■『侍戦隊シンケンジャー』感想まとめ7■


“オーラ出まくり モヂカラ大弾円
 究極サムライハオー降臨!!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『侍戦隊シンケンジャー』 感想の、まとめ7(31〜35話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第三十一幕「恐竜折神」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 注目は、「カードゲームに殿も家臣も無いわふははははは!!」と、容赦なく殿を追い詰める彦馬。罰ゲームの顔の落書きを見る限り、 ゲームに弱いのが、流ノ介、殿、ことはで、ずる賢いのが、姐さん、千明、彦馬、という納得のメンツ。
 シタリの台詞により、ドウコク他がいつも乗っている船の名前が「ろくもんせん」と判明。字はわかりませんが、 三途の川の渡し賃・六文とかけた模様。……て、外道衆があの世へ行けないのって、お金足りないからなのか、もしかして。
 なんかアクマロむかつく、ていうかー頭脳労働担当の儂の立場削られ気味? と川辺をフラフラしていたシタリは、 腐れ外道衆を発見して拾い、地上へ送り込む。この後の会話の内容からすると、劇場版の敵?の元部下のようです。
 腐れ外道衆のアヤカシは病院を襲って入院患者の少年を人質に取り、看護師にシンケンジャーへ助けを求めさせる。 人質の少年を助けるべく罠とわかって敢えて危地に飛び込んだ5人は、大量の腐れナナシ軍団と激突し、 殿が新たな秘伝ディスクを用いて真剣丸を恐竜丸にパワーアップ。
 恐竜丸は劇場版先行ネタのようで、成り行きに全く説明がないのですが、 見た目人喰いサーベルと化した刀が鞭のようにしなって動き、真っ赤な羽織で武装、と、スーパーモードより格好いいからいいか、みたいな(笑)
 今作はこの辺り本当に、割り切っているというか開き直っているというか(^^; 良し悪しでいえば良くないのですが、やたらに、 物語とギミックを馴染ませる努力を放棄気味。
 恐竜丸の力もあって病室へ突入するシンケンジャーだが、既にそこはもぬけの殻だった。 ずる賢く立ち回るアヤカシは人質の少年を盾にして看護師の元へ現れ、万が一の時の為に待機していた源太を含め人質を3人に増やすと、 シンケンジャーを別の場所へと呼び出す。疲弊したシンケンジャーに対する二段構えの人質作戦こそが、アヤカシの真の策略だったのである。
 脳筋ヒャッハー分の濃厚な血祭団と比べて、卑怯卑劣な手管を使う腐れ外道衆に対し、珍しく本気怒りの表情を見せる源太。 ひたすら陽性でちょっとお馬鹿な感じから、PTSDによる絶望、そして激怒、とここ数回で源太のキャラクターに幅を増やしました。
 寿司チェンジャーを奪われつつも、5人を信じ、看護師と少年を励ます源太。
 「誰かを助ける為なら、絶対諦めねぇし、負けねぇ。絶対だ」
 「誰かの為に戦うというのは、弱いのさぁ!」
 「――てめぇ、本当に腐れ外道だな」
 「それがどうしたぁ? 勝てば、正しい。いひひひひ」
 だがそこへ、響き渡るジェット音。そして、空襲。
 シンケンジャーは大天空で空から強襲を仕掛け、火薬増量で吹っ飛んでいく腐れナナシ軍団。混乱の最中にピンクが人質を救出し、 それぞれアクションしながら、桃(人質救出)→緑(ナナシを蹴散らす攻撃)→青(アヤカシを攻撃)→黄 (寿司チェンジャーを回収して源太へ)→金(変身)→赤(逃げようとするアヤカシを阻む)、と変則名乗り。
 「馬鹿な?! なにがなんだかわからん。何故あの状態から形勢逆転されているのだ?!」
 「簡単だ。てめえらが誰の為にも戦ってねぇからだよ!」
 まあその実態は、策略を吹き飛ばす武力ですが(笑)
 ここから、画面を広く使った大立ち回りで、今回はアクション祭。広角に撮ったり接写したりとカメラワークが面白い。
 それにしても光の戦士は居合いの修行をしていた筈なのに凄く普通に十手も使いこなし、間合いは確かに近いかもしれませんが、 天才だからシカタナイ。
 恐竜丸はひたすら格好良く、アヤカシを微塵切りにしてずんばらりん。巨大化したアヤカシは大海王を盾にするが、剣付き戦車、 のような恐竜折神の攻撃で逆転し、侍武装で恐竜折神は兜と大型剣に。締めは「恐竜丸・天地一閃」で斬殺。
 シンケンジャーは救い出した2人と敢えて顔を合わさず、戦いを終えて帰路に着くのであった……と、久しぶりな気のする帰り道エンド。 今回、話の中身はあってなきがごとしの恐竜丸+アクション祭回なので、あえて締めを原点回帰しつつ、 こてんぱんにされたカードゲームの勝負にこだわる殿(皆の輪に入っている殿)を描く事で、前半戦との違いを描いた、 という事かと思われます。
 基本、劇場版とのギミック擦り合わせ(&販促)エピソードだったと思われるのですが、潔すぎるほど説明が無いので、これ、 別に擦り合わせなくても特に問題なかったのでは……? みたいな(笑) その分、恐竜丸のCGや集団戦は力が入っており、 アクション面は見応えがありましたが。
 これから後半戦に入ります、という閑話休題&前振りPVみたいなエピソード。

◆第三十二幕「牛折神」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 扱いの軽さに耐えかねて折神、家出……と思ったら、いつの間にやら屋敷の床に転がっていた少年に群がっていた。 過去にも幼年時代の源太が似たような場所から忍び込んできていましたが、セキュリティ甘くないか、この屋敷。
 年頃の娘が2人も寝泊まりしているのに、どうかと思います!
