケンイエローだ」
 「うちしかなれへん……うちしか、シンケンイエローに!」
 悩める若者に年長者(彦馬)が助言をして導く、という展開は千明と爺が絡んだ第十幕「大天空合体」と相似。 わかりやく問題児だった千明が前半早い内に更正するのに対し、優等生のことはの抱えていたねじれが噴出するのが終盤になってから、 というのはシリーズ構成として良く出来ており、意図的なものと思われます。
 殿の煩悶と絡めるのも含め、ことはの姉ネタをここまでキープしておいたのも、納得。
 先行した殿は負傷により苦戦するが、姉の幻影を脱し、花織ことはとして一筆奏上したイエローがスーパー化。 真・猿回しによる連続攻撃から、殿以外では初めて猛牛バズーカを使用して外道伏滅。……こう持ってくるならいっそ、 カレー回でスーパー化しなくて良かったのでは、という勢い(笑)
 諸々の都合でそういう形に出来なかったのでしょうが、本当は、それぞれが自分の中の問題と向き合って乗り越えた時 (姐さんなら母との再会、流ノ介なら歌舞伎回)に初めてスーパー化出来る、みたいに組みたかったのかなぁ。
 巨大化したアヤカシに対しては術の解けた全員が折神で集合し、サムライハオーへと合体。 アヤカシの思わぬパワーに初めてダメージを受けるシンケンハオーだが、黄色が猿折神を単独行動させてアヤカシを攪乱し、その隙に、 ハオー、バックパックごと、飛ぶ!
 まさかのヘビー級大ジャンプからの「ダイシンケン・大回転斬り」という、 斬撃というよりほぼ質量攻撃によりハオーはアヤカシを滅殺。そして、 やっぱり土と天は余剰パーツだった!(笑)
 奇策というか悲しみで前が見えませんが、一応あれか、猿が外れていたので折神大団円は使えなかったという事なのか。
 (お姉ちゃん、うち、もう、お姉ちゃんの代わりって言わへん。それも甘えなんやってわかった。シンケンイエローとして頑張る。 殿様や、みんなと一緒に)
 誰かの身代わりでない自分自身を見つける――そしてそれは、どこまでも行っても「自分」は「自分」であるという覚悟をする事でもある――と、 ことはがいい所に着地し、屋敷への帰り道、何やらそのことはの言葉に気持ちを整理できたらしい殿は心持ち柔らかさの戻った表情で振り返る。
 「源太、雑誌に掲載されたらしいな。食わせろ」
 ドタバタの材料のみと思われていた前回のネタですが、ちゃんと、覚えてた!
 「なんだよ、最近機嫌悪かったくせに」
 「実は……私もずっと、気になってはいたのですが」
 殿の煩悶を、「ちょっとムッとしてた」レベルで語る千明と流ノ介。
 「…………腹を壊してた」
 「へ?」「え?」「は?!」「ははは……なんだよー!」

 駄・目・だ、この人達。

 そういう事なら今日は奢りだ、と源太が請け合って一気に明るくなる3馬鹿トリオ(もう、ひとくくりでいいですよね)…………はいいとして、 ことはもそっちよりの反応なのですが、それでいいのか。
 勿論、現場を目の当たりにしているという決定的な違いがあるとはいえ、無言で丈瑠を見つめる茉子と、残り4人のなんだこの、 埋めにくい温度差(笑)
 メンバー中4人が早々にリタイアして、殿と一緒にスポットが当たるという、第39話と近い構造で取り上げられたにもかかわらず、 ことは、3馬鹿の重力に魂を引かれて、ヒロイン争いから一歩後退(笑)
 どうしてこうなった。
 というわけで、薄皮太夫が一歩リードのまま進む真ヒロイン争奪戦。最後に笑うのは誰だ!