 まあ、アヤカシ対策に力を入れすぎて、一般人(それも子供)がセキュリティホールになっているのかもですが。
 角笛の山から志葉の殿様に会いに来たという少年の名は、榊原ヒロ。モヂカラ発祥の地たる角笛の山に今も済む封印の一族・榊原家の人間であった。 志葉家の先祖とも繋がりがあると伝えられる榊原家が封印しているもの……それは300年以上の昔に作られた折神の元祖にして、 その有り余る力で暴走したが為に封じられた、牛折神。ヒロが持ってきたのは、自ら作ったという、 その牛折神の制御ディスクであった。
 これまで、あって当然の基本設定、として特に語られる事の無かった「モヂカラ」の根に触れると共に、 畳みかけるように増加するギミック。折神が、5(シンケンオー)+3(大天空)+2(大海王)+1(恐竜)+1(牛)で12体、 単体で活動可能なダイゴヨウをタイヤと同じ扱いと考えると、大体、前作(『ゴーオンジャー』)と同じ物量。 妙に多く(重く)感じるのは、あまりメカと物語の摺り合わせを重視しない作風ゆえか。
 牛を目覚めさせたい、というヒロに対し、軽はずみな事は出来ないと却下する殿だが、 牛折神の力を手に入れようと目論むアクマロの手先がその身辺に迫り……全く関係無い中学生を襲っていた。
 無駄に格好いい声でとんだ間抜けかと思われたフジツボ(CV:稲田徹)でしたが、勘違いの原因は、中学生が拾っていたヒロの財布。 中学生を救ったシンケンジャーは、前回に続いて今回も割とアクション多め。黄色が、剣振り回している最中に側転入れましたよ。
 フジツボは大火炎攻撃を放つが、ゴールドが参戦して一時撤退。アヤカシの狙いがヒロにある事を知った6人は角笛の山に向かうが、 祖父の藤次はヒロをきつく叱るばかりで話し合いにならず、飛び出したヒロは自作の制御ディスクをはめて牛折神の封印を解いてしまう。 が、ヒロのディスクは牛の制御に失敗。封印が解けて暴れだした牛は、いきなり送電線を破壊したり、凄く、怪獣です。
 暴れ回る牛折神を確保しようとするオオナナシ軍団だがあっさり壊滅し、止めに入ったシンケンオーと大海王を交えての大乱戦。 シンケンオーは牛を取り押さえようとするも振り落とされ、内部にヒロを乗せたまま、牛折神は姿を消してしまうのだった……。
 暴れる牛折神(牛、というか牛車)、オオナナシ軍団、シンケンオーに大海王、と巨大戦も数と時間をかけてのスペクタクル。 とにかく凄まじい力を発揮する牛折神のインパクトを上手く見せました。
 果たしてシンケンジャーは、牛折神を止め、ヒロを救い出す事が出来るのか。捻れてしまった祖父と孫の思いは如何に重なるのか。 そしてその頃、スナフキン生活を満喫していた薄皮太夫は、折れた裏正の刃を拾っていた――。
 ……今急に気付いたけど、2009年(丑年)だったから牛?!

◆第三十三幕「猛牛大王」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 牛折神は初代シンケンジャーよりもっと前に作られた折神、という言及が外道衆からあり、先にモヂカラありきであった、 と前回に引き続いて背景設定の情報が幾つか。
 とするとシンケンジャーの誕生は早くても1700年代という事になりますが……300年前、となるとそれなりに昔の筈ですが、 江戸時代入ってから、となると、意外と最近の気もする不思議。
 ……いやなんか勝手に、鎌倉時代ぐらいからありそうなイメージでした(笑)
 「ま、適当に遊んでいる内は好きにさせとけ。遊んでいる内はな」
 牛折神の強奪をもくろむアクマロに対して、ドウコク、ちょっぴり風格を見せる。デザインと雰囲気は好きなので、ラスボス、 とは言わないまでも是非とも悪の大ボスとして最終盤まで立ちはだかってほしいのですが、 何かと足下すくわれそうな気配がぷんぷんしていて心配です(^^;
 そのアクマロは、砂浜に突き刺さっていた裏正の半分を海へ不法投棄しようとしていた薄皮太夫に接触。 血祭団から筋殻団への移籍話を持ちかける。裏正はもともとアクマロが作った事が判明し、勧誘を受けた太夫は、 もう半分と引き合う裏正センサーにより、十臓を山中で発見。
 「まだバラバラになっていなかったようだな。こんな所で何をしている?」
 「俺の代わりに、こいつがバラバラになった。あの時の心地よさ、思い出しては味わっている。ずっと」
 しれっと生きていた十臓は、友達の思い出モードを延々と回想していた。
 「ふん、外道に堕ちるほどの欲望、たった一度の戦いで晴れるとは。そんな筈あるまい。わちきと同じだ。 外道に堕ちるほどの未練……この三味と、おまえの裏正、元に戻せると。アクマロの伝言だ」
 前に言われた嫌味を返しつつ、太夫は裏正の刃を十臓に見せる――。
 十臓はどうやらアクマロを知っているような口ぶり。アクマロの使う切り紙による式神召喚が折神(モヂカラ)と繋がっている可能性もありそうで、 アクマロが色々、設定と設定を繋げる存在となるのか。