◆第四十二幕「二百年野望」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子)
 同じ海岸で続けてアヤカシが暴れた事に引っかかりを覚えた彦馬は、これまでアクマロとその配下のアヤカシが活動した場所を地図に示してみる……が、 見事にバラバラだった。
 手元だけを映してマーカーを置いていくシーンにしっかり尺を取り、これは俯瞰にすると五芒星とか円とかになるお約束か…… と思わせておいて、バラバラ、というフェイントが巧い(笑)
 ところが、そこからアクマロが直接絡んでいた事件だけを残し、他を取り除くと、なんと千葉の海岸から新潟方面にかけて、 日本列島を斜めに縦断するような一直線が残る。
 「なんつうか……この世を真っ二つ、て感じだな」
 隙間センサーの描写が割とご町内っぽかった今作ですが、知らない内に首都圏さえ飛び出して戦っていた事が図示されました。 日本全国に町名単位で細かく仕掛けてあるとは、黒子、恐るべし……。
 アクマロの狙いを検討するシンケンジャーは、過去の資料にあたってみる事に。 千明でさえ何とか読める古文書だが源太は全く歯が立たず、そういえば源太は侍の教育を受けていないのだった、 とすっかり馴染んだ出入りの寿司屋の素性を6人は久々に思い出す。資料調査をリタイアした源太は、差し入れの寿司を握りに屋台に戻り、 密かに準備していたクリスマスツリーが登場……って、クリスマス回やる気あったのか(笑)
 いやてっきり、侍にクリスマスなど無いのだ! とここしばらくの数話かけてロボット全見せみたいなバトルにより、 クリスマス回のノルマを達成した事にする新手法だとばかり思っていました。
 「打ち込んできた楔も、残すはあと一つ」
 計画を進めるアクマロは、最後の楔を打ち込む為に新たなアヤカシを放つ。
 「吾の望みも、ようやく……ほほほほほほ」
 自らも人の世に出ようとするアクマロだが、ようやくその目的を突き止めたシタリがそれを止める。
 「仕掛けているのは、裏見がんどう返し。そうだろう」
 がんどう返し、て聞き覚えはあるけど何の事だったか(※歌舞伎で用いる場面転換の方法)、と調べて、ついでに画像検索したら、 実際のがんどう返しの仕組みよりも、アクマロとシタリと十臓の画像ばかり出てきた(笑)
 お陰で、「恨み」ではなく「裏見」と判明。
 それは、人の世どころか、三途の川も消えてしまうかもしれない、極めて大がかりにして強力無比の術であった。だが、 地獄に焦がれるアクマロは、自分も含めて外道衆の存在など、意にも介さない。
 「地獄をこの目この身で味わえるなら、些細な事」
 裏見がんどう返しの成立には、外道衆でも人でもない存在が必要となるが、そこでシタリはある男の存在に気付く。
 「腑破十臓……おまえさんまさか!」
 「そう、仕掛けは二百年も前より」
 アクマロはシタリを叩きのめして人の世に向かうと、第23話で登場した、志葉家の菩提寺の片隅にある古びた墓の中より、 元の姿を取り戻した裏正を取り出す。全てはアクマロの悲願を叶える為の、長い長い仕込みだったのである……。
 虫を使って人に苦痛を与えるアヤカシが楔の場所に出現し、一足先に立ち向かう源太。……なぜ、 強化武装であるダイゴヨウを屋台の番に置いていくのか(笑) 確かに、大事な財産だけど!
 源太の屋台はツッコんで欲しいのか欲しくないのか間合いが取りにくくて困るのですが、どう考えても源太、 屋台で寝泊まりしているしな! 何故かツリーが届けてもらえるしな! 職務質問への受け答えと逃げ足の速さなら任せとけ!
 全員集合してナナシと集団戦になり、久々に殿が大筒を放つが、現れたアクマロがそれを弾き返す。 アクマロはスーパー化した殿の斬撃を受け止め、「人の苦しみ、嘆き、悲鳴」により楔を打ち込む、というその目的を明かす。
 3馬鹿がアクマロに挑み、逃げた虫アヤカシを追う、殿・桃・黄。
 ここからはvsアクマロサイドと、vsアヤカシサイドで交互に展開し、最近生まれている温度差と距離感を、 更に強く感じる所です(笑)
 3対1でもアクマロは3馬鹿を圧倒するが、そこへ現れた十臓が、大事な話し相手を返せと背後からアクマロに剣を突き付ける。
 「十臓さん、吾の望みはたった一つ。外道に生まれた以上、決して行けない、あの世――それも地獄を知る事。 人の世では味わえぬ極上の嘆きと苦しみ、それを見たい、感じたいのでござりまする。その為に此の世に施したのが、 裏見がんどう返しの術」
 裏見がんどう返し……それは人間の嘆きや苦しみにより大地に直列に楔打ち込み、此の世に大きな隙間を作り出す秘術。 その隙間から人の世が裏返り、現世に地獄が顔を見せるのである。
 ここで、今作の特徴である“隙間”と繋げてきたのは面白く、大技に作品なりの説得力を与えました。
 ただ、太夫の三味線を利用してまで打ち込もうとしていた楔が、割と簡単に腹ぺこで代用できてしまったり、 楔を打ち込む条件が結構適当なのはちょっと勿体なかった所(^^; あまりエグい事が表現上出来ないという制約はあるにせよ、 もう少し濃度の統一感は欲しかった所です。まあ本来なら、騒ぎを起こさずに“いつの間にか楔を打ち込む”為の三味線であったのが、 御大将の横槍で計画が狂った、という事なのでしょうが。
 両手に花の殿は連携攻撃から猛牛バズーカで虫アヤカシを外道伏滅するが、最後の楔は成立してしまい、 裏見がんどう返しの為の切り取り線が大地に刻まれる。そして――
 「地獄の隙間を切り開けるのは、やはり、人と外道の隙間に居るもの。そう、はぐれ外道である、あんたさんのような」
 アクマロは十臓に向けて、復活した裏正を取り出す……。
 巨大化した虫アヤカシに対しては、ハーレムシンケンオー、天下統一。
 殿だから、正室と側室が居てもOKだ!(待て)
 オオナナシ軍団に囲まれて苦戦するシンケンオーだが、カブト折神とカジキ折神を召喚し、テーマソングをBGMに、 久々の初期侍武装を発動すると、派手な立ち回りでばったばったとオオナナシ軍団を薙ぎ倒す。 アヤカシの飛ばす虫は虎折神のドリルで粉砕。巨顔ナナシは天空シンケンオーで切り倒し、 天空唐竹割りで倒しきれなかった虫アヤカシは、大海シンケンオーからの折神大海砲で滅殺、 というクリスマススペシャルコンボ。
 最初から大海シンケンオーを繰り出さない殿に、微妙に、あー3馬鹿の所に戻るの嫌かなー、という気配を感じないでもないのですが、 久々のシンケンオーの立ち回りが格好良かったので良し、という事で(笑) 挿入歌もシンケンオーのテーマが一番好きなので、 フルサイズに合わせた充実の大暴れで、満足のバトルでした。
 一方その頃、3馬鹿は蹴鞠で死にかけていた。
 駆け戻った殿達の前で、
 「君の力で地球を斬ってみないか?」
 と誘いを受ける十臓は「興味無いな」と断るが、アクマロはここで、裏正を十臓の家族で作った、という恐るべき真実を明かす。 裏正には、辻斬りを繰り返す十臓を最後まで止めようとした家族の魂が閉じ込められており、がんどう返しに用いれば、 その魂は苦しみから解き放たれる……この最後の仕掛けを餌に十臓を釣ろうとするアクマロだが、突然、 楔から光の柱が噴き上がって大爆発を引き起こす。
 アクマロと、成り行きを覗き見していた太夫以外は派手に吹き飛んで全員気絶し、各所の楔で発生した光の噴出により、 周辺が大きな爆発の被害に遭うという、いきなりの大スペクタクル。というか島、逃げ場無くて壊滅的では……(^^;
 「シンケンジャー。もう止められはいたしませんので、どうか、邪魔立て無用に」
 十臓に誘いの言葉を残し、裏正を手にいづこへか飛び去るアクマロ。果たして十臓は、家族の魂の為に、地球を斬るや否や?  アクマロの目論み通り、裏見がんどう返しの術はなってしまうのか、次回――クリスマスに死闘の華が乱れ舞う。

◆第四十三幕「最後一太刀」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子)
 前回の大爆発による気絶から目を覚ました源太は、すぐ近くに十臓が倒れているのに気付く。 ここで十臓を仕留めてしまえば地獄が出現する事も無いし、丈瑠に危険が及ぶ事もない……寿司チェンジャーを構える源太だが、 裏正の秘密を知り、十臓を、倒すべき外道衆としてばかりではなく、“家族の居る人間”として見てしまった事から、 結局刀を振るえずにその場を走り去る……。
 爆心地に近かったからでしょうが、前回の爆発で、一番ダメージを受けている十臓(笑)
 アクマロがアフターケアしないで飛び去ってしまった為に、あやうく、幹部クラスが寝込みを暗殺されしまう所でした。
 屋敷に一時撤退した6人は裏正の正体に戸惑い悩みつつも、この世を救うにはどうにか十臓を止めるしかないと思い定め、 源太は自分が弱った十臓にトドメを刺せなかった事を告白して謝罪。
 「しょうが、ねえよ……」
 「しょうがなくねぇ! ……あめぇんだよ俺は。生まれついての侍じゃねえっての、こういう所かもしれねぇ」
 「確かにな、甘すぎた」
 源太をフォローする千明と、容赦ない言葉を投げかける流ノ介。
 茉子も太夫との戦いで割り切れなかった点について触れるのですが、結局みんな“人間”を殺す事は出来なくて、 ではどこからどこまでが人間なのか? という、ちょっと危ないテーマに、人の身にして外道に堕ちた者――はぐれ外道、 という要素を使って触れてきました。
 「戦わなきゃなんねえんだよな……本当に悪かった」
 屋敷を出た源太は屋台に座り込み、自分の行動に思い悩む。
 「侍がクリスマスじゃねえよ……」
 メタツッコミ!(笑)
 「やっぱり俺は、寿司屋か!」
 自分には侍としての“覚悟”が足りないのか……前回改めて、5人と源太の立ち位置の違いに触れましたが、 それを広げる形で“侍ではない梅盛源太”にスポットを当ててきました。ある意味では、天才無双だった源太の、弱点、を描くという展開。
 ただ実際問題、倒れている十臓を上から刺し殺せるのって、6人の中だと殿と流ノ介ぐらいな気はするのですが(^^;
 その辺りの判断材料、対比となるべき5人の侍としてのシビアさ、が特にこれまで描かれていないので、 そんな源太の甘さと優しさは、弱点ではあるかもしれないが視点の一つとして必要なものでもある、 というこの後の展開が今ひとつ説得力を持つに至りませんでした。
 これをやるなら、前半の内にちょっとわけありのアヤカシを、「この世の為」と5人がざっくり斬り捨てる話、 などが必要だったと思います。
 結局その辺り、アヤカシが基本ヒャッハー脳で大暴れしている所をざっくり倒す、 という今作の基本構造――外道衆のパンチ不足がネックとして出てしまった感じ。
 翌朝、源太の所へ向かおうとしてバッティングする流ノ介と千明、の姿にニヤニヤする面々。そこへダイゴヨウが、 十臓の件の責任を取ると源太が1人でどこかへ行ってしまったと駆け込んでくるが、タイミング悪く隙間センサーが発動し、 アクマロが切り取り線の一点に出現する。
 殿の指示により、流ノ介と千明が源太を探し、残りのメンバー(というか大奥)がアクマロとの戦いへ向かう事に。
 殿、友情を人任せに放り投げる。
 その頃源太は、裏正の材料とされた亡き妻の葬られた墓(回想シーンでは特に言及ないが、キャストで「十臓の妻」と表記) を前に何かを考え込んでいた十臓と、寺の山門で接触。魚丸を構えて立ちはだかるもそれを抜かず、座り込んで十臓に頭を下げる。
 「俺はやっぱ、侍になりきれねぇ……! 外道衆は許せねぇけど! 家族の魂救いてえって奴を、どうしても剣で止められねぇ。 だから! だから頼むしかねぇ。裏正を、諦めてくれ。この通りだ! 頼む!」
 刀とは違う手段で十臓を止めようとする源太――過去に寿司の件で繋がりがあった源太と十臓が、ここで面と向かってもう一度絡む、 というのは良かったのですが、だいぶ源太の思い込みが暴走しており、十臓が「家族の魂を救いたい」 という意思表示をした事が無いのが気になる所です(^^;
 「……そうだな。確かにおまえは、侍には向いてない。寿司を握っている方が似合いだ」
 十臓は源太の脳天に剣を振り下ろすが、駆けつけた千明と流ノ介がすんでの所でそれを受け止める。
 「うちの6人目がなんだって?」
 これは台詞も言い方も、千明にしては格好良かった。
 「我々はこの男ほど人がよくない。遠慮無く力尽くで行くぞ!」
 少し生身殺陣があった後(メンバーでは千明が一番動ける感じ)、十臓は飛び去り、源太に声をかける2人。
 「情けねぇ……考えた挙げ句、俺はこんなに甘い」
 「それでこそ、源ちゃんだろ。……格好良かったよ」
 「私にはとても出来ない。源太、多分おまえのような侍が、私達には必要なんだ。殿たちもきっとそう思ってる」
 「行こうぜ。地獄なんか、この世に出してたまるかよ」
 てれってっててー♪
 流ノ介と源太の信頼度がMAXになった!
 流ノ介と千明の信頼度がMAXになった!
 千明と源太の信頼度がMAXになった!
 3馬鹿は、固い絆で結ばれた!
 3馬鹿は、《3馬鹿フォーメーション》を使えるようになった!
 男達が熱い友情に目覚めている頃、殿はせっせと女性陣の好感度を上げていた(隣接したヘックスで戦闘するとユニット同士の好感度が上昇していきます)。
 色々と思い返してみたのですが、女性メンバー2人の戦隊で、終盤に来て、赤+女子2人がひとまとまりになる、 というのはかなり珍しいような。今作も前半は、年長コンビ(青−桃)、年少コンビ(緑−黄)、幼馴染み(赤−金)、 となりそうな気配はあったのですが、源太を殿に近づけすぎると殿の殿らしさが継続ダメージを受けてしまうので、 千明や流ノ介と近づけていった結果、両手に花と3馬鹿に分かれる、という、思わぬ格差社会になったような(笑)
 夢と野望でバーニング中のアクマロは大ハッスルして3人と鎬を削り、そこへやってきた十臓が遂に裏正を手にしてしまう。 3馬鹿もやってくるが蹴散らされ、殿は十臓に向けて猛牛バズーカを放つが、アクマロが十臓をカバーリング。 夢の為に体を張るアクマロが、なんだか妙に男らしい(笑)