 太夫の登場シーンで、毛玉が三味線を口まねしているのは、好き。
 その頃、シンケンジャーは行方不明の牛を探していた…………て、なんか超、送電線に引っかかっていますが(^^;
 ヒロが邸内に転がっていた時の事を思いだし、折神をヒロの探索に放つ5人。ヒロは力を放つのではなく、 集める性質のモヂカラを持っており、折神はそれに引かれるのであった。翌朝、折神達の大捜索によりヒロ(とそれを乗せた牛) が見つかり、出陣する6人に、藤次は牛折神破壊用ディスクを渡して頭を下げる。
 「頼む! ヒロを、牛折神から、引き離してくれ」
 「どうしてそこまで? あの仏壇の写真、ですか」
 5人を先に行かせ、榊原家の事情を聞く殿。藤次の息子でありヒロの父もまた、牛折神の制御法を熱心に研究していたが、 夫婦揃って山の事故で死亡。以後、藤次は孫をなるべく牛折神に関わらせまいとしてきたが、ヒロはいつの間にか父の後を追いかけ、 牛折神を制御しようとしていたのだった。
 「覚えてますよ……どんなに小さくても、絶対に忘れない。例え、牛折神から引き離しても、受け継いだ想いからは引き離せない」
 自分の幼少期を思い返した殿は、破壊ディスクを藤次に返し、仲間達の後を追う。
 ……あー殿、一応、いざという時の切り札にディスクは持って行っても良いんじゃないですかね(笑)
 ところで、モヂカラに優れた一族、として榊原家が登場しましたが、とすれば天才・源太の家系を遡るとどこかで榊原家に繋がっている、 という可能性はまあ解釈としてはありか。……榊原ではなく、筋殻の方に繋がっている可能性もありそうですが。
 それはそれで面白いかもしれない。
 牛折神の方へ向かっていた5人は外道衆と接触して、ちょっと生身バトル。生身だとモヂカラで武器を召喚できないのか、 源太は格闘戦である事が判明。殿が追いついて一同は変身するが、そこに十臓が現れる。
 「まだまだ成仏できないようだ。が、裏正が元通りになるまで、勝負はお預けだ」
 身勝手だーーー。
 太夫も足止めに参戦し、先行したフジツボを1人で追った殿は牛折神の中へ。そこでは目を覚ましたヒロが、 牛を止めようと制御ディスクにモヂカラを込めていた。フジツボと赤が剣を交え、そこにやってくる藤次。
 ………………暴走している牛折神の体内に凄くさらっと入ってきていますが、藤次は恐らく、凄まじいモヂカラの使い手なのです。
 「ヒロ……こいつはおまえの父さんが、おまえのモヂカラに合わせて作っていたディスクだ。いつか、おまえなら、と」
 老人がヒロのディスクの代わりに填めたのは、緊急破壊用……ではなく、ヒロの父が作った、王のディスク。
 実はそもそも、牛折神の制御を考えていたのは藤次だった。その想いは息子に受け継がれ、ヒロの集めるモヂカラに注目した息子は、 それを制御ディスクに応用しようとしていた……が、その息子が事故死した事で、因縁が人を縛り続ける事を恐れるようになった藤次は、 孫を牛折神から遠ざけようとしていたのである。
 「だが、お前達が想いを受け継いでくれたっていうのに、大本の儂がこれじゃ……みっともない。そうだろ?」
 和解する祖父と孫だが……自分の若い頃の過ちに口をぬぐって綺麗事を並べ立てていたとか、 凄くダメな祖父でした!
 一見いい話にまとめているのですが、何となく微妙な気がするのは、多分、『シンケンジャー』の基本構造そのものが、 あまり“いい話”ではないから(笑)
 今作は「宿命」によって「犠牲」を強いられる戦士達の姿を正面から描き、「誰かの為」にその「犠牲」から逃げない、 という所にヒーロー性を置いているのですが、それ故に当然、ヒーローである事に常に痛みを伴います。
 今回、殿が回想で父の言葉を思い出しますが、
 「強くなれ……丈瑠。志葉家18代目当主。どんなに重くても背負い続けろ。――落ちずに飛び続けろ」
 改めて背景のえぐい戦隊です。
 祖父が道を開き、父が作り出したディスクに、ヒロが込めたモヂカラにより王のディスクは完成。 牛折神の余分な力を吸収して発散する事でその暴走を止め、牛折神は街へのダイブを回避。 スーパーシンケンレッドにぶった切られて巨大化したフジツボに対し、牛折神は牛車部分を脚にしたロボット形態へと変形する。
 「猛牛大王・天下一品!」
 前回から明らかに牛車部分がロボ足感満載でしたが、つまり牛折神は、最初からロボット化を前提に車付きで設計されていたという事になり、 榊原家はこれを何と戦わせるつもりだったのか。
 もしかして、幕府転覆とか目論んでいたのか。
 そこに力があるなら、限界に挑戦するのが人のサガというものなのか。
 なお、江戸時代?に巨大ロボという発想は、磁雷神(『世界忍者戦ジライヤ』)の設計書が古文書として出回っていて、 その影響を受けたのではないか、というのも疑われる所です。
 「これ以上は無駄だな」
 「雇われ仕事ならこの程度か」
 猛牛大王が立ち上がったのを見て、そそくさと帰宅するスナフキンデュオ。なんか凄く、 ダメな人達を雇いましたよ?!