 バズーカを跳ね返されて大ダメージを受け、倒れる6人。もはや、此の世に地獄が出現するのを止める事は出来ないのか。 アクマロが狂喜に震える中、遂に裏正を構えた十臓は、地球斬りのツボに向けて刀を振り上げると―― 身を翻してアクマロを斬る!
 ……ええまあ勿論、そうなりますよね(笑)
 ここは展開の都合どうこう以上に、十臓はそういう人というのがハッキリしていたわけなので、 作り手がどこまでサスペンスにしようとして描いていたのか、少々気になります(^^;
 どちらかというと、地球の大ピンチにお約束でヒーローが駆けつけた、的なカタルシスになっているのですけど、それでいいのか(笑)
 「じゅ、十臓さん……な、何故ぇ?!」
 「裏正の正体など、初めて見た時から気付いていた」
 「では……家族と知りながら、200年も裏正で、人を……」
 「外道に堕ちるとはそういう事だろう。もはやこいつも、一蓮托生。――元の切れ味だ。礼を言っておこうか」
 十臓は追い打ちでアクマロの体を貫き、その光景に愕然とするシンケンジャー。
 「アクマロ、人でないおまえが、人の情を頼みにしたのが失敗だったな」
 覗き見していた薄皮太夫、凄く楽しそうにアクマロを蹴りに現れる(笑)
 「十臓さん……あんたさんこそ本当の、外道でござります……」
 「だとすれば、俺にやらせても無駄だったというわけだ」
 ついでに地球を斬ってみる十臓だが、アクマロの指摘した通りにその性はもや真の外道にして人とアヤカシの隙間には非ず、 裏見がんどう返しの術は成立せず、アクマロが打ち込んだ楔は消え去ってしまうのであった。
 バイト代を回収した十臓と、意趣返しで気の済んだ太夫は姿を消し、やけになったアクマロの放った回転大雷撃に、 取り残されたシンケンジャーは大迷惑。激しく火薬が弾け飛ぶ中、再び変身した6人は烏賊五輪弾とスーパー猛牛バズーカのダブル飛び道具でアクマロを成敗。
 巨大化したアクマロとその放つ切神に対しては、シンケンオー、大海王、猛牛大王、ダイゴヨウで分担処理し、全合体でハオー降臨。 蹴鞠を薙ぎ払い、バックパックによる攻撃から必殺のモヂカラ大団円を放つ……が、 ここまで一切の抵抗を許さず外道を光に還してきたモヂカラ大団円を、アクマロ、まさかの反射。
 逆にピンチに陥るハオーだが、その時ゴールドが恐竜折神の存在を思い出し、サムライハオーが更に恐竜丸を装備して、 今度こそここに、全ての折神が集う12身合体が成立。12折神大サムライ斬りの一撃が、アクマロを真っ向両断する!
 「この痛み、見えたぁ……これが……これがぁ……! ははは、あははははははははは」
 最後、アップになったアクマロの顔がずれるという絵は良かったです。
 「これにて、一件落着」
 圧倒的な最強ロボかと思われたハオーの必殺技が跳ね返され、どうなる事かと思ったらまだ底を見せていなかった!  というのは良いのですが、どうして今の今まで恐竜の存在を忘れていたのかは、気になります(笑)
 ダイゴヨウの中で詰まっていたのか。
 金「外道衆……か」
 赤「倒さなきゃいけないんだ、俺たちが」
 人の情では決して図る事が出来ず、人と相容れぬ人外のもの――源太は改めて外道衆とは何かを思い知り、 6人の侍はますます激しくなる戦いへの覚悟を固めるのであった。
 夕焼けの土手で心沈む帰り道エンド……かと思いきや、屋敷に帰るとダイゴヨウの連絡によりクリスマスツリーが運び込まれており、 侍がクリスマスしてもいいじゃんいいじゃんすげーじゃん、とツリーを飾り付けて一時の和やかな時間でエンド。
 志葉家へ仕える家臣の血筋でもなく、侍として教育を受けてきたわけでもなく、外道衆との戦いの最中も俗世間とどっぷり繋がっている、 という、今作において異分子である事を貫いてきた6人目の侍、シンケンゴールド/梅盛源太ですが、言うなれば、 今作の世界観にそういったキャラクターとして登場させてしまった源太に関する始末をつけよう(責任を取ろう)、というようなエピソード。
 だったのですが……まず上述したように、「寿司屋」の対比としての「シビアな侍」が対アヤカシにおいて強く打ち出されていたとは言えず、 源太の甘さ/優しさ、というものがそれほど印象深くならず。
 次に、十臓がアクマロを斬った時に6人全員が驚いているという事は、 全員がてっきり十臓は裏見がんどう返しを成立させて家族の魂を解放しようとすると思いこんでいた事になり、源太以外の5人も、 十臓に人間の情が残っていると考えていた事になってしまっています。
 その上で、基本のパターンなら源太の懇願が十臓に何らかの影響を与えるわけですが、そういった事は全くなかったので、 物語において「源太の甘さ」を強調した意味が特に生じず、寿司屋と侍の差別化そのものが、話の中で空回りしてしまいました (源太が空回りするエピソード、と見れば確かに成立しているのですけど、それは余りに酷いですし(^^;)
 源太についての始末をつけるのと、十臓でやりたかった事を、諸々の都合で一緒にやってみたけど、巧く噛み合わなかった、 と言わざるを得ません。
 もう少しメタ的に言うと、そもそも噛み合わないとわかっていてぶつけている節もあり、「源太の良い所を見せる」か 「十臓でやりたい事をやる」かで、後者が勝った、という方が適切なのかも。
 というわけで源太を中心に見るとどうも綺麗に収まっていないのですが、 外道とは如何なるものかを見せつけた十臓は白目と黒目が裏返ったり大活躍。
 思えば25−26話が、パワーアップ前後編(23−24話)を踏み台にして、太夫の過去と十臓の一時退場を描く、 という荒技でしたが、今回もアクマロと源太を踏み台にして、 十臓をより濃く描く という構造を取っており、物語上の盛り上がりを踏み台にしてどんどん目立っていく十臓(笑)
 ここまで生き残ったので、まさしく十臓が、殿の対、という事なのでしょうが。
 そして、これまでネタで、貴重な話し相手とか唯一の友達とか書いていた裏正が、本当に俺の嫁だった事が発覚。
 裏正のヒロイン度が急上昇した!!
 まさかの、日本刀が真ヒロイン再び、なのか?! (※この件について詳しくは、当方『世界忍者戦ジライヤ』感想をご参照下さい)

◆第四十四幕「志葉家十八代目当主」◆ (監督:加藤弘之 脚本:小林靖子)
 今日は楽しいお正月、豪華おせちに隠し芸。賑やかな笑い声に包まれる志葉家だが、屋敷を訪れた1人の黒子の姿を見た殿と彦馬の様子が変わり、 2人は一通の書状を受け取る。
 「これは……」
 一方、アクマロがリタイアした三途の川では、シタリが酒に逃げていた。だがそこへ太夫が帰還し、 やる気を取り戻したシタリは初の女性型アヤカシを呼び出すと(宇都宮プロデューサーが、女性怪人をあまり好まないとの事)、 かねてより密かに準備していた物を用いて、様子見していた志葉家当主暗殺計画を再び実行に移す。
 「はぐれだろうと外道は外道。好んで堕ちたここがわちきの居場所。よろしく頼む、ご同輩」
 血祭ドウコク、そして外道に堕ちきった十臓を見た太夫は、己の居場所を見定め、嫌味を飛ばしてくる女アヤカシを軽くあしらう。 長らくスナフキン生活だった薄皮太夫の彷徨はかなり丁寧に描かれましたが、後は外道に一直線なのか、 人と人でなしの境界線の話はもう一歩踏み込みがあるのか。
 それはそれとして、太夫復帰でやる気を出したと思ったら、即座にいかにも太夫と揉めそうな女アヤカシを呼び出してしまう辺り、 シタリには定年退職寸前の駄目な上司像を見てしまう所です。
 人間界では、面倒くさい人が無職という名の翼を手に入れて、ギラギラとその牙を研ぎ澄ましていた。
 「ようやくだな……また斬り合う事だけに生きられる。命の、最後の一滴まで」
 十臓のこれは最初から、例えではなく、本当の意味で睦言だったのかと思うと、実に気持ち悪くて素晴らしい。 個人的にはもうちょっと最初からフルスロットルでも良かったですが、マッド系バトルジャンキーとしてはかなり面白くなって参りました。
 殿と彦馬が書状に目を通して何やら話し合っている間、源太を含めた5人は書き初め。続けて正月稽古に励み、 千明が秘伝ディスク千本ノックに挑んでいる中、なかなかやって来ない殿を、ちらちら気にする姐さんが妙に可愛いんですが!
 ……今作特に色恋要素は感じていなかったのですが、ここに来て私の中で、姐さん:正室、ことは:側室、 というのが異常にしっくり来てしまったので、もうこの先これ以上特に何もなくても、 姐さんは正室という事に私の中でなりました。
 ようやく合流した殿が千本ノックを行うくだりが入り、稽古を終えた皆が休憩に戻るというシーンで、 いつもの部屋に殿と姐さんの姿が見えなくて私だけ握り拳ですよ!(笑)
 なお、隊内ヒロイン争いを期待されていたもう1人、花織ことはさんは、お汁粉に魂をひかれていた。
 ……もう少し頑張れ、
 お汁粉食べたさに丈瑠と茉子を呼びに戻った千明は、中庭で2人の会話を耳にする。
 「やっとチャンス作れた」
 「なんだ? 話って」
 「そんなに警戒しないでよ。まあ、確かに、突っ込む気だけど」
 「何を」
 「ずっと引っかかってる事。――丈瑠が何を抱えているのか。……殿様としてなのか、丈瑠としてなのか、全然わからないけど、 それ……私達も一緒に、抱えられないのかな?」
 (なんだ……? 丈瑠がどうかしたのかよ)
 ここで立ち聞きするのが千明、というのは面白いチョイス。丈瑠の背中を追いかける半人前、というポジションだった千明ですが、 姐さんとは違う角度から丈瑠の懐にどんな風に踏み込めるのか。
 正室の投げ込んできた内角高めのシュート回転するボールをさけるのか、打ち返すのか、注目された殿の打席だが、 ここで隙間センサーが反応して試合は中断。出陣した6人はナナシ軍団と戦うが、その乱戦中、 女アヤカシの狙撃がシンケンレッドを直撃する!
 シタリの準備していた、志葉家当主暗殺の為の秘策――それは火のモヂカラに対して爆発的な反応を示し、 火が火を呼んで火を灼き尽くすという、火属性殺しの特殊弾、鬼火球による狙撃であった。
 近距離ワープを繰り返しながらの連続射撃により、レッド、そしてそれをかばった5人も次々とダメージを受け、 家臣達の倒れる姿に力を振り絞った殿は、スーパー化してダッシュすると、自ら5人から距離を取るという無謀な動きを見せる。
 緑(あいつ……なんでいっつもあんな簡単に自分を……)
 追いかけてきた5人の前で、赤は背後から撃たれながらも猛牛バズーカで反転攻撃、 という相撃ち覚悟とも思える反撃でアヤカシを撃破するが、重傷を負って倒れてしまう。青が印籠を受け取り、 巨大化したアヤカシに対して大海シンケンオーが出撃するが、とらえどころのないワープ攻撃に苦戦し、合体が解除。
 一方シタリの目論み通りならば、志葉家当主の血統ゆえ隅々まで染みこんだ火のモヂカラが鬼火球と過剰反応し、 自らの火に灼き尽くされる筈だった丈瑠だが、何故かその身は無事。
 そして――弱った丈瑠のぼやけた視界に映った少女が、書道フォンで変身する。
 それぞれの折神に分離してしまい、アヤカシに追い詰められる5人だったが、その時、 シンケンレッドが操る獅子折神が猛然とアヤカシに攻撃を仕掛けると、圧倒的な火のモヂカラにより、アヤカシを折神一体で撃破。
 「これにて、一件落着」
 獅子折神を操ったのは死力を振り絞った丈瑠なのか? だが、丈瑠は倒れたまま……慌てて丈瑠を助け起こす5人の前に獅子折神から降り立ったのは、 女性のシンケンレッド。
 事態を飲み込めない5人の前に更に現れたのは、陣幕を広げる黒子達と、もう1人の爺。
 「無礼者! この御方を、どなたと心得る! この御方こそ、志葉家十八代目当主、志葉薫様にあらせられるぞ」
 「は?」「え?」「はぁ?!」
 「姫の御前である。控えろぉ!」
 そしてその光景を、十臓が見ていた。
 ……十臓といい太夫といい、戦隊史上最も、ぶらぶら暇を潰して通りすがりに覗きを行う悪の幹部な気がします(笑)