 重火力型の猛牛大王はバルカン砲を乱射し、フジツボの火炎放射と猛牛バルカン砲の流れ弾で、 山林が燃え広がって大変な事に。
 トドメは、角の間(頭部)にディスクを填めて、右手のガトリング砲を連射する、猛牛大回転砲で成敗。 ガトリング砲を連射するだけでは地味だと思ったのか、回転する頭部のディスクから変なビームが一緒に出るのですが、 贔屓目に見て巨大な扇風機にしか見えないので、ガトリング砲だけでもよかったよーな……(笑)
 プラズマクラスター!(意味なし)
 かくして一行は猛牛ディスクを入手し、ちょっと丸くなった爺さんからお土産にキノコを貰って今回も帰り道エンドで一件落着。
 榊原家の宿命と丈瑠の背景を絡め、“受け継がれる想い”を中心に描いたのですが、 今作の基本構造の為に親→子への想いがあまり理由なく正当化されてしまう、というのがもう一つ乗れなかった所。もう少し、 榊原家の牛折神への想いが織り込まれれば良かったのですが、やや不足。
 猛牛回りの力の入った特撮は面白かったです。
 それにしても、派手に登場した後に2話連続で出番が無かったのですが、恐竜丸はどこへ消えたのか。もしかして、 映画アイテムのCMだけで、二度と出てこないのか?!(^^;

◆第三十四幕「親心娘心」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 長石多可男スペシャル回来たーーーーー。
 2話ほど参戦していたという話は知っていたのですが、ここでしたか。
 志波家を茉子の父にして、先代シンケンピンクの夫である衛(まもる)が訪れる。
 「おまえを迎えに来たんだ、茉子。シンケンジャー辞めて……一緒にハワイに行こう」
 「え?」
 父の来訪に固まる茉子、「やっと声が聞けた」など微妙な距離感が表現されており、突然の申し出に困惑する茉子は、 何やら両親とはスムーズな関係ではない様子。
 「ずっと離ればなれだったけど、やっぱり親子は一緒がいい。お母さんもそう言っているんだ。最初に、茉子を迎えに行こう、 って言い出したのは、お母さんなんだ」
 「お母さんが……でも、だって」
 その時、外道衆がセンサーに引っかかり、シンケンジャー出陣。ナナシ達が小学校を襲い、何人かの子供達がどこかへさらわれてしまう。
 それは、さらった子供達に石を積ませる→ナナシが途中で崩す→石を積ませる、の無限コンボにより生み出した絶望で、 此の世に賽の河原を出張させ、増水で溢れさせるでのはなく人の世の側に三途の川を引き込ませようという、 アクマロの新たなプロジェクトであった。
 「理屈じゃそうかもしれないけどー」と難癖つけながらドウコクに酌をするシタリが、なんだか凄く、 ダメな人に!
 アクマロが太夫と十臓をヘッドハントした事を察したドウコクはアクマロの足に刀を突き立て、軽くお仕置き。 ドウコクは酒飲んでくだまいているだけなのに、やたらに人間界の動向に精通しているのですが、 実は優秀なスパイ組織でも持っているのか、或いは、超・天使センサーが内蔵されているのか。
 なお、忠誠心0むしろマイナスぐらいな傭兵コンビは、アクマロさんが早く獲物を修理してくれないかなー、 と川のほとりでくだを巻いていた。
 自分から働いたら負けだから。
 茉子がさらわれた子供のポケットに隙間センサーを投げ入れ、その反応を彦馬と黒子が追っている内に、源太を交えて、 白石家の家庭環境が軽く解説。茉子の両親はハワイに移住しており、5歳ぐらいの頃から、茉子は両親と離れて祖母の元で侍の修行をしていたのだった。 回想シーンの映像を見る限り少女時代の茉子がえらいお屋敷に住んでいたり、 茉子の父が「娘が辞めたらハワイの黒子という事でうちの会社がバックアップします」と言っていたり、 かなりブルジョワジーな生まれの模様。
 源太の寿司はどれぐらい「普通」なのか論がありましたが、流ノ介も家を考えると恐らくそれなりにいいもの食べてそうですし、 茉子と流ノ介から「普通」の評価を得るゴールド寿司は、割とレベルの高い「普通」であると断定してよさそうです。
 凄いぞ「普通」!
 普通!
 まあ、握り方については提灯からダメ出しを受けるレベルなので、ネタがいいのでしょうが。
 離れて暮らしてはいたものの父とは度々会っていたという茉子だが、母については言葉を濁す。そこへ黒塗りの車でやってきた父、 やおらハワイの素晴らしさをPRする……って、もう谷家に何も言えない!!
 「茉子。お母さんが本当にお前を!」
 隙間センサーが道に落ちていたという報告が届き、手分けしてその付近を調べる事にするシンケンジャー。茉子もまた、 食い下がる父を振り切るようにしてそれに加わる。
 それにしても殿は、「他人の事情に踏み込まない」とうよりもむしろ、「最初から交渉の余地無し。 何故なら侍は侍ゆえに侍だから」という事なのでしょうが、一応、名目上の雇い主なので、 お父さんを完全無視はどうかと思います。前回、榊原藤次と会話した事で、 2クール分蓄積した社交エネルギーを使い果たしてしまったのか?!