 アクマロが退場し、呑気な正月総集編かと思いきや、一気の最終章突入で姫が来た!

 ここに来てまさかの、ヒロイン絨・毯・爆・撃!!

 ヒロインレースの低レベル乱立というのはままありますが、4コーナー回った所でここまでハイレベルな争いというのはなかなか無い気がします。 前半どちらかといえば、殿総受けなのでヒロイン不要、みたいな感じだったので、これはビックリだ!
 ……てハイ、驚くところ、そこではないですね(笑)
 正直に告白しますと、動画配信をしていたGyao!のサイトが丁寧に「チェックした次の動画」のサブタイトルとサムネイル画像を紹介してくれる仕様の為、 なるべく見ないようにしようと思いつつもどうしても視界に入ってしまい、あーそうかーそうなるのかー、 というのは少々わかってしまって勿体ない事をしていたのでありました(^^;
 最新の配信で常に見ていれば良かったんですが、まあ、後の祭り。
 これは、リアルタイムで体験したいタイプの作品だったなぁ。
 序盤で張り巡らせていた諸々の伏線が繋がる、年間通してのこんな大仕掛けだったとは。
 かくして、掟破りの殿・リストラ?! 殿はこのまま、社会不適格な無職になってしまうのか?!  なまじ本気で社会不適格者だけに、色々と洒落にならないぞ殿! そして壮絶なる、無職vs無職の予感……!  この辺り、これまでの伏線関係とか諸々については、次回見てから。
 なお、姫登場(姫は姫だから姫ゆえにヒロインの筈である)により、真ヒロインレースの最新オッズは以下のようになりました。
薄皮太夫 4.8倍
裏正 5.9倍
白石茉子 6.2倍
志葉薫 8.7倍
志葉丈瑠 11.5倍
花織ことは 13.0倍
谷千明 98.3倍
 頭一つ抜け出した太夫に敢然と姐さんが迫ってきたところで、大外から物凄い足で裏正がやってきたと思ったら、 更に姫がまくってきて、殿はじっと脚を溜めて後方待機。ことは、ちょっと後退(笑) 大穴は千明。

◆第四十五幕「影武者」◆ (監督:加藤弘之 脚本:小林靖子)
 「まさか……こんな形で……」
 突然の姫――真の志葉家十八代目当主――の登場に動揺を隠せない彦馬。
 「彦馬さん……殿様は、殿様ですよね?」
 「丈瑠は……あの女の子の、影武者ですか」
 一足早く帰ってきた4人は次々と彦馬に疑問をぶつけるが、そこへ志葉薫も戻り、座布団のグレードが上がる(笑)
 薫は意識してそういうキャスティングにしたのでしょうが、ちょっと丈瑠と似た雰囲気。
 奥で負傷を治療中の丈瑠は目を開き、思い出の紙飛行機を思い出す。

「強くなれ……丈瑠。志葉家18代目当主。どんなに重くても背負い続けろ。――落ちずに飛び続けろ」

 ここでOPに、というのは良かった。
 OP明けて、シンケンジャーと血祭ドウコク率いる外道衆の戦いの歴史をナレーションでざっくりめに辿り、 実は度重なる熾烈な戦いにより、志葉家を中心としたシンケンジャーの力が弱体化していた事が明かされる。
 そして遂に、先代――17代目当主(演じるは、現在は主に声優として活躍中の元メガブルー松風雅也)は、重臣達との協議の末、 窮余の一策を決断する。
 「影武者を立てる……」
 17代目は妊娠中の妻のお腹に居る子供に志葉家の未来を託し、敢えて先代シンケンジャーと共にドウコクとの決戦に出陣。 この戦いにより先代シンケンジャーは全滅し17代目も命を落とすが、17代目はその死の間際に不完全ながらも封印の文字を用い、 ドウコクを三途の川に一時的に沈める事で、次代の為の時間稼ぎに成功するのであった。
 そして、本物の18代目の存在を外道衆から隠す為、侍の血統ではないがモヂカラに優れた子供を育て鍛え上げた影武者――それこそが、 志葉丈瑠の正体であった。
 だが、なぜ、“今”なのか――。
 「影武者を立てたのは、封印の文字の件は勿論、シンケンジャーの柱である志葉家の、まさに最後の1人を隠し、19代20代と、 次への柱が太く育つのを待つ為だった筈」
 影武者計画とはその場しのぎの延命策ではなく、、志葉家の力を温存し、その血脈を広げる事で外道衆に対抗する戦力の安定と拡大をはかろうという、 数代にわたっての長期的なもくろみの筈であった、と反駁する彦馬。
 さらっと言ってますがつまり、良さそうな遺伝子の持ち主を見繕ってきて(以下検閲)という、サラブレッドブリーダー計画。
 生まれてきた18代目が女だったので、男より効り(以下検閲)
 彦馬の台詞における「隠し、19代20代と」の所で姫のアップになって目が左右に動くカットが入っているのは、 箇所が箇所だけに凄く意味深なのですが、丈瑠が道具として都合良く扱われてきた真相が明かされるとともに、 真の当主たる薫もまた、此の世を救うという目的の為に志葉家の無意識の中で道具にされているように見える、というのが凶悪な構造。
 この計画の本質を考えた時、彦馬からすると、志葉家の為また丈瑠の為、当初の予定通りに影武者計画を貫くのが正道だと信じているのですが、 薫からすると「おまえも私にそれを要求するのか」となるわけで、彦馬の言葉が裏を返すと、「丈瑠が人生捨ててるんだから、 薫も人生捨てろ」と恐らく自覚無しに言ってしまっているというのは、彦馬にしても、という点を含めてなかなかに残酷。
 ロングスパンのスケール感が今作の特徴を出すと同時に、志葉家の強い使命感と一対を為す冷徹な実態が浮かび上がります。
 「黙れ! 黙れ黙れ! 全ては姫のご意志。おまえたちの都合など」
 「丹波!」
 「はっ」
 「声が大きい」
 「はっ。……よいか! 姫に逆らう事はすなわち」
 「うるさい」
 甲高い声で高圧的という、如何にもな憎まれ役のお付き・丹波歳三に向けて、後ろから扇子を投げつける姫の図は、可愛かった(笑)
 「日下部、許せ。丹波が申した通り、私が決めた事だ。影武者の影に隠れて生きるのは侍として卑怯。だから、 死にものぐるいで修得した。封印の文字を」
 影武者計画の実態を知ったら、それは死にものぐるいになるわけです、乙女として。
 ドウコクを完全封印する為の文字を使える――そう告げる薫だが、 これまで丈瑠と共に幾多の死線をくぐり抜けてきた家臣達はそう簡単に切り替える事ができない。
 「それは、そうです。しかし……!」
 千明は真っ先に反対の声をあげ、侍の鑑である流ノ介までもが、使命と丈瑠との思いの間で揺れる。
 根回しが足りなかったせいで、穏当な当主交代イベントの筈が、すっかり謀反イベントになってしまい、 家臣団の忠誠度ガタ落ち。
 「生憎だな。俺んち、侍じゃねえし」
 丈瑠ではなく姫に仕える理由は無い、と立ち上がる源太だが、むしろこれ幸い、

 寿司屋不要、と戦力外通知を受ける。

 ハイきっと、そうなると思っていました(笑)
 時代錯誤な身分差を振りかざし、寿司屋を嘲る丹波の物言いに真っ先にキレたダイゴヨウが大暴れして騒ぎになるが、 そこへやってきた丈瑠が皆へ頭を下げる。
 「俺はおまえ達を騙してた! ずっと騙し続けるつもりだった。預けなくてもいい命を預けさせて、 おまえたちが危険な目に遭ってもそれでも黙ってた。そんな人間が、これ以上一緒に戦えるわけはない。侍なら、この世を守る為に……。 姫と」
 第三十九幕において茉子へ叫んだ「俺は……違う!」を裏打ちする、自分は「みんなと一緒に居るのが、普通」であってはならない、 その資格がない、という心情を吐露する丈瑠。
 変な話、あくまで上層部の指示でやむなく行っていた、と言い抜けようと思えば出来なくもないとは思うのですが、 4人と近づきすぎた事で、かえって丈瑠が自責の念にかられてしまう。
 丈瑠にしてみれば、外道衆との戦いを通して4人との間に信頼関係が生まれ、互いの距離感が縮まれば縮まるほど、 偽りの自分の立場により首が絞まっていくという……誰だこの酷い設定考えたの!
 レッドが交代するというインパクトだけではなく、困難を乗り越えてお互いの絆が深まっていく事で力を得、 やがて強大な敵を打ち倒す、という戦隊シリーズの基本構造を逆手に取っている、というのは実にお見事。
 確信的かつ意味を持った、正しい手法としての掟破りとなっています。
 また、丈瑠の通信障害は、コミュニケーション機能の故障にも原因があるけど、同時に実は丈瑠自身が、 コミュニケーションを発展させたくなかった為でもあった、というのは巧い目くらましになっていました。
 ここまで、「嘘つき」に始まって、死んではいけない筈なのに家臣をかばうなど、幾つかこの真相に至る伏線や布石がありましたが、 こうなってみると、第41話で、丈瑠を“真の主君の身代わり”として育ててきた彦馬が、 自分を“姉の代わりのシンケンイエロー”と捉えていることはを諭す、というのは実に重い内容でした。
 彦馬には彦馬の、殿に対する愛情や引け目があると思われますが、本当は言ってあげたいけど丈瑠には言えない、
 「誰の代わりでもない、おまえにしかなれない、シンケンイエローだ」
 という言葉をことはにかける。
 一方丈瑠は、その言葉は聞かぬまま、その前のことはの姿に全てを呑み込む覚悟を決め直す。
 ことはの姉エピソードは使いやすそうなのに最終盤まで取っておいたのは、この最終章までそれとなく内容を覚えていてほしかった為だった、 というのは実に納得。
 そしてそう考えると、そもそもことはの設定自体が、丈瑠の正体の布石だったわけで…… 誰だこの酷い設定考えたの!
 「影武者とはいえ、なかなか見事。侍でなくとも、長年フリをしていればそれらしくなるものだなぁ、ははははは」
 一礼して去って行く丈瑠の姿に、謎の特権意識で5人の反感をあおりまくる丹波。
 これまでそういった部分は描かれていませんでしたが、命を賭して陰で一般市民を守っているという意識が肥大化した、 こういう侍も居るという事か。まあ丹波は丹波で、お家大事が行き過ぎてちょっと歪んでしまった人、 という程度のフォローは最終的に入りそうな気もしますけど。
 「丹波」
 「は?」
 「黙れ」
 真の当主――姫――が感じ悪くて、わかりやすく対立をあおる展開は嫌だなぁと思ったのですが、わかりやすい憎まれ役は丹波が担当し、 直接的ではないものの、姫がそれを適宜たしなめる、という構造でホッとしました。……姫も通信機能に問題がありそうな上に、 丹波が話を聞いてませんが。
 「おまえらは丈ちゃんの言うこと聞いてやれよ。でも俺は我慢できねぇ」
 源太も屋敷を出て行き、先に屋敷を出た丈瑠は、足下に落ちる紙飛行機の幻を見る。 志葉家18代目当主――それを背負って飛び続けた紙飛行機の。
 「終わったんだ……これで」
 非常にあっさりリストラされてしまった元殿ですが、現役家臣団の誰よりも武芸とモヂカラに優れ、 その上で社会適応能力ゼロとか、野放しにしておくと危険すぎるので、 時給1200円ぐらいで雇うべきだと思うんですが!
 そもそも他人の人生を20年ぐらい買い取っておいて、志葉家は再就職の世話をする気は無いのか(^^;
 丈瑠の言葉に屋敷に踏みとどまらざるを得なかった4人だが、そんなタイミングでナナシ軍団が出現し、隙間センサーが反応。 姫を加えた5人の初出陣となり、シンケンレッドが変わった事を強調する形で、この終盤に来て、
 「シンケンレッド、志葉薫」
 から始まってのフル名乗り。
 名乗り終えるや敵に駆け出す4人に対し、姫はゆったりとその後を歩きながら、向かってきたナナシを薙ぎ払う、という殺陣。 烈火大斬刀を操っては、小柄な体と筋力不足を、足を使って補うというアクションが、殿との差を出しつつ格好いい。
 その頃、寿司屋は川岸で黄昏れる無職を発見していた。
 志葉家が再就職の世話をしてくれない限りは、2人で日本一周リアカー寿司の旅しかないなぁ。 殿はまともな接客は出来ないから、マスコットの着ぐるみに入るしかないなぁ……。
 「丈ちゃん。俺は……寿司屋だから。丈ちゃんが殿様じゃなくたって関係ねえよ。全然! 前とおんなじ! うん」
 と、ここでようやく効いてくる、侍ではない寿司屋の存在。
 正直源太、十臓の踏み台にされたまま寿司桶の底で力尽きるのかと思っていましたが、良かった、光が当たった!(笑)
 「そうか……。俺は殿様じゃない自分は初めて見た…………ビックリするほど何もないな」
 だが丈瑠は、再就職とか考えもつかないレベルで、思いの外、燃え尽きていた……。
 干からびたガリのような丈瑠のあまりの様子に慌てた源太は、丈瑠に何か創造的な事をやらせようと屋台を引っ張ってくるが (小学生扱い)、その間に丈瑠は姿を消してしまう。
 一方、戦場では4人の心の乱れが剣に出る中、姫がスーパー化してナナシ軍団を薙ぎ払い、オオナナシ軍団と巨大ロボ戦。
 「サムライハオーとやらで行く」
 知らない間に生まれたハオーを使ってみる姫、5人なのでちょっと折神の名前を書くのが大変そうなモヂカラ大団円で、 オオナナシ軍団は壊滅。……そういえば源太は、海老の所有権は主張しても良かったような。
 「これにて、一件落着」
 (確かに本当のシンケンレッドかもしれねぇけど……でも、俺が超えたいシンケンレッドは、別にいる……)
 (丈瑠……こんなこと抱えて、ずっと……)
 (侍としては、姫に従うべき。しかし……)
 (違う。こんなん違う……殿様!)
 同じロボットの中で戦っていても、4人の思いは全て丈瑠に向いていて、ちょっと可哀想な姫様(^^; 
 姫様も姫様で、初対面の連中とチームを組んで生きるか死ぬかの戦いに赴かないといけないという大変な立場であり、 本来は忠実な侍である流ノ介あたりがそこを汲んで潤滑油にならなくてはいけないわけですが、流ノ介にも余裕なし。
 “団結の象徴”とも言える戦隊ロボを用いての心理演出としても、面白い。
 その頃、丈瑠は志葉家の菩提寺の片隅に立てられた、小さな墓を訪れていた。 第23話で印籠を取りに来た際に丈瑠が見つめていたその墓――それこそが丈瑠の父の眠る墓だったのである。
 「父さん……」
 丈瑠が死んだ目でいいなぁ(笑)
 だがその時、何の因果か同じ境内に家族の眠る、筋金入りの真・無職がやってくる。
 「シンケンレッド……いや、違うらしいな。が、そんな事はどうでもいい。 俺と戦う。おまえはそれだけで、充分だ」
 ここでとうとう、今までで最高に熱い告白が来ました。
 心の隙間に忍び込む気満々です。
 さすが十臓、伊達に現世で嫁が居たわけではない!
 「それだけ……」
 十臓の言葉を噛みしめ、口元を笑みの形に歪める丈瑠。
 「何もないよりかはマシか」
 ……はいいとして、どうやって戦うのか、と思ったらシンケン丸は引き続きモヂカラで召喚できる模様。……そういえば、 印籠と秘伝ディスクは回収されたけど、書道フォンは取り上げられた覚えがないのですが……持ちっぱなしのままで、 シンケンレッドにも変身できてしまうのか? ますます危険すぎて、普通に放置しておいてはいけないと思うのですが、元殿。
 ただの1人となった、志葉丈瑠と腑破十臓は向かい合い、お互いの刀を構える――果たしてその斬り開くは百鬼夜行か冥府魔道か、 次回、更なる激震。