 いったい殿は、いつになったら身内以外とスムーズにコミュニケーションを取れるようになるのか……!
 アクマロによる、賽の河原ドリームプロジェクトの現場を発見した茉子は仲間達に連絡を取るが、 隙を見て逃げ出した少年をナナシからかばって傷を負ってしまう。茉子を追ってきた父の車に少年を逃がすもアクマロに見つかってしまうが、 そこへやってくる、赤青緑。そして黄と金が別働隊として倉庫の中から子供達の救出に成功する。
 「用心棒を、連れてくるべきであったぁ……!」
 とか言いつつ5人を直接攻撃で吹き飛ばすアクマロですが、なんか、言い回しが面白かった(笑)
 アクマロの攻撃を受け、ナナシに囲まれる5人を助けに入ろうとする茉子だが、切羽詰まった局面にも関わらず、 父はそれを止めようとする。
 「お父さん何とも思わないの?! 子供を心配している人達の事だって見てたでしょ。同じ親じゃない!」
 「そうだ、親だよ。親だから、自分の子供を、安全な場所に避難させたいと思う、身勝手な親だ。……茉子、 それはお母さんも同じなんだよ」
 「…………そんな事、だって……だったらどうして、あの時、私も一緒に…………置いていかれたと思った。最後までお母さんは、 私の事なんか目に入らなくて。だからずっと一人で侍になる為に! 今になってどうして!」
 茉子の心に重くつかえるもの……それは、父に押された車椅子の母が、泣き叫ぶ茉子を振り返る事もなく去って行く、 という幼い日の記憶だった。
 茉子の両親がハワイに移住したのは、先代シンケンピンクであった茉子の母・響子が先のドウコクとの戦いで心身に深い傷を負い、 その療養の為だったのである。婿養子であった父は、次代のシンケンピンクとして茉子を育て上げようとする祖母から茉子を引き離す事が出来ず、 かといって妻をそのままにも出来ず、やむなく茉子を置いてハワイへ移り住んだのだった。
 「言い訳だな……おまえをひどく傷つけた。恨むのは当然だ」
 先のドウコクとの戦いは以前に描かれた回想シーンで、シンケンジャー全滅! みたいになっていましたので、 茉子母が先代シンケンピンクだとすると、生きていても廃人なのでは……と思っていましたが、やはり、廃人寸前でした。
 ここでちょっと気になるのは、千明父の時には先代緑の話は出ませんでしたが、茉子父にはことはが「先代ピンク?」 とすぐに聞いている事。
 個人的にはシンケンジャーは、志波家を除いては代々の家が固定なのではなく、幾つかの候補の家の中から、 時代時代で最も適性の高い者が招集される、という解釈だったのですが(そういうシステムでないと何かあった時にすぐ壊滅してしまいますし)、 その辺りの設定は組まれているのか組まれていないのか明かされるのか明かされないのか(別に、明かされなくてもいい)。
 千明母が千明を生んですぐ亡くなっている、というのを先代緑だったとすればそこも繋がるのですが、 しかしそうすると現代シンケンジャーの身内全員が先のドウコクとの戦いで酷い目にあっている事になり、それはどうも、 序盤の展開としっくり繋がりません。各々もう少し距離感がありましたし、それだと当然生じるべき「復讐」という要素がほぼ描かれていませんし。
 とするとやはり、必ずしも一つの家の直系に限ってシンケンジャーになるわけではなく、ただその中で、 白石家は歴代シンケンジャー選抜回数が多くて家格が高く、祖母のこだわりが強かった、という方が個人的にはぴたっと来ます。
 そしてそういった部分を茉子が押し隠していたとすれば、太夫とある種のシンパシーを持つに至り、ちょっと極端に触れかけた、 というのも納得出来る背景。
 父の立場が弱いのは、恐らく、会社を大きくしたのに白石家の家名や財力の後援があったからなのでしょう。 目の前で5人が危ないのに茉子を止めるというのは、娘を思う気持ちと同時に、“廃人になった妻をその目にしている”という事で、 納得がいきます。
 父に止められた茉子は、先程負った手傷に触れる――。
 「私、侍はやめない。お父さん達の事を恨んでるわけじゃないし、後悔もしてないから。ただ…………あの時……ただ……」
 振り返らなかった母の姿――
 今作は、親から子へ、ポジティブに言えば“想い”、ネガティブに言えば“重荷”が託され、それを受け継ぐ、という構造なのですが、 前回の牛回が志波家と榊原家の“受け継がれた想い”を描いたのに対し、白石茉子に与えられたのは親の想いの欠落であり、 その空虚ゆえに侍になっていた、というのはちょっとしたちゃぶ台返し。
 メンバーの中では最も本音の読めない、ある意味で物語にとって都合のいいスタンスの茉子でしたが、それを逆手に取って、 “そこに何もなかった”としてきたのは面白い。
 この背景で、「親を恨んでない」と言うのは恐らく、意図的に描かれた茉子の欠落だと思われますが、こうなると、 21話時点でここまで考えていたのかは伺い知れませんが、千明父と絡んだのが姐さんで、 千明の名前の由来――そこに込められた想い――を聞かされた、というのも意味深い。
 今作で「人間」として一番真っ当なのって千明なわけですが、その逆に置かれるのは、実は殿ではなく姐さんだったという。