 ・急に出てきすぎた姫
 ・態度の大きすぎる丹波
 ・発言権の低い彦馬
 ・潔く去りすぎだけど調整機能とかついていないから仕方ない丈瑠

 いったい誰が一番悪いのか、肝心の最前線の心のケアを放棄した事で激しく空中分解しているシンケンジャーですが……これもしかして、 最終盤で敵ではなく味方組織が内部分裂してぐだぐだになる、というのも狙い済ました逆セオリーなのでしょうか(笑)
 丹波の言によると丈瑠は「侍の血筋ではない」という事ですが、回想シーンで何度か出てくる丈瑠父は影武者作戦に全面協力したり、 先代シンケンジャー全滅の際に共に討ち死にしていたりという事を考えると志葉家に仕える侍と見た方が自然で、となると、 丈瑠は養子という事でしょうか。
 多分にキャスティングの都合もありますが、丈瑠が父の事しか思い出さないのと、 影武者という居場所に座り続けるしかなかった背景なども合わせて想像すると、志葉家が影武者計画とかその他様々な目的で、 全国の施設に黒子を派遣してモヂカラが強く身寄りの無い子供を探してきた、と考えると色々しっくり来ます(というか、 黒子ってもしかして……)。
 そもそも君主というのはそういうものではありますが、最も決定権のない運命を押しつけられていた丈瑠が、 第1話において「家臣とか忠義とか、そんな事で選ぶなよ。覚悟で決めろ」と4人に向けて問いかけていたのも、実に皮肉。
 それにしても、これまで実際の規模や影響力が今ひとつわからなかった志葉家ですが、 出来る範囲に関してはかなり苛烈――目的の為には手段を選ばないに近い――な活動を行っていたと想像され、その上で、 影武者を軟着陸させる気配が見えなかったり、非情な一面も垣間見えます。……これ、丈瑠と源太と彦馬、 折を見て暗殺される手筈なのでは。
 そんな志葉家の真・主君、姫こと薫は、やはり視聴者にあまり嫌ってほしくないようで、丹波を徹底的な憎まれ役に置いた上で、 次回予告の台詞で早くもフォロー。
 ……うん、ここまでお読みいただいて露骨におわかりかと思いますが、登場2話目にして姫に肩入れして感想書いている人がここに居ます。 ……だって、姫、この設定、絶対可愛いじゃないですか?!
 口に出しては「影武者の影に隠れて生きるのは侍として卑怯」という言葉になっていますが、徒に影を影の人生で終わらせない為に、 自ら日の光の下へ出てくる心意気。面倒くさそうなおっさん達に育てられ(推定)、恐らく通信回路に困難を持ちながらも、 悪感情を承知で初対面の家臣達と剣を振るう姿。
 そう、姫は、今作ここまでのメインキャラクターの中で、最も、男前……!(あれ?)
 何か着地点が少しズレましたが、多分姫、登場人物達の中で一番、「運命と戦っている人」ではないかなー、とそんな目で見ています。
 まあ、姫がもう少し段取り踏めばここまでややこしい事にならずに済んだのでは疑惑はあるのですが、 どう考えても段取り機能とかプログラム段階で組み込まれていないので仕方ないのです、 事態をややこしくするのは姫様の属性効果なのでやむを得ないのです!
 で、今こんな感じなのでそういう気配は全くありませんが、これ姫、姐さんの好みのどストライクだと思うんです(待て)
 今、私の脳内における今作ベストカップルが姫×姐さんになっているのですが、どうすればいいのか!(もう黙れ)
 えーと……次回、あれです、彦馬が大ピンチ。

→〔その10へ続く〕

(2017年9月3日)

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