 「わぁぁぁぁぁっ!」
 絶叫とともにナナシ軍団を切り払った茉子は、天の文字でアクマロビームを跳ね返しながら変身し、アクマロと一騎打ち。 殿に投げ渡された印籠を柄で受け止める、というこれまでになく格好いいパターンでスーパー化。 問答無用の超必殺技で硬直状態にしたアクマロをなます切りにして撃破する。
 「な、なんという女……!」
 とうとう正面から負けてしまったアクマロですが、そういえば、スーパー化と戦うのは初か。……一応今回も、 ドウコクの攻撃でHP減った状態で来ているといえば来ている気はしますが。
 この戦闘中、変身直後と、スーパー化の後と、娘の背中を見る父の視点が2回入るのが、いいカット。
 アクマロは賽の河原大拡張此の世を夢のプール化計画を断念すると、式神を召喚。何故か組み体操でオオナナシ軍団も出撃し、 ナナシ騎馬隊vs牛車シンケンオーという巨大戦。
 牛車シンケンオーはナナシ騎馬隊をあっさり壊滅させ、シンケンオー、大海王、 猛牛大王が揃い踏みしての一斉必殺技で式神と大頭ナナシを滅殺。
 ここ数話、凄く、お金がある気がするのですが、東映の株価でも上がったのでしょうか(笑)
 戦いは終わり、ハワイへ帰る父を見送る茉子……と、遠巻きにそれを見つめる仲間達。
 「お前の気持ちは、お母さんに伝えたよ。戦いぶりもな」
 「……お母さん、なんて?」
 「ん? 自分で聞いてみるといい」
 「え?」
 父の背後から、車椅子で現れる、母・響子(伊藤かずえ)。
 「茉子……あの時、一人にしてごめんなさい。でも、あなたを忘れてたわけじゃないの! ずっと……あなたを、 思わない日は無かった。ごめんね……」
 坂道を運ばれていく回想シーンはあるものの、実質このワンシーンだけの登場で、娘を思う母の泣きに説得力が出たのは、 それなりにキャリアのある人を配した意味の出た所。
 「お母さん……お母さん!」
 母の手に触れられ、茉子はすがりつくようにして抱きしめられ、それを父は無言で見守る。
 ――ナレーション「足りなかった何かが埋まって、本当にシンケンピンクを受け継いだ思いの茉子。その胸には、外道衆を倒す、 新たな決意。シンケンジャー第三十四幕、まずはこれまで」
 と、茉子の「ただ…………あの時……ただ……」の台詞がそこで途切れていたり、欠落について具体的に語られないまま終わる、 というのは良かった所。
 終始明るめのトーンの父・衛で誤魔化しつつ、基本いい話で綺麗に着地しているのですが、 動かない母の足がさらっとワンカット入っていたり、姐さんの抱えていたいびつさがハッキリ描かれたり、 なぜ父は場違いなほど明るく振る舞おうとするのかなど、劇中の現在時間で酷い事は起きていないけれど、 実はかなりヘビー級というエピソード。
 姐さんの弱った男に対する加減の効かない献身や、母性や家庭的な部分を持っているつもりなのに料理が壊滅的に下手な事などは、 母親に対する憧憬と憎悪と欠落がない混ぜになった上で、祖母の元で侍として修行三昧の日々だった為、 と背景が描かれた事でぴたっと収まりました。
 まあそこまではやらないと思いますが、次回から茉子の性格が激変しても、それはそれで面白い(笑)
 長石回を狙い澄ましての力の入ったシナリオだったと思われますが、茉子と両親の会話シーンにじっくり軸を置いたのは、 演出への信頼感か。冨家規政・伊藤かずえ、としっかりキャスティングされたのも良かったです。
 監督補:渡辺勝也も話には聞いていましたが、ほっこり師弟エピソードとして語られるけど、その後の病気の事を考えると、 この年の前半は『ディケイド』に参加、翌年『ゴセイジャー』のパイロット版を撮ってはいるものの、 この頃から体調不安が少しあったのかなぁ……なんて事も少し考えてしまう所です。
 年齢も年齢でしたし(当時64歳)、そういった諸々あっての、長石監督にもう一度戦隊を、という流れが多分あったのでしょうけど、 今になると、間に合って良かったな、と思う次第。
 次回、なんか凄いの来たーーー。

◆第三十五幕「十一折神全合体」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
 かつて流ノ介が親友・新太郎と企画した若手歌舞伎会の公演が近づき、歌舞伎に打ち込んでいた過去を思い出す流ノ介。
 (すまん……)
 流ノ介が侍の招集を受けて歌舞伎界から姿を消した事で企画が中止になりかねなかった事から、流ノ介はその場へ顔を出す事ができず、 遠くから楽屋へ向けて頭を下げる。
 「恨まれて当然だな……」
 形になった自分の夢を前に、置き捨ててきた物を今更ながらに改めて実感して沈む流ノ介は、 ベンチや自転車などを次々と平らげる大食いアヤカシら逃げ遅れた人を助ける際に、取り落とした書道フォンを食べられてしまう。
 駆けつけた5人の攻撃でアヤカシは一時撤退するが、変身できなくなってしまう流ノ介。 皆が書道フォンを取り返す算段で盛り上がっている中、
 「流ノ介……どうかした?」
 何やら暗い様子の流ノ介に、天使センサー、超反応(笑)
 やはり、姐さんは姐さんのままでした。
 その頃、川で焚き火とかしていたぼんくら傭兵コンビの元を訪れる雇い主。
 「十臓さん、200年のご無沙汰。どうでしたか外道は? その器、多少満たされておればよろしいのござりますが」
 「折角だが……底が、抜けたらしくてな」
 十臓がアクマロを知っているらしいという言動がありましたが、十臓に裏正を渡したのはアクマロだと判明。
 「この裏正で外道を見せたおまえが、次は何を見せる」
 「さぁ……何が見えまするやら」
 アクマロは修理の為に折れた裏正と太夫の三味線を預かり、ぼんくら傭兵コンビは改めてアクマロの指示で動く事に。
 前半、悪側のパンチ不足があった今作ですが、十臓が面白くなってくる、太夫の退社、アクマロと十臓・太夫が繋がる、 と単純に組織化されない状態でそれぞれの思惑で動いている、というのが良い感じに転がり出しました。
 演目が巧くいかずに悩む新太郎の稽古をこっそり見つめる流ノ介@現在役立たず。
 「流ノ介さんが居てくれれば……」
 「あいつの事は言うな。いねぇもんはいねぇんだ! ちっ、あの野郎……あいつは俺たちを……いや、歌舞伎を裏切ったんだ!」
 舞台からカメラを戻すと、既に消えている流ノ介の姿。
 屋敷に戻るも、ナイーブになって千明にあたる流ノ介は屋敷を出て思い悩むが……翌日、大食いアヤカシが再び出現。
 「流さん、まだ帰ってきとらへん」
 「……行くぞ。俺たちが踏み込む事じゃない。流ノ介なら、自分で決着をつける筈だ」
 「だね」
 「それまでに取り戻そうぜ、あいつの書道フォン」
 青の代わりに金が入る変則5人並びで、アヤカシの前に立つシンケンジャー。流ノ介の書道フォンに電話をかけるという奇策により、 書道フォンがアヤカシの右腕の中に引っかかっている事を突き止めて切り落とそうとするが、それを邪魔する傭兵コンビ。 十臓は前々回と同じく青竜刀タイプの剣、太夫はアクマロから受け取ったアーミーナイフを振るい、 アヤカシに食事をさせる為に足止めをする。
 その頃、公演を間近に控える舞台では、新太郎が演技の壁にぶつかり倒れ込んでいた。
 「なんで……なんで出来ねぇんだよ!」
 そこに、衣装をまとった翁面の男が現れ、無言で舞い始める。
 「これは……」
 その舞を見る内にいつしか新太郎もイメージの中で演目を舞い始め、かなりの尺を取って、イメージの中で2人で演じられる三番叟。 互いの呼吸が重なり、新太郎と翁面の男は見事にそれを舞い終える。
 「……できた」
 壁を乗り越えた新太郎の表情が、役者の中ですとんと何かが落ちた瞬間、が見事に表現されていて非常に秀逸。
 翁面の男は無言で首だけを新太郎に向け、離れた距離で無言で見つめ合う2人……この映像の距離感がまた絶妙。 翁面の男は舞台袖に立ち去ろうとするが、
 「……流ノ介」
 という新太郎の呼びかけに、一瞬、足を止める。
 「いつか……戻ってこい」
 新太郎は男の背にそっと呼びかけ、男は無言のまま舞台袖に消えていくのであった。
 流ノ介と新太郎が、歌舞伎を通じて無言の会話をする、という実にいいシーン。
 以前の源太ストーキング回で、流ノ介が肉体の鍛錬とモヂカラの修行の他に、 自室内とはいえ歌舞伎の稽古も欠かさず行っている事が描かれているので流ノ介の踊りに説得力が生じ、 そして新太郎はその演技を見る事で、何よりも雄弁に「流ノ介が歌舞伎を裏切ったわけではない」事を確信する。
 ご都合で新太郎も並んで演じさせてしまっても良さそうな所を、あくまで2人の共演はイメージの中に留め、 “本当の共演はいつか「未来」の為に取っておく”というのも、美しい。
 仮面劇の要素を持つ戦隊の中で、古典の仮面舞踏を通じて心の繋がりを描く、と非常に綺麗に収まりました。
 また、私事(私情)と使命(任務)の二律背反、というのはヒーロー物の一つの命題であり、特に今作は構造上、 私を捨てる事を重視しているのですが、書道フォンを失って流ノ介を思い切って役立たずにする事で、 他の事を優先して構わない状況を作り、これも思い切って歌舞伎シーンに尺を取りました。
 前半ややテンポが悪い感じがあったのですが、このシーンに全てが集約されるという尺のバランスも綺麗な着地。
 一方、赤がスーパー化するも5人は十臓と太夫の壁を突破できず、アヤカシは満腹に。途端、 十臓と太夫はクロスラッシュでアヤカシを斬殺し、スーパー赤は何とか書道フォンを回収するも、アヤカシは巨大化してしまう。 そして満腹状態での二の目になる事で劇的な強化を遂げる事こそが、大食いアヤカシの真価であった。
 なお冒頭でアクマロが「人の世に焦熱地獄を作る」と言っているのですが、両腕に生じた盾が凄く強い、 以外の特性はよくわかりませんでした(^^; 一応、盾からビームを出したので、それで市街地を灼き尽くす予定だったのかもしれませんが、 そこまで描写されず。見せる物の本命が控えていた都合かとは思いますが、少々、噛み合いませんでした。
 「殿ぉぉぉ! お待たせ致しましたぁ! 池波流ノ介、只今推参!!」
 そこに、伝えるべき事を友に伝えた流ノ介がハイテンションで復活し、回収された書道フォンで変身。 6人揃ったシンケンジャーは大海真剣王でアヤカシに立ち向かうが、その攻撃はアヤカシの巨大な盾に全て防がれてしまう。
 「殿! 例のディスクを使いましょう!」
 陽気なア○ちゃんラーメンでも食べてしまったのか、テンション高く、源太が考案していた全合体を強行しようとするブルー。
 「殿ぉ! 例のディスクを! 行けますって! 早く奴を!」
 「わかった。やるから落ち着け。どうせいつかは使うんだしな」
 構って欲しくて跳ね回る犬のような流ノ介の勢いとテンションに面倒くさくなった殿、全・侍合体ディスクをシンケン丸に装着。
 「そうです、こういうのは勢いです!!」
 ブルー、勝手に回す。
 「全・侍合体!」
 ……ここでとうとう、今作におけるメカギミックの扱いが言明されました。
 すなわち、「こういうのは勢い」(笑)
 全・侍合体ディスクの発動により全折神が集結し、光線を浴びせてアヤカシをひるませた隙に、合体シークエンス開始。 …………えー、凄すぎて、一時停止しながら見ても複雑怪奇だったのですが、なんとなくわかった限りでは、
 〔立ち上がった牛の背中に、折神大海砲っぽいものが付く → 海老のハサミも付いてバックパックを形成 → 大海真剣王ベースのロボに猛牛大王の腕が取り付き、更に虎ドリルを装着 → 胸に烏賊足と「全」マークの装甲が付く → 頭部に牛の角とディスクがはまる → シンケンオーがバックパックに乗る! → 大海真剣王の背中から外れた天と土は台の下の方に申し訳程度にくっつく(笑) → 火はどこ行った?
 猛牛大王の制御ディスクは「王」のディスクだと思っていたのですが、「全」のディスクだったのか(^^;(それとも、 片足が「王」で片足が「全」?)
 なんというかこう……玩具を設計した人、凄く頑張った!
 撮影した人達は、物凄く頑張った!
 2号ロボが1号ロボの背中にっくつく形式や、要塞変形の上に乗る形などはこれまでもありましたが、まさかの巨大バックパック方式。 要塞型+合体ロボの融合案として、これは面白くど迫力。
 青「サムライハオー、天下統一!」
 緑「サムライハオーって、なに?」
 青「侍たるもの、備えあれば憂い無し!」
 ……つまり、常日頃から新兵器の名前を考えておいて、先に言ったもの勝ちである、と。
 大海真剣王@アサルトパック、ならぬサムライハオーは腕のドリルに背中のハサミ、そして雷神剣・覇王斬りで連続攻撃。 トドメは全員のモヂカラを集中し、11折神の力を解放して放つ究極破壊光線もといモヂカラ大団円。
 圧倒的な防御力を誇るアヤカシであったが、その盾ごと、金色の粒子に呑み込まれて消滅するのであった。
 ひーーーかりーーーになれーーー!!(CV:檜山修之)、みたいな(笑)
 「これにて、一件落着」

 …………恐竜は?

 究極破壊光線は、剣の動きに合わせて円を描くようにしてシンケンハオーの前に折神の名前が並んで発動するので、 むしろ12体の方が綺麗になったと思うのですが、恐竜は、恐竜は家出中なのか。
 とにかく凄かったですシンケンハオー(^^; ここまでやられると、細かい事はどうでも良くなるというか(笑)
 公演の日、新太郎の楽屋には誰が送ったのか、青い花。
 ナレーション「侍になる為に捨てた世界に、今一度背を向ける流ノ介」
 の所で、人混みの中を歩く流ノ介。
 「しかし、その心は明るく」
 雑踏の中に立ち止まり、迎えてくれるのは5人の仲間。
 「その目に映るのはいつか戻れる晴れ舞台。シンケンジャー第三十五幕、まずは、これまで」
 このラスト、雑踏の中で撮ってしまったのは、実にお見事。
 もっと色々緩かった頃には、繁華街をやや俯瞰で撮ったり、ヒーローの孤独さや、逆に社会に潜む見えない悪の表現などで、 雑踏の中を行くヒーロー、というのはむしろ定番の絵図ではあり、 6人それぞれをアップで映していく所なども含めて意図的にちょっと古くさい絵として撮ったと思うのですが、2009年にもなって、 本当に人混みの中で、良く撮れたなぁ。
 そしてそれが、今はまたかつての日常とは別の道を行くけれど、そこには同じ志の仲間が居て、 その先にはいつか日常に戻るという希望も見えて……という描写を際立たせてとても良かったです。 今作定番の帰り道エンドの亜種として成立しているのも美しい。
 私とにかく長石多可男監督のファンなので、ひいき目もありますが、歌舞伎シーンからこのラストは良い物を見させていただきました。
 というわけで明らかに長石多可男スペシャル回に狙い澄まして、2話続けて、 メンバーの背景と内面に切り込む重量感のあるエピソードが続いたのですが……次回……カレー……? そして、そんな回で、 ことは、スーパー化? 黄色いからか、黄色いからなのか?! 源太も一緒で、ゴールデンカレーなのか?!
 ……いやまあ、蓋を開けたらいい話かもしれませんが(笑)

→〔その8へ続く〕

(2016年11月30日)
(2017年9月3日 改訂)
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